(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明について詳細に説明する。
本発明において位相差フィルムを作製するためには、液晶性を示しかつ光反応性基(感光性基)を有するポリマーの少なくとも一種を用いている。光反応性基を有するポリマーを感光性ポリマーと呼ぶ。感光性ポリマーとは、例えば、平面偏光の照射により光異性化反応、光二量化反応、光転移反応および光分解反応の少なくとも1つを起こす化合物である。該感光性ポリマーは、光照射により光異性化反応、光二量化反応を起こす化合物であるのが好ましく、光二量化反応を起こす化合物であるのが特に好ましい。該感光性ポリマーは、重量平均分子量が1000〜500000程度のものが好ましい。
【0026】
感光性ポリマーのうち、光異性化反応を起こす化合物とは、光の作用で立体異性化または構造異性化を起こす化合物をいう。光異性化化合物としては、例えば桂皮酸化合物(K.Ichimura et al.,Macromolecules,30,903(1997))、アゾベンゼン化合物(K. Ichimura et al.,Mol.Cryst.Liq.Cryst .,298,221(1997))、ヒドラゾノ−β−ケトエステル化合物(S. Yamamura et al., Liquid Crystals, vol. 13, No. 2, page 189 (1993))、スチルベン化合物(J.G.Victor and J.M.Torkelson,Macromolecules,20,2241(1987))、およびスピロピラン化合物(K. Ichimura et al., Chemistry Letters, page 1063 (1992) ;K.Ichimura et al., Thin Solid Films, vol. 235, page 101 (1993) )が挙げられる。また、これらの骨格をポリマー主鎖あるいはポリマー側鎖に有する化合物も含まれる。これらの中で、−CH=CH−、または−N=N−からなる二重結合構造を含む光異性化化合物が好ましい。
【0027】
感光性ポリマーのうち、光二量化反応を起こす化合物とは、光の照射によって、二つの基の間に付加反応を起こして環化する化合物をいう。光二量化化合物としては、例えば桂皮酸誘導体(M. Schadt et al., J. Appl. Phys., vol. 31, No. 7, page 2155 (1992))、クマリン誘導体(M. Schadt et al., Nature., vol. 381, page 212 (1996))、カルコン誘導体(小川俊博他、液晶討論会講演予稿集,2AB03(1997))、ベンゾフェノン誘導体(Y. K. Jang et al., SID Int. Symposium Digest, P-53(1997))が挙げられる。また、これらの骨格を有する誘導体をポリマー主鎖又は側鎖に有する化合物も含まれる。中でも、桂皮酸誘導体、クマリン誘導体骨格を側鎖に有するポリマーが好ましく、桂皮酸誘導体骨格を側鎖に有するポリマー(側鎖型ポリマー)がより好ましい。
【0028】
液晶性を示すが光反応性基を有さないポリマーを液晶性ポリマーと呼ぶ。液晶性ポリマーを使用した位相差フィルムも提案されている(特開2004−123882)。しかし、液晶性ポリマーを用いる位相差フィルムも、重合性液晶を利用した位相差フィルム同様に液晶配向膜を使用する必要がある。
【0029】
位相差フィルムに用いられる液晶性を示す感光性ポリマーとしては、光反応感度の高さ、透明性、製造の容易さなどから桂皮酸誘導体が好ましい。
本願明細書の記載において、化学式の記号について説明する際に用いる用語「任意の」は、「元素(または官能基)の位置だけでなくその数においても自由に選択できること」を意味する。そして例えば、「任意のAがB、CまたはDで置き換えられてもよい」という表現は、1つのAはB、CおよびDのいずれか1つで置き換えられてもよく、Aの任意の2つは、B、CまたはDの2つで置き換えられてもよく、また、BとC、BとD、またはCとDで置き換えられてもよい。すなわち、ある官能基がAを1つ以上有しているときに当該官能基について「任意のAがB、CまたはDで置き換えられてもよい」という表現がある場合、当該官能基上に存在するAのうち少なくとも1つの代わりに、B、CおよびDから選ばれるいずれか1つ(ここで、選択された種をXとする。)が配置されていてもよいことを意味する。ここで、複数のAが置換されているときには、当該Aに代わって配置されている複数のXが同一であってもよいし、あるいは互いに異なっていてもよい。ただし、Aに代わって配置されるXの数は、1個のAに対して1つである。したがって、任意の−CH
2−が−O−で置き換えられてもよいとするとき、結果として結合基−O−O−が生じるような置き換えは含まれない。
【0030】
また、重合性基を一つ有することを単官能と呼ぶことがある。また、2つ以上の重合性基を有することを多官能、または、重合性基の数に応じた呼称(例えば、2つの重合性基を有する場合を2官能)で呼ぶことがある。
【0031】
また、あるA化合物に任意の官能基を導入した化合物、または任意の原子などの置き換えを行った化合物を、誘導体あるいはA誘導体と呼ぶことがある。
感光性ポリマーを、単にポリマーと略すことがある。また、液晶表示素子を表示素子、液晶配向膜を配向膜と略すことがある。
【0032】
以下、本発明の感光性ポリマーとして用いられる構成単位について述べる。
構成単位(1)
本発明の感光性ポリマーは、式(1)で表される構成単位を有するポリマーである:
【0033】
【化3】
式(1)中、R
1は独立して水素またはメチルであり;aは2または3であり;pは独立して1〜12の整数であり;X
1は独立して−O−、−COO−、−OCO−、−OCOO−、−CH=CH−または−C≡C−であり;bは0〜3の整数であり;A
1は独立して1,4−フェニレン、1,4−シクロへキシレン、ピリジン−2,5−ジイルまたはナフタレン−2,6−ジイルから選ばれるいずれかの二価基であり、該二価基において、少なくとも一つの水素はフッ素、塩素、シアノ、ヒドロキシ、ホルミル、アセトキシ、アセチル、トリフルオロアセチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、炭素数1〜5のアルキルまたは炭素数1〜5のアルコキシで置き換えられてもよく;Z
1は独立して単結合、−O−、−COO−、−OCO−、−CH=CH−COO−、−CH
2CH
2−COO−、−CH
2O−、−OCH
2−、−CF
2O−、−OCF
2−、−CONH−、−NHCO−、−(CH
2)
4−、−CH
2CH
2−、−CH=CH−または−C≡C−であり;W
1およびW
2は独立して水素、フッ素、塩素、トリフルオロメチル、炭素数1〜5のアルキルまたは炭素数1〜5のアルコキシであり;Y
1は単結合、−O−、または−NH−であり;R
2は炭素数1〜20のアルキルであり、このアルキルにおける少なくとも一つの−CH
2−は−O−、−COO−、−OCO−、−CH=CH−または−C≡C−で置き換えられてもよい。
【0034】
上記構造と類似する従来の感光性ポリマー(例えば、上記特許文献9に記載のポリマー)を用いた場合であっても、位相差フィルムを成膜する際に、減圧乾燥あるいは長時間自然乾燥した後に加熱乾燥を行うなど、煩雑な処理を施さなければ光学異方性が著しく低下するという問題があり、特に、位相差フィルムの膜厚を大きくした場合には、光学異方性が十分でない傾向にあった。一方、本願のように、感光性ポリマーが、−(CH
2)
p−X
1−で示される繰り返し単位を特定の数含有する上記構成単位を有する場合には、該ポリマーから作業性に優れる簡便な製造工程で、光学異方性などの位相差フィルムとしての特性に優れる位相差フィルムを作製できる。特に、厚膜の位相差フィルムとした場合であっても、光学異方性などの特性に優れる位相差フィルムを作製できる。
【0035】
本発明では、上記式(1)中、液晶性の高さ、製造の容易さや配向均一性の高さなどの点から、pは1〜4の整数であることが好ましく、X
1は−O−、−COO−または−OCO−であることが好ましい。
【0036】
また、液晶性の高さや製造の容易さなどの点から、bは1〜3の整数であることが好ましく、A
1が1,4−フェニレンおよびナフタレン−2,6−ジイルから選ばれるいずれかの二価基であることが好ましい。この場合、これらの二価基が有しうる好ましい置換基として、フッ素、炭素数1〜5のアルキルおよび炭素数1〜5のアルコキシが挙げられる。
【0037】
さらに、Z
1は、単結合、−COO−、−CH=CH−COO−、−CH
2CH
2−COO−、−CH
2O−または−CONH−であることが好ましく、W
1およびW
2は水素、フッ素、炭素数1〜5のアルキルまたは炭素数1〜5のアルコキシであることが好ましく、Y
1は−O−であることが好ましく、R
2は炭素数1〜10のアルキルであることが好ましく、このアルキルにおける少なくとも一つの−CH
2−は−O−で置き換えられてもよい。
【0038】
本発明の感光性ポリマーは、式(1)で表される構成単位を、1種単独で含んでいてもよいし、あるいは、2種以上含んでいてもよい。
また、本発明の感光性ポリマーは、式(1)で表される構成単位のみを有するものであってもよいが、式(1)で表される構成単位以外に、水素結合性の基(水素結合を生じさせるような極性基)を有するモノマーから形成される構成単位、望ましくは水素結合を生じるような極性基を末端に有するモノマーから形成される構成単位をさらに含んでいることも好ましい。極性基としては水酸基、アミノ基、カルボキシル基などがより好ましく、カルボキシル基がさらに好ましい。上記感光性ポリマーは、式(2)で表されるようなカルボキシル基を末端に有する構成単位を有することが特に好ましい:
【0039】
【化4】
式(2)中、R
3は水素またはメチルであり;Qは単結合または炭素数1〜20のアルキレンであり、このアルキレンにおける少なくとも一つの−CH
2−は−O−、−COO−、−OCO−、−CH=CH−または−C≡C−で置き換えられてもよく;X
2は単結合、−O−、−COO−、−OCO−、−OCOO−、−CH=CH−または−C≡C−であり;A
2は独立して1,4−フェニレン、1,4−シクロへキシレン、ピリジン−2,5−ジイルまたはナフタレン−2,6−ジイルから選ばれるいずれかの二価基であり、該二価基において、任意の水素はフッ素、塩素、シアノ、ヒドロキシ、ホルミル、アセトキシ、アセチル、トリフルオロアセチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、炭素数1〜5のアルキルまたは炭素数1〜5のアルコキシで置き換えられてもよく;Z
