特許第6201394号(P6201394)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ニコンの特許一覧

<>
  • 特許6201394-X線源、X線装置 図000002
  • 特許6201394-X線源、X線装置 図000003
  • 特許6201394-X線源、X線装置 図000004
  • 特許6201394-X線源、X線装置 図000005
  • 特許6201394-X線源、X線装置 図000006
  • 特許6201394-X線源、X線装置 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6201394
(24)【登録日】2017年9月8日
(45)【発行日】2017年9月27日
(54)【発明の名称】X線源、X線装置
(51)【国際特許分類】
   H01J 35/14 20060101AFI20170914BHJP
   H01J 35/16 20060101ALI20170914BHJP
   H01J 35/00 20060101ALI20170914BHJP
【FI】
   H01J35/14
   H01J35/16
   H01J35/00 A
【請求項の数】12
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2013-87283(P2013-87283)
(22)【出願日】2013年4月18日
(65)【公開番号】特開2014-212011(P2014-212011A)
(43)【公開日】2014年11月13日
【審査請求日】2016年3月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004112
【氏名又は名称】株式会社ニコン
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100108578
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 詔男
(72)【発明者】
【氏名】箱田 文彦
【審査官】 鳥居 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−301911(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/051595(WO,A1)
【文献】 特開2012−182078(JP,A)
【文献】 特開平06−267690(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0336462(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00− 6/14
G01N 23/00−23/227
H01J 35/00−35/32
H05G 1/00− 2/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子を放出する放出部とターゲットとの間に備えられ、前記電子を集束させる電子光学系と、
前記電子光学系により集束される前記電子の一部を制限する開口が形成されたアパーチャーユニットと、
前記電子光学系及び前記アパーチャーユニットを収容する外装本体の少なくとも一部を構成するハウジングとを備え、
前記アパーチャーユニットは、前記電子が前記ターゲットへ向かう第1方向と交差する第2方向に沿って外側に延出する延出部を有し、
前記延出部は、前記ハウジングに接触する接触部分を有し、
前記接触部分は、前記第1方向における厚さが前記電子の通過領域からの距離に応じて薄くなるテーパー形状を有し、
前記ハウジングの前記延出部との接触部分は、前記第1方向における厚さが前記電子の通過領域からの距離に応じて厚くなる逆テーパー形状を有するX線源。
【請求項2】
電子を放出する放出部とターゲットとの間に備えられ、前記電子を集束させる電子光学系と、
前記電子光学系により集束される前記電子の一部を制限する開口が形成されたアパーチャーユニットと、
前記電子光学系及び前記アパーチャーユニットを収容する外装本体の少なくとも一部を構成するハウジングとを備え、
前記アパーチャーユニットは、前記電子が前記ターゲットへ向かう第1方向と交差する第2方向に沿って外側に延出する延出部を有し、
前記延出部は、前記ハウジングに接触する接触部分を含み、前記接触部分が熱伝導層を介して前記ハウジングに接触するX線源。
【請求項3】
請求項1に記載されたX線源であって、
前記延出部は、前記接触部分が熱伝導層を介して前記ハウジングに接触するX線源。
【請求項4】
請求項2に記載されたX線源であって、
前記接触部分は、前記第1方向における厚さが前記電子の通過領域からの距離に応じて薄くなるテーパー形状を有し、
前記ハウジングの前記延出部との接触部分は、前記第1方向における厚さが前記電子の通過領域からの距離に応じて厚くなる逆テーパー形状を有するX線源。
【請求項5】
請求項2又は4に記載されたX線源であって、
前記熱伝導層は、樹脂層と、前記樹脂層に混ぜ込まれ、前記延出部よりも熱伝導性が高い熱伝導性粒子と、を含むX線源。
【請求項6】
請求項5に記載されたX線源であって、
前記樹脂層は、アクリル樹脂又はシリコン樹脂であるX線源。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載されたX線源であって、
前記延出部は、前記第1方向から視て、前記アパーチャーユニットの外面の全周に亘って設けられるX線源。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか一項に記載されたX線源であって、
前記延出部は、前記第1方向において、前記アパーチャーユニットにおける前記開口が形成された位置に設けられるX線源。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれか一項に記載されたX線源であって、
前記電子光学系は、前記第1方向と平行な中心光軸を有し、
