特許第6201672号(P6201672)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6201672
(24)【登録日】2017年9月8日
(45)【発行日】2017年9月27日
(54)【発明の名称】合波用光学素子および合波器
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/30 20060101AFI20170914BHJP
   G02B 5/04 20060101ALI20170914BHJP
   G02B 5/26 20060101ALI20170914BHJP
   G02B 27/28 20060101ALI20170914BHJP
   G02B 6/293 20060101ALI20170914BHJP
【FI】
   G02B5/30
   G02B5/04 B
   G02B5/26
   G02B27/28 Z
   G02B6/293 301
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-238444(P2013-238444)
(22)【出願日】2013年11月19日
(65)【公開番号】特開2015-99233(P2015-99233A)
(43)【公開日】2015年5月28日
【審査請求日】2016年8月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004112
【氏名又は名称】株式会社ニコン
(74)【代理人】
【識別番号】100104776
【弁理士】
【氏名又は名称】佐野 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100119194
【弁理士】
【氏名又は名称】石井 明夫
(72)【発明者】
【氏名】青木 和男
(72)【発明者】
【氏名】加藤 真悦
(72)【発明者】
【氏名】阿部 隆志
(72)【発明者】
【氏名】工藤 仁
【審査官】 廣田 健介
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭57−67910(JP,A)
【文献】 特開2005−128266(JP,A)
【文献】 特開昭60−23809(JP,A)
【文献】 特開平2−167502(JP,A)
【文献】 特開平8−110497(JP,A)
【文献】 特開昭62−75415(JP,A)
【文献】 特開2005−164790(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/00−5/136;5/20−5/30
G02B 6/28−6/293
G02B 27/00−27/64
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
波長が異なる複数の光を多重化する板状の合波用光学素子であって、
前記板状の合波用光学素子の一方に入射面が形成されるとともに、この入射面と対向する面に射出面が形成され、
それぞれ特定波長の光だけを透過または反射させる透過特性を有する複数のフィルターにより、前記複数の光が前記入射面から斜めに入射したときに、これらの光が、当該フィルターを透過または反射して合波された後、前記射出面から射出するように構成され、
前記各フィルターは、前記複数の光を波長の順番に並べたときに、反射する光についてP偏光を反射するフィルターとS偏光を反射するフィルターとが交互に並ぶように設計され、
前記複数のフィルターは、前記射出面側に設けられた第1のフィルターと、前記入射面側に設けられた第2のフィルターと、前記第1のフィルターと前記第2のフィルターとの間に設けられた第3のフィルターとを含み、
前記入射面から入射したP偏光またはS偏光の第1の光は、前記第1のフィルターで反射され、前記第3のフィルターを透過し、前記第2のフィルターで反射され、
前記入射面から入射したP偏光またはS偏光の第2の光は、前記第3のフィルターで反射され、前記第2のフィルターで反射され、
前記第2のフィルターで反射された前記第1の光および前記第2の光が、合波されて前記射出面に導かれるように構成されていることを特徴とする合波用光学素子。
【請求項2】
前記第2のフィルターは、前記入射面から入射したP偏光またはS偏光の第3の光を透過させて前記第1の光および前記第2の光と合波するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の合波用光学素子。
