【文献】
Hidenori AZAMI et al,Synthesis and Antibacterial Activity of Novel 4-Pyrrolidinylthio Carbapenems Part IV. 2-Alkyl Substituents Containing Cationic Heteroaromatics Linked Via a C-C Bond,BIOORGANIC & MEDICINAL CHEMISTRY,2001年,vol.9,p.961-982,文献全体、特に、スキーム3.の工程vi)及び第977頁右欄の標題化合物(15b)及び(15a)の項目参照
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
(3R
*,4S
*)−7−ヒドロキシメチル−2,2,9−トリメチル−4−(フェネチルアミノ)−3,4−ジヒドロ−2H−ピラノ[2,3−g]キノリン−3−オール(化合物(3))は抗不整脈作用を示し、医薬品としての使用の可能性が知られている(例えば特許文献1参照)。
【化1】
化合物(3)の合成方法としては、下記反応式(I)のように、2,2,7,9−テトラメチル−2H−ピラノ[2,3−g]キノリン(化合物(1))をm−クロロ過安息香酸と反応させ、次いで無水酢酸と反応させることで(2,2,9−トリメチル−2H−ピラノ[2,3−g]キノリン−7−イル)−メチルアセテート(化合物(6))に導き、さらにこれを化合物(3)に誘導する方法が知られている。反応式(I)の反応においては、まず、化合物(1)がm−クロロ過安息香酸により酸化されることで、キノリン環の窒素原子がN−オキシド化された2,2,7,9−テトラメチル−2H−ピラノ[2,3−g]キノリン 6−オキシド(化合物(2))が生成しているものと推測されるが、その詳細は明らかではなかった。
また、反応式(I)の製造方法では酸化剤としてm−クロロ過安息香酸が用いられている。m−クロロ過安息香酸は、例えば国際連合危険物輸送勧告のクラス5.2(有機過酸化物質)に分類されるなど危険性の高い試薬であり、工業スケールで用いるには注意が必要である。
したがって、化合物(3)の工業的製造方法を確立するために、化合物(2)の製造方法の確立、特にm−クロロ過安息香酸などの危険性の高い試薬を用いない安全で大量製造可能な製造方法の確立が望まれていた。
【化2】
一般に含窒素複素環であるピリジン環、キノリン環などのN−オキシド化合物の合成には、過酢酸により酸化する方法(例えば非特許文献1参照)、希少金属や重金属を触媒として過酸化水素で酸化する方法(例えば非特許文献2、3参照)などが知られているが、いずれも酸化剤の安全性の点で問題があった。
N−オキシド化反応が可能な安全な酸化剤としてはOXONE(デュポン社登録商標)が知られている。OXONEは、過硫酸水素カリウム−硫酸水素カリウム−硫酸カリウムの複塩からなる白い結晶であり、工業的にも取り扱い容易な優れた酸化剤である。OXONEを用いたN−オキシド化反応としては、OXONEのみで反応させる方法が知られている。しかし、この反応の収率は非常に低いものであった(例えば非特許文献4参照)。OXONEを用いたN−オキシド化反応のその他の例としては、塩基を加えて反応性を向上させる方法も知られている。しかし、この反応の詳細は不明であり、特に用いられる塩基の当量がOXONEに対し過剰であったり不足であったりするなど、塩基の使用方法とその効果は確立したものとは言えなかった(例えば非特許文献5、6参照)。OXONEを用いたN−オキシド化反応のその他の例としては、さらにアセトンを加えて反応性を向上させる方法が知られている(例えば非特許文献7参照)。しかし、この反応では危険な過酸化物であるジメチルジオキシランが反応中に生成していると考えられ、やはり工業的製造方法としては適さないという課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開2005/090357号パンフレット
