【実施例】
【0058】
まず、参考例を説明する。
参考例では、蓄熱装置を設けずに、熱電変換モジュールの高温側を加熱し、冷却側を冷やし、時間経過における高温側及び低温側の温度変化、並びに熱電変換モジュールの開放電圧を測定した。
参考例においては、熱電変換モジュールとして以下のモジュールを用いた。
商品名:サーモ・モジュール
型番:T150−60−127
メーカー名:S.T.S社
構成:
1.熱電素子:Bi−Te系(実測素子サイズ:略□1.3×1.5mm)
2.素子数 :254本(127対)
3.モジュールサイズ:39.6×39.6×4.16(mm)
また、参考例において、熱電変換モジュールの高温側には肉厚10m/mの低炭素鋼板を低温側に水冷低炭素鋼板ボックスを配置し、高温側の低炭素鋼板をバーナーにより間欠加熱した。
【0059】
図12は、参考例における熱電変換モジュールの高温側及び低温側の温度変化、並びに熱電変換モジュールの開放電圧の変化を示す図である。
一点鎖線は、熱電変換モジュールの高温側の温度変化を示す。
二点鎖線は、熱電変換モジュールの低温側の温度変化を示す。
実線は、熱電変換モジュールの開放電圧の変化を示す。
図12に示すように、熱電変換モジュールの高温側の温度が激しく変動し、この高温側の温度変動により、熱電変換モジュールの開放電圧の出力も激しく変動することが確認できた。また、高温側の温度が200℃を超えた場合、熱電変換モジュールが破損することが確認できた。
【0060】
以下、本発明について、実施例を挙げて詳細に説明する。なお、本発明は以下に示す実施例に何ら限定されるものではない。
以下に説明する実施例1〜6では、実施形態の蓄熱装置の所定箇所に測定装置(グラフテック社製:midi LOGGER GL200)に接続された熱電対を設け、蓄熱装置の吸熱側蓄熱部を熱源により加熱し、時間経過における上記所定箇所の温度変化を測定した。また、実施例7〜10では、熱エネルギー変換システムの所定箇所の温度変化に加え、熱電変換モジュールの開放電圧を測定した。
<実施例1>
実施例1は、変形例2に係る蓄熱装置10A’(
図5参照)を用いた実施例である。
図13は、実施例1において、蓄熱装置10A’に熱電対を設けた位置を示す図である。
測定箇所A(
図13中点線)に設けた熱電対は、熱源中央部の温度変化を測定する。
測定箇所B(
図13中一点鎖線)に設けた熱電対は、管状体12a中央部に充填された合金(1)の温度変化を測定する。
測定箇所C(
図13中二点鎖線)に設けた熱電対は、管状体12aの耐熱性枠体11A近傍に充填された合金(1)の温度変化を測定する。
測定箇所D(
図13中太い点線)に設けた熱電対は、熱源の耐熱性枠体11A近傍の温度変化を測定する。
測定箇所E(
図13中太い一点鎖線)に設けた熱電対は、耐熱性枠体11Aの管状体12a近傍に充填された合金(1)の熱源側の温度変化を測定する。
測定箇所F(
図13中太い二点鎖線)に設けた熱電対は、耐熱性枠体11A中央部に充填された合金(1)の温度変化を測定する。
測定箇所G(
図13中実線)に設けた熱電対は、耐熱性枠体11Aの放熱側近傍に充填された合金(1)の温度変化を測定する。
測定箇所H(
図13中破線)に設けた熱電対は、耐熱性枠体11Aの放熱側の温度変化を測定する。
【0061】
図14は、実施例1における所定箇所の温度変化を示す図である。
図14中における各線は、以下のものを示す。
点線は、測定箇所Aにおいて測定された熱源中央部の温度変化を示す。
一点鎖線は、測定箇所Bにおいて測定された管状体12a中央部に充填された合金(1)の温度変化を示す。
二点鎖線は、測定箇所Cにおいて測定された管状体12aの耐熱性枠体11A近傍に充填された合金(1)の温度変化を示す。
太い点線は、測定箇所Dにおいて測定された熱源の耐熱性枠体11A近傍の温度変化を示す。
太い一点鎖線は、測定箇所Eにおいて測定された耐熱性枠体11Aの管状体12a近傍に充填された合金(1)の温度変化を示す。
太い二点鎖線は、測定箇所Fにおいて測定された耐熱性枠体11A中央部に充填された合金(1)の温度変化を示す。