【請求項3】
波長が異なる複数の光を光源から受光し、これらの光を多重化して光ファイバーに案内する合波器であって、
前記複数の光をP偏光またはS偏光に変換する偏光子に、請求項1または2に記載の合波用光学素子が光学的に接続され、
前記複数の光は、前記偏光子により、波長の隣り合う任意の2つの光が、それぞれP偏光、S偏光のいずれか一方と他方とに変換され、前記合波用光学素子において、前記入射面から斜めに入射し、前記フィルターを透過または反射して合波された後、前記射出面から射出するように構成されていることを特徴とする合波器。
【請求項4】
前記合波用光学素子の前記射出面から射出した光を平行光線にして前記光ファイバーに入射させるコリメーターレンズが設けられていることを特徴とする請求項3に記載の合波器。
【請求項5】
前記複数の光は、前記合波用光学素子に対する入射角が12〜35°であることを特徴とする請求項3または4に記載の合波器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に光通信の用途に好適に用いられる合波プリズムなどの合波用光学素子および合波器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の合波用光学素子としては、複数の光学基板からなる積層体に複数の波長選択フィルターが互いに平行に配置したものが提案されていた(例えば、特許文献1参照)。この合波用光学素子では、光源が配設される入射面と、光ファイバーが配設される射出面とが、積層体の同じ側に位置するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−169054号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、こうした合波用光学素子では、入射面と射出面とが積層体の同じ側に位置することから、合波器の構成部品として使用する際に、入射側の装置(光源など)と射出側の装置(光ファイバーなど)とを互いに干渉しない位置に配置できるようにするため、合波用光学素子の入射面と射出面とを離れた部位に設けざるを得ない。その結果、必然的に合波用光学素子の幅が広くなり、合波用光学素子の小型化に対応しにくいという課題があった。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑み、小型化に対応しやすい合波用光学素子を提供することを第1の目的とする。また、このような合波用光学素子を用いた合波器を提供することを第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る第1の合波用光学素子は、波長が異なる複数の光を多重化する板状の合波用光学素子(4)であって、前記板状の合波用光学素子の一方に入射面(42)が形成されるとともに、この入射面と対向する面に射出面(43)が形成され、それぞれ特定波長の光だけを透過または反射させる透過特性を有する複数のフィルター(F1〜F4)により、前記複数の光が前記入射面から斜めに入射したときに、これらの光が、当該フィルターを透過または反射して合波された後、前記射出面から射出するように構成され、前記各フィルターは、前記複数の光を波長の順番に並べたときに、反射する光についてP偏光を反射するフィルターとS偏光を反射するフィルターとが交互に並ぶように設計され、前記複数のフィルターは、前記射出面側に設けられた第1のフィルター(F1)と、前記入射面側に設けられた第2のフィルター(F4)と、前記第1のフィルターと前記第2のフィルターとの間に設けられた第3のフィルター(F2、F3)とを含み、前記入射面から入射したP偏光またはS偏光の第1の光は、前記第1のフィルターで反射され、前記第3のフィルターを透過し、前記第2のフィルターで反射され、前記入射面から入射したP偏光またはS偏光の第2の光は、前記第3のフィルターで反射され、前記第2のフィルターで反射され、前記第2のフィルターで反射された前記第1の光および前記第2の光が、合波されて前記射出面に導かれるように構成されている合波用光学素子としたことを特徴とする。
【0007】
