特許第6200715号(P6200715)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6200715エポキシ樹脂組成物、アンダーフィル剤、接着剤、および半導体装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6200715
(24)【登録日】2017年9月1日
(45)【発行日】2017年9月20日
(54)【発明の名称】エポキシ樹脂組成物、アンダーフィル剤、接着剤、および半導体装置
(51)【国際特許分類】
   C08G 59/50 20060101AFI20170911BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20170911BHJP
   C08K 3/00 20060101ALI20170911BHJP
   C08K 5/17 20060101ALI20170911BHJP
   H01L 23/29 20060101ALI20170911BHJP
   H01L 23/31 20060101ALI20170911BHJP
   C09J 163/00 20060101ALI20170911BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20170911BHJP
   H01L 33/56 20100101ALI20170911BHJP
【FI】
   C08G59/50
   C08L63/00 C
   C08K3/00
   C08K5/17
   H01L23/30 R
   C09J163/00
   C09J11/06
   H01L33/56
【請求項の数】8
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-153213(P2013-153213)
(22)【出願日】2013年7月24日
(65)【公開番号】特開2015-21122(P2015-21122A)
(43)【公開日】2015年2月2日
【審査請求日】2016年6月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】591252862
【氏名又は名称】ナミックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000752
【氏名又は名称】特許業務法人朝日特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100147810
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 浩
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 将宏
【審査官】 佐藤 のぞみ
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−001451(JP,A)
【文献】 特表2012−522113(JP,A)
【文献】 特表2011−528743(JP,A)
【文献】 特開2009−221464(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 59/00−59/72
C08L 63/00−63/10
C08K 3/00−13/08
C09J
H01L 23/28−23/30
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)液状エポキシ樹脂と、
(B)アミン硬化剤と、
(C)無機フィラーと、
(D)次式(1)の構造を有するアミンアルキレンオキサイド付加物と
【化1】
(式中、Rは水素原子またはアルキル基を、XおよびYはそれぞれ独立してオキシアルキレン基の平均付加モル数を示す)
を含み、
トリアザ環化合物を含まない
エポキシ樹脂組成物。
【請求項2】
前記(C)が、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸化マグネシウム、二酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸化亜鉛、および窒化ホウ素のうち少なくとも1つを含む
ことを特徴とする請求項に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項3】
前記エポキシ樹脂組成物の全重量に対し、前記(C)が40〜85質量%含まれる
ことを特徴とする請求項1または2に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項4】
熱伝導率が0.3W/m℃以上である
ことを特徴とする請求項1ないしのいずれか一項に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項5】
前記(A)のエポキシ基1当量に対し前記(B)が0.7〜1.5当量含まれる
ことを特徴とする請求項1ないしのいずれか一項に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1ないしのいずれか一項に記載のエポキシ樹脂組成物を含むアンダーフィル剤。
【請求項7】
請求項1ないしのいずれか一項に記載のエポキシ樹脂組成物を含む接着剤。
【請求項8】
請求項に記載のアンダーフィル剤を用いて封止された半導体素子および請求項に記載の接着剤を用いて接着された半導体素子の少なくとも一方を有する半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エポキシ樹脂組成物、アンダーフィル剤、接着剤、および半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体素子を基板(またはパッケージ)に実装する手法の一つにフリップチップ実装がある。フリップチップ実装は、半導体素子と基板とをバンプを用いて電気的に接続する技術である。バンプの周辺を補強するため、半導体素子と基板の間には樹脂組成物(いわゆるアンダーフィル剤)が充填される(例えば特許文献1および2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−236355号公報