実線は、測定箇所Gにおいて測定された耐熱性枠体11Aの放熱側近傍に充填された合金(1)の温度変化を示す。
破線は、測定箇所Hにおいて測定された耐熱性枠体11Aの放熱側の温度変化を示す。
【0062】
実施例1では、合金(1)として50Sn−50Zn合金を用い、熱源により間欠加熱した。
図14に示すように、約60分間の加熱により、加熱部の温度は450〜470℃まで上昇したが、耐熱性枠体11Aの放熱側近傍に充填された合金(1)は、いったん250〜270℃まで上昇するが、その後50〜60分間一定範囲の温度(50Sn−50Znの共晶温度である199℃前後)に保たれている。
よって、本発明の蓄熱装置が一定範囲温度の熱を蓄えられることを確認できた。
【0063】
図15は、実施例2〜9において、蓄熱装置又は熱エネルギー変換システムに熱電対を設けた位置を示す図である。
測定箇所A(
図15中点線)に設けた熱電対は、バーナーにより加熱されている加熱部の温度変化を測定する。
測定箇所B(
図15中一点鎖線)に設けた熱電対は、合金(1)の熱源側の温度変化を測定する。
測定箇所C(
図15中二点鎖線)に設けた熱電対は、合金(1)の合金(2)側の温度変化を測定する。
測定箇所D(
図15中太い一点鎖線)に設けた熱電対は、合金(2)の合金(1)側の温度変化を測定する。
測定箇所E(
図15中太い二点鎖線)に設けた熱電対は、合金(2)の合金(1)側とは反対側の温度変化を測定する。
測定箇所F(
図15中破線)に設けた熱電対は、耐熱性枠体11における加熱部とは反対側の温度変化を測定する。
測定箇所G(
図15中太い点線)に設けた熱電対は、冷却装置30の冷媒によって冷却されている冷却部の温度変化を測定する。
【0064】
図16〜23は、各実施例における所定箇所の温度変化や開放電圧の変化を示す図であり、各図中における各線は、以下のものを示す。
点線は、測定箇所Aにおいて測定された加熱部の温度変化を示している。
一点鎖線は、測定箇所Bにおいて測定された合金(1)の熱源側の温度変化を示す。
二点鎖線は、測定箇所Cにおいて測定された合金(1)の合金(2)側の温度変化を示す。
太い一点鎖線は、測定箇所Dにおいて測定された合金(2)の合金(1)側の温度変化を示す。
太い二点鎖線は、測定箇所Eにおいて測定された合金(2)の合金(1)側とは反対側の温度変化を示す。
破線は、測定箇所Fにおいて測定された耐熱性枠体11における加熱部とは反対側の温度変化を示す。
太い点線は、測定箇所Gにおいて測定された冷却装置30の冷媒の温度変化を示す。
実線は、熱電変換モジュール20の開放電圧の変化を示す。
【0065】
<実施例2>
実施例2〜7は、第1実施形態に係る蓄熱装置10(
図1参照)を用いた実施例である。
図16は、実施例2における蓄熱装置10の所定箇所の温度変化を示す図である。
実施例2では、耐熱性枠体における100mm×100mm×50mmの2つの空間に合金(1)及び(2)をそれぞれ充填し、合金(1)として15Al−85Zn合金を用い、合金(2)として30Sn−70Zn合金を用い、バーナーにより間欠加熱した。
図16に示すように、4,5分間の加熱により、加熱部の温度は500〜600℃まで上昇したが、この加熱部の温度変化に対して合金(1)の温度変化は緩やかであり、合金(2)は30Sn−70Zn合金の共晶温度(199℃)まで温度が上昇すると一定範囲の温度(199℃前後)に保たれている。また、合金(2)はバーナーをオフにし加熱を止めた後20〜30分間一定範囲の温度(199℃前後)に保たれている。
よって、本発明の蓄熱装置が一定範囲温度の熱を蓄えられることを確認できた。
【0066】
<実施例3>
図17は、実施例3における蓄熱装置10の所定箇所の温度変化を示す図である。
実施例3では、耐熱性枠体における100mm×100mm×50mmの2つの空間に合金(1)及び(2)をそれぞれ充填し、合金(1)として15Al−85Zn合金を用い、合金(2)として30Sn−70Zn合金を用い、バーナーにより連続加熱した。