前記開口は、前記中心光軸から離れた位置に収束する前記電子を遮蔽するX線源。
【請求項10】
請求項1から請求項9のいずれか一項に記載されたX線源であって、
前記アパーチャーユニットは、前記延出部と前記ハウジングとの間に、前記電子が伝播する領域を密閉状態に保持するための第1封止部材が設けられる封止部材配置領域を有し、
前記延出部は、少なくとも前記封止部材配置領域よりも外側の領域まで延出するX線源。
【請求項11】
請求項1から請求項10のいずれか一項に記載されたX線源であって、
前記ハウジングの前記第1方向の延長線上には、前記ターゲットを設置するためのターゲット保持部が備えられ、
前記ターゲット、前記ターゲット保持部、前記ハウジング、及び前記アパーチャーユニットで囲まれた空間を密閉状態に保持するための第2封止部材が設けられているX線源。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか一項に記載のX線源を備え、
前記X線源で発生したX線を物体に照射して前記物体を通過した透過X線を検出するX線装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線源、X線装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
物体の内部の情報を非破壊で取得する装置として、物体にX線を照射するX線源を有し、その物体を透過した透過X線を検出する検出装置を備えるX線装置が知られている。このようなX線装置に用いられるX線源として、例えば、下記特許文献1に開示されたものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−174715号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記X線源においては、電子の集束位置に開口部を有する領域制限体を設けている。領域制限体により電子の一部を遮断することで電子のスポット径を極小化している。しかしながら、上記領域制限体は、遮断電子の一部を遮断するため発熱してしまう。
【0005】
本発明の態様は、領域制限体に生ずる熱を効率的に発散させることができるX線源、X線装置、及び構造物の製造方法を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様に従えば、電子源とターゲットとの間に配置され、所定の位置に前記電子を集束する電子光学系と、前記電子光学系により集束される前記電子一部を制限する開口が形成されたアパーチャーユニットと、を備え、前記アパーチャーユニットは、前記電子が前記ターゲットへ向かう第1方向と交差する第2方向に沿って外側に延出する延出部を含むX線源が提供される。
【0007】
本発明の第2の態様に従えば、第1の態様のX線源を備え、前記X線源で発生したX線を物体に照射して前記物体を通過した透過X線を検出するX線装置が提供される。
【0008】
本発明の第3の態様に従えば、構造物の形状に関する設計情報を作成する設計工程と、前記設計情報に基づいて前記構造物を作成する成形工程と、作成された前記構造物の形状を第2の態様のX線装置を用いて計測する測定工程と、前記測定工程で取得した形状情報と前記設計情報とを比較する検査工程と、を含む構造物の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、領域制限体に生ずる熱を効率的に発散させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1実施形態に係るX線装置の一例を示す概略構成図。
図2】第1実施形態に係るX線源の概略構成を示す断面図。
図3】第1実施形態に係るX線源における射出部の近傍の構成を示す図。
図4】第1実施形態に係るX線源の要部構成を示す拡大断面図。
図5】第2実施形態に係る構造物製造システムの一例を示すブロック構成図。
図6】第2実施形態に係る構造物製造システムにおける処理の流れを示したフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明するが、本発明はこれに限定されない。なお、以下で説明する各実施形態の要件は、適宜組み合わせることができる。
また、一部の構成要素を用いない場合もある。また、法令で許容される限りにおいて、各実施形態及び変形例で引用したX線源及び検出装置などに関する全ての公開公報及び米国特許の開示を援用して本文の記載の一部とする。
【0012】
以下の説明においては、XYZ直交座標系を設定し、このXYZ直交座標系を参照しつつ各部の位置関係について説明する。X軸とY軸とZ軸とは垂直に交わる。X軸と平行な方向をX軸方向とし、Y軸と平行な方向をY軸方向とし、Z軸と平行な方向をZ軸方向とする。X軸、Y軸、及びZ軸まわりの回転(傾斜)方向をそれぞれ、θX、θY、及びθZ方向とする。
【0013】
<第1実施形態>
第1実施形態について説明する。図1は、本実施形態に係るX線装置1の一例を示す概略構成図である。
【0014】
X線装置1は、測定物SにX線を照射して、その測定物Sを透過した透過X線を検出する。X線は、例えば波長1pm〜30nm程度の電磁波である。X線は、約50keVの超軟X線、約0.1〜2keVの軟X線、約2〜20keVのX線、及び約20〜100keVの硬X線の少なくとも一つを含む。
【0015】
本実施形態において、X線装置1は、測定物SにX線を照射して、その測定物Sを透過した透過X線を検出して、その測定物Sの内部の情報(例えば、内部構造)を非破壊で取得するX線CT検査装置を含む。本実施形態において、測定物Sは、例えば機械部品、電子部品その他の産業用部品を含む。X線CT検査装置は、産業用部品にX線を照射して、その産業用部品を検査する産業用X線CT検査装置を含む。
【0016】
図1に示すように、X線装置1は、X線を射出するX線源2と、X線源2からのX線が照射される測定物Sを保持して移動可能なステージ装置3と、X線源2から射出され、ステージ装置3に保持された測定物Sを通過したX線(透過X線)の少なくとも一部を検出する検出装置4と、X線装置1全体の動作を制御する制御装置5とを備えている。