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Org. Synth., Coll. Vol. 4, 828 (1963), Vol. 33, 79 (1953)
【非特許文献2】Josepf F.P. et al., J. Org. Chem.,2005, 70, 175-178
【非特許文献3】特開2005−255560
【非特許文献4】Richard J. K. and Albert M. S., J., Org. Chem.1960, 25, 1901-1906
【非特許文献5】Azami H. et al., Bioorg. Med. Chem., 2001, 9, 961-982
【非特許文献6】Sylvie P. et al., J. Org. Chem., 2007, 72, 9195-9202
【非特許文献7】Murray R.W. et. al., J. Org. Chem., 1985, 50, 2847-2853
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は収率良く、安全に含窒素複素環N−オキシド化合物を合成する製造方法を提供することにある。また、本発明のその他の目的は新規なN−オキシド化合物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは鋭意検討した結果、化合物(1)が過硫酸塩により酸化されて化合物(2)が得られること、その反応は更に反応系に塩基性化合物を加えると促進されることを見出した。また、化合物(1)はオレフィン構造も有するため、N−オキシド化反応のほかに、副反応としてオレフィンのエポキシ化反応も起こり、以下の化合物(4)もしくは(5)のような化合物も副生する。
【化3】
この副反応のエポキシド化は、主反応であるN−オキシド化と同じ酸化反応であり、単に酸化剤の強さを調整するだけでは選択性の向上につながらないと考えられる。しかし、本発明者らは、反応混合液のpHを調整することで、副反応の少ない、N−オキシド化選択性の高い反応が可能なことを見出し、本発明を完成させた。すなわち、本発明は以下を特徴とするものである。
(I)
式(A)で示されるキノリン化合物を、過硫酸塩と反応させることを特徴とする式(B)で示されるキノリン N−オキシド化合物の製造方法。
【化4】
(式中、R
1及びR
2はそれぞれ独立して、水素原子、C
1−6アルキル基又はC
7−12アラルキル基を意味し、Xは水素原子、ハロゲン原子、C
1−6アルキル基、C
3−6シクロアルキル基、C
6−10アリール基、C
7−12アラルキル基、C
1−6アルコキシ基、C
1−6アシルオキシ基又はシアノ基を意味する。)
(II)
式(A)で示されるキノリン化合物が式(1)で示される2,2,7,9−テトラメチル−2H−ピラノ[2,3−g]キノリンであり、式(B)で示されるキノリン N−オキシド化合物が式(2)で示される2,2,7,9−テトラメチル−2H−ピラノ[2,3−g]キノリン N−オキシドである(I)に記載の製造方法。
【化5】
(III)
塩基を加えることを特徴とする(I)又は(II)に記載の製造方法。
(IV)
塩基としてアルカリ金属の水酸化物を加えることを特徴とする(III)に記載の製造方法。
(V)
塩基として水酸化カリウムを加えることを特徴とする(IV)に記載の製造方法。
(VI)
塩基として塩基の水溶液として加えることを特徴とする(III)乃至(V)の何れか1項に記載の製造方法。
(VII)
反応液のpHを6乃至7に調整することを特徴とする(I)乃至(VI)の何れか1項に記載の製造方法。
(VIII)
過硫酸塩が過硫酸水素カリウムである(I)乃至(VII)の何れか1項に記載の製造方法。
(IX)
過硫酸塩が、過硫酸水素カリウムを含有する複塩であることを特徴とする(I)乃至(VII)の何れか1項に記載の製造方法。
(X)
過硫酸水素カリウムを含有する複塩が、過硫酸水素カリウム、硫酸水素カリウム及び硫酸カリウムの複塩であることを特徴とする(IX)に記載の製造方法。
(XI)
