(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6200417
(24)【登録日】2017年9月1日
(45)【発行日】2017年9月20日
(54)【発明の名称】ヒドロキシフェニルシクロヘキサノール化合物の製造方法
(51)【国際特許分類】
C07C 37/00 20060101AFI20170911BHJP
C07C 39/17 20060101ALI20170911BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20170911BHJP
【FI】
C07C37/00
C07C39/17
!C07B61/00 300
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-512469(P2014-512469)
(86)(22)【出願日】2013年4月8日
(86)【国際出願番号】JP2013061133
(87)【国際公開番号】WO2013161594
(87)【国際公開日】20131031
【審査請求日】2015年12月16日
(31)【優先権主張番号】特願2012-98456(P2012-98456)
(32)【優先日】2012年4月24日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081422
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 光雄
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100104592
【弁理士】
【氏名又は名称】森住 憲一
(74)【代理人】
【識別番号】100113000
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 亨
(74)【代理人】
【識別番号】100151909
【弁理士】
【氏名又は名称】坂元 徹
(72)【発明者】
【氏名】原 武史
(72)【発明者】
【氏名】岩永 義彦
【審査官】
土橋 敬介
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−036752(JP,A)
【文献】
特開2001−192349(JP,A)
【文献】
Wilds, A. L. ほか,Steroid analogs lacking ring C. III. Synthesis of 4-(trans-4-hydroxycyclohexyl)cyclohexanone,Journal of the American Chemical Society,1954年,Vol. 76,pp. 1733-1736
【文献】
Jones, J. Idrisほか,372. Hydrogenation of diphenylene oxide and 2 : 2′-dihydroxydiphenyl,Journal of the Chemical Society,1950年,pp. 1836-1841
【文献】
Takehito Tsukinokiほか,Organic reaction in water. Part 3:1 A facile method forreduction of aromatic rings using a Raney Ni,Tetrahedron Letters,2000年,Vol. 41,pp. 5865-5868
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 37/00
C07C 39/17
C07B 61/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
不活性ガス雰囲気下で、式(1)
(式中、R
1およびR
2は、それぞれ独立して、炭素数1〜3のアルキル基を表わし、mおよびnは、それぞれ独立して、0〜2の整数を表わす。)
で表されるビフェノール化合物、第二級アルコール及びニッケル触媒を含む組成物を攪拌する工程を含む式(2)
(式中、R
1、R
2、mおよびnは前記と同じ意味を表わす。)
で表されるヒドロキシフェニルシクロヘキサノール化合物の製造方法。
ただし、前記第二級アルコールは、前記式(2)で表されるヒドロキシフェニルシクロヘキサノール化合物とは異なる構造を有する。
【請求項2】
第二級アルコールの量が、ビフェノール化合物1質量部に対して2質量部〜5質量部である請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
ニッケル触媒が、不均一系ニッケル触媒である請求項1又は請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
ニッケル触媒が、ラネーニッケルである請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
