特許第6200416号(P6200416)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許62004161,2−アルカンジオールからの飽和アルデヒド製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6200416
(24)【登録日】2017年9月1日
(45)【発行日】2017年9月20日
(54)【発明の名称】1,2−アルカンジオールからの飽和アルデヒド製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 45/52 20060101AFI20170911BHJP
   C07C 47/02 20060101ALI20170911BHJP
   B01J 29/035 20060101ALN20170911BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20170911BHJP
【FI】
   C07C45/52
   C07C47/02
   !B01J29/035 Z
   !C07B61/00 300
【請求項の数】7
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-510595(P2014-510595)
(86)(22)【出願日】2014年2月4日
(86)【国際出願番号】JP2014052485
(87)【国際公開番号】WO2014123095
(87)【国際公開日】20140814
【審査請求日】2016年10月6日
(31)【優先権主張番号】特願2013-21299(P2013-21299)
(32)【優先日】2013年2月6日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】304020292
【氏名又は名称】国立大学法人徳島大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】杉山 茂
(72)【発明者】
【氏名】加藤 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】安川 隼也
(72)【発明者】
【氏名】秋原 秀治
(72)【発明者】
【氏名】二宮 航
【審査官】 山本 昌広
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−227925(JP,A)
【文献】 特開2010−180156(JP,A)
【文献】 特開平11−35510(JP,A)
【文献】 Applied Catalysis A: General,2009年,Vol.366,p.304-308
【文献】 Applied Catalysis A: General,2011年,Vol.400,p.148-155
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 45/00−50/38
B01J 29/00−29/90
C07B 61/00
JSTPlus(JDreamIII)
Science Direct
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
規則性メソ多孔体の存在下、1,2−アルカンジオールをW/Fが0.01g・min/ml以上1000g・min/ml以下となるように規則性メソ多孔体と接触させて飽和アルデヒドを製造する方法であって、
前記規則性メソ多孔体が、層状シリケートを、界面活性剤としてアルキルトリメチルアンモニウム、ジメチルジアルキルアンモニウム、アルキルアンモニウム、ベンジルアンモニウムの塩化物、臭化物、ヨウ化物または水酸化物を溶解させた溶媒に分散させて50〜150℃の温度で1〜20時間反応させて合成した規則性メソ多孔体である方法。
【請求項2】
