特許第6202289号(P6202289)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6202289金属細線を含む透明基板及びその製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6202289
(24)【登録日】2017年9月8日
(45)【発行日】2017年9月27日
(54)【発明の名称】金属細線を含む透明基板及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/041 20060101AFI20170914BHJP
   H05K 9/00 20060101ALI20170914BHJP
【FI】
   G06F3/041 660
   H05K9/00 V
   G06F3/041 400
   G06F3/041 490
【請求項の数】36
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2015-561274(P2015-561274)
(86)(22)【出願日】2014年3月7日
(65)【公表番号】特表2016-510153(P2016-510153A)
(43)【公表日】2016年4月4日
(86)【国際出願番号】KR2014001906
(87)【国際公開番号】WO2014137192
(87)【国際公開日】20140912
【審査請求日】2016年6月21日
(31)【優先権主張番号】10-2013-0024661
(32)【優先日】2013年3月7日
(33)【優先権主張国】KR
(31)【優先権主張番号】10-2014-0027237
(32)【優先日】2014年3月7日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ベ、スン−ハク
(72)【発明者】
【氏名】ハン、サン−チョル
(72)【発明者】
【氏名】キム、ビョン−ムク
【審査官】 ▲高▼橋 徳浩
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭61−016897(JP,A)
【文献】 特開2002−246174(JP,A)
【文献】 特開2006−330616(JP,A)
【文献】 特開2008−277202(JP,A)
【文献】 特開2009−086095(JP,A)
【文献】 特開2011−028474(JP,A)
【文献】 特開2011−028680(JP,A)
【文献】 特開2012−083962(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/081904(WO,A1)
【文献】 国際公開第2011/030534(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0327021(US,A1)
【文献】 中国特許出願公開第102723126(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/03
H05K 9/00
B32B1/00−B32B43/00
G06F3/041−G06F3/047
H01B5/00−H01B5/16
H01B13/00−H01B13/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
側面及び底面を有する複数の溝部を含む樹脂パターン層を形成する段階と、
前記樹脂パターン層上に金属を蒸着して、線幅が0.1μm〜3μmの伝導性層を前記溝部内に形成して、伝導性層の平均高さが溝部の最大深さの5%〜50%で、金属の蒸着角度が樹脂パターン層の法線方向に対して−15°〜15°となるように調節する段階と、
前記樹脂パターン層の溝部を除いた領域に存在する伝導性層を物理的に除去する段階と、を含む透明基板の製造方法。
【請求項2】
前記複数の溝部は最大幅が0.1μm〜3μmであり、
前記複数の溝部の最大深さは溝部の最大幅の0.2倍〜2倍となるように形成される、請求項1に記載の透明基板の製造方法。
【請求項3】
前記複数の溝部は、その側面が垂直方向を基準として0度〜15度の傾斜角を有するように形成される、請求項1または2に記載の透明基板の製造方法。
【請求項4】
前記複数の溝部は、側面の上部角の曲率半径が溝部の最大深さの0.3倍以下となるように形成される、請求項1から3の何れか1項に記載の透明基板の製造方法。
【請求項5】
前記複数の溝部は、底面の面積の総和が樹脂パターン層全体の断面積の0.1%〜5%となるように形成される、請求項1から4の何れか1項に記載の透明基板の製造方法。
【請求項6】
前記複数の溝部を含む樹脂パターン層を形成する段階は、インプリンティング法、フォトリソグラフィー法または電子ビームリソグラフィ法により行われる、請求項1から5の何れか1項に記載の透明基板の製造方法。
【請求項7】
前記伝導性層を形成する段階は、前記複数の溝部の側面に蒸着される伝導性層の厚さが伝導性層の平均高さの25%以下になるように行われる、請求項1から6の何れか1項に記載の透明基板の製造方法。
【請求項8】
前記伝導性層を物理的に除去する段階は、スクラッチ法、ディタッチ(detaching)方法、またはこれらの組み合わせで行う、請求項1から7の何れか1項に記載の透明基板の製造方法。
【請求項9】
前記伝導性層を物理的に除去する段階は、メラミンフォームまたは粗面を有する織物を用いて、伝導性層を擦って除去する方法で行われる、請求項8に記載の透明基板の製造方法。
【請求項10】
前記伝導性層を形成する段階は、前記蒸着の前に前記樹脂パターン層上に接着力調節層を形成する段階をさらに含む、請求項1から9の何れか1項に記載の透明基板の製造方法。
【請求項11】
前記接着力調節層を形成する段階は、化学気相蒸着または物理気相蒸着法により行われる、請求項10に記載の透明基板の製造方法。
【請求項12】
前記接着力調節層を形成する段階は、蒸着角度が樹脂パターン層の法線方向に対して−15°〜15°となるように行われる、請求項11に記載の透明基板の製造方法。
【請求項13】
前記伝導性層を形成する段階は、黒化層を形成する段階をさらに含む、請求項1から12の何れか1項に記載の透明基板の製造方法。
【請求項14】