2は独立して単結合、−O−、−COO−、−OCO−、−CH=CH−COO−、−CH
2CH
2−COO−、−CH
2O−、−OCH
2−、−CF
2O−、−OCF
2−、−CONH−、−NHCO−、−(CH
2)
4−、−CH
2CH
2−、−CH=CH−または−C≡C−であり;cは0〜2の整数であり;Y
2は単結合、−CH
2CH
2−または−CH=CH−である。
【0040】
ここで、本発明では、式(1)同様に液晶性の高さや製造の容易さなどの点から、Qは炭素数1〜12のアルキレンであることが好ましく、このアルキレンにおける少なくとも一つの−CH
2−は−O−、−COO−または−OCO−で置き換えられてもよく、X
2は−O−、−COO−または−OCO−であることが好ましく、A
2は1,4−フェニレンまたはナフタレン−2,6−ジイルから選ばれるいずれかの二価基であることが好ましく、この場合、これらの二価基が有しうる好ましい置換基として、フッ素、炭素数1〜5のアルキルまたは炭素数1〜5のアルコキシが挙げられる。さらに、Z
2は単結合、−COO−、−CH=CH−COO−、−CH
2CH
2−COO−、−CH
2O−、−CONH−または−CH
2CH
2−であることが好ましく、Y
2は単結合であることが好ましい。
【0041】
本発明の感光性ポリマーが式(2)で表される構成単位を含む場合において、式(2)で表される構成単位は、1種単独で含まれていてもよいし、あるいは、2種以上含まれていてもよい。
【0042】
本発明では、後述するように、感光性ポリマーから形成される塗布膜に直線偏光を含む光を照射し、その後更に加熱することにより位相差フィルムとすることができる。ここで、本発明の感光性ポリマーが式(1)で表される構成単位のみならず式(2)で表される構成単位をも含んでいると、この光照射をより低い照射量で行うことができ、かつ加熱処理時に配向均一性が向上するなど、実用性の面からより有利となる傾向にある。
【0043】
そして、本発明の感光性ポリマーを構成する式(1)で表される構成単位と式(2)で表される構成単位とのモル比をm+n=1の条件の下、m:nで表した場合には、当該mおよびnは、好ましくは0.05≦m≦1の範囲、好ましくは0≦n≦0.95の範囲である(ただし、m+n=1)。ここで、m=1かつn=0の場合、感光性ポリマーは、式(1)で表される構成単位を含むが式(2)で表される構成単位を含まないこととなる。一方、0.05≦m<1、0<n≦0.95の場合、感光性ポリマーは、式(1)で表される構成単位および式(2)で表される構成単位の両方を含むこととなる。
【0044】
本発明において、当該mおよびnは、より好ましくは0.1≦m≦0.8の範囲、0.2≦n≦0.9の範囲であり、さらに好ましくは0.1≦m≦0.5の範囲、0.5≦n≦0.9の範囲であり、特に好ましくは、0.1≦m≦0.4および0.6≦n≦0.9の範囲である(ただし、m+n=1)。
【0045】
以下に、感光性ポリマーを構成する式(1)で表される構成単位および式(2)で表される構成単位の好適な具体例を示すが、本発明はこれらの具体例によって限定されるものではない。また、本発明の感光性ポリマーは液晶性を有することが好ましい。ここで、本明細書において、「液晶性」なる語は、液晶相を有するという意味に限定されるものでなく、それ自体は液晶相を持たなくても、他の液晶化合物と混合したときに、液晶組成物の成分として使用できる特性を有するという意味をも包含する語として用いられる。
式(1)で表される構成単位の具体例として、以下のものが挙げられる。
【0047】
【化6】
また、式(2)で表される構成単位の具体例として、以下のものが挙げられる。
【0049】
【化8】
そして、感光性ポリマーにおける、式(1)で表される構成単位についての例示構造(1−1)〜(1−18)と、式(2)で表される構成単位についての例示構造(2−1)〜(2−16)との好適な組み合わせ例を表1に示す。ただし、これらに限定されるものではない。
【0051】
また、本発明の感光性ポリマーは、式(1)で表される構成単位および式(2)で表される構成単位のほかに、式(1)で表される構成単位および式(2)で表される構成単位のいずれでもない他の構成単位(以下、「他の構成単位」)を含有してもよい。
【0052】
この「他の構成単位」としては、工業的に入手できるラジカル重合反応可能なモノマーから誘導される構成単位、すなわち、工業的に入手できるラジカル重合反応可能なモノマーに含まれる、エチレン性不飽和二重結合などの重合反応性多重結合を構成するπ結合が開くことにより形成される構成単位が使用できる。以下に具体例を挙げるが、本発明はこれらの具体例によって限定されるものではない。
【0053】
この他の構成単位を形成可能な、工業的に入手できるラジカル重合反応可能なモノマーにおける構成として、エチレン性不飽和二重結合を少なくとも1つ有する化合物が挙げられ、その具体例として、(メタ)アクリル酸、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、およびベンジル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸またはその誘導体;
2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、および3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシアルキルエステル類;
ω−カルボキシポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート、フタル酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、および2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレートなどの単官能(メタ)アクリレート化合物;
1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、エトキシ化水添ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ビスフェノールSジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピルジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールビスヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、およびモノヒドロキシペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートなどの多官能(メタ)アクリレート化合物;
グリシジル(メタ)アクリレート、(3−メチル−3−オキセタニル)メチル(メタ)アクリレート、および(3−エチル−3−オキセタニル)メチル(メタ)アクリレートなどの環状エーテル基を有する(メタ)アクリレート化合物がある。
【0054】
また、この他の構成単位を形成可能な、工業的に入手できるラジカル重合反応可能なモノマーとして、市販品の単官能または多官能(メタ)アクリレート化合物をそのまま用いることができる。具体的には、東亜合成化学工業(株)製のアロニックス(登録商標)M−5400(フタル酸モノヒドロキシエチルアクリレート)、同M−5700(2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート)、同M−215(イソシアヌル酸エチレンオキシサイド変性ジアクリレート)、同M−220(トリプロピレングリコールジアクリレート)、同M−245{ポリエチレングリコール(n≒9)ジアクリレート}、同M−305(ペンタエリスリトールトリアクリレート)、同M−309(トリメチロールプロパントリアクリレート)、同M−315(イソシアヌル酸エチレンオキサイド変性トリアクリレート)、同M−400{ジペンタエリスリトールペンタアクリレートおよびジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(主成分)の混合物}、同M−450(ペンタエリスリトールテトラアクリレート)、同M−8060、および同M−8560;
大阪有機化学工業(株)製のビスコート#295(トリメチロ−ルプロパントリアクリレート)、同#300(ペンタエリスリトールトリアクリレート)、同#360(トリメチロールプロパンエチレンオキサイド変性トリアクリレート)、および同#400(ペンタエリスリトールテトラアクリレート);
日本化薬(株)製のKAYARAD(登録商標) TMPTA(トリメチロールプロパントリアクリレート)、同PET−30(ペンタエリスリトールトリアクリレート)、同DPHA{ジペンタエリスリトールペンタアクリレートおよびジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(主成分)の混合物}、同D−310(ジペンタエリスリトールペンタアクリレート)、同D−330、および同DPCA−60などがある。
【0055】
さらに、JNC(株)製のサイラエース(登録商標)S−710(3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、サイラプレーン(登録商標)FM−0711、FM−0721、FM−0725などのシリコーンを有する(メタ)アクリレート化合物も用いることができる。
【0056】
これらの化合物は、1種単独でまたは2種類以上を混合して使用することができる。本発明で用いられる感光性ポリマーは、このような他の構成単位を、式(1)で表される構成単位と式(2)で表される構成単位との合計のモル数を100として、30〜0.1モル、好ましくは10〜0.1モルの割合で含むことができる。
【0057】
なお、本発明においては、「他の構成単位」を形成可能なモノマーとして、上述した「工業的に入手できるラジカル重合反応可能なモノマー」のほかに、必要に応じて、(メタ)アクリレートを有する重合性液晶化合物や、「添加剤」の項で後述する「重合性基を有する光増感剤」をさらに用いることもできる。
【0058】
このような感光性ポリマーの重量平均分子量は、1000以上500,000以下であるのが好ましく、1000以上200,000以下であることがより好ましい。ここで、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて、ポリスチレン(PS)換算の値として測定可能である。
【0059】
