特許第6202390号(P6202390)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6202390
(24)【登録日】2017年9月8日
(45)【発行日】2017年9月27日
(54)【発明の名称】電線及びケーブル
(51)【国際特許分類】
   C08L 23/04 20060101AFI20170914BHJP
   C08K 5/151 20060101ALI20170914BHJP
   C08K 5/1539 20060101ALI20170914BHJP
   C08K 5/5415 20060101ALI20170914BHJP
   H01B 3/44 20060101ALI20170914BHJP
   H01B 7/02 20060101ALI20170914BHJP
   H01B 7/18 20060101ALI20170914BHJP
   H01B 7/28 20060101ALI20170914BHJP
【FI】
   C08L23/04
   C08K5/151
   C08K5/1539
   C08K5/5415
   H01B3/44 M
   H01B3/44 D
   H01B7/02 F
   H01B7/18 H
   H01B7/28 Z
【請求項の数】10
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2013-263135(P2013-263135)
(22)【出願日】2013年12月20日
(65)【公開番号】特開2014-141650(P2014-141650A)
(43)【公開日】2014年8月7日
【審査請求日】2016年3月18日
(31)【優先権主張番号】特願2012-284790(P2012-284790)
(32)【優先日】2012年12月27日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】日立金属株式会社
(72)【発明者】
【氏名】杉田 敬祐
(72)【発明者】
【氏名】中山 明成
【審査官】 今井 督
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−084683(JP,A)
【文献】 特開2011−084684(JP,A)
【文献】 特開2012−028123(JP,A)
【文献】 特開2004−281057(JP,A)
【文献】 特開2009−298830(JP,A)
【文献】 特開2009−298831(JP,A)
【文献】 特開2011−049116(JP,A)
【文献】 特開2007−207638(JP,A)
【文献】 特開2006−310093(JP,A)
【文献】 特開2000−198925(JP,A)
【文献】 特開2008−033147(JP,A)
【文献】 特開2002−212355(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 23/00− 23/36
C08K 3/00− 13/08
H01B 3/00− 3/56
H01B 7/00− 7/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導体と、該導体の外周に被覆された絶縁体と、を有する電線において、
前記絶縁体の最外層は、エチレン系共重合体100質量部に対し、エポキシ基を有するモノマー、酸無水物、及びシランカップリング剤のうちいずれか一つを0.1〜20質量部含有した樹脂組成物が架橋処理された架橋樹脂組成物であり、
前記絶縁体の最外層がポリブチレンテレフタレート樹脂またはポリアミド樹脂からなるモールド樹脂成形体で被覆され、
前記絶縁体の最外層と前記モールド樹脂成形体との間に気密性を有しており、−40℃×30分、125℃×30分の条件でヒートショック試験を1000サイクル実施し、前記モールド樹脂成形体が水に浸るようにした状態で前記電線の端末に30kPaで圧縮空気を30秒間送り込んだ際に前記モールド樹脂成形体と前記電線の間から気泡が出ないことを特徴とする電線。
【請求項2】
前記架橋処理は、電子線照射架橋である請求項1に記載の電線。
【請求項3】
前記エチレン系共重合体が、エチレン酢酸ビニル共重合体である請求項1または2に記載の電線。
【請求項4】
前記樹脂組成物は、エチレン系共重合体100質量部に対し、エポキシ基を有するモノマー、酸無水物、及びシランカップリング剤のうちいずれか一つを5〜20質量部含有している請求項1乃至3のいずれか1項に記載の電線。
【請求項5】
導体と該導体の外周に被覆された絶縁体とを有する電線と、該電線を1本または複数本束ねたもの或いは複数本撚り合わせたものの外周に被覆されたシースと、を有するケーブルにおいて、
