特許第6202324号(P6202324)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6202324
(24)【登録日】2017年9月8日
(45)【発行日】2017年9月27日
(54)【発明の名称】脳機能計測装置及び脳機能計測方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 10/00 20060101AFI20170914BHJP
   A61B 5/1455 20060101ALI20170914BHJP
   G01N 21/17 20060101ALI20170914BHJP
【FI】
   A61B10/00 EZDM
   A61B5/14 322
   G01N21/17 625
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-241119(P2013-241119)
(22)【出願日】2013年11月21日
(65)【公開番号】特開2015-100410(P2015-100410A)
(43)【公開日】2015年6月4日
【審査請求日】2016年7月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(72)【発明者】
【氏名】山田 亨
(72)【発明者】
【氏名】梅山 伸二
【審査官】 宮川 哲伸
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−148794(JP,A)
【文献】 特開2007−111461(JP,A)
【文献】 特開平10−148611(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 10/00
A61B 5/1455
G01N 21/17
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一体的に形成され選択的に動作する光照射部と光検出部とを含み、被験者の頭部において規則的に配置された複数の探知手段と、
いずれの時刻においても、前記光照射部から照射された光を検出する全ての前記光検出部が、隣接する一つの前記探知手段に含まれた前記光照射部から照射された光だけを検出するよう各々の前記探知手段に含まれた前記光照射部と前記光検出部を選択的に動作させる制御手段と、
前記光検出部で検出された前記光の強度を計測する計測手段とを備えた脳機能計測装置。
【請求項2】
前記配置は最密充填格子状である、請求項1に記載の脳機能計測装置。
【請求項3】
前記光は近赤外線である、請求項1に記載の脳機能計測装置。
【請求項4】
一体的に形成された光照射部と光検出部を有し、前記光照射部と前記光検出部とが選択的に動作する複数の探知手段を被験者の頭部へ規則的に配置する第一のステップと、
いずれの時刻においても、前記光照射部から照射された光を検出する全ての前記光検出部が、隣接する一つの前記探知手段に含まれた前記光照射部から照射された光だけを検出するよう各々の前記探知手段に含まれた前記光照射部と前記光検出部を選択的に動作させ、前記光検出部で検出された前記光の強度を計測する第二のステップとを有する脳機能計測方法。
【請求項5】
前記配置は最密充填格子状である、請求項4に記載の脳機能計測方法。
【請求項6】
前記光は近赤外線である、請求項4に記載の脳機能計測方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体医工学等の分野で活用される脳機能計測装置及び脳機能計測方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
これまで、生体内部の機能を示す情報を得るために種々の装置及び方法が考案されており、例えば特許文献1には同文献の図3に示された光ファイバ束14を用いた光計測装置及び光計測方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−111461号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
脳機能の計測に当たってはプローブが使用されるが、通常は図7に示されるように光源専用とされる光照射プローブPEと検出専用とされる光検出プローブPDとが30mm間隔で繰り返すような空間パターンで頭部に配置され、隣接する光照射プローブPEと光検出プローブPDの中間点における多数の計測点(以下「チャンネル」ともいう。)Mにおいて光学的な計測がなされてきた。
【0005】
