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特許6202481アルコキシシリル−ビニレン基含有ケイ素化合物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6202481
(24)【登録日】2017年9月8日
(45)【発行日】2017年9月27日
(54)【発明の名称】アルコキシシリル−ビニレン基含有ケイ素化合物
(51)【国際特許分類】
   C07F 7/18 20060101AFI20170914BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20170914BHJP
   C09J 201/10 20060101ALI20170914BHJP
【FI】
   C07F7/18 MCSP
   C09J11/06
   C09J201/10
【請求項の数】2
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2016-513653(P2016-513653)
(86)(22)【出願日】2015年2月2日
(86)【国際出願番号】JP2015052808
(87)【国際公開番号】WO2015159569
(87)【国際公開日】20151022
【審査請求日】2016年10月27日
(31)【優先権主張番号】特願2014-83341(P2014-83341)
(32)【優先日】2014年4月15日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080089
【弁理士】
【氏名又は名称】牛木 護
(72)【発明者】
【氏名】打它 晃
(72)【発明者】
【氏名】藤原 晃嗣
(72)【発明者】
【氏名】坂本 隆文
【審査官】 水島 英一郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開平04−235190(JP,A)
【文献】 特開昭62−164688(JP,A)
【文献】 特開昭62−149687(JP,A)
【文献】 特開昭50−000028(JP,A)
【文献】 米国特許第03555051(US,A)
【文献】 Chem. Commun.,2010年,46,2495-2497
【文献】 MARCINIEC, B. et al.,Synthesis, first structures, and catalytic activity of the monomeric rhodium(I)-siloxide phosphine c,Canadian Journal of Chemistry,2003年,Vol.81, No.11,p.1292-1298
【文献】 Electrochimica Acta,2003年,48,2181-2186
【文献】 Journal of Molecular Catalysis A: Chemical,2002年,190,79-83
【文献】 Organometallics,2002年,21,840-845
【文献】 KOPYLOVA, L. I. et al.,Hydrosilylation of 3-arylamino-1-butynes and their N-acyl derivatives,Zhurnal Obshchei Khimii,1982年,Vol.52, No.10,p.2259-62
【文献】 VORONKOV, M. G. et al.,Synthesis of new derivatives of trans-1,2-disilylethylene by hydrosilylation of ethynylsilanes,Izvestiya Akademii Nauk SSSR, Seriya Khimicheskaya,1976年,No.8,p.1874-7
【文献】 SADYKH-ZADE, S. I. et al.,Synthesis of unsaturated silicon-containing epoxy compounds,Zhurnal Obshchei Khimii,1966年,Vol.36, No.4,p.695-7
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07F 7/18
CAplus(STN)
REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)
【化1】

(式中、R、Rは、それぞれ独立に、炭素数1〜20の一価炭化水素基を示し、Rは次の一般式(3)及び(4)
【化2】

(式中、R、R3’は、それぞれ独立に、炭素数1〜10のアルキレン基を示し、同一でも異なっていてもよく、Rは芳香環を含む炭素数6〜10の2価炭化水素基を示す。)
から選ばれる基を示し、nは1〜3の整数を示す。)
で表されるアルコキシシリル−ビニレン基含有ケイ素化合物。
