特許第6202864号(P6202864)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6202864
(24)【登録日】2017年9月8日
(45)【発行日】2017年9月27日
(54)【発明の名称】送信装置
(51)【国際特許分類】
   H04H 20/28 20080101AFI20170914BHJP
   H04H 60/07 20080101ALI20170914BHJP
   H04N 21/236 20110101ALI20170914BHJP
【FI】
   H04H20/28
   H04H60/07
   H04N21/236
【請求項の数】2
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2013-81205(P2013-81205)
(22)【出願日】2013年4月9日
(65)【公開番号】特開2014-204385(P2014-204385A)
(43)【公開日】2014年10月27日
【審査請求日】2016年2月29日
【権利譲渡・実施許諾】特許権者において、実施許諾の用意がある。
(73)【特許権者】
【識別番号】000004352
【氏名又は名称】日本放送協会
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100108578
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 詔男
(72)【発明者】
【氏名】青木 秀一
【審査官】 前田 典之
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2007/141954(WO,A1)
【文献】 特開2000−115102(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/140354(WO,A1)
【文献】 青木秀一 他,デジタル放送におけるIPパケット伝送方式の伝送特性評価,NHK技研 R&D,日本,NHK [オンライン],2010年11月,No.124,第32-43頁,[検索日2017.04.27],インターネット<URL:www.nhk.or.jp/strl/publica/rd/rd124/PDF/P32-43.pdf>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04H 20/28
H04H 60/07
H04N 21/236
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンテンツに係るIPパケットに格納された放送データを多重化して前記放送データを含むTLVパケット形式の伝送データを生成する多重化部と、
前記多重化部に、前記放送データを送信しない休止状態を示すデータである休止状態データを設定する休止状態設定部と、
前記多重化部が生成した前記放送データを有する前記伝送データ、又は前記休止状態設定部が設定した休止状態を示す前記休止状態データを有する前記伝送データを予め定めた時間間隔で伝送スロットに順次挿入し、前記伝送データを放送伝送路に送信する送信処理部と、を備え、
前記休止状態設定部は、前記コンテンツに係る放送サービスの種別毎に前記休止状態データを設定し、
前記多重化部は、前記休止状態設定部が休止状態データを設定するとき、前記休止状態を示す休止状態データを有する前記伝送データを生成し、
前記送信処理部は、前記伝送データが挿入されない伝送スロットが生じたとき、当該伝送スロットにヌルタイプTLVパケット形式のダミーデータを挿入すること
を特徴とする送信装置。
【請求項2】
記放送データの送信に割り当てられる伝送スロット数が多いほど、前記TLVパケットの一つ当たりに格納される前記休止状態データの情報量を多くすることを特徴とする請求項1に記載の送信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
放送と通信の融合を目的として、通信ネットワークにおいてデータを伝送する際に広く用いられているIP(Internet Protocol)パケットを用いて映像や音声等のコンテンツを示すデータを伝送する放送システムが提案されている。例えば、ARIB STD−B44「高度広帯域衛星デジタル放送の伝送方式」では、非特許文献1に記載のTLV(Type Length Value)パケットを用いてIPパケットを伝送する。TLVパケットは、IPパケット、IPヘッダが圧縮されたIPパケット、伝送制御信号、その他のデータを格納するパケットであって、放送伝送路での伝送に用いられる。非特許文献2では、放送番組に係るデータを伝送する際のTLVパケットのデータ構造が規定されている。
【0003】
放送伝送路では、通信ネットワークとは異なり、送信するIPパケット、伝送制御信号又はその他のデータの有無に関わらず、データの伝送を停止せずに継続することが求められる。つまり、放送伝送路にデータを送信する送信装置は、送信するデータがない場合でも、伝送路符号化を行って伝送データを生成し、生成した伝送データを放送伝送路に送信する必要がある。そこで、送信装置は、送信するデータが存在しない場合、伝送スロットに非特許文献1で規定されているヌルタイプTLVパケット(ヌルパケット)を挿入して、伝送路符号化を行うことがある。その場合、受信装置は、送信装置から受信したヌルタイプTLVパケットを受信する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】TLVパケット、デジタル放送における映像符号化、音声符号化及び多重化方式 標準規格、電波産業会、平成24年12月18日、ARIB STD−B32、2.8版、184頁
