特許第6200732号(P6200732)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6200732樹脂組成物、先供給型半導体封止剤および半導体装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6200732
(24)【登録日】2017年9月1日
(45)【発行日】2017年9月20日
(54)【発明の名称】樹脂組成物、先供給型半導体封止剤および半導体装置
(51)【国際特許分類】
   C08F 2/44 20060101AFI20170911BHJP
   C08F 279/02 20060101ALI20170911BHJP
   C09K 3/10 20060101ALI20170911BHJP
   H01L 21/60 20060101ALI20170911BHJP
   H01L 23/29 20060101ALI20170911BHJP
   H01L 23/31 20060101ALI20170911BHJP
【FI】
   C08F2/44 Z
   C08F279/02
   C09K3/10 E
   C09K3/10 Z
   C09K3/10 Q
   H01L21/60 311S
   H01L23/30 R
【請求項の数】7
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-184289(P2013-184289)
(22)【出願日】2013年9月5日
(65)【公開番号】特開2015-52035(P2015-52035A)
(43)【公開日】2015年3月19日
【審査請求日】2016年8月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】591252862
【氏名又は名称】ナミックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000752
【氏名又は名称】特許業務法人朝日特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100147810
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 浩
(72)【発明者】
【氏名】発地 豊和
(72)【発明者】
【氏名】酒井 洋介
(72)【発明者】
【氏名】宗村 真一
【審査官】 藤代 亮
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−199097(JP,A)
【文献】 特開2012−188622(JP,A)
【文献】 特開2012−236873(JP,A)
【文献】 特開2010−261026(JP,A)
【文献】 特開2002−363218(JP,A)
【文献】 特開2006−193660(JP,A)
【文献】 特開2000−063453(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/049138(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0205043(US,A1)
【文献】 特開2015−017169(JP,A)
【文献】 特開2015−002204(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
・IPC
C08F 2/44
C08F 279/02
C09K 3/10
H01L 21/60
H01L 23/29
H01L 23/31
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)式(1)の化合物(ただし、m+n=2.3〜4.0であり、R1およびR2はそれぞれ水素原子またはメチル基である)と、
【化1】
(B)式(2)の化合物と、
【化2】
(C)式(3)の化合物(R3、R4、およびR5はそれぞれ水素原子またはメチル基である)と、
【化3】
(D)有機過酸化物と、
(E)ブタジエンと無水マレイン酸の共重合体と、
(F)ビスマレイミドと、
(G)シリカフィラーと
を含む樹脂組成物。
【請求項2】
(H)式(4)の化合物を含む
【化4】
ことを特徴とする請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記(D)が、式(5)の化合物である
【化5】
ことを特徴とする請求項1または2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記(D)が、式()の化合物である
【化6】
ことを特徴とする請求項1または2に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
(I)式(7)および(8)の少なくとも一方を含むシランカップリング剤を含む
