(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6202333
(24)【登録日】2017年9月8日
(45)【発行日】2017年9月27日
(54)【発明の名称】回転粘度計
(51)【国際特許分類】
G01N 11/14 20060101AFI20170914BHJP
【FI】
G01N11/14 A
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-55240(P2014-55240)
(22)【出願日】2014年3月18日
(65)【公開番号】特開2015-175841(P2015-175841A)
(43)【公開日】2015年10月5日
【審査請求日】2016年10月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(72)【発明者】
【氏名】菜嶋 健司
【審査官】
山口 剛
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭63−317744(JP,A)
【文献】
特開平06−109612(JP,A)
【文献】
特表平10−509240(JP,A)
【文献】
特開2009−063505(JP,A)
【文献】
特開2005−049214(JP,A)
【文献】
実公昭42−014397(JP,Y1)
【文献】
特開平06−347392(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 11/00 − 11/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
同一中心軸をもつ外筒及び内筒と、外筒を回転駆動させる回転機構と、内筒上部に固定され軸受けで回転軸支された内筒軸と、内筒軸に設けたトルク検出機構を備え、前記外筒を回転させることにより外筒と内筒の間に満たされた試料流体を層流状態で回転流動させ、内筒に作用するトルクを前記トルク検出機構で検出し粘度を測定する外筒回転方式の共軸二重円筒型回転粘度計であって、
前記内筒軸の外側を囲む固定ガード軸を設け、当該固定ガード軸に、前記内筒軸の横方向の過大な変位を抑える内筒軸ガードを設けたことを特徴とする外筒回転方式の共軸二重円筒型回転粘度計。
【請求項2】
同一中心軸をもつ外筒及び内筒と、外筒を回転駆動させる回転機構と、内筒上部に固定され軸受けで回転軸支された内筒軸と、内筒軸に設けたトルク検出機構を備え、前記外筒を回転させることにより外筒と内筒の間に満たされた試料流体を層流状態で回転流動させ、内筒に作用するトルクを前記トルク検出機構で検出し粘度を測定する外筒回転方式の共軸二重円筒型回転粘度計であって、
前記内筒軸の外側を囲む固定ガード軸を設け、当該固定ガード軸に、前記内筒と同じ半径の内筒上面ガード円筒を僅かな隙間を挟んで内筒周面を上に延長する位置に設けたことを特徴とする外筒回転方式の共軸二重円筒型回転粘度計。
【請求項3】
同一中心軸をもつ外筒及び内筒と、外筒を回転駆動させる回転機構と、内筒上部に固定され軸受けで回転軸支された内筒軸と、内筒軸に設けたトルク検出機構を備え、前記外筒を回転させることにより外筒と内筒の間に満たされた試料流体を層流状態で回転流動させ、内筒に作用するトルクを前記トルク検出機構で検出し粘度を測定する外筒回転方式の共軸二重円筒型回転粘度計であって、
前記外筒を入れ前記試料流体の温度を所定温度に保持する恒温槽を備え、
前記内筒軸の外側を囲む固定ガード軸を設け、当該固定ガード軸に、温度調節部材を設けたことを特徴とする外筒回転方式の共軸二重円筒型回転粘度計。
【請求項4】
同一中心軸をもつ外筒及び内筒と、外筒を回転駆動させる回転機構と、内筒上部に固定され軸受けで回転軸支された内筒軸と、内筒軸に設けたトルク検出機構を備え、前記外筒を回転させることにより外筒と内筒の間に満たされた試料流体を層流状態で回転流動させ、内筒に作用するトルクを前記トルク検出機構で検出し粘度を測定する外筒回転方式の共軸二重円筒型回転粘度計であって、
前記外筒を入れ前記試料流体の温度を所定温度に保持する恒温槽を備え、