【0017】
また、X線装置1は、X線源2から射出されるX線が進行する内部空間SPを形成するチャンバ部材6を備えている。本実施形態において、X線源2、ステージ装置3、及び検出装置4は、内部空間SPに配置される。
【0018】
チャンバ部材6は、支持面FR上に配置される。支持面FRは、工場等の床面を含む。
チャンバ部材6は、複数の脚部6Sに支持される。チャンバ部材6は、脚部6Sを介して、支持面FR上に配置される。脚部6Sにより、チャンバ部材6の下面と、支持面FRとは離れる。すなわち、チャンバ部材6の下面と支持面FRとの間に空間が形成される。なお、チャンバ部材6の下面の少なくとも一部と支持面FRとが接触してもよい。
【0019】
本実施形態において、チャンバ部材6は、鉛を含む。チャンバ部材6は、内部空間SPのX線が、チャンバ部材6の外部空間RPに漏出することを抑制する。
【0020】
X線源2は、測定物SにX線を照射する。X線源2は、X線を射出する射出部7を有する。X線源2は、点X線源を形成する。本実施形態において、射出部7は、点X線源を含む。X線源2は、測定物Sに円錐状のX線(所謂、コーンビーム)を照射する。X線源2は、射出するX線の強度を調整可能である。測定物SのX線吸収特性に基づいて、X線源2から射出されるX線の強度が調整されてもよい。なお、X線源2から射出されるX線が拡がる形状は、円錐状に限らず、例えば扇状のX線(所謂、ファンビーム)でもよい。なお、X線源2から射出されるX線が、射出される方向(Z軸方向)において一定の線状のX線(所謂、ペンシルビーム)でもよい。
【0021】
本実施形態において、X線源2からのX線の少なくとも一部は、内部空間SPにおいてZ軸方向に進行する。射出部7は、+Z方向を向いている。射出部7から射出されたX線の少なくとも一部は、内部空間SPにおいて、+Z方向に進行する。すなわち、本実施形態において、X線の照射方向は、Z軸方向である。
【0022】
本実施形態において、X線源2とステージ装置3と検出装置4とは、Z軸方向に配置される。ステージ装置3は、X線源2の+Z側に配置される。検出装置4は、ステージ装置3の+Z側に配置される。
【0023】
本実施形態において、X線装置1は、X線源2、ステージ装置3、及び検出装置4を支持する支持部材8を備えている。支持部材8は、チャンバ部材6の内部空間SPに配置される。支持部材8は、内部空間SPの底面6Tに配置される。支持部材8の位置は、内部空間SPにおいて、実質的に固定される。支持部材8は、X線源2とステージ装置3と検出装置4とを一緒に支持する。
【0024】
支持部材8の熱膨張係数は、チャンバ部材6の熱膨張係数よりも小さい。支持部材8は、少なくともチャンバ部材6よりも熱変形し難い。
【0025】
本実施形態において、支持部材8は、低熱膨張材料によって形成されている。本実施形態において、支持部材8は、例えばインバー(invar)を含む。インバーは、ニッケル約36%程度、鉄約64%程度の合金である。
【0026】
本実施形態において、支持部材8は、1つの部材で構成される。なお、支持部材8が、複数の部材の組み合わせでもよい。
【0027】
ステージ装置3は、内部空間SPにおいて移動可能である。ステージ装置3は、内部空間SPのうち、射出部7よりも+Z側の空間で移動可能である。ステージ装置3は、支持部材8上において移動可能である。本実施形態において、ステージ装置3は、X軸、Y軸、Z軸、θX、θY、及びθZ方向の6つの方向に移動可能である。ステージ装置3は、駆動システム9の作動により移動可能である。駆動システム9の作動により、ステージ装置3に保持された測定物Sは、X軸、Y軸、Z軸、θX、θY、及びθZ方向の6つの方向に移動可能である。駆動システム9は、例えばリニアモータ、ボイスコイルモータなどのローレンツ力により作動するモータを含む。なお、駆動システム9が、ピエゾ素子を含んでもよい。例えば、駆動システム9は、ピエゾ素子を用いて、X軸、Y軸、Z軸、θX、θY、及びθZの少なくとも一つの方向にステージ装置3(測定物S)を移動させてもよい。
【0028】
ステージ装置3の少なくとも一部は、射出部7と対向可能である。ステージ装置3は、保持した測定物Sを、射出部7と対向する位置に配置可能である。ステージ装置3は、射出部7から射出されたX線が通過する経路上に、測定物Sを配置可能である。ステージ装置3は、射出部7から射出されたX線の照射範囲内に、測定物Sを配置可能である。
【0029】
検出装置4は、内部空間SPにおいて、X線源2及びステージ装置3よりも+Z側に配置される。検出装置4の位置は、内部空間SPにおいて、実質的に固定される。なお、検出装置4が移動可能でもよい。ステージ装置3は、内部空間SPのうち、X線源2と検出装置4との間の空間を移動可能である。
【0030】
検出装置4は、測定物Sを透過した透過X線を含むX線源2からのX線が入射する入射面10を有するシンチレータ部11と、シンチレータ部11において発生した光を受光する受光部12とを有する。検出装置4の入射面10は、ステージ装置3に保持された測定物Sと対向可能である。
【0031】
シンチレータ部11は、X線が当たることによって、そのX線とは異なる波長の光を発生させるシンチレーション物質を含む。受光部12は、光電子倍増管を含む。光電子倍増管は、光電効果により光エネルギーを電気エネルギーに変換する光電管を含む。受光部12は、シンチレータ部11において発生した光を増幅し、電気信号に変換して出力する。
【0032】
検出装置4は、シンチレータ部11を複数有する。シンチレータ部11は、XY平面内において複数配置される。シンチレータ部11は、アレイ状に配置される。受光部12は、複数のシンチレータ部11のそれぞれに接続されるように、複数配置される。なお、検出装置4は、入射するX線を、光に変換せずに、直接電気信号に変換してもよい。
【0033】
図2は、本実施形態に係るX線源2の概略構成を示す断面図であり、図3は、X線源2における射出部7の近傍の構成を示す図である。図4は、X線源2の要部構成を示す拡大断面図である。