【非特許文献2】TLV用ネットワーク情報テーブル(TLV−NIT)、デジタル放送に使用する番組配列情報 標準規格、電波産業会、平成24年9月25日、ARIB STD−B10、5.1版、5.2.16、106−108頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、受信装置は、受信したヌルタイプTLVパケットだけでは、(i)送信装置が送信するデータがない状態か、(ii)送信装置を含む各種機器の不具合により送信装置が送信するデータを取得できない状態かを区別することができない。他方、放送事業者において意図的な放送サービスの休止である(i)の状態と、偶発的な障害である(ii)の状態とを区別することが求められる。
【0006】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、受信側で放送サービスの休止を識別可能にする送信装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明は上記の課題を解決するためになされたものであり、本発明の一態様は、コンテンツに係るIPパケットに格納された放送データを多重化して前記放送データを含むTLVパケット形式の伝送データを生成する多重化部と、前記多重化部に、前記放送データを送信しない休止状態を示すデータである休止状態データを設定する休止状態設定部と、前記多重化部が生成した前記放送データを有する前記伝送データ、又は前記休止状態設定部が設定した休止状態を示す前記休止状態データを有する前記伝送データを予め定めた時間間隔で伝送スロットに順次挿入し、前記伝送データを放送伝送路に送信する送信処理部と、を備え、前記休止状態設定部は、前記コンテンツに係る放送サービスの種別毎に前記休止状態データを設定し、前記多重化部は、前記休止状態設定部が休止状態データを設定するとき、前記休止状態を示す休止状態データを有する前記伝送データを生成し、前記送信処理部は、前記伝送データが挿入されない伝送スロットが生じたとき、当該伝送スロットにヌルタイプTLVパケット形式のダミーデータを挿入することを特徴とする送信装置である。
【0008】
(2)本発明のその他の態様は、(1)の送信装置であって、記放送データの送信に割り当てられる伝送スロット数が多いほど、前記TLVパケットの一つ当たりに格納される前記休止状態データの情報量を多くすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、受信側で放送サービスの休止が識別可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の第1の実施形態に係る放送システムを示す概略ブロック図である。
図2】本実施形態に係る送信装置の構成例を示す概略ブロック図である。
図3】本実施形態に係る受信装置の構成例を示す概略ブロック図である。
図4】TLVパケットを生成、挿入する処理を示す概念図である。
図5】TLVパケットの構成例を示す図である。
図6】伝送制御信号の構成例を示す図である。
図7】TLVパケットが挿入された伝送スロットの例を示す概念図である。
図8】本実施形態に係る送信処理の例を示すフローチャートである。
図9】本実施形態に係る受信処理の例を示すフローチャートである。
図10】TLVパケットを格納したIPパケットの例を示す図である。
図11】本発明の第2の実施形態に係る送信装置の構成例を示す概略ブロック図である。
図12】放送システムを応用したコンテンツ配信システムの構成例を示す概略ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(第1の実施形態)
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
図1は、本実施形態に係る放送システム1を示す概略ブロック図である。
放送システム1は、送信装置11、放送伝送路21及び受信装置31を含んで構成される。
送信装置11は、放送番組を構成するメディア(例えば、映像、音声)を符号化した放送データを放送伝送路21に送信する。送信装置11は、例えば、放送送信機、中継局装置である。送信装置11は、放送データを送信しない場合には、休止状態を示す休止タイプメッセージを有する所定の形式の伝送データを生成する。送信装置11は、生成した伝送データを放送伝送路21に送信する。
【0012】
放送伝送路21は、送信装置11が送信した伝送データを受信装置31に一方的、かつ同時に伝送する伝送路である。放送伝送路21は、無線、有線、又はその組み合わせ、例えば、自由空間で伝搬する予め定めた周波数帯域の電波である。この周波数帯域は、放送サービスを提供するチャネル毎に予め定められた周波数帯域であってもよい。
【0013】
受信装置31は、放送伝送路21から所定の形式の伝送データを受信する。受信装置31は、例えば、中継局装置、復調装置である。受信装置31が、受信した伝送データが休止状態を示す休止状態データ(例えば、休止タイプメッセージ)を有する場合、休止状態であると判定する。受信装置31は、受信した伝送データがその休止状態データを有しない場合には、伝送データから放送データを抽出する。受信装置31は、伝送データに複数種類の放送データがある場合には、その放送データを種類毎に抽出することで各種類の放送データに分離する。受信装置31は、抽出又は分離した放送データを受信装置31に接続されている他機器(例えば、端末装置51、52、図12)に送信する。他機器は、例えば、テレビジョン受信機、携帯端末装置、多機能携帯電話機、等、放送データを受信し、受信した放送データに基づくメディアを提示して放送サービスを提供する電子機器である。