図17に示すように、30〜35分間の加熱により、合金(1)の温度が300〜400℃となっても、合金(2)は30〜40分間一定範囲の温度(30Sn−70Zn合金の共晶温度である199℃前後)に保たれている。
よって、本発明の蓄熱装置が一定範囲温度の熱を蓄えられることを確認できた。
【0067】
<実施例4>
図18は、実施例4における蓄熱装置10の所定箇所の温度変化を示す図である。
実施例4では、耐熱性枠体における100mm×100mm×50mmの2つの空間に合金(1)及び(2)をそれぞれ充填し、合金(1)として86Al−11Si−3Cu合金を用い、合金(2)として80Al−20Mg合金を用い、バーナーにより間欠加熱した。
図18に示すように、4〜5分間の加熱により、合金(1)の温度が520〜580℃となっても、合金(2)は30〜40分間一定範囲の温度(80Al−20Mg合金の共晶温度である450℃前後)に保たれている。
よって、本発明の蓄熱装置が一定範囲温度の熱を蓄えられることを確認できた。
【0068】
<実施例5>
図19は、実施例5における蓄熱装置10の所定箇所の温度変化を示す図である。
実施例5では、耐熱性枠体における100mm×100mm×50mmの2つの空間に合金(1)及び(2)をそれぞれ充填し、合金(1)として80Al−20Ni合金を用い、合金(2)として93Al−7Si合金を用い、バーナーにより間欠加熱した。
図19に示すように、40〜50分間の加熱により、合金(1)の温度が600〜700℃となっても、高温側の合金(1)の共晶点で吸熱されるため、合金(2)は一定範囲の温度(93Al−7Si合金の共晶温度である577℃前後)に保たれている。
よって、本発明の蓄熱装置が一定範囲温度の熱を蓄えられることを確認できた。
【0069】
<実施例6>
図20は、実施例6における蓄熱装置10の所定箇所の温度変化を示す図である。
実施例6では、耐熱性枠体における100mm×100mm×50mmの2つの空間に合金(1)及び(2)をそれぞれ充填し、合金(1)及び合金(2)として30Sn−70Zn合金を用い、バーナーにより間欠加熱した。
図20に示すように、2,3分間の加熱により、加熱部の温度は300〜400℃まで上昇したが、この加熱部の温度変化に対して合金(1)の温度変化は緩やかであり、合金(2)は30Sn−70Zn合金の共晶温度(199℃)まで温度が上昇すると一定範囲の温度(199℃前後)に保たれている。また、実施例2と比べると一定範囲の温度に保たれている時間が短いものの、合金(2)はバーナーをオフにし加熱を止めた後10〜15分間一定範囲の温度(199℃前後)に保たれている。
【0070】
<実施例7>
図21は、実施例7における熱エネルギー変換システム1の所定箇所の温度変化及び熱電変換モジュール20の開放電圧の変化を示す図である。
実施例7では、耐熱性枠体における100mm×100mm×50mmの2つの空間に合金(1)及び(2)をそれぞれ充填し、合金(1)として15Al−85Zn合金を用い、合金(2)として30Sn−70Zn合金を用い、バーナーにより間欠加熱した。
また、実施例7においては、熱電変換モジュール20として以下のモジュールを用いた。
商品名:サーモ・モジュール
型番:T150−60−127
メーカー名:S.T.S社
構成:
1.熱電素子:Bi−Te系(実測素子サイズ:略□1.3×1.5mm)
2.素子数 :254本(127対)
3.モジュールサイズ:39.6×39.6×4.16(mm)
また、熱電変換モジュール20の電極と蓄熱装置10との接触面には伝熱シート(グラファイトシート)を用いた。
また、熱電変換モジュール20の冷却装置30側の電極には、グリース(東レ・ダウコーニング社製:SC102 COMPOUND(熱伝導材))を塗布した。
【0071】
図21に示すように、加熱開始時(0分)から約20分〜約100分の間及び約160分〜約280分の間において、合金(2)は一定範囲の温度(30Sn−70Znの共晶温度である199℃前後)に保たれ、熱電変換モジュール20の開放電圧は2.5V前後に維持されていることから、熱電変換モジュール20の開放電圧は合金(2)の温度に追随することが確認できた。