図2に示すように、X線源2は、電子を放出する電子源であるフィラメント13と、電子の衝突又は電子の透過によりX線を発生するターゲット14と、電子をターゲット14に導く導電子部材15と、ターゲット14に向かう電子の一部を制限するアパーチャーユニット16と、を備えている。
【0034】
導電子部材15は、フィラメント13とターゲット14との間に配置され、フィラメント13からの電子を所定の位置に集束する。アパーチャーユニット16は、導電子部材15により電子が集束される位置またはその近傍に配置され、集束位置に集まる電子の一部を制限する。
【0035】
また、X線源2は、フィラメント13、導電子部材15及びアパーチャーユニット16を収容する外装本体17を有する。フィラメント13及び導電子部材15は、外装本体17の内部空間に収容される。なお、X線源2とは別の装置がフィラメント13を有してもよい。
【0036】
本実施形態において、外装本体17は、複数の部材から構成されている。外装本体17は、+Z軸方向における先端側に設けられたハウジング27を含む。ハウジング27は、ターゲット14及びアパーチャーユニット16を保持する保持部材としての機能を兼ねるとともに、外装本体17の一部を構成するものである。
【0037】
外装本体17の内部空間は、実質的に真空に保たれている。本実施形態においては、外装本体17の内部空間は、真空装置2Aと接続されている。真空装置2Aは、内部空間の空気を外に排出するためのポンプを含む。
【0038】
また、本実施形態においては、X線源2は、外装本体17の温度を一定に保つための冷却装置2Bを含む。冷却装置2Bにより、特に、ターゲット14、導電子部材15及びアパーチャーユニット16から生ずる発熱量を効率よく吸収するので、外装本体17の温度上昇が抑えられる。なお、外装本体17の温度を一定に保つための冷却装置とターゲット14の温度を一定に保つための冷却装置とは別の装置でもよい。また、冷却装置が、ターゲット14の内部に設けられた流路に温度調整された流体(液体もしくは空気)を導入する装置を含む(図3参照)。すなわち、ターゲット14の内部に設けられた流路に温度調整された液体もしくは空気を導入することによってターゲット14の温度を一定に保ってもよい。
【0039】
フィラメント13は、例えばタングステンを含む。フィラメント13は、コイル状に巻かれている。フィラメント13に電流が流れ、その電流によってフィラメント13が加熱されると、フィラメント13から電子(熱電子)が放出される。フィラメント13の先端は、尖っている。フィラメント13の尖った部分から電子が放出される。
【0040】
ターゲット14は、例えばタングステンを含み、電子の衝突又は電子の透過によりX線を発生する。本実施形態において、X線源2は、所謂、透過型である。本実施形態において、ターゲット14は、電子の通過により、X線を発生する。
【0041】
ターゲット14とフィラメント13の間は、所定の電位差を有している。例えば、160KeVや225KeVに相当する電位差が付与される。ターゲット14を陽極とし、フィラメント13を陰極として、ターゲット14とフィラメント13との間に電圧が加えられると、フィラメント13から飛び出した熱電子が、ターゲット(陽極)13に向かって加速し、ターゲット14に照射される。これにより、ターゲット14からX線が発生する。本実施形態においては、ターゲット14に照射される熱電子のうち99.9%は熱に変換し、0.1%がX線に変換される。
【0042】
導電子部材15は、フィラメント13とターゲット14との間において、フィラメント13からの電子の通路の周囲の少なくとも一部に配置される。本実施形態において、複数の導電子部材15が、フィラメント13とターゲット14との間に配置されている。導電子部材15は、例えば集束レンズ及び対物レンズ等の電子レンズ、若しくは偏光器を含む。また、導電子部材15は、ターゲット14での収差を低減する部材でもよい。導電子部材15は、例えば、光軸上の非点収差を補正するスティグメータでもよい。導電子部材15は、フィラメント13からの電子を集束させてターゲット14に導く。導電子部材15は、ターゲット14の一部の領域(X線焦点)に電子を衝突させる。
【0043】
本実施形態において、アパーチャーユニット16は、導電子部材15により集束した電子束のうち、外周部分の電子を遮蔽する。アパーチャーユニット16を介してターゲット14において電子が衝突する領域(部分)の寸法(スポットサイズ)は、十分に小さい。これにより導電子部材15で集束し切れなかった電子を遮蔽することで、0.3マイクロメートル程度のスポットサイズの電子線束を形成することができる。本実施形態において、ターゲット14において電子が衝突する領域である射出部7は、実質的に点X線源を構成する。
【0044】
図3に示すように、本実施形態において、ターゲット14に最も近い導電子部材15(以下、導電子部材15Aと称す場合もある)は、例えば電子レンズから構成される。
導電子部材15Aは、コイル部18とヨーク部19とを含む。コイル部18は、例えば銅線を巻回することで構成されたものである。ヨーク部19は、例えば軟鉄などの透磁率の高い材料から構成されたものである。
【0045】
ヨーク部19は、X線の照射方向であるZ軸方向に交差するXY平面における断面が実質的に円形であり、貫通孔20が形成された円筒状の形状を有する。なお、このターゲットの形状は、他にもターゲット14に向かって該円形の径が小さくなるテーパー状をなす円錐形状を有していても良い。ヨーク部19には、Z軸方向に沿って貫通孔20が形成されている。貫通孔20は、フィラメント13からの電子をターゲット14に導くためのものである。
【0046】
本実施形態において、冷却装置2Bは、ヨーク部19の−Z方向側に設けられた流路40に温度調整された流体(例えば、水)を導入する。
【0047】
貫通孔20は、Z軸方向から視た場合、円形である。
導電子部材15Aは、貫通孔20の中心軸方向に一致するZ軸方向に沿って貫通孔20を介して電子をターゲット14へと導く。本実施形態において、導電子部材15(15A)は、フィラメント13とターゲット14とを結ぶ仮想線と実質的に平行な方向(フィラメント13からの電子の通路と実質的に平行な方向)がZ軸方向に一致する。以下の説明において、フィラメント13とターゲット14とを結ぶ仮想線と実質的に平行な方向を適宜、導電子部材15(15A)の中心軸(中心光軸)方向、と称する。
