(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の方法は、単一の試料分注機構が、試料に試薬を添加して分析を行うための分注動作に加えて、分析に先立って、試料に希釈液、あるいは前処理液を添加して前処理を行う分注動作と、希釈/前処理済みの試料を反応容器から採取して、別の反応容器に再分注と行う構成となっている。そのため、余分な機構を増やすことなく装置上での自動前処理機能を有する自動分析装置を提供することができるが、前記試料分注機構が前処理を行うための試料分注を行っている間は、分析を行うための試料分注を行えないため、特に前処理を行う分析項目の割合が高い場合には装置の処理能力が大きく低下する。
【0007】
また、単一の試料分注機構で血清、血漿、全血、血球等、複数種類の試料分注を行うことになるが、前記の試料はそれぞれ液性が異なり、例えば、粘度(比粘度)については、血清は1.70〜2.00、血漿は1.72〜2.03、全血は4.40〜4.74、血球は60〜と試料の種類によって大きな差がある。そのため、1μL程度の微量な血清を再現性良く分注を行うため、ノズルの内径を細くすると、全血や血球のように粘度が大きい試料では吸引抵抗が高くなり、吸引ポンプ内の圧力の静定時間が長くなるため、正確で迅速な試料分注の妨げとなる。
【0008】
逆に粘度が大きい試料の吸引に合わせてノズル内径を大きくすると、1μL程度の微量分注域においては分注の再現性が低下するという欠点が生じる。
【0009】
また、全血試料の分析では、全血を遠心処理し、試料容器底部にある血球の吸引を行うため、血清や血漿の採取と違い、ノズルが試料に浸漬する距離が長く、ノズルの洗浄槽、ノズル形状等に配慮が必要であり、また分注動作も血清や血漿の採取の際とは変更が必要であるため、制御が複雑となる。また、特許文献2に記載の方法は、試料を予め希釈テーブルに移して試料の希釈/前処理を行い、反応容器で希釈/前処理された試料の分析を行う構成となっている。
【0010】
上記の方法では、希釈テーブル上で事前に試料の前処理を行うため、希釈テーブルから反応容器への試料分注は試料の分析にのみ専念でき、全血や、血球も前処理が行われ、粘度が血清程度まで低下しており、粘度が試料分注の妨げにならない。
【0011】
しかし、希釈テーブルの追加に伴い、希釈容器の洗浄機構、攪拌機構、試料容器から希釈テーブルに試料を移す希釈ピペット、希釈ピペットで試料を吸引する試料吸引用ポンプ、希釈ピペットのノズルの洗浄槽といった機構点数の増加に伴い、機構の複雑化、装置面積の増加が懸念される。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するための本発明の構成は以下の通りである。
【0013】
複数の反応容器が環状に配列され、回転移動可能な反応ディスクを備え、試料容器の試料と試薬の混合液を測定する測定部を備えた自動分析装置において、試料を所定量吸引し、吸引した試料を所定量吐出する試料分注機構において、採取する試料の種類、液性によって、複数の試料分注機構を使い分ける。例えば、測定用試料として、血清、血漿、前処理済み全血等を採取する試料分注機構と、測定前に希釈/前処理を実施する試料として、全血、血球等の試料の採取を行う試料分注機構を、少なくとも1つずつ備える構成とする。
【0014】
また、前者の試料分注機構(分注ノズル)は、試料を吸引してから吐出するまでに1サイクルを要し、後者の試料分注機構(分注ノズル)は、試料を吸引してから吐出するまでにn倍(n≧2の整数)のサイクルを要する機構である。さらに、後者の試料分注機構が試料を吐出した反応容器に対しては、当該反応容器が前者の試料分注機構による試料分注を行わないよう制御する制御部を備える構成とする。
【0015】
また、前記複数の試料分注機構は独立に、試料採取位置と、前記試料を採取する試料ノズルと、前記試料ノズルを洗浄する洗浄槽を有し、それぞれ独立に動作し、前記反応ディスク上の前記反応容器に対して試料分注可能な構成とする。
【0016】
さらに、前記それぞれの試料採取位置に対して、独立に前記試料容器を供給可能な試料搬送機構(搬送部)を備える。この搬送機構(搬送部)は、装置の外部から投入された試料を収容した容器を搬送する。
【0017】
試料分注機構は、所定量の試料を吸引/吐出するため、一般的には、液面試料内に先端を入れるノズルと、該ノズル内の圧力を低下させることで、浸漬した試料をノズル内に吸引するためのシリンジなどの圧力変化機構とを備える。また、吸引するための試料を収容する試料容器と、ノズル内に吸引した試料を吐出する反応容器の位置が異なっていても、吸引/吐出が可能なように、ノズル位置を移動させるノズル位置移動機構を備えていることが望ましい。
【0018】
ノズル位置移動機構は、一般的には中心軸のまわりに円弧運動するようなアームを備え、アーム先端にノズルを備えたものであるが、これに限らない。試料分注機構が複数備えられているというのは、ノズルが複数あると言い換えても良い。例えば、No.1〜4とノズルが4つあったとして、そのうちの少なくとも2つ、No.1と2はそれぞれ異なる位置に設置された試料容器から希釈/前処理を行う全血、血球のみを試料として採取するように構成されていても良い。
【0019】
また、複数の試料分注機構を使用する場合には、X−Y動作可能か、X−θ動作可能か、あるいは回転軸が2つあるθ−θ機構を備え、双方の試料分注機構の動作が干渉しないように構成することが望ましい。
【0020】
