特許第6200735号(P6200735)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6200735
(24)【登録日】2017年9月1日
(45)【発行日】2017年9月20日
(54)【発明の名称】ダイボンダ及びボンディング方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/52 20060101AFI20170911BHJP
【FI】
   H01L21/52 C
   H01L21/52 F
【請求項の数】19
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-186362(P2013-186362)
(22)【出願日】2013年9月9日
(65)【公開番号】特開2015-53441(P2015-53441A)
(43)【公開日】2015年3月19日
【審査請求日】2016年8月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】515085901
【氏名又は名称】ファスフォードテクノロジ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】谷 由貴夫
【審査官】 工藤 一光
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−212509(JP,A)
【文献】 特開2009−246285(JP,A)
【文献】 特開2007−165351(JP,A)
【文献】 特開2007−149832(JP,A)
【文献】 特開2005−11836(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L21/52
H01L21/58
H01L21/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウェハを保持しダイを供給するダイ供給部と、
前記ダイの一辺又は前記ダイの1つの角の所定側から相対向側に向う線に沿って前記ダイを徐々に剥離するピール剥離手段を有する中間ステージと、
前記ウェハから前記ダイをピックアップし、前記中間ステージに前記ダイを載置するピックアップヘッドと、
前記中間ステージから前記ダイをピックアップし、ワークの上に又は既にボンディングされたダイの上に前記ダイをボンディングするボンディングヘッドと、
を有することを特徴とするダイボンダ。
【請求項2】
請求項1に記載のダイボンダにおいて、
前記ピール剥離手段は、前記ダイを徐々に剥離し易くする剥離形成起辺又は剥離形成起点を形成する手段を有する、
ことを特徴とするダイボンダ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のダイボンダにおいて、
前記中間ステージは、前記ダイを載置するステージと、前記中間ステージを前記ダイボンダの構造部に固定する固定部とを有し、前記ピール剥離手段は前記ステージと前記固定部との間に設けられた、
ことを特徴とするダイボンダ。
【請求項4】
請求項3に記載のダイボンダにおいて、
前記ピール剥離手段は、上下に2平面を備え、一方の平面が前記ステージに接し、他方の平面が前記固定部に直接又は間接的に接し、前記ステージを前記所定側から前記相対向側に向かって傾斜させる、
ことを特徴とするダイボンダ。
【請求項5】
請求項3に記載のダイボンダにおいて、
前記ピール剥離手段は、上下に2平面を備えるコの字状の平板バネで構成され、一方の平面の前記向う線の方向の長さは、前記他方の平面の前記向う線の方向の長さより長い、
ことを特徴とするダイボンダ。
【請求項6】
請求項3に記載のダイボンダにおいて、
前記ピール剥離手段は、前記向う線の方向の両端側にバネ定数の異なる圧縮バネを、または弾性係数の異なる弾性体を設けた、
ことを特徴とするダイボンダ。
【請求項7】
請求項3に記載のダイボンダにおいて、
前記ピール剥離手段は、上下方向に弾性係数の異なる少なくとも2種類の弾性体を平板となるように組み合わせた弾性体構造体であり、前記弾性体構造体の前記弾性係数は、前記所定側から前記相対向側に前記向う線に沿って徐々に低くなる、
ことを特徴とするダイボンダ。
【請求項8】
請求項3乃至7のいずれかに記載のダイボンダにおいて
前記中間ステージは、前記ダイと前記ステージとの間に剥離エアを供給する第1の剥離エア供給手段を有する、