【0048】
本実施形態において、貫通孔20のターゲット14側の端部にアパーチャーユニット16が装着されている。アパーチャーユニット16は、開口が形成され、電子線が通過するためのアパーチャー部16aを有する。
【0049】
アパーチャーユニット16は、比較的熱伝導性が高い材料、例えば、真鍮、タングステン合金、銅などから構成されている。本実施形態において、1つの部材から構成されているが、アパーチャー部16aの開口を形成するためのダイヤフラムとその他の部位とは別部材から構成されていてもよい。
【0050】
また、アパーチャー部16aと貫通孔25は、共通のZ軸方向に延びるように開口が形成されている。なお、アパーチャー部16aおよび貫通孔25はZ軸方向から視た場合、それぞれ円形である。
【0051】
貫通孔20を通過した電子の一部は、アパーチャー部16aにより入射した電子の一部がターゲット14側に通過することを制限する。
【0052】
本実施形態において、アパーチャー部16aは、導電子部材15Aによる集束位置に集まる電子の一部を制限するダイヤフラム(絞り)としての機能を有する。アパーチャー部16aは、導電子部材15で集束しきれなかった電子、すなわち中心軸から離れた位置に集束する電子を遮蔽する。
【0053】
アパーチャーユニット16は、円筒状からなる本体部23と、本体部23の径方向に沿って外側に延びる延出部24とを含む。アパーチャーユニット16は、本体部23の一部が貫通孔20に挿入されることでヨーク部19に支持される。なお、この延出部24はヨーク部19に形成された貫通孔20の径よりも大きい径を有していればよい。好ましくは、開口の中心を中心として電子線の伝搬方向に対して垂直な面内で放射状に延設された形状を有していたほうが良い。しかしながら、本発明では、図3で示すY方向のみ延設された形状やY方向のみ延設された形状であってもよい。
【0054】
本体部23の外径は、貫通孔20の内径と同等若しくはそれよりも小さい。本体部23の外面には、周方向の全域に亘って、例えばゴムリングや樹脂材料から構成されたシール部材26が設けられている。シール部材26は、本体部23と貫通孔20との隙間を密閉することで、貫通孔20の内部空間を実質的に真空に保持する。
【0055】
延出部24は、電子がターゲット14に向かう方向であるZ軸方向(第1方向)と交差する方向であるX方向及びY方向(第2方向)に沿って本体部23から延びている。本実施形態において、延出部24は、Z軸方向から視て、本体部23の全周に亘って鍔状に設けられている。
【0056】
延出部24は、Z軸方向において、アパーチャーユニット16(本体部23)における上記アパーチャー部16aの形成位置に設けられている。延出部24は、ハウジング27の内面に対向する第1の面24aと、該第1の面24aとZ方向において反対の第2の面24bと、これら第1の面24a及び第2の面24bをつなぐ第3の面24cと、を含む。延出部24における第3の面24cは、ハウジング27の内面に接触する接触部分(以下、接触部分24cと称す場合もある)を構成する。
【0057】
ハウジング27は、+Z方向に向かって内径が狭まる円錐状の本体27aと、本体27aの−Z方向側に連結され、ヨーク部19に固定される固定部27bと、本体27aの+Z方向側に連結され、延出部24の+Z方向側の面(第1の面24a)に対向するとともにアパーチャーユニット16を間接的に支持する支持部27cと、を含む。
【0058】
本体27aは、コイル部18の外形に応じた内面形状を有している。本体27aの内面は、+Z軸方向に向かうにつれて本体部23の中心軸に近づくテーパー形状を呈している。
【0059】
延出部24の第1の面24aは、例えば、Oリングなどのシール部材(第1封止部材)28が設けられるシール部材配置領域(封止部材配置領域)28aを含む。シール部材28は、アパーチャーユニット16における電子の通過領域を真空状態に保持する。
【0060】
実施形態において、延出部24は、ハウジング27に接触する面積を増大させる機能を有しているが、延出部24は必ず、直接ハウジング27に接触していなくてもよい。後述のように熱伝導層30を介在させても良い。また、延出部24は、本体部23から少なくとも封止部材配置領域28aよりも外側まで延びる長さを有していればよい。
【0061】
図3に示すように、接触部分24cは、Z方向における厚さが電子の通過領域である本体部23の中心軸からの距離が離間するにつれて薄くなるテーパー形状を有している。一方、ハウジング27における延出部24との接触部分27´は、Z方向における厚さが本体部23の中心軸からの距離が離間するにつれて厚くなる逆テーパー形状を有している。
【0062】
延出部24は、接触部分24cがペースト状の熱伝導層30を介してハウジング27に接触する。本実施形態において、熱伝導層30は、延出部24の接触部分24cとハウジング27の接触部分27´との間に配置されている。
【0063】
熱伝導層30は、図4に示すように、シート状の樹脂層30aと、該樹脂層30aに混ぜ込まれた熱伝導性粒子30bと、を含む。樹脂層30aは、例えばアクリル樹脂又はシリコン樹脂である。また、熱伝導性粒子30bは、延出部24よりも熱伝導性が高い金属から構成される。
【0064】
ターゲット14は、ハウジング27の支持部27cと対向する位置に配置される。ターゲット14は、ターゲット保持部31を介してハウジング27に取り付けられる。ターゲット保持部31は、ハウジング27の本体27aの外面に設けられた保持部29に支持される。保持部29とターゲット保持部31との間には、例えば、Oリングなどのシール部材32aが設けられている。シール部材32aは、保持部29とターゲット保持部31との接続部分の隙間を密閉することで、X線源2の内部空間を実質的に真空に保持する。
【0065】