異なる位置から試料を吸引する場合には隣接する採血管であっても複数本はなれた採血管であってもよい。
【0021】
試料搬送機構は試料容器の位置を移動させることができるという意味で、複数の試料容器を周上に配置するサンプルディスクや試料容器を1つまたは複数搭載できるラックを搬送する形態のものであっても良い。
【0022】
複数の試料分注機構は独立に動作可能であり、その動作時間は同一である必要はない。低粘度で、試料の採取に時間がかからない測定用の試料の血清、血漿、前処理済み全血等を採取する試料分注機構に対して、試料の採取に時間がかかる、希釈/前処理を行う全血、血球等の吸引/吐出を専用の試料分注機構で運用し、前記反応ディスク上の前記反応容器の空き状況に応じて重複無く、セルに空きを作らずに試料吐出を行う。
【0023】
複数の試料分注機構のそれぞれが吸引した試料は、同一位置にある前記反応ディスクの前記反応容器に吐出するように構成されていても良く、また前記反応ディスクの異なる位置にある前記反応容器にそれぞれ吐出するように構成しても良い。
【0024】
反応ディスクの異なる位置にある反応容器にそれぞれ試料を吐出するように構成されている場合は、前記一方の試料分注機構が試料を吐出する位置に停止させた反応容器を、次、あるいは複数周期後に前記他方の試料分注機構が試料を吐出する位置に停止するように制御することが望ましい。
【0025】
また、前記複数の試料分注機構の試料ノズルを、吸引する試料の種類、液性に応じて異なる構成とし、例えば、採取する試料の粘度に応じてノズル内径を異なる構成とすることが望ましい。
【0026】
さらに、前記複数の試料分注機構の洗浄槽を異なる構成とし、前記試料ノズルの採取する試料の種類に応じて、前記ノズルの洗浄方法を変更可能な構成と洗浄機構制御手段を備えることが望ましい。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、試料の自動希釈/前処理の工程における無駄な空きサイクルによる処理能力の低下を防ぐことができる。
【0028】
また、採取する試料の種類によって試料分注機構を使い分けるため、採取する試料の粘度等にとらわれることなく、分注精度の向上および、維持が可能となる。
【0029】
さらに、従来の自動分析装置の構成に対して追加する機構は試料分注機構及び、付属の洗浄槽、シリンジポンプ等のみであり、時間あたりの処理能力が高く付加価値の高いコンパクトな自動分析装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、図面を用いて本発明の実施の形態を説明する。
【0032】
図1,
図2は本発明を適用した自動分析装置の一実施例を示す概略図である。
【0033】
反応ディスク1には反応容器2が円周上に並んでいる。反応ディスクはモータなどの駆動機構により、反応ディスクを1サイクルで所定数の反応容器数に相当する距離を回転駆動するよう制御される。試薬ディスク9の中には複数の試薬ボトル10が円周上に載置可能である。反応ディスク1の近くに試料容器15を載せたラック16を移動する試料搬送機構17が設置されている。この搬送機構には、装置の外部から投入された試料を収容した容器を搬送する役割がある。反応ディスク1と試薬ディスク9の間には試薬分注機構7,8が設置されており、各々試薬ノズル7a,8aを備えている。ノズル7a,8aにはそれぞれ試薬用ポンプ18が接続している。反応ディスク1と試料搬送機構17の間には、回転及び上下動可能な試料分注機構11,12が設置されており、各々試料ノズル11a,12aを備えている。各々試料ノズル11a,12aには各々試料用ポンプ19が接続している。
【0034】
試料ノズル11a,12aは回転軸を中心に円弧を描きながら移動して試料容器から反応セルへの試料分注を行い、試料ノズル11aの軌道上には、試料搬送機構上の試料吸引位置23aと、反応ディスク上の試料吐出位置22aおよび希釈/前処理済み試料の試料採取位置23cと、試料ノズルを洗浄するための洗浄槽13が存在し、試料ノズル12aの軌道上には、試料搬送機構上の試料吸引位置23bと、反応ディスク上の試料吐出位置22bと、試料ノズルを洗浄するための洗浄槽14が存在し、試料ノズル11a,12aの軌道が干渉しないように配置されている。搬送機構は、試料吸引位置23aにある試料容器と、試料吸引位置23bにある試料容器とを独立して搬送制御できるよう搬送制御部により制御されている。また、試料搬送機構17は
図1の左から右側にラック16を搬送し、試料吸引位置23aは試料吸引位置23bに対して、搬送機構17の上流側に位置している(
図2参照)。
【0035】
反応ディスク1の周囲には、洗浄機構3、分光光度計4、攪拌機構5,6、試薬ディスク9、試料搬送機構17が配置され、洗浄機構3には洗浄用ポンプ20が接続されている。試薬分注機構7,8、試料分注機構11,12、攪拌機構5,6の動作範囲上に洗浄槽13,14,30,31,32,33がそれぞれ設置されている。また、各機構はコントローラ21(制御部)に接続している。このコントローラ21(制御部)は、反応ディスクの回転駆動や、試料ノズルの駆動、試料吸引、試料吐出の動作や、試料容器の搬送機構などの各種機構を制御する。
【0036】
次に
図2と
図3を使用し、本発明を適用した自動分析装置の基本動作を説明する。
【0037】