本発明に係る第1の合波器は、波長が異なる複数の光を光源(2)から受光し、これらの光を多重化して光ファイバー(6)に案内する合波器(1)であって、前記複数の光をP偏光またはS偏光に変換する偏光子(3)に、上記合波用光学素子(4)が光学的に接続され、前記複数の光は、前記偏光子により、波長の隣り合う任意の2つの光が、それぞれP偏光、S偏光のいずれか一方と他方とに変換され、前記合波用光学素子において、前記入射面(42)から斜めに入射し、前記フィルター(F1〜F4)を透過または反射して合波された後、前記射出面(43)から射出するように構成されている合波器としたことを特徴とする。
【0008】
なお、ここでは、本発明をわかりやすく説明するため、実施の形態を表す図面の符号に対応づけて説明したが、本発明が実施の形態に限定されるものでないことは言及するまでもない。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、合波用光学素子の表裏両面(反対側)に入射面と射出面とが形成されているので、合波用光学素子を合波器の構成部品として使用する際に、入射側の装置と射出側の装置との干渉を考慮する必要がなくなる。その結果、合波用光学素子の幅を狭くすることができ、合波用光学素子の小型化に対応しやすくなる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施の形態1に係る合波器を示す構成図である。
図2図1に示す合波器の合波用光学素子を示す図であって、(a)はその正面図、(b)はその右側面図である。
図3図2に示す合波用光学素子のフィルターF1の透過特性を示すグラフである。
図4図2に示す合波用光学素子のフィルターF2の透過特性を示すグラフである。
図5図2に示す合波用光学素子のフィルターF3の透過特性を示すグラフである。
図6図2に示す合波用光学素子のフィルターF4の透過特性を示すグラフである。
図7図2に示す合波用光学素子の製造方法の一例を示す工程図であって、(a)は光学基板準備工程の斜視図、(b)は積層板作製工程の斜視図、(c)は積層体作製工程の斜視図、(d)は積層片作製工程の正面図、(e)は光学ブロック準備工程の正面図、(f)は光学片作製工程の正面図、(g)は合体工程の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
[発明の実施の形態1]
図1乃至図7は、本発明の実施の形態1に係る図である。
【0012】
この実施の形態1に係る合波器1は、図1図2に示すように、光源2からの波長が異なる4つの光(例えば、波長λ1=1295.56±1.03nm、波長λ2=1300.05±1.03nm、波長λ3=1304.58±1.04nmおよび波長λ4=1309.14±1.05nmの4つの信号光)をP偏光またはS偏光に変換する偏光子3と、この偏光子3によってP偏光またはS偏光に変換された4つの光を合波して多重化する合波用光学素子4と、この合波用光学素子4から射出した光を平行光線にして光ファイバー6に入射させるコリメーターレンズ5とが、順に光学的に接続されて構成されている。
【0013】
この合波用光学素子4は、図2に示すように、所定のサイズ(例えば、幅L1=3.3mm、奥行きL2=0.8mm、高さL3=3.0mm)の直方体状に形成された石英ガラス製の光学支持体41を有している。この光学支持体41は、その中央に位置する六面体状のフィルター埋設部41aと、このフィルター埋設部41aの左右両側に位置する一対の六面体状のフィルター非埋設部41b、41cとから構成されている。光学支持体41には、その表面(図2上面)に入射面42が形成されているとともに、その裏面(図2下面)に射出面43が入射面42と対向して形成されている。
【0014】
また、光学支持体41のフィルター埋設部41aには、図2に示すように、4個のフィルターF1、F2、F3、F4が互いに平行に配置して埋設されている。これらのフィルターF1、F2、F3、F4は、光学支持体41の表面に略平行な面内での位置が、フィルターF1で反射した光の光路に沿ってずれるように、かつ、光学支持体41の高さ方向(図2上下方向)に離間して設けられている。なお、フィルターF1は、第1のフィルターの一例として用いられているものであり、光学支持体41の射出面43に設けられている。また、フィルターF4は、第2のフィルターの一例として用いられているものであり、光学支持体41の入射面42に設けられている。さらに、フィルターF2、F3はいずれも、第3のフィルターの一例として用いられているものであり、フィルターF1とフィルターF4との間に順に設けられている。
【0015】
