【実施例】
【0053】
以下に本発明の実施例を具体的に説明する。
【0054】
【表1】
【0055】
【表2】
【0056】
以下に実施例及び比較例の説明をする。
(実施例)
実施例1は、エチレン系共重合体である直鎖状低密度ポリエチレン100質量部に対し、酸無水物である無水マレイン酸を0.1質量部混ぜ合わせた樹脂組成物に電子線照射して架橋処理をした架橋樹脂組成物である。
実施例2は、エチレン系共重合体である直鎖状低密度ポリエチレン100質量部に対し、酸無水物である無水マレイン酸を5質量部混ぜ合わせた樹脂組成物に電子線照射して架橋処理をした架橋樹脂組成物である。
実施例3は、エチレン系共重合体である直鎖状低密度ポリエチレン100質量部に対し、酸無水物である無水マレイン酸を20質量部混ぜ合わせた樹脂組成物に電子線照射して架橋処理をした架橋樹脂組成物である。
実施例4は、エチレン系共重合体であるエチレンエチルアクリレート100質量部に対し、シランカップリング剤であるビニルトリメトキシシランを0.1質量部混ぜ合わせた樹脂組成物に電子線照射して架橋処理をした架橋樹脂組成物である。
実施例5は、エチレン系共重合体であるエチレンエチルアクリレート100質量部に対し、シランカップリング剤であるビニルトリメトキシシランを5質量部混ぜ合わせた樹脂組成物に電子線照射して架橋処理をした架橋樹脂組成物である。
実施例6は、エチレン系共重合体であるエチレンエチルアクリレート100質量部に対し、シランカップリング剤であるビニルトリメトキシシランを20質量部混ぜ合わせた樹脂組成物に電子線照射して架橋処理をした架橋樹脂組成物である。
実施例7は、エチレン系共重合体であるエチレン酢酸ビニル共重合体100質量部に対し、エポキシ基を有するモノマーであるグリシジルメタクリレートを0.1質量部混ぜ合わせた樹脂組成物に電子線照射して架橋処理をした架橋樹脂組成物である。
実施例8は、エチレン系共重合体であるエチレン酢酸ビニル共重合体100質量部に対し、エポキシ基を有するモノマーであるグリシジルメタクリレートを5質量部混ぜ合わせた樹脂組成物に電子線照射して架橋処理をした架橋樹脂組成物である。
実施例9は、エチレン系共重合体であるエチレン酢酸ビニル共重合体100質量部に対し、エポキシ基を有するモノマーであるグリシジルメタクリレートを20質量部混ぜ合わせた樹脂組成物に電子線照射して架橋処理をした架橋樹脂組成物である。
実施例10〜12は、エチレン系共重合体であるエチレン酢酸ビニル共重合体100質量部に対し、シランカップリング剤であるビニルトリメトキシシランを10質量部混ぜ合わせた樹脂組成物に電子線照射して架橋処理をした架橋樹脂組成物である。その他、実施例10では、難燃剤としてメラミンシアヌレートを20質量部、実施例11では、難燃剤として芳香族縮合リン酸エステルを10質量部、実施例12では、難燃剤として水酸化マグネシウムを75質量部、を混ぜ合わせている。
実施例13は、エチレン系共重合体である直鎖状低密度ポリエチレン100質量部に対し、酸無水物である無水マレイン酸を5質量部グラフト共重合させた樹脂組成物(無水マレイン酸グラフト直鎖状低密度ポリエチレン)に電子線照射して架橋処理をした架橋樹脂組成物である。
実施例14は、エチレン系共重合体であるエチレン酢酸ビニル共重合体100質量部に対し、シランカップリング剤であるビニルトリメトキシシランを5質量部グラフト共重合させた樹脂組成物(シラングラフトエチレン酢酸ビニル共重合体)に電子線照射して架橋処理をした架橋樹脂組成物である。
実施例15は、エチレン系共重合体である直鎖状低密度ポリエチレン100質量部に対し、エポキシ基を有するモノマーであるグリシジルメタクリレートを5質量部グラフト共重合させた樹脂組成物(グリシジルメタクリレートグラフト直鎖状低密度ポリエチレン)に電子線照射して架橋処理をした架橋樹脂組成物である。
実施例16は、エチレン系共重合体であるエチレンエチルアクリレート100質量部に対し、エポキシ基を有するモノマーであるグリシジルメタクリレートを5質量部グラフト共重合させた樹脂組成物(グリシジルメタクリレートグラフトエチレンエチルアクリレート)に電子線照射して架橋処理をした架橋樹脂組成物である。