本実施例の自動分析装置は反応ディスク1に29個の反応容器2−1〜2−29がある。反応ディスクは1サイクルで反時計回りに6反応容器分の回転と停止を繰り返し、5サイクルで1回転プラス1反応容器分回転する。上記の動作を繰り返すことで反応容器は29サイクルで同一の位置に戻ることになる。また、本実施例では希釈/前処理を必要としない分析項目の試料採取を試料分注機構11が行い、分析前に希釈/前処理を行う試料の採取を試料分注機構12が行う。また、試料分注機構11と試料分注機構12はそれぞれ専用の試料吐出位置22a,22bを持ち、上記の試料吐出位置は反応ディスクの1サイクルの回転に相当する6反応容器分開けることで、試料分注機構12は試料分注機構11に対して、1サイクル前に同一の反応容器に対して、試料を吐出可能である。
【0038】
図3は反応容器2−1が試料吐出位置22bに停止した時をサイクル0として、29サイクルの中で反応容器2の停止位置と、分光光度計4によって測定を行うポイントを示す。反応容器2の動きについて、反応容器2−1を例に説明を行う。
【0039】
サイクル0で試料吐出位置22bあった反応容器2−1はサイクル1で試料吐出位置22aに停止する。サイクル0で試料分注機構12が反応容器2−1に試料を吐出している場合にはサイクル1で試料分注機構11は反応容器2−1には試料を吐出しない。サイクル2で反応容器2−1は第一試薬吐出位置76に停止し、希釈/前処理を必要としない測定用試料には試薬R1を、希釈/前処理を行う試料には希釈液/前処理液を、試薬分注機構7が添加する。サイクル3で反応容器2−1は第一攪拌位置73に停止し、反応液となった反応容器2−1の試料を攪拌機構6で攪拌する。容器2−1の試料が希釈/前処理を必要としない測定用試料の場合には、サイクル3から4とサイクル8から9にかけて分光光度計4の前を通過する際に、反応液の吸光度を測定する。
【0040】
反応容器2−1の試料が希釈/前処理を行う試料の場合には、サイクル6で試料吸引位置23cに停止した際に試料分注機構11によって、希釈/前処理済み試料の採取を行うとともに、試料吐出位置22aに停止している反応容器2−2に試料を再分注する。つまり、反応ディスク1と試薬分注機構8は、全血試料あるいは血球試料に対しては、前処理を施す前処理部として機能し、前処理が完了した試料は試料分注機構11で試料吐出位置22aにある反応容器に吐出される。
【0041】
反応容器2−2に再分注された希釈/前処理済み試料はサイクル7では第一試薬吐出位置76に停止し、希釈/前処理を必要としない測定用試料同様に、分析測定用の試薬R1を試薬分注機構7が添加する。(希釈/前処理済み試料の以後の停止位置における説明は希釈/前処理を必要としない測定用試料同様であるため省略する。)
希釈/前処理を必要としない測定用試料が入った反応容器2−1は、サイクル11で第二試薬吐出位置75に停止し、試薬分注機構8で反応液に試薬R2を添加する。サイクル12で反応容器2−1は第二攪拌位置74に停止し、攪拌機構5が反応液の攪拌を行う。サイクル13から14とサイクル17から18にかけて反応容器2−1は分光光度計4の前を通過し、反応液の吸光度を測定する。
【0042】
サイクル18で反応容器2−1は廃液吸引位置70に停止し、洗浄機構3が測定の終了した反応液を吸引し、同時に洗浄液を加える。次のサイクル19で反応容器2−1はブランク水吐出位置71に停止し、洗浄機構3が洗浄液を吸引し、同時に反応容器のブランク測定を行うためのブランク水を吐出する。サイクル22から23にかけて反応容器2−1は分光光度計4の前を通過し、反応液の吸光度を測定する。サイクル24で反応容器2−1はブランク水吸引位置72に停止し、洗浄機構3がブランク水を吸引し、清浄な状態となり、ステップ29(図示せず)新たな検体の分析に再利用される。
【0043】
以上が本実施例における自動分析装置の基本動作である。次に本発明の詳細について説明を行う。
【0044】
図4は本発明を適用した自動分析装置で前処理を必要としない比色分析項目のみの分析する際のサイクルチャートの一例である。図は横軸に分析のサイクルを取り、反応容器2−1が試料吐出位置22bに停止した時をサイクル0とする。図の縦軸には動作順番と、各試料分注機構が採取する検体と、その検体に依頼されている分析項目と、分析で使用する反応容器の番号を示している。
【0045】
分析サイクルの説明をする。試料分注機構12は前処理用の試料を専用で採取するので、本分析のサイクルチャート内では動作しない。よって、サイクル0で反応容器2−1には何も分注されない。サイクル1では反応容器2−1に試料分注機構11が検体AのAST分析用の試料Sを吐出する。サイクル2では反応容器2−1の試料S中に試薬分注機構7が試薬R1を添加するのと同時に、反応容器2−7に検体AのALT分析用の試料Sを吐出する。サイクル3では反応液となった反応容器2−1の試料Sを攪拌機構6で攪拌すると同時に、反応容器2−7の試料S中に試薬R1の添加、および、反応容器2−13に検体AのγGTP分析用の試料Sを吐出する。次にサイクル3から4と8から9の間で反応容器2−1中の反応液の吸光度を分光光度計4で測定する。サイクル11〜12では反応容器2−1の反応液に試薬分注機構8で試薬R2を添加し、攪拌機構5で反応液の攪拌を行い、サイクル13から14と17から18の間で反応液の吸光度を分光光度計4で測定する。以上のサイクルで分析項目の測定を行った後、サイクル18で反応容器2−1の反応液を洗浄機構3で吸い上げ、洗浄水を注入する。そして、サイクル19で洗浄水を洗浄機構3で吸い上げ、清浄となった反応容器2−1にブランク水を添加する。サイクル23から24の間で反応容器2−1の反応容器ブランク測定を分光光度計4で行う。次のサイクル24で洗浄機構3により反応容器2−1内のブランク水を吸い上げ、清浄な反応容器2−1となり、サイクル30で新たな試料の分析に再利用される。
