特許第6202442号(P6202442)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6202442高精度光周波数安定化法および高精度光周波数安定化装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6202442
(24)【登録日】2017年9月8日
(45)【発行日】2017年9月27日
(54)【発明の名称】高精度光周波数安定化法および高精度光周波数安定化装置
(51)【国際特許分類】
   H01S 5/0687 20060101AFI20170914BHJP
【FI】
   H01S5/0687
【請求項の数】8
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-117052(P2014-117052)
(22)【出願日】2014年6月5日
(65)【公開番号】特開2015-230992(P2015-230992A)
(43)【公開日】2015年12月21日
【審査請求日】2016年8月1日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成26年1月20日発行 レーザー学会学術講演会第34回年次大会講演予稿集 一般講演 H322aIII08
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504145342
【氏名又は名称】国立大学法人九州大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】下小園 真
(72)【発明者】
【氏名】布谷 伸浩
(72)【発明者】
【氏名】石井 啓之
(72)【発明者】
【氏名】加藤 和利
【審査官】 吉野 三寛
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−151000(JP,A)
【文献】 特開平09−218130(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 5/00−5/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光源と、
前記レーザ光源から出力されたレーザ光を分岐する第1の光カプラと、
前記レーザ光源から出力されるレーザ光の目標光周波数から高周波側および低周波側にそれぞれ所定の周波数だけ離れた第1および第2の光を少なくとも含む基準光を出力する基準光源と、
前記第1の光カプラで分岐された前記レーザ光および前記基準光を合波する第2の光カプラと、
前記第2の光カプラで合波された合波光を電気信号に変換するフォトダイオードと、
前記フォトダイオードから出力された電気信号が入力される、前記所定の周波数を中心周波数とするバンドパスフィルタと、
前記バンドパスフィルタを透過した電気信号の強度を検出して電圧値に変換する高周波ディテクタと、
前記高周波ディテクタで検出した電圧値が最大となるよう、前記レーザ光源のレーザ光の波長を制御する制御装置と、
を備えたことを特徴とする高精度光周波数安定化装置。
【請求項2】
前記基準光は、前記第1および第2の光に加えて、さらにレーザ光の目標光周波数から高周波側および低周波側にそれぞれ前記所定の周波数の奇数倍だけ離れた複数の光周波数の光を含むことを特徴とする請求項1に記載の高精度光周波数安定化装置。
【請求項3】
前記基準光は、前記所定の周波数の倍の周波数の電流で前記基準光源を変調することにより生成されることを特徴とする請求項2に記載の高精度光周波数安定化装置。
【請求項4】
前記バンドパスフィルタは、透過周波数帯域幅が前記所定の周波数の倍以下であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の高精度光周波数安定化装置。
【請求項5】
レーザ光源の光周波数を安定化する方法であって、
前記レーザ光源が出力するレーザ光の目標光周波数から高周波側および低周波側にそれぞれ所定の周波数だけ離れた第1および第2の光を少なくとも含む基準光を生成するステップと、
前記レーザ光と前記基準光とから電気信号を生成するステップであって、前記電気信号は、前記レーザ光と前記第1の光との差周波数の電気信号、前記レーザ光と前記第2の光との差周波数の電気信号、および前記第1の光と前記第2の光との差周波数の電気信号を含む、電気信号を生成するステップと、
前記電気信号を、前記所定の周波数を中心周波数とするバンドパスフィルタに通すステップと、
