特許第6201952号(P6201952)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6201952
(24)【登録日】2017年9月8日
(45)【発行日】2017年9月27日
(54)【発明の名称】解体方法及びリサイクル部材
(51)【国際特許分類】
   C09J 5/00 20060101AFI20170914BHJP
   C09J 7/02 20060101ALI20170914BHJP
   B09B 3/00 20060101ALI20170914BHJP
   C09J 153/02 20060101ALI20170914BHJP
【FI】
   C09J5/00
   C09J7/02 Z
   B09B3/00 Z
   C09J153/02
   B09B3/00 303Z
【請求項の数】12
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2014-213665(P2014-213665)
(22)【出願日】2014年10月20日
(65)【公開番号】特開2016-77988(P2016-77988A)
(43)【公開日】2016年5月16日
【審査請求日】2016年8月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124970
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 通洋
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 孝幸
(72)【発明者】
【氏名】秋山 誠二
(72)【発明者】
【氏名】森野 彰規
【審査官】 上條 のぶよ
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−118522(JP,A)
【文献】 特開2004−083603(JP,A)
【文献】 特開2011−200846(JP,A)
【文献】 特開2006−160872(JP,A)
【文献】 特開2005−311031(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00−201/10
B09B 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも被着体(a1)と被着体(a2)とが熱解体性粘着シートによって接着された構成を有する物品の解体方法であって、前記解体方法が、前記物品の表面の一部に、赤外線放射率が50%以下の部材(b)を載置または仮固定する工程[1]、及び、前記部材(b)が載置または仮固定された側から赤外線を照射することによって、前記被着体(a1)と被着体(a2)とを分離する工程[2]を有することを特徴とする解体方法。
【請求項2】
前記工程[1]が、前記物品の表面の一部を、前記部材(b)によってマスキングする工程である請求項1に記載の物品の解体方法。
【請求項3】
前記工程[2]は、赤外線照射によって前記熱解体性粘着シートが70℃〜150℃に加熱される工程である請求項1または2に記載の解体方法。
【請求項4】
前記赤外線は、ハロゲンランプによって発せられるものである請求項1〜3のいずれか1項に記載の解体方法。
【請求項5】
前記部材(b)が、非透明部材である請求項1〜4のいずれか1項に記載の解体方法。
【請求項6】
前記熱解体性粘着シートが、ゴム系ブロック共重合体を含有する粘着剤層を有するものである請求項1〜5のいずれか1項に記載の解体方法。
【請求項7】
前記ゴム系ブロック共重合体の1Hz及び120℃での動的粘弾性スペクトルで測定される貯蔵弾性率G120が1.0×10Pa〜2.0×10Paの範囲であり、かつ、前記貯蔵弾性率G120に対する、1Hz及び23℃での動的粘弾性スペクトルで測定される貯蔵弾性率G23の割合〔G23/G120〕が1〜20である請求項6に記載の解体方法。
【請求項8】
前記ゴム系ブロック共重合体が、ポリスチレン単位と、ポリイソプレン単位とを有するブロック共重合体である請求項6または7に記載の解体方法。
【請求項9】
前記熱解体性粘着シートが、基材の両面に前記粘着剤層を有するものであって、前記粘着剤層の少なくとも一方の厚さが50μm以上である請求項1〜8のいずれか1項に記載の解体方法。
【請求項10】
前記被着体(a1)及び被着体(a2)が板状剛体である請求項1〜9のいずれか1項に記載の解体方法。
【請求項11】
前記被着体(a1)及び被着体(a2)が、それぞれ独立して、透明天板、きょう体またはレンズ部材のいずれかである請求項1〜10のいずれか1項に記載の解体方法。
【請求項12】
前記物品が情報読取装置または携帯電子機器である請求項1〜11のいずれか1項に記載の解体方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2以上の被着体が粘着シートによって接着された構成を有する物品を解体する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
粘着テープは、電子機器をはじめとする様々な製品を構成する部材の固定に使用されている。最近では、粘着テープは、コピー機能やスキャン機能を備えた複写機や複合機を構成する透明天板と、そのきょう体との固定に使用することが検討されている。
【0003】
