特許第6202832号(P6202832)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6202832高い種子収量性を有する環境ストレス耐性植物及びその作製方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6202832
(24)【登録日】2017年9月8日
(45)【発行日】2017年9月27日
(54)【発明の名称】高い種子収量性を有する環境ストレス耐性植物及びその作製方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/09 20060101AFI20170914BHJP
   C07K 14/415 20060101ALI20170914BHJP
   A01H 5/00 20060101ALI20170914BHJP
【FI】
   C12N15/00 AZNA
   C07K14/415
   A01H5/00 A
【請求項の数】3
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2013-45067(P2013-45067)
(22)【出願日】2013年3月7日
(65)【公開番号】特開2013-212105(P2013-212105A)
(43)【公開日】2013年10月17日
【審査請求日】2016年3月7日
(31)【優先権主張番号】特願2012-52018(P2012-52018)
(32)【優先日】2012年3月8日
(33)【優先権主張国】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成23年度、文部科学省、「科学研究費補助金 基盤研究(B)」による成果、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】501203344
【氏名又は名称】国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構
(73)【特許権者】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】100091096
【弁理士】
【氏名又は名称】平木 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100118773
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 節
(74)【代理人】
【識別番号】100170221
【弁理士】
【氏名又は名称】小瀬村 暁子
(72)【発明者】
【氏名】今井 亮三
(72)【発明者】
【氏名】金 明姫
(72)【発明者】
【氏名】柳楽 洋三
(72)【発明者】
【氏名】田岡 直明
【審査官】 西 賢二
(56)【参考文献】
【文献】 欧州特許出願公開第02295582(EP,A1)
【文献】 米国特許第07214786(US,B1)
【文献】 米国特許第06018106(US,A)
【文献】 国際公開第2005/087928(WO,A1)
【文献】 特開2006−068005(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00−15/90
C07K 1/00−19/00
A01H 1/00−17/00
UniProt/GeneSeq
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/AGRICOLA/CROPU/WPIDS(STN)
PubMed
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアデニル酸結合タンパク質(PABN)遺伝子を植物細胞に導入し、環境ストレス耐性及び種子収量性が強化された形質転換植物を選抜することを含む、植物の環境ストレス耐性と種子収量性の双方を強化する方法であって、
PABN遺伝子が、以下の(a)〜(e):
(a) 配列番号1、3又は5に示す塩基配列からなる遺伝子;
(b) 配列番号2、4又は6に示すアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする遺伝子;
(c) 配列番号2、4又は6に示すアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつポリアデニル酸結合活性を有するタンパク質をコードする遺伝子;
(d) 配列番号1、3又は5に示す塩基配列と90%以上の同一性を示す塩基配列からなり、かつポリアデニル酸結合活性を有するタンパク質をコードする遺伝子;及び
(e) 配列番号2、4又は6に示すアミノ酸配列と90%以上の同一性を示すアミノ酸配列からなり、かつポリアデニル酸結合活性を有するタンパク質をコードする遺伝子
のうち少なくとも1つである、方法
【請求項2】
環境ストレス耐性が、塩ストレス耐性、乾燥ストレス耐性、及び/又は凍結ストレス耐性である、請求項に記載の方法。
【請求項3】
植物が穀物植物又は油糧植物である、請求項1又は2記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高い環境ストレス耐性及び高い種子収量性を有する植物とその作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
植物にとって乾燥や塩などの環境ストレスはその生育を大きく左右する要因である。また凍結ストレスは植物に大きな細胞障害をもたらす。したがってこれらの環境ストレスは作物の生産性に大きな影響を及ぼす。このため、作物への環境ストレス耐性付与を目指したさまざまな研究開発が進められている。
【0003】
近年では、植物形質転換技術により様々な遺伝子を導入したトランスジェニック植物が作製されている。例えば、アミノ酸の一種であるプロリンを合成する酵素遺伝子を導入した植物では、プロリンによる浸透圧調節機能が付与されるため、乾燥や塩ストレスに対し耐性を示すことが報告されている(非特許文献1)。また、ストレス応答を制御する転写因子遺伝子を導入することにより、ストレス応答を活性化し、乾燥、塩、低温ストレスに対して耐性を付与できることが報告されている(非特許文献2)。RNA結合タンパク質をコードする遺伝子を過剰発現させることで低温ストレス耐性を有するトランスジェニック植物が作製されることも開示されている(特許文献1)。
【0004】
しかしながら、例えば、転写因子を過剰発現させた場合には、結果的にその転写因子により誘導されるすべての遺伝子が過剰発現することになるため、環境ストレス耐性を獲得しても、植物体が矮性化する等、生育への悪影響が顕在化する例も報告されている(非特許文献3)。過剰発現による悪影響のない新たな環境ストレス耐性付与遺伝子の探索や導入遺伝子の発現方法の改良などが望まれている。
【0005】
穀物は世界中の多くの人々が主食としており、その生産性向上は重要な課題である。穀物植物についても環境ストレス耐性を付与する試みが続けられている一方、環境ストレス耐性だけでなく穀物を高収量で生産できる穀物植物の開発も望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−282542号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Kishor P, Hong Z, Miao GH, Hu C, Verma D. Plant Physiol. 1995 Aug;108(4):1387-1394
