(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記青色着色剤が、銅フタロシアニン、ヘキサシアノ鉄(II)酸鉄(III)、酸化第一コバルト・酸化アルミニウム混合物、インジゴ及びウルトラマリンからなる群より選ばれる少なくとも一種である、請求項1に記載の食品包装用フィルム。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本実施形態に係るフィルムは、熱可塑性樹脂と、青色着色剤と、を含有する。該フィルムの引張弾性率は110〜180MPaであり、該フィルムの切断時の負荷は80〜150cNである。本実施形態に係るフィルムは、食品包装用フィルムとして好適に用いられる。
【0010】
熱可塑性樹脂は、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂等であってよい。
【0011】
ポリ塩化ビニル系樹脂としては、フィルムの成形性、耐熱性及び流動性に優れる観点から、平均重合度700〜1300のポリ塩化ビニル系樹脂が好ましい。本発明における平均重合度は、JIS K6720−2に準じて測定された平均重合度を意味する。
【0012】
ポリ塩化ビニル系樹脂は、塩化ビニルホモポリマーであってもよく、塩化ビニルとこれに共重合可能なその他のモノマーとの共重合体であってもよい。共重合体は、グラフト共重合体、ブロック共重合体又はランダム共重合体であってよい。その他のモノマーの例としては、エチレン、プロピレン、ポリブテン等のオレフィン、酢酸ビニル、ラウリン酸ビニル等の飽和酸のビニルエステル、アクリル酸メチルエステル、メタクリル酸メチルエステル等の不飽和酸のアルキルエステル、ラウリルビニルエーテル等のアルキルビニルエーテル、マレイン酸、アクリロニトリル、スチレン、メチルスチレン、塩化ビニリデン、フッ化ビニリデンなどが挙げられる。ポリ塩化ビニル系樹脂が共重合体である場合、共重合体における塩化ビニル単位の含有量は、モノマー単位全量基準で10質量%以上であってよい。
【0013】
ポリ塩化ビニル系樹脂は、例えば、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンの三次元ポリマー等とのポリマーブレンド、ポリ塩化ビニル樹脂のアルコール等による後処理物、ポリ塩化ビニル樹脂の含塩素化合物による後処理物であってもよい。これらの場合、ポリ塩化ビニル系樹脂における塩化ビニル単位の含有量は、樹脂全量基準で10質量%以上であってよい。
【0014】
熱可塑性樹脂がポリ塩化ビニル系樹脂である場合、フィルムは、可塑剤を更に含有していてよい。可塑剤としては、エポキシ化アマニ油、エポキシ化大豆油、エポキシ化脂肪酸アルキルエステル等のエポキシ化油、炭素数6〜10個の直鎖又は分岐アルキル基を有するアジピン酸エステル、アセチルクエン酸トリブチル、アセチル化トリエチル等のヒドロキシ多価カルボン酸エステル、セバシン酸ジノルマルブチル等の脂肪酸族二塩基酸エステル、ペンタエリスリトールエステル、ジエチレングリコールベンゾエート等のグリコールエステル、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート等のリン酸エステル、グリセリンジアセトモノラウレート、塩素化パラフィン、ポリエステル系可塑剤などが挙げられる。これらの可塑剤は、1種単独又は2種以上を組み合わせて用いられる。可塑剤の含有量は、包装される食品の種類、包装形態、包装方法等の用途に応じて、ポリ塩化ビニル系樹脂100質量部に対して例えば20〜50質量部の範囲で適宜調整される。
【0015】
ポリエチレン系樹脂は、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、線状超低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン等をモノマー単位とする共重合体であってよい。具体的には、ポリエチレン系樹脂は、エチレンと、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘプテン、1−オクテン等の炭素数3〜10のα−オレフィン、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル等の不飽和カルボン酸エステル、共役ジエン、非共役ジエン等の不飽和化合物などから選ばれる1種又は2種以上との共重合体であってよい。ポリエチレン系樹脂におけるエチレン単位の含有量は、モノマー単位全量基準で50質量%以上であってよい。
【0016】
熱可塑性樹脂の含有量は、フィルム全量基準で、70質量%以上であってよい。