【0072】
<実施例8>
図22は、実施例8における熱エネルギー変換システム1の所定箇所の温度変化及び熱電変換モジュール20の開放電圧の変化を示す図である。
実施例8では、耐熱性枠体における100mm×100mm×50mmの2つの空間に合金(1)及び(2)をそれぞれ充填し、合金(1)として80Al−20Ni合金を用い、合金(2)として93Al−7Si合金を用い、バーナーにより間欠加熱した。
また、実施例8においては、熱電変換モジュール20として以下のモジュールを用いた。
商品名:ユニレグ型Mg
2Si熱電変換モジュール
型番:試作品
メーカー名:日本サーモスタット株式会社
構成:
1.熱電素子:Mg
2Si(素子サイズ:4mm□×10mm)
2.素子数 :9本
3.モジュールサイズ:28×28×12(mm)
また、熱電変換モジュール20の冷却装置30側の電極には、グリース(東レ・ダウコーニング社製:SC102 COMPOUND(熱伝導材))を塗布した。
【0073】
図22に示すように、加熱開始時(0分)から約150分の間において、加熱部が600〜700℃に亘る加熱を3回繰り返したが、この間(約150分間)、合金(2)は一定範囲の温度(93Al−7Siの共晶温度である577℃前後)に保たれ、熱電変換モジュール20の開放電圧は0.35V前後に維持されていることが確認できた。
また、合金(2)はバーナーをオフにし加熱を止めた後30分間一定範囲の温度(577℃前後)に保たれ、熱電変換モジュール20の開放電圧は0.35V前後に維持されていることが確認できた。
【0074】
<実施例9>
図23は、実施例9における熱エネルギー変換システム1の所定箇所の温度変化及び熱電変換モジュール20の開放電圧の変化を示す図である。
実施例9では、耐熱性枠体における60mm×60mm×15mmの2つの空間に合金(1)及び(2)をそれぞれ充填し、合金(1)として15Al−85Zn合金を用い、合金(2)として30Sn−70Zn合金を用い、バーナーにより間欠加熱した。
また、実施例9においては、熱電変換モジュール20として実施例7と同様のモジュールを用いた。
【0075】
図23に示すように、加熱開始時(0分)から約5分〜約55分の間において、合金(2)は一定範囲の温度(30Sn−70Znの共晶温度である199℃前後)に保たれ、熱電変換モジュール20の開放電圧は3.5〜4.0V前後に維持されていることから、熱電変換モジュール20の開放電圧は合金(2)の温度に追随することが確認できた。
【0076】
<実施例10>
実施例10では、耐熱性枠体における60mm×60mm×15mmの2つの空間に合金(1)及び(2)をそれぞれ充填し、合金(1)及び(2)として30Sn−70Zn合金を用い、バーナーにより間欠加熱した。
また、実施例10においては、熱電変換モジュール20として実施例7と同様のモジュールを用いた。
【0077】
図24は、実施例10において、熱エネルギー変換システム1に熱電対を設けた位置を示す図である。
測定箇所A(
図24中一点鎖線)に設けた熱電対は、合金(1)の温度変化を測定する。
測定箇所B(
図24中太い一点鎖線)に設けた熱電対は、合金(2)の温度変化を測定する。
測定箇所C(
図24中点線)に設けた熱電対は、冷却装置30の冷媒によって冷却されている冷却部の温度変化を測定する。
【0078】
図25は、実施例10における熱エネルギー変換システム1の所定箇所の温度変化を示す図である。
図25中における各線は、以下のものを示す。
一点鎖線は、測定箇所Aにおいて測定された合金(1)の温度変化を示す。
二点鎖線は、測定箇所Bにおいて測定された合金(2)の温度変化を示す。
点線は、測定箇所Cにおいて測定された冷却装置30の冷媒によって冷却されている冷却部の温度変化を示す。
実線は、熱電変換モジュール20の開放電圧の変化を示す。
【0079】