前記シースの最外層は、エチレン系共重合体100質量部に対し、エポキシ基を有するモノマー、酸無水物、及びシランカップリング剤のうちいずれか一つを0.1〜20質量部含有した樹脂組成物が架橋処理された架橋樹脂組成物であり、
前記シースの最外層がポリブチレンテレフタレート樹脂またはポリアミド樹脂からなるモールド樹脂成形体で被覆され、
前記シースの最外層と前記モールド樹脂成形体との間の気密性が保たれており、−40℃×30分、125℃×30分の条件でヒートショック試験を1000サイクル実施し、前記モールド樹脂成形体が水に浸るようにした状態で前記ケーブルの端末に30kPaで圧縮空気を30秒間送り込んだ際に前記モールド樹脂成形体と前記ケーブルの間から気泡が出ないことを特徴とするケーブル。
【請求項6】
前記架橋処理は、電子線照射架橋である請求項記載のケーブル。
【請求項7】
前記エチレン系共重合体が、エチレン酢酸ビニル共重合体である請求項5または6記載のケーブル。
【請求項8】
前記樹脂組成物は、エチレン系共重合体100質量部に対し、エポキシ基を有するモノマー、酸無水物、及びシランカップリング剤のうちいずれか一つを5〜20質量部含有している請求項5乃至7のいずれか1項に記載のケーブル。
【請求項9】
前記絶縁体の最外層は、エチレン系共重合体100質量部に対し、エポキシ基を有するモノマー、酸無水物、及びシランカップリング剤のうちいずれか一つを0.1〜20質量部含有した樹脂組成物が架橋処理された架橋樹脂組成物である請求項5乃至8のいずれか1項に記載のケーブル。
【請求項10】
前記絶縁体の最外層における前記樹脂組成物は、エチレン系共重合体100質量部に対し、エポキシ基を有するモノマー、酸無水物、及びシランカップリング剤のうちいずれか一つを5〜20質量部含有しており、
前記モールド樹脂成形体は、前記絶縁体の最外層ごと前記シースの最外層を被覆している
請求項に記載のケーブル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モールド樹脂成形体との接着性を確保した架橋樹脂組成物、これを用いた電線及びケーブルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
電線・ケーブルにセンサーなどの機器部品や電極端子、その他の電子回路を接続する場合、その接続部およびその周囲をモールド樹脂によって被覆し保護することが一般的に実施されている。これらのセンサー類は高い信頼性が要求される自動車、ロボット、電子機器等に使用されるため、モールド樹脂成形体と電線・ケーブルの間の防水性、気密性は極めて重要な特性の一つである。このため、接着性に優れるモールド樹脂成形体と電線・ケーブル被覆材の組み合わせを使用することが重要である。
【0003】
上記のような用途では電線・ケーブルの被覆材として熱可塑性ポリウレタンが一般的に使用されており、モールド樹脂としてはポリブチレンテレフタレート樹脂やポリアミド樹脂が主に使用される。
【0004】
一方、電線・ケーブルには近年益々高い耐熱性が要求されており、例えば、被覆材として電子線照射などにより架橋処理を施した熱可塑性ポリウレタン等の架橋樹脂組成物が適用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−156407号公報
【特許文献2】特開2007−95439号公報
【特許文献3】特開2011−49116号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、架橋処理を施した熱可塑性ポリウレタン等の架橋樹脂組成物を電線・ケーブルの最外層の被覆材に適用すると、モールド樹脂との接着性が低下し、防水性、気密性が保たれないという問題があった。
また、電線・ケーブルの最外層においては、外観の良好性も要求される。
【0007】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解決し、モールド樹脂との接着性に優れながらも、外観の良好性に優れた架橋樹脂組成物、これを用いた電線及びケーブルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、エチレン系共重合体100質量部に対し、エポキシ基を有するモノマー、酸無水物、及びシランカップリング剤のうちいずれか一つを0.1〜20質量部含有した樹脂組成物が架橋処理されていることを特徴とする架橋樹脂組成物である。
【0009】
請求項2の発明は、前記架橋処理は、電子線照射架橋である請求項1記載の架橋樹脂組成物である。
【0010】
請求項3の発明は、前記エチレン系共重合体が、エチレン酢酸ビニル共重合体である請求項1または2記載の架橋樹脂組成物である。
【0011】
請求項4の発明は、前記樹脂組成物は、エチレン系共重合体100質量部に対し、エポキシ基を有するモノマー、酸無水物、及びシランカップリング剤のうちいずれか一つを5〜20質量部含有している請求項1乃至3のいずれか1項に記載の架橋樹脂組成物である。