過硫酸塩を水溶液として加えることを特徴とする(I)乃至(X)の何れか1項に記載の製造方法。
(XII)
式(2)で示される2,2,7,9−テトラメチル−2H−ピラノ[2,3−g]キノリン 6−オキシド。
【化6】
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の製造方法に使用できる化合物としては化合物(1)のみならず、下記(A)
【化7】
(式中、R
1及びR
2はそれぞれ独立して水素原子、C
1−6アルキル基又はC
7−12アラルキル基を意味し、Xは水素原子、ハロゲン原子、C
1−6アルキル基、C
6−10アリール基、C
7−12アラルキル基、C
1−6アルコキシ基、C
1−6アシルオキシ基又はシアノ基を意味する。)
で示される化合物にも適用できる。
【0008】
本発明における置換基について説明する。
ハロゲン原子とは、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素を意味する。
本発明のアルキル基の概念には、直鎖アルキル基及び分岐アルキル基が含まれる。
C
1−6アルキル基とは、炭素数が1乃至6個のアルキル基を意味する。その例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基などが挙げられる。
本発明のC
1−6アルキル基としては、C
1−3アルキル基、すなわち炭素数が1乃至3個のアルキル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
C
3−6シクロアルキル基とは、炭素数が3乃至6個のシクロアルキル基を意味する。その例としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロヘキシル基などが挙げられる。
本発明のC
3−6シクロアルキル基としては、シクロプロピル基が好ましい。
C
6−10アリール基とは、炭素数が6乃至10個のアリール基を意味する。
その例としては、フェニル基又はナフチル基が挙げられる。
本発明のC
6−10アリール基としては、フェニル基が好ましい。
C
7−12アラルキル基とは、前記のC
1−6アルキル基に1つのフェニル基が置換した基を意味する。フェニル基はC
1−6アルキル基上の任意の位置に置換してよい。その例としては、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基、フェニルブチル基などが挙げられる。
本発明のC
7−12アラルキル基としては、ベンジル基が好ましい。
C
1−6アルコキシ基とは、前述のC
1−6アルキル基が置換したオキシ基を意味する。その例としてはメトキシ基、エトキシ基、i−プロポキシ基、t−ブトキシ基などが挙げられる。
本発明のC
1−6アルコキシ基としては、C
1−3アルコキシ基、すなわちC
1−3アルキル基が置換したオキシ基が好ましく、メトキシ基がより好ましい。
C
1−6アシルオキシ基とは、前述のC
1−6アルキル基が置換したカルボニルオキシ基を意味する。その例としてはアセトキシ基(CH
3C(=O)O−基)などが挙げられる。
本発明のC
1−6アシルオキシ基としては、アセトキシ基が好ましい。
【0009】
本発明の製造方法に原料として使用される式(A)で示される化合物や式(1)で示される化合物(以下、反応基質という)は、そのフリー体を用いても良いが、反応を妨げない限りその酸塩や溶媒和物を用いても良い。反応基質の酸塩の例としては、
ハロゲン化水素酸塩(例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩)、
スルホン酸塩(例えば、硫酸塩、メタンスルホン酸塩、トシル酸塩)、
リン酸塩(例えば、リン酸塩)、
カルボン酸塩(例えば、酢酸塩、安息香酸塩、マレイン酸塩)
が挙げられる。好ましい酸塩の例としては、カルボン酸塩が挙げられ、特に好ましくはマレイン酸塩である。
【0010】
本発明の製造方法では、反応基質を溶媒に溶解させて行うことも、または懸濁させて行うこともできる。