【非特許文献2】Liu Q, Kasuga M, Sakuma Y, Abe H, Miura S, Yamaguchi-Shinozaki K, Shinozaki K. Plant Cell. 1998 Aug;10(8):1391-406.; Jaglo-Ottosen KR, Gilmour SJ, Zarka DG, Schabenberger O, Thomashow MF. Science. 1998 Apr 3;280(5360):104-6
【非特許文献3】Liu Q, Kasuga M, Sakuma Y, Abe H, Miura S, Yamaguchi-Shinozaki K, Shinozaki K. Plant Cell. 1998 Aug;10(8):1391-406
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、高い環境ストレス耐性と高い種子収量性を有する植物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、植物へのPABN遺伝子の導入により、環境ストレス耐性と種子収量性の双方を効果的に強化できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は以下を包含する。
[1]ポリアデニル酸結合タンパク質(PABN)遺伝子を過剰発現するように遺伝的に改変された、強化された環境ストレス耐性及び種子収量性を有する形質転換植物。
[2] 以下の(a)〜(f)のうち少なくとも1つのPABN遺伝子が導入されている、上記[1]に記載の形質転換植物。
(a) 配列番号1、3又は5に示す塩基配列からなる遺伝子;
(b) 配列番号1、3又は5に示す塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつポリアデニル酸結合活性を有するタンパク質をコードするDNAからなる遺伝子;
(c) 配列番号2、4又は6に示すアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする遺伝子;
(d) 配列番号2、4又は6に示すアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつポリアデニル酸結合活性を有するタンパク質をコードする遺伝子;
(e) 配列番号1、3又は5に示す塩基配列と85%以上の同一性を示す塩基配列からなり、かつポリアデニル酸結合活性を有するタンパク質をコードする遺伝子;及び
(f) 配列番号2、4又は6に示すアミノ酸配列と90%以上の同一性を示すアミノ酸配列からなり、かつポリアデニル酸結合活性を有するタンパク質をコードする遺伝子。
【0011】
[3] 環境ストレス耐性が、塩ストレス耐性、乾燥ストレス耐性、及び/又は凍結ストレス耐性である、上記[1]又は[2]の形質転換植物。
[4] 穀物植物又は油糧植物である、上記[1]〜[3]のいずれかの形質転換植物。
【0012】
[5] ポリアデニル酸結合タンパク質(PABN)遺伝子を植物細胞に導入し、環境ストレス耐性及び種子収量性が強化された形質転換植物を選抜することを含む、植物の環境ストレス耐性と種子収量性の双方を強化する方法。
[6] PABN遺伝子が、以下の(a)〜(f)のうち少なくとも1つである、上記[5]の方法。
(a) 配列番号1、3又は5に示す塩基配列からなる遺伝子;
(b) 配列番号1、3又は5に示す塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつポリアデニル酸結合活性を有するタンパク質をコードするDNAからなる遺伝子;
(c) 配列番号2、4又は6に示すアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする遺伝子;
(d) 配列番号2、4又は6に示すアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつポリアデニル酸結合活性を有するタンパク質をコードする遺伝子;
(e) 配列番号1、3又は5に示す塩基配列と85%以上の同一性を示す塩基配列からなり、かつポリアデニル酸結合活性を有するタンパク質をコードする遺伝子;及び
(f) 配列番号2、4又は6に示すアミノ酸配列と90%以上の同一性を示すアミノ酸配列からなり、かつポリアデニル酸結合活性を有するタンパク質をコードする遺伝子。
[7] 環境ストレス耐性が、塩ストレス耐性、乾燥ストレス耐性、及び/又は凍結ストレス耐性である、上記[5]又は[6]の方法。
[8] 植物が穀物植物又は油糧植物である、上記[5]〜[7]のいずれかの方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、高い環境ストレス耐性と高い種子収量性とを有する植物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、AtPABN導入形質転換シロイヌナズナ(PABN過剰発現体)及び野生株を高塩濃度条件下で生育させた塩ストレス耐性実験の結果を示す写真である。Aは野生株、BはPABN過剰発現株の結果を示す。
図2図2は、AtPABN導入形質転換シロイヌナズナ(PABN過剰発現体)及び野生株を乾燥条件下で生育させた乾燥ストレス耐性実験の結果を示す写真である。Aは野生株、BはPABN過剰発現株の結果を示す。
図3図3は、AtPABN導入形質転換シロイヌナズナ(PABN過剰発現体)及び野生株を凍結条件下で生育させた凍結ストレス耐性実験の結果を示す写真である。Aは野生株、BはPABN過剰発現株の結果を示す。
図4図4は、AtPABN導入形質転換シロイヌナズナ(PABN過剰発現体)及び野生株で得られた植物個体当たりの種子数(種子収量)を示したグラフである。左のバーから、野生株、PABN過剰発現株の結果を示す。
図5図5は、AtPABN導入形質転換シロイヌナズナ(PABN過剰発現体)及び野生株の植物体の外観を示す写真である。
図6図6は、コムギPABN遺伝子(TaPABN1遺伝子又はTaPABN2遺伝子)を含むアグロバクテリウム形質転換用ベクターの構造を示した図である。
図7図7は、TaPABN過剰発現株(T1世代)における導入遺伝子の発現解析(RT-PCR)の結果を示す写真である。
図8図8は、TaPABN過剰発現株(T1世代)における塩ストレス耐性実験の結果を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を詳細に説明する。
1.本発明の形質転換植物とその作製
本発明は、PABN遺伝子が過剰発現するように遺伝的に改変された形質転換植物に関する。本発明に係るこのような形質転換植物は、強化された環境ストレス耐性及び種子収量性を有する。
【0016】
本発明に係る形質転換植物は、PABN遺伝子が導入されているものであってもよい。このような形質転換植物はトランスジェニック植物と呼ばれることがある。
【0017】
1)PABN遺伝子とその調製