前記規則性メソ多孔体の平均細孔径が、2.0nm以上10.0nm以下である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記規則性メソ多孔体の酸量が、1.0mmol/g以上10.0mmol/g以下である請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記規則性メソ多孔体が、FSM−16である請求項1から3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記1,2−アルカンジオールが、1,2−プロパンジオールである請求項1から4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記飽和アルデヒドが、プロピオンアルデヒドである請求項1から5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記規則性メソ多孔体の温度を200℃以上800℃以下とする請求項1からのいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1,2−アルカンジオールから飽和アルデヒドを製造する方法に関する。特に、本発明は、1,2−アルカンジオールを、層状シリケートに界面活性剤を作用させて合成した規則性メソ多孔体に接触させて飽和アルデヒドを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プロピオンアルデヒドに代表される飽和アルデヒド類は、溶剤原料、化成品中間体、医薬品中間体製造用溶媒などとして用いられ、化学工業上重要な物質である。低級飽和アルデヒドは、そのアルデヒドの有する炭素数により製造方法が大きく異なる。例えば、C2アルデヒドであるアセトアルデヒドは、エチレンのワッカー酸化により工業的に製造される(非特許文献1)。また、C4アルデヒドであるブチルアルデヒドは、プロピレンのヒドロホルミル化反応で製造されるのが一般的である(非特許文献2)。
【0003】
一方、C3のアルデヒドであるプロピオンアルデヒドは、エチレンのヒドロホルミル化反応により得ることができる(非特許文献2)。また、プロピオンアルデヒドは、プロピレンのアセトキシル化により得られる酢酸アリルを加水分解して得られるアリルアルコール(特許文献1)、またはプロピレンオキサイドを原料としてその異性化により得られるアリルアルコール(特許文献2)を原料として、その部分水素化により得ることができる。
【0004】
しかしながら、ヒドロホルミル化反応装置の建設には膨大な設備投資が必要である。また、プロピレンのアセトキシル化においては反応に酢酸を用いるため耐食性の設備が必要であり、同様に膨大な設備投資が必要である。一方、プロピレンオキサイドを原料として用いる場合、反応性の高いプロピレンオキサイドは取り扱いが難しい。更に、アリルアルコールを原料として部分水素化により飽和アルデヒドを得る場合、一部カルボニル部分も水素化され目的生成物の選択率が低下する場合がある。また、1−プロパノールを脱水素してプロピオンアルデヒドを得る方法も知られているが、原料である1−プロパノールの供給に課題がある。また、1,2−プロパンジオールを原料に用い、ヘテロポリ酸またはヘテロポリ酸−触媒担体複合体を触媒に用いることによって低級飽和アルデヒドであるプロピオンアルデヒドを合成する方法が報告されている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第2662965号公報
【特許文献2】特公平7−116083号公報
【特許文献3】特開2010−180156号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Industrial Organic Chemistry, Wiley, 4th edition p. 165
【非特許文献2】Industrial Organic Chemistry, Wiley, 4th edition p. 131
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、1,2−アルカンジオールを原料として飽和アルデヒドを製造する先行の製造方法では、所定の条件において触媒活性が高いものの飽和アルデヒドの選択率が低く、工業的使用を考えた時、より高い収率で飽和アルデヒドを製造できる方法の開発が強く望まれている。本発明は、1,2−アルカンジオールから飽和アルデヒドを高収率で製造できる方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、本発明者らが上記目的を達成するため鋭意検討した結果なされたものである。
【0009】