図25に示すように、加熱開始時(0分)から約5分〜約55分の間において、合金(2)は一定範囲の温度(30Sn−70Znの共晶温度である199℃前後)に保たれ、熱電変換モジュール20の開放電圧は2.5V前後に維持されていることから、熱電変換モジュール20の開放電圧は合金(2)の温度に追随することが確認できた。
【0080】
なお、実施例9及び実施例10では、実施例7及び実施例8よりも耐熱性枠体のサイズが小さく、充填されている合金の量が約1/10となっているため、吸収できる温度変動も小さく、その結果、熱電変換モジュール20の開放電圧の変動が実施例7及び実施例8よりも大きくなっている。このため、このようなサイズの小さい熱エネルギー変換システムは、熱源の温度変動が小さい場合や、設置サイズに制約のある場合に適用することが好ましい。また、必要に応じて、複数の耐熱性枠体又は熱エネルギー変換システムを組み合わせてもよく、あるいは、複数の耐熱性枠体又は熱エネルギー変換システムを繋げて用いてもよい。
【0081】
<実施例11>
実施例11では、煙道内の雰囲気から吸熱し、電力に変換することを想定し、
図26に示すような熱エネルギー変換システム110を構成した。
図26に示すように、650mm×850mmの煙道120の下方からバーナー130で加熱し、上方に雰囲気を逃がしている。煙道120の内部には吸熱用のエロフィンチューブ140(内径φ27mm、外径φ65mm)を配置しており、その内部には高温側の15Al−85Zn合金を充填している。また、エロフィンチューブ140の両端には蓄熱用枠体141A,141B(70mm×70mm×100mm)を連結している。蓄熱用枠体141A,141Bは、それぞれ内部が吸熱側蓄熱部142A,142Bと放熱側蓄熱部143A,143Bとの2つの空間に分かれており、エロフィンチューブ140と連続している吸熱側蓄熱部142A,142Bには高温側の15Al−85Zn合金を充填しており、放熱側蓄熱部143A,143Bには低温側の30Sn−70Zn合金を充填している。
【0082】
蓄熱用枠体141Aの放熱側には熱電変換モジュール150を配置し、熱電変換モジュール150の低温側には更に冷却装置160を配置した。蓄熱用枠体141A、熱電変換モジュール150、及び冷却装置160は、M10ボルトで固定した。
熱電変換モジュール150としては、以下のモジュールを用いた。
商品名:サーモ・モジュール
型番:T150−60−127
メーカー名:S.T.S社
構成:
1.熱電素子:Bi−Te系(実測素子サイズ:略□1.3×1.5mm)
2.素子数 :254本(127対)
3.モジュールサイズ:39.6×39.6×4.16(mm)
なお、熱電変換モジュール150と蓄熱用枠体141Aとの接触面には伝熱シート(グラファイトシート)を挟んだ。また、熱電変換モジュール150の冷却装置160側の電極には、グリース(東レ・ダウコーニング社製:SC102 COMPOUND(熱伝導材))を塗布した。
【0083】
また、温度変化を測定するため、
図26のA〜Fで示す測定箇所に熱電対を設けた。
測定箇所Aは、エロフィンチューブ140の下方60mmの位置であり、煙道120の中心部における雰囲気温度を測定するものである。
測定箇所Bは、エロフィンチューブ140内の合金温度を測定するものである。
測定箇所Cは、吸熱側蓄熱部142A内の合金温度を測定するものである。
測定箇所Dは、放熱側蓄熱部143A内のうち、吸熱側蓄熱部142Aに近い部分の合金温度を測定するものである。
測定箇所Eは、放熱側蓄熱部143A内のうち、熱電変換モジュール150に近い部分の合金温度を測定するものである。
測定箇所Fは、冷却装置160内を流れる冷却水の温度を測定するものである。
【0084】
図26の煙道120をバーナー130により間欠加熱した際の各測定箇所の温度変化、及び熱電変換モジュール150の開放電圧の変化を
図27に示す。