ことを特徴とするダイボンダ。
【請求項9】
請求項3乃至8のいずれかに記載のダイボンダにおいて
前記中間ステージは、前記ステージと前記ピール剥離手段を一体にして支持する支持部と、
前記固定部に固定され、前記支持部を前記ステージに直交する回転軸を駆動する第1の駆動手段と、を有する、
ことを特徴とするダイボンダ。
【請求項10】
請求項2に記載のダイボンダにおいて、
前記ピール剥離手段は、前記所定側に前記ステージ側から剥離エアを供給し、前記剥離形成起辺又は前記剥離形成起点を形成する第2の剥離エア供給手段を有する、
ことを特徴とするダイボンダ。
【請求項11】
請求項10に記載のダイボンダにおいて、
前記ステージは、前記固定部に支持され、前記ステージに直交する回転軸を駆動する第2の駆動手段と、を有する、
ことを特徴とするダイボンダ。
【請求項12】
ウェハを保持しダイを供給するダイ供給部からダイをピックアップし、中間ステージの有するステージに載置する第1のピックアップステップと、
前記ダイの一辺又は1つの角の所定側から相対向側に向う線に沿って前記ダイを徐々に剥離するピール剥離して前記ダイを前記ステージからピックアップする第2のピックアップステップと、
前記ダイをワークの上に又は既にボンディングしたダイの上にボンディングするボンディングステップと、
を有することを特徴とするボンディング方法。
【請求項13】
請求項12に記載のボンディング方法において、
前記ピール剥離は、前記ダイを吸着保持後下降させて前記ステージに押付け、前記相対側から前記所定側に向かって前記ステージを傾斜させ、その後前記ダイを上昇させて行う、
ことを特徴とするボンディング方法。
【請求項14】
請求項13に記載のボンディング方法において、
前記ピール剥離は、前記傾斜によって、その後の剥離をし易くする剥離形成起辺又は剥離形成起点を形成して行われる、
ことを特徴とするボンディング方法。
【請求項15】
請求項13に記載のボンディング方法において、
前記傾斜は、前記ダイの前記ステージへの載置面にと反対側の面に設けられたバネのバネ定数又は弾性体の弾性係数の前記相対側と前記所定側との違いによって発生させる、
ことを特徴とするボンディング方法。
【請求項16】
請求項13乃至15のいずれかに記載のボンディング方法において、
前記ピール剥離は、前記ダイを吸着保持後、前記ダイへ前記ステージ側から剥離エアを供給して行われる、
ことを特徴とするボンディング方法。
【請求項17】
請求項12に記載のボンディング方法において、
前記ピール剥離は、前記ダイを吸着保持後、剥離エアを前記所定側に吹き付け、前記ダイを徐々に剥離し易くする剥離形成起辺又は剥離形成起点を形成し、その後前記ダイを上昇させて行う、
ことを特徴とするボンディング方法。
【請求項18】
請求項12に記載のボンディング方法において、
前記ピール剥離は、剥離形成起辺又は剥離形成起点を形成後、前記ダイへ前記ステージ側から剥離エアを供給して行われる、
ことを特徴とするボンディング方法。
【請求項19】
請求項12乃至18のいずれかに記載のボンディング方法において、
前記ステージを回転させるステップを有する、
ことを特徴とするボンディング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイボンダ及びボンディング方法に係わり、特に確実にダイを実装できる信頼性の高いダイボンダ及びボンディング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ダイ(半導体チップ)(以下、単にダイという)を配線基板やリードフレームなどのワークに搭載してパッケージを組み立てる工程の一部に、半導体ウエハ(以下、単にウエハという)からダイを分割する工程と、分割したダイをウェハからピックアップし、基板上に搭載又は既にボンディングしたダイに積層するボンディング工程とがある。
ボンディング工程を行う方法として、ウェハからピックアップしたダイを一度部品載置テーブル(中間ステージ)に載置し、ボンディングヘッドで中間ステージから再度ダイをピックアップし、搬送されてきた基板にボンディングする方法(特許文献1)がある。
【0003】