実施例17は、エチレン系共重合体であるエチレン酢酸ビニル共重合体100質量部に対し、エポキシ基を有するモノマーであるグリシジルメタクリレートを0.1質量部グラフト共重合させた樹脂組成物(グリシジルメタクリレートグラフトエチレン酢酸ビニル共重合体)に電子線照射して架橋処理をした架橋樹脂組成物である。
実施例18は、エチレン系共重合体であるエチレン酢酸ビニル共重合体100質量部に対し、エポキシ基を有するモノマーであるグリシジルメタクリレートを5質量部グラフト共重合させた樹脂組成物(グリシジルメタクリレートグラフトエチレン酢酸ビニル共重合体)に電子線照射して架橋処理をした架橋樹脂組成物である。
実施例19は、エチレン系共重合体であるエチレン酢酸ビニル共重合体100質量部に対し、エポキシ基を有するモノマーであるグリシジルメタクリレートを20質量部グラフト共重合させた樹脂組成物(グリシジルメタクリレートグラフトエチレン酢酸ビニル共重合体)に電子線照射して架橋処理をした架橋樹脂組成物である。
【0057】
(比較例)
比較例1は、エチレン系共重合体である直鎖状低密度ポリエチレン100質量部に対し、酸無水物である無水マレイン酸を20質量部混ぜ合わせた樹脂組成物である。当該樹脂組成物には、架橋処理をしていない。
比較例2は、エチレン系共重合体である直鎖状低密度ポリエチレン100質量部に対し、酸無水物である無水マレイン酸を0.09質量部混ぜ合わせた樹脂組成物に電子線照射して架橋処理をした架橋樹脂組成物である。
比較例3は、エチレン系共重合体である直鎖状低密度ポリエチレン100質量部に対し、酸無水物である無水マレイン酸を21質量部混ぜ合わせた樹脂組成物に電子線照射して架橋処理をした架橋樹脂組成物である。
比較例4は、エチレン系共重合体である低密度ポリエチレン100質量部に対し、シランカップリング剤であるビニルトリメトキシシランを0.09質量部混ぜ合わせた樹脂組成物に電子線照射して架橋処理をした架橋樹脂組成物である。
比較例5は、エチレン系共重合体である低密度ポリエチレン100質量部に対し、シランカップリング剤であるビニルトリメトキシシランを21質量部混ぜ合わせた樹脂組成物に電子線照射して架橋処理をした架橋樹脂組成物である。
比較例6は、エチレン系共重合体であるエチレン酢酸ビニル共重合体100質量部に対し、エポキシ基を有するモノマーであるグリシジルメタクリレートを0.09質量部混ぜ合わせた樹脂組成物に電子線照射して架橋処理をした架橋樹脂組成物である。
比較例7は、エチレン系共重合体であるエチレン酢酸ビニル共重合体100質量部に対し、エポキシ基を有するモノマーであるグリシジルメタクリレートを21質量部混ぜ合わせた樹脂組成物に電子線照射して架橋処理をした架橋樹脂組成物である。
比較例8は、エチレン系共重合体であるエチレン酢酸ビニル共重合体100質量部に対し、エポキシ基を有するモノマーであるグリシジルメタクリレートを0.09質量部グラフト共重合させた樹脂組成物(グリシジルメタクリレートグラフトエチレン酢酸ビニル共重合体)に電子線照射して架橋処理をした架橋樹脂組成物である
。
【0058】
40mm押出機(L/D=24)を用い、表1の実施例および表2の比較例に示した絶縁体材料を構成7本/0.26mmの導体上に外径が1.5mmになるよう押出被覆した。得られた絶縁電線に電子線を150kGyで照射し架橋電線とした(ただし、比較例1においては、架橋処理をしていない)。
【0059】
作製した架橋電線は、以下の試験により評価した。
【0060】
耐熱試験として、上記電線を2.3mmφに3回巻付け、170℃の恒温槽内で6時間加熱した。取り出し後、室温になるまで放冷したのちに、外観に溶融または亀裂がないものを合格とした。
【0061】
絶縁体の架橋度の指標として、ゲル分率を測定した。電線から導体を取り除き、130℃の熱キシレン中で24時間抽出をおこない、(抽出後の残存ゲル質量)/(抽出前の絶縁体質量)×100(%)をゲル分率とした。
【0062】
ブルームの有無は、電線を23℃、50%RH環境下で1週間放置後の電線外観を観察し評価した。ブルームのないものを○、ブルームが激しく外観を損ねるものを×とした。
【0063】
気密性評価には、