【0046】
これに対して、
図5は特許文献1に記載されるような従来の自動分析装置で
図4と同一の分析項目を分析する際のサイクルチャートの一例である。従来の自動分析装置の形態としては、本実施例における試料分注機構12が存在しない状態と考え、
図4と同様に、反応容器2−1が試料吐出位置22bに停止した時を0サイクル目とすると、サイクル0で反応容器2−1には何も分注されない。サイクル1からは図示の通り、
図4と同様の分析サイクルチャートとなることは自明であり、詳細の説明については省略する。
【0047】
よって、本願と従来の自動分析装置においては前処理を必要としない比色分析項目のみの分析では処理能力に差は無い。しかし、近年では通常の比色項目に加えて、予め試料の前処理を必要とする項目も存在する。一例として、メタボ検診で使用されるヘモグロビンA1c(HbA1c)分析がある。HbA1c分析は、一般的な生化学分析項目と異なり、全血試料を分析する。全血試料はそのままでは分析しにくいため、溶血処理(赤血球を破壊し、血球の内部成分を溶出させる処理)などの前処理を行うことが普通である。溶血処理を行った試料は、その後、通常の血清試料と同様に試薬を添加し、分析を行う。HbA1cのように、予め試料の前処理を必要な分析項目を、特に単位時間の処理能力が高い自動分析装置で実施する場合には本特許は有効である。
【0048】
では、
図6で本願の自動分析装置において、一般的な生化学分析項目を分析するために試料分注機構11が行う血清吸引と、HbA1c分析を行うために試料分注機構12が行う全血吸引を行う一例を示す。
【0049】
図示の試料分注機構11は血清の液面付近から一般的な生化学項目の分析を行うための試料採取を行うのに対して、試料分注機構12はHbA1c分析のため、遠心分離された全血試料の血球部分(試料容器15底部)から赤血球の採取を行う必要がある。
【0050】
図7は
図6で吸引した試料を反応ディスク1の反応容器2に分注する本発明を搭載した自動分析装置の動作シーケンスの一例である。なお、T0とT1の間、T1とT2との間が1サイクルである。
【0051】
時刻T0からT1にかけて、試料分注機構11は試料吸引位置23aへ移動、試料採取後、試料吐出位置22aへ移動する。試料分注機構11は試料吐出を終えた後、洗浄槽13に移動し試料ノズル11aの洗浄を行う。
【0052】
試料分注機構12は試料吸引位置23bに移動、試料採取を行う。該当試料が
図7に示す遠心分離された血球の場合には、粘度が大きいため、吸引後、試料ノズル25内の圧力が安定するのに時間が掛かる。
【0053】
また、試料採取後は、洗浄槽14にて、試料ノズル25の外周に付いた不要な血清を洗い流す必要がある。試料搬送機構17は試料分注機構11,12で試料の採取が終わり、水平移動の開始とともに、それぞれラック16を移動させ、試料採取位置23a,23bに新しい試料を搬送する(同一の試料で複数の分析項目が依頼されていない場合)。
【0054】
反応ディスク1は試料分注機構11で試料の吐出が終わり、水平移動を開始した後、反応容器2を移動させる。
【0055】
次の時刻T1からT2にかけては、試料分注機構11は新しい試料に対して同様の分注動作を行う。
【0056】
試料分注機構12は洗浄槽14から試料吐出位置22bに移動、試料の吐出後は再び洗浄槽14に戻り試料ノズル12aの洗浄を行う。
【0057】
試料搬送機構17は、試料分注機構12が試料吸引位置23bにある試料の吸引をまだ行っていないので、試料採取位置23bにあるラック16の移動は行わない。一方、試料採取位置23aの試料でその他の項目が依頼されていない場合にはラック16を移動し新たな試料を供給する。
【0058】
反応ディスク1は試料分注機構11,12で試料の吐出が終わり、水平移動を開始した後、反応セルを移動させる。この例では、試料分注機構12が試料吸引から試料吐出まで2倍のサイクルを要する例を示しているが、2倍に限定されるものではなくn倍(n≧2の整数)であればよい。そして、この例では、試料ノズル12aが試料を吐出せずに回転動作させた(T0からT1内の反応容器移動)反応容器に対して、試料ノズル11aによる試料吐出を行っていることが分かる(T1からT2内の試料ノズル11aの試料吐出)。なお、この例では、図示していないが、T2からT3については、試料ノズル12aで吐出された試料が収容された試料容器が、試料吐出位置22aにあるため試料分注(試料吐出)を行わないように制御される。
【0059】
以上のように、血清と、全血の血球では試料の採取方法が大きく異なるため、試料搬送機構17の試料採取位置23a,23bへの試料供給から試料分注機構11、試料分注機構12の分注動作に至るまで独立に制御を行い、反応ディスク1の前記反応容器2の空き状況に応じて前記それぞれの試料分注機構は動作することで反応容器2に空きがなく、装置の単位時間当たりの処理能力が最大となるように動作する。
【0060】
また、
図7から明らかな通り、血球の採取の工程は血清の採血工程よりも多く時間が掛かる。
図7では試料分注機構11の動作時間に対して、試料分注機構12の動作時間が2倍かかる設定とした。特許文献1に記載されるような従来の自動分析装置において、HbA1cの前処理のための試料採取に通常の血清からの試料採取の2倍の時間をかけるということは、少なくとも反応容器2に1つ空きを作ってしまうことになり、処理能力を大きく低下させる原因となる。