一方、前記電子機器の使用が尽くされ廃棄された際、前記透明天板等の部材ときょう体とは、手作業で解体され、材質ごとに区分され、廃棄またはリサイクルされることが多い。
【0004】
しかし、例えば複写機等に搭載される透明天板は、その表面に、原稿や書籍等が繰り返し置かれ荷重されることを想定し、きょう体と強固に接着されている場合が多い。そのため、前記透明天板と前記きょう体とを、手作業で容易に分離することができない場合があった。
【0005】
また、前記電子機器の解体現場では、手作業で前記透明天板ときょう体とを分離することが困難であるため、前記透明天板の一部を、切削機等を用いて切り取る方法が検討されている。
【0006】
しかし、前記切り取り作業は、長時間を要する場合が多く、解体作業効率を低下させるため好まれない場合があった。また、前記透明天板の一部は、依然としてきょう体の一部に接着された状態であるため、それらを分別して廃棄することができず、その廃棄処理に多大な費用がかかる場合があった。
【0007】
2以上の被着体を強固に接着することができ、かつ、加熱等することによって接着力を低下させ被着体同士を分離できる特性を備えた粘着テープとしては、例えば加熱水蒸気発生装置を用い加熱及び加湿することによって解体できる粘着テープが知られている(例えば特許文献1参照。)
【0008】
前記解体方法であれば、前記粘着テープで固定された2以上の部品(被着体)を容易に分離することができる。しかし、前記部品の周辺領域も熱や湿気の影響を受けるため、前記周辺領域に熱等に弱い部品が使われている場合に、それらの故障や劣化を引き起こす場合があった。とりわけ、前記被着体が、電子機器を構成する電子部品や樹脂きょう体等の比較的熱に弱く、高価な部品である場合、前記解体時の熱等の影響によって部品の故障や変形等を引き起こし、前記部品をリサイクルすることができない場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2014−008450号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明が解決しようとする課題は、2以上の被着体を分離する際に、熱解体性粘着シート、または、それが貼付された領域を局所的に加熱することができる一方で、その周辺領域に存在する部品等への熱の影響を抑制することのできる物品の解体方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、少なくとも被着体(a1)と被着体(a2)とが熱解体性粘着シートによって接着された構成を有する物品の解体方法であって、前記解体方法が、前記物品の表面の一部に、赤外線放射率が50%以下の部材(b)を載置または仮固定する工程[1]、及び、前記部材(b)が載置または仮固定された側から赤外線を照射することによって、前記被着体(a1)と被着体(a2)とを分離する工程[2]を有することを特徴とする解体方法によって、前記課題を解決するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の解体方法は、熱解体性粘着シートまたはそれが貼付された領域を局所的に加熱することができる一方で、熱解体性粘着シートが貼付されていない領域に存在する部品の熱による故障や変形等を防止することができる。そのため、本発明の解体方法は、比較的熱に弱く、かつ、高価な部品の搭載された携帯電子端末等の電子機器を解体する場面等で好適に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】面接着強度の測定方法を示す概念図である。
図2】部材の形状の一例を示す概念図である。
図3】解体性の評価方法を示す側面図である。
図4】解体性を評価する際の赤外線の照射方法を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の解体方法は、少なくとも被着体(a1)と被着体(a2)とが熱解体性粘着シートによって接着された構成を有する物品の解体方法であって、前記解体方法が、前記物品の表面の一部に、赤外線放射率が50%以下の部材(b)を載置または仮固定する工程[1]、及び、前記部材(b)が載置または仮固定された側から赤外線を照射することによって、前記被着体(a1)と被着体(a2)とを分離する工程[2]を有することを特徴とする。
【0015】
本発明の解体方法は、単に、前記物品に赤外線を照射し加熱する方法ではなく、前記物品のうち加熱を必要としない部位への赤外線の影響を排除し、前記加熱を必要とする部位を効率よく加熱することを特徴とする。
【0016】
具体的には、本発明の解体方法では、前記赤外線の影響を排除したい部位の表面側に、赤外線放射率が50%以下の部材(b)を載置または仮固定する。一方、前記赤外線を照射する部位の表面には、前記部材(b)を載置等しない。
【0017】
次に、前記物品に対し、前記部材(b)が載置等された側から赤外線を照射する。その際、前記部材(b)によってマスクされた領域は、赤外線の影響を受けないため実質的に加熱されず、熱の影響による部品の損傷などを引き起こしにくい。
【0018】
一方、前記部材(b)によってマスクされていない領域は、赤外線の影響により加熱される。前記物品のうち前記熱解体性粘着シートの設けられた領域と、前記部材(b)によってマスクされない領域とを対応させることで、前記赤外線によって前記熱解体性粘着シートが加熱され、その接着力の著しい低下を引き起こし、その結果、前記熱解体性粘着シートによって接着されていた2以上の被着体の分離を引き起こすことができる。