前記バンドパスフィルタを透過した電気信号の強度を測定するステップと、
測定された電気信号の強度が最大になるよう前記レーザ光源の光周波数を制御するステップと、
を有することを特徴とする高精度光周波数安定化法。
【請求項6】
前記基準光は、前記第1および第2の光に加えて、さらにレーザ光の目標光周波数から高周波側および低周波側にそれぞれ前記所定の周波数の奇数倍だけ離れた複数の光周波数の光を含むことを特徴とする請求項5に記載の高精度光周波数安定化法。
【請求項7】
前記基準光を生成するステップは、前記所定の周波数の倍の周波数の電流で前記基準光源を変調することにより前記基準光を生成することを特徴とする請求項6に記載の高精度光周波数安定化法。
【請求項8】
前記バンドパスフィルタは、透過周波数帯域幅が前記所定の周波数の倍以下であることを特徴とする請求項5乃至7のいずれかに記載の高精度光周波数安定化法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ光源の光周波数を高精度に安定化する高精度光周波数安定化法および高精度光周波数安定化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
情報通信の多様化、大容量化が急加速で進展し、データトラヒックは指数関数的に増大の一途をたどっている。伝送の光化による大容量化、低消費電力化はすでに大きく進展してきた。例えば日本の基幹伝送ネットワークにおいては40ギガビット毎秒の信号を40波の波長多重によって1.6テラビット毎秒を伝送することが可能となっている。
【0003】
波長多重技術をさらに効率化するための技術として日本が提案したフレキシブルグリッドが2012年にITU−T SG15において標準化された。フレキシブルグリッドを用いればビットレートや光伝送距離に応じて各波長チャンネルのスペクトル幅を柔軟に増減するエラスティック光ネットワークが実現できるため、ネットワークのさらなる周波数利用効率向上、消費電力削減、復旧性能向上が可能となる。
【0004】
フレキシブルグリッドは光周波数193.1THzを基点とし、ここから6.25GHzの整数倍離れた光周波数を中心周波数として定義されている。中心周波数を中心に帯域粒度12.5GHzの任意の幅のスロットを配置することができるためビットレートや変調方式を混在した波長多重伝送が可能となる。
【0005】
フレキシブルグリッドを実現するための最優先のデバイス技術はレーザの高精度光周波数安定化である。6.25GHz間隔のグリッドに対しては±0.1GHz以内の精度で光周波数を安定化させることが必要となる。基準光またはレーザの光周波数安定化には従来、エタロンフィルタなどの光学フィルタを用いフィルタの透過率波長依存性から光周波数を検出する方法が一般的に用いられてきた。しかし、この方法では光周波数検出精度が光学フィルタの透過率波長依存性で決まるため原理的に±0.5GHz以下とすることが難しい。
【0006】
そのため、高精度で光周波数検出を行う他の方法として、基準光または基準吸収線との差周波を電気周波数として生成し電気処理によって光周波数差を検出する方法が注目されている。この方法は、目標光周波数に設定された基準光とレーザ光との周波数差に比例した電圧値を生成する装置を用い、レーザ光の基準光からの光周波数のずれを電圧値として測定する。そしてこの電圧値がゼロとなるように、すなわちレーザ光の基準光からの光周波数のずれがゼロとなるように波長可変レーザに誤差信号を帰還させることによって光周波数を0.1GHz以下の精度で安定化することができる。
【0007】
また、基準吸収線としてシアンガス同位体の吸収線を用いて、レーザ光のサイドバンド光の基準吸収線からのずれを電圧値として測定し、サイドバンド光の基準吸収線からの光周波数のずれがゼロとなるように誤差信号を帰還させることによって光周波数を安定化する方法も提案されている(非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】水鳥明、古賀正文、「変調サイドバンド光を用いた半導体レーザ発振周波数のITU−T周波数グリッドへの安定化」、電子情報通信学会誌B、Vol.J94−B、No.12,pp.1538−1546
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、目標光周波数に設定された基準光と出力レーザ光との周波数差に比例した電圧値を生成する装置を用いる上述のような従来の光周波数検出方法においては、構成部品である差周波−電圧変換装置がレーザに比べて高価で大きいという実用性の課題がある。