前記黒化層を形成する段階は、化学気相蒸着または物理気相蒸着法により行われる、請求項13に記載の透明基板の製造方法。
【請求項15】
前記黒化層を形成する段階は、蒸着角度が樹脂パターン層の法線方向に対して−15°〜15°となるように行われる、請求項14に記載の透明基板の製造方法。
【請求項16】
前記伝導性層を物理的に除去する段階後に樹脂パターン層を平坦化する段階をさらに含む、請求項1から15の何れか1項に記載の透明基板の製造方法。
【請求項17】
側面及び底面を有する複数の溝部を含む樹脂パターン層と、
前記複数の溝部内に形成される伝導性層と、を含み、
前記伝導性層は、線幅が0.1μm〜3μmで、平均高さが前記複数の溝部の最大深さの5%〜50%であ
溝部の一側面の垂直方向に対する傾斜角度の絶対値をθ、溝部の他側面の垂直方向に対する傾斜角度の絶対値をθとするとき、tanθ+tanθ=0である場合に前記伝導性層の垂直断面が下記数式1と数式2を満たし、tanθ+tanθ>0である場合に前記伝導性層の垂直断面が下記数式3及び数式4を満たす透明基板。
[数式1]
0≦S/(SHD−S)≦0.3
[数式2]
0≦S/(SHD−S)≦0.3
[数式3]
0≦S(tanθ+tanθ)cosθ/[{2D−H(tanθ+tanθ)}T−2S]≦0.3
[数式4]
0≦S(tanθ+tanθ)cosθ/[{2D−H(tanθ+tanθ)}T−2S]≦0.3
前記[数式3]及び[数式4]において、Tは下記[数式5]で定義される値である。
[数5]
=[H(tanθ+tanθ)−D+{(D−H(tanθ+tanθ))+2S(tanθ+tanθ)}0.5]/(tanθ+tanθ
前記[数式1]から[数式5]において、
Hは溝部の最大深さであり、Dは溝部の最大幅であり、Sは、伝導性層の平均高さをh、溝部の中心点から1.2hの高さにある点を通る水平線を基準線としたとき、前記基準線の下の領域に存在する伝導性層の断面積であり、Sは前記基準線の上の領域に存在する伝導性層の溝部の一側面に付着している伝導性層の断面積であり、Sは前記基準線の上の領域に存在する伝導性層の溝部の他側面に付着している伝導性層の断面積である。
【請求項18】
前記複数の溝部は、最大幅が0.1μm〜3μmであり、
前記複数の溝部の最大深さは溝部の最大幅の0.2倍〜2倍である、請求項17に記載の透明基板。
【請求項19】
前記複数の溝部の側面は垂直方向を基準として0度〜15度の傾斜角を有する、請求項17または18に記載の透明基板。
【請求項20】
前記複数の溝部は、側面の上部角の曲率半径が溝部の最大深さの0.3倍以下である、請求項17から19の何れか1項に記載の透明基板。
【請求項21】
前記複数の溝部は、底面の面積の総和が樹脂パターン層全体の断面積の0.1%〜5%である、請求項17から20の何れか1項に記載の透明基板。
【請求項22】
前記樹脂パターン層は、活性エネルギー線硬化型樹脂、熱硬化性樹脂、伝導性高分子樹脂、またはこれらの組み合わせを含む、請求項17から21の何れか1項に記載の透明基板。
【請求項23】
前記伝導性層の平均高さは0.01μm〜2μmである、請求項17から22の何れか1項に記載の透明基板。
【請求項24】
前記伝導性層の線幅は0.1μm〜0.5μmである、請求項17から23の何れか1項に記載の透明基板。
【請求項25】
前記複数の溝部の側面に付着された伝導性層の厚さは伝導性層の平均高さの25%以下である、請求項17から24の何れか1項に記載の透明基板。
【請求項26】
前記伝導性層は、銅、銀、アルミニウム、ニッケル、クロム、白金またはこれらの合金を含む金属層を含む、請求項17から25の何れか1項に記載の透明基板。
【請求項27】
前記伝導性層は、前記金属層の下部に接着力調節層をさらに含む、請求項26に記載の透明基板。
【請求項28】
前記接着力調節層の厚さは0.005〜0.2μmである、請求項27に記載の透明基板。
【請求項29】
前記接着力調節層は、シリコンオキサイド、金属酸化物、モリブデン、スズ、炭素、クロム、ニッケル及びコバルトからなる群より選択される1種以上を含む、請求項27または28に記載の透明基板。
【請求項30】
前記伝導性層は、前記金属層の上部及び下部の少なくとも一つに黒化層をさらに含む、請求項26から29の何れか1項に記載の透明基板。
【請求項31】
前記黒化層の厚さは0.005〜0.2μmである、請求項30に記載の透明基板。
【請求項32】
前記黒化層は、シリコンオキサイド、金属酸化物、モリブデン、スズ、炭素、クロム、ニッケル及びコバルトからなる群より選択される1種以上を含む、請求項30または31に記載の透明基板。
【請求項33】
前記伝導性層の上部に平坦化層をさらに含む、請求項17から32の何れか1項に記載の透明基板。
【請求項34】
前記平坦化層は、樹脂パターン層の形成物質との屈折率の差が0.3以下の物質で形成される、請求項33に記載の透明基板。
【請求項35】
前記透明基板の開口率は95%〜99.9%である、請求項17から34の何れか1項に記載の透明基板。
【請求項36】
前記透明基板の面抵抗は0.01Ω/□〜100Ω/□である、請求項17から35の何れか1項に記載の透明基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は透明基板及びその製造方法に関するもので、詳細には、電気伝導性及び透明性に優れた線幅3μm以下の金属細線を含む透明基板及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリマーフィルムまたはガラス基板に伝導性微細パターンが形成されている伝導性基板は、電磁波遮蔽フィルター、熱線ガラス、タッチパネル、液晶ディスプレイなどの様々な分野で用いられている。一方、ディスプレイ装置やタッチパネルに使用される伝導性基板の場合、伝導性パターンの線幅が3μmを超えると、伝導性パターン層と基板との反射率の差により伝導性パターンが外部で容易に視認されて表示品質が低下するという問題がある。従って、伝導性パターンの線幅を小さく制御する必要があるが、従来の伝導性基板の製造方法では、このような微細な線幅を具現することが困難であった。
【0003】
より具体的には、従来では、伝導性微細パターンが形成された伝導性基板を形成するために、ガラス基板やポリマー基板上に溝部を形成し、溝部に伝導性物質を湿式コーティングなどの方法で充填し、ドクターブレードなどを利用して溝部以外の部分に塗布された伝導性材料を除去する方法や、溝部に金属粒子または金属酸化物などを充填し、熱及び/または圧力を加えて圧縮する方法などを用いた。