【0012】
請求項5の発明は、導体と、該導体の外周に被覆された絶縁体と、を有する電線において、前記絶縁体の最外層は、エチレン系共重合体100質量部に対し、エポキシ基を有するモノマー、酸無水物、及びシランカップリング剤のうちいずれか一つを0.1〜20質量部含有した樹脂組成物が架橋処理された架橋樹脂組成物であることを特徴とする電線である。
【0013】
請求項6の発明は、 前記架橋処理は、電子線照射架橋である請求項5に記載の電線。
【0014】
請求項7の発明は、前記エチレン系共重合体が、エチレン酢酸ビニル共重合体である請求項5または6に記載の電線である。
【0015】
請求項8の発明は、前記絶縁体の最外層がポリブチレンテレフタレート樹脂またはポリアミド樹脂からなるモールド樹脂成形体で被覆されている請求項5乃至7のいずれか1項に記載の電線である。
【0016】
請求項9の発明は、前記樹脂組成物は、エチレン系共重合体100質量部に対し、エポキシ基を有するモノマー、酸無水物、及びシランカップリング剤のうちいずれか一つを5〜20質量部含有している請求項8に記載の電線である。
【0017】
請求項10の発明は、導体と該導体の外周に被覆された絶縁体とを有する電線と、該電線を1本または複数本束ねたもの或いは複数本撚り合わせたものの外周に被覆されたシースと、を有するケーブルにおいて、前記シースの最外層は、エチレン系共重合体100質量部に対し、エポキシ基を有するモノマー、酸無水物、及びシランカップリング剤のうちいずれか一つを0.1〜20質量部含有した樹脂組成物が架橋処理された架橋樹脂組成物であることを特徴とするケーブルである。
【0018】
請求項11の発明は、前記架橋処理は、電子線照射架橋である請求項10記載のケーブルである。
請求項12の発明は、前記エチレン系共重合体が、エチレン酢酸ビニル共重合体である請求項10または11記載のケーブルである。
請求項13の発明は、前記シースの最外層がポリブチレンテレフタレート樹脂またはポリアミド樹脂からなるモールド樹脂成形体で被覆されている請求項10乃至12のいずれか1項に記載のケーブルである。
請求項14の発明は、前記樹脂組成物は、エチレン系共重合体100質量部に対し、エポキシ基を有するモノマー、酸無水物、及びシランカップリング剤のうちいずれか一つを5〜20質量部含有している請求項13に記載のケーブルである。
請求項15の発明は、前記絶縁体の最外層は、エチレン系共重合体100質量部に対し、エポキシ基を有するモノマー、酸無水物、及びシランカップリング剤のうちいずれか一つを0.1〜20質量部含有した樹脂組成物が架橋処理された架橋樹脂組成物である請求項10乃至14のいずれか1項に記載のケーブルである。
請求項16の発明は、前記絶縁体の最外層における前記樹脂成型物は、エチレン系共重合体100質量部に対し、エポキシ基を有するモノマー、酸無水物、及びシランカップリング剤のうちいずれか一つを5〜20質量部含有しており、前記モールド樹脂成形体は、前記絶縁体の最外層ごと前記シースの最外層を被覆している請求項15に記載のケーブルである。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、モールド樹脂との接着性に優れながらも、外観の良好性に優れた架橋樹脂組成物、これを用いた電線及びケーブルを提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の架橋樹脂組成物を絶縁体として用いた電線の詳細断面図である。
図2】本発明の架橋樹脂組成物を絶縁体外層として用いた電線の詳細断面図である。
図3】本発明の架橋樹脂組成物を絶縁体外層として用いたケーブルの詳細断面図である。
図4】本発明の架橋樹脂組成物をシースとして用いたケーブルの詳細断面図である。
図5】本発明の架橋樹脂組成物をシース外層として用いたケーブルの詳細断面図である。
図6】本発明の架橋樹脂組成物を絶縁体外層およびシース外層として用いたケーブルの詳細断面図である。
図7】本発明の架橋樹脂組成物を絶縁体として用いたケーブルにセンサーを接続し、接続部およびその周囲をモールド樹脂によって被覆したモールド加工品のモールド樹脂成形体30の内部を示す図である(ケーブル20の部分は平面図)。
図8】本発明の架橋樹脂組成物をシースとして用いたケーブルにセンサーを接続し、接続部およびその周囲をモールド樹脂によって被覆したモールド加工品のモールド樹脂成形体30の内部を示す図である(ケーブル20の部分は平面図)。
図9】本発明及び比較例における電線にモールド樹脂成形体を施したときの電線とモールド樹脂成形体の気密性を試験する試験装置の概略を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の好適な一実施の形態を添付図面に基づいて詳述する。