PABN遺伝子は、ポリアデニル酸結合タンパク質(PABN)をコードする遺伝子である。本発明においてPABN遺伝子は、シロイヌナズナPABN遺伝子(AtPABN遺伝子;AtPABN1とも称される)であってもよいし、AtPABN遺伝子に相当する他の植物種由来のPABNをコードする遺伝子であってもよい。例えばPABN遺伝子は、コムギ由来のPABN遺伝子であってもよい。本発明においてPABN遺伝子はまた、これらの遺伝子の変異体であってもよい。本発明で用いるPABN遺伝子は、植物、動物、細菌、真菌を含む様々な生物起源から単離されるものであってよく、例えば穀物植物又は油糧植物由来であることが好ましい。
【0018】
シロイヌナズナ由来のPABN遺伝子(AtPABN遺伝子)の例としては、例えば配列番号1に示される塩基配列を含むものが挙げられる。この配列番号1に示される塩基配列は、配列番号2に示されるアミノ酸配列からなるタンパク質をコードしている。
【0019】
コムギ由来のPABN遺伝子の例としては、例えば配列番号3又は5に示される塩基配列を含むものが挙げられる。配列番号3に示される塩基配列は配列番号4に示されるアミノ酸配列からなるタンパク質を、また配列番号5に示される塩基配列は配列番号6に示されるアミノ酸配列からなるタンパク質をコードしている。
【0020】
さらに、本発明に係るPABN遺伝子は、配列番号1、3又は5に示す塩基配列を有するDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつポリアデニル酸結合活性を有するタンパク質をコードするDNAからなる遺伝子であってもよい。
【0021】
本発明に係るPABN遺伝子は、配列番号2、4又は6に示すアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする遺伝子であってもよく、さらに、配列番号2、4又は6に示すアミノ酸配列において1若しくは数個(2〜9個、好ましくは2〜5個)のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつポリアデニル酸結合活性を有するタンパク質をコードする遺伝子であってもよい。
【0022】
あるいは、本発明のPABN遺伝子は、配列番号1、3又は5に示す塩基配列と少なくとも85%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、特に好ましくは98%以上、例えば99%以上の同一性を示す塩基配列からなり、かつポリアデニル酸結合活性を有するタンパク質をコードする遺伝子であってもよい。本発明のPABN遺伝子はまた、配列番号2、4又は6に示すアミノ酸配列と少なくとも90%以上、好ましくは95%以上、より好ましくは97%以上、さらに好ましくは98%以上、例えば好ましくは99%以上の同一性を示すアミノ酸配列からなり、かつポリアデニル酸結合活性を有するタンパク質をコードする遺伝子であってもよい。
【0023】
本発明において「ストリンジェントな条件」とは、少なくとも85%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、特に好ましくは98%以上、例えば99%以上の配列同一性を示す2つの核酸の間で特異的な核酸ハイブリッドが形成され、それより同一性が低い核酸間ではハイブリッドが形成されない条件をいう。具体的には、例えば、ナトリウム塩濃度が15〜750mM、好ましくは50〜750mM、より好ましくは300〜750mM、温度が25〜70℃、より好ましくは55〜65℃、ホルムアミド濃度が0〜50%、より好ましくは35〜45%となる反応条件をいう。ストリンジェントな条件では、さらに、ハイブリダイゼーション後のフィルターの洗浄条件を、ナトリウム塩濃度が15〜600mM、好ましくは50〜600mM、より好ましくは300〜600mM、温度が50〜70℃、好ましくは55〜70℃、より好ましくは60〜65℃とすることが好適である。
【0024】
本明細書において「遺伝子」は、DNA又はRNAでありうる。DNAには少なくともゲノムDNA、cDNAが含まれ、RNAには、mRNAなどが含まれる。本発明のPABN遺伝子は、PABN遺伝子のオープンリーディングフレーム配列以外に、非翻訳領域(UTR)や転写調節領域の配列などを含んでもよい。
【0025】
本発明に係るPABN遺伝子が、ポリアデニル酸結合活性を有するタンパク質をコードするか否かは、当該遺伝子を組み込んだ発現ベクターを適当な宿主で発現させ、発現したタンパク質のポリアデニル酸結合活性を試験することにより確認できる。タンパク質のポリアデニル酸結合活性は、常法により確認することができる。具体例としては、RIラベルしたポリアデニル酸の結合を検出する手法(Sachs, A. B., and R. D. Kornberg. 1985. Nuclear polyadenylate-binding protein. Mol. Cell. Biol. 5:1993-1996)等が挙げられる。
【0026】
本発明に係るPABN遺伝子は、当業者であれば、配列番号1、3若しくは5に示す塩基配列又はPABN遺伝子の既知配列を利用して、細胞から抽出したゲノムDNA又はmRNAを含むRNAを用いて常法に従って得ることができる。
【0027】
例えば、生物由来の組織又は細胞(例えば、植物の葉など)から常法に基づいて抽出されたmRNAから通常の逆転写法により合成したcDNAを鋳型として、既知のPABN遺伝子の塩基配列に基いて設計したプライマーを利用してPCR増幅することにより、PABN遺伝子を含むDNA断片を得ることができる。
【0028】
得られたPABN遺伝子を含むDNA断片については、部位特異的変異誘発等によって塩基配列を改変することもできる。DNAに変異を導入するには、Kunkel法、Gapped duplex法等の公知の手法又はこれに準ずる方法を採用することができる。変異導入は、例えば部位特異的変異導入用キット、例えばMutan(R)-Super Express Kit(TAKARA BIO INC.)やLA PCRTM in vitro Mutagenesis シリーズキット(TAKARA BIO INC.)などを用いて行うこともできる。
【0029】
以上のようにして取得したPABN遺伝子を含むDNA断片は、常法によりベクター中にクローニングしておいてもよい。アグロバクテリウム法を用いてPABN遺伝子を植物に導入する場合には、アグロバクテリウム菌を介して植物に目的遺伝子を導入することができるアグロバクテリウム菌由来のプラスミドをベースとするベクター、例えばバイナリーベクターにPABN遺伝子をクローニングすることが好ましい。このようなベクターとしては、pBI系、pPZP系、pSMA系のベクターなどが好適に用いられる。特にpBI系のバイナリーベクター又は中間ベクター系が好適に用いられ、例えば、pBI121、pBI101、pBI101.2、pBI101.3等が挙げられる。バイナリーベクターとは大腸菌(Escherichia coli)及びアグロバクテリウム菌において複製可能なシャトルベクターである。バイナリーベクターを保持するアグロバクテリウム菌を植物に感染させると、ベクター上のLB配列とRB配列(境界配列)で囲まれた部分のDNA(T-DNA)を植物ゲノムに組み込むことができる(EMBO Journal, 10(3), 697-704 (1991))。バイナリーベクター系プラスミドを用いる場合、バイナリーベクターのLB配列とRB配列の間にPABN遺伝子を挿入すればよい。あるいは、植物に目的遺伝子を直接導入するために、例えば、pUC18、pUC19、pUC9等のpUC系のベクターにPABN遺伝子を組み込んでもよい。また、カリフラワーモザイクウイルス(CaMV)、インゲンマメモザイクウイルス(BGMV)、タバコモザイクウイルス(TMV)等の植物ウイルスベクターも用いることができる。