ここで、フィルターF1は、図3に示すように、波長1290〜1315nmの全領域でS偏光をほとんど透過せず、ほぼ100%反射する透過特性を有している。また、フィルターF2は、図4に示すように、波長1295.56nmの近傍領域(波長1292〜1299nm)でS偏光をほぼ100%透過するとともに、波長1304.58nmの近傍領域(波長1301〜1315nm)でS偏光をほとんど透過せず、ほぼ100%反射する透過特性を有している。また、フィルターF3は、図5に示すように、波長1295.56nmおよび1304.58nmの近傍領域(波長1290〜1309nm)でS偏光をほぼ100%透過するとともに、波長1300.05nmの近傍領域(波長1297〜1315nm)でP偏光をほとんど透過せず、ほぼ100%反射する透過特性を有している。さらに、フィルターF4は、図6に示すように、波長1295.56nmおよび1304.58nmの近傍領域(波長1290〜1308nm)でS偏光をほとんど透過せず、ほぼ100%反射するとともに、波長1300.05nmの近傍領域(波長1290〜1303nm)でP偏光をほとんど透過せず、波長1309.14nmの近傍領域(波長1306〜1313nm)でP偏光をほぼ100%透過する透過特性を有している。なお、図3図6の各グラフにおいて、横軸は波長(単位:nm)を表し、縦軸は透過率(単位:%)を表す。
【0016】
そして、各フィルターF1〜F4は、上述した4つの光を波長の順番に並べたときに、反射する光についてP偏光を反射するフィルターFとS偏光を反射するフィルターFとが交互に並ぶように設計されている。そのため、後述する合波器1の使用時において、通信速度の向上などを目的として4つの信号光の波長が入り組んでいても(隣り合う信号光の波長が接近していても)、或いは、4つの信号光の入射角を小さくしても、これらの信号光が互いに干渉してしまう事態の発生を未然に防ぐことができる。したがって、フィルターF1〜F4の透過特性の自由度を高めることができ、ひいては合波用光学素子4を低廉に製造することが可能となる。
【0017】
このような合波用光学素子4においては、上述したとおり、入射面42と射出面43とが光学支持体41の表裏両面にそれぞれ反対側になるように互いに対向して形成されているので、この合波用光学素子4を合波器1の構成部品として使用する際に、入射側の装置(光源2など)と射出側の装置(光ファイバー6など)との干渉を考慮する必要がなくなる。その結果、合波用光学素子4の幅L1を狭くすることができ、合波用光学素子4の小型化に対応しやすくなる。
【0018】
次に、以上のような構成を有する合波器1の使用方法について説明する。
【0019】
この合波器1を用いて、波長λ1=1295.56±1.03nm、波長λ2=1300.05±1.03nm、波長λ3=1304.58±1.04nmおよび波長λ4=1309.14±1.05nmの4つの信号光を多重化して光ファイバー6に案内する際には、図2(a)に示すように、これら4つの信号光を波長λ1、波長λ3、波長λ2、波長λ4の順番に並べた状態で光源2から偏光子3に向けて互いに所定の間隔(例えば、0.52mm)で平行に発光させる。すると、これら4つの信号光のうち、波長λ1、λ3の2つの信号光は、偏光子3でS偏光に変換された後、合波用光学素子4の入射面42に所定の入射角(例えば、23.38±0.3°)で斜めに入射する。また、波長λ2、λ4の2つの信号光は、P偏光に変換された後、合波用光学素子4の入射面42に同じ入射角で斜めに入射する。
【0020】
なお、合波用光学素子4に対する信号光の入射角は、合波用光学素子4の小型化を目的とする観点から、12〜35°であることが好ましい。すなわち、この入射角が12°未満だと、光学支持体41の幅L1に対する高さL3の比率が大きくなり、合波用光学素子4が所定のサイズに納まらなくなってしまう。逆に、この入射角が35°を超えると、光学支持体41の高さL3に対する幅L1の比率が大きくなり、合波用光学素子4が所定のサイズに納まらなくなってしまう。さらに、例えば入射角が45°以上になると、透過率が波長に対して急激に変化するエッジがなだらかになる傾向があるため、使用する光の波長の間隔を狭くすることが難しくなる傾向があることから、入射角は35°以下であることが好ましい。
【0021】
そして、これら4つの信号光は、以下に述べるように、合波用光学素子4の光学支持体41の内部で合波されて多重化された後、合波用光学素子4の射出面43から光学支持体41の外部へ射出する。