【0022】
先ず、本発明の架橋樹脂組成物が適用される電線とケーブルを説明する。
【0023】
図1図6は、本発明の架橋樹脂組成物を用いた電線及びケーブルの構造を示したものである。
【0024】
図1は、導体1に、樹脂組成物を絶縁体2として押出被覆し、これを電子線照射して架橋処理し、絶縁体2を本発明の架橋樹脂組成物とした電線10を示している。
【0025】
図2は、導体1に、絶縁体内層3と樹脂組成物を絶縁体外層4として押出被覆し、これを電子線照射して架橋処理し、絶縁体外層4を本発明の架橋樹脂組成物とした電線10を示している。
【0026】
図3は、図2に示した絶縁体外層4に本発明の架橋樹脂組成物を用いた電線10を2本撚り合わせた多芯撚り線5の外周に、シース6を押出被覆したケーブル20を示している。
【0027】
図4は、図1に示した電線10を2本撚り合わせた多芯撚り線5の外周に、樹脂組成物からなるシース6を押出被覆し、これを電子線照射して架橋処理し、シース6を架橋樹脂組成物としたケーブル20を示している。
【0028】
図5は、図1に示した電線10を2本撚り合わせた多芯撚り線5の外周に、シース内層7と樹脂組成物からなるシース外層8を押出被覆し、これを電子線照射して架橋処理し、シース外層8を架橋樹脂組成物としたケーブル20を示している。
【0029】
図6は、図2に示した絶縁体外層4に本発明の架橋樹脂組成物を用いた電線10を2本撚り合わせた多芯撚り線5の外周に、シース内層7と樹脂組成物からなるシース外層8を押出被覆し、これを電子線照射して架橋処理し、シース外層8を本発明の架橋樹脂組成物としたケーブル20を示している。
【0030】
本発明の架橋樹脂組成物は、図7図8のポリブチレンテレフタレート樹脂やポリアミド樹脂からなるモールド樹脂成形体30との接着性、気密性を高めることが可能である。
【0031】
図7は、本発明の架橋樹脂組成物を絶縁体として用いたケーブルにセンサーを接続し、接続部およびその周囲をモールド樹脂によって被覆したモールド加工品のモールド樹脂成形体30の内部を示す図である(ケーブル20の部分は平面図)。具体的には、ケーブル20の端部におけるシース6が剥ぎ取られて、シース6から電線10の端部が露出している。そして、この露出した電線10の端部における絶縁体内層3及び絶縁体外層4が剥ぎ取られて、絶縁体内層3及び絶縁体外層4から導体1が露出している。さらに、この露出した導体1がセンサー32の端子部31に接続されている。図7においては、モールド樹脂成形体30は、センサー32、端子部31、及び導体1を絶縁体外層4ごと被覆している。
【0032】
図8は、本発明の架橋樹脂組成物をシースとして用いたケーブルにセンサーを接続し、接続部およびその周囲をモールド樹脂によって被覆したモールド加工品のモールド樹脂成形体30の内部を示す図である(ケーブル20の部分は平面図)。具体的には、ケーブル20の端部におけるシース6が剥ぎ取られて、シース6から電線10の端部が露出している。そして、この露出した電線10の端部における絶縁体内層3及び絶縁体外層4が剥ぎ取られて、絶縁体内層3及び絶縁体外層4から導体1が露出している。さらに、この露出した導体1がセンサー32の端子部31に接続されている。図8においては、モールド樹脂成形体30は、センサー32、端子部31、導体1、及び絶縁体外層4をシース6の最外層ごと被覆している。このとき、絶縁体外層4及びシース6のいずれにも、本発明の架橋樹脂組成物を使用している。
【0033】
これによりモールド樹脂成形体30と本発明の樹脂組成物からなる絶縁体外層4やシース6との接着性、気密性が良好となる。
【0034】
本発明者らは、ポリブチレンテレフタレート樹脂やポリアミド樹脂からなるモールド樹脂と接する電線又はケーブルの最外被覆層の材料について鋭意検討した結果、エチレン系共重合体に特定の官能基を持つモノマーや特定の物質を含有させ、架橋処理を施した樹脂組成物を用いることで、モールド樹脂との接着性が高く保持できることを見出し、本発明に至った。
【0035】
すなわち、本発明は、エチレン系共重合体100質量部に対し、エポキシ基を有するモノマー、酸無水物、及びシランカップリング剤のうちいずれか一つを0.1〜20質量部含有した樹脂組成物からなり、該樹脂組成物が架橋処理されていることを特徴とする架橋樹脂組成物である。
【0036】
本発明は、エチレン系共重合体に、酸無水物、シランカップリング剤、エポキシ基を有するモノマーを含有させ、これを導体等に押出被覆後に電子線照射等で架橋させることで、エチレン系共重合体と、酸無水物、シランカップリング剤、エポキシ基を有するモノマー等が重合し、その状態で、ポリブチレンテレフタレート樹脂やポリアミド樹脂からなるモールド樹脂と接することで、接着性、気密性が向上するものである。さらに、電子線照射することにより、全体を架橋させることができるので耐熱性を向上させることができる。