【0011】
本発明の製造方法に用いることができる溶媒は、本反応を妨げない限り特に限定されないが、水、
アルコール溶媒(例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール)、
含ハロゲン炭化水素溶媒(例えば、塩化メチレン)、
カルボン酸溶媒(例えば、酢酸、トリフルオロ酢酸)、
スルホン酸溶媒(例えば、メタンスルホン酸)、
リン酸溶媒(例えば、リン酸)、
芳香族炭化水素溶媒(例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン)、
脂肪族炭化水素溶媒(例えば、ヘキサン、ヘプタン)、
アミド溶媒(例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド)、
ニトリル溶媒(例えば、アセトニトリル)、
スルホン溶媒(例えば、ジメチルスルホン)、
スルホキシド溶媒(例えば、ジメチルスルホキシド)、
1,4−ジオキサン又はシクロペンチルメチルエーテルを用いることが、過硫酸塩の存在下で過酸化物を生成させにくい点で好ましい。
これらの溶媒は単独で使用しても良いし、2種以上を混合して使用しても良い。
過硫酸塩と反応基質の双方を溶解させられる観点において、水と水溶性有機溶媒を併用することが好ましい。ここで水溶性とは、水と任意の割合で完全に溶解可能なことを意味する。水溶性有機溶媒としては、水溶性アルコール溶媒、水溶性アミド溶媒、水溶性カルボン酸溶媒が好ましく、水溶性アルコール溶媒がより好ましく、メタノールが特に好ましい。
【0012】
また、水と非水溶性溶媒を併用し、相間移動触媒の存在下において2層系で反応を行うこともできる。本発明において用いられる相間移動触媒としては
アンモニウム塩(例えば、テトラブチルアンモニウムブロマイド)、
ホスホニウム塩(例えば、テトラブチルホスホニウムブロマイド)
などが挙げられる。
【0013】
溶媒の使用量は特に制限は無いが、反応基質の質量に対して、0.1質量倍乃至1000質量倍、好ましくは1質量倍乃至100質量倍、更に好ましくは3質量倍乃至20質量倍である。
【0014】
本発明の製造方法に用いる過硫酸塩の例としては
過硫酸アルカリ金属塩(例えば、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム)、
過硫酸アンモニウム、
過硫酸水素塩(例えば、過硫酸水素ナトリウム、過硫酸水素カリウム、過硫酸水素アンモニウム)
などが挙げられる。
過硫酸塩は、好ましくは過硫酸水素塩であり、より好ましくは過硫酸水素のアルカリ金属塩であり、さらに好ましくは過硫酸水素カリウムである。
【0015】
本発明の製造方法に用いる過硫酸塩は、その複塩を用いることも出来る。なお、複塩(double salt)とは、陽イオンまたは陰イオン、あるいは両方を2種類以上含む塩のことを意味する。
本発明の製造法に用いる過硫酸塩の複塩は、好ましくは過硫酸水素塩の複塩であり、より好ましくは過硫酸水素カリウム、硫酸水素カリウム及び硫酸カリウムからなる複塩であり、さらに好ましくは2KHSO
5・KHSO
4・K
2SO
4で表され、市販されているOXONE(デュポン社登録商標)である。また、これらの過硫酸塩は過硫酸アンモニウムもしくは過硫酸を原料に反応系内で調製して使用することもできる。
【0016】
過硫酸塩は、反応基質1モルに対して1モル乃至10モル、好ましくは1モル乃至5モル、更に好ましくは1モル乃至3モル用いる。
OXONE1モルには過硫酸水素カリウムが2モル含まれるが、以下の実施例でOXONEと表示したものは分子量614.76の複塩としてモル数を表記した。
【0017】
上記過硫酸塩の水溶液は酸性を示すため、塩基を固体として加えるか、又はその溶液を加えることでpHを調整することができる。反応に用いることができる塩基は、本反応を妨げない限り特に限定されないが、
水酸化物(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム)、