【化7】
【化8】
ことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか一項に記載の樹脂組成物を含む先供給型半導体封止剤。
【請求項7】
請求項6に記載の先供給型半導体封止剤を用いて封止された半導体素子を有する半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物、先供給型半導体封止剤および半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体チップ(半導体素子)を基板(またはパッケージ)に実装する手法の一つにフリップチップ実装がある。フリップチップ実装は、半導体チップと基板とをバンプ(はんだボール)を用いて電気的に接続する技術である。バンプの周辺を補強するため、半導体チップと基板の間には樹脂組成物(いわゆるアンダーフィル剤)が充填される。フリップチップ実装においては、従来、半導体チップと基板とを接続した後、半導体チップと基板との間隙(ギャップ)に樹脂組成物を充填させるプロセス(以下「後供給型」プロセスという)が広く用いられている。
【0003】
製品の小型化や高信頼性化の要求から、ギャップをより狭くすることが求められている。このため、狭ギャップ化を実現するため、銅ピラーを用いたフリップチップ実装が開発されている。しかし、後供給型プロセスでは狭ギャップ化への対応に問題があった。これに対し、近年、基板上に樹脂組成物を塗布し、その上から半導体チップを載せ、その後、樹脂組成物の硬化および半導体チップと基板との接続を行うプロセス(以下「先供給型」プロセスという)が開発されている。先供給型プロセス用の樹脂組成物には、狭いギャップへの対応から低粘性であること、フラックス無しで接合できること等、後供給型プロセス用の樹脂組成物とは異なる特性が求められる。先供給型プロセス用の樹脂組成物として、例えば特許文献1に記載のエポキシ樹脂組成物が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−71941号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
エポキシ樹脂組成物は熱膨張係数が相対的に大きいため、接合部に悪影響を与える場合があった。これに対し本発明は、先供給型プロセス用の非エポキシ系樹脂組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、(A)式(1)の化合物(ただし、m+n=2.3〜4.0であり、R1およびR2はそれぞれ水素原子またはメチル基である)と、(B)式(2)の化合物と、(C)式(3)の化合物(R3、R4、およびR5はそれぞれ水素原子またはメチル基である)と、(D)有機過酸化物と、(E)ブタジエンと無水マレイン酸の共重合体と、(F)ビスマレイミドと、(G)シリカフィラーとを含む樹脂組成物を提供する。
【化1】
【化2】
【化3】
【0007】
この樹脂組成物は、(H)式(4)の化合物を含んでもよい。
【化4】
【0008】
前記(D)が、式(5)の化合物であってもよい。
【化5】
【0009】
前記(D)が、式()の化合物であってもよい。
【化6】
【0010】
この樹脂組成物は、(I)式(7)および(8)の少なくとも一方を含むシランカップリング剤を含んでもよい。
【化7】
【化8】
【0011】
また、本発明は、上記いずれかの樹脂組成物を含む先供給型半導体封止剤を提供する。
【0012】
さらに、本発明は、上記の先供給型半導体封止剤を用いて封止された半導体素子を有する半導体装置を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、非エポキシ系樹脂組成物を用いて半導体素子を封止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】半導体装置を例示する図。
図2】実装試験に用いた基板および半導体チップの概形を例示する図。
図3】実装の温度プロファイルを例示する図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の樹脂組成物は、(A)EO変性ビスフェノールAジメタクリレート(2.2 Bis〔4-(Methacryloxy Ethoxy)Phenyl〕Propane)と、(B)トリシクロデカンジメタノールジアクリレート(Tricylodecane dimethanol Diacrylate)と、(C)トリメチロールプロパントリアクリレート(Trimethylol Propane Triacrylate)と、(D)有機過酸化物と、(E)ブタジエンと無水マレイン酸共重合体と、(F)ビスマレイミドと、(G)シリカフィラーとを含む。