【0061】
また、希釈/前処理を必要としない血清試料の単位時間当たりの処理能力を向上させるため、試料分注機構の動作時間を短縮すれば、場合によっては、血清分注の2倍以上の時間をHbA1cの前処理のための試料採取に使用しなければならなくなり、その分だけ反応容器2に空きが出る数が多くなり、処理能力をさらに大きく低下させる原因となる。
【0062】
では、本願における自動分析装置でHbA1c分析を行った実施例と、従来の自動分析装置でHbA1c分析を行った場合の比較を以下に行う。
【0063】
図8は本願における自動分析装置でA〜Oの15検体に対してHbA1cの測定を実施した例である。前述の通り、前処理用の試料採取は試料分注機構12が担当し、前処理済み試料の反応容器への再分注は試料分注機構11が担当する。
【0064】
サイクル0で試料分注機構12は前のサイクル−1(図示は無し)で検体Aから前処理用の試料S′を採取し、反応容器2−1に吐出する。次にサイクル2で反応容器2−1内の試料S′に試薬分注機構7で前処理液を添加すると同時に、試料分注機構12がサイクル1で検体Bから採取した前処理用の試料S′を反応容器2−13に吐出する。サイクル3では前処理液を添加した反応容器2−1の試料を攪拌機構6で攪拌する。
【0065】
サイクル6で反応容器2−1は試料採取位置23cに停止し、試料分注機構11が前処理済みの試料を反応容器2−1から採取すると共に、試料吐出位置22aに停止している反応容器2−2に再分注を行う。再分注された検体Aの前処理済み試料は
図4に示した通常の比色項目の試料分析と同じく試薬R1,R2を添加され分光光度計4で吸光度の測定を行う。
【0066】
以上の動作を繰り返すことで、試料分注機構12は途切れなく前処理試料の分注を続け、分注開始から6サイクル目以降は試料分注機構11が前処理済み試料の再分注を2サイクルごとに途切れなく行い、A検体の分注開始から34サイクルでO検体の再分注までを終える(動作順番31以降のサイクルチャートは省略)。
【0067】
つまり、試料の前処理を開始した直後の数個の反応容器を除いて半分の反応容器は試料の前処理に、もう半分の反応容器は前処理済み試料分析に使用し、反応容器に空きを作らない。
【0068】
図9は特許文献1に記載されるような従来の自動分析装置で
図8同様に、A〜Oの15検体に対してHbA1cの測定を実施した例である。従来の自動分析装置の形態としては、
図5での説明同様に、本実施例における試料分注機構12が存在しない状態と考え、試料分注機構11がHbA1c前処理用試料の採取と、前処理済み試料を反応容器2から採取して、別の反応容器2に再分注も行うものとする。
【0069】
サイクル0で試料吸引位置23aに停止した検体AからHbA1c前処理用の試料S′を吸引した試料分注機構11は、サイクル1で試料吐出位置22aに停止した反応容器2−1に試料S′を吐出する。サイクル2では反応容器2−1の試料S′の中に試薬分注機構7が前処理液を添加するのと同時に、試料分注機構11は検体BからHbA1c前処理用の試料を吸引する。この時、試料吐出位置22aに停止の反応容器2−7は使用されない。サイクル3では前処理液が加えられた反応容器2−1の試料S′を攪拌機構6で攪拌すると同時に、反応容器2−13に検体BのHbA1c前処理用の試料S′を吐出する。次にサイクル6では反応容器2−1は試料吸引位置23cに停止し、試料分注機構11が前処理済みの試料S′を採取し、試料吐出位置22aに停止の反応容器2−2に吐出する。サイクル7では反応容器2−1から反応容器2−2に再分注された前処理済み試料に、試薬分注機構7で試薬R1を添加し、その後、サイクル19まで分析測定を行い、サイクル23から29で洗浄とブランク測定を行いサイクル35(図示せず)で次の分析に再利用される。また、サイクル7で試料分注機構11は次のサイクル8で反応容器2−13に入った希釈済み試料S′を採取しなければならず、吸引と吐出に2サイクル必要なHbA1c前処理用の試料の採取はできないため、休みとなり、試料吐出位置22aに停止の反応容器2−8は使用されない。試料の前処理に使用された反応容器2−1はサイクル18で反応容器2−1の反応液を洗浄機構3で吸い上げ、洗浄水を注入する。そして、サイクル19で洗浄水を洗浄機構3で吸い上げ、清浄となった反応容器2−1にブランク水を添加する。サイクル23から24の間で反応容器2−1の反応容器ブランク測定を分光光度計4で行う。次のサイクル24で洗浄機構3により反応容器2−1内のブランク水を吸い上げ、清浄な反応容器2−1となり、サイクル30で新たな試料の分析に再利用される。
【0070】
以上のように、特許文献1に記載されるような従来の自動分析装置においては、HbA1c前処理用の試料の採取に複数サイクル(
図9の例では2サイクル)必要な場合には、サイクル2のように試料分注機構11がHbA1c前処理用の試料の吸引時と、サイクル7のように試料分注機構11が次のサイクルで前処理済み試料の採取を行うため、HbA1c前処理用の試料採取にも行けない時、反応容器2に空きが生じてしまう。結果的にA検体の分注開始からO検体の再分注までを終える54サイクル必要となり、
図8に示した本願の自動分析装置より同じ数の検体を処理するのに20サイクル分も時間を必要とする(動作順番30以降のサイクルチャートは省略)。
【0071】