【請求項5】
ニッケル触媒の量が、ビフェノール化合物1質量部に対して0.1質量部〜0.5質量部である請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
【請求項6】
前記ビフェノール化合物が、式(3)
(式中、R
1、R
2、mおよびnは前記と同じ意味を表わす。)
で表される
ビフェノール化合物である請求項1〜5のいずれかに記載の製造方法。
【請求項7】
ビフェノール化合物が、4,4’−ビフェノールである請求項1〜6のいずれかに記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒドロキシフェニルシクロヘキサノール化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒドロキシフェニルシクロヘキサノール化合物は各種医薬、工業薬品の原料として有用である。特許文献1には、4,4’−ビフェノールを、活性を変化させる処理を施したパラジウム炭素を触媒として用いて接触水素化することにより、4−(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサノールを製造する方法が記載されている。また、非特許文献1には、4,4’−ビフェノールから、大気圧下、温度90℃において、ニッケル−アルミニウム合金を用いて、1質量%の水酸化カリウム水溶液の存在下、4−(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサノールを製造する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−192349
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Tetrahedron Letters、41(2000)5865.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1および非特許文献1に記載される製造方法は工業的製法としては必ずしも満足のいく方法ではなく、ヒドロキシフェニルシクロヘキサノール化合物の新規な製造方法が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は以下の発明を含む。
[1] 式(1)
(式中、R
1およびR
2は、それぞれ独立して、炭素数1〜3のアルキル基を表わし、mおよびnは、それぞれ独立して、0〜2の整数を表わす。)
で表されるビフェノール化合物、第二級アルコール及びニッケル触媒を含む組成物を攪拌する工程を含む式(2)
(式中、R
1、R
2、mおよびnは前記と同じ意味を表わす。)
で表されるヒドロキシフェニルシクロヘキサノール化合物の製造方法。
ただし、前記第二級アルコールは、前記式(2)で表されるヒドロキシフェニルシクロヘキサノール化合物とは異なる構造を有する。
[2] 第二級アルコールの量が、ビフェノール化合物1質量部に対して2質量部〜5質量部である[1]に記載の製造方法。
[3] ニッケル触媒が、不均一系ニッケル触媒である[1]又は[2]に記載の製造方法。
[4] ニッケル触媒が、ラネーニッケルである[1]〜[3]のいずれかに記載の製造方法。
[5] ニッケル触媒の量が、ビフェノール化合物1質量部に対して0.1質量部〜0.5質量部である[1]〜[4]のいずれかに記載の製造方法。
[6] 前記ビフェノール化合物が、式(3)
(式中、R
1、R
2、mおよびnは前記と同じ意味を表わす。)
で表されるェノール化合物である[1]〜[5]のいずれかに記載の製造方法。
[7] ビフェノール化合物が、4,4’−ビフェノールである[1]〜[6]のいずれかに記載の製造方法。
[8] 式(1)
(式中、R
1およびR
2は、それぞれ独立して、炭素数1〜3のアルキル基を表わし、mおよびnは、それぞれ独立して、0〜2の整数を表わす。)
で表されるビフェノール化合物及びニッケル触媒を含む組成物を、水素加圧下で、100℃〜300℃に保温して攪拌する工程を含む式(2)
(式中、R
1、R
2、mおよびnは前記と同じ意味を表わす。)
で示されるヒドロキシフェニルシクロヘキサノール化合物の製造方法。
[9] 組成物が塩基を含まない[8]に記載の製造方法。
[10] 水素加圧下の水素圧力が、2kg/cm
2〜200kg/cm
2である[8]又は[9]に記載の製造方法。
[11] ニッケル触媒が、不均一系ニッケル触媒である[8]〜[10]のいずれかに記載の製造方法。
[12] ニッケル触媒が、ラネーニッケルである[8]〜[11]のいずれかに記載の製造方法。
[13] ニッケル触媒の量が、ビフェノール化合物1質量部に対して0.1質量部〜0.5質量部である[8]〜[12]のいずれかに記載の製造方法。
[14] 前記ビフェノール化合物が、式(3)
(式中、R
1、R
2、mおよびnは前記と同じ意味を表わす。)