しかし、光照射プローブPEと光検出プローブPDをこのように配置した場合には、計測点Mにより30mm四方間隔の空間密度でしかデータを計測(サンプリング)できないため、仮に脳機能の賦活が計測点Mの間の位置で生じた場合には、検知漏れを招来する。
【0006】
また、このような不都合を回避するためには、図8に示されるように、近赤外線分光法による脳機能賦活検出の理論的空間分解能である約15mm間隔で光照射プローブPEと光検出プローブPDを配置するいわゆる倍密度配置法が考えられるものの、本手法では同一面積に対して計測を行うにあたり必要とされる光照射プローブPE及び光検出プローブPDの数が図7に示された配置法に比して二倍となるため、被験者への装着の手間や時間がかかり、また光照射プローブPE及び光検出プローブPDや、これらと計測端末とを結ぶワイヤ等により被験者に大きな負荷もかかるといった問題がある。
【0007】
本発明は、上記のような問題を解決するためになされたもので、より少ない数のプローブ等の探知手段によって効率的な脳機能の計測を実現し、被験者に対する負荷を軽減するための装置及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は、一体的に形成された光照射部と光検出部を有し、上記光照射部と上記光検出部とが選択的に動作する複数の探知手段を被験者の頭部へ規則的に配置し、いずれの時刻においても、上記光照射部から照射された光を検出する全ての上記光検出部が、隣接する一つの探知手段に含まれた上記光照射部から照射された光だけを検出するよう各々の探知手段に含まれた上記光照射部と上記光検出部を選択的に動作させ、上記光検出部で検出された光の強度を計測する脳機能計測手段を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、より少ない数のプローブ等の探知手段によって効率的な脳機能の計測を実現し、被験者に対する負荷を軽減できる脳機能計測装置及び脳機能計測方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施の形態に係る脳機能計測装置1の構成を示すブロック図である。
図2図1に示された検知部3に含まれた二分岐型プローブTPの構成を示す図である。
図3図1に示された制御部10による光照射プローブPE及び光検出プローブPDの制御法を示す図である。
図4】二分岐型プローブTPを30mm間隔の六方最密充填により配置した場合の脳機能計測方法を説明するための図である。
図5】従来の光照射プローブ及び光検出プローブが単純正方格子状に配置された場合における計測法を示す図である。
図6】従来の光照射プローブ及び光検出プローブが倍密度正方格子状に配置された場合における計測法を示す図である。
図7】光照射プローブPEと光検出プローブPDとが単純正方格子状に配置された場合の脳機能計測方法を説明するための図である。
図8】光照射プローブPEと光検出プローブPDとが倍密度正方格子状に配置された場合の脳機能計測方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下において、本発明に係る実施の形態を図面を参照しつつ詳しく説明する。なお、図中同一符号は同一又は相等部分を示す。
【0012】
図1は、本発明の実施の形態に係る脳機能計測装置1の構成を示すブロック図である。図1に示されるように、脳機能計測装置1は計測端末2と検知部3とを備え、計測端末2は制御部10、データ計測部11、記憶部12、操作部13、表示部14、及び光源部15を含む。そして、検知部3と光源部15とは光照射用ワイヤ5により接続され、検知部3とデータ計測部11とはデータ用ワイヤ7により接続される。なお、光照射用ワイヤ5及びデータ用ワイヤ7は、後述するように検知部3に配置された複数の二分岐型プローブTPに対応するものとされる。
【0013】
ここで、制御部10はデータ計測部11、記憶部12、操作部13、表示部14、及び光源部15に接続され、記憶部12はデータ計測部11及び表示部14に接続される。また、表示部14は操作部13にも接続される。
【0014】
一方、検知部3には図2に示された二分岐型プローブTPが複数含まれる。この二分岐型プローブTPは、図2に示されるように、光照射プローブPEと光検出プローブPDとで一体的なワイヤを形成すると共に、被験者の頭部にあてがう先端部分においては光照射プローブPEと光検出プローブPDとが二分岐した構成を有する。また、光照射プローブPEの他端は光照射用ワイヤ5を介して光源部15に接続され、光検出プローブPDの他端はデータ用ワイヤ7を介してデータ計測部11に接続される。