炭酸水素塩(例えば、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム)、
炭酸塩(例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム)、
リン酸塩(例えば、リン酸ナトリウム、リン酸一水素ニナトリウム、リン酸二水素一ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸一水素ニカリウム、リン酸二水素一カリウム)、
酢酸塩(例えば、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム)、
アミン類(例えば、トリエチルアミンなどの3級アミン)、
又はアンモニア水、
を用いることができる。その塩基性の強さ及び中和時に気体発生が無いことから、好ましくは水酸化物を用い、さらに好ましくはアルカリ金属の水酸化物を用い、特に好ましくは水酸化カリウムを用いる。
【0018】
なお、本発明において水素イオン濃度指数をpHと記載する。本発明のpHは、水溶液の水素イオン濃度指数に限らず、水以外の溶媒、水と水溶性有機溶媒との混合溶媒、それらの溶媒を用いた溶液、懸濁液の水素イオン濃度指数も、その概念に含む。
【0019】
塩基は反応基質1モルに対して1モル乃至10モル、好ましくは1モル乃至5モル、更に好ましくは1モル乃至3モル用いる。
【0020】
本発明の製造法で用いる過硫酸塩は水溶性であり、一方、反応基質は親油性である。そのため反応基質と過硫酸塩の双方を溶解させ、反応を効率良く進めるために、水と水溶性有機溶媒の混合溶媒を用いることがある。その際、反応基質や過硫酸塩は、反応当初は一部が溶け残って懸濁液となり、反応進行と共に溶解していくことがある。
【0021】
本発明の製造方法においては、反応が進むに連れて懸濁している過硫酸塩が溶解するなどして、反応中に反応液のpHが低くなることもある。その場合は、反応液に塩基を加えて反応液のpHを調整し、一定の域内に維持することも出来る。
【0022】
反応液は、好ましくはpH4乃至8、より好ましくはpH5乃至7、さらに好ましくはpH6乃至7を維持する。
【0023】
pHを調整する方法としては、
方法A:反応基質の入った反応器に、過硫酸塩と塩基を加える方法、
方法B:過硫酸塩の入った反応器に反応基質と塩基を加える方法、
方法C:塩基の入った反応器に反応基質と過硫酸塩を加える方法、
があるが、過硫酸塩が常に消費されることを確認しながら仕込むことができる方法A又は方法Cが安全上好ましく、方法Aがさらに好ましい。
【0024】
反応基質に対して過硫酸塩と塩基を加える順序は、過硫酸塩と塩基の全量を順に加えても良いし、過硫酸塩と塩基を一緒に加えても良いが、好ましくは一緒に加える。
また、どちらかの一部を最初に加えて目標とするpHへ到達させた後、残りを一緒に加えることもできる。加え方としては、反応の進行、酸素ガスの発生、発熱を制御しながら、徐々に加えることが望ましい。過硫酸塩と塩基を一緒に加える際は、別々の滴下装置または投入口を用い、反応基質の溶液または懸濁液に到達する前に過硫酸塩と塩基が混合しないことが好ましい。
【0025】
反応基質の酸塩を用いる場合はその溶液に、塩基を加えた後、過硫酸塩と塩基を一緒に添加していくことができる。また、過硫酸塩を添加し終わった後に、反応液のpHが低下する場合は、塩基を徐々に添加してpHを維持する。
【0026】
過硫酸塩の添加に要する時間は特に制限は無いが、反応の進行と酸素ガスの発生や発熱を制御するに十分な時間、0.5時間乃至8時間、好ましくは2乃至4時間である。
【0027】
本発明における反応温度は特に制限は無いが、−10℃乃至120℃の範囲が好ましく、より好ましくは0℃乃至100℃、さらに好ましくは10℃乃至40℃である。
【0028】
本発明における反応時間は反応基質が消費されるに十分な時間で制限は無いが、好ましくは10分間乃至24時間、更に好ましくは30分間乃至6時間である。
【0029】