で表されるビフェノール化合物である[8]〜[13]のいずれかに記載の製造方法。
[15] ビフェノール化合物が、4,4’−ビフェノールである[8]〜[14]のいずれかに記載の製造方法。
[16] 組成物が、さらに有機溶媒を含む[8]〜[15]のいずれかに記載の製造方法。
[17] 有機溶媒が、脂肪族一価アルコールである[16]に記載の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、新規なヒドロキシフェニルシクロヘキサノール化合物の製造方法を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、式(1)で表されるビフェノール化合物(以下、化合物(1)ということがある)、第二級アルコール及びニッケル触媒を含む組成物(以下、組成物(1)ということがある)を攪拌する工程を含む。
【0010】
R
1およびR
2は、それぞれ独立して、炭素数1〜3のアルキル基を表わす。炭素数1〜3のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基及びイソプロピル基が挙げられる。好ましくはメチル基である。
R
1およびR
2は共にメチル基であると好ましい。
mおよびnは、それぞれ独立して、0〜2の整数を表し、好ましくは0又は1であり、より好ましくは0である。
【0011】
化合物(1)は、好ましくは式(3)
(式中、R
1、R
2、mおよびnは前記と同じ意味を表わす。)
で表されるビフェノール化合物(以下、化合物(3)ということがある。)である。
【0012】
具体的な化合物(1)としては、4,4’−ビフェノール、2,2’−ジメチル−4,4’−ビフェノール、2,2’,6,6’−テトラメチル−4,4’−ビフェノール、2,2’−ジエチル−4,4’−ビフェノール、2,2’,6,6’−テトラエチル−4,4’−ビフェノール、2,2’−ジプロピル−4,4’−ビフェノール、2,2’,6,6’−テトラプロピル−4,4’−ビフェノール、2,2’−ジイソプロピル−4,4’−ビフェノール、2,2’,6,6’−テトライソプロピル−4,4’−ビフェノール;
【0013】
3,3’−ビフェノール、2,2’−ジメチル−3,3’−ビフェノール、4,4’−ジメチル−3,3’−ビフェノール、5,5’−ジメチル−3,3’−ビフェノール、6,6’−ジメチル−3,3’−ビフェノール、2,2’−ジエチル−3,3’−ビフェノール、4,4’−ジエチル−3,3’−ビフェノール、5,5’−ジエチル−3,3’−ビフェノール、6,6’−ジエチル−3,3’−ビフェノール、2,2’−ジプロピル−3,3’−ビフェノール、4,4’−ジプロピル−3,3’−ビフェノール、5,5’−ジプロピル−3,3’−ビフェノール、6,6’−ジプロピル−3,3’−ビフェノール、2,2’−ジイソプロピル−3,3’−ビフェノール、4,4’−ジイソプロピル−3,3’−ビフェノール、5,5’−ジイソプロピル−3,3’−ビフェノール、6,6’−ジイソプロピル−3,3’−ビフェノール、2,2’,4,4’−テトラメチル−3,3’−ビフェノール、2,2’,5,5’−テトラメチル−3,3’−ビフェノール、2,2’,6,6’−テトラメチル−3,3’−ビフェノール、2,2’,4,4’−テトラエチル−3,3’−ビフェノール、2,2’,5,5’−テトラエチル−3,3’−ビフェノール、2,2’,6,6’−テトラエチル−3,3’−ビフェノール、2,2’,4,4’−テトラプロピル−3,3’−ビフェノール、2,2’,5,5’−テトラプロピル−3,3’−ビフェノール、2,2’,6,6’−テトラプロピル−3,3’−ビフェノール、2,2’,4,4’−テトライソプロピル−3,3’−ビフェノール、2,2’,5,5’−テトライソプロピル−3,3’−ビフェノール、2,2’,6,6’−テトライソプロピル−3,3’−ビフェノール;
【0014】
2,2’−ビフェノール、3,3’−ジメチル−2,2’−ビフェノール、4,4’−ジメチル−2,2’−ビフェノール、5,5’−ジメチル−2,2’−ビフェノール、6,6’−ジメチル−2,2’−ビフェノール、3,3’−ジエチル−2,2’−ビフェノール、4,4’−ジエチル−2,2’−ビフェノール、5,5’−ジエチル−2,2’−ビフェノール、6,6’−ジエチル−2,2’−ビフェノール、3,3’−ジプロピル−2,2’−ビフェノール、4,4’−ジプロピル−2,2’−ビフェノール、5,5’−ジプロピル−2,2’−ビフェノール、6,6’−ジプロピル−2,2’−ビフェノール、3,3’−ジイソプロピル−2,2’−ビフェノール、4,4’−ジイソプロピル−2,2’−ビフェノール、5,5’−ジイソプロピル−2,2’−ビフェノール、6,6’−ジイソプロピル−2,2’−ビフェノール、3,3’,4,4’−テトラメチル−2,2’−ビフェノール、2,2’,5,5’−テトラメチル−2,2’−ビフェノール、3,3’,6,6’−テトラメチル−2,2’−ビフェノール、3,3’,4,4’−テトラエチル−2,2’−ビフェノール、3,3’,5,5’−テトラエチル−2,2’−ビフェノール、3,3’,6,6’−テトラエチル−2,2’−ビフェノール、3,3’,4,4’−テトラプロピル−2,2’−ビフェノール、3,3’,5,5’−テトラプロピル−2,2’−ビフェノール、3,3’,6,6’−テトラプロピル−2,2’−ビフェノール、3,3’,4,4’−テトライソプロピル−2,2’−ビフェノール、3,3’,5,5’−テトライソプロピル−2,2’−ビフェノール及び3,3’,6,6’−テトライソプロピル−2,2’−ビフェノールが挙げられる。