図27に示すように、加熱開始時(0分)から約40分〜約50分で煙道120の中心部における雰囲気温度は550℃まで達したが、エロフィンチューブ140及び吸熱側蓄熱部142Aの合金が共析温度(275℃)及び共晶温度(382℃)にて吸熱するため、エロフィンチューブ140及び吸熱側蓄熱部142Aの合金の温度上昇は緩やかである。また、約50分後に加熱を一旦止めた後も、共析温度(275℃)及び共晶温度(382℃)にて発熱するため、エロフィンチューブ140及び吸熱側蓄熱部142Aの合金の温度下降は一様ではなくなっている。
また、煙道120の中心部における雰囲気温度が200〜550℃の範囲となるよう間欠加熱しても、放熱側蓄熱部143Aの合金の温度は30Sn−70Znの共晶温度である199℃前後に保たれ、熱電変換モジュール150の開放電圧は5V前後に維持されていることが確認できた。
また、加熱を完全に止めた後も約30分間は、放熱側蓄熱部143Aの合金の温度は199℃前後に保たれ、熱電変換モジュール150の開放電圧は5V前後に維持されていることが確認できた。
【0085】
<実施例12>
実施例12では、温度ヒューズの効果を確認するため、
図28に示すような熱エネルギー変換システム170を構成した。
図28に示すように、蓄熱用枠体180(60mm×60mm×60mm)は、内部が吸熱側蓄熱部181と放熱側蓄熱部182との2つの空間に分かれており、吸熱側蓄熱部181には高温側の15Al−85Zn合金を充填しており、放熱側蓄熱部182には低温側の30Sn−70Zn合金を充填している。
蓄熱用枠体180の高温側には、伝熱シート(グラファイトシート)を挟んで温度ヒューズ190が設けた。温度ヒューズ190は円筒状であり、耐火物製の筐体(□60mm)に収められている。温度ヒューズ190は、15Al−85Zn合金の融点450℃よりも低い419℃の融点を持つ亜鉛製の可溶性合金191と、可溶性合金191を保持するSS400製の保持部材192A,192Bとを備える。なお、温度ヒューズ190の総厚みは30mm、可溶性合金191の厚みは6mm、保持部材192A,192Bの厚みは12mmである。
【0086】
蓄熱用枠体180の放熱側には伝熱シート(グラファイトシート)を挟んで熱電変換モジュール200を配置し、熱電変換モジュール200の低温側には更に冷却装置210を配置した。熱電変換モジュール200としては、実施例11と同様のモジュールを用いた。また、冷却装置210としては、水冷ヒートシンク(高木製作所製:S−200W、無酸素銅製、80mm×80mm×19mm、表面粗度1.6a)を用いた。なお、熱電変換モジュール200の冷却装置210側の電極には、グリース(東レ・ダウコーニング社製:SC102 COMPOUND(熱伝導材))を塗布した。
【0087】
また、温度変化を測定するため、
図28のA〜Fで示す測定箇所に熱電対を設けた。
測定箇所Aは、受熱側となる保持部材192Aの温度を測定するものである。
測定箇所Bは、可溶性合金191の温度を測定するものである。
測定箇所Cは、伝熱側となる保持部材192Bの温度を測定するものである。
測定箇所Dは、吸熱側蓄熱部181内のうち、温度ヒューズ190に近い部分の合金温度を測定するものである。
測定箇所Eは、放熱側蓄熱部182内のうち、熱電変換モジュール200に近い部分の合金温度を測定するものである。
測定箇所Fは、冷却装置210内を流れる冷却水の温度を測定するものである。
【0088】
図28の温度ヒューズ190をバーナーにより間欠加熱した際の各測定箇所の温度変化、及び熱電変換モジュール200の開放電圧の変化を
図29に示す。
図29に示すように、温度ヒューズ190の可溶性合金191が溶解する温度に達する前にバーナーでの加熱を止めることを2回繰り返した後、可溶性合金191の溶解温度以上となるようにバーナーで連続加熱した。連続加熱により、温度ヒューズ190の受熱側の保持部材192Aの温度が上昇し、可溶性合金191と接触している面が可溶性合金191の融点近くの温度になるに従い、その面付近の可溶性合金191が徐々に溶解していって、最終的に自重で落下し、保持部材192Aと可溶性合金191との間に間隙が生じる。その結果、保持部材192Aからの伝熱が悪くなり、可溶性合金191の温度が下がり、可溶性合金191の溶解が一旦終了している。更に連続加熱を続けると、可溶性合金191が融点近くの温度に達し、上記と同じ現象が生じて間隙が更に大きくなる。この繰り返しにより、保持部材192Aと可溶性合金191との間の間隙は徐々に大きくなっていく。その結果として、可溶性合金191が初めて溶解温度に達してから約100℃以上の温度上昇をしても、可溶性合金191の温度は溶解温度でほぼ一定に保たれ、保持部材192Bの温度もほぼ一定に保たれ、蓄熱用枠体180に一定温度を伝達している。このことから、温度ヒューズとしての役割を果たしていることが確認できた。