ウェハからピックアップされる際に、ダイは、DAF(ダイアタッチフィルム)と呼ばれる粘着材料が貼り付いているフィルムと共に、ピックアップされ、DAFを下にして中間ステージに載置される場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−246285号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、DAFは、昨今、熱と荷重により硬化する熱硬化型が主流となっている。ウェハからピックアップしたDAF付きダイを中間ステージに載置する際に、ピックアップヘッドにより押圧される中間ステージへの荷重によっては、DAFが中間ステージに貼り付いてしまう場合がある。また、ウェハからピックアップされたダイを中間ステージ上に長時間放置すると、DAFの硬化によりダイが中間ステージに貼り付いてしまうこともある。さらに、近年、DAFは、ダイ実装時のストレスを低減させるために、低荷重、低温度で硬化可能なように改良されてきており、より中間ステージに貼り付き易くなっている。その結果、ボンディングヘッドが中間ステージからダイをピックアップする際にピックアップミスを招く可能性が高くなってきている。
【0006】
また、近年のダイの薄厚化傾向に伴い、ダイを中間ステージに載置する際の荷重によっては、ダイの割れ、欠け等のダメージを与える可能性も高くなってきている。
【0007】
従って、本発明の目的は、中間ステージにダイを確実に載置し、中間ステージから確実にダイをピックアップできる信頼性の高いダイボンダ又はボンディング方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記目的を達成するために、少なくとも以下の特徴を有する。
本発明は、ウェハを保持しダイを供給するダイ供給部と、前記ダイの一辺又は前記ダイの1つの角の所定側から相対向側に向う線に沿って前記ダイを徐々に剥離するピール剥離手段を有する中間ステージと、前記ウェハから前記ダイアタッチフィルムと共に前記ダイをピックアップし、前記中間ステージに前記ダイを載置するピックアップヘッドと、前記中間ステージから前記ダイをピックアップし、ワークの上に又は既にボンディングされたダイの上に前記ダイをボンディングするボンディングヘッドと、を有することを特徴とする。
【0009】
また、本発明は、ウェハを保持しダイを供給するダイ供給部からダイをピックアップし、中間ステージの有するステージに載置する第1のピックアップステップと、前記ダイの一辺又は1つの角の所定側から相対向側に向う線に沿って前記ダイを徐々に剥離するピール剥離して前記ダイを前記ステージからピックアップする第2のピックアップステップと、前記ダイをワークの上に又は既にボンディングしたダイの上にボンディングするボンディングステップと、を有することを特徴とする。
【0010】
さらに、前記ピール剥離は、前記ダイを徐々に剥離し易くする剥離形成起辺又は剥離形成起点を形成して行ってもよい。
また、前記ピール剥離は、前記所定側の剥離エアに吹き付け、前記ダイを徐々に剥離し易くする剥離形成起辺又は剥離形成起点を形成して行ってもよい。
【0011】
さらに、前記傾斜は、コの字状の2平面の長さの異なる平板バネ、あるいは前記所定側と相対向側の位置において弾性係数の異なる圧縮バネ、又は弾性係数の異なる弾性体で形成してもよい。
また、前記ステージを回転させ、前記所定側と相対向側の位置を変えてもよい。
さらに、前記ダイに剥離エアを吹き付け、前記ピール剥離を補助してもよい。
【発明の効果】
【0012】
従って、本発明によれば、中間ステージにダイを確実に載置し、中間ステージから確実にピックアップできる信頼性の高いダイボンダ又はボンディング方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態であるダイボンダの概略上面図である。
図2図1において矢印A方向から見たときに、ピックアップヘッド及びボンディングヘッドの動作を説明する図である。
図3】本発明の一実施形態であるダイ供給部の主要部を示す概略断面図である。
図4】本実施形態の特徴であるピール剥離手段Pを有する中間ステージ31の第1の実施例31Aの概略図である。
図5】第1の実施例におけるピール剥離方法を含めたワーク又は既にボンディングされたダイの上のボンディングする方法を示す図である。
図6】本実施形態の特徴であるピール剥離手段を有する中間ステージの第2の実施例の概略図である。
図7】本実施形態の特徴であるピール剥離手段を有する中間ステージの第3の実施例の概略図である。
図8】実施例3におけるピール剥離方法を含めたワーク又は既にボンディングされたダイの上のボンディングする方法を示す図である。
図9】本実施形態の特徴であるピール剥離手段を有する中間ステージの第4の実施例の概略図である。