【0015】
そして、一対の上記二分岐型プローブTPにおいて、一方の二分岐型プローブTPに含まれた光照射プローブPEの先端から被験者の頭部へ近赤外線を含む光が照射され、他方の二分岐型プローブTPに含まれた光検出プローブPDの先端において該頭部からの光が検出されることにより、機能的近赤外線分光法(functional near-infrared spectroscopy:fNIRS)を利用した脳機能の計測が実現される。
【0016】
上記のような構成を有する脳機能計測装置1において、制御部10はユーザーによる操作部13の操作により選択された動作を実行すべく、複数の光照射プローブPEに対して選択的に光を照射させるよう光源部15をスイッチングすると共に、複数の光検出プローブPDで受光された光の強度を選択的に計測するようデータ計測部11を制御する。なお、制御部10による光照射プローブPE及び光検出プローブPDの選択的な制御については、後に詳しく説明する。
【0017】
また、制御部10はユーザーによる操作部13の操作に応じて、データ計測部11で計測された上記光の強度を記憶部12に記憶させ、記憶部12に記憶された上記光の強度等のデータを表示部14に表示させる。なお、制御部10は上記操作に応じて表示部14の表示を制御することができ、操作部13は上記操作に応じて表示部14の表示機能を調整することができる。
【0018】
以下において、図3を参照しつつ、制御部10による光照射プローブPE及び光検出プローブPDの選択的な制御について詳しく説明する。
【0019】
図3(a)に示されるように、複数の上記二分岐型プローブTPは検知部3において六方最密充填配置をなし、本配置により隣接する二分岐型プローブTPの各中点が被験者の脳機能を計測するための計測点Mとされる。
【0020】
ここで、上記のように隣接する二分岐型プローブTPの中点を計測点Mとすると、仮に本プローブを30mm間隔で図7に示されるように単純正方格子状に配置した場合には、計測点M間の距離は約21mmとなる。これに対し、二分岐型プローブTPを図4に示すように30mm間隔の六方最密充填により配置した場合には、計測点M間の距離は15mmに短縮することができる。
【0021】
制御部10は、このように六方最密充填配置された各二分岐型プローブTPにおける光照射プローブPE及び光検出プローブPDを選択的に動作させる。
【0022】
すなわち、制御部10は、光照射プローブPEから光を照射する二分岐型プローブTPにおいては、上記光照射プローブPEと対をなす光検出プローブPDによる光の検出を同時に行わないよう二分岐型プローブTPを制御し、いずれの時刻においても、光照射プローブPEから照射された光を検出する全ての光検出プローブPDが、隣接する一つの二分岐型プローブTPに含まれた光照射プローブPEから照射された光だけを検出するよう各々の二分岐型プローブTPに含まれた光照射プローブPE及び光検出プローブPDを選択的に動作させる。
【0023】
以下において、図3(a)に示された6個の二分岐型プローブTPを対象とした制御部10による上記制御の一例を具体的に説明する。なお、本制御は各計測点Mで計測されるデータに混信が生じることを防ぐため、データ計測部11に対して光検出プローブPDで検出された光の強度を計測点M毎に異なる時刻において計測させるという時間割り付け方式(Time Division Multiple Access:TDMA)が採用されている。
【0024】
時刻Tにおいては、図3(b)に示されるように、制御部10は黒丸で示された二分岐型プローブTP2〜TP5では光検出プローブPDを選択的に動作させて光を検出させ、白丸で示された二分岐型プローブTP1,TP6では光照射プローブPEを選択的に動作させて光を照射させる。
【0025】
これによって、二分岐型プローブTP2,TP3は二分岐型プローブTP1から照射された光を検出することにより、二分岐型プローブTP1と二分岐型プローブTP2との中間及び二分岐型プローブTP1と二分岐型プローブTP3との中間に位置する二つの計測点Mにおける被験者の脳の機能を計測する。また同様に、二分岐型プローブTP4,TP5は二分岐型プローブTP6から照射された光を検出することにより、二分岐型プローブTP6と二分岐型プローブTP4との中間及び二分岐型プローブTP6と二分岐型プローブTP5との中間に位置する二つの計測点Mにおける被験者の脳の機能を計測する。なお、二分岐型プローブTP4及び二分岐型プローブTP5においては、二分岐型プローブTP1から遠く離れているため、二分岐型プローブTP1から照射された光は検出されない。また同様に、二分岐型プローブTP2及び二分岐型プローブTP3においては、二分岐型プローブTP6から照射された光は検出されない。