ターゲット保持部31とハウジング27の支持部27cとの間には、例えば、Oリングなどのシール部材(第2封止部材)32bが設けられている。シール部材32bは、ハウジング27とターゲット保持部31との隙間を密閉することで、X線源2の内部空間を実質的に真空に保持する。シール部材32bは、ターゲット14、ターゲット保持部31、ハウジング27、及びアパーチャーユニット16で囲まれた空間SP1を密閉状態に保持し、実質的に真空に保持する。空間SP1は、ターゲット14に向かう電子が通過する領域である。
【0066】
X線源2において、ターゲット14に電子が照射されると、その電子のエネルギーのうち、一部のエネルギーが、X線となり、一部のエネルギーが、熱となる。ターゲット14に対する電子の照射により、ターゲット14、ターゲット14の周囲の空間、及びターゲット14の近傍に配置されている部材の温度が上昇する。
【0067】
本実施形態において、X線源2は、ターゲット14に向かう電子の一部をアパーチャーユニット16のアパーチャー部16aで遮断することで、射出部7において実質的に点X線源を構成している。そのため、ターゲット14に向かう電子の一部を遮蔽するアパーチャー部16a及びアパーチャーユニット16は、温度が大きく上昇する可能性がある。
【0068】
アパーチャー部16a及びアパーチャーユニット16の温度が上昇すると、周辺のシール部材26、32a、32bが熱により劣化する可能性がある。
【0069】
本実施形態において、X線源2は、シール部材26、32a、32bによって内部空間が実質的に真空に保持されているため、これらシール部材26、32a、32bが劣化すると、内部空間に外気(酸素及び窒素)が入り込んでしまう可能性がある。このように、フィラメント13で発生した電子が酸素原子や窒素原子と衝突することでエネルギーを失い、X線の発生効率が低下してしまう可能性がある。その結果、検出装置4の検出精度(検出精度、測定精度)が低下する可能性がある。
【0070】
本実施形態において、アパーチャーユニット16は、本体部23の径方向に沿って外側に延びる延出部24を有している。アパーチャー部16aは、電子を遮蔽することで温度が上昇する。アパーチャー部16aが形成された本体部23は、アパーチャー部16aとともに温度が上昇する。延出部24は、Z軸方向において、アパーチャーユニット16(本体部23)における上記アパーチャー部16aの形成位置に設けられている。そのため、本体部23の熱は、効率良く延出部24へと拡散される。延出部24が存在することにより、アパーチャーユニット16の熱抵抗が低下する。したがって、アパーチャー部16aを形成するダイヤフラムで発生する熱を効率よく延出部24に排出することができる。すなわち、ダイヤフラムが発した熱は、本体部23を介して延出部24側に拡散される。したがって、本実施形態では、例えばダイヤフラムにおいて電子を遮蔽することで熱が生じても、延出部24に熱を拡散させることでアパーチャーユニット16の温度上昇が抑制される。したがって、シール部材26、32a、32bの劣化が抑制され、X線源2の内部空間を長期に亘って実質的に真空に保持することができる。よって、X線源2にてX線を効率よく発生させることができる。また、熱を効率的にハウジング27に逃がし、ハウジング27を介して外装本体17に伝達できる。外装本体17には、冷却装置2Bとの間で循環している流体の流路40が形成されているので、ダイヤフラムで発生した熱が効率的に冷却装置2Bに伝搬する。したがって、電子光学系を保持するヨーク部19やハウジング27を含む外装本体17が極度に加熱されないので、外装本体17の熱膨張による変位を小さくすることができる。そのため、ハウジング27に支持されているターゲット14がダイヤフラムの発熱によって生ずる変位が少ないので、長時間にわたるX線の露光で測定対象の形状等を検出する検出装置4に対しては、その検出精度(検出精度、測定精度)の低下が抑制される。
【0071】
また、本実施形態においては、延出部24がZ軸方向から視て本体部23の全周に亘って設けられるので、本体部23の全周方向に亘って熱を拡散させることでアパーチャー部16aの温度上昇が抑制される。また、延出部24があることで、ハウジング27と熱的に連通している面積が増えている。それゆえ、効率的にダイヤフラムの熱がハウジング27に排出できる。
【0072】
また、本実施形態において、延出部24がハウジング27に接触する接触部分24cを有している。接触部分24cは、ハウジング27の内面に倣った形状を有する。したがって、アパーチャー部16aから延出部24に拡散した熱は、接触部分24cを介してハウジング27に拡散される。そのため、アパーチャー部16a及びアパーチャーユニット16の温度上昇によって周辺のシール部材26、32a、32bが劣化することを抑制できる。
【0073】
また、本実施形態においては、接触部分24cに熱伝導層30が設けられているので、熱伝導層30を介して延出部24の熱をハウジング27側に効率よく拡散させることができる。熱伝導層30は、延出部24よりも熱伝導性が高い金属から構成された熱伝導性粒子30bを含むので、延出部24の熱は熱伝導性粒子30bによってハウジング27側に効率よく拡散させることができる。
【0074】
熱伝導層30は、樹脂層30aを含むペースト状から構成されるものなので、延出部24とハウジング27との隙間に良好に入り込む。よって、熱伝導層30は、例えば寸法公差により生じる延出部24とハウジング27との隙間を埋めた状態とすることができる。また、樹脂層30aは、ターゲット14で発生するX線に対して所定の耐性を有する、例えばアクリル樹脂又はシリコン樹脂から構成されるので、X線が発生するターゲット14の近傍において良好な耐性を得ることができる。
【0075】
また、本実施形態において、冷却装置2Bは、ヨーク部19の−Z方向側に設けられた流路40に温度調整された流体(例えば、水)を導入する。そのため、流路40によりヨーク部19及びヨーク部19に設けられたアパーチャーユニット16の温度上昇が抑制される。
【0076】
なお、本実施形態において、熱伝導層30は、ペースト状のものから構成されていたが、フィルム状の材料から構成されていてもよい。
【0077】