【0019】
はじめに、前記工程[1]について説明する。
【0020】
工程[1]は、前記物品の表面の一部を、前記部材(b)によってマスキングする工程である。
【0021】
前記部材(b)は、前記物品の全面に載置等するのではなく、熱の影響を最小限にとどめる必要がある領域の表面にのみ載置等することが好ましい。
【0022】
前記部材(b)は、前記物品を構成する前記被着体(a1)または前記被着体(a2)の少なくとも一方の一部に載置等してもよく、前記被着体(a1)及び前記被着体(a2)以外の部位に載置等してもよい。
【0023】
前記部材(b)は、前記物品の表面に、任意に載置等してもよいが、前記物品の形状に対応して賦形されているものや、予め、赤外線を照射したい領域のみが切り取られたもの(パターンが形成されたもの)等であってもよい。具体的には、前記熱解体性粘着シートとして、いわゆる額縁状の形状のものを使用し、その熱解体性粘着シートが貼付された領域に赤外線を照射する場合、前記部材(b)としては、前記額縁形状の部位のみに赤外線を照射できるように、額縁形状の部位のみが切り取られたシート状のものを使用することができる。前記部材(b)は、繰り返し使用してもよい。
【0024】
前記部材(b)は、前記物品の一部に単に載置することのみでもよく、また、粘着テープ等によって仮固定されてもよい。
【0025】
次に、前記工程[2]について説明する。
【0026】
工程[2]は、前記物品の、前記部材(b)が載置または仮固定された側から赤外線を照射することによって、前記被着体(a1)と被着体(a2)とを分離する工程である。
【0027】
具体的には、前記工程[2]においては、赤外線または赤外線を含む活性エネルギー線やレーザー光線等を照射する。
【0028】
前記赤外線は、直接、または、前記被着体(a1)、被着体(a2)もしくは前記物品を構成するその他の透明部材を透過して、前記物品を構成する熱解体性粘着シートに達し、前記熱解体性粘着シートを好適な温度に昇温させる。
【0029】
前記照射には、従来知られるハロゲンランプ等の光源を用いて行うことができるが、市販される携帯型のハロゲンヒーターを使用することが好ましい。これにより、前記熱解体性粘着シートを構成する粘着剤層を短時間で加熱し軟化させることができるため、前記解体作業効率を格段に向上することができる。
【0030】
前記照射は、例えばハロゲンランプヒーター等の光源(ランプ)と、前記熱解体性粘着シートとの距離が5mm〜100mm程度の範囲で行うことが好ましく、5mm〜50mmであることがより好ましく、5mm〜30mmであることが、前記熱解体性粘着シートを構成する粘着剤層を短時間で軟化させ前記解体作業効率を向上させるうえでより好ましい。特に、前記ハロゲンランプは、赤外線を放射状に発するため、前記距離が短いほど、照射時間を短くすることができる。
【0031】
前記赤外線の照射時間は、2秒〜20秒程度であることが好ましく、3秒〜15秒程度であることがより好ましく、5秒〜15秒程度であることが、前記解体作業効率を向上させるうえで特に好ましい。
【0032】
前記赤外線の照射は、前記物品を構成する熱解体性粘着シートが70℃〜150℃に加熱される程度に行うことが好ましく、80℃〜130℃に加熱される程度に行うことがより好ましく、85℃〜125℃に加熱される程度に行うことが、被着体(a1)または被着体(a2)のうち、比較的熱に弱い被着体の故障や変形等を防止し、それらのリサイクルを可能にするうえでさらに好ましい。
【0033】
前記被着体(a1)と被着体(a2)との分離は、前記照射後、前記熱解体性粘着シートの温度が低下するまでの間に行うことが好ましい。具体的には、前記分離は、前記照射後10秒以内に行うことが好ましい。
【0034】
本発明の解体方法で使用する前記部材(b)としては、赤外線放射率が50%以下、好ましくは40%以下、より好ましくは30%以下であるものを使用する。これにより、熱解体性粘着シートまたはそれが貼付された領域を局所的に加熱することができる一方で、例えば熱解体性粘着シートが貼付されていない領域等に存在する部品の、熱による故障や変形等を防止することができる。
【0035】
ここで、前記赤外線放射率は、放射率測定器(TSS−5X、ジャパンセンサー株式会社製、測定方式;定温放射源からの赤外線照射による反射エネルギー量検出及び演算方式)を用い、試料温度及び環境温度23℃、測定波長2〜22μm、測定面積φ15mm、測定距離12mm(検出ヘッド脚注による固定方式)の条件で測定して得られた値を指す。
【0036】
前記部材(b)としては、具体的には、アルミニウム、銀、金、ニッケル、銅、ステンレス等の金属部材、前記金属部材と樹脂部材等とが積層された部材、任意の部材の表面に赤外線放射率の低い被膜を形成した部材等を使用することができる。なかでも、前記部材(b)としては、低い赤外線放射率の非透明部材を使用することが好ましく、比較的安価なアルミニウム板、ステンレス板、銅板を使用することが好ましい。
【0037】
前記金属部材と樹脂部材等とが積層された部材としては、前記樹脂部材に空気を含むものを使用することが、断熱層の役割を果たすため好ましい。具体的には、前記部材(b)としては、前記金属部材と発泡体等とが積層されたもの等を使用することが、優れた断熱性を有するため好ましい。前記発泡体としては、例えばポリオレフィン系発泡体等が挙げられる。