感光性ポリマーの製造方法については、特に限定されるものではなく、工業的に扱われている汎用な方法が利用できる。具体的には、構成モノマーのビニル、すなわち、式(1)で表される構成単位を形成可能なモノマー、式(2)で表される構成単位を形成可能なモノマー、および、他の構成単位を形成可能なモノマーのそれぞれに含まれるエチレン性不飽和二重結合を利用したカチオン重合法やラジカル重合法、アニオン重合法により製造することができる。これらの中では反応制御のしやすさなどの観点からラジカル重合法が特に好ましい。
【0060】
感光性ポリマーが、1種類以上のモノマーを構成単位として有する場合、構成単位の配列順序からランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体を形成することができる。構成単位の配列順序は特に限定されるものではないが、重合法の容易さからランダム共重合体が特に好ましい。
【0061】
本発明においては、感光性ポリマーは、式(1)で表される構成単位を形成可能なモノマー、並びに、必要により用いられる式(2)で表される構成単位を形成可能なモノマーおよび他の構成単位を形成可能なモノマーを、適当な重合開始剤存在下でラジカル重合させることにより好適に得ることができる。
【0062】
ラジカル重合の重合開始剤としては、ラジカル熱重合開始剤や、ラジカル光重合開始剤等の公知の化合物を使用することができる。
ラジカル熱重合開始剤は、分解温度以上に加熱することにより、ラジカルを発生させる化合物である。このようなラジカル熱重合開始剤としては、例えば、メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド等のケトンパーオキサイド類;アセチルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド類;過酸化水素、tert−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド類;ジ−tert−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジラウロイルパーオキサイド等のジアルキルパーオキサイド類;ジブチルパーオキシシクロヘキサン等のパーオキシケタール類、パーオキシネオデカン酸−tert−ブチルエステル、パーオキシピバリン酸−tert−ブチルエステル、パーオキシ−2−エチルシクロヘキサン酸−tert−アミルエステル等のアルキルパーエステル類;過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩類;並びに、アゾビスイソブチロニトリル、および2,2′−ジ(2−ヒドロキシエチル)アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ系化合物が挙げられる。このようなラジカル熱重合開始剤は、1種を単独で使用することもできるし、あるいは2種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0063】
ラジカル光重合開始剤は、ラジカル重合を光照射によって開始する化合物であれば特に限定されない。このようなラジカル光重合開始剤としては、ベンゾフェノン、ミヒラーズケトン、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、キサントン、チオキサントン、イソプロピルキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−エチルアントラキノン、アセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−4’−イソプロピルプロピオフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、イソプロピルベンゾインエーテル、イソブチルベンゾインエーテル、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、カンファーキノン、ベンズアントロン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、4,4’−ジ(t−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,4,4’−トリ(t−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、2−(4’−メトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(3’,4’−ジメトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(2’,4’−ジメトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(2’−メトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4’−ペンチルオキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、4−[p−N,N−ジ(エトキシカルボニルメチル)]−2,6−ジ(トリクロロメチル)−s−トリアジン、1,3−ビス(トリクロロメチル)−5−(2’−クロロフェニル)−s−トリアジン、1,3−ビス(トリクロロメチル)−5−(4’−メトキシフェニル)−s−トリアジン、2−(p−ジメチルアミノスチリル)ベンズオキサゾール、2−(p−ジメチルアミノスチリル)ベンズチアゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール、3,3’−カルボニルビス(7−ジエチルアミノクマリン)、2−(o−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾール、2,2’−ビス(2−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラキス(4−エトキシカルボニルフェニル)−1,2’−ビイミダゾール、2,2’−ビス(2,4−ジクロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾール、2,2’ビス(2,4−ジブロモフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾール、2,2’−ビス(2,4,6−トリクロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾール、3−(2−メチル−2−ジメチルアミノプロピオニル)カルバゾール、3,6−ビス(2−メチル−2−モルホリノプロピオニル)−9−n−ドデシルカルバゾール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ビス(5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)−フェニル)チタニウム、3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラ(t−ヘキシルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’−ジ(メトキシカルボニル)−4,4’−ジ(t−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,4’−ジ(メトキシカルボニル)−4,3’−ジ(t−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、4,4’−ジ(メトキシカルボニル)−3,3’−ジ(t−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、2−(3−メチル−3H−ベンゾチアゾール−2−イリデン)−1−ナフタレン−2−イル−エタノン、又は2−(3−メチル−1,3−ベンゾチアゾール−2(3H)−イリデン)−1−(2−ベンゾイル)エタノン等を挙げることができる。これらの化合物は単独で使用してもよく、2つ以上を混合して使用することもできる。
【0064】
ラジカル重合法は、特に制限されるものでなく、乳化重合法、懸濁重合法、分散重合法、沈殿重合法、塊状重合法、溶液重合法等を用いることができる。他の重合法についても同様であり、その詳細は「高分子の合成(上)」(遠藤剛著 講談社 2010年発行)等に記載されている。一般的なラジカル重合法である溶液重合法について以下に概要を説明する。
【0065】
溶液重合法とは油溶性の重合触媒を用いて溶媒中で重合を行う反応である。これらの有機溶媒は発明の目的、効果に適した範囲で任意に選択可能である。これらの有機溶媒は通常、大気圧下での沸点が50〜200℃の範囲内である有機化合物であり、モノマーや重合過程成分等を均一に溶解させる有機化合物が好ましい。
【0066】
ここで用いられる有機溶媒は、ラジカル重合に対する阻害作用がなければよく、好ましくは、ベンゼン、トルエン、キシレン、およびエチルベンゼンなどの芳香族化合物;ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、およびシクロヘプタンなどの脂肪族化合物;メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、およびエチレングリコール等のアルコール類;ジブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフランおよびジオキサン等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンおよびシクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミルおよびγ−ブチロラクトン等のエステル類;などが挙げられる。なお、これらの有機溶媒は、1種単独または2種以上を組み合わせて用いることが可能である。
【0067】
また、溶液重合条件も特に制限されるものではないが、例えば、50〜200℃の温度範囲内で、10分〜20時間加熱することが好ましい。さらに、発生したラジカルが失活しないように、溶液重合中はもちろんのこと、溶液重合開始前にも、窒素などの不活性ガスパージを行うことが好ましい。
【0068】
感光性ポリマーの分子量の制御や分子量分布の均一化あるいは重合を促進するために、連鎖移動剤を用いたラジカル重合法が特に有効である。これにより好ましい分子量範囲でより均一な分子量分布の重合体を得ることができる。
【0069】
