特許第6201518号(P6201518)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6201518
(24)【登録日】2017年9月8日
(45)【発行日】2017年9月27日
(54)【発明の名称】C5−C6化合物を製造するための触媒
(51)【国際特許分類】
   C01B 39/02 20060101AFI20170914BHJP
   C01B 39/06 20060101ALI20170914BHJP
   C01B 39/44 20060101ALI20170914BHJP
   B01J 29/072 20060101ALI20170914BHJP
   C07C 1/24 20060101ALI20170914BHJP
   C07C 9/14 20060101ALI20170914BHJP
   C07C 11/10 20060101ALI20170914BHJP
   C07C 11/107 20060101ALI20170914BHJP
   B01J 29/68 20060101ALI20170914BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20170914BHJP
【FI】
   C01B39/02
   C01B39/06
   C01B39/44
   B01J29/072 Z
   C07C1/24
   C07C9/14
   C07C11/10
   C07C11/107
   B01J29/68 Z
   !C07B61/00 300
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-171106(P2013-171106)
(22)【出願日】2013年8月21日
(65)【公開番号】特開2015-40143(P2015-40143A)
(43)【公開日】2015年3月2日
【審査請求日】2016年7月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】高光 泰之
【審査官】 廣野 知子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平04−228418(JP,A)
【文献】 特開昭61−014117(JP,A)
【文献】 特開平11−216359(JP,A)
【文献】 特表2009−519824(JP,A)
【文献】 特表2008−546632(JP,A)
【文献】 特公昭48−018201(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 33/20−39/54
B01J 21/00ー38/74
C07B 31/00−61/00
C07B 63/00−63/04
C07C 1/00−409/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
骨格を形成するアルミニウムに対する、ニッケル及び骨格を形成するアルミニウムの合計のモル比が1.05以上、1.40以下であり、細孔の最大直径が0.4nm以上0.5nm以下であるゼオライト。
【請求項2】
前記ゼオライトがFER型ゼオライト又はMWW型ゼオライトであることを特徴とする請求項1に記載のゼオライト。
【請求項3】
Alに対するSiOのモル比が5以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載のゼオライト。
【請求項4】
ニッケル含有量が0.5重量%以上であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のゼオライト。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載のゼオライトを含む触媒。
【請求項6】
請求項5に記載の触媒を使用することを特徴とする炭素数5以上6以下の炭素化合物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭素数5以上6以下の炭素化合物を合成するための触媒に適したゼオライトに関する。より詳しくは、低炭素数の炭素化合物から炭素数5以上6以下の炭素化合物を合成する重合触媒に適したゼオライトに関する。
【背景技術】
【0002】
近年の石油価格の高騰や、天然ガスの安価な供給、更にはバイオエタノールをはじめとするバイオマス原料の増加により、炭素数の少ない炭化化合物を原料として、炭素数の多い炭化水素を得る方法が検討されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、クロムカルボニル錯体とアルキル金属化合物からなる触媒、及びこれを用いたエチレンから炭素数6の炭化水素(以下、「C6化合物」とする。)を合成する方法が開示されている。
【0004】