【0038】
前記部材(b)の形状や厚さは、解体する物品の形状や前記解体方法を実施する環境等に応じて適宜調整することができる。
【0039】
前記部材(b)としては、熱を前記物品に伝導しない程度の厚さを有する一方で、その解体作業スペースを過度に必要としない程度の厚さであるものを使用することが好ましく、具体的には0.5mm〜10mm程度であるものを使用することが好ましい。
【0040】
本発明で使用可能な熱解体性粘着シートとしては、例えば2以上の被着体を強固に接着でき、かつ、熱の影響で接着力を著しく低下させる特性を両立可能なゴム系のブロック共重合体を含有する粘着剤層を備えた粘着シートを使用することが好ましい。
【0041】
前記熱解体性粘着シートとしては、基材の片面または両面に、直接または他の層を介して、前記粘着剤層を有するものを使用することができる。また、前記熱解体性粘着シートしては、単層または複層の前記粘着剤層からなる、いわゆる基材レスのものを使用することができる。
【0042】
前記熱解体性粘着シートとしては60μm〜300μmであるものを使用することが好ましく、100μm〜250μmの厚さを有するものを使用することが、通常の状態では接着力に優れる一方で、加熱後の解体性に優れるためより好ましい。
【0043】
前記粘着剤層に含まれていてもよいゴム系ブロック共重合体としては、いわゆるABAタイプのブロック共重合体(トリブロック共重合体)、ABタイプのブロック共重合体(ジブロック共重合体)、及び、それらの混合物を使用することができる。
【0044】
前記ゴム系ブロック共重合体としては、前記トリブロック共重合体及びジブロック共重合体の混合物を使用することが、23℃における高い接着力と、120℃に加熱することによって容易に解体できるレベルにまで接着力を低下させるうえで好ましく、前記ジブロック共重合体を前記ゴム系ブロック共重合体全体に対して10質量%〜90質量%の範囲で含有するものを使用することがより好ましく、15質量%〜80質量%の範囲で使用することがさらに好ましく、20質量%〜75質量%の範囲で使用することが特に好ましい。
【0045】
前記ゴム系ブロック共重合体としては、スチレン系ブロック共重合体を使用することが好ましい。前記スチレン系ブロック共重合体は、ポリスチレン単位とポリオレフィン単位とを有するトリブロック共重合体、ジブロック共重合体、または、それらの混合物を指す。
【0046】
前記ポリスチレン単位は、粘着剤層の弾性率を高め、優れた凝集力の発現に寄与するとともに、120℃下では急激に軟化し、接着力を低下させることに寄与する。
【0047】
前記スチレン系のブロック共重合体としては、例えばポリスチレン−ポリ(イソプロピレン)ブロック共重合体、ポリスチレン−ポリ(イソプロピレン)ブロック−ポリスチレン共重合体、ポリスチレン−ポリ(ブタジエン)ブロック共重合体、ポリスチレン−ポリ(ブタジエン)ブロック−ポリスチレン共重合体、ポリスチレン−ポリ(ブタジエン/ブチレン)ブロック共重合体、ポリスチレン−ポリ(ブタジエン/ブチレン)ブロック−ポリスチレン共重合体、ポリスチレン−ポリ(エチレン/プロピレン)ブロック共重合体、ポリスチレン−ポリ(エチレン/プロピレン)ブロック−ポリスチレン共重合体、ポリスチレン−ポリ(エチレン/ブチレン)ブロック共重合体、ポリスチレン−ポリ(エチレン/ブチレン)ブロック−ポリスチレン共重合体、ポリスチレン−ポリ(エチレン−エチレン/プロピレン)ブロック共重合体、ポリスチレン−ポリ(エチレン−エチレン/プロピレン)ブロック−ポリスチレン共重合体等を使用することができる。なかでも、前記スチレン系のブロック共重合体としては、ポリスチレン単位(a1)とポリイソプレン単位(a2)とを有するブロック共重合体を使用することが好ましく、ポリスチレン−ポリ(イソプロピレン)ブロック共重合体、ポリスチレン−ポリ(ブタジエン)ブロック共重合体、ポリスチレン−ポリ(ブタジエン)ブロック−ポリスチレン共重合体、を使用することが、2以上の被着体を十分に固定できるレベルの接着力を備え、かつ、必要なときに加熱することによって容易に解体できるレベルにまで接着力を低下させることのできる熱解体性粘着シートを得るうえでより好ましい。
【0048】
前記ゴム系ブロック共重合体としては、優れた接着力と、加熱による解体性とをより一層向上させるうえで、1万〜80万の範囲の重量平均分子量を有するものを使用することが好ましく、5万〜50万の範囲の重量平均分子量を有するものを使用することがより好ましく、15万〜45万の範囲の重量平均分子量を有するものを使用することがさらに好ましい。
【0049】
前記粘着剤層としては、前記ゴム系ブロック共重合体の他に、必要に応じて粘着付与樹脂等を含有するものを使用することが好ましい。
【0050】
前記粘着付与樹脂としては、例えばロジン系粘着付与樹脂、重合ロジン系粘着付与樹脂、重合ロジンエステル系粘着付与樹脂、ロジンフェノール系粘着付与樹脂、水添ロジンエステル系粘着付与樹脂、不均化ロジンエステル系粘着付与樹脂、テルペン系粘着付与樹脂、テルペンフェノール系粘着付与樹脂、脂肪族(石油樹脂)系粘着付与樹脂、C5系石油系粘着付与樹脂を使用することができる。
【0051】
なかでも、前記粘着付与樹脂としては、被着面への濡れ性を向上するうえで、C5系石油系粘着付与樹脂を使用することが好ましい。
【0052】