【0030】
ベクターにPABN遺伝子を挿入するには、まず、精製されたDNAを適当な制限酵素で切断し、適当なベクターDNAの制限酵素部位又はマルチクローニングサイトに挿入してベクターに連結する方法などが採用される。PABN遺伝子は、導入対象の植物内において過剰発現されるようにベクターに組み込まれることが必要である。そのためPABN遺伝子は、ベクター中のプロモーター又はエンハンサーの制御下に組み込むことが好ましい。
【0031】
「プロモーター」としては、植物細胞において下流の遺伝子の発現を制御する機能を有する任意のプロモーターを使用できる。例えば、プロモーターとしては、植物の特定の組織内あるいは特定の発生段階に特異的に発現を誘導するもの(組織特異的プロモーター、発生段階特異的プロモーター)であってもよいし、植物のすべての組織及びすべての発育段階において恒常的に発現を導くもの(構成性プロモーター)であってもよいし、所定の誘導因子の存在下で発現を誘導するもの(誘導性プロモーター)であってもよい。プロモーターは、植物由来のものであってもなくてもよい。具体例としては、カリフラワーモザイクウイルス(CaMV)35Sプロモーター、ノパリン合成酵素遺伝子のプロモーター(Pnos)、トウモロコシ由来ユビキチンプロモーター、イネ由来のアクチンプロモーター、タバコ由来PRタンパク質プロモーター等が挙げられる。エンハンサーとしては、例えば、目的遺伝子の発現効率を高めるために用いられ、CaMV35Sプロモーター内の上流側の配列を含むエンハンサー領域などが挙げられる。
【0032】
ベクターは、PABN遺伝子と共にターミネーター、ポリA付加シグナル、5'-UTR配列、マーカー遺伝子等を含むことも好ましい。ターミネーターとしては、使用するプロモーターに誘導された遺伝子転写の終結をもたらす配列を使用することができ、例えば、ノパリン合成酵素(NOS)遺伝子のターミネーター、オクトピン合成酵素(OCS)遺伝子のターミネーター、CaMV 35S RNA遺伝子のターミネーター等が挙げられる。マーカー遺伝子は、例えば、カナマイシン耐性遺伝子、ゲンタマイシン耐性遺伝子、バンコマイシン耐性遺伝子、ネオマイシン耐性遺伝子、ハイグロマイシン耐性遺伝子、ピューロマイシン耐性遺伝子、ゼオシン耐性遺伝子、ブラストサイジン耐性遺伝子、ジヒドロ葉酸還元酵素遺伝子、及びアンピシリン耐性遺伝子などが挙げられる。
【0033】
2)PABN遺伝子が過剰発現されるように遺伝的に改変された植物の作製
本発明では、上記で取得したPABN遺伝子を植物に導入し形質転換植物を作製することで、PABN遺伝子が過剰発現されるように遺伝的に改変された植物を作製することができる。あるいは本発明では、植物が天然に有するPABN遺伝子の発現を強化するような変異を植物ゲノムに導入してもよい。例えば、植物が天然に有するPABN遺伝子のプロモーターに、より高発現を誘導する突然変異を導入してもよい。
【0034】
本発明においてPABN遺伝子を過剰発現させる植物は、単子葉植物又は双子葉植物のいずれであってもよい。単子葉植物としては、例えばイネ科(イネ、オオムギ、コムギ、トウモロコシ、サトウキビ、シバ、ソルガム、アワ、ヒエ等)、ユリ科(アスパラガス、ユリ、タマネギ、ニラ、カタクリ等)、ショウガ科(ショウガ、ミョウガ、ウコン等)に属する植物が挙げられ、双子葉植物としては、例えばアブラナ科(シロイヌナズナ、キャベツ、ナタネ、カリフラワー、ブロッコリー、ダイコン等)、ナス科(トマト、ナス、ジャガイモ、タバコ等)、マメ科(ダイズ、エンドウ、インゲン、アルファルファ等)、ウリ科(キュウリ、メロン、カボチャ等)、セリ科(ニンジン、セロリ、ミツバ等)、キク科(レタス等)、アオイ科(ワタ、オクラ等)、アカザ科(シュガービート、ホウレンソウ等)、フトモモ科(ユーカリ、クローブ等)、ヤナギ科(ポプラ等)に属する植物が挙げられるが、これらに限定はされない。さらに、本発明に係る形質転換植物は種子収量性が高くなることから、本発明においてPABN遺伝子を過剰発現させる植物として、穀物植物又は油糧植物を用いることも好ましい。本発明において「穀物植物」とは、種子を食用とする植物を指し、典型的にはイネ科植物である。穀物植物としては、例えば、コムギ、オオムギ、ライムギ等の麦類、イネ、トウモロコシ等が挙げられる。「油糧植物」とは、油糧種子、すなわち、油脂含量が多く、油を取る原料として用いられる種子を生産する植物を指す。油糧種子としては、例えば、ナタネ、ゴマ、ダイズ、ラッカセイ、ベニバナ、ワタ等が挙げられる。
【0035】
PABN遺伝子を植物に導入する方法としては、植物の形質転換に一般的に用いられる方法、例えばアグロバクテリウム法、パーティクルガン法、エレクトロポレーション法、ポリエチレングリコール(PEG)法、マイクロインジェクション法、プロトプラスト融合法などを用いることができる。これらの植物形質転換法の詳細は、『島本功、岡田清孝 監修 「新版 モデル植物の実験プロトコール 遺伝学的手法からゲノム解析まで」(2001) 秀潤社』などの一般的な教科書の記載や、Hiei Y. et al., "Efficient transformation of rice (Oryza sativa L.) mediated by Agrobacterium and sequence analysis of the boundaries of the T-DNA." Plant J. (1994) 6, 271-282; Hayashimoto, A. et al., "A polyethylene glycol-mediated protoplast transformation system for production of fertile transgenic rice plants." Plant Physiol. (1990) 93, 857-863等の文献を参照すればよい。
【0036】
アグロバクテリウム法を用いる場合は、アグロバクテリウム法に適したベクターにPABN遺伝子を組み込んで構築した植物用発現ベクターを、適当なアグロバクテリウム菌、例えばアグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)に常法により(例えば凍結融解法により)導入し、この菌株を植物に接種して感染させることにより、植物細胞のゲノムにPABN遺伝子を組み込ませることができる。
【0037】
アグロバクテリウム法には、プロトプラストにアグロバクテリウム菌を接種する場合、組織・細胞培養物に接種する場合、及び植物体そのものに接種する場合(in planta法)等の様々な手法がある。プロトプラストを用いる場合は、Tiプラスミドをもつアグロバクテリウム菌と共存培養する方法、スフェロプラスト化したアグロバクテリウム菌と融合する方法(スフェロプラスト法)でアグロバクテリウム菌を感染させることができる。組織・細胞培養物を用いる場合は、対象植物の無菌培養葉片(リーフディスク)やカルスにアグロバクテリウム菌を感染させればよい。またin planta法では、種子や植物体の一部(蕾など)にアグロバクテリウム菌を直接接種して感染を引き起こすことができる。