本発明の製造方法で得られたN−オキシド化合物は、単離しても良いし、溶液のまま次の製造工程に用いても良い。溶液中のN−オキシド化合物の含量など、溶液の状態は、HPLCなどの分析方法で定量分析可能であり、反応の収率なども定量分析により測定可能である。
【実施例】
【0030】
以下に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらに限定されるものではない。
なお、実施例中、NMRとは核磁気共鳴を、HPLCとは高速液体クロマトグラフィーを、意味する。
HPLC分析における各化合物の純度は、全ピーク面積中の対象ピーク面積の比を百分率で表す面積百分率法で表す。
反応溶液のpHは、反応中の溶液又は混合液を直接pHメーターで測定するか、反応中の溶液又は混合液少量をサンプリングして、pHメーター又はpH試験紙などで測定するなど、当業者に良く知られた方法で測定できる。
実施例におけるNMR分析は日本電子製ECP300、融点測定は柴田科学製B−545を用いた。
また、HPLC分析は島津製作所製LC−10Avpを用い、以下の条件で行った。
カラム:L−column ODS(財団法人化学物質評価研究機構製、直径4.6mmx長さ250mm、粒径5μm)
溶離液:アセトニトリル450mlと0.01M酢酸緩衝液(pH3.8)550mlを混合し、ドデシル硫酸ナトリウム1.4gを溶解したもの。
0.01M酢酸緩衝液は0.01M酢酸水溶液800mlと0.01M酢酸ナトリウム溶液100mlを混合したものを使用した。
流速:1.0ml/分
カラム温度:40℃
紫外可視吸光光度計検出器波長:254nm
【0031】
参考合成例1
2,2,7,9−テトラメチル−2H−ピラノ[2,3−g]キノリンマレイン酸塩の製造
N−(2,2−ジメチル−2H−クロメン−6−イル)アセトアミド(199.38g,0.918mol)、1−プロパノール(800g)、塩酸(288g)を混合し、90℃から95℃にて5時間加熱還流した。室温まで冷却し、塩化鉄(無水)(400g,2.49mol)を加え、90℃まで加熱し、3−ペンテン−2−オン(140g,1.66mol)を滴下し、2時間加熱した。室温まで冷却し、トルエン(1100g)、水(1399g)を加え、分液した。得られた有機層に16%炭酸ナトリウム水溶液(2200g)、水(901g)を加え、分液した。得られた有機層に活性炭(10g)を加え攪拌の後、ろ過し、ろ液を溶媒留去し、乾固させた。残渣を酢酸エチル(801g)、トルエン(108g)に溶解し、50℃まで加熱の後、マレイン酸(85.5g,0.737mol)をメタノール(200g)に溶解したものを滴下し、20℃まで冷却して析出した結晶をろ取し、酢酸エチル(201g)で洗浄し、50℃で減圧乾燥して、2,2,7,9−テトラメチル−2H−ピラノ[2,3−g]キノリンマレイン酸塩を黄色固体として、204.77g(収率62.8%)得た。
外観:黄色固体
1H−NMR(CDCl
3,TMS)
δ(ppm):1.53(6H,s),2.76(3H,s),2.91(3H,s),6.09(1H,d,J=9.9Hz),6.40(2H,s),6.63(1H,d,J=9.9Hz),7.30(2H,s),8.09(1H,s)
融点:175℃
【0032】
実施例1
2,2,7,9−テトラメチル−2H−ピラノ[2,3−g]キノリン 6−オキシドの製造
2,2,7,9−テトラメチル−2H−ピラノ[2,3−g]キノリンマレイン酸塩(5.01g,純度96%,13.5mmol)にメタノール(25.0g)、50%水酸化カリウム水溶液(1.52g,13.5mmol)を加えて、20分間、21℃で攪拌した。OXONE(9.55g,15.5mmol)及び水(30g)の溶液を30分間かけて滴下しつつ、並行して50%水酸化カリウム水溶液を、反応液温度21℃乃至27℃、pH6乃至7を維持するよう調整して滴下した。OXONE水溶液滴下完了後、50%水酸化カリウム水溶液を滴下しながら、pH6乃至7を維持し、3時間攪拌した。