なお、可溶性合金191の温度が下がり、可溶性合金191の溶解が一旦終了してから、次に溶解し、間隙が生じるまでの時間は、最初は
図29中のt1の長さであったが、繰り返すに従って、t2、t3と次第に長くなることが分かった。
【0089】
<実施例13>
実施例13では、蓄熱用枠体にジャバラ状の伸縮管(ベローズ)を用いることによる伸縮作用を確認するため、
図30に示すような熱エネルギー変換システム220を構成した。
図30に示すように、耐熱性のベローズの両端にフランジ板を溶接することにより、蓄熱用枠体230(φ120mm×120mm)を構成した。蓄熱用枠体230の中央には仕切り板が設けられ、吸熱側蓄熱部231と放熱側蓄熱部232との2つの空間に分かれており、吸熱側蓄熱部231には20Sn−80Zn合金を充填しており、放熱側蓄熱部232には80Sn−20Zn合金を充填している。
フランジ板には石英ガラス板233A,233Bを一体に取り付け、石英ガラス板233Aには石英ガラス棒234を取り付けた。そして、図示しない接触型デジタルセンサ(キーエンス社製、センサヘッドGT2−H12、アンプGT2−70MCN)により、石英ガラス棒234を介して蓄熱用枠体230の全長の変化を測定可能とした。
【0090】
蓄熱用枠体230の放熱側には伝熱シート(グラファイトシート)を挟んで熱電変換モジュール240を配置し、熱電変換モジュール240の低温側には更に冷却装置250を配置した。冷却装置250は、圧縮コイルバネにより約4kgFの押し付け力にて熱電変換モジュール240に対して押し付けた。熱電変換モジュール240としては、実施例11と同様のモジュールを用いた。また、冷却装置250としては、水冷ヒートシンク(高木製作所製:S−200W、無酸素銅製、80mm×80mm×19mm、表面粗度1.6a)を用いた。なお、熱電変換モジュール240の冷却装置250側の電極には、グリース(東レ・ダウコーニング社製:SC102 COMPOUND(熱伝導材))を塗布した。
【0091】
また、温度変化を測定するため、
図30のA〜Eで示す測定箇所に熱電対を設けた。
測定箇所Aは、バーナー側のフランジ板の温度を測定するものである。
測定箇所Bは、吸熱側蓄熱部231内の合金温度を測定するものである。
測定箇所Cは、放熱側蓄熱部232内の合金温度を測定するものである。
測定箇所Dは、熱電変換モジュール240側のフランジ板の温度を測定するものである。
測定箇所Eは、冷却装置250内を流れる冷却水の温度を測定するものである。
【0092】
図30の熱エネルギー変換システム220をバーナーにより間欠加熱した際の各測定箇所の温度変化、熱電変換モジュール240の開放電圧の変化、及び蓄熱用枠体230の伸び量の変化を
図31に示す。なお、
図31中、伸び量が正の値である場合は蓄熱用枠体230が伸張したことを意味し、伸び量が負の値である場合は蓄熱用枠体230が収縮したことを意味する。
図31に示すように、最大約550℃まで加熱した後、約200〜約500℃の範囲で間欠加熱しても、蓄熱用枠体230には合金の漏れや破損等の異常は認められなかった。また、蓄熱用枠体230にベローズを用いることによる蓄熱効果への影響はなく、放熱側蓄熱部232内の合金の共晶温度付近に保たれ、その結果、熱電変換モジュール240の開放電圧は5.0V前後で安定した。
蓄熱用枠体230は、温度上昇に従って最大1mmほど伸張し、また、加熱停止後には温度下降に従って収縮しており、加熱のサイクルに同調していることが確認できた。