上記C5系石油樹脂としては、一般にナフサの分解で得られるC5留分よりイソプレン及びシクロペンタジエンを抽出分離した残りを重合した樹脂を使用することができる。
粘着付与樹脂は、前記ゴム系ブロック共重合体100質量部に対して10質量部〜50質量部の範囲で使用することが好ましい。
【0053】
また、粘着付与樹脂としては、前記したもののほかに、室温で液状の粘着付与樹脂を使用することもできる。前記液状の粘着付与樹脂としては、例えばプロセスオイル、ポリエステル系粘着付与樹脂、ポリブテン等の低分子量の液状ゴムが挙げられる。
【0054】
前記液状の粘着付与樹脂は、前記粘着付与樹脂の全量に対して3質量%〜30質量%の範囲で使用することが、被着面への濡れ性をより一層向上させるうえで好ましい。
【0055】
また、前記粘着剤層としては、前記したものの他に、必要に応じて赤外線吸収剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、充填剤、ガラスやプラスチック製の繊維、バルーン、ビーズ、金属粉末等の充填剤、顔料、増粘剤等を含有するものを使用することができる。
【0056】
特に、前記赤外線吸収剤は、本発明の熱解体性粘着シートを効率よく加熱するうえで、好適に使用することができる。
【0057】
前記赤外線吸収剤としては、例えばカーボンブラックや複合酸化物顔料などの無機顔料;フタロシアニン系顔料、レーキ顔料、多環式系顔料などの有機顔料、各種染料など公知のもの適宜使用することができる。
【0058】
前記赤外線吸収剤は、前記粘着剤層の全量に対して0.01質量%〜20質量%の範囲で含まれることが好ましい。
【0059】
熱解体性粘着シートを構成する粘着剤層としては、周波数1Hzで120℃における貯蔵弾性率G120が1.0×10〜2.0×10Paであるものを使用することが好ましい。前記範囲の貯蔵弾性率G120を有する粘着剤層を有する熱解体性粘着シートを使用することによって、必要なときに被着体から容易に解体できるレベルにまでその接着力を低下させることができる。
【0060】
前記粘着剤層としては、前記貯蔵弾性率G120が1.0×10Pa以上1.0×10Pa以下であるものを使用することがより好ましく、5.0×10Pa以上8.0×10Pa以下であるものを使用することが、前記熱解体性粘着シートを加熱することによって被着体から容易に解体できるレベルにまで接着力をより効果的に低下させることができるためさらに好ましい。
【0061】
一方、前記粘着剤層としては、周波数1Hzで23℃における貯蔵弾性率G’が1.0×10Pa以上であるものを使用することが好ましく5.0×10Pa以上2.0×10Pa以下であるものを使用することがより好ましく、4.5×10以上1.0×10以下であるものを使用することが、前記熱解体性粘着シートを貼付する領域(貼付部位)がきわめて狭い範囲に限られる部材であり、細幅の粘着シートを使用せざるを得ない場合であっても、前記部材を十分に固定できるレベルの接着力を付与することができるためさらに好ましい。
【0062】
また、前記粘着剤層の1Hz及び120℃での動的粘弾性スペクトルで測定される貯蔵弾性率G120が1.0×10〜2.0×10Paの範囲であり、かつ、前記貯蔵弾性率G120に対する1Hz及び23℃での動的粘弾性スペクトルで測定される貯蔵弾性率G23の割合〔G23/G120〕が1〜20であるものを使用することが好ましい。前記範囲の割合〔G23/G120〕を有する粘着剤層を有する熱解体性粘着シートを使用することによって、2以上の被着体を十分に固定できるレベルの接着力を備え、かつ、必要なときに加熱することによって容易に解体できるレベルにまで接着力を低下させることができる。
【0063】
前記熱解体性粘着シートとしては、例えば前記基材の片面側に設けられた前記粘着剤層の厚さが50μm以上であるものを使用することが好ましく、60μm〜120μmであるものを使用することが、凝集力に優れ、接着力と加熱した際における容易な解体性に優れた効果を付与するうえでより好ましい。
【0064】
前記熱解体性粘着シートとしては、例えば前記基材の両面側に設けられた前記粘着剤層の合計の厚さが90μm以上であるものを使用することが好ましく、90μm〜300μmの範囲であることがより好ましく、100μm〜250μmの範囲であることがさらに好ましく、100μm〜210μmの範囲であることが、凝集力に優れ、接着力と加熱した際における容易な解体性に優れた効果を付与するうえでより好ましい。
【0065】
前記熱解体性粘着シートとしては、前記したとおり、基材の片面または両面に、直接または他の層を介して前記粘着剤層を有するものを使用することができる。
【0066】
前記基材としては、例えば不織布基材や樹脂フィルム基材等を使用することができる。なかでも、前記基材としては、赤外線の吸収性に優れる基材(赤外線吸収性基材)を使用することが好ましい。なかでも、前記赤外線吸収性基材としては、赤外線吸収性無機フィラー、有機色素、無機色素、染料、顔料を含有した樹脂フィルムや、樹脂フィルム上に赤外線吸収層を設けたものが挙げられる。なかでも、前記赤外線吸収性基材としては、黒色の基材を使用することが、前記粘着シートに好適な吸熱性や蓄熱性を与え、活性エネルギー線やレーザー光線等を照射した際に、前記粘着シートを局所的に昇温させることができるため、前記照射時間を短縮することができ、その結果、2以上の被着体を解体する工程の作業効率を格段に向上させることができるため好ましい。
【0067】