【請求項2】
一般式(1)中、Rが一般式(4)で示される基であり、該一般式(4)中、Rが下記式(10)
【化3】

(ただし、m、lはそれぞれ独立に1〜3の整数を示す)
で示されるものである請求項記載のアルコキシシリル−ビニレン基含有ケイ素化合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な有機ケイ素化合物に関するものであり、特にシランカップリング剤、シリル化剤、接着助剤などとして有用である新規アルコキシシリル−ビニレン基含有ケイ素化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
室温硬化性オルガノポリシロキサンは、その安全性やゴムとしての耐久性、接着性に優れることから建築関係、輸送機関係、電気電子部品関係等幅広く使用されている。
室温硬化性オルガノポリシロキサンの使用用途には高い接着性が要求されることが多く、アミノ基やエポキシ基、メタクリル基、メルカプト基などの有機官能基を持つカーボンファンクショナルシラン化合物(いわゆるシランカップリング剤)を添加することで、基材との密着性や接着性を改善してきた。
【0003】
従来、アミノ基含有アルコキシシラン化合物としては、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N−β−アミノエチル−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−ベンジル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルリメトキシシラン、β−アミノエチルアミノメチルフェネチルトリメトキシシン、N−[m−アミノメチルフェニルメチル]−γ‐アミノプロピルトリメトキシシラン等が知られており(特許文献1)、エポキシ基含有アルコキシシラン化合物としては2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等が知られている(特許文献2)。メタクリル基含有アルコキシシラン化合物としては、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン等が知られており(特許文献3)、メルカプト基含有アルコキシシラン化合物としては、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシランなどが知られている(特許文献4)。このように、すでに数多くのアルコキシシラン化合物が接着助剤として用いられているが、基材との密着・接着性の改善要求は年々高まってきている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−163143号公報
【特許文献2】特開2004−307723号公報
【特許文献3】特開2006−156964号公報
【特許文献4】特開平9−12861号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、更に基材との密着・接着性を向上させるシランカップリング剤、シリル化剤、接着助剤などに有用である新規な有機ケイ素化合物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、アルコキシシリル基に隣接する結合基がビニレン基(エテニレン基)である場合に限り、アルコキシ基の加水分解性が飛躍的に向上する事を知見し、下記式(1)で示されるアルコキシシリル−ビニレン基を含有する有機ケイ素化合物を使用することにより、基材との密着・接着性の改善が可能であることを発見し、本発明をなすに至った。
【0007】
即ち、本発明は、次の有機ケイ素化合物を提供するものである。
【0008】
〈1〉下記一般式(1)
【化1】
【0009】
(式中、R、Rは、それぞれ独立に、炭素数1〜20の一価炭化水素基を示し、Rは有機官能基を有する炭素数1〜30の一価炭化水素基を示し、nは1〜3の整数を示す。)
で表されるアルコキシシリル−ビニレン基含有ケイ素化合物。
なお、本発明においては、RO-又はRO-Si (ただし、Rは炭素数1〜20の一価炭化水素基)で示されるオルガノオキシ基又はオルガノオキシシリル基を、以下、アルコキシ基又はアルコキシシリル基等と記載することがある。また、―CH=CH―で示されるエテニレン基を、以下、ビニレン基等と記載することがある。
【発明の効果】
【0010】
本発明の新規有機ケイ素化合物は、アルコキシシリル基に隣接する結合基がビニレン基であることにより、アルコキシ基の加水分解性が飛躍的に向上しており、室温硬化性オルガノポリシロキサンに本発明の新規有機ケイ素化合物を添加することにより、高い密着・接着性や速接着性を発現する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施例1(1)で得られた化合物のH−NMRスペクトルを示す図である。