好ましくは、2,2’−ビフェノール、3,3’−ビフェノール、4,4’−ビフェノール、2,2’−ジメチル−4,4’−ビフェノール及び2,2’,6,6’−テトラメチル−4,4’−ビフェノールが挙げられる。
より好ましくは、4,4’−ビフェノールが挙げられる。
【0015】
これら化合物(1)は、市販品及び任意の公知の方法に準じて製造することにより入手できる。
【0016】
ニッケル触媒としては、ラネーニッケル、漆原ニッケル、ニッケル/珪藻土、ニッケル/アルミナ、ニッケル/シリカ、ビス(トリフェニルホスフィン)ニッケルジクロリドを挙げることができる。好ましくは、ラネーニッケル、漆原ニッケル、ニッケル/珪藻土、ニッケル/アルミナ、ニッケル/シリカ等の「不均一系ニッケル触媒」が挙げられる。より好ましくは、ラネーニッケルが挙げられる。
前記ニッケル触媒には、水素化用の汎用触媒として市販されているものを使用することができる。具体的には、Graceのラネー(登録商標)触媒、ニッケルスポンジ触媒を挙げることができる。また、ニッケル触媒に、助触媒としてニッケル以外の微量の他金属成分、例えば、Cu、Cr、Mo、Mg、Alが添加されたものでもよい。
ニッケル触媒は、単独でもよいし、複数種を組み合わせてもよい。
ニッケル触媒の量は、化合物(1)1質量部に対して、通常、0.001質量部〜20質量部の範囲であり、好ましくは、0.01質量部〜2.0質量部であり、より好ましくは、0.1質量部〜0.5質量部であり、さらに好ましくは0.1質量部〜0.3質量部である。
【0017】
本発明における第二級アルコールは、水素源として作用するものであり、式(2)で表されるヒドロキシフェニルシクロヘキサノール化合物(以下、化合物(2)ということがある)とは異なる構造を有するものであり、また、副生成物として生じ得るビシクロヘキサンジオールとも異なる構造を有するものである。第二級アルコールとしては、脂肪族一価アルコールが好ましく、具体的には、2−プロパノール、2−ブタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、2−ヘキサノール、3−ヘキサノール、シクロヘキサノール、2−ヘプタノール、3−ヘプタノール、2−オクタノール、4−デカノール、2−ドデカノール、3−メチル−2−ブタノール、3,3−ジメチル−2−ブタノール、3−メチル−2−ペンタノール、5−メチル−2−ヘキサノール及び4−メチル−3−ヘプタノールが挙げられる。より好ましくは、2−プロパノール、2−ブタノールが挙げられ、さらに好ましくは、2−プロパノールが挙げられる。
【0018】
第二級アルコールは、単独でもよいし、複数種を組み合わせてもよい。
第二級アルコール量は、化合物(1)1質量部に対して、通常、1質量部〜100質量部であり、好ましくは、1質量部〜50質量部であり、より好ましくは、2質量部〜5質量部であり、さらに好ましくは2質量部〜3質量部である。
【0019】
組成物(1)は、第二級アルコール以外の有機溶媒を含んでもよい。前記有機溶媒としては、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカンなどの飽和炭化水素溶媒、トルエン、エチルベンゼン、キシレン、メシチレン等の芳香族炭化水素溶媒;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、2−メチル−2−プロパノール、2−メチル−2−ブタノール、2,3−ジメチル−2−ブタノール、2−メチル−2−ペンタノール、3−メチル−3−ペンタノール、3−エチル−3−ペンタノール、2,3−ジメチル−3−ペンタノール、3−エチル−2,2−ジメチル−3−ペンタノール、2−メチル−2−ヘキサノール、3,7−ジメチル−3−オクタノール等のアルコール溶媒;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、アセトニトリル、ベンゾニトリル、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶媒;及びジエチルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン、アニソール等のエーテル溶媒が挙げられる。
【0020】
前記有機溶媒は、単独でもよいし、複数種を組み合わせてもよい。