【0037】
本発明におけるエチレン系共重合体には、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、エチレンブテン−1共重合体、エチレンヘキセン−1共重合体、エチレンオクテン−1共重合体、エチレン酢酸ビニル共重合体、エチレンメチルアクリレート共重合体、エチレンエチルアクリレート共重合体、エチレンメチルメタクリレート共重合体、エチレンブチルアクリレート共重合体、エチレンブテンヘキセン三元共重合体などが挙げられ、これらを単独もしくは2種以上ブレンドして用いることができる。メルトインデックスは特に限定されるものではない。
【0038】
上記のエチレン系共重合体のなかでも、エチレン酢酸ビニル共重合体がモールド樹脂との接着性の観点から好適である。本発明におけるエチレン酢酸ビニル共重合体の酢酸ビニル含有量およびメルトインデックスは特に限定されない。
【0039】
本発明で使用できる酸無水物としては、無水マレイン酸、無水フタル酸などが挙げられる。
【0040】
シランカップリング剤としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン等のビニルシラン化合物、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、β−(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノシラン化合物、β−(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン等のエポキシシラン化合物、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のアクリルシラン化合物、ビス(3−(トリエトキシシリル)プロピル)ジスルフィド、ビス(3−(トリエトキシシリル)プロピル)テトラスルフィドなどのポリスルフィドシラン化合物、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシランなどのメルカプトシラン化合物等を挙げることができる。
【0041】
エポキシ基を有するモノマーには、1−ビニルシクロヘキサン−3,4−エポキシド、リモネンモノオキシド、1,3−ブタジエンモノエポキシド、1,2−エポキシ−9−デセン、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、ビニルグリシジルエーテルなどが使用できる。
【0042】
酸無水物、シランカップリング剤、エポキシ基を有するモノマーの含有量は、エチレン系共重合体100質量部に対し、0.1〜20質量部含有させるのがよい。0.1質量部より少ないとモールド樹脂との接着性が十分に得られない。また、20質量部より多いと、含有させた酸無水物、シランカップリング剤、又はエポキシ基を有するモノマーが絶縁体やシース表面に析出(ブリードアウト)し(ブルーム)、電線又はケーブルの外観が著しく損なわれる。
【0043】
上記の酸無水物、シランカップリング剤、エポキシ基を有するモノマーはあらかじめエチレン系共重合体に共重合もしくはグラフト共重合されていてもよい。また、エチレン系共重合体と単に混ぜ合わせたものを電線及びケーブルの絶縁体やシースとして押出被覆してもよい。この場合、電線及びケーブルを電子線照射した際に、エチレン系共重合体へのグラフト反応が起きると考えられる。
【0044】
あらかじめグラフト共重合させる場合は、既知の方法が使用でき、例えばエチレン系共重合体に酸無水物、シランカップリング剤、エポキシ基を有するモノマーを加え、さらに遊離ラジカル発生剤を添加し、高温で混練することでグラフト反応させることができる。
【0045】
遊離ラジカル発生剤としては、ジクミルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーポネート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、メチルエチルケトンパーオキサイド、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、クメンハイドロパーオキサイドなどの有機過酸化物が主として使用できる。
【0046】
本発明における架橋樹脂組成物には難燃剤を添加することが可能であり、トリアジン系、リン系難燃剤や水酸化マグネシウムなどの金属水酸化物などが好適である。トリアジン系難燃剤としては、メラミン、メラミンシアヌレート、メラミンフォスフェートなどが挙げられる。リン系難燃剤としては、赤燐、リン酸エステル、芳香族縮合リン酸エステル、ホスファゼン化合物などが挙げられる。これらの難燃剤の添加量は要求される難燃性に応じて自由に設定することができる。
【0047】