【0026】
次に、時間Tだけ経過した後の時刻2Tにおいては、図3(c)に示されるように、制御部10は二分岐型プローブTP1,TP3,TP4では光検出プローブPDを選択的に動作させて光を検出させ、二分岐型プローブTP2では光照射プローブPEを選択的に動作させて光を照射させる。
【0027】
これによって、二分岐型プローブTP1,TP3,TP4は二分岐型プローブTP2から照射された光を検出することにより、二分岐型プローブTP2と二分岐型プローブTP1との中間、二分岐型プローブTP2と二分岐型プローブTP3との中間、及び二分岐型プローブTP2と二分岐型プローブTP4との中間に位置する三つの計測点Mにおける被験者の脳の機能を計測する。
【0028】
次に、さらに時間Tだけ経過した後の時刻3Tにおいては、図3(d)に示されるように、制御部10は二分岐型プローブTP1,TP2,TP4,TP5では光検出プローブPDを選択的に動作させて光を検出させ、二分岐型プローブTP3では光照射プローブPEを選択的に動作させて光を照射させる。
【0029】
これによって、二分岐型プローブTP1,TP2,TP4,TP5は二分岐型プローブTP3から照射された光を検出することにより、二分岐型プローブTP3と二分岐型プローブTP1との中間、二分岐型プローブTP3と二分岐型プローブTP2との中間、二分岐型プローブTP3と二分岐型プローブTP4との中間、及び二分岐型プローブTP3と二分岐型プローブTP5との中間に位置する四つの計測点Mにおける被験者の脳の機能を計測する。
【0030】
次に、さらに時間Tだけ経過した後の時刻4Tにおいては、図3(e)に示されるように、制御部10は二分岐型プローブTP2,TP3,TP5,TP6では光検出プローブPDを選択的に動作させて光を検出させ、二分岐型プローブTP4では光照射プローブPEを選択的に動作させて光を照射させる。
【0031】
これによって、二分岐型プローブTP2,TP3,TP5,TP6は二分岐型プローブTP4から照射された光を検出することにより、二分岐型プローブTP4と二分岐型プローブTP2との中間、二分岐型プローブTP4と二分岐型プローブTP3との中間、二分岐型プローブTP4と二分岐型プローブTP5との中間、及び二分岐型プローブTP4と二分岐型プローブTP6との中間に位置する四つの計測点Mにおける被験者の脳の機能を計測する。
【0032】
次に、さらに時間Tだけ経過した後の時刻5Tにおいては、図3(f)に示されるように、制御部10は二分岐型プローブTP3,TP4,TP6では光検出プローブPDを選択的に動作させて光を検出させ、二分岐型プローブTP5では光照射プローブPEを選択的に動作させて光を照射させる。
【0033】
これによって、二分岐型プローブTP3,TP4,TP6は二分岐型プローブTP5から照射された光を検出することにより、二分岐型プローブTP5と二分岐型プローブTP3との中間、二分岐型プローブTP5と二分岐型プローブTP4との中間、及び二分岐型プローブTP5と二分岐型プローブTP6との中間に位置する三つの計測点Mにおける被験者の脳の機能を計測する。
【0034】
以上のような図3(b)〜(f)に示された制御部10による二分岐型プローブTPの制御をまとめると図3(g)のように図示できる。ここで、図中の数字は、時刻T〜時刻5Tにおいて計測される計測点Mの順序を、当該計測点Mの位置に記したものである。
【0035】
図3(g)によれば、隣接する二分岐型プローブTPの中間に位置する各計測点Mでは、上記時刻5Tまでの間にそれぞれ二回ずつ光の強度が計測されることがわかる。
【0036】
ここで、図3に示された上記制御法と対比するため、従来の光照射プローブ及び光検出プローブが単純正方格子状に配置された場合における計測法について図5を参照しつつ説明する。
【0037】
図5(a)は、従来の光照射プローブ及び光検出プローブが単純正方格子状に配置された場合の一例を示したものであり、白丸で示された光照射プローブPE1,PE2,PE3と黒丸で示された光検出プローブPD1,PD2,PD3が単純正方格子状に交互に配置される。
【0038】
そして時刻Tにおいては、図5(b)に示されるように、光検出プローブPD1,PD2は光照射プローブPE1から照射された光を検出することにより、光照射プローブPE1と光検出プローブPD1との中間、及び光照射プローブPE1と光検出プローブPD2との中間に位置する二つの計測点Mにおける被験者の脳の機能を計測する。
【0039】