図2】実施例1(2)で得られた本発明化合物のH−NMRスペクトルを示す図である。
図3】実施例2で得られた本発明化合物のH−NMRスペクトルを示す図である。
図4】実施例3(1)で得られた化合物のH−NMRスペクトルを示す図である。
図5】実施例3(2)で得られた本発明化合物のH−NMRスペクトルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を更に詳細に説明する。
〈1〉本発明化合物は、下記一般式(1)
【0013】
【化2】
【0014】
(式中、R、Rは、それぞれ独立に、炭素数1〜20の一価炭化水素基を示し、Rは有機官能基を有する炭素数1〜30の一価炭化水素基を示し、nは1〜3の整数を示す。)
で表されるアルコキシシリル−ビニレン基含有有機ケイ素化合物である。
【0015】
ここで、前記一般式(1)において、R1、Rで示される炭素原子数1〜20の一価炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、エイコシル基等のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基等のアルケニル基;フェニル基等のアリール基;ベンジル基、フェニルエチル基等のアラルキル基が挙げられる。また、脂環式炭化水素基又は芳香族炭化水素基を有する鎖状炭化水素基であってもよい。R1、Rで示される一価炭化水素基としては、この内、炭素数1〜10の基、特には、炭素数1〜6の基が好ましく、とりわけ、炭素数1又は2の基(例えば、メチル基、エチル基等の低級アルキル基、ビニル基等の低級アルケニル基)が特に好ましい。
【0016】
また、一般式(1)中、Rで示される炭素数1〜30、好ましくは炭素数1〜22の、一価炭化水素基中に含有される有機官能基としては(置換)アミノ基、グリシジル基、メルカプト基、(メタ)アクリル基等が挙げられる。
基Rとしては、例えば、次の一般式(2)〜(9)で表される基が挙げられる。
【0017】
【化3】
【0018】
(式中、R、R3’は、それぞれ独立に、炭素数1〜10、好ましくは炭素数1〜6、より好ましくは炭素数1〜4の2価炭化水素基を示し、同一でも異なっていても良く、Rは芳香環を含む炭素数6〜10の2価炭化水素基を示す。Phはフェニル基を示す。)
【0019】
また、R、R3’の2価炭化水素基としては、例えば、−CH−、−CH−CH−、−CH(CH)−、−CH−CH−CH−、−CH(CH)−CH−、−C(CH−、−CH−CH−CH−CH−、−CH(CH)−CH−CH−、−(CH−、−(CH−、−(CH−、−(CH−、−(CH−、−(CH10−、−CH(CH)(CH−、−CH(CH)(CH−、−CH(CH)(CH−等の直鎖状又は分岐状のアルキレン基などが挙げられる。
【0020】
上記一般式(4)中、Rの芳香環を含む炭素数6〜10の2価炭化水素基としては、フェニレン基、下記式(10)
【0021】
【化4】
【0022】
(ただし、m、lはそれぞれ独立に1〜3の整数を示す)
で表される基が挙げられる。
具体的には、Rとしては次の基が挙げられる。
【0023】
【化5】
【0024】
本発明の化合物としては、具体的には下記のものが挙げられる。
【0025】
【化6】
【0026】
【化7】
【0027】
【化8】
【0028】
【化9】
【0029】
【化10】
【0030】
【化11】
【0031】
【化12】
【0032】
【化13】
【0033】
【化14】
【0034】
【化15】
【0035】
【化16】
【0036】
【化17】
【0037】
【化18】

【化19】
【0038】
【化20】
【0039】
【化21】
【0040】
【化22】
【0041】
【化23】
【0042】
【化24】
【0043】
【化25】
【0044】
【化26】
【0045】
【化27】
【0046】
【化28】
【0047】
【化29】
【0048】
【化30】
【0049】
【化31】
【0050】
【化32】
【0051】
【化33】
【0052】
【化34】
【0053】
【化35】
【0054】
末端がアミノ基の本発明の化合物は、下記のようにして合成できる。
すなわち一般式、
【0055】
【化36】
【0056】
(式中、R、R、Rは、前記と同じものを示し、Xはハロゲン原子を示す。)
で表されるハロゲノアルコキシシランと、一般式
N−R3’−NH又はHN−R−NH
(式中、R3’、Rは、前記と同じものを示す)
で表されるジアミンを、シランに対するジアミンのモル比を好ましくは0.5以上、さらに好ましくは1.0以上として、50℃〜200℃、好ましくは80℃〜150℃で30分〜30時間程度反応させることによって得ることができる。
【0057】