【0022】
すなわち、波長λ1の信号光のS偏光は、合波用光学素子4の入射面42から光学支持体41の内部へ入射してフィルター非埋設部41c内を斜め下方へフィルターF1に向かって進む。その後、フィルターF1でほぼ100%反射されて、光学支持体41のフィルター埋設部41a内を斜め上方へフィルターF2に向かって進む。さらに、2個のフィルターF2、F3を順に斜め上方へほぼ100%透過した後、フィルターF4でほぼ100%反射されて、光学支持体41のフィルター非埋設部41b内を斜め下方へ進み、合波用光学素子4の射出面43から光学支持体41の外部へ射出する。
【0023】
また、波長λ2の信号光のP偏光は、合波用光学素子4の入射面42から光学支持体41の内部へ入射してフィルター非埋設部41c内を斜め下方へフィルターF3に向かって進む。その後、フィルターF3でほぼ100%反射されて、光学支持体41のフィルター埋設部41a内を斜め上方へフィルターF4に向かって進む。さらに、フィルターF4でほぼ100%反射されて、光学支持体41のフィルター非埋設部41b内を斜め下方へ進み、合波用光学素子4の射出面43から光学支持体41の外部へ射出する。
【0024】
また、波長λ3の信号光のS偏光は、合波用光学素子4の入射面42から光学支持体41の内部へ入射してフィルター非埋設部41c内を斜め下方へフィルターF2に向かって進む。その後、フィルターF2でほぼ100%反射されて、光学支持体41のフィルター埋設部41a内を斜め上方へフィルターF3に向かって進む。さらに、フィルターF3を斜め上方へほぼ100%透過した後、フィルターF4でほぼ100%反射されて、光学支持体41のフィルター非埋設部41b内を斜め下方へ進み、合波用光学素子4の射出面43から光学支持体41の外部へ射出する。
【0025】
さらに、波長λ4の信号光のP偏光は、フィルターF4をほぼ100%透過し、合波用光学素子4の入射面42から光学支持体41の内部へ入射した後、光学支持体41のフィルター非埋設部41b内を斜め下方へ進み、合波用光学素子4の射出面43から光学支持体41の外部へ射出する。
【0026】
その結果、これら4つの信号光(波長λ1〜λ4の信号光)は、合波用光学素子4の光学支持体41の内部で合波されて多重化された後、合波用光学素子4の射出面43から光学支持体41の外部へ射出する。
【0027】
こうして多重化されて合波用光学素子4から射出した4つの信号光は、コリメーターレンズ5により、光ファイバー6の光軸に沿うように平行光線になった後、光ファイバー6に入射する。
【0028】
次に、合波用光学素子4の製造方法の一例について説明する。
【0029】
まず、光学基板準備工程で、図7(a)に示すように、石英ガラスからなる3枚の平板状の光学基板7(第1の光学基板7A、第2の光学基板7Bおよび第3の光学基板7C)を用意する。ここで、第1の光学基板7Aには、その表面全面にフィルターF1が貼り付けられている。また、第2の光学基板7Bには、その表面全面にフィルターF2が貼り付けられている。さらに、第3の光学基板7Cには、その表面全面にフィルターF3が貼り付けられているとともに、その裏面全面にフィルターF4が貼り付けられている。なお、各光学基板7の厚さはいずれも、製造すべき合波用光学素子4の高さL3の1/3に等しい。
【0030】
その後、積層板作製工程に移行し、図7(b)に示すように、これら3枚の光学基板7を積層して積層板8を作製する。この積層板8の厚さは、製造すべき合波用光学素子4の高さL3に等しくなる。
【0031】
次いで、積層体作製工程に移行し、図7(c)に示すように、この積層板8を所定の切断幅で切断して複数の積層体9を作製する。このとき、製造すべき合波用光学素子4の奥行きL2に各積層体9の幅が等しくなるように切断する。なお、図7(b)における破線は、このときの切断面を示している。
【0032】
その後、積層片作製工程に移行し、図7(d)に示すように、各積層体9をそれぞれ所定の切断幅および切断角度で斜めに切断して複数の積層片10を作製する。このとき、製造すべき合波用光学素子4のフィルター埋設部41aの形状に各積層片10が合致するように切断する。
【0033】
一方、光学ブロック準備工程で、図7(e)に示すように、所定のサイズの直方体状の石英ガラスからなる光学ブロック11を用意する。ここで、光学ブロック11の形状は、製造すべき合波用光学素子4の一対のフィルター非埋設部41b、41cを合体させた形状(直方体)に合致している。また、光学ブロック11の表面全面には、迷光の防止や透過率の向上を目的として、反射防止膜が形成されている。