図10】本実施形態の特徴であるピール剥離手段を有する中間ステージの第5の実施例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下本発明の実施形態を図面を用いて説明する。
図1は本発明の一実施形態であるダイボンダ10の概略上面図である。図2は、図1において矢印A方向から見たときに、ピックアップヘッド21及びボンディングヘッド41の動作を説明する図である。
ダイボンダ10は、大別して、ダイ供給部1と、ピックアップ部2、中間ステージ部3と、ボンディング部4と、搬送部5、基板供給部6Kと、基板搬出部6Hと、各部の動作を監視し制御する制御部7と、を有する。
【0015】
まず、ダイ供給部1は、ワークWに実装するダイDを供給する。ダイ供給部1は、ウェハ11を保持するウェハ保持台12とウェハ11からダイDを突き上げる点線で示す突き上げユニット13とを有する。ダイ供給部1は図示しない駆動手段によってXY方向に移動し、ピックアップするダイDを突き上げユニット13の位置に移動させる。
【0016】
ピックアップ部2は、ダイ供給部1からダイをピックアップし、ピックアップされたダイDを後述する中間ステージ31に載置する。ピックアップ部2は、ダイDをピックアップするピックアップヘッド21と、ピックアップヘッド21をY方向に移動させるピックアップヘッドのY駆動部23と、を有する。
ピックアップヘッド21は、突き上げられたダイDを先端に吸着保持するコレット22(図2も参照)を有し、ダイDをピックアップし、中間ステージ31に載置する。ピックアップヘッド21は、コレット22を昇降、回転及びX方向移動させる図示しない各駆動部を有する。
【0017】
中間ステージ部3は、ダイDを一時的に載置し、後述する本実施形態の特徴を備える中間ステージ31と、中間ステージ31上のダイDを認識する為のステージ認識カメラ32とを有する。
【0018】
ボンディング部4は、中間ステージ31からダイDをピックアップし、搬送されてきたワーク又は既にボンディングされたダイの上にボンディングする。ボンディング部4は、ピックアップヘッド21と同様にダイDを先端に吸着保持するコレット42(図2も参照)を備えるボンディングヘッド41と、ボンディングヘッド41をY方向に移動させるY駆動部43と、ワークWの位置認識マーク(図示せず)を撮像し、ボンディング位置を認識する基板認識カメラ44とを有する。
【0019】
このような構成によって、ボンディングヘッド41は、ステージ認識カメラ32の撮像データに基づいてピックアップ位置・姿勢を補正し、中間ステージ31からダイDをピックアップし、基板認識カメラ44の撮像データに基づいてワークWにダイDをボンディングする。
【0020】
搬送部5は、一枚又は複数枚のワーク(図1では4枚)を載置した基板搬送パレット51と、基板搬送パレット51が移動するパレットレール52とを具備し、並行して設けられた同一構造の第1、第2搬送部とを有する。基板搬送パレット51は、基板搬送パレット51に設けられた図示しないナットをパレットレール52に沿って設けられた図示しないボールネジで駆動することによって移動する。
【0021】
このような構成によって、基板搬送パレット51は、基板供給部6KでワークWを載置し、パレットレール52に沿ってボンディング位置まで移動し、ボンディング後基板搬出部6Hまで移動して、基板搬出部6HにワークWを渡す。第1、第2搬送部は、互いに独立して駆動され、一方の基板搬送パレット51に載置されたワークWにダイDをボンディング中に、他方の基板搬送パレット51は、ワークWを搬出し、基板供給部6Kに戻り、新たなワークWを載置するなどの準備を行なう。
【0022】
図3は、ダイ供給部1の主要部を示す概略断面図である。図3に示すように、ダイ供給部1は、ウエハリング14を保持するエキスパンドリング15と、ウエハリング14に保持されウエハリング14に保持され複数のダイDが粘着されたダイシングテープ16を水平に位置決めする支持リング17と、ダイDを上方に突き上げるための突き上げユニット13とを有する。所定のダイDをピックアップするために、突き上げユニット13は、図示しない駆動機構によって上下方向に移動し、ダイ供給部1は水平方向には移動するようになっている。
【0023】