その際、ジアミン成分自体をハロゲン化水素捕獲剤として使用してもよく、また、他のハロゲン化水素捕獲剤として、例えばトリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ピリジンなどの3級アミン化合物を用いてもよい。さらに、このハロゲン化水素塩をナトリウムアルコキシドで中和してもよい。
【0058】
末端がメルカプト基である本発明の化合物は下記のようにして合成できる。すなわち次の一般式、
【0059】
【化37】
【0060】
(式中、R、R、R及びXは前記と同じものを示す。)
で表されるハロゲノアルコキシシランと、チオ尿素を、シランに対するチオ尿素のモル比を好ましくは0.5以上、さらに好ましくは1.0以上として、50℃〜200℃、好ましくは80℃〜150℃で30分〜30時間程度反応させ、生成したイソチオ尿素塩を塩基と1〜10時間反応させることで得ることができる。
【0061】
ここで使用する塩基としてはアルコキシシランとの反応性が低いものが望ましく、例えばトリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ピリジン、N,N-ジエチルアミン、N,N-ジメチルアミン、アンモニアなどのアミン化合物やナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシドなど、アルコキシド化合物が挙げられる。
【0062】
また、末端がグリシジル基である本発明の化合物は下記のようにして合成することができる。
すなわち下記一般式
【0063】
【化38】
【0064】
(式中、R、R及びnは前記と同じものを示す。)
で表されるアルコキシシリル化合物(アルコキシヒドロシラン)と下記一般式
【0065】
【化39】
【0066】
(式中、R、R3’は、前記と同じものを示す。)
で表されるグリシジル化合物を白金族金属触媒存在下で反応させることによって得られる。この時、グリシジル化合物に対するアルコキシシリル化合物のモル比を好ましくは0.5〜2.0、さらに好ましくは1.0〜1.5として、40℃〜200℃、好ましくは60℃〜120℃で30分〜15時間程度反応させることが好ましい。
【0067】
ここで用いる白金族金属触媒としては、塩化白金酸、塩化白金酸のアルコール溶液、塩化白金酸とアルコールとの反応物、白金オレフィン化合物錯体、白金ビニル基含有シロキサン錯体、白金担持カーボンなどが挙げられる。
【0068】
また、末端が(メタ)アクリル基(即ち、アクリル基またはメタクリル基)である本発明の化合物は、例えば下記のようにして合成することができる。
すなわち下記一般式
【0069】
【化40】
【0070】
(式中、R、R及びnは前記と同じものを示す。)
で表されるアルコキシシリル化合物(アルコキシヒドロシラン)と下記一般式
【0071】
【化41】
【0072】
(式中、Rは前記と同じものを示す。)
で表される(メタ)アクリル化合物(ここでは、メタクリル化合物について説明する。)を白金族金属触媒存在下で反応させることによって得られる。この時、メタクリル化合物に対するアルコキシシリル化合物のモル比を好ましくは0.5〜2.0、さらに好ましくは1.0〜1.5として、40℃〜200℃、好ましくは60℃〜120℃で30分〜15時間程度反応させることによって得ることができる。
【0073】
また、上記の反応時にはメタクリル基の重合を防止するために重合禁止剤を添加してもよい。該重合禁止剤としては、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン(商品名:IRGANOX 1330)、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール(商品名:Sumilizer BHT)、2,5−ジ−t−ブチル−ハイドロキノン(商品名:Nocrac NS−7)、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール(商品名:Nocrac M−17)、2,5−ジ−t−アミルハイドロキノン(商品名:Nocrac DAH)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)(商品名:Nocrac NS−6)、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ベンジルフォスフォネート−ジエチルエステル(商品名:IRGANOX 1222)、4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)(商品名:Nocrac 300)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)(商品名:Nocrac NS−5)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)(アデカスタブ AO−40)、2−t−ブチル−6−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート(商品名:Sumilizer GM、などが例示できる。