なお、冷却装置は、ターゲット14の温度が所定温度を超えないように、そのターゲット14の温度調整をしてもよい。なお、本実施形態においては、X線源2が冷却装置2Bを備えているが、X線源2が冷却装置2Bを備えていなくてもよい。例えば、チャンバ部材6が冷却装置を備えてもよい。また、例えば、X線装置1が冷却装置を備えていなくてもよい。X線装置1とは別の装置が冷却装置を備えてもよい。
【0078】
次に、本実施形態に係るX線装置1の動作の一例について説明する。検出において、ステージ装置3に測定物Sが保持される。制御装置5は、ステージ装置3を制御して、測定物SをX線源2と検出装置4との間に配置する。
【0079】
制御装置5は、X線源2からX線を射出するために、フィラメント13に電流を流す。
これにより、フィラメント13が加熱され、フィラメント13から電子が放出される。フィラメント13から放出された電子は、アパーチャーユニット16を介してターゲット14に照射される。これにより、ターゲット14からX線が発生する。
【0080】
X線源2から発生したX線の少なくとも一部は、測定物Sに照射される。測定物SにX線源2からのX線が照射されると、その測定物Sに照射されたX線の少なくとも一部は、測定物Sを透過する。測定物Sを透過した透過X線は、検出装置4の入射面10に入射する。検出装置4は、測定物Sを透過した透過X線を検出する。検出装置4は、測定物Sを透過した透過X線に基づいて得られた測定物Sの像を検出する。検出装置4の検出結果は、制御装置5に出力される。
【0081】
本実施形態において、制御装置5は、測定物SにおけるX線源2からのX線の照射領域を変えるために、測定物Sの位置を変えながら、その測定物SにX線源2からのX線を照射する。すなわち、制御装置5は、複数の測定物Sの位置ごとで、測定物SにX線源2からのX線を照射し、その測定物Sを透過した透過X線を、検出装置4で検出する。
【0082】
本実施形態において、制御装置5は、測定物Sを保持したステージ装置3(ステージ装置3のうち、測定物Sを保持する保持部)を回転して、X線源2に対する測定物Sの位置を変えることによって、測定物SにおけるX線源2からのX線の照射領域を変える。
【0083】
すなわち、本実施形態において、X線が測定物Sに照射される期間の少なくとも一部において、ステージ装置3は、測定物SをθY方向に移動(回転)させる。制御装置5は、測定物Sを保持したステージ装置3(ステージ装置3のうち、測定物Sを保持する保持部)を回転させながら、その測定物SにX線を照射する。ステージ装置3の各位置(各回転角度)において測定物Sを通過した透過X線(X線透過データ)は、検出装置4に検出される。検出装置4は、各位置における測定物Sの像を取得する。
【0084】
制御装置5は、検出装置4の検出結果から、測定物Sの内部構造を算出する。本実施形態において、制御装置5は、測定物Sの各位置(各回転角度)のそれぞれにおいて測定物Sを通過した透過X線(X線透過データ)に基づく測定物Sの像を取得する。すなわち、制御装置5は、測定物Sの像を複数取得する。
【0085】
制御装置5は、測定物Sを回転させつつその測定物SにX線を照射することにより得られた複数のX線透過データ(像)に基づいて演算を行って、測定物Sの断層画像を再構成して、測定物Sの内部構造の三次元データ(三次元構造)を取得する。これにより、測定物Sの内部構造が算出される。測定物の断層画像の再構成方法としては、例えば、逆投影法、フィルタ補正逆投影法、及び逐次近似法が挙げられる。逆投影法及びフィルタ補正逆投影法に関しては、例えば、米国特許出願公開第2002/0154728号に記載されている。また、逐次近似法に関しては、例えば、米国特許出願公開第2010/0220908号に記載されている。
【0086】
以上説明したように、本実施形態によれば、アパーチャーユニット16が延出部24を備えることでアパーチャー部16aの熱を外部に拡散させるようにしたので、アパーチャー部16aの温度上昇に起因するシール部材26、32a、32bの劣化が抑制される。したがって、X線源2の内部空間を長期に亘って実質的に真空に保持されるので、X線源2がX線を効率よく発生させることでX線装置1の検出精度(検査精度、測定精度)の低下を抑制できる。例えば、X線装置1は、測定物Sの内部構造に関する情報を正確に取得することができる。
【0087】
<第2実施形態>
次に、第2実施形態について説明する。以下の説明において、上述の実施形態と同一又は同等の構成部分については同一の符号を付し、その説明を簡略若しくは省略する。
【0088】
本実施形態においては、上述したX線装置(1など)を備えた構造物製造システムについて説明する。
【0089】
図5は、本実施形態に係る構造物製造システム200の一例を示すブロック構成図である。構造物製造システム200は、上述の各実施形態で説明したX線装置(検査装置)1と、設計装置110と、成形装置120と、制御システム130と、リペア装置140とを備える。本実施形態において、X線装置1は、構造物の形状に関する座標を測定する形状測定装置として機能する。制御システム130は、座標記憶部131及び検査部132を有する。
【0090】
本実施形態においては、構造物製造システム200は、自動車のドア部分、エンジン部品、ギア部品、及び回路基板を備える電子部品等の成形品を作成する。
【0091】
本実施形態においては、構造物製造システム200において、構造物の形状に関する設計情報が作成される設計工程と、設計情報に基づいて構造物が作成される成形工程と、作成された構造物の形状がX線装置により計測される測定工程と、測定工程で取得された形状情報と設計情報とが比較される検査工程とが行われる。
【0092】
また、本実施形態においては、構造物製造システム200において、検査工程の比較結果に基づいて、構造物の再加工が実施されるリペア工程が行われる。
【0093】
設計工程において、設計装置110は、構造物の形状に関する設計情報を作成する。設計装置110は、作成した設計情報を、成形装置120に送信する。設計情報は、成形装置120に入力される。また、設計装置110は、作成した設計情報を、制御システム130に送信する。設計情報は、制御システム130の座標記憶部131に記憶される。