【特許文献2】特開2012−12431号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、半導体素子の高集積化の手法の一つとして、半導体のチップを積層するいわゆる3次元実装が開発されている。チップが積層されると放熱されにくくなるため熱設計が大きな問題となる。熱設計を容易にするためには、アンダーフィル剤の熱伝導率は高い方が好ましい。高熱伝導率を達成するにはフィラーを高充填する必要があるが、フィラーを高充填すると粘度が上がり、アンダーフィル剤の注入性が低下するという問題があった。
【0005】
本発明は上述の課題に鑑みてなされたものであり、高い熱伝導率を有するエポキシ樹脂組成物、アンダーフィル剤、接着剤、およびこのエポキシ樹脂組成物を用いた半導体装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、(A)液状エポキシ樹脂と、(B)アミン硬化剤と、(C)無機フィラーと、(D)アミンアルキレンオキサイド付加物とを含むエポキシ樹脂組成物を提供する。
【0007】
好ましい態様において、前記(D)が、次式(1)の構造を有する。
【化1】
(式中、Rは水素原子またはアルキル基を、XおよびYはそれぞれ独立してオキシアルキレン基の平均付加モル数を示す)
【0008】
別の好ましい態様において、前記(C)が、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸化マグネシウム、二酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸化亜鉛、および窒化ホウ素のうち少なくとも1つを含む。
【0009】
さらに別の好ましい態様において、前記エポキシ樹脂組成物の全重量に対し、前記(C)が40〜85質量%含まれる。
【0010】
さらに別の好ましい態様において、このエポキシ樹脂組成物においては、熱伝導率が0.3W/m℃以上である。
【0011】
さらに別の好ましい態様において、前記(A)のエポキシ基1当量に対し前記(B)が0.7〜1.5当量含まれる。
【0012】
また、本発明は、上記のエポキシ樹脂組成物を含むアンダーフィル剤を提供する。
【0013】
さらに、本発明は、上記のエポキシ樹脂組成物を含む接着剤を提供する。
【0014】
さらに、本発明は、上記のアンダーフィル剤を用いて封止された半導体素子および上記の接着剤を用いて接着された半導体素子の少なくとも一方を有する半導体装置を提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、高い熱伝導率を有するエポキシ樹脂組成物、アンダーフィル剤、接着剤、およびこのエポキシ樹脂組成物を用いた半導体装置が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、(A)液状エポキシ樹脂、(B)アミン硬化剤、(C)無機フィラー、および(D)アミンアルキレンオキサイド付加物とを含む。
【0017】
(A)成分としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、シロキサン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、ヒダントイン型エポキシ樹脂、およびナフタレン環含有エポキシ樹脂が挙げられる。エポキシ樹脂組成物において、ここで例示した化合物は単独で用いられてもよいし、2つ以上のものが混合して用いられてもよい。(A)成分は、エポキシ樹脂組成物の全重量に対し5〜30質量%含まれることが好ましく、12〜26質量%含まれることがさらに好ましい。
【0018】
(B)成分としては、例えば、鎖状脂肪族アミン、環状脂肪族アミン、脂肪芳香族アミン、芳香族アミンが挙げられる。エポキシ樹脂組成物において、ここで例示した化合物は単独で用いられてもよいし、2つ以上のものが混合して用いられてもよい。(B)成分は、そのアミノ基が(A)成分のエポキシ基1当量に対し0.7〜1.5当量の割合で含まれることが好ましく、0.8〜1.2当量の割合で含まれることがさらに好ましい。この範囲外であると、液状封止材の半導体素子に対する接着強度の低下やガラス転移点の低下などの問題が起きることがある。
【0019】
(C)成分としては、例えば、シリカ(二酸化ケイ素)、アルミナ(酸化アルミニウム)、窒化アルミニウム、酸化マグネシウム、窒化ケイ素、酸化亜鉛、窒化ホウ素が挙げられる。このうち、シリカ、アルミナ、窒化アルミニウムが好ましい。エポキシ樹脂組成物において、ここで例示した化合物は単独で用いられてもよいし、2つ以上のものが混合して用いられてもよい。(C)成分は、エポキシ樹脂組成物の全重量に対し40〜85質量%含まれることが好ましく、60〜80質量%含まれることがさらに好ましい。一般に、(C)成分の含有量を増やすと熱伝導率は上がるが、粘度が高くなり注入性が悪化してしまう。(C)成分の材料および含有量は、所望の熱伝導率(例えば0.3W/m℃以上、好ましくは1.0W/m℃以上、さらに好ましくは1.5W/℃以上)が得られるように調整される。
【0020】
(D)成分としては、例えば、次式(1)で示されるアミンアルキレンオキサイド付加物が挙げられる。なお、式中、Rは水素原子またはアルキル基を、XおよびYはそれぞれ独立してオキシアルキレン基の平均付加モル数を示す。エポキシ樹脂組成物において、ここで例示した化合物は単独で用いられてもよいし、2つ以上のものが混合して用いられてもよい。(D)成分は、エポキシ樹脂組成物の全重量に対し0.01質量%以上含まれることが好ましい。