特許文献2には、クロム化合物、窒素含有化合物、及びアルミニウム含有化合物からなる触媒、及びこれを用いてエチレンからC6化合物を合成する方法が開示されている。
【0005】
特許文献3には、タンタル化合物に添加剤としての炭化水素化合物を用いた触媒、及びこれによりエチレンからC6化合物を合成する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4352512号公報
【特許文献2】特開2009−120588号公報
【特許文献3】特開2011−167691号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1乃至3で開示された触媒は、いずれもC5−C6化合物を得るための反応を高圧下で行う必要があった。これらのうち、特許文献1の触媒は最も低い反応圧力であったが、C5−C6化合物を得るためには5kg/cm(0.5MPa)が必要であった。
【0008】
また、これらの触媒は錯体触媒であった。そのため、C5−C6化合物が生成しても、触媒と生成物の分離が困難であり、選択率高くC5−C6化合物を得ることは困難であった。
【0009】
本発明は、常圧における反応であっても、C5−C6化合物が高い選択率で得られる触媒として適したゼオライトを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は前項課題を解決すべく鋭意研究を行った。その結果、特定の大きさの細孔を有しニッケルを含有するゼオライトであって、なおかつ、ニッケルと、ゼオライト骨格中のアルミニウムとが一定の関係であるゼオライトが、炭素数が小さい炭素化合物から、炭素数が5以上6以下の炭素化合物(以下、「C5−6化合物」とする。)を効率よく得られることを見出した。
【0011】
以下、本発明のゼオライトについて説明する。
【0012】
本発明において、ゼオライトとは、結晶性アルミノシリケートを意味する。結晶性アルミノシリケートは、ケイ素(Si)とアルミニウム(Al)とが酸素(O)を介して形成したネットワークを骨格構造とする多孔体である。
【0013】
本発明のゼオライトは、細孔の最大直径が0.4nm以上0.5nm以下である。細孔の最大直径が0.4nm未満であると、C5−6化合物がゼオライト中にトラップされる。そのため、C5−6化合物が生成しても、これを回収することができなくなる。一方、細孔の最大直径が0.5nmを超えると、炭素数7以上の炭素化合物(以下、「高炭素化合物」とする。)、及び環状炭素化合物が生成しやすくなる。
【0014】
細孔の最大直径がこの範囲に入るゼオライトとして、FER型ゼオライト又はMWW型ゼオライト、更にはFER型ゼオライトを挙げることができる。
【0015】
なお、本発明において「細孔の最大直径」とは、ゼオライトが有する細孔のうち、最も大きい細孔径を有する細孔の直径である。最大細孔の直径は、その長径と短径との平均値から求めることができる。例えば、FER型ゼオライトは、短径が0.42nm及び長径が0.54nmの細孔と、の細孔と短径が0.35nm及び長径が0.48nmの細孔とを有する。そのため、本発明における細孔の最大直径は0.48nmである。
【0016】
長径と短径は国際ゼオライト学会のWebサイト(http://www.iza−structure.org/databases/)またはATLAS OF ZEOLITE FRAMEWORK TYPES(6th Edition、Elsevier、Structure Commission of the International Zeolite Association、2007)に記載されている。
【0017】
本発明のゼオライトは、二次元細孔又は三次元細孔の少なくともいずれかを有することが好ましい。これらの細孔構造を有することで、炭素化合物の析出反応に供しても、劣化しにくいゼオライトとなる。
【0018】
本発明のゼオライトはニッケルを含有する。本発明のゼオライトに含有されるニッケルは、その一部又は全部が、2価ニッケル(Ni2+)である。ニッケルを含有することで、本発明のゼオライトが高い触媒活性を有する。なお、ニッケルは、本発明のゼオライトのイオン交換サイト又は細孔の少なくともいずれかに含有されると考えられる。
【0019】
本発明のゼオライトは、その骨格を形成するアルミニウム(以下、「骨格アルミニウム」とする。)に対する、ニッケル及び骨格アルミニウムの合計のモル比(以下、「(Ni+Al)/Al比」とする。)が1.05以上、1.40以下であり、1.05以上、1.20以下であることが好ましい。本発明のゼオライトにおいて、ニッケルは炭素化合物の重合反応を促進する。一方、骨格アルミニウムは、炭素化合物の重合反応を促進するとともに、その分解反応を促進する。
【0020】