図10は、本願における自動分析装置でA〜Iの9検体に対して前処理を必要としない比色分析項目と、前処理を必要とするHbA1cの混在分析を実施した例である。前述の通り、前処理用の試料採取は試料分注機構12が担当し、前処理を必要としない比色分析項目と前処理済み試料の反応容器への再分注は試料分注機構11が担当する。
【0072】
反応容器2−1が試料吐出位置22bに停止した時をサイクル0とすると、サイクル0では試料採取位置23bに採取する試料は無いので、反応容器2−1には何も吐出されない。次にサイクル1では反応容器2−1に試料分注機構11が検体AのAST分析用の試料Sを吐出する。サイクル2以降は、反応容器2−1への分析動作については
図4における説明と同一であるので省略をする。
【0073】
サイクル1〜4にかけてはA検体のAST,ALT,γGTP,CHE用の試料吐出を行い、サイクル5において、反応容器2−25に試料分注機構11が検体BのTG分析用の試料Sを吐出する。
【0074】
サイクル5から6にかけて、試料搬送機構17は試料吸引位置23aから試料吸引位置23bへ検体Bの入った試料容器15を移動すると同時に、検体Cを試料吸引位置23aに移動する。サイクル6では、試料分注機構12がB検体のHbA1c前処理用試料S′の吸引を行うと同時に、試料分注機構11がC検体のAST分析用試料Sの吸引と、反応容器2−2への吐出を行う。サイクル7では、試料分注機構12がB検体のHbA1c前処理用試料S′を反応容器2−14へ吐出すると同時に、試料分注機構11がC検体のALT分析用試料Sの吸引と、反応容器2−8への吐出を行う。サイクル8では、試料採取位置23bに試料が無いので、試料分注機構12は動作せず、試料分注位置22aに停止の反応容器2−14には前のサイクル7で吐出されたB検体のHbA1c前処理用試料S′が入っているので、試料分注機構11は休みとなる。
【0075】
次に、サイクル9から10にかけては試料分注機構11が検体CのγGTP,TG分析用の試料が各反応容器に吐出する。サイクル10から11にかけては試料搬送機構17は試料吸引位置23aから試料吸引位置23bへ検体Cの入った試料容器15を移動すると同時に、検体Dを試料吸引位置23aに移動する。
【0076】
サイクル11では試料分注機構11がD検体のAST分析用試料Sの吸引と、反応容器2−3への吐出を行う。一方、試料分注機構12は試料吸引位置23bにHbA1c分析予定のC検体があるが、サイクル11では試料の吸引を行わず、休みとする。これは、仮にサイクル11でC検体のHbA1c前処理用試料S′を吸引したとしても、次のサイクル12で試料分注位置22bに停止する反応容器2−15はサイクル13で試料分注機構11が検体Bの前処理済み試料の再分注を実施する予約が入っており、C検体のHbA1c前処理用試料S′を吐出できないためである。
【0077】
サイクル12から17にかけて、試料分注機構12は検体C,E,FのHbA1c前処理用試料S′の吸引と吐出をしているのに対して、試料分注機構11はあらかじめサイクル13で試料吸引位置23cに停止する反応容器2−14に入った検体Bの前処理済み試料の反応容器2−15への再分注が予定されており、それ以外の12,14から17サイクルは、検体Gの試料S吐出を試料分注機構12が吐出しなかった反応容器を穴埋めする形で分注動作を行う。このように、ある反応容器に対して試料の吐出を行う際には、優先順位がある。反応容器からの試料吸引は試料吸引位置23cに止まった時にしかできないので、試料吐出が第一優先となる。
【0078】
また、試料吸引位置23bからの試料吐出が第二優先、試料吸引位置23aからの試料吐出が第三優先となる。これは、試料の吸引と吐出で2サイクル必要な試料分注機構12が反応容器に空きを作っても、1サイクルで試料の吸引と吐出が可能な試料分注機構11が空いた反応セルを上記の通り穴埋めかのうであり、また、試料搬送機構17の下流側の試料分析とラックの移動を優先させることで、上流から来るラックの移動と試料分注機構11の試料採取を詰まらせることを防ぐことができる。また、サイクル12から17にかけて、は試料吸引位置23bでは試料がC,E,Fと入れ替わっているのに対して、試料吸引位置23aでは検体Gが留まっているが、これは、本願の自動分析装置の試料搬送機構が各試料吸引位置に対して、独立に試料を供給できるためである。
【0079】
つまり、試料分注機構11と12は、それぞれの試料吸引位置に吸引対象の試料がある場合があり、試料同士の混合を防ぐため、予め優先順位を決定することが望ましく、上記優先順位が望ましい。本実施例では、上記の優先順位により、吸引やと吐出が制御される例を示している。言い換えれば、この優先順位を考慮して、試料吸引や試料吐出が何サイクル目で行うべきかを予め制御部側でスケジューリングされる。従い、第一優先に従えば、前処理用の試薬添加が行われた試料を、試料吸引位置23cの反応容器から吸引し、試料吐出位置22aに吐出するサイクルがある場合、つまり、予定されている場合には、このサイクル前のサイクルで予定されるはずの、試料分注機構12での試料の吐出は行わずに反応ディスクを回転動作させる制御を行う。また、第二優先に従えば、試料分注機構12が、あるサイクルで反応容器に試料を吐出した場合に、試料分注機構11の試料吐出位置22aに同じ反応容器が来るサイクルで、この反応容器には試料を吐出せず反応ディスクを回転動作させ、加えて、この後のサイクルで、同じ容器に前処理用の試料添加を行う。また、第三優先に従えば、上記第一と第二優先に従った上で、試料分注機構11の試料吐出位置22aの反応容器に前処理済み試料の再分注や、前処理用の試料が分注されない場合に、血清などの試料が分注される。このような優先順位とすることで、試料が収容されない反応容器の空きを効率よく防ぐことができる。