反応後、不溶物をろ過し、クロロホルム(15.0g)で2回洗浄し、得られたろ液に50%水酸化カリウム水溶液(0.76g,6.8mmol)を加え、分液して、2,2,7,9−テトラメチル−2H−ピラノ[2,3−g]キノリン 6−オキシドのクロロホルム溶液を得、これをHPLC定量分析により収率を算出したところ、89.6%であった。また、この溶液中の化合物(1)、(2)、(4)、(5)の各ピーク面積(%)は表1の通りとなった。
【表1】
この溶液をシリカゲルクロマトグラフィーにて精製し、目的の2,2,7,9−テトラメチル−2H−ピラノ[2,3−g]キノリン 6−オキシドを得た。
外観:黄色固体
1H−NMR(CDCl
3,TMS)
δ(ppm):1.50(6H,s),2.51(3H,s),2.63(3H,s),5.93(1H,d,J=9.9Hz),6.61(1H,d,J=9.9Hz),7.02(1H,s),7.16(1H,s),8.42(1H,s)
融点:187℃
【0033】
実施例2
2,2,7,9−テトラメチル−2H−ピラノ[2,3−g]キノリンマレイン酸塩(5.00g,純度96%、13.5mmol)にメタノール(25.1g)、50%水酸化カリウム水溶液(1.52g,13.5mmol)を加え、21℃乃至22℃で30分間攪拌した。OXONE(9.56g,15.5mmol)及び水(30.6g)の溶液を30分かけて滴下しつつ、50%水酸化カリウム水溶液を、反応温度22℃乃至23℃、pH5乃至6を維持するよう調整して滴下した。OXONE水溶液滴下完了後、50%水酸化カリウム水溶液を滴下しながら、pH5乃至6を維持し、6時間攪拌した。
反応後、不溶物をろ過し、クロロホルム(15.0g)で2回洗浄し、得られたろ液に50%水酸化カリウム水溶液(0.76g,6.8mmol)を加え、分液して、2,2,7,9−テトラメチル−2H−ピラノ[2,3−g]キノリン 6−オキシドのクロロホルム溶液を得、これをHPLC定量分析により収率を算出したところ、75.2%であった。また、この溶液中の化合物(1)、(2)、(4)、(5)の各ピーク面積(%)は表2の通りとなり、原料がほぼ消失し良好に目的物が増加したが、不純物である化合物(5)の生成量は実施例1に比べ多くなった。
【表2】
【0034】
実施例3
2,2,7,9−テトラメチル−2H−ピラノ[2,3−g]キノリンマレイン酸塩(5.00g,純度96%、13.5mmol)にメタノール(25.0g)、50%水酸化カリウム水溶液(1.52g,13.5mmol)を加え、21℃で30分間攪拌した。OXONE(9.55g,15.5mmol
)及び水(30.6g)の溶液を20分かけて滴下しつつ、50%水酸化カリウム水溶液を、反応温度22℃乃至28℃、pH7乃至8を維持するよう調整して滴下した。OXONE水溶液滴下完了後、24℃乃至26℃で7時間攪拌した。
この反応液中の化合物(1)、(2)、(4)、(5)の各ピーク面積(%)は表3の通りとなり、副反応を抑制しつつ良好に目的物が増加したが、原料である化合物(1)の残存は実施例1に比べ多くなった。
【表3】
【0035】
参考例4
2,2,7,9−テトラメチル−2H−ピラノ[2,3−g]キノリンマレイン酸塩(5.00g,純度96%、13.5mmol)にメタノール(25.0g)、50%水酸化ナトリウム水溶液(3.05g,27.2mmol)を加え、25乃至29℃で30分間攪拌した。OXONE(7.89g,12.8mmol)及び水(27.5g)の溶液を27乃至30℃で、2時間かけて滴下した。28乃至30℃で27時間攪拌し反応させた。反応中のpHは2乃至3で推移した。
反応後、不溶物をろ過し、クロロホルム15.0gで2回洗浄し、分液して、2,2,7,9−テトラメチル−2H−ピラノ[2,3−g]キノリン 6−オキシドのクロロホルム溶液を得、これをHPLC定量分析により収率を算出したところ、12.1%であった。
この反応液中の化合物(1)、(2)、(4)、(5)の各ピーク面積(%)は表4の通りとなり、原料である化合物(1)の残存が多く、時間と共に生成物の分解が見られた。pH2乃至3での反応でも目的物が得られることが分かったが、不純物の相対比が増加し、目的物の収率が低下する傾向が見られた。
【表4】