【0017】
青色着色剤は、例えば、可視光領域(380〜750nm)における最大吸収波長が600〜750nmに存在する着色剤である。青色着色剤の可視光領域における最大吸収波長での吸光度は、470nmでの吸光度の好ましくは2倍以上、より好ましくは3倍以上である。具体的には、青色着色剤は、銅フタロシアニン(銅フタロシアニンブルー)、ヘキサシアノ鉄(
II)酸鉄(III)、酸化第一コバルト・酸化アルミニウム混合物、インジゴ又はウルトラマリンであってよい。これらの青色着色剤は、1種単独又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0018】
青色着色剤の含有量は、フィルム全量基準で、0.5質量%以上であってよく、また、2.0質量%以下であってよい。
【0019】
フィルムは、熱可塑性樹脂及び青色着色剤に加えて、その他の成分を更に含有していてもよい。その他の成分としては、防曇剤、熱安定剤、光安定剤、滑剤、充填剤、プレートアウト防止剤、抗酸化剤、離型剤、粘度低下剤、界面活性剤、青色着色剤以外の着色剤、蛍光剤、表面処理剤、架橋剤、加工助剤、粘着剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、アンチブロッキング剤等が挙げられる。
【0020】
フィルムは、熱可塑性樹脂及び青色着色剤を含有する層の一層からなっていてもよく、複数の層からなっていてもよい。フィルムが複数の層からなる場合、フィルムは、例えば第1の表面層と中間層と第2の表面層とをこの順に備えていてよい。この場合、例えば、中間層が青色着色剤を含有していてよい。フィルムは、例えば、各層間の接着性を向上させるために、酸変性ポリオレフィン樹脂等を含有する接着層を更に備えていてもよく、フィルムの耐熱性を向上させるために、ポリアミド系樹脂を含有する耐熱層を更に備えていてもよい。
【0021】
フィルムの厚さは、好ましくは5μm以上、より好ましくは6μm以上であってよく、また、好ましくは12μm以下、より好ましくは10μm以下であってよい。
【0022】
フィルムの引張弾性率は、強度及び伸縮性に優れる観点から、110〜180MPaであり、好ましくは、110〜170MPa、110〜160MPa、120〜180MPa、120〜170MPa、120〜160MPa、130〜180MPa、130〜170MPa、又は130〜160MPaである。
【0023】
フィルムの引張弾性率は、JIS K7161(ISO 527−1)及びJIS K7127(ISO 527−3)に準拠し、23℃において、フィルムを幅40mm、長さ150mm以上の大きさに切り取り、それを幅方向に4つ折りにして10mm幅の試料を準備し、株式会社東洋精機製作所製の引張試験機(例えば、型式:E3−L)を用いて当該試料を測定することにより得られる引張弾性率である。
【0024】
フィルムの切断時の負荷は、強度及び伸縮性の観点から、80〜150cNであり、好ましくは、80〜130cN、80〜100cN、90〜150cN、90〜130cN、又は90〜100cNである。
【0025】
フィルムの切断時の負荷の測定方法について説明する。
図1は、フィルム切断時の負荷の測定方法を説明するための模式図である。まず、幅30cm、長さ100mのフィルムが内径27mm、外径31mmの紙管に巻き付けられて直方体状の化粧箱1(長手方向の長さ:31cm、短手方向の長さ:4.7cm、高さ:4.7cm)に収納された状態から、長さが30cmとなるようにフィルム2を引き出す。次いで、引き出したフィルム2の先端部の中央2aにプッシュプルゲージ3(例えばアイコーエンジニアリング製)を取り付ける。次いで、23℃において、化粧箱1に設けられた金属鋸刃4の刃方向とフィルム2の引き出し方向とのなす角が45°となるようにフィルム2を引っ張り切断した際の負荷をフィルム切断時の負荷として測定する。
【0026】
フィルムの引張弾性率及び切断時の負荷は、可塑剤の含有量(例えば18〜24質量%程度)、青色着色剤の含有量(0.5〜2.0質量%程度)等を調整することにより、上記の範囲内となる。
【0027】
フィルムは、熱可塑性樹脂及び青色着色剤を含有する組成物を、例えば押出成形することにより製造される。具体的には、該組成物を押出機のホッパーに供給しインフレーション法、Tダイ法等で目的とするフィルムが得られる。一般に、フィルムは、作製しつつ巻き取られるが、巻き取られたフィルムは、20m、50m等の所望の長さに更に巻き替えられ、化粧箱に詰められることで製品とされる。
【0028】