本発明のゼオライトを触媒として使用した場合において、(Ni+Al)/Al比がこの範囲であることで、炭素化合物の重合反応及び分解反応が適度に進行し、C5−6化合物以外の化合物、すなわち、炭素数4以下の炭素化合物(以下、「低炭素化合物」とする。)、高炭素化合物、及び環状炭素化合物が生成しにくくなる。これにより、C5−C6化合物が高い選択率で得られる。
【0021】
本発明のゼオライトは、上記の(Ni+Al)/Al比を満たし、なおかつ、その骨格に適度な量のアルミニウムを含むことが好ましい。ゼオライト骨格における骨格アルミニウムの割合が少ないほど、触媒寿命が長くなりやすい。本発明のゼオライトのAlに対するSiOのモル比(以下、「SiO/Al比」とする。)が5以上、更には10以上であれば実用的な触媒寿命を有する。一方、SiO/Al比が50以下、更には30以下であれば実用的な触媒寿命を有し、なおかつ、より高い効率でC5−6化合物を得ることができる。
【0022】
本発明のゼオライトが含有するニッケルの量は、上記の(Ni+Al)/Al比を満たす量であればよく、本発明のゼオライトのSiO/Al比に依存する。本発明のゼオライトのニッケル含有量は、例えば、0.5重量%以上、更には1重量%以上であることが挙げられる。一方、ニッケル含有量が4重量%以下、更には3重量%以下、更に好ましくは1重量%以下であれば、実用的な収率でC5−C6化合物を得ることができる。
【0023】
なお、ニッケル含有量における重量%は、ゼオライトの重量に対するニッケル重量である。
【0024】
比表面積が高くなるほど、触媒としての活性が高くなりやすい。そのため、本発明のゼオライトの比表面積として200m/g以上を挙げることができる。
【0025】
次に、本発明のゼオライトの製造方法について説明する。
【0026】
本発明のゼオライトは、ゼオライトにニッケルを含有させることで得られる。本発明のゼオライトの製造方法として、原料として任意のカチオンタイプのゼオライトを用い、これとニッケル化合物を接触させるニッケル含有工程を有する製造方法を挙げることができる。
【0027】
ニッケル含有工程において、原料として用いるゼオライト(以下、「原料ゼオライト」とする。)のカチオンタイプは、プロトン(H)型、アンモニア(NH)型、ナトリウム(Na)型、カリウム(K)型及びナトリウム・カリウム型の群から選ばれるいずれかであることが好ましい。ニッケルを含有させやすくするため、カチオンタイプはプロトン型又はアンモニア型の少なくともいずれか、更にはプロトン型であることが好ましい。
【0028】
原料ゼオライトのSiO/Al比は、本発明のゼオライトと同程度となる。したがって、原料ゼオライトのSiO/Al比は、目的とする本発明のゼオライトと同程度であればよく、5以上、50以下、更には10以上、50以下であればよい。
【0029】
原料ゼオライトの比表面積は本発明のゼオライトと同等になる。したがって、原料ゼオライトの比表面積は、200m/g以上であればよい。
【0030】
原料ゼオライトとニッケル化合物とを接触させる方法(以下、「接触方法」とする。)は、原料ゼオライトのイオン交換サイト又は細孔の少なくともいずれかにニッケルが含有される方法であればよい。具体的な接触方法として、イオン交換法、蒸発乾固法及び含浸担持法の群から選ばれる少なくともいずれかを挙げることができ、ニッケル化合物を含む水溶液(以下、「ニッケル水溶液」とする。)と原料ゼオライトとを混合する方法が挙げることができる。
【0031】
ニッケル化合物は、ニッケルの無機酸塩、更には硫酸ニッケル、硝酸ニッケル、酢酸ニッケル及び塩化ニッケルの群から選ばれる少なくとも1種を挙げることができる。
【0032】
ニッケル水溶液とする場合、そのニッケル濃度は、原料ゼオライトに含有させるニッケル量により適宜調整すればよい。ニッケル濃度として、例えば、10〜300mmol/Lを挙げることができる。
【0033】
本発明のゼオライトの製造方法は、洗浄工程、乾燥工程、又は活性化工程の少なくともいずれか1以上の工程を含んでいてもよい。
【0034】
洗浄工程は、ゼオライトの不純物等を除去されれば、任意の洗浄方法を用いることができる。例えば、ニッケル含有工程後のゼオライトを十分量の純水で洗浄することが挙げられる。
【0035】
乾燥工程は、ゼオライトの水分を除去できれば、任意の乾燥方法を用いることができる。例えば、ゼオライトを、大気中で、100℃以上、200℃以下で処理することが挙げられる。
【0036】
活性化工程は、ゼオライトに含まれる有機物を除去工程である。例えば、ゼオライトを、大気中、200℃を超え600℃以下で処理することが挙げられる。
【0037】
本発明のゼオライトは重合触媒として、更にはC5−C6化合物を製造するための重合触媒として使用することができる。
【0038】
本発明のゼオライトを触媒として使用する場合、これと反応基質とを常圧で接触させればよい。本発明のゼオライトは、高い触媒特性を有するため、高圧下でなくとも、反応基質からC5−C6化合物を高い選択率で製造することができる。
【0039】
ここで、常圧とは、大気圧と同程度の圧力であり、0.07MPa以上、0.13MPa以下の圧力であることが好ましい。