また、上記以外にも必要に応じてプロセス油、加工助剤、難燃助剤、架橋剤、架橋助剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、銅害防止剤、滑剤、無機充填剤、相溶化剤、安定剤、カーボンブラック、着色剤等の添加物を加えることも可能である。
【0048】
上記樹脂組成物を絶縁体またはシースの最外層として既知の方法で押出被覆後、電子線照射することで架橋処理し、本発明の電線及びケーブルを得ることができる。
【0049】
架橋させる際の電子線照射の線量は、架橋が十分に進行すればよく特に規定はないが、50〜200kGyが好ましい。
【0050】
本発明において、モールド樹脂との接着性に関与しない最外層以外の絶縁体やシースの材料としては熱可塑性ポリウレタンや一般的なポリオレフィンが使用でき、特に限定するものではない。
【0051】
モールド樹脂にはポリブチレンテレフタレート樹脂またはポリアミド樹脂が好適であり、これらはガラス繊維によって強化されていることが望ましい。モールド樹脂は射出成形によって、電線・ケーブルとセンサーなどの機器部品や電極端子との接続部およびその周囲を被覆する。
【0052】
本発明の架橋樹脂組成物とモールド樹脂との接着性が良好となる理由は、エチレン系共重合体に含有させる酸無水物、シランカップリング剤、エポキシ基を有するモノマーは、その分子中にヒドロキシル基(−OH)及び/又はオキソ基(=O)からなる活性な官能基を有しており、これがポリブチレンテレフタレート樹脂またはポリアミド樹脂と結合して接着性を向上させるものと考えられる。
【実施例】
【0053】
以下に本発明の実施例を具体的に説明する。
【0054】
【表1】
【0055】
【表2】
【0056】
以下に実施例及び比較例の説明をする。
(実施例)
実施例1は、エチレン系共重合体である直鎖状低密度ポリエチレン100質量部に対し、酸無水物である無水マレイン酸を0.1質量部混ぜ合わせた樹脂組成物に電子線照射して架橋処理をした架橋樹脂組成物である。
実施例2は、エチレン系共重合体である直鎖状低密度ポリエチレン100質量部に対し、酸無水物である無水マレイン酸を5質量部混ぜ合わせた樹脂組成物に電子線照射して架橋処理をした架橋樹脂組成物である。
実施例3は、エチレン系共重合体である直鎖状低密度ポリエチレン100質量部に対し、酸無水物である無水マレイン酸を20質量部混ぜ合わせた樹脂組成物に電子線照射して架橋処理をした架橋樹脂組成物である。
実施例4は、エチレン系共重合体であるエチレンエチルアクリレート100質量部に対し、シランカップリング剤であるビニルトリメトキシシランを0.1質量部混ぜ合わせた樹脂組成物に電子線照射して架橋処理をした架橋樹脂組成物である。
実施例5は、エチレン系共重合体であるエチレンエチルアクリレート100質量部に対し、シランカップリング剤であるビニルトリメトキシシランを5質量部混ぜ合わせた樹脂組成物に電子線照射して架橋処理をした架橋樹脂組成物である。
実施例6は、エチレン系共重合体であるエチレンエチルアクリレート100質量部に対し、シランカップリング剤であるビニルトリメトキシシランを20質量部混ぜ合わせた樹脂組成物に電子線照射して架橋処理をした架橋樹脂組成物である。
実施例7は、エチレン系共重合体であるエチレン酢酸ビニル共重合体100質量部に対し、エポキシ基を有するモノマーであるグリシジルメタクリレートを0.1質量部混ぜ合わせた樹脂組成物に電子線照射して架橋処理をした架橋樹脂組成物である。
実施例8は、エチレン系共重合体であるエチレン酢酸ビニル共重合体100質量部に対し、エポキシ基を有するモノマーであるグリシジルメタクリレートを5質量部混ぜ合わせた樹脂組成物に電子線照射して架橋処理をした架橋樹脂組成物である。
実施例9は、エチレン系共重合体であるエチレン酢酸ビニル共重合体100質量部に対し、エポキシ基を有するモノマーであるグリシジルメタクリレートを20質量部混ぜ合わせた樹脂組成物に電子線照射して架橋処理をした架橋樹脂組成物である。
実施例10〜12は、エチレン系共重合体であるエチレン酢酸ビニル共重合体100質量部に対し、シランカップリング剤であるビニルトリメトキシシランを10質量部混ぜ合わせた樹脂組成物に電子線照射して架橋処理をした架橋樹脂組成物である。その他、実施例10では、難燃剤としてメラミンシアヌレートを20質量部、実施例11では、難燃剤として芳香族縮合リン酸エステルを10質量部、実施例12では、難燃剤として水酸化マグネシウムを75質量部、を混ぜ合わせている。
実施例13は、エチレン系共重合体である直鎖状低密度ポリエチレン100質量部に対し、酸無水物である無水マレイン酸を5質量部グラフト共重合させた樹脂組成物(無水マレイン酸グラフト直鎖状低密度ポリエチレン)に電子線照射して架橋処理をした架橋樹脂組成物である。