【0038】
アグロバクテリウム菌に感染させた植物は、生育させ(カルス等に感染させた場合には常法により植物体に再生させ)て種子を形成させ、種子を採取し、その種子から得られる植物体を2回以上自家交配し、PABN遺伝子をホモ接合で有する形質転換植物を選抜することで、PABN遺伝子が導入された形質転換植物を得ることができる。
【0039】
あるいは、例えばパーティクルガン法を用いて植物に遺伝子を導入する場合には、遺伝子導入装置(例えばPDS-1000(BIO-RAD社)等)を製造業者の説明書に従って使用して、PABN遺伝子を含むDNA断片をまぶした金属粒子を試料に打ち込むことにより、その遺伝子を植物細胞内に導入し、目的の形質転換細胞を得ることができる。操作条件は、通常は450〜2000psi程度の圧力、4〜12cm程度の距離で行うことが好ましい。PABN遺伝子を導入した形質転換細胞は、例えば従来知られている植物組織培養法に従って選択培地で培養し、生存した細胞を再分化培地(適当な濃度の植物ホルモン(オーキシン、サイトカイニン、ジベレリン、アブシジン酸、エチレン、ブラシノライド等)を含む)で培養することで、PABN遺伝子が導入された形質転換植物体を再生させることができる。
【0040】
本発明に係る形質転換植物では、導入されたPABN遺伝子は植物ゲノム中に組み込まれることが好ましいが、PABN遺伝子を含む発現ベクター等として保持されていてもよい。
【0041】
得られた形質転換植物については、導入されたPABN遺伝子が通常条件下(例えば気温25℃)で発現されていることを確認することも好ましい。
【0042】
本発明において「形質転換植物」とは、アグロバクテリウムを感染させ形質転換処理を施した再分化当代である「T0世代」のほか、その植物の種子から得られた後代である「T1世代」、「T2世代」、及びそのさらに後代の植物も包含する。
【0043】
本願発明に係る形質転換植物は、ゲノム中に導入されたPABN遺伝子をヘテロ接合で有していてもよいが、ホモ接合で有することが好ましい。本願発明に係る形質転換植物は、植物体の一部の細胞のみが導入されたPABN遺伝子を有している(キメラ)ものも包含するが、植物体の全細胞が導入されたPABN遺伝子を有していることがより好ましい。
【0044】
本発明において形質転換植物とは、植物体全体、植物器官(例えば根、茎、葉、花弁、種子、種子、実等)、植物組織(例えば表皮、師部、柔組織、木部、維管束等)、植物培養細胞(カルスなど)のいずれをも意味する。
【0045】
以上のようにしてPABN遺伝子が導入された形質転換植物では、PABN遺伝子が過剰発現される。ここで「PABN遺伝子の過剰発現」とは、その植物の内因性PABN遺伝子の野生株での発現量を有意に上回るPABN遺伝子発現量が検出されることを意味する。例えば、非形質転換植物由来の生物試料からのタンパク質抽出物と比較して、形質転換植物由来の生物試料からのタンパク質抽出物で測定されるポリアデニル酸結合活性が有意に高ければ、PABN遺伝子が過剰発現されているといえる。
【0046】
以上のようにして得られた、PABN遺伝子が過剰発現されるように遺伝的に改変された形質転換植物(典型的には、PABN遺伝子が導入された形質転換植物)は、強化された環境ストレス耐性及び種子収量性を有する。
【0047】
2.環境ストレス耐性及び種子収量性の評価
本発明に係る形質転換植物は、強化された環境ストレス耐性を有する。具体的には、本発明に係る形質転換植物は、塩ストレス耐性、乾燥ストレス耐性、及び凍結ストレス耐性のうち少なくとも1つを有することが好ましい。
【0048】
塩ストレス耐性とは、高い塩濃度を示す環境下でも、より高い生存率で生育できる能力である。塩ストレス耐性は、例えば、培地中に、高濃度の塩(例えば、非形質転換植物では生存できないか生存率が5%未満になる程度まで高濃度の塩)を添加して所定の期間生育させた場合の生存率を測定することで評価することができる。例えば、NaCl(200 mM)を加えたMS培地で植物を一週間生育させた後に生存率の測定を行ってもよい。本発明に係る形質転換植物は、塩ストレス条件下で、限定するものではないが、非形質転換植物の生存率と比較して、5%以上、さらに好ましくは10%以上、より好ましくは30%以上、さらに好ましくは50%以上、例えば60%以上高い生存率を達成することができる。
【0049】
乾燥ストレス耐性とは、低い水分含量の環境下でも、より高い生存率で生育できる能力である。乾燥ストレス耐性は、例えば、培地中の水分含量を低減させて(例えば、非形質転換植物では生存できないか生存率が5%未満になる程度まで水分含量を低減させて)所定の期間生育させた場合の生存率を測定することで評価することができる。本発明に係る形質転換植物は、乾燥ストレス条件下で、限定するものではないが、非形質転換植物の生存率と比較して、5%以上、さらに好ましくは10%以上、より好ましくは30%以上、さらに好ましくは50%以上、例えば70%以上高い生存率を達成することができる。
【0050】
凍結ストレス耐性とは、凍結温度の環境下でも、より高い生存率で生育できる能力である。凍結ストレス耐性は、例えば、栽培温度を0℃未満まで低減させて(例えば、非形質転換植物では生存できないか生存率が5%未満になる程度まで栽培温度を低下させて)所定の期間生育させた場合の生存率を測定することで評価することができる。本発明に係る形質転換植物は、凍結ストレス条件下で、限定するものではないが、非形質転換植物の生存率と比較して、5%以上、さらに好ましくは10%以上、より好ましくは30%以上高い生存率を達成することができる。
【0051】
これらの環境ストレス耐性は、例えば、後述の実施例に記載された方法に従って評価することができる。これらの環境ストレス耐性は、PABN遺伝子の過剰発現(例えば、PABN遺伝子の導入による発現量増加)により付与されるものである。
【0052】
本発明に係る形質転換植物はまた、強化された種子収量性を有する。本発明に係る形質転換植物は、環境ストレスが負荷されているかいないかにかかわらず、高収量で種子を生産することができる。本発明に係る形質転換植物は、非形質転換植物と比較して、10%以上、好ましくは20%以上、より好ましくは30%以上、さらに好ましくは40%以上多い数の種子を生産することができる。
【0053】
この種子収量性は、例えば、後述の実施例に記載された方法に従って評価することができる。本発明に係る形質転換植物の高い種子収量性は、PABN遺伝子の過剰発現(例えば、PABN遺伝子の導入による発現量増加)により付与されるものである。
【0054】
したがって本発明は、上述のような強化された環境ストレス耐性と種子収量性の両方を有する形質転換植物の作製方法、及びPABN遺伝子を過剰発現させる(例えば、PABN遺伝子を植物に導入する)ことを特徴とする植物の環境ストレス耐性及び種子収量性の強化方法にも関する。より具体的には、本発明は、例えば、PABN遺伝子を植物細胞に導入し、(必要に応じて植物体を再生させ)、そして環境ストレス耐性及び種子収量性が強化された形質転換植物を選抜することを含む、植物の環境ストレス耐性と種子収量性の双方を強化する方法を提供する。
【0055】