【0010】
また上述のガスの吸収線を利用する方法では、ガスを封じ込めた、いわゆるガスセルをレーザ毎に用意する必要があり、通常50から100以上のレーザを搭載した波長多重伝送装置には、それと同数のガスセルが必要という点でも実用上の大きな課題がある。
【0011】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、基準光と出力レーザ光との光周波数差を汎用的な回路で検出する高精度光周波数差検出器による高精度光周波数安定化法および高精度光周波数安定化装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決するために、本発明は、高精度光周波数安定化装置であって、レーザ光源と、前記レーザ光源から出力されたレーザ光を分岐する第1の光カプラと、前記レーザ光源から出力されるレーザ光の目標光周波数から高周波側および低周波側にそれぞれ所定の周波数だけ離れた第1および第2の光を少なくとも含む基準光を出力する基準光源と、前記第1の光カプラで分岐された前記レーザ光および前記基準光を合波する第2の光カプラと、前記第2の光カプラで合波された合波光を電気信号に変換するフォトダイオードと、前記フォトダイオードから出力された電気信号が入力される、前記所定の周波数を中心周波数とするバンドパスフィルタと、前記バンドパスフィルタを透過した電気信号の強度を検出して電圧値に変換する高周波ディテクタと、前記高周波ディテクタで検出した電圧値が最大となるよう、前記レーザ光源のレーザ光の波長を制御する制御装置と、を備えたことを特徴とする。
【0013】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の高精度光周波数安定化装置において、前記基準光は、前記第1および第2の光に加えて、さらにレーザ光の目標光周波数から高周波側および低周波側にそれぞれ前記所定の周波数の奇数倍だけ離れた複数の光周波数の光を含むことを特徴とする。
【0014】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の高精度光周波数安定化装置において、前記基準光は、前記所定の周波数の倍の周波数の電流で前記基準光源を変調することにより生成されることを特徴とする。
【0015】
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3のいずれかに記載の高精度光周波数安定化装置において、前記バンドパスフィルタは、透過周波数帯域幅が前記所定の周波数の倍以下であることを特徴とする。
【0016】
請求項5に記載の発明は、レーザ光源の光周波数を安定化する方法であって、前記レーザ光源が出力するレーザ光の目標光周波数から高周波側および低周波側にそれぞれ所定の周波数だけ離れた第1および第2の光を少なくとも含む基準光を生成するステップと、前記レーザ光と前記基準光とから電気信号を生成するステップであって、前記電気信号は、前記レーザ光と前記第1の光との差周波数の電気信号、前記レーザ光と前記第2の光との差周波数の電気信号、および前記第1の光と前記第2の光との差周波数の電気信号を含む、電気信号を生成するステップと、前記電気信号を、前記所定の周波数を中心周波数とするバンドパスフィルタに通すステップと、前記バンドパスフィルタを透過した電気信号の強度を測定するステップと、測定された電気信号の強度が最大になるよう前記レーザ光源の光周波数を制御するステップと、を有することを特徴とする。
【0017】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の高精度光周波数安定化法において、前記基準光は、前記第1および第2の光に加えて、さらにレーザ光の目標光周波数から高周波側および低周波側にそれぞれ前記所定の周波数の奇数倍だけ離れた複数の光周波数の光を含むことを特徴とする。
【0018】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の高精度光周波数安定化法において、前記基準光を生成するステップは、前記所定の周波数の倍の周波数の電流で前記基準光源を変調することにより前記基準光を生成することを特徴とする。
【0019】