実施例14は、エチレン系共重合体であるエチレン酢酸ビニル共重合体100質量部に対し、シランカップリング剤であるビニルトリメトキシシランを5質量部グラフト共重合させた樹脂組成物(シラングラフトエチレン酢酸ビニル共重合体)に電子線照射して架橋処理をした架橋樹脂組成物である。
実施例15は、エチレン系共重合体である直鎖状低密度ポリエチレン100質量部に対し、エポキシ基を有するモノマーであるグリシジルメタクリレートを5質量部グラフト共重合させた樹脂組成物(グリシジルメタクリレートグラフト直鎖状低密度ポリエチレン)に電子線照射して架橋処理をした架橋樹脂組成物である。
実施例16は、エチレン系共重合体であるエチレンエチルアクリレート100質量部に対し、エポキシ基を有するモノマーであるグリシジルメタクリレートを5質量部グラフト共重合させた樹脂組成物(グリシジルメタクリレートグラフトエチレンエチルアクリレート)に電子線照射して架橋処理をした架橋樹脂組成物である。
実施例17は、エチレン系共重合体であるエチレン酢酸ビニル共重合体100質量部に対し、エポキシ基を有するモノマーであるグリシジルメタクリレートを0.1質量部グラフト共重合させた樹脂組成物(グリシジルメタクリレートグラフトエチレン酢酸ビニル共重合体)に電子線照射して架橋処理をした架橋樹脂組成物である。
実施例18は、エチレン系共重合体であるエチレン酢酸ビニル共重合体100質量部に対し、エポキシ基を有するモノマーであるグリシジルメタクリレートを5質量部グラフト共重合させた樹脂組成物(グリシジルメタクリレートグラフトエチレン酢酸ビニル共重合体)に電子線照射して架橋処理をした架橋樹脂組成物である。
実施例19は、エチレン系共重合体であるエチレン酢酸ビニル共重合体100質量部に対し、エポキシ基を有するモノマーであるグリシジルメタクリレートを20質量部グラフト共重合させた樹脂組成物(グリシジルメタクリレートグラフトエチレン酢酸ビニル共重合体)に電子線照射して架橋処理をした架橋樹脂組成物である。
【0057】
(比較例)
比較例1は、エチレン系共重合体である直鎖状低密度ポリエチレン100質量部に対し、酸無水物である無水マレイン酸を20質量部混ぜ合わせた樹脂組成物である。当該樹脂組成物には、架橋処理をしていない。
比較例2は、エチレン系共重合体である直鎖状低密度ポリエチレン100質量部に対し、酸無水物である無水マレイン酸を0.09質量部混ぜ合わせた樹脂組成物に電子線照射して架橋処理をした架橋樹脂組成物である。
比較例3は、エチレン系共重合体である直鎖状低密度ポリエチレン100質量部に対し、酸無水物である無水マレイン酸を21質量部混ぜ合わせた樹脂組成物に電子線照射して架橋処理をした架橋樹脂組成物である。
比較例4は、エチレン系共重合体である低密度ポリエチレン100質量部に対し、シランカップリング剤であるビニルトリメトキシシランを0.09質量部混ぜ合わせた樹脂組成物に電子線照射して架橋処理をした架橋樹脂組成物である。
比較例5は、エチレン系共重合体である低密度ポリエチレン100質量部に対し、シランカップリング剤であるビニルトリメトキシシランを21質量部混ぜ合わせた樹脂組成物に電子線照射して架橋処理をした架橋樹脂組成物である。
比較例6は、エチレン系共重合体であるエチレン酢酸ビニル共重合体100質量部に対し、エポキシ基を有するモノマーであるグリシジルメタクリレートを0.09質量部混ぜ合わせた樹脂組成物に電子線照射して架橋処理をした架橋樹脂組成物である。
比較例7は、エチレン系共重合体であるエチレン酢酸ビニル共重合体100質量部に対し、エポキシ基を有するモノマーであるグリシジルメタクリレートを21質量部混ぜ合わせた樹脂組成物に電子線照射して架橋処理をした架橋樹脂組成物である。
比較例8は、エチレン系共重合体であるエチレン酢酸ビニル共重合体100質量部に対し、エポキシ基を有するモノマーであるグリシジルメタクリレートを0.09質量部グラフト共重合させた樹脂組成物(グリシジルメタクリレートグラフトエチレン酢酸ビニル共重合体)に電子線照射して架橋処理をした架橋樹脂組成物である
【0058】
40mm押出機(L/D=24)を用い、表1の実施例および表2の比較例に示した絶縁体材料を構成7本/0.26mmの導体上に外径が1.5mmになるよう押出被覆した。得られた絶縁電線に電子線を150kGyで照射し架橋電線とした(ただし、比較例1においては、架橋処理をしていない)。
【0059】
作製した架橋電線は、以下の試験により評価した。
【0060】
耐熱試験として、上記電線を2.3mmφに3回巻付け、170℃の恒温槽内で6時間加熱した。取り出し後、室温になるまで放冷したのちに、外観に溶融または亀裂がないものを合格とした。
【0061】
絶縁体の架橋度の指標として、ゲル分率を測定した。電線から導体を取り除き、130℃の熱キシレン中で24時間抽出をおこない、(抽出後の残存ゲル質量)/(抽出前の絶縁体質量)×100(%)をゲル分率とした。
【0062】