前記黒色基材としては、黒色であれば特に限定されるものではなく、例えば樹脂基材に黒インキ層を印刷したもの、樹脂と黒顔料とを練りこみフィルム状に成形したもの、不織布基材に黒顔料を分散させたものなどが挙げられる。
【0068】
前記基材としては、4μm〜100μmの厚さのものを使用することが好ましく、10μm〜75μmの厚さのものを使用することが、熱解体性粘着シートの良好な加工性と、被着体への優れた追従性を付与する効果を奏するうえでより好ましい。
【0069】
前記樹脂フィルム基材としては、ポリエチレンテレフタレート基材等を使用することができる。また、前記樹脂フィルム基材としては、前記粘着剤層の投錨性を向上させるうえで、コロナ処理やアンカーコート処理が施されたものを使用することができる。
【0070】
本発明の熱解体性粘着シートは、例えば前記基材の片面または両面に、ロールコーターやダイコーター等を用いて、前記ゴム系ブロック共重合体等を含有する粘着剤を塗布及び乾燥し粘着剤層を形成することによって製造することができる。また、前記熱解体性粘着シートは、予め、離型ライナーの表面に、ロールコーター等を用いて、前記ゴム系ブロック共重合体等を含有する粘着剤を塗布し、乾燥することによって粘着剤層を形成し、次いで、前記粘着剤層を、前記基材の片面または両面に貼り合せる転写法によって製造することができる。
【0071】
本発明の解体方法で解体可能な物品としては、少なくとも被着体(a1)と被着体(a2)とが熱解体性粘着シートによって接着された構成を有する物品が挙げられる。
【0072】
具体的には、前記物品としては、スマートフォンや電話機等の携帯電子端末、パーソナルコンピューター、複写機や複合機等の情報読取装置等の電子機器等が挙げられる。
【0073】
前記物品を構成する被着体であって、本発明の解体方法によって分離可能な被着体(a1)及び被着体(a2)としては、板状剛体を好適に使用することができ、例えば前記複写機及び複合機であれば、それを構成する透明天板、きょう体が挙げられる。前記被着体(a1)及び被着体(a2)のいずれか一方または両方は、前記解体方法によって分離された後、廃棄されてもよく、また、リサイクル部材として再利用されてもよい。
【0074】
前記透明天板としては、例えばガラスまたはプラスチックからなる透明板状剛体を使用することができる。前記プラスチックとしては、例えばアクリル板、ポリカーボネート板等を使用することができる。
【0075】
前記透明天板としては、それが設置される複写機等の形状に合ったものを使用できるが、通常は、正方形または長方形であるものを使用することが好ましい。
【0076】
前記熱解体性粘着シートは、例えば長方形の前記透明天板であれば、対向する2辺の端部に沿って、貼付されることが好ましい。その際、前記熱解体性粘着シートは、前記透明天板の辺の長さに対応した覆記載に裁断したものを使用できるが、例えば幅が0.5〜20mmで、長さが0.1〜2.0mであるものを使用することが好ましい。
【0077】
また、前記被着体(a1)及び被着体(a2)としては、解体する物品が携帯電子端末の場合であれば、2以上のきょう体、レンズ部材等が挙げられる。
【0078】
前記携帯電子機器としては、例えば前記部材としてきょう体と、レンズ部材またはその他きょう体の一方とが、前記熱解体性粘着シートを介して接合された構造を有するものが挙げられる。
【0079】
前記部材の固定は、例えば、前記きょう体またはレンズ部材の一方と、他方のきょう体またはレンズ部材とを、前記熱解体性粘着シートを介して積層した後、一定期間養生させる方法が挙げられる。
【実施例】
【0080】
以下に実施例により具体的に説明する。
【0081】
[部材(マスキング部材)の作製]
[製造例1]
長さ100mm、巾100mm及び厚さ1mmの表面が研磨されたアルミニウム板(赤外線放射率4%)のおよそ中央部に、長さ50mm及び巾5mmの長方形の空洞部を30mm間隔で2個形成したものを部材(b1)とした(図2参照。)。
【0082】
なお、前記部材(b1)の赤外線放射率は、放射率測定器(TSS−5X、ジャパンセンサー株式会社製、測定方式;定温放射源からの赤外線照射による反射エネルギー量検出及び演算方式)を用い、試料温度及び環境温度23℃、測定波長2〜22μm、測定面積φ15mm、測定距離12mm(検出ヘッド脚注による固定方式)の条件で測定した。具体的には、前記部材(b1)の表面に、前記放射率測定器に搭載された赤外線照射源(半球面黒体炉)を設置し、前記条件で測定した場合に、そのデジタル表示に示された値を、上記赤外線放射率とした。
【0083】
[製造例2]
長さ100mm、巾100mm及び厚さ1mmの赤外線放射率2%の銅板のおよそ中央部に、長さ50mm及び巾5mmの長方形の空洞部を30mm間隔で2個形成したものを部材(b2)とした。
【0084】
[製造例3]
長さ100mm、巾100mm及び厚さ1mmのステンレス板(SUS304)の表面を研磨して得たステンレス板(赤外線放射率25%)のおよそ中央部に、長さ50mm及び巾5mmの長方形の空洞部を30mm間隔で2個形成したものを部材(b3)とした。
【0085】
[製造例4]
長さ100mm、巾100mm及び厚さ1mmの表面が研磨されたアルミニウム板(赤外線放射率4%)の片面に厚さ200μmのポリエチレンフォームが積層された部材のおよそ中央部に、長さ50mm及び巾5mmの長方形の空洞部を30mm間隔で2個形成したものを部材(b4)とした
[比較製造例1]