本発明に係る方法は、規則性メソ多孔体の存在下、1,2−アルカンジオールをW/Fが0.01g・min/ml以上1000g・min/ml以下となるように規則性メソ多孔体と接触させて飽和アルデヒドを製造する方法であって、前記規則性メソ多孔体が、層状シリケートを、界面活性剤としてアルキルトリメチルアンモニウム、ジメチルジアルキルアンモニウム、アルキルアンモニウム、ベンジルアンモニウムの塩化物、臭化物、ヨウ化物または水酸化物を溶解させた溶媒に分散させて50〜150℃の温度で1〜20時間反応させて合成した規則性メソ多孔体である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、1,2−アルカンジオールから飽和アルデヒドを高収率で製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に係る方法では、規則性メソ多孔体の存在下、1,2−アルカンジオールから飽和アルデヒドを製造する。本発明では規則性メソ多孔体を触媒として用いることにより、1,2−アルカンジオールから飽和アルデヒドを高収率で製造することができる。
【0012】
[規則性メソ多孔体]
本発明において規則性メソ多孔体とは、直径2〜50nmの細孔を有し、その細孔が規則的に配列したシリカ系の物質を示す。規則性メソ多孔体であることは、粉末X線回折装置(製品名:Rigaku RINT 2500 VHF、(株)リガク)を用いてX線回折ピークを得ることにより確認することができる。本発明に係る規則性メソ多孔体としては、高い酸強度を有する固体酸触媒を用いることができる。一般的に、固体酸触媒としてはシリカやアルミナ等が用いられるが、本発明のように規則性メソ多孔体として用いることにより、高い比表面積による反応場の増加に加えて、規則的に配列したメソ孔内部に存在する水酸基が酸触媒として高い性能を有するため、1,2−アルカンジオールから飽和アルデヒドを高収率で製造することができる。
【0013】
規則性メソ多孔体としては、層状シリケートに界面活性剤を作用させて合成した規則性メソ多孔体が好ましい。例えば、S.Inagaki et al.,J.Chem.Soc.,Chem.Commun.,No8,680−682(1993)に記載された方法により合成した規則性メソ多孔体が挙げられる。層状シリケートに界面活性剤を作用させて合成した規則性メソ多孔体は、周期的に湾曲したシリケートシートが凸部で上下結合した構造を有しており、そのシート間隙には均一に揃った細孔が無数に存在している。その細孔直径は2〜10nmであり、ある一定の直径を中心にして狭い範囲に分布している。界面活性剤として例えばアルキルトリメチルアンモニウムを用いた場合、アルキル鎖長の長さによって細孔直径を変化させることができる。その中でも、ヘキサデシルトリメチルアンモニウム(C1633N(CH33)を用い、FSM−16を規則性メソ多孔体として製造することが好ましい。
【0014】
前記規則性メソ多孔体の合成に用いられる層状シリケートとしては、カネマイト(NaHSi25・3H2O)、ジケイ酸ナトリウム結晶(α、β、γ、σ−Na2Si25)、マカタイト(Na2Si49・5H2O)、マイアライト(Na2Si817・xH2O)、マガディアライト(Na2Si1429・xH2O)、ケニヤイト(Na2Si2041・xH2O)等が使用できる。これらの中でも、層状シリケートとしてはカネマイトが好ましい。これらの層状シリケートは一種を用いてもよく、二種以上を用いてもよい。
【0015】
前記規則性メソ多孔体の合成に用いられる界面活性剤としては、アルキルトリメチルアンモニウム、ジメチルジアルキルアンモニウム、アルキルアンモニウム、ベンジルアンモニウムの塩化物、臭化物、ヨウ化物または水酸化物などを用いることができる。これらの中でも界面活性剤としてはアルキルトリメチルアンモニウムの臭化物が好ましい。アルキルトリメチルアンモニウム、ジメチルジアルキルアンモニウム、アルキルアンモニウムの塩化物、臭化物、ヨウ化物または水酸化物のアルキル基としては、炭素数8〜18の直鎖または分岐のアルキル基が好ましい。これらの界面活性剤は一種を用いてもよく、二種以上を用いてもよい。
【0016】