【0004】
しかし、湿式コーティング法を用いる場合は、伝導性物質として伝導性高分子や伝導性粒子を含む樹脂等を使用しなければならないが、この場合、導電率が固体金属に比べて格段と小さく、工程速度が増加すると、溝部に充填されない領域が発生しやすいため、不良率が増加するという問題がある。また、3μm以下の微細な線幅を具現するためには、溝部に充填される伝導性材料がナノサイズ程度に極めて微細でなければならないが、伝導性材料のサイズをこのように低減させることは現実的に極めて難しい。
【0005】
一方、熱及び/または圧力を加えて金属粒子または金属酸化物粒子を圧縮させる方法は、熱及び/または圧力によってパターンが変形しやすいため、精度が低下し、微細パターンを形成するのに限界があるという問題点があった。
【0006】
また、上記方法の他にも、基板上に伝導性インクを微細パターンに印刷したり、めっきするなどの方法で伝導性微細パターンの形成された伝導性基板を製造する方法が提案された。しかし、伝導性インクを印刷する方法の場合、微細な線幅を具現するためには、伝導性インクの液滴サイズがナノサイズ水準でなければならないが、インクの液滴をそのようなサイズに具現するのは現実的に極めて難しいため、3μm以下の線幅を有するパターンを形成するのには適さない。また、めっき法の場合は、溝部のみに選択的にめっきを行うことが困難であるため、めっき後、研磨粒子を用いたポリッシングにより溝部以外の領域に形成された金属層を除去する必要があるが、この場合、ロール・ツー・ロールのような連続工程を適用することが困難であるため、製造時間が長くなり、工程が煩わしいという問題点がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記のような問題点を解決するためのもので、製造工程が簡単で、ロール・ツー・ロールのような連続工程を適用することができ、伝導性パターンの線幅が3μm以下である透明性及び伝導性に優れた透明基板を製造する方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一側面において、本発明は、側面及び底面を有する多数の溝部を含む樹脂パターン層を形成する段階と、上記樹脂パターン層上に金属を蒸着して伝導性層を形成するが、伝導性層の平均高さが溝部の最大深さの5%〜50%で、金属の蒸着角度が樹脂パターン層の法線方向に対して−15°〜15°となるように調節する段階と、上記樹脂パターン層の溝部を除いた領域に存在する伝導性層を物理的に除去する段階と、を含む透明基板の製造方法を提供する。
【0009】
このとき、上記溝部は、最大幅が0.1μm〜3μmで、最大深さが溝部の最大幅の0.2倍〜2倍程度であってもよく、側面が垂直方向を基準として0°〜15°の傾斜角を有するように形成されることが好ましい。また、上記溝部は、側面の上部角の曲率半径が溝部の最大深さの0.3倍以下となるように形成されてもよく、上記溝部の底面の面積の総和が樹脂パターン層全体の断面積の0.1%〜5%以下となるよう形成されることが好ましい。
【0010】
一方、上記多数の溝部を含む樹脂パターン層を形成する段階は、インプリンティング法、フォトリソグラフィー法または電子ビームリソグラフィー法により行われてもよい。
【0011】
上記伝導性層を形成する段階は、上記溝部の側面に蒸着される伝導性層の厚さが伝導性層の平均高さの25%以下となるように行ってもよい。
【0012】
上記伝導性層を物理的に除去する段階は、スクラッチ法、デタッチ(detaching)方法、またはこれらの組み合わせで行うことができ、メラミンフォームまたは粗面を有する織物を用いて伝導性層を擦って除去する方法で行うことがより好ましい。
【0013】
一方、上記伝導性層を形成する段階は、必要に応じて、上記金属蒸着の前に上記樹脂パターン層上に接着力調節層を形成する段階をさらに含んでもよく、上記接着力調節層を形成する段階は、化学気相蒸着または物理気相蒸着法により行うことができ、この際、接着力調節層の形成物質の蒸着角度は、樹脂パターン層の法線方向に対して−15°〜15°程度であることが好ましい。
【0014】
また、上記伝導性層を形成する段階は、必要に応じて、金属蒸着の前及び/または後に黒化層を形成する段階をさらに含んでもよく、上記黒化層を形成する段階は、化学気相蒸着または物理気相蒸着法により行うことができ、この際、黒化層の形成物質の蒸着角度は、樹脂パターン層の法線方向に対して−15°〜15°程度であることが好ましい。
【0015】
一方、本発明によると、必要に応じて、上記伝導性層を物理的に除去する段階後に樹脂パターン層を平坦化する段階をさらに含んでもよい。
【0016】
他の側面において、本発明は、側面及び底面を有する多数の溝部を含む樹脂パターン層と、上記溝部内に形成される伝導性層と、を含み、上記伝導性層は、線幅が0.1μm〜3μmで、平均高さが上記溝部の最大深さの5%〜50%である透明基板を提供する。
【0017】
一方、本発明の透明基板において、溝部の一側面の垂直方向に対する傾斜角度の絶対値をθ、溝部の他側面の垂直方向に対する傾斜角度の絶対値をθとするとき、tanθ+tanθ=0である場合には、上記伝導性層の垂直断面は、下記数式1及び数式2を満たすことが好ましい。
【0018】
[数1]
0≦S/(SHD−S)≦0.3
【0019】
[数2]
0≦S/(SHD−S)≦0.3
【0020】
上記[数式1]及び[数式2]において、Hは溝部の最大深さであり、Dは溝部の最大幅であり、Sは、伝導性層の平均高さをh、溝部の中心点から1.2hの高さにある点を通る水平線を基準線としたとき、上記基準線の下の領域に存在する伝導性層の断面積であり、Sは上記基準線の上の領域に存在する伝導性層の溝部の一側面に付着している伝導性層の断面積であり、Sは上記基準線の上の領域に存在する伝導性層の溝部の他側面に付着している伝導性層の断面積である。
【0021】
一方、本発明の透明基板において、溝部の一側面の垂直方向に対する傾斜角度の絶対値をθ、溝部の他側面の垂直方向に対する傾斜角度の絶対値をθとするとき、tanθ+tanθ>0である場合には、上記伝導性層の垂直断面が下記数式3及び数式4を満たすことが好ましい。