前記内筒軸の外側を囲む固定ガード軸を設け、当該固定ガード軸に、温度調節部材を設け、さらに、当該固定ガード軸に、前記内筒と同じ半径の内筒上面ガード円筒を僅かな隙間を挟んで内筒周面を上に延長する位置に設けたことを特徴とする外筒回転方式の共軸二重円筒型回転粘度計。
【請求項5】
前記固定ガード軸に、前記内筒軸の横方向の過大な変位を抑える内筒軸ガードを設けたことを特徴とする請求項2〜4のいずれかに記載の外筒回転方式の共軸二重円筒型回転粘度計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転粘度計に関するものであって、特に、外筒回転方式の共軸二重円筒型回転粘度計に関する。
【背景技術】
【0002】
回転粘度計は試料と接する部分の形状によって、大きく円錐−平板型と共軸二重円筒型に分かれる。両者ともずり速度と呼ばれる、試料の流動(変形)する速度が試料の場所に依らない測定状態を作ることが出来るので、粘度のずり速度依存性のある試料の測定に利用されている。
また、回転粘度計は試料部に回転を伝え、応答トルクを測定する、或いは、トルクを伝えて回転させ、その回転速度を測定する機能を有している。試料部は、温度制御する必要があるため、これを回転軸により離れた位置に取り出して操作、或いは、測定するものであった。
回転粘度計として広く用いられている共軸二重円筒型回転粘度計(特許文献1、2等参照)は、中心軸が一致する外筒と内筒の間に試料が保持され、多くの測定装置は、そのどちらか一方が回転し、内筒側でトルクを測定、或いは、発生する構成となっており、測定の理論は、無限に長い二重円筒に基づいているが、現実的では無いので、実際は、端面による影響を評価して補正している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−49214号公報
【特許文献2】特開2009−63505号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
共軸二重円筒型回転粘度計は、端面による影響の補正が必要であり、特に粘度のずり速度依存性の大きな試料の測定において、端面補正量の変動が問題となる。端面補正については従来から種々提案されており、本出願人等も内筒下面での補正量について先に特許文献2を提案している。しかしながら、内筒上面での端面補正量については、正確な補正量を求めることが困難であった。
また、共軸二重円筒型回転粘度計は、試料部の温度を制御するため、外筒を液体恒温槽に入れて温度制御することが行われてきた。しかしながら、内筒上部の内筒軸を伝わって熱伝達が発生するので、試料の温度制御を高精度にするのに限界があった。
また、共軸二重円筒型回転粘度計は、軸の保持位置が測定部である内筒の位置と離れており、片持ち支持の構成となるので、内筒を交換する等の操作時に、軸受けを損傷する危険性を持っている。
そこで、本発明の課題は、上記3つの問題点を解決した外筒回転方式の共軸二重円筒型回転粘度計を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するために、本発明は、外筒回転方式の共軸二重円筒型回転粘度計において、内筒軸の外側に固定ガード軸を設置し、この固定ガード軸に複数の機能を持たせ、同時に、或いは、必要に応じて選択された機能を固定ガード軸に持たせることにより、上記の3つの課題を解決するものである。
【0006】
すなわち、本発明は、同一中心軸をもつ外筒及び内筒と、外筒を回転駆動させる回転機構と、内筒上部に固定され軸受けで回転軸支された内筒軸と、内筒軸に設けたトルク検出機構を備え、前記外筒を回転させることにより外筒と内筒の間に満たされた試料流体を層流状態で回転流動させ、内筒に作用するトルクを前記トルク検出機構で検出し粘度を測定する外筒回転方式の共軸二重円筒型回転粘度計であって、前記内筒軸の外側を囲む固定ガード軸を設け、当該固定ガード軸に、前記内筒軸の横方向の過大な変位を抑える内筒軸ガードを設けたことを特徴とする。