層状シリケートに界面活性剤を作用させて規則性メソ多孔体を合成する方法としては、例えば、上述した層状シリケートを、界面活性剤を溶解させた溶媒に分散させる方法が挙げられる。溶媒としては水が好ましいが、水−アルコール混合溶媒やその他の溶媒でもよい。界面活性剤の濃度は、0.05〜1mol/Lが好ましい。層状シリケートの分散量は、0.1mol/Lの界面活性剤水溶液1000mlに対し、例えばカネマイト5〜200gが好ましい。反応温度は50〜150℃が好ましい。加熱の間は、分散溶液を攪拌することが好ましい。分散溶液のpHは、始めの1〜5時間は10以上で、残りの時間は10以下が好ましい。カネマイトはアルカリ性であるため、分散溶液のpHは何もしなくても10以上になる。pHが10以上にならない場合には、水酸化ナトリウムを添加してpHを10以上にすることができる。その後、塩酸等の酸を添加して、溶液のpHを10以下まで下げることができる。溶液のpHを8.5まで下げることが好ましい。このpH制御により結晶性および耐熱性の特に高い規則性メソ多孔体を得ることができる。その後、固形生成物をろ過して回収する。反応時間は1〜20時間が好ましい。なお、反応時間とは、層状シリケートと界面活性剤とが混合された時から、固形生成物をろ過するまでの時間を示す。この固形生成物を脱イオン水等で繰り返し洗浄することにより、耐熱性の高い規則性メソ多孔体を得ることができる。この固形生成物を乾燥した後、550℃以上の温度で焼成、または塩酸/エタノール混合溶液で処理することにより、結晶中に取り込まれた界面活性剤を除去することができ、規則性メソ多孔体が得られる。焼成を行う場合、焼成条件としては、空気、酸素、窒素等の雰囲気下で、1時間以上加熱することが好ましい。また、塩酸/エタノール混合溶液で処理する場合、酸/有機溶媒の組み合わせであれば、塩酸、エタノール以外の他の酸と有機溶媒を用いてもよい。
【0017】
このようにして得られる規則性メソ多孔体は、周期構造を有する規則性メソ多孔体である。なお、周期構造を有する規則性メソ多孔体であることは、X線による構造解析において、2nm以上のd値に最大ピークを含む一つ以上のX線回折ピークが存在することにより確認することができる。
【0018】
層状シリケートに界面活性剤を作用させて得られる規則性メソ多孔体以外の規則性メソ多孔体としては、例えば、MCM−41、MCM−48、SBA−15、SBA−16、HMS、KIT−16、KIT−5等が挙げられる。これらは一種を用いてもよく、二種以上を用いてもよい。これらの規則性メソ多孔体は、公知の方法で製造できる。
【0019】
本発明に用いる場合、規則性メソ多孔体の平均細孔径(以下、細孔径と示す)は、下限が2.0nm以上であることが好ましく、2.3nmであることがより好ましく、2.5nm以上であることがさらに好ましい。細孔径の上限は10.0nm以下であることが好ましく、5.0nm以下であることがより好ましく、3.5nm以下であることがさらに好ましい。規則性メソ多孔体はメソ孔の壁面に存在する水酸基が、壁面から細孔の中心に向かって位置しており、細孔中心部で水酸基が高密度に存在するため、特異的な酸強度を示すと考えられている。
【0020】
中心に向かって配列した水酸基の空間に反応物が取り込まれやすくなるため細孔径は2.0nm以上であることが好ましい。また、水酸基と反応物の接触が十分行われる範囲内でかつ、水酸基の空間が大きく反応物が取り込まれやすいため細孔径は10.0nm以下であることが好ましい。
【0021】
規則性メソ多孔体の酸量は、下限が1.0mmol/g以上であることが好ましく、1.5mmol/g以上であることがより好ましく、2.0mmol/g以上であることがさらに好ましい。酸量の上限は10.0mmol/g以下であることが好ましく、6.0mmol/g以下であることがより好ましく、4.0mmol/g以下であることがさらに好ましい。酸量とは水酸基の量を意味する。メソ孔の壁面に存在する水酸基が高密度状態で存在するために最低限必要な量となるので、酸量は1.0mmol/g以上であることが好ましい。また、必要以上に水酸基が存在し、酸量が高くなると生成物も反応させてしまい、選択率を低下させる原因になる場合があるので、酸量は10.0mmol/g以下であることが好ましい。
【0022】
規則性メソ多孔体の酸量の測定は、アミン滴定法を用いて行い、ブチルアミンの滴定量から算出する。指示薬として、メチルレッド、4−フェニルアゾ−1−ナフチルアミン、p−ジメチルアミノアゾベンゼン、および4−フェニルアゾジフェニルアミンの4種を用いて、各指示薬添加時のブチルアミンの滴定量の総和から規則性メソ多孔体上の酸量を算出する。
【0023】
[1,2−アルカンジオールから飽和アルデヒドを製造する方法]
本発明に係る方法において原料である1,2−アルカンジオールの具体例としては、1,2−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオールなどが挙げられる。これらの中でも、1,2−アルカンジオールとしては、バイオディーゼル燃料を製造する際の副生物であるグリセリンから製造することができる観点から、1,2−プロパンジオールが好ましい。