【0080】
以上のように、試料吸引位置23a及び試料吸引位置23bに対して、試料の供給が途切れない限り、本願の自動分析装置においては、反応容器2に空き無く、試料の前処理と、分析測定を行うことができる。
【0081】
これに対して、
図11は特許文献1に記載されるような従来の自動分析装置で
図10同様に、A〜Iの9検体に対して前処理を必要としない比色分析項目と、前処理を必要とするHbA1cの混在分析を実施した例である。
【0082】
詳細な分析動作については、前述の
図5および
図9における説明の組み合わせであるため、省略するが、サイクル6では検体BのHbA1c前処理用試料S′を吸引しているため、反応容器2−2が空きとなり、サイクル18においても試料採取位置にある試料が検体FのHbA1c前処理用試料であるのに対して、サイクル19で検体Cの前処理済み試料S′の再分注を行わなければならないため、反応容器2−2が空きとなっている(動作順番30以降のサイクルチャートは省略)。このように反応容器2に空きが発生した結果、本願において、29サイクル要した分注作業に特許文献1に記載されるような従来の自動分析装置では34サイクルと5サイクル多く要し、処理能力が低下していることがわかる。
【0083】
以上の実施例と異なる試料分注機構の使い分けとして、希釈/前処理済試料の再分注を行うための試料吸引位置23dを
図12の如く、試料分注機構12の試料ノズル12aの軌道上に設け、希釈/前処理を行わない項目は試料分注機構11が担当し、希釈/前処理を行う項目であるHbA1c等は試料分注機構12で行う構成とすることも本願では可能である。しかし、上記の構成においては、
図13のサイクルチャートに示すとおり、サイクル1のように試料の吸引中のため空きとなる反応容器2−7や、サイクル6のように再分注用の試料を待つため空きとなる反応容器2−8があるため、
図2,
図8の実施例で29サイクル要した分注作業を行うのに、
図12,
図13の実施例では54サイクル必要となり、著しく処理能力が低下するため、単位時間当たりの処理能を上げるためには
図2に示す試料ノズルの使い分けの方が望ましい。
【0084】
また、
図6に示す例ように、本願においては、試料ノズル24,25を、試料の液面近くの血清と試料容器15の底にある血球の採取で使い分ける上で、ノズルの外形やノズル内径をそれぞれ最適化することができる。例えば高速で比較的粘度の低い血清の分注を行う試料ノズル11aは剛性が高く、内径を細くすることで、高精度で安定した試料分注が可能となる。逆に比較的粘度の高い全血や血球の分注を行う試料ノズル12aは、試料に浸漬する距離において、突起等が無く洗い易い形状とし、また、先端の内径を試料ノズル11aと比較して太くすることで吸引抵抗を下げてノズル内圧の静定時間を短くすることで、試料分注機構12のサイクルタイムを短縮することが可能となる。従い、試料ノズル11aは、試料ノズル12aに対し、内径が細いことが望ましく、かつ、試料内への突っ込み量が少ないように制御されることが望ましい。
【0085】
また、本願においては、各試料分注機構が洗浄槽を持つため、
図14に示す例のように、試料ノズル24,25がそれぞれ受け持つ試料の液性や試料に対するノズルの突っ込み量に合わせて、洗浄槽28,29の構成を変更して、最適な形状を選択することも可能である。
図14の実施例では、試料に対する浸漬距離の短い(突っ込み量が少ない)試料ノズル24を有する試料分注機構11の洗浄槽28に対して、試料に対する浸漬距離の長い試料ノズル25を有する試料分注機構12の洗浄槽29は洗浄距離を長く取れる構造とし、洗浄最適化によるキャリーオーバーの低減と、洗浄時間の低減によるサイクルタイム短縮を可能な構成とした。洗浄槽28は図示するように試料ノズル24の外壁を洗浄する洗浄ノズルを備え、ここから洗浄水が噴出される。また、洗浄槽29は図示するように試料ノズル25の外壁を洗浄する洗浄ノズルを備え、ここから洗浄水が噴出される。本願においては、試料ノズル25は試料ノズル24に比べ、試料に対する突っ込み量が多いため、洗浄槽29の洗浄ノズルによって洗浄される領域は、洗浄槽28の洗浄ノズルによって洗浄される領域よりも大きい。
【0086】
また、
図15は本発明を適用した自動分析装置の他の実施例である。一方の試料分注機構34がθ−θ機構を他方の試料分注機構35がX−θ機構を備え、双方の試料分注機構の動作が干渉しないように構成する。機構の配置によってはθ回転機構、あるいはX−Y機構をどちらか、あるいは両方に組み合わせることも可能である。また、試料の搬送手段として、複数の試料搬送機構36,37を備える(2つである必要は無い)ことで、試料吸引位置23a,23bに対して、独立かつより自由度の高い試料の供給も可能である。
【0087】
また、
図1,
図2の本発明を適用した自動分析装置においては、試料分注機構11と試料分注機構12はそれぞれ専用の試料吐出位置22a,22bを持ち、上記の試料吐出位置は反応ディスクの1サイクルの回転に相当する6反応容器分開けることで、試料分注機構12は試料分注機構11に対して、1サイクル前に同一の反応容器に対して、試料を吐出可能であるが、前記試料吐出位置22bに停止の反応容器(例えば