また、本発明は、同一中心軸をもつ外筒及び内筒と、外筒を回転駆動させる回転機構と、内筒上部に固定され軸受けで回転軸支された内筒軸と、内筒軸に設けたトルク検出機構を備え、前記外筒を回転させることにより外筒と内筒の間に満たされた試料流体を層流状態で回転流動させ、内筒に作用するトルクを前記トルク検出機構で検出し粘度を測定する外筒回転方式の共軸二重円筒型回転粘度計であって、前記内筒軸の外側を囲む固定ガード軸を設け、当該固定ガード軸に、前記内筒と同じ半径の内筒上面ガード円筒を僅かな隙間を挟んで内筒周面を上に延長する位置に設けたことを特徴とする。
また、本発明は、同一中心軸をもつ外筒及び内筒と、外筒を回転駆動させる回転機構と、内筒上部に固定され軸受けで回転軸支された内筒軸と、内筒軸に設けたトルク検出機構を備え、前記外筒を回転させることにより外筒と内筒の間に満たされた試料流体を層流状態で回転流動させ、内筒に作用するトルクを前記トルク検出機構で検出し粘度を測定する外筒回転方式の共軸二重円筒型回転粘度計であって、前記外筒を入れ前記試料流体の温度を所定温度に保持する恒温槽を備え、前記内筒軸の外側を囲む固定ガード軸を設け、当該固定ガード軸に、温度調節部材を設けたことを特徴とする。
また、本発明は、同一中心軸をもつ外筒及び内筒と、外筒を回転駆動させる回転機構と、内筒上部に固定され軸受けで回転軸支された内筒軸と、内筒軸に設けたトルク検出機構を備え、前記外筒を回転させることにより外筒と内筒の間に満たされた試料流体を層流状態で回転流動させ、内筒に作用するトルクを前記トルク検出機構で検出し粘度を測定する外筒回転方式の共軸二重円筒型回転粘度計であって、前記外筒を入れ前記試料流体の温度を所定温度に保持する恒温槽を備え、前記内筒軸の外側を囲む固定ガード軸を設け、当該固定ガード軸に、温度調節部材を固設し、さらに、当該固定ガード軸に、前記内筒と同じ半径の内筒上面ガード円筒を僅かな隙間を挟んで内筒周面を上に延長する位置に設けたことを特徴とする。
また、本発明は、上記外筒回転方式の共軸二重円筒型回転粘度計において、前記固定ガード軸に、前記内筒軸の横方向の過大な変位を抑える内筒軸ガードを設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の固定ガード軸に設けた内筒軸ガードによれば、内筒軸に過大な力が掛かって変位したとしても軸受けが損壊しない変位に抑えられる様、狭い内筒軸との間隔で設計されているので、内筒軸が大きく偏芯しようとした時に内筒軸ガードに当たり、それ以上の偏芯が起こらなくなり、軸受けの損傷を防ぐことができる。
本発明の固定ガード軸に設けた内筒上面ガード円筒によれば、内筒の上面に関しては、端面補正を不要とすることができる。
本発明の固定ガード軸に設けた温度調節部材によれば、固定ガード軸の温度を恒温槽、或いは、内筒の温度と同じになるように制御してやれば、外筒上部、或いは、内筒と温度勾配が無くなり、結果として試料温度の制御性が良くなる。
また、本発明の内筒軸ガード、内筒上面ガード円筒、温度調節部材は、単独でも、2つ以上同時でも固定軸ガードに設けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本発明の外筒回転方式の共軸二重円筒型回転粘度計の一実施例を示したものである。
【
図2】
図2は、本発明の内筒上面ガード円筒を説明するための図であり、左図が従来の外筒回転方式の共軸二重円筒型回転粘度計(固定ガード軸・内筒上面ガード円筒無し)の場合、右図が本発明の固定ガード軸・内筒上面ガード円筒を有する外筒回転方式の共軸二重円筒型回転粘度計の場合を示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の固定ガード軸は、内筒を上部から支持するための軸部分(内筒軸)の周囲を囲む状態に配置される中空の軸である。本考案では外筒回転方式の共軸二重円筒型回転粘度計を想定しており、内筒と内筒軸はトルク測定のために不必要なトルクが作用しないように懸架されている。内筒のトルク測定感度を高めるために、内筒と内筒軸は繊細な軸受けを必要とし、比較的壊れやすい構造の構成となっている。これに対し、固定ガード軸は、直接内筒及び内筒軸に接しておらず、剛性の高い構造体である。剛性の高い構造体を内筒軸の外に配置することで下記3種類の機能を持たせることができる。