(A)成分としては、式(1)の化合物が用いられる。なお、「EO変性」とはエチレンオキシドユニット(−CH2−CH2−O−)のブロック構造を有することを意味する。ここで、R1およびR2それぞれ水素原子(H)またはメチル基(CH3)である。また、m+n=2.3〜4.0であることが好ましい。(A)成分は、樹脂組成物の全質量に対し5〜13質量%含まれることが好ましい。
【化9】
【0016】
(B)成分としては、式(2)の化合物が用いられる。(B)成分は、樹脂組成物の全質量に対し10〜20質量%含まれることが好ましい。
【化10】
【0017】
(C)成分としては、式(3)の化合物が用いられる。(C)成分は、樹脂組成物の全質量に対し0.1〜2質量%含まれることが好ましい。
【化11】
【0018】
(D)成分としては、例えば、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン(式(5))または2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン(式(6))が用いられる。(D)成分は、樹脂組成物の全質量に対し0.1〜0.6質量%含まれることが好ましい。
【化12】
【化13】
【0019】
(E)成分は、樹脂組成物の全質量に対し1.5〜11質量%含まれることが好ましい。
(F)成分は、樹脂組成物の全質量に対し1.0〜10質量%含まれることが好ましい。
(G)成分は、樹脂組成物の全質量に対し50〜65質量%含まれることが好ましい。
【0020】
樹脂組成物は、上記の(A)、(B)、(C)、(D)、(E)、(F)、および(G)成分に加えて、(H)アダマンタン型アクリレートおよび(I)シランカップリング剤の少なくとも一方を含んでもよい。
【0021】
(H)成分としては、例えば、式(4)の化合物が用いられる。(H)成分は、樹脂組成物の全質量に対し3.0〜15質量%含まれることが好ましい。
【化14】
【0022】
(I)成分としては、式(7)および(8)の少なくとも一方が用いられる。
【化15】
【化16】
【0023】
この樹脂組成物は、例えば、原料を、所定の配合で、ライカイ機、ポットミル、三本ロールミル、回転式混合機、二軸ミキサー等の混合機に投入し、混合することにより製造される。なお、樹脂組成物は、これ以外の方法により製造されてもよい。
【0024】
この樹脂組成物は、例えば、半導体素子等の電子デバイスの封止、特に、いわゆる先供給型(pre-applied)プロセスにおける電子デバイスの封止に用いられる。先供給型プロセスとは、まず、基板に封止剤を塗布し、その上に半導体素子を載せた後、封止剤の硬化と、半導体素子と基板の接続とを行うプロセスをいう。
【0025】
図1は、本実施形態に係る樹脂組成物を用いて封止された半導体素子を有する半導体装置10を例示する図である。半導体装置10は、半導体チップ1と、基板2とを有する。半導体チップ1および基板2には、それぞれ、銅ピラー3が設けられている。半導体チップ1の銅ピラー3および基板2の銅ピラー3の間には、バンプ(はんだボール)4が設けられている。まず基板2上に、樹脂組成物5が例えばディスペンサーを用いて塗布される。例えばフリップチップボンダーを用いて、半導体チップ1と基板2とが位置合わせさせる。その後、バンプ4の融点以上の温度に加熱しつつ、所定の荷重で半導体チップ1を基板2に押し付ける。こうして、半導体チップ1と基板2とを接続するとともに、軟化した樹脂組成物によりギャップが充填される。なお、図1の構成はあくまで一例であり、本実施形態に係る半導体装置の構成はこれに限定されるものではない。
【実施例】
【0026】
(1)樹脂組成物の調整
表1〜2は、実施例1〜13および比較例1〜3の樹脂組成物の組成、および後述する評価の結果を示す。表1〜2において、樹脂組成物の組成は質量部で表されている。また、評価結果は、(不良品数)/(試料数)で表わされている。
【0027】
(A)成分としては、m+nの値が異なるものが用いられた。具体的には、(A)成分として、新中村化学工業株式会社製のBPE−80N(m+n=2.3)、BPE−100(m+n=2.6)、BPE−200(m+n=4.0)、およびBPE−500(m+n=10)が用いられた。
【0028】
(B)成分としては、共栄社化学株式会社製のDCP−Aが用いられた。(C)成分としては、共栄社化学株式会社製のTMP−Aが用いられた。(D)成分としては、化合物d1またはd2が用いられた。化合物d1としては、日油株式会社製のバーヘキサ25Bが用いられた。化合物d2としては、日油株式会社製のバーヘキシン25Bが用いられた。(E)成分としては、Cray Valley社製のRicon130MA8が用いられた。(F)成分としては、Designer Molecules Inc.製のBMI−1500が用いられた。(G)成分としては、アドマテックス株式会社製のSOE2が用いられた。(I)成分としては、化合物i1およびi2が用いられた。化合物i1としては、信越化学工業株式会社製のKBM403が用いられた。化合物i2としては、信越化学工業株式会社製のKBM503が用いられた。
【0029】