図2の反応容器2−7)に、前記試料分注機構12の試料ノズル12aが試料を吐出予定をしていた際に、試料採取中にノズルの詰まり等の異常が発生し、前記反応容器2−7への試料吐出をキャンセルした場合、前記試料分注機構12の異常と前記反応容器2−7への試料吐出キャンセルの情報を、前記試料分注機構1にフィードバックする。前記反応ディスク1は次サイクルで6反応容器分反時計回りに回転し、前記反応容器2−7は前記試料吐出位置22aに移動する。このとき前記試料分注機構1は前記反応容器2−7が前記試料吐出位置22aに移動する少なくとも1サイクル前に前記試料分注機構12の異常と前記反応容器2−7への試料吐出キャンセルの情報をフィードバックされているため、前記反応容器2−7が前記試料吐出位置22aに移動し、停止した際に、反応容器に空きを作らないよう、試料吸引位置23aにある試料容器15から試料を採取し、記試料吐出位置22aに停止の前記反応容器2−7に試料を吐出するよう制御する。このように、前記試料分注機構11と前記試料分注機構12がそれぞれ専用の前記試料吐出位置22a,22bを持ち、上記の試料吐出位置は反応ディスクの1サイクルの回転に相当する6反応容器分開けることで前記試料分注機構12の異常を前記試料分注機構11にフィードバックすることで反応容器に空きを作らずに試料分注を継続することができる。
【0088】
このように、試料分注機構12が、あるサイクルで反応容器に前処理用の試薬添加を行う試料の吐出することが予定されていた場合、かつ、この前のサイクルで試料分注機構12の異常が検出された場合に、この異常検出に基づき、試料分注機構11は、試薬添加を行う予定のサイクルと異常検出されたサイクルとの間で、前処理用の試薬添加を行う試料を吐出する予定であった反応容器に、血清などの試料を吐出することができる。例えば、詰まり異常の場合には、試料分注機構12に、圧力センサなどの詰まり検知機構を設け、この詰まりを検知した情報を制御部に伝達し、試料分注機構11の試料分注と吐出を制御する。
【0089】
なお、本実施例では、試料分注機構11と試料分注機構12はそれぞれ専用の試料吐出位置22a,22bを持ち、上記の試料吐出位置は反応ディスクの1サイクルの回転に相当する6反応容器分開ける例を示したが、本発明は、1サイクルの回転に相当する反応容器分開けることに限定されるものではなく、少なくとも試料吐出位置22bにある反応容器が、3サイクル以内で試料吐出位置22aに到達することが望ましく、本実施例のように、試料吐出位置同士は1サイクルで回転移動可能な距離に相当する反応容器の数だけ離れていることが望ましい。このサイクル数が増えることにより、前処理が必要な試料に対し、前処理用の試薬の添加が遅れ、試料を吐出してから測定結果が出るまでの時間が長くなるからである。
【0090】
また、本実施例では、試料吐出位置22aと試料吸引位置23cとを隣接させた例を示したが、これに限らず、数反応容器離してもよい、これらの位置関係は、前処理に必要な時間や反応ディスクの大きさに依存するため、反応容器数個分を開けて、より長い前処理時間を行うように構成してもよい。
【0091】
また、試料分注機構11(分注ノズル11a)と試料分注機構12(分注ノズル12a)は、反応ディスクと搬送機構17の間に配置されることが望ましい。複数の試料分注機構を、この空きスペースに集約して配置することで、装置の小型化が可能となる。また、試料分注機構の回転駆動の距離やラック16の移動距離を短くすることができ、スループットの向上が可能となる。また、ラックが搬送される方向に対して、試料分注機構12は、試料分注機構11の上流側に配置することが望ましい。前述の優先順位により、試料分注機構12の吐出動作は、試料分注機構11よりも優先されているため、試料分注機構12の試料吸引位置に吸引対象となる容器を載せたラックが停滞する可能性が低く、ラックが渋滞し、試料分注機構11に新たなラックが搬送されないことを防げるためである。
【0092】
以上に示したように、本発明においては、試料容器内の試料であって、血清、血漿、全血、血球、尿等の採取する試料の種類、液性に最適な複数の試料分注機構を備え、前記複数の試料分注機構はそれぞれ、試料採取位置と、前記試料を採取する試料ノズルと、前記試料ノズルを洗浄する洗浄槽を有し、それぞれ独立に動作し反応ディスク上の反応容器に対して試料分注可能であり、前記それぞれの試料採取位置に対して、試料搬送機構で試料容器を独立に供給可能とすることで、試料の自動希釈/前処理の工程における無駄な空きサイクルによる処理能力の低下を防ぐことができる。一方の試料分注機構で試料を吐出した反応容器に対しては、他方の試料分注機構で試料分注を行わないように制御するため、試料同士が混合されることがない。また、自動希釈/前処理に用いる試料ノズルが試料を吸引してから吐出するまでにn倍(n≧2の整数)サイクルを要し、このn倍のサイクルのうちこの試料ノズルが試料を吐出せずに、反応ディスクを回転駆動させた反応容器に対して、血清などに用いる試料ノズルが試料吐出を行うように制御するため、無駄な空きサイクルによる処理能力の低下を防ぐことができる。
【0093】
また、採取する試料の種類によって試料分注機構を使い分けるため、採取する試料の粘度等にとらわれることなく、分注精度の向上および、維持が可能となる。
【0094】
さらに、従来の自動分析装置の構成に対して追加する機構は試料分注機構及び、付属の洗浄槽、シリンジポンプ等のみであり、時間あたりの処理能力が高く付加価値の高いコンパクトな自動分析装置を提供することができる。