また、白金族金属触媒としては前述の反応と同様の触媒を用いることができる。
【0074】
また、上記の合成法はいずれも反応時に溶媒を添加してもよく、溶媒としては特に限定されないが、例えば、トルエン、キシレン、ベンゼン、等の芳香族炭化水素類、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、ノナン、オクタン、デカンなどの脂肪族炭化水素類、ジメチルエーテル、メチルエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル類、メタノール、エタノール等のアルコール類、パークロロエタン、パークロロエチレン、トリクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素などのハロゲン化炭化水素、ジメチルホルムアミドなどのアミド類、酢酸エチル、酢酸メチル、酢酸ブチルなどのエステル類などが挙げられる。
【実施例】
【0075】
以下、実施例(合成例)を挙げて本発明の化合物の合成法を具体的に説明するが、本発明の化合物これらに限定されるものではない。
【0076】
実施例1
(1)3−クロロ−−プロペニルトリメトキシシランの製造
撹拌機、温度計、還流冷却機、滴下装置を備えた1Lセパラブルフラスコにプロパルギルクロライド80%トルエン溶液を250mL(2.3mol)、0.5wt%塩化白金酸トルエン溶液を5.0g仕込み、窒素雰囲気化で70℃まで加温した。滴下装置にトリメトキシシランを337.0g(2.76mol)仕込み、溶液温度が70〜80℃になるよう滴下量を調整しながら滴下した。滴下終了後、反応溶液の温度を2時間80℃に保った。80℃、15mmHgで蒸留し、最終生成物269g(収率 58%)を複数の異性体の混合物として得た。これらの異性体を1H−NMRスペクトル測定で分析し、2つの異性体を1:0.08のモル比で有する3−クロロプロパ−1−エニルトリメトキシシランであることを確認した。図1に合成した3−クロロプロパ−1−エニルトリメトキシシランの1H−NMRスペクトルチャートを示す。
【0077】
(2)N−2−(アミノエチル)−3−アミノ−−プロペニルトリメトキシシランの製造
撹拌機、温度計、還流冷却機、滴下装置を備えた500mL三口フラスコにエチレンジアミンを121.6g(2.0mol)を仕込み、窒素雰囲気下で100℃まで加温した。滴下装置に3−クロロプロパ−1−エニルトリメトキシシラン100g(0.5mol)仕込み、溶液温度が100〜105℃の範囲になるよう滴下速度を調整しながら滴下した。
滴下終了後、2時間反応溶液の温度を100℃に保ち、冷却した。反応溶液を分液漏斗に移し、下層のトリエチルアミン塩酸塩を除去したのち、150℃、15mmHgで蒸留することで最終生成物78g(収率 60%)を複数の異性体の混合物として得た。これらの異性体を1H−NMRスペクトル測定で分析し、2つの異性体を1:0.08のモル比で有するN−2−(アミノエチル)−3−アミノプロパ−1−エニルトリメトキシシランであることを確認した。図2に合成したN−2−(アミノエチル)−3−アミノプロパ−1−エニルトリメトキシシランの1H−NMRスペクトルチャートを示す。
【0078】
実施例2
N−[m−(アミノメチルフェニル)メチル)]−γ−アミノ−−プロペニルトリメトキシシランの製造
撹拌機、温度計、還流冷却機、滴下装置を備えた1L三口フラスコにm−キシレンジアミンを272.4g(2.0mol)とキシレン200mLを仕込み、窒素雰囲気下で100℃まで加温した。滴下装置に3−クロロプロパ−1−エニルトリメトキシシラン100g(0.5mol)仕込み、溶液温度が110〜120℃の範囲になるよう滴下速度を調整しながら滴下した。滴下終了後、5時間反応溶液の温度を120℃に保ち、60℃まで冷却した。次にナトリウムメトキシドの28%メタノール溶液91.6g(0.48mol)を滴下し、1時間溶液温度を60℃に保ったまま撹拌を続けた。撹拌終了後、溶液を冷却し、濾過を行い副生した塩化ナトリウムを分離した。濾液を150℃/3mmHgにて減圧濃縮したところ、134.4g(収率 80%)の黄色透明な液体が得られた。この化合物を1H−NMRスペクトル測定で分析すると、2つの異性体を1:0.08のモル比で有するN−[m−(アミノメチルフェニル)メチル)]−γ−アミノプロパ−1−エニルトリメトキシシランであることを確認した。図3に合成したN−[m−(アミノメチルフェニル)メチル)]−γ−アミノプロパ−1−エニルトリメトキシシランの1H−NMRスペクトルチャートを示す。
【0079】
実施例3
(1)プロパルギルグリシジルエーテルの製造