連鎖移動剤としては、β−メルカプトプロピオン酸、β−メルカプトプロピオン酸メチルエステル、イソプロピルメルカプタン、オクチルメルカプタン、デシルメルカプタン、ドデシルメルカプタン、tert−ドデシルメルカプタン、オクタデシルメルカプタン、チオフェノールおよびp−ノニルチオフェノール、チオサリシル酸、メルカプト酢酸、およびメルカプト等のメルカプタン類;四塩化炭素、クロロホルム、塩化ブチル、1,1,1−トリクロロエタンおよび1,1,1−トリブロモオクタン等のポリハロゲン化アルキル;α−メチルスチレン、α−メチルスチレンダイマー等の低活性モノマー類;を用いることができる。これらの連鎖移動剤の使用量は、連鎖移動剤の活性やモノマーの組み合わせ、溶剤や温度やその他の重合条件等により決められる。通常は使用するモノマーの全モル数に対して0.01モル%〜50モル%程度である。
【0070】
添加剤
本願の光配向性位相差剤は、単独でなく基板上に形成して用いる。該光配向性位相差剤からなる位相差フィルムは良好な配向性や基板との密着性、塗布均一性、耐薬品性、耐熱性、透過度、ガスバリア性といった、光学フィルムや光学表示素子に必要な特性が要求される。そのような特性を付与するために、添加剤を用いることができる。
【0071】
各種の添加剤の添加量は、要求される特性に応じて決定されるが、好ましくは、本願感光性ポリマーの100重量部に対し0.01〜10重量部である。
添加剤としては、アクリル系、スチレン系、ポリエチレンイミン系又はウレタン系の高分子分散剤、アニオン系、カチオン系、ノニオン系又はフッ素系の界面活性剤、シリコーン樹脂等の塗布性向上剤、シランカップリング剤等の密着性向上剤、アルコキシベンゾフェノン類等の紫外線吸収剤、ポリアクリル酸ナトリウム等の凝集防止剤、オキシラン化合物、メラミン化合物又はビスアジド化合物等の熱架橋剤、有機カルボン酸等のアルカリ溶解性促進剤等がある。
【0072】
添加剤として、光増感剤を用いることもできる。無色増感剤および三重項増感剤が好ましい。
光増感剤としては、芳香族ニトロ化合物、クマリン(7−ジエチルアミノ−4−メチルクマリン、7−ヒドロキシ4−メチルクマリン、ケトクマリン、カルボニルビスクマリン)、芳香族2−ヒドロキシケトン、およびアミノ置換された、芳香族2−ヒドロキシケトン(2−ヒドロキシベンゾフェノン、モノ−もしくはジ−p−(ジメチルアミノ)−2−ヒドロキシベンゾフェノン)、アセトフェノン、アントラキノン、キサントン、チオキサントン、ベンズアントロン、チアゾリン(2−ベンゾイルメチレン−3−メチル−β−ナフトチアゾリン、2−(β−ナフトイルメチレン)−3−メチルベンゾチアゾリン、2−(α−ナフトイルメチレン)−3−メチルベンゾチアゾリン、2−(4−ビフェノイルメチレン)−3−メチルベンゾチアゾリン、2−(β−ナフトイルメチレン)−3−メチル−β−ナフトチアゾリン、2−(4−ビフェノイルメチレン)−3−メチル−β−ナフトチアゾリン、2−(p−フルオロベンゾイルメチレン)−3−メチル−β−ナフトチアゾリン)、オキサゾリン(2−ベンゾイルメチレン−3−メチル−β−ナフトオキサゾリン、2−(β−ナフトイルメチレン)−3−メチルベンゾオキサゾリン、2−(α−ナフトイルメチレン)−3−メチルベンゾオキサゾリン、2−(4−ビフェノイルメチレン)−3−メチルベンゾオキサゾリン、2−(β−ナフトイルメチレン)−3−メチル−β−ナフトオキサゾリン、2−(4−ビフェノイルメチレン)−3−メチル−β−ナフトオキサゾリン、2−(p−フルオロベンゾイルメチレン)−3−メチル−β−ナフトオキサゾリン)、ベンゾチアゾール、ニトロアニリン(m−もしくはp−ニトロアニリン、2,4,6−トリニトロアニリン)またはニトロアセナフテン(5−ニトロアセナフテン)、(2−[(m−ヒドロキシ−p−メトキシ)スチリル]ベンゾチアゾール、ベンゾインアルキルエーテル、N−アルキル化フタロン、アセトフェノンケタール(2,2−ジメトキシフェニルエタノン)、ナフタレン、アントラセン(2−ナフタレンメタノール、2−ナフタレンカルボン酸、9−アントラセンメタノール、および9−アントラセンカルボン酸)、ベンゾピラン、アゾインドリジン、フロクマリン等がある。
好ましくは、芳香族2−ヒドロキシケトン(ベンゾフェノン)、クマリン、ケトクマリン、カルボニルビスクマリン、アセトフェノン、アントラキノン、キサントン、チオキサントン、およびアセトフェノンケタールである。
【0073】
また、本発明の感光性ポリマーは、この光増感剤を添加剤として配合する代わりに、感光性ポリマーを得る際に、他の構成単位を形成可能なモノマーとして重合性基を有する光増感剤を用いることによっても、光増感能を付与することができる。この態様においては、感光性ポリマーとして、重合性基を有する光増感剤から誘導される構成単位、すなわち、重合性基を有する光増感剤に含まれる、エチレン性不飽和二重結合などの重合反応性多重結合を構成するπ結合が開くことにより形成される構成単位をさらに含むポリマーが用いられることになる。本発明において、「重合性基を有する光増感剤」として、原型となる光増感剤に重合性基を導入したものが用いられ、「重合性基を有する光増感剤」を構成する重合性基としてはアクリロイル、メタクリロイル、ビニル、マレイミド並びにイタコニルおよびその誘導体などがあげられる。
【0074】
以下に、重合性基を有する光増感剤から誘導される構成単位の具体例を示す。ただし、本発明はこれらの具体例によって限定されるものではない。
【0075】
【化9】
これらの化合物において、R
3は独立して水素またはメチルであり;qは独立して1〜12の整数である。
【0076】
なお、本発明においては、感光性ポリマーに、「重合性基を有する光増感剤」から誘導される構成単位を、式(1)で表される構成単位と式(2)で表される構成単位との合計のモル数を100として、30〜1モル、好ましくは5〜1モルの割合で含むことができる。
【0077】
添加剤として、基板との密着性を向上させるためにカップリング剤を用いることができる。カップリング剤としては、シラン系、アルミニウム系およびチタネート系の化合物が用いられる。具体的には、3−グリシドキシプロピルジメチルエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランなどのシラン系、アセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレートなどのアルミニウム系、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネートなどのチタネート系化合物を挙げることができる。
【0078】
添加剤として、下地基板への濡れ性、レベリング性、塗布性を向上させるために界面活性剤を用いることができる。界面活性剤としては、シリコーン系界面活性剤、アクリル系界面活性剤、フッソ系界面活性剤などが用いられる。具体的には、ビック・ケミー(株)製のByk(登録商標)−300、同306、同335、同310、同341、同344、同370などのシリコーン系界面活性剤、ビック・ケミー(株)製のByk(登録商標)−354、同358、同361などのアクリル系界面活性剤、旭硝子(株)製のSC−101、(株)トーケムプロダクツ製のEF−351、同352などのフッ素系界面活性剤を挙げることができる。
【0079】
本発明の光配向性位相差剤は、液晶温度範囲や光学異方性を調節するなどの目的のために液晶性低分子化合物を含有してもよい。液晶性低分子化合物のなかでも重合性基を有する化合物が好ましい。
【0080】
[位相差フィルムなど]
上述した本発明の光配向性位相差剤は、特にその用途が限定されるものではないものの、位相差フィルムとして好適に用いることができる。本発明において、位相差フィルムは、上述した本発明の光配向性位相差剤から形成される塗膜に直線偏光を含む光を照射し、さらにこれを加熱することで光学的異方性を付与することにより得ることができる。
【0081】
ここで、本発明の光配向性位相差剤は、典型的には、本発明の感光性ポリマーを有機溶剤に溶解させた塗布液として使用する。
このとき用いられる有機溶剤としては、感光性ポリマーの重合時に使用した溶媒をそのまま使用してもよく、あるいは、重合時の溶媒を一旦除去し、改めて新たな溶剤を使用してもよい。このとき新たに使用する有機溶剤としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、およびエチルベンゼンなどの芳香族化合物;ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、およびシクロヘプタンなどの脂肪族化合物;メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、およびエチレングリコール等のアルコール類;ジブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフランおよびジオキサン等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンおよびシクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミルおよびγ−ブチロラクトン等のエステル類;などが挙げられる。毒性や環境負荷の観点から、1−プロパノール、2−プロパノール、1−メトキシ−2−プロパノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、2−ブトキシエタノール、3−メトキシ−3−メチルブタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、イソホロン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテートまたは酢酸ブチルなどが好ましい。また、プラスチック基板に対する耐溶剤性の観点から、1−メトキシ−2−プロパノール、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノンなどが好ましい。なお、これらの有機溶媒は、1種単独または2種以上を組み合わせて用いることが可能である。
【0082】
そして、本発明において、位相差フィルムは、このような光配向性位相差剤を既知の方法(例えば、スピンコーティング、グラビアコーター、リバースグラビア、メイヤーバーコーター、ダイコーター、リバースロールコーター、ファンテンリバースロールコーター、キスロールコーター、バーコーター、ナイフコーター、リップコーター、レジストコーター法)により基板に塗布し、有機溶媒を除去した後、得られる塗膜を偏光照射および加熱処理により配向処理し、得ることができる。
【0083】