図9に示すように電線10の片端にポリアミド(ガラス繊維:30質量%)レニー1002F(三菱エンジニアリングプラスチックス製)、またはポリブチレンテレフタレート(ガラス繊維:30質量%)ノバデュラン5010G30×4(三菱エンジニアリングプラスチックス製)を射出成形でモールド成形(直径φ15mm、長さ20mm、電線挿入長さ15mm)して、モールド樹脂成形体30として端末を封止したものをサンプルとした。得られたサンプルについて、−40℃×30分、125℃×30分の条件でヒートショック試験を1000サイクル実施した。
【0064】
その後、
図9に示すようにサンプルを、モールド樹脂成形体30が水槽33の水34に浸るようにした状態で、電線10の端末に空気供給機35から30kPaで圧縮空気を30秒間送り込んだ。その間にモールド樹脂成形体30と電線10の間から気泡36が出ないものを合格とした。さらに、合格と判定したモールド加工品について、樹脂成形体30を保持治具等により保持させ、その状態で電線10をモールド樹脂成形体30から引き抜き、破壊の形態を調べた。各50本試験し、すべて合格し、引き抜き時にモールド樹脂が破壊したものを◎、すべて合格し、引き抜き時に界面破壊したもの(つまり、モールド樹脂成形体30から電線10が剥がれたもの)を○とした。合格数が50本未満のものは×と判定した(◎は、○よりも接着性が強いことを示している)。つまり、当該評価は、電線10とモールド樹脂成形体30との接着性の強さを評価するものであり、この接着性が強ければそれだけ高い気密性があり、高い防水性があると評価することができる。
【0065】
実施例1〜19では、耐熱性評価において溶融や亀裂がなく、ブルームもみられなかった。また、気密性評価では、モールド樹脂としてポリアミド、ポリブチレンテレフタレートのいずれを用いても○や◎となり、良好な気密性が得られた。特にエチレン酢酸ビニル共重合体を用い、無水マレイン酸、ビニルトリメトキシシラン、グリシジルメタクリレートを5〜20質量部を含有させた実施例8〜11及び実施例18〜19は、表1において◎が付いている通り、モールド樹脂との接着性が強く、引き抜き時にモールド樹脂が破壊するものが多くみられ、接着性が特によいことが確かめられた。つまり、実施例8〜11及び実施例18〜19は、特に高い気密性を得られ、高い防水性を得られることが確かめられた。
【0066】
一方、比較例1では、電子線照射による架橋処理が施されていないため耐熱試験において絶縁体の溶融がみられた。比較例2、4、6、8では、酸無水物、シランカップリング剤、エポキシ基を有するモノマーの添加量が規定の0.1質量部より少なく、モールド樹脂との間の気密性が不十分である。また比較例3、5、
7では、酸無水物、シランカップリング剤、エポキシ基を有するモノマーの添加量が規定の20質量部より多いため、外観にブルームがみられた。
【0067】
以上説明した通り、酸無水物、シランカップリング剤、エポキシ基を有するモノマーの添加量は、0.1〜20質量部がよいことがわかった。
これにより、上述の通り、エチレン系共重合体に含有させる酸無水物、シランカップリング剤、エポキシ基を有するモノマーは、その分子中にヒドロキシル基(−OH)及び/又はオキソ基(=O)からなる活性な官能基を有しており、これがポリブチレンテレフタレート樹脂またはポリアミド樹脂と結合して接着性を向上させるものと考えられ、モールド樹脂との接着性に優れながらも、(ブルームがないため)外観の良好性に優れた樹脂組成物、これを用いた電線及びケーブルを提供することが可能となることがわかった。
比較例では、表2に示す通り、モールド樹脂との接着性に優れるものの、外観の良好性に優れないものや、外観の良好性には優れるものの、モールド樹脂との接着性に優れないものがあった。
本発明の優れた点は、モールド樹脂との接着性に優れること、及び外観の良好性に優れること、この二つの効果を両立させた点である。
【0068】
なお、架橋方法については、本実施例では電子線照射架橋を行ったが、その他の架橋方法でも適用可能である。
【0069】
以上見てきたように、本発明によると、耐熱性、外観が良好で、モールド樹脂成形体との接着性に優れた樹脂組成物、これを用いた電線及びケーブルを得ることができるため、自動車、ロボット、電子機器等のセンサーケーブルなどに好適であり、その工業的な有用性は極めて高いと考えられる。