長さ100mm、巾100mm及び厚さ1mmの白色のポリマーアロイ製樹脂板(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂とポリカーボネート樹脂とからなる、赤外線放射率90%)のおよそ中央部に、長さ50mm及び巾5mmの長方形の空洞部を30mm間隔で2個形成したものを部材(b5)とした。
【0086】
[比較製造例2]
長さ100mm、巾100mm及び厚さ1mmの黒色のアクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂からなるからなるポリマーアロイ製樹脂板(赤外線放射率98%)のおよそ中央部に、長さ50mm及び巾5mmの長方形の空洞部を30mm間隔で2個形成したものを部材(b6)とした。
【0087】
[熱解体性粘着シートの製造方法]
[熱解体性粘着シート(1)]
重量平均分子量30万のスチレン−ブタジエンブロック共重合体(トリブロック共重合体とジブロック共重合体との混合物。前記混合物の全量に対する前記ジブロック共重合体の占める割合は20質量%。前記スチレン−ブタジエンブロック共重合体の全体に占めるポリスチレン単位の質量割合は20質量%、ポリブタジエン単位の質量割合は80質量%)100質量部、C5石油系粘着付与樹脂(軟化点100℃、数平均分子量885)40質量部を混合したものを、トルエンに溶解することによって粘着剤を得た。
【0088】
前記粘着剤を、アプリケーターを用いて乾燥後の厚さが100μmとなるように、離型ライナーの表面に塗布し、85℃で5分間乾燥させることによって粘着剤層を形成した。前記粘着剤層を、厚さ4μmの黒インキ層が表面に設けられた38μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(以下、「黒PET」と省略。)の両面に貼り合せた後、4kgf/cmで加圧しラミネートすることによって、熱解体性粘着シート(1)を作製した。
【0089】
[熱解体性粘着シート(2)]
重量平均分子量30万のスチレン−ブタジエンブロック共重合体(トリブロック共重合体とジブロック共重合体との混合物。前記混合物の全量に対する前記ジブロック共重合体の占める割合は20質量%。前記スチレン−ブタジエンブロック共重合体の全体に占めるポリスチレン単位の質量割合は15質量%、ポリブタジエン単位の質量割合は85質量%)を使用したこと以外は熱解体性粘着シート1と同様の方法で熱解体性粘着シート(2)を作製した。
【0090】
[粘着剤層の動的粘弾性測定]
前記粘着剤を、アプリケーターを用いて乾燥後の厚さが100μmとなるように、離型ライナーの表面に塗布し、85℃で5分間乾燥させることによって、厚さ100μmの粘着剤層を、それぞれ複数枚形成した。
【0091】
次に、同一の粘着剤を用いて得た粘着剤層を重ねあわせることによって、厚さ2mmの粘着剤層からなる試験片を、それぞれ作成した。
【0092】
ティ・エイ・インスツルメントジャパン社製の粘弾性試験機(アレス2kSTD)に、直径7.9mmのパラレルプレートを装着した。前記試験片を、前記パラレルプレートで圧縮荷重40〜60gで挟み込み、周波数1Hz、温度領域−60〜150℃、及び、昇温速度2℃/minの条件で、23℃下での貯蔵弾性率(G23)及び120℃下での貯蔵弾性率(G120)を測定した。
【0093】
〔23℃下での貯蔵弾性率(G23)及び120℃下での貯蔵弾性率(G120)の割合〕
前記方法で測定した120℃下での貯蔵弾性率(G120)に対する、23℃下での貯蔵弾性率(G23)の割合を算出した。
【0094】
[物品の製造方法]
[実施例1]
熱解体性粘着シート(1)を長さ50mm及び巾5mmの短冊状に裁断して得た2枚の熱解体性粘着シート片を、長さ50mm、巾40mm及び厚さ0.4mmの透明ガラス板(被着体1)の長辺の両端にそれぞれ貼付したものを試験片とした。
【0095】
次に、長さ100mm、巾100mm及び厚さ1mmの直方体である白色のポリマーアロイ製樹脂板(被着体2、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂とポリカーボネート樹脂とからなる)のおよそ中央部に、前記試験片を構成する2枚の粘着シート片を貼付し、プレス機を用いて80N/cmで10秒加圧した後、前記加圧状態を解き、85℃の環境下で24時間静置することによって、前記透明ガラス板と前記粘着シート片と前記ポリマーアロイ製樹脂板とが積層された物品(1)を製造した。
【0096】
次に、前記物品(1)を構成する透明ガラス板の上面に、製造例1で得た部材(b1)を載置した。その際、前記物品(1)を構成する熱解体性粘着シート片に赤外線が照射されるよう、前記熱解体性粘着シート片の形状と、前記部材(b1)の空洞部の形状とを一致させるようにした。
【0097】
次に、23℃環境下、ヒートテック社製の携帯型ハロゲンヒーター(100V電源出力)を、前記物品(1)を構成する熱解体性粘着シート片までの距離が15mmとなる位置に設置し、前記部材(b1)を載置した側から、5秒間、赤外線波長域に光を照射した。
【0098】
前記照射後、前記物品(1)を23℃環境下に5秒放置した。
【0099】
次に、前記物品(1)を構成するポリマーアロイ製樹脂板を、水平台の上に固定した状態で、前記物品(1)を構成する透明ガラス板(被着体1)を、水平台に対してせん断方向に引き剥がすことを試みた。
【0100】
[実施例2]