【0093】
<実施例14>
実施例14では、冷却装置の種類による影響を確認するため、
図32に示すような熱エネルギー変換システム260を構成した。冷却装置270としては、SS400製の鉄板で作製された水冷ボックスの表面に黒皮を貼り付けたものを用い、実施例13と同様に、圧縮コイルバネにより約4kgFの押し付け力にて熱電変換モジュール240に対して押し付けた。その他の構成は実施例13と同様であるため、同様の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0094】
図32の熱エネルギー変換システム260をバーナーにより間欠加熱した際の各測定箇所の温度変化、及び熱電変換モジュール240の開放電圧の変化を
図33に示す。
図33に示すように、最大約550℃まで加熱した後、約200〜約500℃の範囲で間欠加熱しても、蓄熱用枠体230には合金の漏れや破損等の異常は認められなかった。また、蓄熱用枠体230にベローズを用いることによる蓄熱効果に変化はなく、放熱側蓄熱部232内の合金の共晶温度付近に保たれ、その結果、熱電変換モジュール240の開放電圧は4.0〜4.5Vで安定した。なお、実施例13と比較して熱電変換モジュール240の開放電圧が低くなっているのは、冷却装置の表面粗度や表面性状の違いにより、冷却装置270を用いた場合の方が熱抵抗が高かったためと推測される。
【0095】
<実施例15>
実施例15では、蓄熱用枠体にジャバラ状の伸縮管(ベローズ)を用いた他の構成を検討するため、
図34に示すような熱エネルギー変換システム280を構成した。
図34に示すように、耐熱性のベローズの両端に、ベローズの外径と等しい内径の円筒を有するフランジを差し込み、蓄熱用枠体290(φ120mm×120mm)を構成した。蓄熱用枠体290の中央には仕切り板が設けられ、吸熱側蓄熱部291と放熱側蓄熱部292との2つの空間に分かれており、吸熱側蓄熱部291には20Sn−80Zn合金を充填しており、放熱側蓄熱部292には80Sn−20Zn合金を充填している。また、フランジの隙間から合金が漏れ出ることを防ぐため、ベローズの谷部に耐火ロープ293(φ9イソウールロープ)を3谷分だけ巻きつけた。
【0096】
蓄熱用枠体290の放熱側には伝熱シート(グラファイトシート)を挟んで熱電変換モジュール300を配置し、熱電変換モジュール300の低温側には更に冷却装置310を配置した。冷却装置310は、圧縮コイルバネにより約4kgFの押し付け力にて熱電変換モジュール300に対して押し付けた。熱電変換モジュール300としては、実施例11と同様のモジュールを用いた。また、冷却装置310としては、水冷ヒートシンク(高木製作所製:S−200W、無酸素銅製、80mm×80mm×19mm、表面粗度1.6a)を用いた。なお、熱電変換モジュール300の冷却装置310側の電極には、グリース(東レ・ダウコーニング社製:SC102 COMPOUND(熱伝導材))を塗布した。
【0097】
また、温度変化を測定するため、
図34のA〜Cで示す測定箇所に熱電対を設けた。
測定箇所Aは、吸熱側蓄熱部291内の合金温度を測定するものである。
測定箇所Bは、放熱側蓄熱部292内の合金温度を測定するものである。
測定箇所Cは、冷却装置310内を流れる冷却水の温度を測定するものである。
【0098】
図34の熱エネルギー変換システム280をバーナーにより間欠加熱した際の各測定箇所の温度変化、及び熱電変換モジュール300の開放電圧の変化を
図35に示す。
図35に示すように、吸熱側蓄熱部291内の合金の溶解温度(380℃)以上となるように間欠加熱を繰り返したが、蓄熱用枠体290には合金の漏れや破損等の異常は認められなかった。また、ベローズの両端を溶接しないことによる蓄熱効果への影響はなく、放熱側蓄熱部292内の合金の共晶温度付近に保たれ、その結果、熱電変換モジュール300の開放電圧は6.0〜6.5Vで安定した。
なお、温度上昇に伴う蓄熱用枠体290の伸びは、ベローズの1山分(約5mm)であった。