請求項8に記載の発明は、請求項5乃至7のいずれかに記載の高精度光周波数安定化法において、前記バンドパスフィルタは、透過周波数帯域幅が前記所定の周波数の倍以下であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、基準光と出力レーザ光との光周波数差の高精度光周波数差検出器による高精度光周波数安定化を汎用的な部品で構成することができ、高精度光周波数安定化装置を小型で安価に実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の第1実施形態に係る高精度光周波数安定化装置の構成を示す図である。
図2】本発明の第1実施形態に係る高精度光周波数安定化装置における基準光のスペクトルを示す図である。
図3】本発明の第1実施形態に係る高精度光周波数安定化装置のバンドパスフィルタ105の透過特性(電気周波数に対する透過強度)を示す図である。
図4】本発明の第2実施形態に係る高精度光周波数安定化装置の基準光源で生成される基準光のスペクトルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
上記の目的を達成するための高精度光周波数差検出器は、基準光と、レーザ光源から発せられるレーザ光を合波する光カプラ、フォトダイオード、バンドパスフィルタ、高周波ディテクタから構成される。このうち光カプラとフォトダイオードは、非特許文献1で報告されている従来の方法でも用いられている汎用的な部品である。また本発明で新たに用いるバンドパスフィルタ、高周波ディテクタは電子回路で構成された汎用的な部品である。
【0023】
基準光は2つの近接した光周波数からなり、これら2つの光周波数の中間の光周波数がレーザ光の目標光周波数となるように設定されている。例えばレーザ光の目標光周波数をfとすると、基準光はf+fおよびf−fの2つの近接した光周波数に設定する。実際のレーザ光の光周波数が目標光周波数からΔfずれている場合、すなわちf+Δfである場合、光カプラで基準光とレーザを合波しフォトダイオードに入射すると、フォトダイオード内でフォトミキシングが起こり、レーザ光の光周波数と2つの基準光周波数の計3つの光周波数間の周波数差の周波数を持った電気信号がフォトダイオードから出力される。
【0024】
すなわち、f+fとf+Δfの差周波であるf−Δf、f−fとf+Δfの差周波であるf+Δf、f+fとf−fの差周波である2fの周波数を持った電気信号がフォトダイオードから出力される。次にこれらの電気信号を、中心周波数がfであるバンドパスフィルタに透過させると、f+Δfとf−Δfの信号はfに近いほど透過率が高くなる、すなわち目標光周波数との差Δfが小さいほど高い電力がバンドパスフィルタから出力される。バンドパスフィルタからの出力電力を高周波ディテクタで電圧値へ変換する。したがって高周波ディテクタの出力電圧が高いほどΔfが小さい、すなわちレーザ光と目標光周波数との差が小さくなる。
【0025】
上記構成にさらに制御装置を加え、高周波ディテクタからの出力電圧が最大となるようにレーザの光周波数を制御することにより光周波数安定化が実現できる。本方法では光周波数差の検出精度はバンドパスフィルタの透過特性に依存する。汎用的なバンドパスフィルタでは、中心周波数から0.1GHz離れた周波数における透過強度が1/2〜1/5である。したがって目標光周波数からの0.1GHzのずれを高周波ディテクタからの出力電圧の低下として十分に検出できる能力を持つ。
【0026】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
【0027】
<第1実施形態>
図1に、本発明の第1実施形態に係る高精度光周波数安定化装置の構成を示す。図1に示すように、この高精度光周波数安定化装置は、基準光源101、出力用レーザ光源102、出力用レーザ光を分岐する光カプラ108、基準光と分岐された出力用レーザ光を合波する光カプラ103、フォトダイオード104、バンドパスフィルタ105、高周波ディテクタ106、出力用レーザ光源102の駆動電流を制御する制御装置107から構成される。このうち光カプラ103とフォトダイオード104は、非特許文献1で報告されている従来の方法でも用いられている汎用的な部品である。また本発明で新たに用いるバンドパスフィルタ105、高周波ディテクタ106は電子回路で構成された汎用的な部品である。
【0028】
本装置は、基準光源101から発せられる基準光を用いて、出力用レーザ光源102から発せられるレーザ光の光周波数を目標光周波数に一致させる装置である。
【0029】
ここで基準光は、図2に示すように、レーザ光の目標光周波数fから低周波数側および高周波数側へそれぞれ3.125GHzだけ離れた、f+3.125GHzおよびf−3.125GHzの2つの近接した光周波数からなっている。例えばレーザ光の目標光周波数を193,000GHzとすると、基準光は193,003.125GHzおよび192,996.875GHzの2つの近接した光周波数から構成する。