【0014】
(送信装置の構成例)
次に、本実施形態に係る送信装置11の構成例について説明する。
図2は、本実施形態に係る送信装置11の構成例を示す概略ブロック図である。
送信装置11は、データ入力部111、休止状態設定部112、多重化部113及び送信処理部114を含んで構成される。
【0015】
データ入力部111は、放送番組等のコンテンツを構成するメディアに係る放送データが入力され、入力された放送データを多重化部113に出力する。ここで、データ入力部111は、例えば、符号化された放送データであるメディアコンポーネントを格納したIPパケットを他機器(例えば、コンテンツ編集装置、録画装置、等)から有線又は無線で受信する。
【0016】
データ入力部111は、放送データとしてメディア信号が入力され、そのメディアの種類に応じた方式で入力されたメディア信号を符号化してメディアコンポーネントを生成する符号化部を備えてもよい。符号化部は、例えば、映像信号をMPEG−4 AVC(Advanced Video Coding)方式で符号化してもよい。また、符号化部は、例えば、音声信号をMPEG−4オーディオ符号化方式で符号化してもよい。そして、データ入力部111は、生成したメディアコンポーネントを放送データとして多重化部113に出力する。
【0017】
休止状態設定部112は、放送データを送信しない場合、その放送データを送信しない状態である休止状態を示す休止状態データを多重化部113に設定する。
休止状態設定部112は、ユーザ(例えば、放送事業者)による予め定めた操作入力(例えば、ボタン押下)を検出して、休止状態データを設定してもよい。また、休止状態設定部112は、他機器(例えば、監視装置、放送制御装置、等)から有線又は無線で休止状態データを受信し、受信した休止状態データを多重化部113に設定してもよい。
なお、休止状態設定部112は、データ入力部111に放送データが、予め定めた継続時間の閾値よりも長時間継続して入力されなかった場合に、休止状態データを多重化部113に設定してもよい。
【0018】
また、休止状態設定部112は、放送サービスの種別(例えば、放送局、放送チャネル等)毎に休止状態データを設定してもよい。休止状態設定部112は、放送データがIPパケットに格納される場合には、その送信先アドレスならびにポート番号に基づいて放送サービスの種別を判定してもよい。その場合には、休止状態設定部112は、後述するサービス対応データを用いて放送サービスの種別を判定してもよい。
【0019】
多重化部113は、データ入力部111から入力された放送データを含む所定の形式(例えば、TLVパケット)の伝送データを生成する。多重化部113は、複数の放送データが入力される場合には、入力された複数の放送データを多重化して所定の形式の伝送データを生成する。複数の放送データとは、1つの放送番組等のコンテンツを構成する複数の放送データ(例えば、映像、音声及びテキスト)であってもよいし、複数のコンテンツのそれぞれを構成する複数の放送データであってもよい。ここでは、入力された放送データが1種類であっても、その放送データに基づいて所定の形式の伝送データを生成することを多重化と呼ぶことがある。
【0020】
休止状態データが休止状態設定部112によって設定された場合には、多重化部113は、休止状態データを有する所定の形式の伝送データ(例えば、休止タイプメッセージを有する制御タイプTLVパケット)を生成する。そして、多重化部113は、生成した伝送データを送信処理部114に出力する。
【0021】
送信処理部114は、多重化部113から入力された伝送データを予め定めた時間間隔で放送伝送路21に送信する。ここで、送信処理部114は、入力された伝送データを伝送スロットに順次挿入する。伝送スロットとは、伝送路符号化処理又は伝送路復号処理を行う単位である。送信処理部114は、例えば、「高度広帯域デジタル放送の伝送方式」標準規格(ARIB STD−B44第1.0版)で規定されている伝送路符号化方式を用いて伝送データを符号化及び変調する。
【0022】
送信処理部114は、この伝送路符号化方式を用いて伝送データを符号化する場合、伝送スロット毎に入力された伝送データに誤り訂正符号を付加する。送信処理部114は、誤り訂正符号を付加した伝送データを変調し、変調した伝送データを変調信号として予め定めた情報量(例えば、5610バイト)ならびに予め定めた時間間隔(例えば、5ms)毎に放送伝送路21に送信する。
なお、入力された伝送データが割り当てられなかった伝送スロット又はその領域(余剰領域)には、送信処理部114は、所定のダミーデータ(例えば、ヌルタイプTLVパケット)を挿入する。
【0023】
送信処理部114は、入力された伝送データにIPパケットが含まれる場合、そのIPパケットのヘッダ部に示されている送信先アドレス及びポート番号に基づいて、放送サービスの種別を判定する。そこで、送信処理部114には、送信先アドレスならびにポート番号、放送サービスの種別、及びその種別の放送サービスに割り当てる伝送スロットとの対応関係を示すサービス対応データを予め設定しておく。送信処理部114は、サービス対応データを用いて、判定した放送サービスの種別に対応した伝送スロットに入力された伝送データを割り当ててもよい。