次に、時間T経過後の時刻2Tにおいては、図5(c)に示されるように、光検出プローブPD1,PD2,PD3は光照射プローブPE2から照射された光を検出することにより、光照射プローブPE2と光検出プローブPD1との中間、光照射プローブPE2と光検出プローブPD2との中間、及び光照射プローブPE2と光検出プローブPD3との中間に位置する三つの計測点Mにおける被験者の脳の機能を計測する。
【0040】
そして、さらに時間T経過後の時刻3Tにおいては、図5(d)に示されるように、光検出プローブPD2,PD3は光照射プローブPE3から照射された光を検出することにより、光照射プローブPE3と光検出プローブPD2との中間、及び光照射プローブPE3と光検出プローブPD3との中間に位置する二つの計測点Mにおける被験者の脳の機能を計測する。
【0041】
以上のような図5(b)〜(d)に示された制御法をまとめると図5(e)のように図示できる。ここで、図中の数字は、時刻T〜時刻3Tにおいて計測される計測点Mの順序を、当該計測点Mの位置に記したものである。
【0042】
図5(e)によれば、隣接するプローブの中間に位置する各計測点Mでは、上記時刻3Tまでの間にそれぞれ一回光の強度が計測されることがわかる。
【0043】
同様に、従来の光照射プローブ及び光検出プローブが倍密度正方格子状に配置された場合における計測法について図6を参照しつつ説明する。
【0044】
図6(a)は、従来の光照射プローブ及び光検出プローブが倍密度正方格子状に配置された場合の一例を示したものであり、白丸で示された光照射プローブPE1,DPE1,PE2,DPE2,PE3と黒丸で示された光検出プローブPD1,DPD1,PD2,DPD2,PD3が倍密度正方格子状に交互に配置される。
【0045】
そして時刻Tにおいては、図6(b)に示されるように、光検出プローブPD1,PD2は光照射プローブPE1から照射された光を検出することにより、光照射プローブPE1と光検出プローブPD1との中間、及び光照射プローブPE1と光検出プローブPD2との中間に位置する二つの計測点Mにおける被験者の脳の機能を計測する。
【0046】
次に、時間T経過後の時刻2Tにおいては、図6(c)に示されるように、光検出プローブPD1,PD2,PD3は光照射プローブPE2から照射された光を検出することにより、光照射プローブPE2と光検出プローブPD1との中間、光照射プローブPE2と光検出プローブPD2との中間、及び光照射プローブPE2と光検出プローブPD3との中間に位置する三つの計測点Mにおける被験者の脳の機能を計測する。
【0047】
そして、さらに時間T経過後の時刻3Tにおいては、図6(d)に示されるように、光検出プローブPD2,PD3は光照射プローブPE3から照射された光を検出することにより、光照射プローブPE3と光検出プローブPD2との中間、及び光照射プローブPE3と光検出プローブPD3との中間に位置する二つの計測点Mにおける被験者の脳の機能を計測する。
【0048】
さらに時間T経過後の時刻4Tにおいては、図6(e)に示されるように、光検出プローブDPD1,DPD2は光照射プローブDPE1から照射された光を検出することにより、光照射プローブDPE1と光検出プローブDPD1との中間、及び光照射プローブDPE1と光検出プローブDPD2との中間に位置する二つの計測点Mにおける被験者の脳の機能を計測する。
【0049】
さらに時間T経過後の時刻5Tにおいては、図6(f)に示されるように、光検出プローブDPD1,DPD2は光照射プローブDPE2から照射された光を検出することにより、光照射プローブDPE2と光検出プローブDPD1との中間、及び光照射プローブDPE2と光検出プローブDPD2との中間に位置する二つの計測点Mにおける被験者の脳の機能を計測する。
【0050】
以上のような図6(b)〜(f)に示された制御法をまとめると図6(g)のように図示できる。ここで、図中の数字は、時刻T〜時刻5Tにおいて計測される計測点Mの順序を、当該計測点Mの位置に記したものである。
【0051】
図6(g)によれば、隣接するプローブの中間あるいはプローブの位置とされる各計測点Mでは、上記時刻5Tまでの間にそれぞれ一回光の強度が計測されることがわかる。
【0052】
ここで、図3に示された本発明の実施の形態に係る制御法と図5及び図6に示された制御法とを比較すると、図5及び図6に示された制御法では一つの計測サイクルが終了した時刻3Tあるいは時刻5Tにおいては上記のように各計測点Mで一回のみ計測が行われるのに対し、図3に示された制御法では上記のように、隣接する二分岐型プローブTPの各中間において順逆二方向の光路を用いた二回の計測が行われる。
【0053】