ダイ供給部1は、ダイDの突き上げ時に、ウエハリング14を保持しているエキスパンドリング15を下降させる。その結果、ウエハリング14に保持されているダイシングテープ16は引き伸ばされ、ダイDの間隔は広がる。そのような状態で、突き上げユニット13によりダイ下方よりダイDを突き上げることにより、ダイ供給部1はダイDのピックアップ性を向上させている。
【0024】
なお、薄型化に伴い接着剤は液状からフィルム状となり、ダイアタッチフィルムDAFと呼ばれるフィルムがダイDとダイシングテープ16との間に設けられている。ダイアタッチフィルムDAFはフィルム状の粘着材料を貼り付け、複数のダイDを保持している。ダイアタッチフィルムDAFを有するウェハ11では、ダイシングはウェハとダイアタッチフィルムDAFに対して行なわれる。
従って、ウェハからダイDをピックアップするときは、ダイDとダイシングテープ16と共に、ウェハと粘着していたダイアタッチフィルムDAFが剥離される。このダイアタッチフィルムDAFが既に説明した課題をもたらす。
【0025】
そこで、上述した課題を解決するために、本実施形態は、例として図4及び図5に示すピール剥離手段又はピール剥離方法を有する。ピール剥離手段又はピール剥離方法は、中間ステージ31からDAFと共にダイDを剥離するときに、一度に全体を剥がすのではなく、ダイDの一辺又は1つの角の所定側から相対向側に向う線に沿ってリンゴの皮を向くように徐々に剥がし、ダイDに与えるストレスを低減する手段又は方法である。この結果、中間ステージ31からダイDをピックアップするときのダイの割れ、欠け等のダメージを低減できる。
【0026】
(実施例1)
図4は、本実施形態の特徴であるピール剥離手段Pを有する中間ステージ31の第1の実施例31Aの概略図である。また、図4(a)は、ダイDをピックアップするためにボンディングヘッド41のコレット42を中間ステージ31Aに載置した状態を示す。図4(b)は、ダイDをピックアップするためにコレット42を中間ステージ31Aに対して矢印G方向に押付けた状態を示す。
実施例1の中間ステージ31Aは、ダイDを載置するステージ31bと、中間ステージ31Aをダイボンダ10の構造部に固定する固定部31kと、中間ステージ31Aと固定部31kとの間に設けられたピール剥離手段Pの第1の実施例PAとを有する。
【0027】
ステージ31bの上下両面は平面であり、ダイDをステージ31bに吸着保持するための矢印Bに示す方向にエアを吸引するステージ吸着手段31aを有する。少なくともステージ側の定部31kの上面は平面である。
【0028】
ピール剥離手段PAは、ステージ31bと固定部31kとの間に設けられたコの字状の2平面PAd、PAuを備える平板バネである。平板バネPAは、コの字状の2平面のうちステージ31bに接する面PAu側の辺の長さは、固定部31k側に接する面PAu側の辺の長さよりも長い構造を有する。平板バネPAは、ステージ31bのみの負荷が掛かったときに、コの字状の2面PAd、PAuは、図4(a)に示すようにステージ31bと平行を維持する。
【0029】
このような構造を有する中間ステージ31Aのステージ31bに対してコレット42を矢印Gに示す下向方向に押付ける。そうすると、面PAu側に、平板バネの根元側を支点として、支点側に相対的に反力が大きい反力FAが発生し、先端側には相対的に反力が小さい反力FBが発生する。この結果、ステージ31がやや傾斜し、ダイDの面PAuの先端側の辺から剥離が始まり、剥離形成起辺PSPができる。この時のステージ31bの傾斜角を図面で誇張して描かれているが、剥離形成起辺PSPのステージ31bからの高さは、例えば20μm程度あればよく、剥離の起点が形成される高さであれば20μm未満でもよい。一度剥離形成起辺PSPができれば、コレット42を上昇させることにより、一度剥離形成起辺PSPから相対するダイDの辺に向かって次々とリンゴの皮を剥くようにピール剥離していく。
【0030】
図5は、このピール剥離方法を含めたワーク又は既にボンディングされたダイの上にさらにダイをボンディングする方法を示す図である。