このとき、塗膜への偏光照射は、本発明の感光性ポリマーを配向させるために行うものであり、膜に対して単一な方向から光を照射することによって行われる。光照射によって光配向性位相差剤に配向軸が形成される。この際、照射光としてはX線、電子線、紫外線、可視光線または赤外線(熱線)が用いられ、紫外線を用いることが特に好ましい。紫外線の波長は400nm以下であることが好ましく、180〜360nmであることがさらに好ましい。光源としては低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、高圧放電ランプ、あるいはショートアーク放電ランプが好ましく用いられる。一般には直線偏光を照射するが、非偏光の光照射によっても配向機能を付与できる場合がある。ただ、より確実に配向機能を付与できるよう、直線偏光を用いることが特に好ましい。照射量は10mJ/cm
2〜20000mJ/cm
2が好ましく、20mJ/cm
2〜5000mJ/cm
2であることが最も好ましい。ここで、本発明の光配向性位相差剤として、感光性ポリマーが式(1)で表される構成単位と式(2)で表される構成単位との両方を有するものを用いると、この光照射を低い照射量で行うことができる傾向にある。
【0084】
また、偏光照射を行った塗膜への加熱処理は、偏光照射により配向軸の形成された光配向性位相差剤を、さらに均一に配向させるために行うものであり、これにより位相差フィルムが得られる。このとき、加熱温度Tは、ポリマーが液晶相を有する温度の下限および上限をそれぞれTmおよびTiとして、
Tm−80℃≦T≦Ti
であることが好ましい。一般的には、60℃〜250℃程度であり、80℃〜150℃程度であることが好ましい。なお、Tmはポリマーの結晶相−液晶相転移温度もしくはガラス転位温度であり、Tiは液晶相−等方相転移温度に対応する。
【0085】
本発明の光配向性位相差剤を塗布した基板に対して、直線偏光を法線方向に照射すると、直線偏光の電界振動方向に沿って配置されている感光性基の異性化および/または2量化が選択的に起こる。その後、加熱処理により直線偏光の偏光方向もしくは偏光に対し垂直方向に配向する。
【0086】
なお、誘起された配向を固定化するために、加熱処理後再度光を照射してもよい。配向を固定化するための光は、紫外線であることが好ましく、直線偏光であっても非偏光であってもよい。
【0087】
本発明の位相差フィルムは、液晶性を示す感光性ポリマーおよび、その他必要に応じて添加する各種化合物を含有する光配向性位相差剤を、透明な基板上に塗布し、光照射し加熱することで、液晶性を示す感光性ポリマーを配向させることにより得られる。本発明の位相差フィルムは、感光性ポリマーの光配向によって発現された光学異方性を示す。
【0088】
ここで、本発明においては、位相差フィルムの膜厚は0.5μm〜10μmとすることが好ましい。
さらに、本発明の位相差フィルムを用いて、光学フィルムを得ることができる。ここで、本発明の光学フィルムは、位相差フィルムや液晶表示素子のコントラスト向上や視野角範囲の拡大を実現するための光学補償フィルムを意味する。そのような光学フィルムは、具体的には、本発明の位相差フィルムから構成されるフィルムであり、本発明の位相差フィルムそれ自体をそのまま光学フィルムとして用いてもよいし、あるいは、本発明の位相差フィルムに他のフィルムを組み合わせてなる光学フィルムであってもよい。
【0089】
さらに本発明の光配向性位相差剤は、二色性色素を添加してもよい。この二色性色素を含有する光配向性位相差剤は情報記録デバイスや偏光フィルム、偽造防止媒体などへ利用することが可能である。
【0090】
[積層体]
本発明の位相差フィルムは、液晶材料を配向させる能力を有している。そのため、この位相差フィルム上に重合性液晶や液晶性ポリマーなどを塗布することで容易に光学的異方性を有するフィルムの積層体を成形することが可能となる。この積層体として、塗工性の容易さや配向均一性の高さなどから重合性液晶材料を用いることがより好ましい。重合性液晶材料としては、分子中に少なくとも一つの重合性基を有する液晶性(メタ)アクリル化合物、液晶性オキシラン化合物および液晶性オキセタン化合物などを含む重合性液晶組成物が挙げられる。これらのうち液晶性(メタ)アクリル化合物を用いた重合性液晶組成物を使用することがより好ましい。
【0091】
以下に、重合性液晶化合物の具体例を示す。ただし、本発明はこれらの具体例によって限定されるものではない。
【0092】
【化10】
これら(LC−1)〜(LC−10)の化合物において、rは独立して1〜12の整数である。
【0093】
本発明の光学フィルムは、各種光学部材や液晶表示素子などの表示素子その他の光学素子として有用である。
【実施例】
【0094】
以下、実施例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により制限されない。化合物の構造は、核磁気共鳴スペクトル、赤外吸収スペクトル、質量スペクトルで確認した。相転移温度の単位は℃であり、Cは結晶を、Gはガラス状態を、Sはスメクチック相を、Nはネマチック相を、Iは等方性液体相を示す。以下に、物性値の測定法を示す。
【0095】
<化合物の構造確認>
500MHzのプロトンNMR(ブルカー:DRX-500)の測定により合成した化合物の構造を確認した。記載した数値はppmを表し、sはシングレット、dはダブレット、tはトリプレット、mはマルチプレットを表す。
【0096】
<相転移温度>
偏光顕微鏡を備えた融点測定装置のホットプレートに試料を置き、10℃/分の速度で昇温した。相が別の相に転移する温度を測定した。Cは結晶、Gはガラス状態、Nはネマチック相、Iは等方性液体を意味する。NI点は、ネマチック相の上限温度またはネマチック相から等方性液体への転移温度である。「C 50 N 63 I」は、50℃で結晶からネマチック相に転移し、63℃でネマチック相から等方性液体へ転移したことを示す。括弧内はモノトロピックの液晶相を示す。
【0097】
<重量平均分子量(Mw)および多分散度(Mw/Mn)>
島津製作所製の島津LC−9A型ゲル浸透クロマトグラフ(GPC)、および昭和電工製のカラムShodex(商標登録) GF−7M HQ(展開溶媒はDMFあるいはTHF、標準物質は分子量既知のポリスチレン)を用いた。
【0098】
<共重合比>
重合反応における反応転化率をガスクロマトグラフィー(GC)や液体クロマトグラフィーによる未反応モノマーの量より検出し、当該反応転化率および/またはNMRを用いて共重合比を算出した。
【0099】
<位相差フィルムの配向>
以下に示す方法により確認した。
(1)目視による観察方法
クロスニコルに配置した2枚の偏光板の間に位相差フィルムを形成した基板を挟持して観察し、基板を水平面内で回転させ、明暗の状態を確認した。位相差フィルムを形成した基板を偏光顕微鏡観察し、配向欠陥の有無を確認した。
【0100】
(2)偏光解析装置による測定
シンテック(株)製のOPTIPRO(登録商標)偏光解析装置を用い、位相差フィルムを形成した基板に波長が550nmの光を照射した。この光の入射角度をフィルム面に対して90°から減少させながらレタデーションを測定した。レタデーション(retardation;位相遅れ)はΔn×dで表される。記号Δnは光学異方性値であり、記号dは重合体フィルムの厚さである。
【0101】
<膜厚測定>
基板から位相差フィルムの層を削りだして、その段差を微細形状測定装置(KLA TENCOR(株)製 アルファステップIQ)を用いて測定した。
【0102】
<光学異方性値(Δn)の評価>
位相差フィルム層について求めたレタデーションと膜厚値から、Δn=レタデーション/膜厚として算出した。
[実施例1]
(i)化合物(M−1)の合成
化合物(M−1)は、以下のスキームに従って合成した。
【0103】
【化11】
以下、化合物(M−1)の合成について、より具体的に説明する。
【0104】
(第1段階:化合物(ex−1)の合成)
p−アセトキシ安息香酸50gをトルエン250mLに加え、ピリジン0.2gを添加し、60℃に加熱しながら攪拌した。そこへ、塩化チオニル39.6gを滴下した。滴下後、60℃で4時間撹拌した。減圧下で溶媒を留去し、得られた残渣に再びトルエン250mLを加え、窒素雰囲気下冷却しながら撹拌した。そこへ、アセトン200mLにp−クマル酸メチル49.5gおよびトリエチルアミン42.1gを加えた混合溶液を滴下した。滴下後、室温で8時間撹拌した。これを水に注ぎ込み、析出した結晶をろ別した。さらにろ液より有機層を抽出し、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下で溶媒を留去した。得られた残渣と先ほど取り出した結晶をトルエンで再結晶することにより、化合物(ex−1)77.7gを得た。
【0105】
(第2段階:化合物(ex−2)の合成)
化合物(ex−1)77.7gをTHF160mLおよびメタノール80mLに加え、窒素雰囲気下室温で撹拌した。そこへ、アンモニウム水溶液26mLを滴下した。滴下後、室温で8時間撹拌した。酢酸エチルおよび水を加え有機層を抽出し、得られた有機層を飽和食塩水で洗浄した。無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下で溶媒を留去し、残渣をメタノールで再結晶することにより、化合物(ex−2)43.7gを得た。
【0106】
(第3段階:化合物(M−1)の合成)
化合物(ex−2)43.7g、2−メタクリルオキシエチルサクシネート33.7gおよび4−ジメチルアミノピリジン(DMAP)3.58gを、ジクロロメタン500mlに加え、窒素雰囲気下冷却しながら撹拌した。そこへ、1,3−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)31.7gのジクロロメタン溶液70mlを滴下した。滴下後、室温で16時間撹拌した。析出した沈殿物を濾別し、有機層を水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。減圧下で溶媒を留去し、残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、溶離液:トルエン−酢酸エチル混合物(容量比:トルエン/酢酸エチル=8/1))で精製し、エタノールで再結晶することにより、化合物(M−1)62.3gを得た。
【0107】
得られた化合物(M−1)の相転移温度およびNMR分析値は以下の通りである。
相転移温度:C 86 (S 58 N 60) I
1H−NMR(CDCl
3;δppm):8.23(d,2H),7.71(d,1H),7.60(d,2H),7.28−7.23(m,4H),6.43(d,1H),6.13(s,1H),5.59(s,1H),4.32−4.26(m,4H),3.82(s,3H),2.93(t,2H),2.80(t,2H),1.94(s,3H).