【0030】
このような基準光を構成する2つの近接した光周波数を有する光は、以下のようにして作成することができる。例えば、fの光周波数の光を光変調器で6.25GHzの正弦波で位相変調または強度変調を行い、f−6.25×nGHzとf+6.25×nGHzのサイドバンドを発生させる。このとき、fをf−3.125GHzに設定することで、例えば、fとf+6.25×nGHzとを取り出すことで、f+3.125GHzおよびf−3.125GHzの2つの光を得ることができる。
【0031】
基準光と分岐された出力用レーザ光とが光カプラ103で合波されてフォトダイオード104に入射されると、フォトダイオード104内でフォトミキシングが起こり、3つの光周波数間の周波数差の周波数を持った電気信号がフォトダイオード104から出力される。初期状態においてレーザ光の光周波数が目標光周波数fから高周波側へΔfずれている場合、すなわちf+Δfである場合、出力用レーザ光の光周波数f+Δfと2つの基準光周波数f+3.125GHzおよびf−3.125GHzの計3つの光周波数間の周波数差の周波数を持った電気信号がフォトダイオード104から出力される。すなわち、f+3.125GHzとf+Δfとの差周波である3.125GHz−Δf、f−3.125GHzとf+Δfとの差周波である3.125GHz+Δf、f−3.125GHzとf+3.125GHzとの差周波である6.25GHzの周波数を持った電気信号がフォトダイオード104から出力される。例えばΔfが0.1GHzの場合、これら3つの差周波は、3.225GHz、3.025GHz、6.25GHzとなる。
【0032】
これらの電気信号は、フォトダイオード104に接続された、中心周波数が3.125GHzであるバンドパスフィルタ105を透過する。図3に、本発明の第1実施形態に係る高精度光周波数安定化装置のバンドパスフィルタ105の透過特性(電気周波数に対する透過強度)を示す。中心周波数である3.125GHzにおける透過強度を1とすると、中心周波数から0.1GHz離れた周波数、すなわち3.025GHzまたは3.225GHzにおいては、透過強度は0.5となっている。このような特性を持つバンドパスフィルタでは、Δfが0.1GHzの場合には、3.025GHzと3.225GHzにおける透過強度を合わせて1となる。一方、周波数が3.125GHz+Δfと3.125GHz−Δfの2つの電気信号を透過させた場合、Δfが十分小さければ透過強度は両者を合わせてほぼ2となる。
【0033】
このように、Δfの大きさに応じて透過する電気信号の強度が変化するため、バンドパスフィルタ105を透過した電気信号の強度を高周波ディテクタ106で電圧値として検出することにより、Δfすなわち出力用レーザ光の目標光周波数からのずれを検出することができる。
【0034】
さらに高周波ディテクタ106の出力電圧値を制御装置107に入力し、高周波ディテクタ106の電圧値が最大となるように、制御装置107でレーザ光源102の温度または駆動電流を調整する。このようにフィードバック制御をかけることにより、Δfすなわちレーザ光の目標光周波数からのずれを最少化することができ、出力用レーザ光の光周波数を目標波長に安定的に制御することができる。
【0035】
以上、出力用レーザ光源102から出射された出力用レーザ光の光周波数が目標光周波数よりも高周波数側へずれている場合の例を示したが、出力用レーザ光の光周波数が目標光周波数よりも低周波数側へずれている場合も同様に3.225GHz、3.025GHz、0.2GHzの3つの差周波が生じるので、Δfすなわち出力用レーザ光の目標光周波数からのずれを検出することができる。
【0036】
さらに同様に、制御装置107によって高周波ディテクタ106の電圧値が最大となるように、制御装置107が出力用レーザ光源102の温度を調整することにより、Δfすなわち出力用レーザ光の目標光周波数からのずれを最少化することができ、出力用レーザ光の光周波数を目標波長に制御することができる。
【0037】
<第2実施形態>
本発明の第2実施形態に係る高精度光周波数安定化装置の構成は、図1に示す第1実施形態と同じ構成である。すなわち、この高精度光周波数安定化装置は、基準光源101、出力用レーザ光源102、出力用レーザ光を分岐する光カプラ108、基準光と分岐された出力用レーザ光を合波する光カプラ103、フォトダイオード104、バンドパスフィルタ105、高周波ディテクタ106、出力用レーザ光源102の駆動電流を制御する制御装置107から構成される。