まず、ピックアップヘッド21は、ウェハ11からDAFと共にダイDをピックアップする(S1)。次に、ピックアップヘッド21は、中間ステージ31に移動し、ダイDを載置する。なお、ダイDを載置する際にピックアップヘッド21がダイDを押圧する載置荷重は、前述の反力FBよりも小さいことが特徴である。反力FBが載置荷重よりも小さい場合は、ダイDを載置する際にピックアップヘッド21の左右方向にいわゆるガタを有する構造では載置の過程で中間ステージ31bが傾いてしまうため、その傾きに合わせてダイDに位置ずれが発生してしまい、ダイDにストレスが加わる可能性があるからである。その後ステージ吸着手段31aは、ダイDをステージ31bに吸着保持する(S2)。ステージ認識カメラ32はステージ31b上のダイDを撮像し、制御部7は、ワークWヘのボンディング位置・姿勢を補正する(S3)。中間ステージ31に移動したボンディングヘッド41は、コレット42に設けられた吸着孔42aによってステージ31b上のダイDを吸着保持する(S4)。ステージ吸着手段31aは、ダイDのステージ31bへの吸着を解除する(S5)。ボンディングヘッド41は、下降し剥離形成起辺PSPを形成する(S6)。次に、ボンディングヘッド41は、上昇し、ダイDをステージ31bから剥離し、ピックアップする(S7)。ボンディングヘッド41は、ボンディング位置へ移動し、ダイDをワーク又は既にボンディングされたダイD上にボンディングする(S8)。S1からS5の処理を所定の個数行う(S9)。上記のステップS6、S7がピール剥離ステップである。
【0031】
以上説明したように、中間ステージ31からダイDをピックアップするときのダイの割れ、欠け等のダメージを低減できる。
【0032】
(実施例2)
図6は本実施形態の特徴であるピール剥離手段Pを有する中間ステージ31の第2の実施例31Bの概略図である。
【0033】
実施例2のピール剥離手段Pは、実施例1と同じである。実施例2の実施例1と異なる点は、ステージダイアタッチフィルムDAFとステージ31bとの間に剥離エアを供給する剥離エア供給部33を有している点である。剥離エア供給部33は、実施例1で示したピール剥離ステップであるS6、S7において、剥離エア供給部33から供給された剥離エアがダイDを下から押し上げ、ダイDをステージ31bから剥離し易くする。特に、剥離エア供給部33の剥離補助孔33a、33bのうち平板バネPAのPAu面の先端側にある剥離補助孔33bは、ステップS6の剥離形成起辺の形成をし易くする役目を果たす。
【0034】
また、剥離補助孔33bのみを辺又は角の位置に設け、剥離補助孔33bから剥離エアを供給することで、剥離形成起辺又は剥離形成起点を形成することもできる。この場合は、
平板バネPAは不要とすることもでき、ピール剥離手段は、剥離補助孔33bから剥離エアを供給する剥離エア供給手段となる。
【0035】
(実施例3)
図7は本実施形態の特徴であるピール剥離手段Pを有する中間ステージ31の第3の実施例31Bの概略図である。
【0036】
実施例2のピール剥離手段Pは、実施例1と同じである。実施例3は、実施例2にさらにステージ31b及びピール剥離手段である平板バネPAを例えば90度回転させることができる回転駆動手段34を有する。回転駆動手段34は、固定部31kに固定されたモータ34mと、固定部31kの替わりに平板バネPAを支持する支持部31sに一端が固定された回転軸34jとを有する。
【0037】
この回転駆動手段34によって、ステージを例えば90度回転させることができる。この結果、ダイDの長辺方向にストレスが掛からないように、剥離形成起辺PSPを常に長辺側にすることができる。
【0038】
以上の説明では、所定の辺から相対する辺に向かって剥離する説明をしたが、回転駆動手段34により平板バネPAを回転させる回転角度は90度に限定されるものではなく、ダイDの形状等に基づいて任意の角度で調整してもよい。つまり、回転駆動手段34を使って、例えば、ダイDの所定の角から相対する角に向かって剥離することもできる。例えば、ダイDが正方形の形状である場合は、回転駆動手段34により平板バネPAを回転させる角度を45度とすれば、剥離形成起点をダイDの一つの角に形成し易くなるという効果がある。従って、この場合は、剥離起点を形成して行うときは、剥離形成起辺ではなく所定の角を起点とする剥離形成起点となる。また、回転駆動手段34はモータ駆動に限られるものではなく、手動式でも良い。
【0039】
図8は、実施例3におけるピール剥離方法を含めたワーク又は既にボンディングされたダイの上にさらにダイをボンディングする方法を示す図である。
【0040】
図8に示すボンディング方法と図5に示すボンディング方法と異なる点は、次の2点であり、その他の点は同じである。
第1に、ウェハ11の長方形を有するダイDの向き、ウェハ毎に規定されるボンディングヘッド41の向きによって、剥離形成起辺PSPを常に長辺側にならうように変えるステップS11,S12を有している点である。第2に、図5に示したピール剥離ステップであるS6、S7において、ダイDを下から押し上げてダイDをステージ31bから剥離させるきっかけとなる剥離形成起辺あるいは起点を容易に発生させるために、剥離エアを供給するステップS13と剥離エアの供給を停止するステップS14を有する点である。