前記有機溶媒量は、化合物(1)1質量部に対して、通常、0.01質量部〜100質量部であり、好ましくは、0.1質量部〜50質量部であり、より好ましくは、0.1質量部〜5質量部である。
【0021】
攪拌は通常、加熱して行われる。攪拌時の温度は、通常、100℃〜300℃の範囲であり、好ましくは、100℃〜200℃の範囲であり、より好ましくは、110℃〜140℃の範囲である。
【0022】
組成物(1)を攪拌すると、化合物(1)が反応して化合物(2)が生成する。反応の進行は、ガスクロマトグラフィー又は液体クロマトグラフィー等の分析手段により、化合物(1)の減少量、又は、化合物(2)の生成量を測定することによって確認することができる。反応に使用した化合物(1)の量に対する未反応の化合物(1)の量が、5質量%〜15質量%となった時点で攪拌を停止して反応を終了するのが好ましい。具体的には、例えば、反応前の組成物(1)中の化合物(1)のガスクロマトグラフィーの面積値に対する未反応の化合物(1)のガスクロマトグラフィーの面積値が5%〜15%となった時点で攪拌を停止して反応を終了する方法が挙げられる。
反応は、通常、不活性ガス雰囲気下で実施され、水素ガスの非存在下であると好ましい。不活性ガスとしては、窒素及びアルゴンが挙げられ、好ましくは窒素である。
反応時間は、通常、1時間〜150時間である。
反応容器としては、特に限定されないが、攪拌時の温度が、前記第二級アルコールまたは有機溶媒の沸点よりも高い場合など、反応容器内が著しく加圧となる反応条件においてはオートクレーブ等の耐圧容器を使用することが好ましい。
【0023】
反応終了後、例えば、反応混合物に有機溶媒を加えて化合物(2)を溶解させた後、不溶分を濾過により除去し、得られた濾液から有機溶媒を留去することにより、化合物(2)を得ることができる。
さらに、再結晶等の通常の精製手段により、精製してもよい。
【0024】
また、本発明は、化合物(1)及びニッケル触媒を含む組成物(以下、組成物(2)ということがある。)を、水素加圧下で、100℃〜300℃に保温して攪拌する工程を含む。
【0025】
R
1、R
2、m、n、化合物(1)、化合物(3)及びニッケル触媒としては、前記組成物(1)に含まれるものと同一のものが挙げられる。
【0026】
組成物(2)は、好ましくは、塩基を含まない。
【0027】
組成物(2)は、好ましくは有機溶媒を含む。有機溶媒としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、2−プロパノール、n−ブタノール、2−ブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、2−ヘキサノール、3−ヘキサノール、シクロヘキサノール、2−ヘプタノール、3−ヘプタノール、2−オクタノール、4−デカノール、2−ドデカノール、3−メチル−2−ブタノール、3,3−ジメチル−2−ブタノール、3−メチル−2−ペンタノール、5−メチル−2−ヘキサノール、4−メチル−3−ヘプタノール、2−メチル−2−プロパノール、2−メチル−2−ブタノール、2,3−ジメチル−2−ブタノール、2−メチル−2−ペンタノール、3−メチル−3−ペンタノール、3−エチル−3−ペンタノール、2,3−ジメチル−3−ペンタノール、3−エチル−2,2−ジメチル−3−ペンタノール、2−メチル−2−ヘキサノール、3,7−ジメチル−3−オクタノール等のアルコール溶媒;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、アセトニトリル、ベンゾニトリル、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶媒;ジエチルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン、アニソール等のエーテル溶媒;及びクロロホルム、ジクロロメタン、1,2−ジブロモエタン等のハロゲン化炭化水素溶媒が挙げられる。好ましくは、脂肪族一価アルコールが挙げられ、より好ましくは、2−プロパノール、2−ブタノールが挙げられる。
【0028】
前記有機溶媒は、単独でもよいし、複数種を組み合わせてもよい。
前記有機溶媒量は、化合物(1)1質量部に対して、通常、0.01質量部〜100質量部であり、好ましくは、0.1質量部〜50質量部であり、より好ましくは、0.1質量部〜5質量部である。
【0029】
攪拌は通常、加熱して行われる。攪拌時の温度は、通常、100℃〜300℃の範囲であり、好ましくは、100℃〜200℃の範囲であり、より好ましくは、120℃〜180℃の範囲である。
【0030】
水素加圧の圧力は、通常、2kg/cm
2〜200kg/cm
2の範囲であり、好ましくは、3kg/cm
2〜50kg/cm
2の範囲であり、より好ましくは、3kg/cm
2〜10kg/cm
2の範囲である。反応容器としては、オートクレーブ等の耐圧容器が挙げられる。
【0031】