(1)外筒回転方式の共軸二重円筒型回転粘度計の原理は、無限に長い二重円筒を規定しているが、長い円筒の一部を測定部の円筒とし、両端を非常に小さい間隔で力学的に隔てられた状態で、幾何学的に一つの円筒となるような構成とすれば、測定部分の円筒は、共軸二重円筒型回転粘度計の原理を満たす状態にでき、端面補正が不要になる。本発明では、固定ガード軸を内筒と一致する半径と軸心をもつ円筒とし、内筒に充分接近させれば、内筒の上面に関しては、測定原理を満たし、端面補正を不要とすることができる。
(2)外筒回転方式の共軸二重円筒型回転粘度計は外筒を液体恒温槽に入れることができるので、円錐平板型回転粘度計に比べて温度制御性能が優れている。しかし、内筒上部を細くすることはできないため、室温と恒温槽の温度に差がある場合は、外筒上部と内筒軸からの熱伝達により、内筒と試料の間に温度差ができてしまう。これに対し、本発明の固定ガード軸は、内筒軸を包む構造であり、外筒の上部に位置するので、固定ガード軸の温度を恒温槽、或いは、内筒の温度と同じになるように制御してやれば、外筒上部、或いは、内筒と温度勾配が無くなり、結果として試料温度の制御性が良くなる。
(3)内筒軸に横方向の力が加わった時、繊細な軸受けで支えられている内筒軸は軸受けの変形により、軸心から偏芯してゆく。偏芯が許容範囲を超えると、軸受けの損傷を引き起こしてしまう。これに対し、固定ガード軸を内筒軸に対し充分間隔が小さい状態に配置して設けておけば、内筒軸が偏芯した時に内筒軸ガードに当たり、それ以上の偏芯が起こらなくなり軸受けの損傷を防ぐことができる。
上記3つの機能は個別に達成できるが、いずれか2つの機能または3つ全ての機能を同時に1つの固定ガード軸に組み込むこともできる。
【実施例】
【0010】
図1は、本発明の固定ガード軸を備えた外筒回転方式の共軸二重円筒型回転粘度計の一実施例を示したものであり、図示のものは上記3つの全ての機能を1つの固定ガード軸に組み込んだ例である。
図1に示す様に、昇降装置(i)の上に載置された恒温槽(d)に二重円筒を入れ、二重円筒の外筒(j)とその中で共軸に保持される内筒(c)との間に測定試料が入り、内筒(c)は内筒軸の下端に固定されており、トルクを検出するトルク検出機構(a,e,f)を内筒軸側に有し、外筒(j)を回転させる回転機構(g,h)をもつ構成となっている。内筒側は、トルクを検出するために、エアベアリングなどの回転の抵抗が小さい軸受け(b)によって支えられている。なお、図示の例では、外筒の回転により試料が層流状態で回転流動し試料の粘性に応じたトルクが内筒に作用しこのトルクを検出する検出機構としては、内筒軸の上部に設けた回転位置検出器(e)で基準位置からの回転変位量を検出し、制御手段(f)が常に基準位置に戻るようにトルク付与手段(a)に流す電流量を制御することによりトルクを検出する検出機構を用いたが、トルクが検出できるものであればどのような検出機構でもよく、また、外筒(j)の回転機構としては、モータ(g)と歯車伝達機構(h)を用いたがこれに限定されるものではない。
【0011】
次に、本発明の特徴である上記3つの機能を備える点について以下に説明する。
本実施例では、まず、トルク測定を高感度にするために軸受け(b)は壊れやすい物が多いことに鑑み、強固なベース板(q)に直接固定できる固定ガード軸(k)を設置すれば、内筒軸の限界を超える変位を抑える内筒軸ガード(m)を設置できる。
図1に示すように、固定ガード軸(k)に取り付けられた内筒軸ガード(m)は、内筒軸に力が掛かって変位したとしても軸受けが損壊しない変位に抑えられる様、狭い内筒軸との間隔で設計されている。