【0041】
(実施例4)
図9は、本実施形態の特徴であるピール剥離手段Pを有する中間ステージ31の第4の実施例31Dの概略図である。
【0042】
実施例4の実施例1と異なる点は、ピール剥離手段Pの第2の実施例PBを有する点である。ピール剥離手段PAは、平板バネで構成されていたのに対し、ピール剥離手段PBは、ステージ31bの両側に設けられた2個の圧縮バネPBa、PBbを用い、ステージ31bに傾斜を発生させる。2個の圧縮バネのうち図面左側の圧縮バネPBaが相対的に大きな反力FAを生じる大きなバネ定数を有する。図面右側のある残りの圧縮バネPBbが相対的な小さな反力FBを生じる小さなバネ定数を有する。圧縮バネPBaとPBbのバネ定数と位置の関係は逆でもよい。また、圧縮バネの数は2個に限定されるものではなく、例えば、4個の圧縮バネをステージ31bの4隅に設けてもよい。
【0043】
実施例4におけるピール剥離手段PBの動作は、基本的には実施例1のピール剥離手段PAの動作と同じであるので説明は省略する。
従って、実施例4は、実施例1と同様な効果を奏することができる。
【0044】
(実施例5)
図10は、本実施形態の特徴であるピール剥離手段Pを有する中間ステージ31の第5の実施例31Eを示す図である。実施例5の実施例1と異なる点は、ピール剥離手段Pの第3の実施例PCを有する点である。図10(a)は中間ステージ31Eの概略図を示し、10(b)はピール剥離手段PCの反力特性を示す図である。
【0045】
ピール剥離手段PCは、弾性係数の異なる直角三角形の形状を有する弾性体PCa、PCbを平板となるように組み合わせた弾性体構造体である。図10bに示すように、弾性係数の低い弾性体PCaの厚さが厚い部分の位置Xでは相対的に反力が強く、逆に弾性係数の高い弾性体PCbの厚さが厚い部分の位置Xでは相対的に反力が弱くなる。ここで、弾性体として天然ゴムや合成ゴム、エラストマー、合成樹脂等を用いることができるが、いわゆるエアダンパを用いてもよい。エアダンパ構造は弾性体に類する作用を発揮するので、ピックアップヘッド21が中間ステージ31にダイDを載置する際は中間ステージ31上でダイDに載置荷重を押圧することなく載置しまたはエアダンパによる反力以下の載置荷重を中間ステージ31に押圧し、ダイDを載置する。次に、ボンディングヘッド41で中間ステージ31上に載置されたダイDをピックアップする。この場合、各ステップで作用する載置荷重と反力の大きさは、載置荷重<エアダンパによる反力<ピックアップ時の荷重とすることでゴムや合成樹脂等の弾性体を用いた場合と同じ効果を発揮する。
なお、弾性体を連続して設けるのではなく、実施例4のピール剥離手段PCと同様に、2つの異なる弾性係数を有する弾性体をステージ31bの両側に設けてもよい。
【0046】
実施例5におけるピール剥離手段PCの動作は、基本的には実施例1のピール剥離手段PAの動作と同じであるので説明は省略する。
従って、実施例4は、実施例1と同様な効果を奏することができる。
【0047】
以上のように本発明の実施態様について説明したが、上述の説明に基づいて当業者にとって種々の代替例、修正又は変形が可能であり、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲で前述の種々の代替例、修正又は変形を包含するものである。
【符号の説明】
【0048】
1:ダイ供給部 2:ピックアップ部
21:ピックアップヘッド 3:中間ステージ部
31、31A乃至31E:中間ステージ 31a:ステージ吸着手段
31b:ステージ 31k:ステージの固定部
31s:平板バネの支持部 32:ステージ認識カメラ
33:剥離エア供給部 34:回転駆動手段
4:ボンディング部 41:ボンディングヘッド
42:コレット 7:制御部
10:ダイボンダ 11:ウェハ
13:突き上げユニット D:ダイ
DAF:ダイアタッチフィルム F、FA、FB:反力
P:ピール剥離手段 PA:平板バネ(ピール剥離手段)
PB:圧縮バネ(ピール剥離手段) PC:弾性体構造体(ピール剥離手段)
PSP:剥離形成起辺 W:基板
図1
図2
図3
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図6
図7
図8
図9
図10