【0024】
また、本発明に係る方法により製造される飽和アルデヒドとしては、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、ペンチルアルデヒド、ヘキシルアルデヒドなどが挙げられる。これらの中でも、飽和アルデヒドとしては、プロピオン酸メチルなどアクリルモノマーの原料にも用いられることから、プロピオンアルデヒドが好ましい。
【0025】
本発明に係る方法は、例えば原料である1,2−アルカンジオールをガス化して、規則性メソ多孔体を含む触媒層を通過させる気相流通式で行うことができる。この場合、使用する原料ガスにヘリウムや窒素などの不活性ガスを共存させてもよい。また、原料中に水を含んでも良い。
【0026】
前記方法により行う場合、触媒層の温度、即ち規則性メソ多孔体の温度は200〜800℃であることが好ましく、300〜600℃であることがより好ましく、350〜500℃であることがさらに好ましい。規則性メソ多孔体の温度が200℃以上であることにより、高い触媒活性が得られる。また、規則性メソ多孔体の温度が800℃以下であることにより、原料の熱分解反応による目的生成物の選択率低下及び触媒活性低下を抑制することができる。
【0027】
反応圧力は、反応に使用する1,2−アルカンジオールの種類により適宣選択することができ、通常は1MPa以下であり、大気圧が好ましい。反応は、触媒を充填した反応器に原料の1,2−アルカンジオール、不活性ガス等を含む混合ガスを流通させる固定床流通式反応方式で行うことができる。
【0028】
W/Fは、0.001〜1000g・min/mlであることが好ましく、0.01〜100g・min/mlであることがより好ましく、1〜40g・min/mlであることがさらに好ましい。転化率を高く保つことができるので、W/Fは0.001g・min/ml以上であることが好ましい。また、反応性が高くなりすぎると、生成物も反応してしまい、選択率低下や触媒劣化の原因となる場合があるためW/Fは1000g・min/ml以下であることが好ましい。なお、Wは反応管内に充填された触媒質量(g)であり、Fは触媒が充填された層へ供給される1,2−アルカンジオールの供給速度(ml/min)である。即ち、W/Fは反応管内へ供給される1,2−アルカンジオールの供給速度に対する充填された触媒質量であり、以下の式で算出される。
【0029】
W/F=充填される触媒量(g)/反応管内へ供給される1,2−アルカンジオールの供給速度(ml/min)
【実施例】
【0030】
以下、実施例および比較例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0031】
規則性メソ多孔体の周期構造は、粉末X線回折装置(製品名:Rigaku RINT 2500 VHF、(株)リガク)を用いてX線回折ピークを得ることで確認した。
【0032】
規則性メソ多孔体の細孔径は、細孔径分布曲線を作成し、その曲線のピークの位置から算出される。細孔径分布曲線とは細孔容積(V)を細孔直径(D)で微分した値(dV/dD)を細孔直径(D)に対して、プロットした曲線を言う。細孔分布曲線は、ガス吸着装置(製品名:BELSORP−max、日本ベル)を用いて、窒素吸着等温線を取得しBJH法の計算方法により求めた。
【0033】
飽和アルデヒドの製造方法において、原料混合ガスおよび生成物の分析は、ガスクロマトグラフィーを用いて行った。ガスクロマトグラフィーの結果から、1,2−アルカンジオールの転化率、飽和アルデヒドの選択率、および飽和アルデヒドの収率を下記式にて求めた。
1,2−アルカンジオール転化率(%)=(B/A)×100
飽和アルデヒド選択率(%)=(C/B)×100
飽和アルデヒド収率(%)=(C/A)×100
式中、Aは供給した1,2−アルカンジオールのモル数、Bは反応した飽和アルデヒドのモル数、Cは製造した飽和アルデヒドのモル数である。
【0034】
[実施例1]
ケイ酸ナトリウム5.0gを700℃で6時間焼成した。焼成したケイ酸ナトリウムを蒸留水50mL中に添加し、室温で3時間攪拌し、ろ過することで、層状シリケートであるカネマイトのペーストを得た。得られたカネマイトペーストに0.1mol/Lのヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド水溶液100mlを加え、70℃で3時間攪拌保持した。その後、2mol/Lの塩酸水溶液を用いて、pHが8.5となるように調整し、引き続き70℃で18時間攪拌保持した。その後、ろ過を行い、蒸留水にて数回洗浄を行い、乾燥させ、規則性メソ多孔体FSM−16前駆体を得た。そして、該前駆体を550℃で8時間、空気雰囲気下で焼成し、規則性メソ多孔体FSM−16を得た。