本実施例では、これに加え、内筒(c)と同じ半径の内筒上面ガード円筒(n)を僅かな隙間を挟んで内筒(c)の周面を上側に延長する様に固定軸ガード(k)に設置すると、内筒上面の流体の流れを無くすことができ、内筒上面に関しては、共軸二重円筒の原理に則った流れを実現できる。これにより、共軸二重円筒の長所である試料の量を厳密にしなくても精度良く測定できるという特徴を損ねること無く、測定試料のずり速度がより厳密に定まるという円錐平板型の長所に近づけることができる(すなわち、試料の量の違いにより試料液面が変動しても内筒上面に働こうとする試料流体の流動によるトルクは、内筒上面ガード円筒(n)により遮断できるので試料液面が上下したとしても内筒上面への影響が及ばない)。尚、内筒下端部の非理想性に関しては、例えば、上記特許文献2記載の円錐形状を導入して外筒との間隔を半径に比例する形状とする、或いは、
図1の如く、内外筒共半球面形状とすることで、係る非理想性の影響を緩和することが可能である。
本実施例では、さらに、内筒上面部の適当な場所にヒータやペルチェ素子のような発熱・吸熱作用を持つ温度調節部材(o)を設置し、その場所の温度を制御すると、内筒軸のこの部材の位置から内筒上面までの温度勾配を小さくでき、内筒の温度制御性能を高めることができる。なお、
図1の熱交換器(p)は、温度調節部材(o)がペルチェ素子の場合に、外部に熱を逃がす必要性により設置される。熱交換器(p)と温度調節部材(o)は、ヒートパイプ等で熱伝達される。さらに、追加するならば、この様にヒートパイプ等を用いて外部と熱交換する仕組みが導入されると、内筒軸の上部は外部の、即ち、装置の環境温度に近くなる。このことにより、内筒軸の熱膨張の影響、或いは、装置内部への測定部の熱の影響が軽減できる。この仕組みも、固定ガード軸(k)を備えることで可能になる。
【0012】
図2は、内筒上面ガード円筒(n)の有する機能について説明するための図であって、左図が従来の外筒回転方式の共軸二重円筒型回転粘度計(固定ガード軸・内筒上面ガード円筒無し)の場合、右図が本発明の固定ガード軸・内筒上面ガード円筒を有する外筒回転方式の共軸二重円筒型回転粘度計の場合を示したものである。
左図の従来の構成では、外筒(j)が回転軸(t)の周りに回転したとき、内筒(c)は共軸二重円筒部のトルク(中央矢印参照)の他に、内筒(c)の上面、及び、内筒(c)の下面も測定試料流体の流動によるトルクを受け、このトルクの合計が内筒軸(s)の上部に設けた図示しないトルク検出機構で検出される。内筒の上面及び下面に受けるトルクは、共軸二重円筒方式の特徴である粘度のずり速度依存性の測定に関しては誤差要因となるので、排除することが望ましい。このため、下面からのトルク(下面へ向かう矢印参照)に関しては、右図下部の例示の如く、内筒底面部と外筒底面部の間隔が中心軸からの半径に比例し、最外周では内筒側面と外筒側面の間隔に一致するようにすれば、誤差要因を緩和することができる(特許文献2参照)、あるいは、
図1の如く、内筒底面部と内筒側面をなだらかに半球面で接続した方がより良く誤差要因の緩和が可能である。しかしながら、内筒上面に働くトルク(上面に向かう矢印参照)に関しては、従来の構成では、構造的に緩和することはできない。そのため、例えば、試料量を正確に管理しないと、試料量の増減により試料液面が変動し、液面が変動すると内筒上面に働くトルクの大きさも変動するので測定の誤差要因となる。
右図は本発明の構成を示したものであって、内筒側面を上に延長する位置に内筒上面ガード円筒(n)を備えており、図示しない固定ガード軸(k)に一体的に固定されている。内筒上面ガード円筒(n)は、回転する外筒(j)により回転流動する試料の流れを遮断するので、内筒上面の試料の流動を無くすことができ、内筒上面に働く粘度のずり速度依存性の測定の誤差要因となるトルクを内筒上面ガード円筒(n)で構造的に遮断できる(上部矢印参照)。
【0013】
上記実施例は、内筒軸を囲む固定ガード軸(k)に、内筒軸ガード(m)、内筒上面ガード円筒(n)、温度調節部材(o)の3つ全てを固設した例で説明したが、内筒軸ガード(m)、内筒上面ガード円筒(n)、温度調節部材(o)の少なくとも1つを固設することによってもそれぞれの効果が得られることは言うまでもない。
また、内筒軸ガード(m)、内筒上面ガード円筒(n)、温度調節部材(o)は、固定ガード(k)に固設する例で説明したが、固定ガードに一体的に作り込むこともできる。
【産業上の利用可能性】
【0014】
上記説明では回転粘度計として説明したが、レオメータとしても用いることができる。