このことから、時間T当たりに実行される計測数を比較すると、図5に示された制御法においては2.3回(=計測点数合計7/時間3T)、図6に示された制御法においては2.2回(=計測点数合計11/時間5T)となるのに対し、図3に示された制御法によれば3.6回(=計測点数延べ18/時間5T)となり、図5あるいは図6に示された従来の光照射プローブ及び光検出プローブを用いた制御法に比して時間的効率がより高い脳機能の計測を実現することができる。
【0054】
さらに、図3に示された制御法によるこのような時間的効率性は、多数の計測点Mで脳の機能を計測する多チャンネル計測においては、計測対象となる面積が大きくなるほど高まる。例えば、縦横30mm間隔で合計16個の従来型プローブが図7に示された配置と同様に単純正方格子状に配置された場合には計測対象となる面積は81平方センチメートルとなるが、これとほぼ同じ広さの領域を図8に示された配置と同様に倍密度正方格子状に配置された合計49個の従来型プローブ、あるいは図3に示された配置と同様に最密充填格子状に配置された合計18個の二分岐型プローブTPで計測する場合には、計測対象面積はそれぞれ81平方センチメートル、81.8平方センチメートルとなる。
【0055】
そして、これらの計測対象面積内における上記計測点Mの数はそれぞれ、上記単純正方格子状配置の場合は24、上記倍密度正方格子状配置の場合は45、上記最密充填格子状配置の場合は38となるため、上記倍密度正方格子状配置の場合と上記最密充填格子状配置の場合における計測点Mの面内密度は上記単純正方格子状配置の場合の該面内密度の約2倍となることがわかる。
【0056】
また、一周期の計測を終えるまでの所要時間はそれぞれ、上記単純正方格子状配置の場合は時間4T、上記倍密度正方格子状配置の場合は時間8T、上記最密充填格子状配置の場合は時間7Tであり、上記最密充填格子状配置の場合には各計測点Mで2回ずつ計測が行われることから、時間T当たりに実行される計測回数はそれぞれ順に6回/時間T、5.6回/時間T、10.9回/時間Tとなる。このことから、上記最密充填格子状配置による計測によれば、他の二つの配置による計測に対して約2倍の時間効率性を実現することができる。
【0057】
また、上記各配置のいずれにおいても計測対象面積が大きくなると共に上記時間効率性は高まっており、図3図6に示された場合との比がそれぞれ、上記単純正方格子状配置の場合は2.6倍(=6回/2.3回)、上記倍密度正方格子状配置の場合は2.5倍(=5.6回/2.2回)、上記最密充填格子状配置の場合は3.0倍(=10.9回/3.6回)となっている。
【0058】
このことから、図3に示されたように上記二分岐型プローブTPを最密充填格子状に配置した脳機能計測法は、広い面積を計測対象とした場合に他の配置による脳機能計測法よりも計測の時間効率性が高まる性質を持った計測方法であることがわかる。
【0059】
従って、広い面積において多チャンネル計測を実施して脳機能賦活部位を探索する場合、例えば全頭計測のような大規模な多チャンネル近赤外分光法(near-infrared spectroscopy:NIRS)を用いた探索的脳機能計測等においては、上記のように二分岐型プローブTPを最密充填格子状に配置して、図3に示されたように各二分岐型プローブTPを切り替え制御する脳機能計測法がとりわけ適しているということができる。
【0060】
以上のように、本発明の実施の形態に係る脳機能計測装置1及び図3に示された脳機能計測方法によれば、従来の脳機能計測法に対して空間的なサンプリング密度を飛躍的に改善し、かつ、倍密度正方格子状配置による計測法に比して必要なプローブ数を大幅に削減することができる。
【0061】
また、必要なプローブ数を削減できることから、脳機能計測の際に被験者の頭部へ該プローブを取り付けるために要する時間を短縮できると共に、頭部と各プローブとの密着度の管理も徹底することが容易になることから計測データの質の向上も図ることができる。
【0062】
さらに、本発明の実施の形態に係る脳機能計測装置1及び図3に示された脳機能計測方法によれば、図1に示された検知部3を被験者が頭部に装着した際に生じる検知部3に含まれた該プローブや該プローブと計測端末とを接続するワイヤ等による被験者への負荷を軽減することができる。
【符号の説明】
【0063】
1 脳機能計測装置
3 検知部
10 制御部
11 データ計測部
TP 二分岐型プローブ
PE 光照射プローブ
PD 光検出プローブ

図1
図2
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図4
図5
図6
図7
図8