この本発明に係る方法では、植物におけるPABN遺伝子の過剰発現により矮化等の悪形質を引き起こすことなく、環境ストレス耐性(塩ストレス耐性、乾燥ストレス耐性、及び凍結ストレス耐性等)と種子収量性の両方を強化することができるため、非常に有利である。
【実施例】
【0056】
以下、実施例を用いて本発明をさらに具体的に説明する。但し、本発明の技術的範囲はこれら実施例に限定されるものではない。
[実施例1] PABN導入形質転換シロイヌナズナの作製
1.cDNAの合成
シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana,Columbia-0)のロゼット葉よりRNeasy Mini Kit(Qiagen社製)を用いてトータルRNAを抽出した。得られたRNAを用いてPCR Core Kit(Applied Biosystem社製)を利用してcDNAを合成した。
【0057】
2.cDNAからのAtPABN遺伝子部分の単離
上記で合成されたcDNAを鋳型として、以下のフォワードプライマー及びリバースプライマーを用いてPCRを行った。
フォワードプライマー:5'- AAACCTTCCCTTCTTTCCCG -3'(配列番号7)
リバースプライマー :5'- TCAGTACGGTCTGTAGCGCA -3'(配列番号8)
【0058】
これらのフォワードプライマー及びリバースプライマーは、既知のAtPABN遺伝子(AtPABN1; At5G51120)の塩基配列(GenBankアクセッション番号NM_001203582)の5’UTRから終止コドンまでを増幅できるように設計したものである。PCRは50μlの反応系で行った。PCR反応液の調製においては、Ex Taq DNAポリメラーゼ(TAKARA BIO INC.;5 units/μl)を0.2μl、10×ポリメラーゼバッファー(MgCl2を含む)を5μl、2.5mM dNTP液(2.5mM)を2.5μl、上記の各プライマー(10pmol/μl)を0.1μl及び上記で合成したcDNA(約1μg /μl)を2μl混合し、さらに反応全量をミリQ水で50μlに調整した。用いたPCRの反応条件及び反応回数は、以下の表1に示す。
【0059】
【表1】
【0060】
PCR反応後、電気泳動によりPCR産物の確認を行ったところ、予測された長さの核酸断片が(700塩基前後)が増幅されていた。得られた断片をpGEM-Teasyベクターシステム(Promega社製)を利用してクローニングし、複数の陽性クローンを得た。それらの陽性クローンに含まれるDNA挿入断片について、BigDye Terminator v1.1サイクルシークエンシングキット(Applied Biosystems社製)を用いて、ABI社製DNAシーケンサー(3130 DNA sequencer)により塩基配列を決定し、さらに上述した既知のAtPABN遺伝子との比較解析を行い、クローニングしたDNA挿入断片がAtPABN遺伝子(シロイヌナズナPABN遺伝子)であることを確認した。得られたAtPABN遺伝子のORFの塩基配列を配列番号1に、その配列によってコードされるタンパク質のアミノ酸配列を配列番号2に示す。
【0061】
3.アグロバクテリウムを用いたAtPABN遺伝子のシロイヌナズナへの導入
以上のようにして単離されたAtPABN遺伝子を、Ti系ベクターであるpBI 121ベクター(Clonetech社製)中のCaMV35Sプロモーターの下流に、センス鎖方向で導入した。
【0062】
まず、上記で得られた、pGEM-TeasyベクターにAtPABN遺伝子が挿入されたプラスミドをXhoI及びSacIで処理しXhoI-SacI断片を調製した。調製したAtPABN遺伝子含有XhoI-SacI断片を、XhoI及びSacIを用いて切断したpBI 121ベクターに、センス方向でライゲーションした。得られた核酸構築物をアグロバクテリウム(GV3101/Pmp-90)に凍結融解法(Hofgen et al.、(1998)Storage of competent cells for Agrobacterium transformation. Nucleic Acids Res. Oct 25;16(20):9877)を利用して形質転換した。形質転換アグロバクテリウムを選抜するため、遺伝子導入したアグロバクテリウムをカナマイシン(50mg/L)、ゲンタマイシン(100mg/L)を含むYEP培地上でカナマイシン耐性、ゲンタマイシン耐性について選抜した。選抜したコロニーをカナマイシン、ゲンタマイシンを含む5 mlのYEP培地で20〜24時間培養後、カナマイシン、ゲンタマイシンを含む100mlのYEP培地に植菌し、O.D.600=0.80になるまで培養した。培養した菌液は5000×gで10分間室温で遠心した。沈澱した菌体は50mlの培地floral dropping mediumに溶解した。溶解した菌液をシロイヌナズナの蕾に3〜5回注入した。アグロバクテリウムを注入した植物はビニール袋に入れ、22℃の暗所で一晩生育させた。翌日、植物を22℃、長日条件下に移動させた。植物に菌を感染させてから3日後に水を与え始めた。以上の実験に使用した培地の組成は表2及び表3の通りである。
【0063】
【表2】
【0064】
【表3】
【0065】
4.AtPABN導入形質転換植物体の選抜
上記のようにして形質転換し生育させたシロイヌナズナから得られた種子を滅菌溶液(70%エタノール、0.5% Triton X-100)で30分間滅菌し、その後100%エタノールで2分滅菌した。その後、カナマイシン(50mg/L)、バンコマイシン(200mg/L)を含むMS培地に種子を播いた。同培地上で正常に生育した植物体(T1世代)を自家受粉して得られたT2世代で形質転換体と野生株の分離比が3:1であることを確認した。さらにT3世代で導入遺伝子をホモ接合で有する植物体を選抜した。以上の実験に使用した培地の組成は表4の通りである。
【0066】
【表4】
【0067】
選抜されたAtPABN導入形質転換植物体では、薬剤耐性遺伝子の発現により導入遺伝子の発現が確認されることから、当該形質転換植物がPABN遺伝子を過剰発現していることが示される。
【0068】
[実施例2] 環境ストレス耐性の評価
1.塩ストレス耐性実験
上記で作製したAtPABN導入形質転換シロイヌナズナ(PABN過剰発現体)、及びシロイヌナズナ野生株(Columbia-0)の種子(各25個)をMS培地(2% ショ糖、8% 寒天、pH 5.7〜5.8)に播いた。22℃の連続光条件下で1週間生育させた後、NaCl(200 mM)を加えたMS培地に移し、22℃の連続光条件で4日間生育した後に、生存率の測定を行った。
【0069】
この塩ストレス耐性実験の結果を図1に示す。野生株は1個体も生存しなかった(生存率:0%)のに対し、AtPABN導入形質転換シロイヌナズナ(図中のPABN)では、60%の生存率を示した。PABN遺伝子を過剰発現した形質転換植物では耐塩性(塩ストレス耐性)が顕著に向上していることが示された。
【0070】
2.乾燥ストレス耐性実験
上記のAtPABN導入形質転換シロイヌナズナ(PABN過剰発現体)、及びシロイヌナズナ野生株(Columbia-0)の種子(各48個)をMS培地(2% ショ糖、8% 寒天、pH 5.7〜5.8)に播き、22℃の連続光条件下で10日間生育させた。その後、植物体を土(培養土:バーミキュライト = 3 : 1)に移し、22℃の短日条件(10時間/明所、14時間/暗所)にて生育させた。土での生育開始後、3日目、4日目は水やりを実施せず、5日目より水やりを再開した。土での生育開始後、10日目に生存率を測定した。