【0094】
設計情報とは、構造物の各位置の座標を示す情報である。
【0095】
成形工程において、成形装置120は、構造物を作成する。成形装置120は、設計装置110からの設計情報に基づいて、構造物を作成する。成形工程において、鋳造、鍛造、及び切削の少なくとも一つが行われてもよい。
【0096】
測定工程において、X線装置1は、作成された構造物の形状を測定する。X線装置1は、測定した座標を示す情報を制御システム130へ送信する。
【0097】
検査工程において、検査部132は、測定工程で取得された形状情報と、設計工程で作成された設計情報とを比較する。制御システム130の座標記憶部131には、設計装置110から送信された設計情報が記憶されている。検査部132は、座標記憶部131から設計情報を読み出す。
【0098】
検査部132は、X線装置1から送信された座標を示す情報から、作成された構造物を示す情報(形状情報)を作成する。検査部132は、X線装置1から送信された座標を示す情報(形状情報)と、座標記憶部131から読み出した設計情報とを比較する。検査部132は、比較結果に基づいて、構造物が設計情報通りに成形されたか否かを判定する。
換言すれば、検査部132は、作成された構造物が良品であるか否かを判定する。
【0099】
検査部132は、構造物が設計情報通りに成形されていない場合、修復可能であるか否か判定する。修復できる場合、検査部132は、比較結果に基づいて、不良部位と修復量とを算出する。検査部132は、不良部位を示す情報と修復量を示す情報とをリペア装置140に送信する。
【0100】
リペア工程において、リペア装置140は、制御システム130から受信した不良部位を示す情報と修復量を示す情報とに基づいて、構造物の不良部位を加工する。リペア工程において、構造物の再加工が実施される。リペア工程において、成形工程が再実行される。
【0101】
図6は、構造物製造システム200における処理の流れを示したフローチャートである。
【0102】
設計装置110は、構造物の形状に関する設計情報を作製する(ステップS101)。
【0103】
次に、成形装置120は、設計情報に基づいて構造物を作成する(ステップS102)。
【0104】
次に、X線装置1は、構造物の形状に関する座標を計測する(ステップS103)。
【0105】
次に,制御システム130の検査部132は、X線装置1によって作成された構造物の形状情報と、設計情報とを比較することにより、構造物が設計情報通りに作成された否かを検査する(ステップS104)。
【0106】
次に、制御システム130の検査部132は、作成された構造物が良品であるか否かを判定する(ステップS105)。
【0107】
作成された構造物が良品である場合(ステップS105においてYESと判断された場合)、構造物製造システム200は、その処理を終了する。
【0108】
作成された構造物が良品でない場合(ステップS105においてNOと判断された場合)、制御システム130の検査部132は、作成された構造物が修復できるか否か判定する(ステップS106)。
【0109】
作成された構造物が修復できる場合(ステップS106においてYESと判断された場合)、リペア装置140は、構造物の再加工を実施し(ステップS107)、ステップS103の処理に戻る。
【0110】
作成された構造物が修復できない場合(ステップS106においてNOと判断された場合)、構造物製造システム200は、その処理を終了する。
【0111】
以上で、本フローチャートの処理を終了する。
【0112】
以上説明したように、X線装置1が構造物の座標を正確に測定できるため、構造物製造システム200は、作成された構造物が良品であるか否か判定することができる。また、構造物製造システム200は、構造物が良品でない場合、構造物の再加工を実施し、修復することができる。
【0113】
また、構造物製造システム200は、X線装置1を用いて、構造物の欠陥の検出のみならず、構造物の内部の情報を非破壊で取得する非破壊検査を行うことができる。また、構造物製造システム200は、X線装置1を用いて、構造物の外形の寸法を計測することができる。また、構造物製造システム200は、X線装置1を用いて、リバースエンジニアリングを行うことができる。
【0114】
なお、上述の各実施形態においては、X線装置がX線源を有することとしたが、X線源がX線装置に対する外部装置でもよい。換言すれば、X線源がX線装置の少なくとも一部を構成しなくてもよい。
【0115】
また、上述の各実施形態は、例えば米国特許出願公開第2005/0254621号、米国特許第7233644号等に開示されているような、複数のX線源を備えたX線装置にも適用できる。
【0116】
また、上述の各実施形態は、例えば米国特許出願公開第2007/685985号、米国特許出願公開第2001/802468号等に開示されているような、被検物を回転させる回転軸に沿って、被検物を順次移動させるヘリカル方式のX線装置にも適用できる。
【0117】
また、上述の各実施形態は、米国特許出願公開第2010/0220834号に開示されているような、被検物中を進む際にX線に生じるわずかな偏向を評価する位相コントラスト方式のX線装置にも適用できる。
【0118】
また、上述の各実施形態は、例えば米国特許出願公開第2009/0003514号、米国特許出願公開第2007/0230657号等に開示されているような、ベルトコンベアーで手荷物を移動し、X線により手荷物の含有物を明らかにするようなX線装置にも適用することができる。
【符号の説明】
【0119】
1…X線装置、2…X線源、3…ステージ装置、4…検出装置、13…フィラメント、14…ターゲット、15,15A…導電子部材、16…アパーチャーユニット、16a…アパーチャー部、17…外装本体、27…ハウジング、28…シール部材(第1封止部材)、30…熱伝導層、30a…樹脂層、30b…熱伝導性粒子、31…ターゲット保持部、32a,32b…シール部材、200…構造物製造システム、S…測定物
図1
図2
図3
図4
図5
図6