【0108】
(ii)化合物(M−2)の合成
【0109】
【化12】
化合物(M−2)は、特開2009−191117号公報に記載の方法に従い合成した。
【0110】
(iii)ポリマー(P−1)の合成
以下の手順により、化合物(M−1)および化合物(M−2)からポリマー(P−1)を合成した。
【0111】
化合物(M−1)2.5g、化合物(M−2)7.5gおよびアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.38gをTHF40mlに加え、窒素雰囲気下で10時間加熱還流下撹拌した。反応後の溶液をトルエンへ注ぎ込み再沈殿化した。結晶を濾別し、乾燥することにより、ポリマー(P−1)8.7gを得た。共重合比はモル分率でM−1=0.2、M−2=0.8である。
得られたポリマー(P−1)は、Mwが22000、Mw/Mnが2.8であり、62℃〜155℃の範囲に液晶相を有する。
【0112】
[実施例2]
<位相差フィルムF−1の作製>
ポリマー(P−1)をシクロペンタノン(CPN)に溶解させ、固形分濃度15重量%の溶液とした。この溶液を孔径0.2μmのフィルターで濾過することにより、光配向性位相差剤(H−1)を調製した。この光配向性位相差剤(H−1)を、ガラス基板上へスピンコートにより塗布した。この時、塗布性は良好であった。この基板を80℃で2分間加熱し、溶剤を除去することで塗膜を形成した。超高圧水銀ランプ(ウシオ電機社製)より、この塗膜表面に塗布面に対して90°の方向から313nm付近の波長の直線偏光紫外線を150mJ/cm
2照射することで、光配向処理した。この基板を130℃で5分間加熱することで位相差フィルム(F−1)を得た。
位相差フィルム(F−1)をクロスニコルにした二枚の偏光板の間に挟み水平面内で回転させると、明暗の状態になり水平配向(ホモジニアス配向)であることを確認した。
【0113】
[実施例3]
<位相差フィルムF−2の作製>
光配向性位相差剤(H−1)の固形分濃度を20重量%のCPN溶液とした以外は実施例2に記載の方法で位相差フィルム(F−2)を得た。
位相差フィルム(F−2)をクロスニコルにした二枚の偏光板の間に挟み水平面内で回転させると、明暗の状態になり水平配向(ホモジニアス配向)であることを確認した。
【0114】
[実施例4]
<位相差フィルムF−3の作製>
光配向性位相差剤(H−1)の固形分濃度を25重量%のCPN溶液とした以外は実施例2に記載の方法で位相差フィルム(F−3)を得た。
位相差フィルム(F−3)をクロスニコルにした二枚の偏光板の間に挟み水平面内で回転させると、明暗の状態になり水平配向(ホモジニアス配向)であることを確認した。
【0115】
[実施例5]
(i)化合物(M−3)の合成
化合物(M−3)は、以下のスキームに従って合成した。
【0116】
【化13】
【0117】
(第1段階:化合物(ex−3)の合成)
p−ヒドロキシ安息香酸30gをTHF500mLに加え、トリエチルアミン36.6gを添加し、窒素雰囲気下冷却しながら撹拌した。そこへ、クロロメチルメチルエーテル(MOMCl)30.6gを滴下した。滴下後、室温で8時間撹拌した。酢酸エチルおよび水を加え有機層を抽出し、得られた有機層を飽和重曹水および水で洗浄した。無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下で溶媒を留去し、残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、溶離液:トルエン−酢酸エチル混合物(容量比:トルエン/酢酸エチル=4/1))で精製することにより、化合物(ex−3)30.0gを得た。
【0118】
(第2段階:化合物(ex−4)の合成)
化合物(ex−3)30g、2−(2−クロロエトキシ)エタノール24.6g、炭酸カリウム27.3gおよびヨウ化カリウム3.3gをDMF150mLに加え、窒素雰囲気下80℃で加熱しながら16時間撹拌した。トルエンおよび水を加え有機層を抽出し、得られた有機層を飽和重曹水および水で洗浄した。無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下で溶媒を留去し、残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、溶離液:トルエン−酢酸エチル混合物(容量比:トルエン/酢酸エチル=2/1))で精製することにより、化合物(ex−4)22.0gを得た。
【0119】
(第3段階:化合物(ex−5)の合成)
化合物(ex−4)20gおよびトリエチルアミン15.0gをトルエン200mLに加え、窒素雰囲気下冷却しながら撹拌した。そこへ、メタクリル酸クロリド8.5gを滴下した。滴下後、室温で8時間撹拌した。水を加え有機層を抽出し、得られた有機層を水で洗浄した。無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下で溶媒を留去した。得られた残渣にTHF40mLを加え、さらにp−トルエンスルホン酸(PTSA)1.1gおよび水5mLを添加し、窒素雰囲気下50℃で加熱しながら撹拌した。酢酸エチルおよび水を加え有機層を抽出し、得られた有機層を飽和食塩水で洗浄した。無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下で溶媒を留去し、残渣をトルエンで再結晶することにより、化合物(ex−5)9.1gを得た。
【0120】
(第4段階:化合物(M−3)の合成)
化合物(ex−6)5g、p−クマル酸メチル3gおよびDMAP0.4gを、ジクロロメタン50mlに加え、窒素雰囲気下冷却しながら撹拌した。そこへ、DCC3.7gのジクロロメタン溶液8mlを滴下した。滴下後、室温で16時間撹拌した。析出した沈殿物を濾別し、有機層を水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。減圧下で溶媒を留去し、残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、溶離液:トルエン−酢酸エチル混合物(容量比:トルエン/酢酸エチル=10/1))で精製し、エタノールで再結晶することにより、化合物(M−3)4.9gを得た。
【0121】
得られた化合物(M−3)の相転移温度およびNMR分析値は以下の通りである。
相転移温度:C 78 (N 65) I
1H−NMR(CDCl
3;δppm):8.14(d,2H),7.71(d,1H),7.59(d,2H),7.24(d,2H),7.01(d,2H),6.42(d,1H),6.14(s,1H),5.58(s,1H),4.35(t,2H),4.23(t,2H),3.92(t,2H),3.84(t,2H),3.82(s,3H),1.95(s,3H).
【0122】
(ii)ポリマー(P−2)の合成
以下の手順により、化合物(M−3)および化合物(M−2)からポリマー(P−2)を合成した。
【0123】
化合物(M−3)0.75g、化合物(M−2)2.25gおよびアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.11gをTHF15mlに加え、窒素雰囲気下で10時間加熱還流下撹拌した。反応後の溶液をトルエンへ注ぎ込み再沈殿化した。結晶を濾別し、乾燥することにより、ポリマー(P−2)2.3gを得た。共重合比はモル分率でM−1=0.2、M−2=0.8である。
得られたポリマー(P−2)は、Mwが12000、Mw/Mnが1.8であり、63℃〜153℃の範囲に液晶相を有する。
【0124】
[実施例6]
<位相差フィルムF−4の作製>
ポリマー(P−2)をシクロペンタノン(CPN)に溶解させ、固形分濃度15重量%の溶液とした。この溶液を孔径0.2μmのフィルターで濾過することにより、光配向性位相差剤(H−2)を調製した。この光配向性位相差剤(H−2)を、ガラス基板上へスピンコートにより塗布した。この時、塗布性は良好であった。この基板を80℃で2分間加熱し、溶剤を除去することで塗膜を形成した。超高圧水銀ランプ(ウシオ電機社製)より、この塗膜表面に塗布面に対して90°の方向から313nm付近の波長の直線偏光紫外線を50mJ/cm
2照射することで、光配向処理した。この基板を120℃で5分間加熱することで位相差フィルム(F−4)を得た。
位相差フィルム(F−4)をクロスニコルにした二枚の偏光板の間に挟み水平面内で回転させると、明暗の状態になり水平配向(ホモジニアス配向)であることを確認した。
【0125】
[実施例7]
(i)化合物(M−4)の合成
化合物(M−4)は、以下のスキームに従って合成した。
【0126】
【化14】
以下、化合物(M−4)の合成について、より具体的に説明する。
【0127】
(化合物(M−4)の合成)
化合物(ex−3)5.9g、化合物(M−2)10.0gおよびDMAP0.8gを、ジクロロメタン100mlに加え、窒素雰囲気下冷却しながら撹拌した。そこへ、DCC7.1gのジクロロメタン溶液20mlを滴下した。滴下後、室温で16時間撹拌した。析出した沈殿物を濾別し、有機層を水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。減圧下で溶媒を留去し、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、溶離液:トルエン−酢酸エチル混合物(容量比:トルエン/酢酸エチル=8/1))で精製した。得られた残渣にTHF30mlへ加え、さらにPTSA0.6gおよび水3mLを添加し、窒素雰囲気下50℃で加熱しながら撹拌した。酢酸エチルおよび水を加え有機層を抽出し、得られた有機層を飽和食塩水で洗浄した。無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下で溶媒を留去し、残渣をエタノールで再結晶することにより、化合物(M−4)6.5gを得た。
【0128】
得られた化合物(M−4)の相転移温度およびNMR分析値は以下の通りである。
相転移温度:C 115 S 200 < I
1H−NMR(CDCl
3;δppm):13.07(s,1H),8.09(d,2H),8.04(d,2H),7.41(d,2H),7.12(d,2H),6.02(s,1H),5.67(s,1H),4.14−4.07(m,4H),1.88(s,3H),1.82−1.73(m,2H),1.69−1.62(m,2H),1.53−1.38(m,4H).