【0035】
得られた規則性メソ多孔体は、X線による構造解析を行った結果、d値が4.0nm以上の位置に回折ピークを有し、周期構造を有する規則性メソ多孔体であることが確認された。
【0036】
得られた規則性メソ多孔体を、固定床流通式の反応装置に設置された、石英製で直径9mm、長さが35mmの反応管内に詰めた。この反応管を電熱炉によって400℃で保持した。そして、大気圧下で酸素ガスを30ml/minの流速で1時間その反応管内に流通させた。その後、窒素を30ml/minの流速で流通させ、1,2−プロパンジオールを0.028ml/minの流速で気化させて窒素と共に規則性メソ多孔体の充填層へ供給し、1,2−プロパンジオールからプロピオンアルデヒドへの反応を行った。なお、W/Fが10.7g・min/mlとなるように各条件を設定した。
【0037】
反応を開始して15分後の反応管出口ガスをガスクロマトグラフィーで測定し、1,2−プロパンジオール転化率、プロピオンアルデヒド選択率及びプロピオンアルデヒド収率を求めた。結果を表1に示す。
【0038】
[実施例2]
W/Fが21.4g・min/mlとなるように各条件を設定し、反応を開始して105分後の反応管出口ガスを測定した以外は、実施例1と同様にプロピオンアルデヒドの製造を行った。結果を表1に示す。
【0039】
参考例3]
ドデシルトリメチルアンモニウムブロミド33.8gを蒸留水96.2mL中に添加し、A液を得た。
【0040】
また、水酸化ナトリウム1.7gを蒸留水18.8mLに溶解させ、B液を得た。A液を撹拌しながら、B液とシリカゾル(商品名:スノーテックス20、日産化学工業株式会社製)を少量ずつ交互に添加した。全量添加後、室温で2時間撹拌し、混合液を得た。
【0041】
得られた混合液を、オートクレーブ中140℃で48時間水熱処理した。得られた白色固体をろ過、洗浄し、60℃で24時間乾燥した。
【0042】
得られた白色固体を蒸留水中に分散させた。この時、白色固体の質量に対して、30倍の質量の蒸留水を用いた。そして、pHが6.5になるように、2mol/Lの塩酸をゆっくりと添加した。pHが安定した所で80℃に保持し、20時間静置した。その後、ろ過、洗浄し60℃で24時間乾燥させて、MCM−41を得た。得られたMCM−41を固定床流通式の反応装置の反応管に詰めたこと以外は、実施例2と同様にプロピオンアルデヒドの製造を行った。結果を表1に示す。
【0043】
[比較例1]
固定床流通式の反応装置の反応管にSiO2(商品名:Cabosil、カボット社製)を詰めたこと以外は、実施例2と同様にプロピオンアルデヒドの製造を行った。結果を表1に示す。なお、Cabosilは規則的に配列したメソ孔を有さず、規則性メソ多孔体には該当しない。
【0044】
[比較例2]
ケイタングステン酸0.5gを蒸留水5gに溶解した水溶液を、SiO2に添加し、エバポレーターを用いて、溶媒である蒸留水を減圧留去し、SiW1240/SiO2を得た。得られたSiW1240/SiO2を固定床流通式の反応装置の反応管に詰めたこと以外は、実施例2と同様にプロピオンアルデヒドの製造を行った。結果を表1に示す。なお、得られたSiW1240/SiO2は規則的に配列したメソ孔を有さず、規則性メソ多孔体には該当しない。
【0045】
【表1】
【0046】
このように、規則性メソ多孔体を用い、1,2−アルカンジオールから飽和アルデヒドを合成することで、効率よく飽和アルデヒドを製造することができる。層状シリケートに界面活性剤を作用させて合成した規則性メソ多孔体を用いると、さらに効率よく飽和アルデヒドを製造することができる。
【0047】
この出願は、2013年2月6日に出願された日本出願特願2013−21299を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。
【0048】
以上、実施形態及び実施例を参照して本願発明を説明したが、本願発明は上記実施形態及び実施例に限定されるものではない。本願発明の構成や詳細には、本願発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。