ブルームの有無は、電線を23℃、50%RH環境下で1週間放置後の電線外観を観察し評価した。ブルームのないものを○、ブルームが激しく外観を損ねるものを×とした。
【0063】
気密性評価には、図9に示すように電線10の片端にポリアミド(ガラス繊維:30質量%)レニー1002F(三菱エンジニアリングプラスチックス製)、またはポリブチレンテレフタレート(ガラス繊維:30質量%)ノバデュラン5010G30×4(三菱エンジニアリングプラスチックス製)を射出成形でモールド成形(直径φ15mm、長さ20mm、電線挿入長さ15mm)して、モールド樹脂成形体30として端末を封止したものをサンプルとした。得られたサンプルについて、−40℃×30分、125℃×30分の条件でヒートショック試験を1000サイクル実施した。
【0064】
その後、図9に示すようにサンプルを、モールド樹脂成形体30が水槽33の水34に浸るようにした状態で、電線10の端末に空気供給機35から30kPaで圧縮空気を30秒間送り込んだ。その間にモールド樹脂成形体30と電線10の間から気泡36が出ないものを合格とした。さらに、合格と判定したモールド加工品について、樹脂成形体30を保持治具等により保持させ、その状態で電線10をモールド樹脂成形体30から引き抜き、破壊の形態を調べた。各50本試験し、すべて合格し、引き抜き時にモールド樹脂が破壊したものを◎、すべて合格し、引き抜き時に界面破壊したもの(つまり、モールド樹脂成形体30から電線10が剥がれたもの)を○とした。合格数が50本未満のものは×と判定した(◎は、○よりも接着性が強いことを示している)。つまり、当該評価は、電線10とモールド樹脂成形体30との接着性の強さを評価するものであり、この接着性が強ければそれだけ高い気密性があり、高い防水性があると評価することができる。
【0065】
実施例1〜19では、耐熱性評価において溶融や亀裂がなく、ブルームもみられなかった。また、気密性評価では、モールド樹脂としてポリアミド、ポリブチレンテレフタレートのいずれを用いても○や◎となり、良好な気密性が得られた。特にエチレン酢酸ビニル共重合体を用い、無水マレイン酸、ビニルトリメトキシシラン、グリシジルメタクリレートを5〜20質量部を含有させた実施例8〜11及び実施例18〜19は、表1において◎が付いている通り、モールド樹脂との接着性が強く、引き抜き時にモールド樹脂が破壊するものが多くみられ、接着性が特によいことが確かめられた。つまり、実施例8〜11及び実施例18〜19は、特に高い気密性を得られ、高い防水性を得られることが確かめられた。
【0066】
一方、比較例1では、電子線照射による架橋処理が施されていないため耐熱試験において絶縁体の溶融がみられた。比較例2、4、6、8では、酸無水物、シランカップリング剤、エポキシ基を有するモノマーの添加量が規定の0.1質量部より少なく、モールド樹脂との間の気密性が不十分である。また比較例3、5、7では、酸無水物、シランカップリング剤、エポキシ基を有するモノマーの添加量が規定の20質量部より多いため、外観にブルームがみられた。

【0067】
以上説明した通り、酸無水物、シランカップリング剤、エポキシ基を有するモノマーの添加量は、0.1〜20質量部がよいことがわかった。
これにより、上述の通り、エチレン系共重合体に含有させる酸無水物、シランカップリング剤、エポキシ基を有するモノマーは、その分子中にヒドロキシル基(−OH)及び/又はオキソ基(=O)からなる活性な官能基を有しており、これがポリブチレンテレフタレート樹脂またはポリアミド樹脂と結合して接着性を向上させるものと考えられ、モールド樹脂との接着性に優れながらも、(ブルームがないため)外観の良好性に優れた樹脂組成物、これを用いた電線及びケーブルを提供することが可能となることがわかった。
比較例では、表2に示す通り、モールド樹脂との接着性に優れるものの、外観の良好性に優れないものや、外観の良好性には優れるものの、モールド樹脂との接着性に優れないものがあった。
本発明の優れた点は、モールド樹脂との接着性に優れること、及び外観の良好性に優れること、この二つの効果を両立させた点である。
【0068】
なお、架橋方法については、本実施例では電子線照射架橋を行ったが、その他の架橋方法でも適用可能である。
【0069】
以上見てきたように、本発明によると、耐熱性、外観が良好で、モールド樹脂成形体との接着性に優れた樹脂組成物、これを用いた電線及びケーブルを得ることができるため、自動車、ロボット、電子機器等のセンサーケーブルなどに好適であり、その工業的な有用性は極めて高いと考えられる。
【符号の説明】
【0070】
1 導体
2 絶縁体
3 絶縁体内層
4 絶縁体外層
5 多芯撚り線
6 シース
7 シース内層
8 シース外層
10 電線
20 ケーブル
30 モールド樹脂成形体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9