【0129】
(ii)ポリマー(P−3)の合成
以下の手順により、化合物(M−1)、(M−2)および化合物(M−4)からポリマー(P−3)を合成した。
【0130】
化合物(M−1)0.75g、化合物(M−2)1.65g、化合物(M−4)0.6gおよびアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.11gをTHF15mlに加え、窒素雰囲気下で10時間加熱還流下撹拌した。反応後の溶液をトルエンへ注ぎ込み再沈殿化した。結晶を濾別し、乾燥することにより、ポリマー(P−3)2.6gを得た。共重合比はモル分率でM−1=0.2、M−2=0.7、M−4=0.1、である。
得られたポリマー(P−3)は、Mwが27000、Mw/Mnが2.3であり、58℃〜167℃の範囲に液晶相を有する。
【0131】
[実施例8]
<位相差フィルムF−5の作製>
ポリマー(P−3)をシクロペンタノン(CPN)に溶解させ、固形分濃度15重量%の溶液とした。この溶液を孔径0.2μmのフィルターで濾過することにより、光配向性位相差剤(H−3)を調製した。この光配向性位相差剤(H−3)を、ガラス基板上へスピンコートにより塗布した。この時、塗布性は良好であった。この基板を80℃で2分間加熱し、溶剤を除去することで塗膜を形成した。超高圧水銀ランプ(ウシオ電機社製)より、この塗膜表面に塗布面に対して90°の方向から313nm付近の波長の直線偏光紫外線を200mJ/cm
2照射することで、光配向処理した。この基板を140℃で5分間加熱することで位相差フィルム(F−5)を得た。
位相差フィルム(F−5)をクロスニコルにした二枚の偏光板の間に挟み水平面内で回転させると、明暗の状態になり水平配向(ホモジニアス配向)であることを確認した。
【0132】
[比較例1]
(i)化合物(CM−1)の合成
【0133】
【化15】
化合物(CM−1)は、特開2004−170595号公報に記載の方法に従い合成した。
【0134】
(ii)ポリマー(CP−1)の合成
以下の手順により、化合物(CM−1)および化合物(M−2)からポリマー(CP−1)を合成した。
【0135】
化合物(CM−1)2.0g、化合物(M−2)2.0gおよびアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.15gをTHF20mlに加え、窒素雰囲気下で10時間加熱還流下撹拌した。反応後の溶液をトルエンへ注ぎ込み再沈殿化した。結晶を濾別し、乾燥することにより、ポリマー(CP−1)3.6gを得た。
得られたポリマー(CP−1)は、Mwが34000、Mw/Mnが2.4であり、119℃〜188℃の範囲で液晶相を有する。
【0136】
<位相差フィルムCF−1の作製>
ポリマー(CP−1)をシクロペンタノン(CPN)に溶解させ、固形分濃度10重量%の溶液とした。この溶液を孔径0.2μmのフィルターで濾過することにより、光配向性位相差剤(CH−1)を調製した。この光配向性位相差剤(CH−1)を、ガラス基板上へスピンコートにより塗布した。この基板を80℃で2分間加熱し、溶剤を除去することで塗膜を形成した。超高圧水銀ランプ(ウシオ電機社製)より、この塗膜表面に塗布面に対して90°の方向から313nm付近の波長の直線偏光紫外線を100mJ/cm
2照射することで、光配向処理した。この基板を130℃で5分間加熱することで位相差フィルム(CF−1)を得た。
位相差フィルム(CF−1)をクロスニコルにした二枚の偏光板の間に挟み水平面内で回転させると、明暗の状態になり水平配向(ホモジニアス配向)であることを確認した。
【0137】
[比較例2]
(i)化合物(CM−2)の合成
化合物(CM−2)は、以下のスキームに従って合成した。
【0138】
【化16】
【0139】
(化合物(CM−2)の合成)
p−クマル酸メチル5.8g、化合物(M−2)10.0gおよびDMAP0.8gを、ジクロロメタン100mlに加え、窒素雰囲気下冷却しながら撹拌した。そこへ、DCC7.1gのジクロロメタン溶液20mlを滴下した。滴下後、室温で16時間撹拌した。析出した沈殿物を濾別し、有機層を水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。減圧下でジクロロメタンを留去し、残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、溶離液:トルエン−酢酸エチル混合物(容量比:トルエン/酢酸エチル=8/1))で精製し、エタノールで再結晶することにより、化合物(CM−2)9.8gを得た。
【0140】
得られた化合物(CM−2)の相転移温度およびNMR分析値は以下の通りである。
相転移温度:C 67 S 96 N 104 I
1H−NMR(CDCl
3;δppm):8.13(d,2H),7.70(d,1H),7.58(d,2H),7.24(d,2H),6.97(d,2H),6.43(d,1H),6.10(s,1H),5.56(s,1H),4.17(t,2H),4.05(t,2H),3.81(s,3H),1.95(s,3H),1.89−1.82(m,2H),1.78−1.71(m,2H),1.58−1.45(m,4H).
【0141】
(ii)ポリマー(CP−2)の合成
以下の手順により、化合物(CM−2)および化合物(M−2)からポリマー(CP−2)を合成した。
【0142】
化合物(CM−2)1.0g、化合物(M−2)3.0gおよびアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.15gをTHF20mlに加え、窒素雰囲気下で10時間加熱還流下撹拌した。反応後の溶液をトルエンへ注ぎ込み再沈殿化した。結晶を濾別し、乾燥することにより、ポリマー(CP−2)3.3gを得た。
得られたポリマー(CP−2)は、Mwが28000、Mw/Mnが3.5であり、148℃〜160℃の範囲で液晶相を有する。
【0143】
<位相差フィルムCF−2の作製>
ポリマー(CP−2)をシクロペンタノン(CPN)に溶解させ、固形分濃度15重量%の溶液とした。この溶液を孔径0.2μmのフィルターで濾過することにより、光配向性位相差剤(CH−2)を調製した。この光配向性位相差剤(CH−2)を、ガラス基板上へスピンコートにより塗布した。この基板を80℃で2分間加熱し、溶剤を除去することで塗膜を形成した。超高圧水銀ランプ(ウシオ電機社製)より、この塗膜表面に塗布面に対して90°の方向から313nm付近の波長の直線偏光紫外線を150mJ/cm
2照射することで、光配向処理した。この基板を140℃で5分間加熱することで位相差フィルム(CF−2)を得た。
位相差フィルム(CF−2)をクロスニコルにした二枚の偏光板の間に挟み水平面内で回転させると、明暗の状態になり水平配向(ホモジニアス配向)であることを確認した。
【0144】
[比較例3]
<位相差フィルムCF−3の作製>
光配向性位相差剤(CH−2)の固形分濃度を20重量%のCPN溶液とした以外は比較例2に記載の方法で位相差フィルム(CF−3)を得た。
位相差フィルム(CF−3)をクロスニコルにした二枚の偏光板の間に挟み水平面内で回転させると、明暗の状態になり水平配向(ホモジニアス配向)であることを確認した。
【0145】
[比較例4]
<位相差フィルムCF−4の作製>
光配向性位相差剤(CH−2)の固形分濃度を25重量%のCPN溶液とした以外は実施例2に記載の方法で位相差フィルム(CF−4)を得た。
位相差フィルム(CF−4)をクロスニコルにした二枚の偏光板の間に挟み水平面内で回転させると、明暗の状態になり水平配向(ホモジニアス配向)であることを確認した。
【0146】
[実施例9]
<ポリマーの溶解性>
ポリマー(P−1)〜(P−3)、(CP−1)および(CP−2)のそれぞれについて、ポリマーと溶剤の合計重量を100重量部とし、ポリマーが10、20、30重量部のときの各種溶剤に対する溶解性を目視にて評価し、完全に溶解したものを○、不溶物があるものを×、一旦溶解するものすぐに析出するものを△とした。結果を以下の表2に示す。
【0147】
【表2】
【0148】
[実施例10]
<位相差フィルムの配向性、レタデーションと光学異方性Δn>
位相差フィルム(F−1)〜(F−5)および(CF−1)〜(CF−4)を偏光顕微鏡観察にて配向欠陥を観察した。配向欠陥のないものを○、配向欠陥のあるものを×とした。また、偏光解析装置によりレタデーション(Re)を測定し、そのReの値と膜厚より光学異方性値Δnを算出した。結果を以下の表3に示す。
【0149】
【表3】
【0150】
[実施例11]
<重合性液晶組成物(1)の調製>
化合物(LC−1−1):化合物(LC−2−1):化合物(LC−5−1):化合物(LC−6−1)=25:25:40:10(重量比)で4つの化合物を混合した。この組成物をMIX1とする。このMIX1の全重量を基準として、重量比0.002の非イオン性のフッ素系界面活性剤(ネオス(株)製、商品名フタージェント(登録商標) FTX−218)、および重量比0.06の重合開始剤irgacure907(BASF社製、登録商標)を添加した。この組成物にトルエンを加えて、溶剤の割合が80重量%である重合性液晶組成物(1)を作製した。
【0151】
【化17】
【0152】