(2)実装試験
実施例1〜23および比較例1〜10に対し、実装試験を行った。試験に用いた試料は、所定の形状の半導体チップを所定の形状の基板に実装することにより作製した。図2は、試料の作成に用いた基板および半導体チップの概形を示している。実装には、パナソニックファクトリーソリューションズ株式会社製のフリップチップボンダーFCB3を用いた。実装の条件は以下のとおりである。ステージ温度70℃、125℃で30分で基板ベーク、半導体チップを基板に載せた後、図3の温度プロファイルに従って樹脂組成物の硬化および半導体チップと基板の接合を行った。荷重は15Nであった。接合後、後硬化として、165℃で60分熱処理した。
【0030】
上記のように作製した試料について、超音波画像観察、顕微鏡観察(外周部および開口部)、および抵抗値測定により評価した。超音波画像観察は、超音波映像装置(Scanning Acoustic Tomography、SAT)により得られた画像を用いて行った。7つの試料を観察し、半導体チップの下に樹脂組成物が全面に充填されているか、およびボイドが発生しているか、という点を確認した。樹脂組成物が全面に充填されていないもの、およびボイドが確認されたものを不良品と判断した。顕微鏡観察としては、まず7つの試料について、半導体チップ外周部のフィレットを顕微鏡で観察した。フィレットにクラックが確認されたものを不良品と判断した。次に、2つの試料について、半導体チップ部分を研磨により除去した後で、開口部を顕微鏡で観察した。開口部にボイドが確認されたものを不良品と判断した。抵抗値測定については、試料の抵抗値測定パッドを用いて抵抗値を測定した。7つの試料を測定し、28〜32Ωの抵抗値を示したものを良品と判断し、この範囲外の抵抗値を示したものを不良品と判断した。
【0031】
(3)ヒートショック試験
実施例1〜23および比較例1〜10に対し、ヒートショック試験を行った。実装性の評価に用いた試料のうち5つ(半導体チップを研磨していないもの)の試料を、液槽ヒートサイクル試験機に投入した。液槽ヒートサイクル試験機においては、最低温度−55℃、最高温度125℃(各5分)のヒートサイクルが繰り返された。ヒートサイクル数が100回、250回、500回、750回、および1000回となったところで試料を液槽ヒートサイクル試験機から取り出し、超音波画像観察、顕微鏡観察(外周部)、および抵抗値測定により評価した。超音波画像観察においては、デラミネーション(樹脂組成物の剥がれ)が起きていたものを不良品と判断した。外周部の顕微鏡観察においては、フィレットにクラックが確認されたものを不良品と判断した。抵抗値測定においては、実装性の評価における抵抗値測定と同様、28〜32Ωの抵抗値を示したものを良品と判断し、この範囲外の抵抗値を示したものを不良品と判断した。
【0032】
(4)評価結果
【表1】
【0033】
実施例1〜3および比較例1は、(A)成分においてm+nの値を異ならせた場合の評価結果を示している。m+n=10の(A)成分を用いた試料(比較例1)では、実装試験の超音波画像観察において不良品が発生したが、それ以外の試料(m+n=2.3〜4.0のもの)においては、不良品は発生せず、良好な特性を示した。
【0034】
実施例2、および4〜5並びに比較例2は、(F)成分の含有量を異ならせた場合の評価結果を示している。(F)成分を含有しない試料(比較例2)では、ヒートショック試験の外周部観察において不良品が発生したが、(F)成分を含有する試料(実施例2、4〜5)については、不良品は発生せず、良好な特性を示した。
【0035】
【表2】
【0036】
実施例2、および6〜7並びに比較例3は、(C)成分の含有量を異ならせた場合の評価結果を示している。(C)成分を含有しない試料(比較例3)では、実装試験の研磨面顕微鏡観察において不良品が発生したが、(C)成分を含有する試料(実施例2、6〜7)については、不良品は発生せず、良好な特性を示した。
【0037】
実施例2、および8〜9は、(A)成分と(H)成分との割合を異ならせた場合の評価結果を示している。(A)成分と(H)成分が合計で所定量含まれていれば、これら2成分の割合によらず、いずれも良好な特性を示した。
【0038】
実施例1、および10〜12は、(I)成分を異ならせた場合の評価結果を示している。実施例1は(I)成分として化合物i1およびi2を両方用いた例を、実施例10は化合物1のみ用いた例を、実施例11は化合物2のみ用いた例を、実施例12は(I)成分を含有しない例を、それぞれ示している。これらの例はいずれも良好な特性を示した。
【0039】
実施例3および13は、(D)成分を異ならせた場合の評価結果を示している。実施例3は(D)成分として化合物d1を用いた例を、実施例13は化合物d3を用いた例を、それぞれ示している。これらの例はいずれも良好な特性を示した。
【符号の説明】
【0040】
1…半導体チップ、2…基板、3…銅ピラー、4…バンプ、5…樹脂組成物
図1
図2
図3