マスキング部材として前記部材(b1)の代わりに部材(b2)を使用したこと以外は実施例1と同様にして物品を解体した。
【0101】
[実施例3]
マスキング部材として前記部材(b1)の代わりに部材(b3)を使用したこと以外は実施例1と同様にして物品を解体した。
【0102】
[実施例4]
被着体1として長さ50mm、巾40mm及び厚さ0.4mmの透明ガラス板の代わりに、長さ50mm、巾40mm及び厚さ1mmの透明アクリル板を使用すること、及び、被着体2として長さ100mm、巾100mm及び厚さ1mmの直方体である白色のポリマーアロイ製樹脂板(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂とポリカーボネート樹脂とからなる)の代わりに、長さ100mm、巾100mm及び厚さ1mmの直方体である黒色のアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂板(ABS樹脂板)を使用したこと以外は実施例1と同様にして物品(2)を製造し、それを解体した。
【0103】
[実施例5]
マスキング部材として前記部材(b1)の代わりに部材(b2)を使用したこと以外は実施例4と同様にして物品を解体した。
【0104】
[実施例6]
熱解体性粘着シート(1)の代わりに熱解体性粘着シート(2)を用いたこと以外は実施例1と同様にして物品を解体した。
【0105】
[実施例7]
マスキング部材として前記部材(b1)の代わりに部材(b2)を使用し、かつ、熱解体性粘着シート(1)の代わりに熱解体性粘着シート(2)を用いたこと以外は実施例1と同様にして物品を解体した。
【0106】
[実施例8]
マスキング部材として前記部材(b1)の代わりに部材(b4)を使用したこと以外は実施例1と同様の方法で物品を解体した。
【0107】
[比較例1]
マスキング部材として前記部材(b1)の代わりに部材(b5)を使用したこと以外は実施例1と同様にして物品を解体した。
【0108】
[比較例2]
マスキング部材として前記部材(b1)の代わりに部材(b6)を使用したこと以外は実施例1と同様にして物品を解体した。
【0109】
[参考例]
マスキング部材として部材(b1)を用いないこと以外は実施例1と同様にして物品を作製した。
【0110】
[赤外線照射前の面接着力の評価]
23℃の環境下、実施例及び比較例で使用した熱解体性粘着シートを、1辺(外形)の長さが14mmの正方形で幅2mmの額縁状に裁断した。
【0111】
前記裁断した粘着シート2を、長さ15mm、幅15mm及び厚さ2mmの直方体である透明アクリル板1に貼付した。その際、前記裁断した粘着テープ2の1辺が、前記透明アクリル板1の1辺15mmに対応するように貼付したものを試験片1とした。
【0112】
次に、中心部に直径10mmの穴を有する縦20mm、横50mm及び厚さ1mmのステンレス板(SUS304)3と、前記試験片1の粘着シート2側の面とを、それらの中心が一致するように貼付し、プレス機を用いて80N/cmで10秒加圧した後、前記加圧した状態を解き、23℃の環境下で1時間静置することによって試験片2を作製した。
【0113】
次に、直径8mmのステンレス製のプローブ4を備えた引張試験機(エイアンドディ社製テンシロンRTA−100、圧縮モード)を用意した。前記プローブ4が、前記試験片2を構成するステンレス板(SUS304)3の穴をとおして、前記試験片2を構成する試験片1に力を加えた際に、前記試験片1がポリカーボネート板3からはがれた時の強度(N/cm)を23℃と120℃の温度環境下でそれぞれ測定した(図1参照)。なお、前記プローブ4が試験片1を押す速度は10mm/分に設定した。
【0114】
[赤外線照射後の解体性の評価1]
実施例及び比較例に記載の方法で物品を解体した際の、解体のしやすさを、下記基準に従って評価した。
【0115】
評価基準
○:物品を構成する透明ガラス板を、前記物品のせん断方向へ親指一本で押し込むことによって、前記物品を構成する透明ガラス板と、ポリマーアロイ樹脂板またはABS樹脂板とを分離することができた。
【0116】
△:物品を構成する透明ガラス板を片手でつかみ、前記物品のせん断方向へ引っ張ることによって、前記物品を構成する透明ガラス板と、ポリマーアロイ樹脂板またはABS樹脂板とを分離することができた。
【0117】
×:物品を構成する透明ガラス板を片手でつかみ、前記物品のせん断方向へ引っ張っても前記物品を構成する透明ガラス板と、ポリマーアロイ樹脂板またはABS樹脂板とを分離することができず、前記ガラス板を、前記ポリマーアロイ樹脂板またはABS樹脂板に対して動かすことができなかった。
【0118】
[赤外線照射後の解体性の評価2]
前記[赤外線照射後の解体性の評価1]をした後の、透明ガラス板と、ポリマーアロイ樹脂板またはABS樹脂板の表面状態を目視で確認し、以下の基準に従って解体性を評価した。
【0119】
評価基準
○:いずれの被着体も、損傷や変形や変色を全く確認できなかった。
【0120】
×:一部の被着体の表面が溶融し損傷していたことを確認した。
【0121】
【表1】
【0122】
【表2】
【0123】
【表3】
【符号の説明】
【0124】
1 透明アクリル板1
2 粘着シート2
3 ステンレス板(SUS304)3
4 プローブ4
5 被着体1
6 熱解体性粘着シート片
7 被着体2
8 マスキング部材
9 ハロゲンランプ
図1
図2
図3
図4