組成物(2)を水素加圧下で、100℃〜300℃に保温して攪拌すると、化合物(1)が反応して化合物(2)が生成する。反応の進行は、前記組成物(1)と同様の方法で確認することができ、同様の反応が進行した時点で反応を終了するのが好ましい。また、反応の進行は、水素消費量でも確認できる。理論水素吸収量(化合物(1)の3倍モル)の0.9倍モル〜1.4倍モルの水素が消費された時点で反応を停止することが好ましい。反応時間は、通常、1時間〜150時間である。
反応容器としては、オートクレーブ等の耐圧容器が挙げられる。
【0032】
反応終了後、例えば、反応混合物に有機溶媒を加えて化合物(2)を溶解させた後、不溶分を濾過により除去し、得られた濾液から有機溶媒を留去することにより、化合物(2)を得ることができる。
さらに、再結晶等の通常の精製手段により、精製してもよい。
【実施例】
【0033】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。
【0034】
[実施例1]
式(2−1)
で示されるヒドロキシフェニルシクロヘキサノール(以下、化合物(2−1)と記すことがある。)の製造例
【0035】
内容積750mLのステンレス製オートクレーブの容器内に、4,4’−ビフェノール50.00g(268.51mmol)、ラネーニッケル触媒15.00g(日興リカ社製R−2311、水スラリーとして秤量)および2−プロパノール150.00gを約25℃の室温で加えた。得られた混合物を含む容器内を窒素ガスで十分に置換した後、120℃に昇温し、12時間保温攪拌した。その後、得られた混合物を室温まで冷却し、テトラヒドロフラン100.00gを加え、攪拌した後、濾過により固形分を除去した。得られた濾液をガスクロマトグラフィーにより分析し、目的生成物である化合物(2−1)の生成率を算出したところ、原料である4,4’−ビフェノールに対して79モル%であり、また、分離除去が困難な副生成物であるビシクロヘキサンジオールの生成率を算出したところ、原料である4,4’−ビフェノールに対して4.8モル%であった。
【0036】
[実施例2
(参考例)]
内容積100mLのステンレス製オートクレーブの容器内に、4,4’−ビフェノール5.00g(26.85mmol)、ラネーニッケル触媒0.65g(東京化成工業株式会社製、水スラリーとして秤量)および2−プロパノール15.00gを約25℃の室温で加えた。得られた混合物を含む容器内を水素ガスで十分に置換した後、140℃に昇温し、水素ガス圧力を7kg/cm
2に調整した。水素ガスを随時追加し、系内の水素ガス圧力が7kg/cm
2に保たれるように調節しながら、8時間保温攪拌した。その後、得られた混合物を室温まで冷却し、窒素ガスで置換した。次いで、窒素ガス置換された系内に、テトラヒドロフラン25.00gを加え、得られた混合物を攪拌した後、濾過により固形分を除去した。得られた濾液を液体クロマトグラフィー内部標準法(内部標準:安息香酸n−プロピル)により分析し、当該濾液中の化合物(2−1)の含有量を算出した。その結果、4,4’−ビフェノールを基準とする化合物(2−1)の収率は、98.4モル%であった。また、得られた濾液をガスクロマトグラフィーにより分析し、目的生成物である化合物(2−1)の生成率を算出したところ、原料である4,4’−ビフェノールに対して86モル%であり、また、分離除去が困難な副生成物であるビシクロヘキサンジオールの生成率を算出したところ、原料である4,4’−ビフェノールに対して7.7モル%であった。
【0037】
[実施例3
(参考例)]
内容積100mLのステンレス製オートクレーブの容器内に、4,4’−ビフェノール5.00g(26.85mmol)、ラネーニッケル触媒1.52g(東京化成工業株式会社製、水スラリーとして秤量)および2−プロパノール15.00gを約25℃の室温で加えた。得られた混合物を含む容器内を水素ガスで十分に置換した後、120℃に昇温し、水素ガス圧力を5kg/cm
2に調整した。水素ガスを随時追加し、系内の水素ガス圧力が5kg/cm
2に保たれるように調節しながら、8時間保温攪拌した。反応終了後、得られた混合物を室温まで冷却し、窒素ガスで置換した。次いで、窒素ガス置換された系内に、テトラヒドロフラン25.00gを加え、得られた混合物を攪拌した後、濾過により固形分を除去した。得られた濾液を実施例2と同様にして分析した。その結果、4,4’−ビフェノールを基準とする化合物(2−1)の収率は、98.2モル%であった。また、得られた濾液をガスクロマトグラフィーにより分析し、目的生成物である化合物(2−1)の生成率を算出したところ、原料である4,4’−ビフェノールに対して82モル%であり、また、分離除去が困難な副生成物であるビシクロヘキサンジオールの生成率を算出したところ、原料である4,4’−ビフェノールに対して4.1モル%であった。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明は、新規なヒドロキシフェニルシクロヘキサノール化合物の製造方法として有用である。