【0071】
この乾燥ストレス耐性実験の結果を図2に示した。野生株の生存率は2%であったのに対し、PABN過剰発現株(図中のPABN)では、野生株よりも有意に高い生存率(79%)を示した。PABN遺伝子を過剰発現した形質転換植物では耐乾燥性(乾燥ストレス耐性)が顕著に向上していることが示された。
【0072】
3.凍結ストレス耐性実験
上記のAtPABN導入形質転換シロイヌナズナ(PABN過剰発現体)、及びシロイヌナズナ野生株(Columbia-0)の種子(各12個)をMS培地(2% ショ糖、8% 寒天、pH 5.7〜5.8)に播き、22℃で連続光にて2週間生育後、土(培養土:バーミキュライト = 1 : 2)に移し、22℃の短日条件(8時間/明所、16時間/暗所)にて1週間生育させた。その後、4℃の短日条件にて1週間、低温馴化させた。次いで形質転換植物をプログラムフリーザーに入れ−2℃で1時間培養した。氷核を形成させるため、形質転換植物に水道水をスプレーにて噴霧した後、2時間に1℃の速度で温度を低下させて−14℃まで冷却するプログラムを実施し、さらに、4℃にて12時間培養を行った。その後、22℃の短日条件にて1週間培養した後に、植物体の生存率を求めた。
【0073】
この凍結ストレス耐性実験の結果を図3に示した。野生株の生存率は0%であったのに対し、PABN過剰発現株(図中のPABN)では、野生株よりも有意に高い生存率(33.3%)を示した。PABN遺伝子を過剰発現した形質転換植物では耐凍性(凍結ストレス耐性)が顕著に向上していることが示された。
【0074】
[実施例3] 種子収量性の評価
AtPABN遺伝子導入の種子収量性への影響について試験した。上記のAtPABN導入形質転換シロイヌナズナ(PABN過剰発現体)、及びシロイヌナズナ野生株(Columbia-0)の種子をMS培地(2% ショ糖、8% 寒天、pH 5.7〜5.8)に播き、22℃の長日条件(16時間/明所、8時間/暗所)で約1ヶ月生育させた。この生育条件は、塩、乾燥、及び凍結などの環境ストレスを負荷していない一般的な条件である。その生育後、種子を採取し、植物体1個体当たりの総種子数を算出した。
【0075】
結果を図4に示した。植物体1個体当たりの種子数は、野生株で500個であった。一方、PABN過剰発現株(図中のPABN)では野生株の1.46倍に相当する788個の種子が得られた。PABN過剰発現体では花茎の分枝が促進されており、長角果の増加が観察された(図5)。この結果より、PABN遺伝子が種子形成を大幅に促進し、種子収量性を強化することが示された。
【0076】
[実施例4] コムギPABN遺伝子の形質転換コムギの作製
コムギにおけるAtPABN遺伝子のオーソログである2種類の遺伝子、TaPABN1遺伝子(GenBankアクセッション番号:AK331378)及びTaPABN2遺伝子(GenBankアクセッション番号:AK335747)について過剰発現させた形質転換体を下記の方法によって作出した。
【0077】
1.cDNAの合成
コムギ(Triticum aestivum, 品種:ユメチカラ)の幼葉よりRNeasy Mini Kit(Qiagen社製)を用いてトータルRNAを抽出した。得られたRNAを用いてPCR Core Kit(Applied Biosystem社製)を利用してcDNAを合成した。
【0078】
2.cDNAからのコムギPABN遺伝子部分の単離
上記で合成されたcDNAを鋳型として、以下のフォワードプライマー及びリバースプライマーを用いて、各遺伝子をそれぞれPCRで増幅した。
TaPABN1増幅用プライマーセット
TaPABN1フォワードプライマー:5'- GATTCGGTTTCTAGCTCAGC -3'(配列番号9)
TaPABN1リバースプライマー :5'- GCCACAACTTAGTAGAAGGG -3'(配列番号10)
TaPABN2増幅用プライマーセット
TaPABN2フォワードプライマー:5'- TTAGATCGGAGAGAGACGGC -3'(配列番号11)
TaPABN2リバースプライマー :5'- TTCATGGAAGCCTCGTCCTC -3'(配列番号12)
【0079】
これらのフォワードプライマー及びリバースプライマーは、上記2種類の遺伝子(TaPABN1及びTaPABN2)それぞれの5’UTRから終止コドンまでを増幅できるように設計したものである。PCRは50μlの反応系で行った。PCR反応液の調製においては、Ex Taq DNAポリメラーゼ(TAKARA BIO;5 units/μl)を0.2μl、10×ポリメラーゼバッファー(MgCl2を含む)を5μl、2.5mM dNTP液(2.5mM)を2.5μl、上記の各プライマー(10pmol/μl)を0.1μl及び上記で合成したcDNA(約1μg/μl)を2μl混合し、さらに反応全量をミリQ水で50μlに調整した。用いたPCRの反応条件及び反応回数は、実施例1の表1と同一の条件にて実施した。
【0080】
PCR反応後、電気泳動によりPCR産物の確認を行ったところ、予測された長さの核酸断片が(いずれも650塩基前後)が増幅されていた。得られた断片をpGEM-Teasyベクターシステム(Promega社製)を利用してクローニングし、複数の陽性クローンを得た。それらの陽性クローンに含まれるDNA挿入断片について、BigDye Terminator v3.1サイクルシークエンシングキット(Applied Biosystems社製)を用いて、ABI社製DNAシーケンサー(3130 DNA sequencer)により塩基配列を決定し、上述したTaPABN1及びTaPABN2の塩基配列との比較解析を行い、クローニングしたDNA挿入断片がTaPABN1及びTaPABN2であることを確認した。得られたTaPABN1のORFの塩基配列を配列番号3に、その配列によってコードされるタンパク質のアミノ酸配列を配列番号4に示す。また、得られたTaPABN2遺伝子のORFの塩基配列を配列番号5に、その配列によってコードされるタンパク質のアミノ酸配列を配列番号6に示す。
【0081】
3.アグロバクテリウムを用いたコムギPABN遺伝子のコムギへの導入
上記で得られた、pGEM-TeasyベクターにコムギのPABN遺伝子(上記2種類のいずれか)が挿入されたプラスミドから制限酵素BamHI及びKpn Iを用いてコムギPABN遺伝子含有断片を切り出し、バイナリーベクターpUBIN-ZH2のマルチクローニングサイト中の当該酵素切断部位に挿入した。バイナリーベクターpUBIN-ZH2は、pPZP202(P. Hajdukiewicz, Z. Svab, P. Maliga, 1994. Plant Molecular Biology 25: 989-994)のT-DNA部分に、カリフラワーモザイクウイルス35Sプロモーターとノパリンシンターゼターミネーターとの間にハイグロマイシン耐性遺伝子を導入したカセットと、トウモロコシユビキチン遺伝子プロモーター (Plant physiology Volume 100, 1992, Pages 1503-1507)とノパリンシンターゼターミネーター間にマルチクローニングサイトを持つ遺伝子発現用カセットを組み込んだものである。このようにして、それぞれのコムギPABN遺伝子を含む2種類のアグロバクテリウム形質転換用ベクターを作製した(図6)。