【0022】
[数3]
0≦S(tanθ+tanθ)cosθ/[{2D−H(tanθ+tanθ)}T−2S]≦0.3
【0023】
[数4]
0≦S(tanθ+tanθ)cosθ/[{2D−H(tanθ+tanθ)}T−2S]≦0.3
【0024】
上記[数式3]及び[数式4]において、Tは下記[数式5]で定義される値である。
【0025】
[数5]
=[H(tanθ+tanθ)−D+{(D−H(tanθ+tanθ))+2S(tanθ+tanθ)}0.5]/(tanθ+tanθ
【0026】
Hは溝部の最大深さであり、Dは溝部の最大幅であり、Sは、伝導性層の平均高さをh、溝部の中心点から1.2hの高さにある点を通る水平線を基準線としたとき、上記基準線の下の領域に存在する伝導性層の断面積であり、Sは上記基準線の上の領域に存在する伝導性層の溝部の一側面に付着している伝導性層の断面積であり、Sは上記基準線の上の領域に存在する伝導性層の溝部の他側面に付着している伝導性層の断面積である。
【0027】
一方、本発明による透明基板は、上記伝導性層の上部に平坦化層をさらに含んでもよく、このとき、上記平坦化層は、樹脂パターン層の形成物質との屈折率の差が0.3以下である物質からなることが好ましい。
【0028】
上記のような本発明の透明基板は、開口率が95%から99.9%程度で、面抵抗が0.01Ω/□〜100Ω/□程度であり、優れた透明性及び伝導性を有する。
【発明の効果】
【0029】
本発明の製造方法によると、線幅が3μm以下の極めて微細な金属細線を形成することができ、金属細線の反射による透明性の低下が最小化されて、非常に優れた透明性を有する透明基板を製造することができる。従って、本発明により製造された透明基板は、タッチパネルや透明OLEDなどのディスプレイ分野で非常に有用に適用できる。
【0030】
また、本発明の透明基板の製造方法によると、ロール・ツー・ロールのような連続工程により伝導性層を含む透明基板を製造することができるため、優れた生産性を有し、製造費用が低廉である。その上、物理的な金属除去方法を用いるため、廃化学物質の発生が最小化する環境にやさしい特性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明の伝導性層を含む透明基板の製造方法の具現例を示したものである。
図2】本発明の伝導性層を含む透明基板の製造方法の具現例を示したものである。
図3】本発明の溝部を走査電子顕微鏡で撮影した写真である。
図4】本発明の透明基板の溝部の断面形状の実施例を示したものである。
図5】本発明の伝導性層を含む透明基板を光学顕微鏡で撮影した写真である。
図6】本発明の実施例によって製造された透明基板を走査電子顕微鏡で撮影した写真である。
図7】本発明の比較例1によって製造された透明基板を走査電子顕微鏡で撮影した写真である。
図8】本発明の比較例2によって製造された透明基板を走査電子顕微鏡で撮影した写真である。
図9】本発明の透明基板の伝導性層の垂直断面の一例を示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下では、図面を参照し、本発明をより具体的に説明する。但し、添付の図面は、本発明をより詳細に説明するためのもので、本発明の一具現例に過ぎず、本発明は図面に示された範囲に限定されない。一方、図面における同一符号は同一の構成要素を示し、図面に開示された各構成要素は、本発明の理解を助けるために誇張、縮小または省略されて表されることがある。
【0033】
本発明者らは、伝導性及び透明性に優れた透明基板を製造するために、研究を重ねた結果、伝導性層を形成する際、伝導性層の平均高さを溝部の深さの50%以下にし、金属の蒸着角度を樹脂パターン層の法線方向を基準として−15°〜15°の範囲内になるように制御することで、3μm以下の線幅を有する伝導性層を含む透明基板を製造することができることを見出し、本発明を完成した。
【0034】
より具体的には、本発明は、側面及び底面を有する多数の溝部を含む樹脂パターン層を形成する段階と、上記樹脂パターン層上に金属を蒸着して伝導性層を形成するが、伝導性層の平均高さが溝部の最大深さの5%〜50%で、金属の蒸着角度が上記樹脂パターン層の法線方向に対して−15°〜15°となるように調節する段階と、上記樹脂パターン層の溝部を除いた領域に存在する伝導性層を物理的に除去する段階と、を含む透明基板の製造方法に関する。
【0035】
図1に示したように、本発明の透明基板の製造方法は、多数の溝部24を含む樹脂パターン層20を形成する段階(図1の(A)参照)と、上記樹脂パターン層20上に伝導性層30を形成する段階(図1の(B)参照)と、上記樹脂パターン層20の溝部24を除いた領域に存在する伝導性層30を物理的に除去する段階(図1の(C)参照)と、を含む。
【0036】
まず、多数の溝部24を含む樹脂パターン層20を形成する。この際、上記樹脂パターン層20は、図1に示したように、基材10上に形成されてもよいが、これに限定されず、別途の基材を用いずに形成しても構わない。一方、樹脂パターン層20を基材上に形成する場合に使用できる基材10は特に限定されないが、伝導性層の形成後に基材を分離せずに使用できるということから、透明な材質の基材を使用することがより好ましい。例えば、上記基材10としては、ガラス基板または透明高分子フィルムなどを用いることができる。上記高分子フィルムには、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリエチレンナフタレンフィルム、ポリイミドフィルム、セルロースフィルムなどを用いることができる。
【0037】
上記樹脂パターン層20は、例えば、透明基材10上に樹脂組成物層を形成した後、インプリント法、フォトリソグラフィー法または電子ビームリソグラフィ法などの当該技術分野でよく知られている樹脂のパターニング方法を用いて、多数の溝部24をパターニングすることで形成してもよいが、その形成方法は特に限定されない。工程の簡便性及び製造費用などを考慮すると、中でも、インプリント法を用いることが特に好ましい。
【0038】