【0034】
その後、光学片作製工程に移行し、図7(f)に示すように、この光学ブロック11を所定の切断位置および切断角度で斜めに切断して2個の光学片12を作製する。このとき、製造すべき合波用光学素子4の一対のフィルター非埋設部41b、41cに2個の光学片12が合致するように切断する。なお、図7(e)における破線は、このときの切断面を示している。
【0035】
最後に、合体工程に移行し、図7(g)に示すように、積層片10を左右両側から2個の光学片12で挟み込むようにして、積層片10の左右両側にそれぞれ各光学片12を接着して合体する。すると、積層片10および2個の光学片12からなる合波用光学素子4が得られる。
【0036】
ここで、合波用光学素子4の製造方法が終了する。
【0037】
このような製造方法によれば、3枚の光学基板7および光学ブロック11から多数の合波用光学素子4を効率よく製造することができる。
[発明のその他の実施の形態]
なお、上述した実施の形態1では、石英ガラス製の光学支持体41を有する合波用光学素子4について説明したが、光学支持体41の材料は石英ガラスに限るわけではない。
【0038】
また、上述した実施の形態1では、フィルターF1、F4がそれぞれ光学支持体41の射出面43、入射面42に設けられている場合について説明した。しかし、フィルターF1は、必ずしも光学支持体41の射出面43に設ける必要はなく、光学支持体41の射出面43側に設ければよい。また、フィルターF4は、必ずしも光学支持体41の入射面42に設ける必要はなく、光学支持体41の入射面42側に設ければよい。
【0039】
また、上述した実施の形態1では、光学支持体41に4個のフィルターF1〜F4が埋設された合波用光学素子4について説明した。しかし、これらのフィルターF1〜F4を所定の位置で支持できる限り、光学支持体41を省くことも可能である。
【0040】
また、上述した実施の形態1では、図2(a)に示すように、4つの信号光を波長λ1(S偏光)、波長λ3(S偏光)、波長λ2(P偏光)、波長λ4(P偏光)の順番に並べた状態で合波用光学素子4に入射させる場合について説明した。しかし、これら4つの信号光を波長の順番に並べたときに、反射する光についてP偏光を反射するフィルターFとS偏光を反射するフィルターFとが交互に並ぶ限り、4つの信号光の順番は任意である。例えば、波長λ1(P偏光)、波長λ3(P偏光)、波長λ2(S偏光)、波長λ4(S偏光)の順番に並べてもよい。また、波長λ1(S偏光)、波長λ2(P偏光)、波長λ3(S偏光)、波長λ4(P偏光)の順番に並べてもよい。さらに、波長λ1(P偏光)、波長λ2(S偏光)、波長λ3(P偏光)、波長λ4(S偏光)の順番に並べてもよい。
【0041】
また、上述した実施の形態1では、コリメーターレンズ5を備えた合波器1について説明したが、合波用光学素子4から射出した光が光ファイバー6に入射するときに、この光を平行光線にする必要がない場合には、コリメーターレンズ5を省いても構わない。
【0042】
さらに、上述した実施の形態1では、4個のフィルターF1、F2、F3、F4(つまり、第1および第2のフィルターの他に、2個の第3のフィルター)を有する合波用光学素子4を用いて、4つの光を多重化する場合について説明した。しかし、2つ、3つ、または5つ以上の光を多重化する場合に本発明を同様に適用することも可能である。このとき、第3のフィルターの個数は、多重化すべき光の数に応じて適宜増減させる。例えば、3つの光を多重化する場合には、第3のフィルターを1個だけ設ければ足りる。また、8つの光を多重化する場合には、第3のフィルターを6個設ければ十分である。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、光通信の用途に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0044】
1……合波器
2……光源
3……偏光子
4……合波用光学素子
5……コリメーターレンズ
6……光ファイバー
41……光学支持体
42……入射面
43……射出面
F1……フィルター(第1のフィルター)
F2、F3……フィルター(第3のフィルター)
F4……フィルター(第2のフィルター)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7