【0082】
得られたそれぞれの形質転換用ベクターを用いてアグロバクテリウム(LBA4404株)を凍結融解法(Hofgen et al.、(1998) Storage of competent cells for Agrobacterium transformation. Nucleic Acids Res. Oct 25;16(20):9877)により形質転換した。さらに、上述の手法にて取得したいずれかのアグロバクテリウムを用いて、コムギ(品種:ユメチカラ)への形質転換を実施した。コムギの形質転換には、特願2005-513739に記載のインプランタ形質転換法を用いた。
【0083】
4.コムギPABN形質転換植物体の選抜
上記のようにして形質転換したコムギから得られたT1世代の植物体より、Plant DNAzol reagent(ライフテクノロジーズ社製)を用いてゲノムを抽出した。得られたゲノムを鋳型として、以下のフォワードプライマー及びリバースプライマーを用いてゲノムPCRを実施した。リバースプライマーは、ノパリンシンターゼターミネーター上に設計したものである。
TaPABN1検出用プライマーセット
TaPABN1フォワードプライマー:5'- GATTCGGTTTCTAGCTCAGC -3'(配列番号9)
TaPABN1リバースプライマー :5'- ATAATCATCGCAAGACCGGC -3'(配列番号13)
TaPABN2検出用プライマーセット
TaPABN2フォワードプライマー:5'- TTAGATCGGAGAGAGACGGC -3'(配列番号11)
TaPABN2リバースプライマー :5'- ATAATCATCGCAAGACCGGC -3'(配列番号13)
【0084】
PCRは50μlの反応系で行った。PCR反応液の調製においては、Ex Taq DNAポリメラーゼ(TAKARA BIO;5 units/μl)を0.2μl、10×ポリメラーゼバッファー(MgCl2を含む)を5μl、2.5mM dNTP液(2.5mM)を2.5μl、上記の各プライマー(10pmol/μl)を0.1μl及び上記で合成したcDNA(約1μg/μl)を2μl混合し、さらに反応全量をミリQ水で50μlに調整した。用いたPCRの反応条件及び反応回数は、実施例1の表1と同一の条件にて実施した。
【0085】
上記手法にて実施したゲノムPCRにより、コムギPABN遺伝子が導入された形質転換植物体を選抜した。さらにこの形質転換植物体を自家受粉させ、種子を採取し、導入したコムギPABN遺伝子をホモ接合で有する形質転換コムギを選抜した。
【0086】
[実施例5] 形質転換コムギにおけるT1世代での導入遺伝子の発現確認
(1) T1形質転換体からのRNA抽出及びcDNA合成
形質転換植体T1世代の葉(第1〜第2葉)をマイクロチューブに採取し、RNeasy Plant Mini Kit(QIAGEN社製)を用いて、トータルRNAを抽出した。抽出手順はキットのマニュアルに従った。得られたトータルRNA 1μgを用いて、High Capacity RNA-to-cDNATMKit(アプライドバイオシステムズ社製)により、逆転写反応によりcDNAを合成した。
【0087】
(2) T1世代での導入遺伝子の発現確認(RT-PCR)
実施例5(1)にて調製したcDNA溶液1μLを用いてPCR法により導入遺伝子発現を確認した。PCRは表1と同様の条件で行ったが、変性から伸長反応までの工程のサイクル数は30サイクルとした。PCRには、下記のプライマーを用いた。
TaPABN1 RT-PCRフォワードプライマー:5'- GATTCGGTTTCTAGCTCAGC -3'(配列番号14)
TaPABN1 RT-PCRリバースプライマー:5'- GCCACAACTTAGTAGAAGGG -3'(配列番号15)
TaPABN2 RT-PCRフォワードプライマー:5'- TTAGATCGGAGAGAGACGGC -3'(配列番号16)
TaPABN2 RT-PCRリバースプライマー:5'- TTCATGGAAGCCTCGTCCTC -3'(配列番号17)
【0088】
図7に示すように、TaPABN1遺伝子又はTaPABN2遺伝子を導入したT1世代において、導入遺伝子の発現個体(TaPABN1過剰発現株、TaPABN2過剰発現株)が得られたことを確認できた。なお、PCRにより得られた断片がTaPABN遺伝子の断片であることを配列解析により確認した。
【0089】
[実施例6] TaPABN遺伝子導入コムギの収量性の評価
TaPABN遺伝子導入の種子収量性への影響について検討した。上記で作製したTaPABN遺伝子導入コムギ(TaPABN2過剰発現株)、及びコムギ野生株の個体(種子)を培養土に播き、22℃の長日条件(16時間/明所、8時間/暗所)で約1ヶ月生育させた。用いた生育条件は、塩、乾燥、及び凍結などの環境ストレスを負荷していない一般的な栽培条件である。生育後、各々の個体の分げつ数(枝分かれした茎の総数)を調べた。分げつ数が多ければ多いほど、個体あたりの穂数が増加するため、収量の増加が見込まれる。
【0090】
結果を表5に示した。植物体1個体当たりの平均分げつ数は、野生株で3.4本(n=16)であったが、TaPABN2過剰発現株では野生株の1.58倍に相当する5.4本(n=8)であった。この結果より、TaPABN2遺伝子が分げつを顕著に促進し、種子収量性を50%以上も強化することが示された。
【0091】
【表5】
【0092】
[実施例7] TaPABN2遺伝子導入コムギの塩ストレス耐性実験
TaPABN2遺伝子導入コムギ(TaPABN2過剰発現株)、及びコムギ野生株の種子(各10個体)を滅菌水中で発芽させ、22℃の長日条件下で3日間生育させた後、NaCl(400 mM)を含む滅菌水中にて、22℃の長日条件で2日間生育させた。これを、培養土に移して生育させ、7日後生存率の測定を行った。
【0093】
この塩ストレス耐性実験後の各個体の写真を図8に示す。野生株は4個体が生存した(生存率:40%)のに対し、TaPABN2過剰発現株では6個体が生存した(生存率:60%)。この結果より、TaPABN2遺伝子を過剰発現した形質転換植物では耐塩性(塩ストレス耐性)が向上していることが示された。
【0094】
[実施例8] AtPABN遺伝子形質転換コムギの作製
実施例1にて取得したシロイヌナズナPABN遺伝子(AtPABN遺伝子)を導入遺伝子として用いる点以外は、実施例4に示す方法と同一の方法によって、AtPABN遺伝子導入形質転換コムギを作出した。
【0095】
ゲノムPCRにより、AtPABN遺伝子が導入された形質転換植物体を選抜した。さらにこの形質転換植物体を自家受粉させ、種子を採取し、導入したAtPABN遺伝子をホモ接合で有する形質転換コムギを選抜した。
【0096】
この形質転換コムギは、実施例1で作製したPABN導入形質転換シロイヌナズナと同様に、強化された環境ストレス耐性(塩ストレス耐性、乾燥ストレス耐性、及び凍結ストレス耐性)及び種子収量性を有している。
【配列表フリーテキスト】
【0097】
配列番号7〜17はプライマーである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]