【0040】
反応基質としては、低炭素化合物、更には酸素原子又は窒素原子の少なくともいずれかを構造に含む低炭素化合物、また更には炭素数4以下のアルコール、ケトン、エーテル、エステル及び炭化水素の群から選ばれる少なくともいずれか、また更には炭素数4以下のアルコール又は炭化水素の少なくともいずれか、また更にはエタノール又はエチレンの少なくともいずれか、また更にはエタノールを挙げることができる。
【0041】
本発明のゼオライトと反応基質との接触させる方法としては、反応基質を含むガス(以下、「反応ガス」とする。)と本発明のゼオライトとを接触させる方法が挙げられる。
【0042】
反応ガスは、反応基質を含んでいればよく、反応基質を10〜100体積%含んでいることが好ましい。反応ガスに含まれる反応基質以外の成分は、窒素、水蒸気又は酸素などを挙げることができる。
【0043】
本発明のゼオライトを用いたC5−C6化合物の製造方法において、好ましい反応条件として以下のものを挙げることができる。すなわち、反応槽として常圧固定床、及び反応基質を10〜100体積%含有する反応ガスを用い、反応圧力を大気圧、反応温度を200〜500℃、更には200〜400℃、及び、触媒重量(g)に対する反応基質導入速度(g/時間)の比(以下、「WHSV」とする。)を0.01〜1時間−1、更には0.1〜1時間−1とした反応条件により、C5−C6化合物を製造することが好ましい。
【0044】
本発明のゼオライトを触媒として得られるC5−C6化合物は、反応基質の影響を受ける。C5−C6化合物は、炭素数が5以上6以下の炭素化合物であり、更には炭素数が5以上6以下の炭化水素であり、更にはペンタン、シクロペンタン、ペンテン、シクロペンテン、ペンタジエン、シクロペンタジエン、メチルブタン、メチルシクロブタン、メチルブテン、メチルシクロブテン、メチルブタジエン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘキセン、シクロヘキセン、ヘキサジエン、シクロヘキサジエン、メチルペンタン、メチルシクロペンタン、メチルペンテン、メチルシクロペンテン、メチルペンタジエン、メチルシクロペンタジエン、ジメチルブタン、ジメチルシクロブタン、ジメチルブテン、ジメチルシクロブテン、及びジメチルブタジエンの群から選ばれる少なくとも1種である。
【発明の効果】
【0045】
本発明により、常圧下においても、C5−C6化合物を高い選択率で製造することができる重合触媒を提供することができる。
【実施例】
【0046】
以下、本発明を実施例で説明する。しかしながら、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0047】
(組成分析)
試料をフッ酸と硝酸の混合水溶液で溶解して測定溶液とした。一般的なICP装置(商品名:OPTIMA3300DV,PerkinElmer社製)を用い、当該測定溶液を誘導結合プラズマ発光分光分析(ICP−AES)で測定した。
【0048】
得られた測定結果から(Ni+Al)/Al比、SiO/Al比、及びニッケル含有量を測定した。
【0049】
(触媒評価)
試料を40MPaで1分間成形、粉砕し、直径1mmに成形して触媒試料とした。触媒試料10gを、石英反応管の中に充填し、当該石英反応管を有する常圧固定床を用いて触媒評価を行った。触媒評価は、窒素雰囲気下で触媒試料を350℃まで昇温した後、大気圧下で25体積%のエタノールを含む窒素ガス(以下、「原料ガス」とする。)をこれに流通させることで行った。原料ガスの導入速度はWHSV=0.12h−1とし、原料ガスの流通開始から30分経過後、触媒を流通したガスを回収した。
【0050】
(生成化合物の定量)
ガスクロマトグラフィー(商品名:GC−14A、島津製作所製)を用いて、触媒評価において回収されたガスの炭化水素化合物濃度を定量した。検出には水素炎イオン検出器(FID)を用い、ガスの分離にはキャピラリ−カラム(InterCap1、30m)を用いた。
【0051】
得られた炭化水素化合物濃度から、エタノールに相当する濃度を除いた後、炭素数2(C2)から炭素数6(C6)の化合物及び芳香族化合物に分けて定量した。各炭素数の化合物の生成分率(C−%)は、原料として使用したエタノールに含まれる合計炭素数に対する、C2からC6それぞれの化合物に含まれる合計炭素数の割合として求めた。
【0052】
実施例1
SiO/Al比が18、二次元細孔を有し、プロトン型のFER型ゼオライト(東ソー株式会社製、HSZ−720)30gを、塩化ニッケル濃度51mmol/Lの塩化ニッケル水溶液100mLに添加した。減圧しながら、50℃で水分が蒸発するまで、これを攪拌した。
【0053】
攪拌後、大気中、110℃で12時間乾燥させた後、大気中、500℃で1時間焼成して本実施例のFER型ゼオライトとした。本実施例のFER型ゼオライトの評価結果を表1に示す。本実施例のFER型ゼオライトとのニッケル含有量は1重量%であった。