撹拌機、温度計、還流冷却機、滴下装置を備えた1L三口フラスコにプロパルギルアルコールを166.2g(3.0mol)と塩化錫0.7g(0.01mol)を仕込み、窒素雰囲気下で100℃まで加温した。滴下装置にエピクロロヒドリン92.5g(1.0mol)仕込み、溶液温度が95〜105℃の範囲になるよう滴下速度を調整しながら滴下した。滴下終了後、溶液温度を100℃に保ち、20時間反応させた。次に反応溶液を90℃まで冷却したのち、16wt%水酸化ナトリウム水溶液325g(3mol)を加え、6時間反応させた。反応終了後、溶液を冷却し、分液漏斗に移した。100mLの純水で3回水洗を行ったのち、無水硫酸ナトリウムを用いて脱水した。濾過にて無水硫酸ナトリウムを除去し、110℃、15mmHgで蒸留し、45g(収率 40%)の透明な液体が得られた。この化合物をH−NMRスペクトル測定で分析し、プロパルギルグリシジルエーテルであることを確認した。図4に合成したプロパルギルグリシジルエーテルのH−NMRスペクトルチャートを示す。
【0080】
(2)3−グリシドキシ−−プロペニルトリメトキシシランの製造
撹拌機、温度計、還流冷却機、滴下装置を備えた200mL三口フラスコにプロパルギルグリシジルエーテルを45g(0.4mol)、0.5wt%塩化白金酸トルエン溶液を0.1g仕込み、窒素雰囲気化で70℃まで加温した。滴下装置にトリメトキシシランを58g(0.48mol)仕込み、溶液温度が70〜80℃になるよう滴下量を調整しながら滴下した。滴下終了後、反応溶液の温度を5時間80℃に保った。150℃、15mmHgで蒸留し、最終生成物56.2g(収率 60%)を複数の異性体の混合物として得た。これらの異性体を1H−NMRスペクトル測定で分析し、2つの異性体を1:0.22のモル比で有する3−グリシドキシプロパ−1−エニルトリメトキシシランであることを確認した。図5に合成した3−グリシドキシプロパ−1−エニルトリメトキシシランの1H−NMRスペクトルチャートを示す。
【0081】
参考例
以下、本発明に係る有機ケイ素化合物を接着助剤として使用した参考例を挙げて説明する。
なお、部は質量部を意味する。
【0082】
参考例1
粘度20,000mPa・s(25℃)の分子鎖両末端がシラノール基(又はヒドロキシジメチルシロキシ基)封鎖のジメチルポリシロキサン100部と、表面をジメチルジクロロシランで処理した噴霧質シリカ15部を均一に混合し、これにテトラメチルグアニジルプロピルトリメトキシシラン0.6部、2−(メチルジメトキシシリル)プロピオン酸エチルヘキシル5部、ジブチル錫ジラウレート0.6部、N−2−(アミノエチル)−3−アミノ−−プロペニルトリメトキシシラン0.5部(実施例1(2))を加え、湿気遮断下で均一になるまで混合して組成物を調製した。

【0083】
参考例2
参考例1において、N−2−(アミノエチル)−3−アミノ−−プロペニルトリメトキシシランの代わりに、N−[m−(アミノメチルフェニル)メチル)]−γ−アミノ−−プロペニルトリメトキシシラン0.5部(実施例2)を用いた以外は参考例1と同様にして組成物を調製した。
【0084】
比較参考例1
参考例1において、N−2−(アミノエチル)−3−アミノ−−プロペニルトリメトキシシランの代わりに、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン0.5部を用いた以外は参考例1と同様にして組成物を調製した。
【0085】
比較参考例2
参考例1において、N−2−(アミノエチル)−3−アミノ−−プロペニルトリメトキシシランの代わりに、N−[m−(アミノメチルフェニル)メチル)]−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン0.5部を用いた以外は参考例1と同様にして組成物を調製した。
【0086】
次に、上記参考例及び比較参考例で調製された調製直後の各組成物を各被着体上に、10mm幅、50mm長さ、2mm厚の形状にヘラで成型し、試験片とした。この試験片を以下の条件で養生して試験片の組成物を硬化させた後、該硬化物をナイフでカットし該カット部を手で剥離して(手で摘んで引張り)、その剥離状態を観察(ナイフカットによる手剥離試験)することで、被着体と硬化物との接着界面の状態を評価した。
初期接着性は、温度23℃,相対湿度50%の環境下48時間養生して試験片の組成物を硬化させた後に評価した。
評価は、硬化物の凝集破壊した面積の割合が100%であったものを「◎」、同80%以上100%未満であったものを「○」、同50%以上80%未満であったものを「△」、同50%未満であったものを「×」とした。結果を表1に示す。
【0087】
【表1】
【0088】
上記簡易接着試験結果から、本発明のアルコキシシリル‐ビニレン基含有ケイ素化合物を室温硬化性オルガノポリシロキサンに配合することで、短時間で基材との接着性、密着性が発現されるのは明らかとなり、本発明のアルコキシシリル‐ビニレン基含有ケイ素化合物は、室温硬化性オルガノポリシロキサンの接着助剤として非常に有用であること分かる。
図1
図2
図3
図4
図5