上記記載の化合物(LC−1−1)、(LC−2−1)、(LC−5−1)および(LC−6−1)の具体的製造法について説明する。(LC−1−1)および(LC−2−1)はMakroml.Chem.183,2311−2321(1982)に記載の方法に従い合成した。化合物(LC−5−1)はMakromol.Chem.192,59−74(1991)に記載された方法に従い合成した。化合物(LC−6−1)は特開2006−348022号公報に記載された方法に従い合成した。
【0153】
<積層体>
実施例2で得られた位相差フィルムF−1に、重合性液晶組成物(1)をスピンコートにより塗布した。この基板を80℃で2分間加熱してから、室温で3分間冷却し、溶剤が除去された塗膜を紫外線により大気中で重合させて、液晶の配向状態を固定させた光学フィルムを得た。この光学フィルムを偏光顕微鏡で観察したところ、配向欠陥はなく、均一な配向を有していることが確認できた。この光学フィルムのレタデーションを測定したところ、ホモジニアス配向であることが確認できた。
【0154】
[実施例12]
ポリマー(P−4)の合成
以下の手順により、化合物(M−1)からポリマー(P−4)を合成した。
【0155】
化合物(M−1)4.0gおよびアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.15gをTHF20mlに加え、窒素雰囲気下で10時間加熱還流下撹拌した。反応後の溶液をメタノールへ注ぎ込み再沈殿化した。結晶を濾別し、乾燥することにより、ポリマー(P−4)3.5gを得た。
得られたポリマー(P−4)は、Mwが31000、Mw/Mnが2.2であり、103℃〜183℃の範囲に液晶相を有する。
【0156】
<位相差フィルムF−6の作製>
ポリマー(P−4)をシクロペンタノン(CPN)に溶解させ、固形分濃度20重量%の溶液とした。この溶液を孔径0.2μmのフィルターで濾過することにより、光配向性位相差剤(H−4)を調製した。この光配向性位相差剤(H−4)を、ガラス基板上へスピンコートにより塗布した。この時、塗布性は良好であった。この基板を80℃で2分間加熱し、溶剤を除去することで塗膜を形成した。超高圧水銀ランプ(ウシオ電機社製)より、この塗膜表面に塗布面に対して90°の方向から313nm付近の波長の直線偏光紫外線を200mJ/cm
2照射することで、光配向処理した。この基板を150℃で5分間加熱することで位相差フィルム(F−6)を得た。
【0157】
[実施例13]
ポリマー(P−5)の合成
以下の手順により、化合物(M−1)および化合物(M−2)からポリマー(P−5)を合成した。
【0158】
化合物(M−1)3.0g、化合物(M−2)1.0gおよびアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.15gをTHF20mlに加え、窒素雰囲気下で10時間加熱還流下撹拌した。反応後の溶液をトルエンへ注ぎ込み再沈殿化した。結晶を濾別し、乾燥することにより、ポリマー(P−5)3.3gを得た。共重合比はモル分率でM−1=0.8、M−2=0.2である。
得られたポリマー(P−5)は、Mwが42000、Mw/Mnが2.5であり、81℃〜156℃の範囲に液晶相を有する。
【0159】
<位相差フィルムF−7の作製>
ポリマー(P−5)をシクロペンタノン(CPN)に溶解させ、固形分濃度20重量%の溶液とした。この溶液を孔径0.2μmのフィルターで濾過することにより、光配向性位相差剤(H−5)を調製した。この光配向性位相差剤(H−5)を、ガラス基板上へスピンコートにより塗布した。この時、塗布性は良好であった。この基板を80℃で2分間加熱し、溶剤を除去することで塗膜を形成した。超高圧水銀ランプ(ウシオ電機社製)より、この塗膜表面に塗布面に対して90°の方向から313nm付近の波長の直線偏光紫外線を200mJ/cm
2照射することで、光配向処理した。この基板を140℃で5分間加熱することで位相差フィルム(F−7)を得た。
【0160】
[実施例14]
ポリマー(P−6)の合成
以下の手順により、化合物(M−1)および化合物(M−2)からポリマー(P−6)を合成した。
【0161】
化合物(M−1)2.0g、化合物(M−2)2.0gおよびアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.15gをTHF20mlに加え、窒素雰囲気下で10時間加熱還流下撹拌した。反応後の溶液をトルエンへ注ぎ込み再沈殿化した。結晶を濾別し、乾燥することにより、ポリマー(P−6)3.6gを得た。共重合比はモル分率でM−1=0.4、M−2=0.6である。
得られたポリマー(P−6)は、Mwが42000、Mw/Mnが2.2であり、69℃〜149℃の範囲に液晶相を有する。
【0162】
<位相差フィルムF−8の作製>
ポリマー(P−6)をシクロペンタノン(CPN)に溶解させ、固形分濃度20重量%の溶液とした。この溶液を孔径0.2μmのフィルターで濾過することにより、光配向性位相差剤(H−6)を調製した。この光配向性位相差剤(H−6)を、ガラス基板上へスピンコートにより塗布した。この時、塗布性は良好であった。この基板を80℃で2分間加熱し、溶剤を除去することで塗膜を形成した。超高圧水銀ランプ(ウシオ電機社製)より、この塗膜表面に塗布面に対して90°の方向から313nm付近の波長の直線偏光紫外線を200mJ/cm
2照射することで、光配向処理した。この基板を140℃で5分間加熱することで位相差フィルム(F−8)を得た。
【0163】
[実施例15]
ポリマー(P−7)の合成
以下の手順により、化合物(M−1)および化合物(M−2)からポリマー(P−7)を合成した。
【0164】
化合物(M−1)0.4g、化合物(M−2)3.6gおよびアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.15gをTHF20mlに加え、窒素雰囲気下で10時間加熱還流下撹拌した。反応後の溶液をトルエンへ注ぎ込み再沈殿化した。結晶を濾別し、乾燥することにより、ポリマー(P−7)3.4gを得た。共重合比はモル分率でM−1=0.1、M−2=0.9である。
得られたポリマー(P−7)は、Mwが25000、Mw/Mnが2.2であり、78℃〜166℃の範囲に液晶相を有する。
【0165】
<位相差フィルムF−9の作製>
ポリマー(P−7)をシクロペンタノン(CPN)に溶解させ、固形分濃度20重量%の溶液とした。この溶液を孔径0.2μmのフィルターで濾過することにより、光配向性位相差剤(H−7)を調製した。この光配向性位相差剤(H−7)を、ガラス基板上へスピンコートにより塗布した。この時、塗布性は良好であった。この基板を80℃で2分間加熱し、溶剤を除去することで塗膜を形成した。超高圧水銀ランプ(ウシオ電機社製)より、この塗膜表面に塗布面に対して90°の方向から313nm付近の波長の直線偏光紫外線を200mJ/cm
2照射することで、光配向処理した。この基板を120℃で5分間加熱することで位相差フィルム(F−9)を得た。
【0166】
[実施例16]
<位相差フィルムの配向性、レタデーションと光学異方性Δn>
位相差フィルム(F−2)および(F−6)〜(F−9)を偏光顕微鏡観察にて配向欠陥を観察した。配向欠陥のないものを○、配向欠陥のあるものを×とした。また、偏光解析装置によりレタデーション(Re)を測定し、そのReの値と膜厚より光学異方性値Δnを算出した。結果を以下の表4に示す。
【0167】
【表4】
化合物(M−1)と化合物(M−2)の共重合比の違いによって光学異方性値Δnが異なることが確認された。
【0168】
[比較例5]
(i)化合物(CM−3)の合成
【0169】
【化18】
化合物(CM−3)は、Macromlecules,39,1364−1375(2006)に記載の方法に従い合成した。
【0170】
[比較例6]
(ii)ポリマー(CP−3)の合成
以下の手順により、化合物(M−1)および化合物(CM−3)からポリマー(CP−3)を合成した。
【0171】
化合物(M−1)1.0g、化合物(CM−3)3.0gおよびアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.15gをTHF20mlに加え、窒素雰囲気下で10時間加熱還流下撹拌した。反応後の溶液をメタノールへ注ぎ込み再沈殿化した。結晶を濾別し、乾燥することにより、ポリマー(CP−3)3.5gを得た。共重合比はモル分率でM−1=0.1、M−2=0.9である。
得られたポリマー(CP−3)は、Mwが42000、Mw/Mnが2.8であり、65℃〜173℃の範囲に液晶相を有する。
【0172】
<位相差フィルムCF−5の作製>
ポリマー(CP−3)をシクロペンタノン(CPN)に溶解させ、固形分濃度20重量%の溶液とした。この溶液を孔径0.2μmのフィルターで濾過することにより、光配向性位相差剤(CH−5)を調製した。この光配向性位相差剤(CH−5)を、ガラス基板上へスピンコートにより塗布した。この時、塗布性は良好であった。この基板を80℃で2分間加熱し、溶剤を除去することで塗膜を形成した。超高圧水銀ランプ(ウシオ電機社製)より、この塗膜表面に塗布面に対して90°の方向から313nm付近の波長の直線偏光紫外線を200mJ/cm
2照射することで、光配向処理した。この基板を150℃で5分間加熱することで位相差フィルム(CF−5)を得た。
CF−5はホメオトロピック配向となり、良好なReを得られなかった。