一方、上記樹脂パターン層20は、当該技術分野で知られている様々な樹脂を用いて形成してもよく、その材質は特に限定されない。例えば、本発明において、上記樹脂パターン層20は、活性エネルギー線硬化型樹脂、熱硬化型樹脂、伝導性高分子樹脂、またはこれらの組み合わせで形成されてもよく、例えば、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、エステルアクリレート、ポリジメチルシロキサン、ポリアセチレン、ポリパラフェニレン、ポリアニリン、ポリピロールなどを含んでもよい。
【0039】
上記溝部24は、伝導性層を形成するための空間であって、図3に示したように、側面及び底面を含むストライプ(stripe)状の陰刻構造物である。一方、本発明において、上記樹脂パターン層は多数の溝部24を含み、一方向に延長形成された多数の溝部と、他方向に延長形成された多数の溝部とが格子状に交差するように形成されることが好ましい。
【0040】
一方、上記溝部24を基板の平面に対して垂直な方向に切断した断面(以下、垂直断面という)の形状は、特に限定されず、四角形、逆台形、曲線形、円形、楕円形、多角形、またはその組み合わせであってもよい。図4の(A)〜(C)には本発明の溝部の様々な断面形状が例示的に示されている。上記溝部24の垂直断面の形状は、図4(A)に示したように、逆台形であってもよく、図4(B)に示したように、逆台形と類似するが、底面はラウンド状であってもよく、図4(C)に示したように、側面の上部角がラウンド状に形成されてもよい。このように、本発明において、溝部の形状は特に限定されないが、溝部の上部領域の幅が下部領域の幅より小さい場合、パターンを形成することが困難であるため、溝部の上部領域の幅が溝部の下部領域の幅より小さくならないように形成されることが好ましい。即ち、溝部の最上面の幅が最下面の幅と同一であるか、最下面の幅より大きく形成されることが好ましい。
【0041】
また、上記溝部の側面は、垂直方向を基準として、側面が0°〜15°の傾斜角、好ましくは0°〜10°、より好ましくは1°〜5°の傾斜角を有するように形成されることができる。側面の傾斜角度が0°未満では、溝部の下面の幅が上面の幅より大きくなり、その結果、パターン形成工程でモールドと樹脂との密着力が増加して、形状が歪んだり、工程速度が低下するという問題が発生する恐れがあり、15°を超えると、伝導性層の蒸着工程で溝部の側面に蒸着される金属の量が多くなり、伝導性層を物理的に除去する際、溝部内の伝導性層がともに除去されるという問題が発生する恐れがある。一方、本発明における溝部は2つの側面を有し、上記両側面の傾斜角度は同一または異なってもよい。
【0042】
一方、本発明において、上記溝部は、最大深さHが溝部の最大幅の0.2倍〜2倍、好ましくは0.7倍〜1倍程度となるように形成されることが好ましい。ここで、最大深さHは、溝部の最低点から最高点までの距離を意味し、最大幅Dは、水平方向に測定した溝部の幅のうち最長幅を意味する(図4参照)。溝部の最大深さHが上記数値範囲を満たすと、パターンの形成が容易で、溝部以外の領域の伝導性層を除去する過程で、溝部内の伝導性層がともに除去される現象を防止することができる。
【0043】
本発明における上記溝部24は、最大幅Dが0.1μm〜3μm程度、好ましくは0.3μm〜2μm程度、より好ましくは0.5μm〜0.9μm程度であってもよい。溝部の最大幅が0.1μm未満では、伝導性層の線幅が小さすぎて抵抗が高くなり、伝導性が低下するという問題点があり、最大幅が3μmを超えると、伝導性層の線幅が大きくなり、伝導性層の反射によって金属線が認知されて、製品の外観品質が低下するという問題がある。
【0044】
一方、図4(C)に示したように、溝部の側面の上部角がラウンド状に形成されると、上記上部角の曲率半径rは、溝部の最大深さHの0.3倍以下、好ましくは0.01倍〜0.15倍程度である。上部角の曲率半径が溝部の最大深さの0.3倍を超えると、伝導性層の除去時の伝導性層の割れ現象が減少し、除去速度及び均一性が低下する。
【0045】
また、上記樹脂パターン層における上記溝部は、底面の面積の総和が樹脂パターン層全体の断面積の0.1%〜5%以下となるように形成されることが好ましい。溝部の底面の面積の総和が5%を超えると、伝導性層によって基板の透明性が阻害される恐れがあり、溝部の底面の面積の総和が0.1%未満では、十分な伝導性を確保できないという問題が発生する恐れがある。
【0046】
次いで、上記樹脂パターン層20上に伝導性層30を形成する。
【0047】
このとき、上記伝導性層30は、例えば、銅、銀、金、アルミニウム、ニッケル、黄銅、鉄、クロム、白金、モリブデンまたはこれらの合金などの金属を蒸着して形成した金属層を含み、経済性及び伝導性を考慮すると、中でも、銅、アルミニウムなどを蒸着して形成する金属層を含むことが特に好ましい。また、上記伝導性層30は、必要に応じて、2層以上からなってもよく、例えば、上記のような金属を含む層の上部及び/または下部に接着力調節層や黒化層をさらに含んでもよい。
【0048】
一方、本発明における上記伝導性層30は、樹脂パターン層20上に金属を蒸着させて形成し、ここで、上記蒸着は、伝導性層の平均高さが溝部の最大深さの50%以下で、金属の蒸着角度が樹脂パターン層の垂直方向を基準として−15°〜15°の範囲内となるように行われる。このとき、上記伝導性層の平均高さは、溝部の中心点から伝導性層の高さ(以下、中心高さという)を測定した後、上記中心高さとその偏差が−20%〜+20%内にある測定値の平均を出す方法で測定した。上記溝部の中心点は、溝部の垂直断面において、底面の中央を意味する。
【0049】
上記伝導性層の平均高さは溝部の最大深さの5%〜50%、10%〜50%または20%〜40%程度であることが好ましく、上記金属の蒸着角度は−15°〜15°、−10°〜10°または−5°〜5°程度であってもよい。
【0050】
本発明者らの研究によると、3μm以下の幅を有する溝部に、従来一般的に用いられた伝導性層の形成方法、即ち、スパッタリングやeビーム蒸着方法により伝導性層を形成すると、伝導性層30を除去する際、溝部内の伝導性層30がともに除去されて短絡が発生することが分かった。しかし、伝導性層を蒸着する際、蒸着高さ及び金属の蒸着角度が上記範囲を満たすと、3μm以下の線幅を有する伝導性層を短絡なく形成することができ、その結果、伝導性及び透明性にともに優れた基板を製造できることが分かった。
【0051】