フィルムが複数の層からなる場合、フィルムは、各層の構成原料を、それぞれ別々の押出機に投入して溶融押出し、インフレーション、Tダイ法等により各層を共押出して積層することにより得られる。この際、Tダイより押出した溶融物をそのまま、キャスティングロール等で急冷しながら引き取るようにしてフィルムを形成することが好ましい。
【0029】
このようにして得られたフィルムに対して、熱収縮率、自然収縮率等の軽減、幅収縮の発生の抑制などの目的に応じて、加熱ロール間での縦延伸、各種の熱固定、エージング等の熱処理を行ってもよく、防曇性、帯電防止性、粘着性等を付与、促進させる目的で、コロナ処理、熟成等の処理、印刷、コーティング等の表面処理、表面加工などを行ってもよい。
【実施例】
【0030】
以下、実施例に基づいて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0031】
以下の熱可塑性樹脂、青色着色剤及び各種添加剤を用いて表1,2に示す組成を有する樹脂組成物を調製し、各樹脂組成物をTダイ押出機で押出し、厚み8.0μmのフィルムを作製した。
熱可塑性樹脂a1:ポリ塩化ビニル系樹脂(平均重合度1000)
青色着色剤b1:銅フタロシアニン(銅フタロシアニンブルー)
添加剤c1:アジピン酸系ポリエステル(数平均分子量1800)
添加剤c2:アジピン酸ジオクチル
添加剤c3:エポキシ化大豆油
添加剤c4:ジグリセリン脂肪酸エステル
添加剤c5:ソルビタン脂肪酸エステル
添加剤c6:Ca/Zn系安定剤
【0032】
得られた各フィルムについて、引張弾性率及び切断時の負荷の測定、並びに、強度、伸縮性、製膜性及び生産性の評価を実施した。結果を表1〜2に示す。
【0033】
(引張弾性率の測定)
フィルムの引張弾性率は、JIS K7161(ISO 527−1)及びJIS K7127(ISO 527−3)に準拠し、23℃において、フィルムを幅40mm、長さ150mm以上の大きさに切り取り、それを幅方向に4つ折りにして10mm幅の試料を準備し、株式会社東洋精機製作所製の引張試験機(型式:E3−L)を用いて当該試料を測定し、フィルムの引張弾性率とした。
【0034】
(切断時の負荷の測定)
まず、幅30cm、長さ100mのフィルムが内径27mm、外径31mmの紙管に巻き付けられて直方体状の化粧箱1(長手方向の長さ:31cm、短手方向の長さ:4.7cm、高さ:4.7cm)に収納された状態から、長さが30cmとなるようにフィルム2を引き出した。次いで、引き出したフィルム2の先端部の中央2aにプッシュプルゲージ3(例えばアイコーエンジニアリング製)を取り付けた。次いで、23℃において、化粧箱1に設けられた金属鋸刃4の刃方向とフィルム2の引き出し方向とのなす角が45°となるようにフィルム2を引っ張り切断した際の負荷をフィルム切断時の負荷として測定した。
【0035】
(強度の評価)
ステンレスボウルにフィルムをかけた際のフィルムの破れやすさ及びちぎれやすさを目視で観察することにより評価した。
A:フィルムの強度が特に良好である。
B:フィルムの強度が良好である。
C:フィルムの強度に欠ける。
D:フィルムの強度が特に悪く、破れ及びちぎれが多い。
【0036】
(伸縮性の評価)
ステンレスボウルにフィルムをかけた際のフィルムの伸びやすさを目視で観察することにより評価した。
A:フィルムの伸縮性が特に良好である。
B:フィルムの伸縮性が良好である。
C:フィルムの伸縮性に欠ける。
D:フィルムの伸縮性が特に悪い。
【0037】
(製膜性の評価)
Tダイ押出機にて、各樹脂組成物を押出してフィルムの成形を行い、得られたフィルムの外観を観察することで製膜性を評価した。評価基準は、以下のとおりである。なお、評価がA又はBであれば、製膜性に優れているといえる。
A:ほぼ均一の厚みのフィルムが得られた。
B:フィルムの厚みにむらが見られ、長時間の押出でヤケが発生した。
C:フィルムの厚みむらが激しく、比較的短時間でヤケが発生した。
【0038】
(生産性の評価)
Tダイ押出機にて、各樹脂組成物を押出してフィルムの成形を行う際に生じる生産トラブル(穴開き、フィルム切れ、スリット不具合等)の1日当たりの発生回数をカウントすることで生産性を評価した。評価基準は、以下のとおりである。なお、評価がA又はBであれば、生産性に優れているといえる。
A:生産トラブル回数が0〜2回/日
B:生産トラブル回数が3〜4回/日
C:生産トラブル回数が5回/日以上
【0039】
【表1】
【0040】
【表2】
本発明は、熱可塑性樹脂と、青色着色剤と、を含有する食品包装用フィルムであって、フィルムの引張弾性率が110〜180MPaであり、フィルムの切断時の負荷が80〜150cNである、食品包装用フィルムを提供する。