【化2】
【0021】
エポキシ樹脂組成物は、上記の(A)、(B)、(C)、および(D)成分に加えて、カップリング剤、イオントラップ、顔料、消泡剤等の添加剤を含んでもよい。カップリング剤としては、例えば、シランカップリング剤が挙げられる。
【0022】
エポキシ樹脂組成物は、例えば、原料を、所定の配合で、ライカイ機、ポットミル、三本ロールミル、回転式混合機、二軸ミキサー等の混合機に投入し、混合することにより製造される。なお、エポキシ樹脂組成物は、これ以外の方法により製造されてもよい。
【0023】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、高熱伝導率とするためフィラーの含有量を増やしても、粘度を低く、注入性を良好にすることができる。本発明のエポキシ樹脂組成物は、半導体素子等の電子デバイスをフリップチップ実装する際のアンダーフィル剤、または電子デバイスを基板やパッケージに接着する際の接着剤として用いる用途に適している。
【実施例】
【0024】
(1)エポキシ樹脂組成物の調整
表1〜5は、実施例1〜21および比較例1〜12のエポキシ樹脂組成物の組成、および後述する評価の結果を示す。表1および表2において、エポキシ樹脂組成物の組成は質量部で表されている。(A)成分としては、エポキシ樹脂a1〜a5のうち少なくとも1つが用いられた。エポキシ樹脂a1としては、株式会社アデカ製のEP−4085Sが用いられた。エポキシ樹脂a2としては、三菱化学株式会社製のjer630が用いられた。エポキシ樹脂a3としては、新日鐵住金化学株式会社製のYDF8170が用いられた。エポキシ樹脂a4としては、大日本インキ化学工業株式会社製のHP−4032Dが用いられた。エポキシ樹脂a5としては、大日本インキ化学工業株式会社製の850CRPが用いられた。
【0025】
(B)成分としては、アミン硬化剤b1〜b3のうち少なくとも1つが用いられた。アミン硬化剤b1としては、株式会社アデカ製のEH105Lが用いられた。アミン硬化剤b2としては、日本化薬株式会社製のカヤハードAAが用いられた。アミン硬化剤b3としては、アルベマール(Albermarle)社製のETHACURE100が用いられた。
【0026】
(C)成分としては、アルミナフィラーまたはシリカフィラーが用いられた。アルミナフィラーとしては、フィラーc1が用いられた。フィラーc1としては、株式会社アドマテックス製のAE2000SXMが用いられた。シリカフィラーとしては、フィラーc2が用いられた。フィラーc2としては、株式会社アドマテックス製のSE5050−SEJが用いられた。
【0027】
(D)成分としては、アミンアルキレンオキサイド付加物d1〜d5が用いられた。アミンアルキレンオキサイド付加物d1としては、ライオン・アクゾ株式会社製のエソミンC/12が用いられた。アミンアルキレンオキサイド付加物d2としては、ライオン・アクゾ株式会社製のエソミンT/12が用いられた。アミンアルキレンオキサイド付加物d3としては、ライオン・アクゾ株式会社製のエソミンO/12が用いられた。アミンアルキレンオキサイド付加物d4としては、ライオン・アクゾ株式会社製のエソミンO/17が用いられた。アミンアルキレンオキサイド付加物d5としては、ライオン・アクゾ株式会社製のエソミンO/20が用いられた。
【0028】
添加剤eとしては、シランカップリング剤として信越化学工業株式会社製のKBM403が用いられた。
【0029】
(2)粘度の評価
実施例1〜15および比較例1〜10に対し、粘度の評価を行った。粘度の評価には、HAAKE社製の粘度・粘弾性測定装置HAAKE MARSIIIを用いた。評価の方法は以下のとおりである。25℃のステージ上にエポキシ樹脂組成物を0.2mL滴下し、20mmφのプレートでギャップが0.5mmになるようにエポキシ樹脂組成物を挟み込んだ。この条件で、20sec-1における粘度を測定値として読み取った。
【0030】
(3)注入性の評価
実施例1〜5および比較例1に対し、注入性の評価を行った。注入性は、20μmおよび50μmのギャップ(間隙)にエポキシ樹脂組成物を注入し、注入されたエポキシ樹脂組成物が入口から20mmの位置に到達するまでの時間により評価した。到達までの時間が短いほど注入性が良いことを示している。なお、注入性の欄に「−」と記載されているのは、エポキシ樹脂組成物が20mmの位置まで到達しなかったことを意味する。
【0031】
(4)評価結果
【表1】
【表2】
【表3】
【表4】
【表5】
【0032】
表1は、(C)成分としてアルミナフィラーを用いた場合における、(D)成分の効果を示している。フィラーを77質量%以上含むエポキシ樹脂組成物においては、(D)成分を含まない比較例1は粘度が高く注入性も悪かったが、アミンアルキレンオキサイド付加物d1〜d5のいずれかを含む実施例1〜5はいずれも粘度および注入性が改善した。
【0033】
表2および表3は、(C)成分としてアルミナフィラーを用いた場合において、種々のフィラー含有量における(D)成分の効果を示している。これらの例においては、いずれも、(D)成分添加により粘度が低くなっており、注入性は改善しているといえる。
【0034】
表4は、(C)成分としてシリカフィラーを用いた場合において、種々のフィラー含有量における(D)成分の効果を示している。これらの例においては、いずれも、(D)成分添加により粘度が低くなっており、注入性は改善しているといえる。
【0035】
表5は、種々の(D)成分含有量における注入性改善効果を示している。ここでは、(D)成分としてエソミンT/12を用いた。(D)成分含有量は、0.01質量%から0.75質量%まで変化しているが、いずれの場合も、(D)成分を添加しない場合(比較例12)と比較して粘度が低くなっており、注入性は改善しているといえる。