一方、上記伝導性層の蒸着高さは、フィルムの進行速度などを調節することで調節することができる。例えば、同じパワーで金属蒸着を行う場合、即ち、単位時間当たりの蒸発量が一定の場合、フィルムの進行速度を変更することで、蒸着高さを調節することができる。フィルムの進行速度を上げると、蒸気にさらされる時間が減少するため、蒸着高さが低くなる。
【0052】
また、上記金属の蒸着角度は、蒸着装置にマスクを設けたり、蒸発源と蒸着される基材との距離を調節することで調節することができる。より具体的には、蒸発源と基材との間に一定の幅で開放された領域を有するマスクを設けることで、所望する角度で進行する蒸気のみを通過させることができる。また、蒸発源と蒸着される基材との距離が離れるほど、実際に基材上に到達する蒸気の角度範囲が狭くなる。
【0053】
上記のように金属の蒸着角度を調節すると、溝部の側面に蒸着される伝導性層の厚さを調節することができる。本発明の伝導性層を形成する段階は、上記溝部の側面に蒸着される伝導性層の厚さが伝導性層の平均高さの25%以下になるように行われることが好ましい。本発明者らの研究によると、溝部の側面に付着される伝導性層の厚さが25%を超えると、3μm以下の線幅を有する金属細線を短絡なく形成することが困難であった。
【0054】
一方、必須ではないが、本発明の上記伝導性層20を形成する段階は、必要に応じて、上記金属蒸着の前に上記樹脂パターン層20上に接着力調節層40を形成する段階(図2の(B)参照)をさらに含んでもよい。
【0055】
上記接着力調節層40は、樹脂パターン層20と伝導性層20を分離して樹脂による伝導性層の酸化を防止し、樹脂パターン層と伝導性層の接着力を調節して剥離を容易にするためもので、例えば、シリコンオキサイド、金属酸化物、モリブデン、炭素、スズ、クロム、ニッケル及びコバルトからなる群より選択される1種以上からなってもよい。
【0056】
上記接着力調節層40の厚さは0.005μm〜0.2μm程度、好ましくは0.005μm〜0.1μm程度、さらに好ましくは0.01μm〜0.06μm程度である。厚さが0.005μm以下では、薄膜が正常に形成されない可能性があり、0.2μm以下で十分な薄膜特性が得られるため、それ以上では、工程費用が増加するだけで、不要である。
【0057】
一方、上記接着力調節層の形成方法は、接着力調節層を形成する物質に応じて適宜選択してもよく、特に制限されない。例えば、上記接着力調節層の形成段階は、化学気相蒸着法または物理気相蒸着法によって行ってもよく、このとき、蒸着角度は−15°〜15°、−10°〜10°、または−5°〜5°程度であることが好ましい。
【0058】
また、上記伝導性層を形成する段階は、必要に応じて、上記金属蒸着の前及び/または後に黒化層を形成する段階をさらに行ってもよい。
【0059】
上記黒化層を形成する段階は、伝導性層の反射度を低下させて透明基板の透明性を向上させるためのもので、当該技術分野でよく知られている黒化層の形成方法を制限なく用いてもよい。
【0060】
例えば、上記黒化層は、シリコンオキサイド、金属酸化物、モリブデン、炭素、スズ、クロム、ニッケル及びコバルトからなる群より選択される1種以上を含んでもよい。
【0061】
また、上記黒化層の厚さは0.005μm〜0.2μm程度、好ましくは0.005μm〜0.1μm程度、さらに好ましくは0.01μm〜0.06μm程度である。厚さが0.005μm以下では、薄膜が正常に形成されない可能性があり、0.2μm以下で十分な薄膜特性が得られるため、それ以上では、工程費用が増加するだけで、不要である。
【0062】
上記黒化層の組成及び厚さは、所望する黒化の程度に応じて多様に調整することができ、上記伝導性層の上部と下部の両方に黒化層が形成される場合、上部黒化層と下部黒化層は、その組成及び/または厚さが同一または異なってもよい。例えば、上部黒化層と下部黒化層の形成物質が異なる場合には、厚さに応じて黒化の程度が異なるため、上部黒化層と下部黒化層の厚さが異なるように構成することができる。
【0063】
一方、上記黒化層の形成方法は、黒化層を形成する物質に応じて適宜選択でき、特に制限されない。例えば、上記黒化層の形成段階は、化学気相蒸着法または物理気相蒸着法によって行うことができ、このとき、蒸着角度は−15°〜15°、−10°〜10°または−5°〜5°程度であることが好ましい。
【0064】
上記のような方法で形成された伝導性層は、その線幅が0.1μm〜3μm程度、好ましくは0.3μm〜2μm程度、より好ましくは0.5μm〜0.9μm程度である。伝導性層の線幅が0.1μm未満では、伝導性層の線幅が小さすぎて抵抗が高くなり、伝導性が低下するという問題があり、線幅が3μmを超えると、伝導性層の反射により金属線が認知されて、製品の外観品質が低下するという問題がある。
【0065】
また、上記伝導性層の平均高さは、溝部の深さの5%〜50%以下、例えば、0.01μm〜2μm程度である。
【0066】
上記のような方法により樹脂パターン層20上に伝導性層30を形成した後、上記樹脂パターン層20の溝部24を除いた領域に存在する伝導性層30、即ち、樹脂パターン層20の表面に付着された伝導性層を選択的に除去する。このとき、上記伝導性層は、物理的な方法により除去することが好ましい。ここで、物理的な方法とは、物理的な力によって伝導性層を除去することを意味し、エッチングのような化学反応を介して伝導性層を除去する方法とは区別される方法を意味する。より具体的には、上記伝導性層を物理的に除去する段階は、スクラッチ法、ディタッチ(detaching)方法またはその組み合わせなどで行われてもよい。
【0067】
このとき、上記スクラッチ法は、伝導性層を擦って除去する方法を意味し、上記ディタッチ(detaching)方法は、伝導性層の一端から張力を加えて伝導性層を樹脂パターン層から剥離させる方法のことである。スクラッチ法は、伝導性層と樹脂パターン層の接着力が高い場合に使用することができ、ディタッチ法は、伝導性層と樹脂パターン層の接着力が低い場合に使用することができる。また、スクラッチ法とディタッチ法を一つの工程で行うことにより、樹脂パターン層との接着力が相対的に高い部分の伝導性層はスクラッチ法で、接着力が相対的に低い部分はディタッチ法で除去してもよい。例えば、メラミンフォームまたは粗面を有する織物を開口部の一角から他の角部分まで擦ることで、接着力が相対的に高い角部分を除去し、接着力が相対的に低い開口部の中央部分は織物を擦るときに発生する張力を利用して除去することができる。