【0038】
本装置は、基準光源101から発せられる基準光を用いて、出力用レーザ光源102から発せられる出力用レーザ光の光周波数を目標光周波数に一致させる装置である。
【0039】
図4に、本発明の第2実施形態に係る高精度光周波数安定化装置の基準光源で生成される基準光のスペクトルを示す。本実施形態では、基準光は、出力用レーザ光の目標光周波数fから低周波数側および高周波数側へそれぞれ3.125GHzの奇数倍だけ離れた、f+3.125GHz、f+3.125×3GHz、f+3.125×5GHz、・・・およびf−3.125GHz、f−3.125×3GHz、f−3.125×5GHz、・・・の複数の光周波数からなっている。このような基準光は、電界吸収型変調器集積レーザ(EML)を6.25GHzで変調してサイドバンドを発生させることにより生成することができる。また、レーザ光を位相変調器により6.25GHzで変調してサイドバンドを発生させることにより生成することができる。
【0040】
基準光と分岐された出力用レーザ光とが光カプラ103で合波されてフォトダイオード104に入射されると、フォトダイオード104内でフォトミキシングが起こり、光周波数間の周波数差の周波数を持った電気信号がフォトダイオード104から出力される。初期状態においてレーザ光の光周波数が目標光周波数fから高周波側へΔfずれている場合、すなわちf+Δfである場合、出力用レーザ光の光周波数f+Δfと基準光周波数f+3.125GHz、f+3.125×3GHz、f+3.125×5GHz、・・・およびf−3.125GHz、f−3.125×3GHz、f−3.125×5GHz、・・・のそれぞれの光周波数間の周波数差の周波数を持った電気信号がフォトダイオード104から出力される。これら差周波のうち、6.25GHz(=3.125×2GHz)よりも周波数が低い電気信号は、f+3.125GHzとf+Δfとの差周波である3.125GHz−Δf、f−3.125GHzとf+Δfとの差周波である3.125GHz+Δf、f+3.125GHzとf−3.125GHzとの差周波である6.25GHzの電気信号である。
【0041】
次にこれらの電気信号は、フォトダイオード104に接続された、中心周波数が3.125GHzであるバンドパスフィルタ105を透過する。6.25GHz(=3.125×2GHz)よりも周波数が高い電気信号はバンドパスフィルタ105を透過しないため、結局、第1実施形態と同様に周波数が低い電気信号である、3.125GHz+Δf、3.125GHz−Δfの電気信号のみが透過される。したがって第1実施形態と同様にこれら電気信号の透過強度を高周波ディテクタ106で電圧値として検出することにより、Δfすなわちレーザ光の目標光周波数からのずれを検出することができる。
【0042】
さらに高周波ディテクタ106の出力電圧値を制御装置107に入力し、高周波ディテクタ106の電圧値が最大となるように、制御装置107でレーザ光源102の温度を調整する。このようにフィードバック制御をかけることにより、Δfすなわちレーザ光の目標光周波数からのずれを最少化することができ、出力用レーザ光の光周波数を目標波長に安定的に制御することができる。
【0043】
以上、出力用レーザ光源102から出射された出力用レーザ光の光周波数が目標光周波数よりも高周波数側へずれている場合の例を示したが、出力用レーザ光の光周波数が目標光周波数よりも低周波数側へずれている場合も同様に3.225GHz、3.025GHz、0.2GHzの3つの差周波が生じるので、Δfすなわち出力用レーザ光の目標光周波数からのずれを検出することができる。
【0044】
さらに同様に、制御装置107によって高周波ディテクタ106の電圧値が最大となるように、制御装置107が、出力用レーザ光源102の温度を調整することによりΔfすなわち出力用レーザ光の目標光周波数からのずれを最少化することができ、出力用レーザ光の光周波数を目標波長に制御することができる。
【0045】
以上、本発明の実施形態を詳述してきたが、具体的な構成は各実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更なども含まれる。
【符号の説明】
【0046】
101 基準光
102 レーザ光源
103 光カプラ
104 フォトダイオード
105 バンドパスフィルタ
106 高周波ディテクタ
107 制御装置
108 光カプラ
図1
図2
図3
図4