【0054】
また、本実施例のFER型ゼオライトを用いて触媒評価を行った。評価結果を表2に示す。
【0055】
実施例2
SiO/Al比が10のFER型ゼオライトを使用したこと以外は実施例1と同様な方法で本実施例のFER型ゼオライトを得た。本実施例のFER型ゼオライトの評価結果を表1に、これを用いて行った触媒評価の結果を表2に示した。
【0056】
実施例3
塩化ニッケル濃度153mmol/Lの塩化ニッケル水溶液を使用したこと以外は実施例1と同様な方法で本実施例のFER型ゼオライトを得た。本実施例のFER型ゼオライトの評価結果を表1に、これを用いて行った触媒評価の結果を表2に示した。
【0057】
比較例1
実施例1で使用したプロトン型のFER型ゼオライトと同様なFER型ゼオライトを本比較例のゼオライトとした。
【0058】
本比較例のゼオライトの評価結果を表1に、これを用いて行った触媒評価の結果を表2に示した。
【0059】
比較例2
SiO/Al比が93のFER型ゼオライトを使用したこと以外は実施例1と同様な方法で本比較例のゼオライトを得た。本比較例のゼオライトの評価結果を表1に、これを用いて行った触媒評価の結果を表2に示した。
【0060】
比較例3
FER型ゼオライトの代わりに、三次元細孔を有し、プロトン型のCHA型ゼオライト(SiO/Al比=31;細孔の最大直径0.38nm)を用いたこと以外は実施例1と同様の方法で本比較例のゼオライトを得た。
【0061】
本比較例のゼオライトの評価結果を表1に、これを用いて行った触媒評価の結果を表2に示した。
【0062】
比較例4
FER型ゼオライトの代わりに、二次元細孔を有し、カリウム・ナトリウム型のHEU型ゼオライト(SiO/Al比=10;細孔の最大直径0.53nm)を用いたこと以外は実施例1と同様の方法で本比較例のゼオライトを得た。
【0063】
本比較例のゼオライトの評価結果を表1に、これを用いて行った触媒評価の結果を表2に示した。
【0064】
比較例5
FER型ゼオライトの代わりに、三次元細孔を有し、プロトン型のMFI型ゼオライト(SiO/Al比=40;細孔の最大直径0.55nm)を用いたこと、及び、塩化ニッケル濃度25mmol/Lの塩化ニッケル水溶液を使用したこと以外は実施例1と同様の方法で本比較例のゼオライトを得た。
【0065】
本比較例のゼオライトの評価結果を表1に、これを用いて行った触媒評価の結果を表2に示した。
【0066】
比較例6
FER型ゼオライトの代わりに、三次元細孔を有し、プロトン型のFAU型ゼオライト(SiO/Al比=10;細孔の最大直径0.74nm)を用いたこと以外は実施例1と同様の方法で本比較例のゼオライトを得た。
【0067】
本比較例のゼオライトの評価結果を表1に、これを用いて行った触媒評価の結果を表2に示した。
【0068】
C5〜C6化合物の収量が低く、エチレンの収量が多い。重合活性が不足していることを示している。
【0069】
【表1】
【0070】
【表2】
実施例1乃至3より、本発明のゼオライトはC5−C6化合物の生成量が25%以上、更には40%以上と、常圧における反応であるにもかかわらず、高いC5−C6化合物の選択率を有していることが確認できる。更に、C4化合物の生成量はC5化合物の半分程度であり、C5化合物と近い炭素数を有する化合物との選択率の差が特に高くなっていることが分かる。
【0071】
比較例1では、C5−C6化合物は得られるが、それ以上の芳香族化合物が生成した。これより、(Ni+Al)/Al比が本発明の範囲より低くなる場合、C5−C6化合物だけではなく、芳香族化合物が生成するため、C5−C6化合物の選択率が著しく低くなることが確認できた。
【0072】
比較例2では、その半数以上が炭素数2以下の炭化水素であった。これより、(Ni+Al)/Al比が本発明の範囲より高くなる場合、C5−C6化合物が分解され、より炭素数の少ない炭化水素が生成することにより、C5−C6化合物の選択率が著しく低くなることが確認できた。
【0073】
比較例3では、その半数以上が炭素数2以下の炭化水素であり、なおかつ、C5−C6化合物が全く得られなかった。最大の細孔直径が本発明より小さいゼオライトでは、C5−C6化合物の選択率がゼロになることが確認できた。
【0074】
比較例4及び5では、C5−C6化合物の選択率が低いことに加えて、芳香族が多量に生成した。最大の細孔直径が本発明よりも大きいゼオライトでは、芳香族の生成を抑制できず、C5−C6化合物の選択率が低下することが確認できた。
【0075】
比較例6では、生成物の殆どが炭素数2の化合物であった。エタノールが残留していることから、重合活性の不足が示される。さらに、比較例6のゼオライトは、触媒評価後に顕著に黒色化していた。これより、比較例6のゼオライトは、分子量の大きい炭化水素等による細孔の閉塞が生じ、ごく短時間で触媒としての活性が消失したものと考えられる。