【0068】
一方、上記のように物理的な方法を用いて伝導性層を除去する場合、従来に使用されていた化学的な方法を用いた伝導性層の除去方法に比べて、工程が単純で、且つ環境にやさしいという長所がある。化学的な方法を用いて伝導性層を除去する場合には、溝部以外の領域で伝導性層を選択的に除去するために、溝部に形成された伝導性層の上部に別途の耐エッチング性物質を挿入するなどの方法により、溝部の伝導性層を保護する必要がある。この場合、耐エッチング性物質の挿入工程が追加されるため、工程費用及び製品の歩留まりに影響を与えることがある。これに比べて、物理的な方法を用いて伝導性層を除去する本発明は、追加工程が必要なく、エッチング液及び耐エッチング性物質のような有毒性化学物質を用いないため、環境にやさしい。
【0069】
また、上記のように物理的な方法を用いる場合、連続工程で伝導性層を除去することができるため、生産性が向上し、製造時間を短縮することができるという長所がある。
【0070】
また、本発明の伝導性層を含む透明基板の製造方法は、必要に応じて、上記伝導性層を物理的に除去する段階後に樹脂パターン層を平坦化する段階をさらに含んでもよい(図1の(D)及び図2(E)参照)。上記平坦化段階を行うと、平坦化層50により伝導性層が酸化することを防止し、スクラッチ抵抗性が向上し、樹脂形状による光散乱が減少する効果がある。
【0071】
一方、上記平坦化段階は、樹脂パターン層20の溝部に透明な材質の樹脂組成物を充填する方法で行うことができ、この際、平坦化層の形成物質は、樹脂パターン層の形成物質と同一または異なってもよい。上記平坦化層は、樹脂パターン層の形成物質との屈折率の差が0.3以下の物質で形成されることが好ましい。平坦化層と樹脂パターン層の屈折率の差が大きくなると、光が通過しながら屈折、反射または散乱されてヘイズが発生し、その結果、透明性が低下する恐れがある。
【0072】
上記のような方法により製造された本発明の透明基板は、側面及び底面を有する多数の溝部を含む樹脂パターン層と、上記溝部内に形成される伝導性層と、を含み、上記伝導性層は、線幅が0.1μm〜3μmで、平均高さが上記溝部の最大深さの5%〜50%程度である。
【0073】
このとき、上記溝部は最大幅が0.1μm〜3μmで、最大深さが溝部の最大幅の0.2倍〜2倍程度であってもよく、上記溝部の側面は垂直方向を基準として0°〜15°の傾斜角を有するように形成されてもよい。また、上記溝部は、側面の上部角の曲率半径が溝部の最大深さの0.3倍以下となるように形成されることができ、上記溝部の底面の面積の総和が樹脂パターン層全体の断面積の0.1%〜5%以下になるよう形成されることが好ましい。
【0074】
上記溝部の形状及び形成面積などに関する具体的な内容は、上述と同一であるため、詳細な説明は省略する。
【0075】
一方、上記樹脂パターン層は、当該技術分野でよく知られている樹脂、例えば、活性エネルギー線硬化型樹脂、熱硬化型樹脂、伝導性高分子樹脂、またはこれらの組み合わせからなってもよく、例えば、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、エステルアクリレート、ポリジメチルシロキサン、ポリアセチレン、ポリパラフェニレン、ポリアニリン、ポリピロールなどを含んでもよい。
【0076】
一方、本発明の透明基板における上記伝導性層は、銅、銀、アルミニウム、ニッケル、クロム、白金またはこれらの合金を含む金属層を含み、上記金属層の上部及び/または下部に他の層を含む2層以上の構造からなってもよい。例えば、上記伝導性層は、必要に応じて、上記金属層の下部に接着力調節層をさらに含むことができ、上記金属層の上部及び/または下部に黒化層をさらに含んでもよい。金属層、接着力調節層及び黒化層に関する具体的な内容は、上述と同一であるため、ここでは、具体的な説明を省略する。
【0077】
一方、上記伝導性層はこれに制限されないが、好ましくは、平均高さが0.01μm〜2μm程度であってもよく、線幅が0.1μm〜3μm程度、好ましくは0.3μm〜2μm程度、より好ましくは0.5μm〜0.9μm程度であってもよい。伝導性層の高さが上記数値範囲を満たす場合、3μm以下の線幅を有する伝導性層を短絡なく形成することができ、その結果、伝導性及び透明性の両方に優れた基板を製造することができる。
【0078】
また、本発明の透明基板において、上記溝部の側面に付着された伝導性層の厚さが伝導性層の平均高さの25%以下であることが好ましい。上記したように、溝部の側面に付着される伝導性層の厚さが25%を超えると、伝導性層の除去段階で、溝部内の伝導性層がともに除去されて短絡等が発生しやすい。このとき、溝部の側面に付着される伝導性層の厚さは、溝部の側面から伝導性層の最外表面までの垂直距離を意味する。
【0079】
一方、上記のような方法で製造された本発明の透明基板において、溝部の側面に付着される伝導性層の面積S、Sと底面に付着された伝導性層の面積Sは、下記数式1〜2または数式3〜4を満たすことが好ましい。
【0080】
より具体的には、本発明の透明基板において、溝部の一側面の垂直方向に対する傾斜角度の絶対値をθ、溝部の他側面の垂直方向に対する傾斜角度の絶対値をθとするとき、tanθ+tanθ=0である場合、即ち、溝部の側面が傾斜角を有さない場合には、上記伝導性層の垂直断面は、下記数式1及び数式2を満たすことが好ましい。
【0081】
[数1]
0≦S/(SHD−S)≦0.3
【0082】
[数2]
0≦S/(SHD−S)≦0.3
【0083】
上記[数式1]及び[数式2]において、Hは溝部の最大深さ、Dは溝部の最大幅を意味する。溝部の最大深さ及び最大幅に対する定義は、上述と同一である。
【0084】
一方、Sは基準線lの下の領域に存在する伝導性層の断面積であり、S及びSはそれぞれ基準線lの上の領域に存在する伝導性層の溝部の一側面に付着している伝導性層の断面積を意味する(図9参照)。この際、上記基準線lは、伝導性層の平均高さをhとするとき、溝部の中心点Cから1.2hの高さにある点を通る水平線のことであり、上記伝導性層の平均高さの定義は、上述と同一である。
【0085】
一方、本発明の透明基板において、溝部の一側面の垂直方向に対する傾斜角度の絶対値をθ、溝部の他側面の垂直方向に対する傾斜角度の絶対値をθとするとき、tanθ+tanθ>0である場合、即ち、溝部の側面のうち少なくとも一つ以上が傾斜角を有する場合には、上記伝導性層の垂直断面が下記数式3及び数式4を満たすことが好ましい。
【0086】
[数3]
0≦S(tanθ+tanθ)cosθ/[{2D−H(tanθ+tanθ)}T−2S]≦0.3
【0087】
[数4]
0≦S(tanθ+tanθ)cosθ/[{2D−H(tanθ+tanθ)}T−2S]≦0.3
【0088】
上記[数式3]及び[数式4]において、Tは下記[数式5]で定義される値である。
【0089】
[数5]
=[H(tanθ+tanθ)−D+{(D−H(tanθ+tanθ))+2S(tanθ+tanθ)}0.5]/(tanθ+tanθ
【0090】
H、D、S、S及びSの定義は上記式1及び2と同一である。
【0091】
本発明者らの研究によると、伝導性層が上記のような数式を満たすように形成される場合、3μm以下の微細線幅でも溝部内に存在する伝導性層が剥離されずに残存して、十分な伝導性を有しながらも視認性に優れた透明基板が得られる。
【0092】
一方、本発明による透明基板は、上記伝導性層の上部に平坦化層をさらに含んでもよく、このとき、上記平坦化層は、樹脂パターン層の形成物質との屈折率の差が0.3以下の物質で形成されることが好ましい。
【0093】
一方、上記のような本発明の透明基板は、開口率が95%から99.9%程度で、面抵抗が0.01Ω/□〜100Ω/□程度であり、透明性及び伝導性に優れる。
【0094】
このとき、上記開口率とは、透明基板の表面積において、伝導性層が形成されていない領域の面積の比率を意味し、{(透明基板の表面の断面積−伝導性層が形成された部分の面積の総和)/透明基板の表面の断面積}×100で計算することができる。本発明の透明基板は、上記のように伝導性層の線幅が小さく、開口率が高くて、伝導性層の反射による外観品質の低下を最小化することができ、優れた透明性を有する。
【0095】
一方、上記のような本発明の透明基板は、伝導性基板が使用される全ての領域に使用することができ、例えば、タッチパネル、有機太陽電池用電極、透明OLED、電磁波遮蔽フィルム、発熱ガラス、フレキシブル基板などに有効に適用できる。図5には、本発明の方法により製造された透明基板を撮影した光学顕微鏡写真が示されている。図5に示されたように、本発明の透明基板は、伝導性層の線幅が非常に小さいため、伝導性層の反射による透明性の低下を最小化することができ、その結果、高度の透明性を有するため、タッチパネルや透明OLEDなどのディスプレイ分野に極めて適する。
【0096】
以下、具体的な実施例を通じて本発明をより具体的に説明する。
【0097】
実施例
50μm厚さのポリエチレンテレフタレート基材上にウレタン−アクリレート樹脂組成物を塗布した後、モールドを用いて、最大幅Dが1.0μm、最大深さHが0.5μm、両側面の垂直傾斜角が5度の垂直断面の形状が逆台形である溝部が格子状に配列された樹脂パターン層を形成した。このとき、上記溝部の間隔は100μmであった。
【0098】
次いで、マスクが装着されたULVAC社のロール・ツー・ロール電子ビーム蒸着装置を用いて上記樹脂パターン層の上部に銅金属を蒸着角度が−5〜+5度となるように蒸着した。この際、溝部の底面に蒸着された銅層の平均高さは0.2μmで、溝部の側面に蒸着された銅層の厚さは5nm以下であった。
【0099】
蒸着が完了した後、粗面を有する織物である太陽研磨社sunfoam P3000を用いて、溝部以外の領域の伝導性層を除去し、透明基板を製造した。製造された透明基板の溝部内に銅層において、基準線の下の領域に形成された伝導性層の面積、即ち、Sは0.2μmで、基準線の上の領域に形成された伝導性層は確認されなかった。
【0100】
比較例1
銅金属の蒸着厚さを0.5μmとしたことを除き、実施例と同様の方法で透明基板を製造した。
【0101】
比較例2
50μm厚さのポリエチレンテレフタレート基材上にウレタン−アクリレート樹脂組成物を塗布した後、モールドを用いて、最大幅Dが1.0μmで、最大深さHが0.5μmであり、両側面の垂直傾斜角が5度の垂直断面の形状が逆台形である溝部が格子状に配列された樹脂パターン層を形成した。このとき、上記溝部の間隔は100μmであった。
【0102】
次いで、マスクが装着されていないULVAC社のロール・ツー・ロール電子ビーム蒸着装置を用いて上記樹脂パターン層の上部に銅金属を蒸着角度が−5〜+5度となるように蒸着した。この際、溝部の底面に蒸着された銅層の平均高さは0.2μmであり、溝部の側面に蒸着された銅層の平均厚さは80nm程度であった。
【0103】
蒸着が完了した後、粗面を有する織物である太陽研磨社sunfoam P3000を用いて、溝部以外の領域の伝導性層を除去し、透明基板を製造した。
【0104】
実験例1:短絡の発生有無
実施例及び比較例1〜2により製造された透明基板を走査電子顕微鏡で撮影し、伝導性層の短絡有無を観察した。図6図8には、実施例及び比較例1〜2の透明基板を撮影した写真が示されている。図6の(A)及び(B)は実施例の基板を倍率及び角度を変えて撮影した写真であり、図7は比較例1の基板を撮影した写真であり、図8は比較例2の基板を撮影した写真である。図6から、本発明の方法により製造された実施例の基板は、伝導性層の除去後にも、溝部内部の伝導性層が均一に形成されていることが分かる。これに比べて、図7に示したように、比較例1の基板は、溝部内の伝導性層が伝導性層の除去工程でともに除去されたことが分かる。また、図8に示したように、比較例2の基板は、溝部の一部の領域で伝導性層が剥離されていることが分かる。
【0105】
実験例2:伝導性の測定
実施例及び比較例1〜2により製造された透明基板の抵抗値をFluke社Fluke117 multi−meterを用いて測定した。測定結果は下表1に示されている。
【0106】
【表1】
【符号の説明】
【0107】
10 透明基材
20 樹脂パターン層
24 溝部
30 伝導性層
40 接着力調節層
50 平坦化層
図1(A)】
図1(B)】
図1(C)】
図1(D)】
図2(A)】
図2(B)】
図2(C)】
図2(D)】
図2(E)】
図3
図4(A)】
図4(B)】
図4(C)】
図5
図6(A)】
図6(B)】
図7
図8
図9