【0024】
後述するように、送信処理部114に入力された伝送データであるTLVパケットには、IPパケットのヘッダ部が圧縮されていることがある。その場合には、送信処理部114は、放送サービスの種別を判定する前に、圧縮したヘッダ部を復元する。また、多重化部113は、IPパケットを含むTLVパケットを生成する処理を省略し、送信処理部114にIPパケットがそのまま入力されてもよい。その場合には、送信処理部114は、放送サービスの種別を判定した後で、IPパケットのヘッダ部を圧縮してTLVパケットを生成してもよい。
【0025】
なお、TLVパケットに伝送制御信号として、送信先アドレスとポート番号が含まれている場合には、送信処理部114は、その送信先アドレスとポート番号に基づいて、放送サービスの種別を判定してもよい。また、TLVパケットに伝送制御信号として、放送サービスの種別を示すデータが含まれている場合には、送信処理部114はそのデータが示すサービスの種別を特定してもよい。
【0026】
(受信装置の構成例)
次に、本実施形態に係る受信装置31の構成例について説明する。
図3は、本実施形態に係る受信装置31の構成例を示す概略ブロック図である。
受信装置31は、受信処理部311、休止状態判定部312、多重分離部313及びデータ出力部314を含んで構成される。
【0027】
受信処理部311は、放送伝送路21から予め定めた時間間隔で所定の形式(例えば、TLVパケット)の伝送データである変調信号を受信する。
ここで、受信処理部311は、放送伝送路21から予め定めた時間間隔で伝送スロットを受信し、それぞれ受信した伝送スロットから所定の形式(例えば、TLVパケット)の伝送データである変調信号を抽出する。受信処理部311は、送信処理部114が用いた伝送路符号化方式に対応する伝送路復号方式を用いて、抽出した変調信号を復調して復調データを生成する。受信処理部311は、生成した復調データから誤り訂正符号を抽出し、抽出した誤り訂正符号を用いて復号データについて誤り訂正処理を行って送信処理部114が送信した伝送データを取得する。
【0028】
受信処理部311には、送信処理部114に設定されたサービス対応データと同一のサービス対応データを予め設定させておいてもよい。その場合、受信処理部311は、そのサービス対応データに基づき伝送スロット毎に放送サービスの種別を特定し、受信した伝送スロットに対応する放送サービスの種別毎に伝送データを抽出してもよい。
受信処理部311は、抽出した伝送データに所定のダミーデータが含まれている場合、そのダミーデータを廃棄する。受信処理部311は、残された伝送データを休止状態判定部312に出力する。
【0029】
休止状態判定部312は、受信処理部311から入力された伝送データに基づいて送信装置11が休止状態であるか否かを判定する。ここで、入力された伝送データが休止状態データを有する(例えば、休止タイプメッセージを有する制御タイプTLVパケット)場合、休止状態判定部312は、送信装置11が休止状態であると判定する。その場合、休止状態判定部312は、入力された受信データを廃棄する。
【0030】
入力された伝送データが休止状態データを有しない場合、休止状態判定部312は、送信装置11が休止状態ではないと判定する。その場合、休止状態判定部312は、入力された伝送データを多重分離部313に出力する。
なお、休止状態判定部312は、休止状態であるか否かの判定を放送サービスの種別毎に行ってもよい。その場合、休止状態判定部312は、入力された伝送データを受信処理部311で抽出した伝送スロットに対応付けられた放送サービスの種別毎に、その判定を行ってもよい。
【0031】
多重分離部313は、休止状態判定部312から入力された所定の形式(例えば、TLVパケット)の伝送データから放送データを分離する。入力された受信データが複数の放送データを有する場合には、多重分離部313は、その複数の放送データの各々を分離する。放送データがIPパケットに格納されている場合には、多重分離部313は、その送信先アドレスならびにポート番号で示される放送サービス毎に放送データを分離してもよい。そのIPパケットが圧縮ヘッダパケットである場合には、多重分離部313は、その圧縮ヘッダパケットについて情報量の圧縮に用いた方式に対応した復元方式を用いて、ヘッダを復元してIPパケットを再構成してもよい。
多重分離部313は、分離した放送データをデータ出力部314に出力する。
【0032】
データ出力部314は、多重分離部313から入力された放送データを他機器(例えば、端末装置51、52、図12)に出力する。入力された放送データがメディアコンポーネントを格納したIPパケットである場合には、その送信先アドレスで指定された機器にネットワークを介して送信してもよい。
データ出力部314は、入力された放送データがメディアコンポーネントである場合には、そのメディアの種類に応じた方式で復号してメディア信号を生成する復号部を備えてもよい。その復号方式は、そのメディアコンポーネントを生成する際に用いられた符号化方式に対応する復号方式である。
【0033】
(TLVパケット)
次に、TLVパケットについて説明する。
図4は、TLVパケットを生成、挿入する処理を示す概念図である。
図4の左上には、多重化部113がIPパケットからTLVパケットを生成する処理が示されている。IPパケットは、ヘッダ部とデータ部(ペイロード)とから構成される。多重化部113は、ヘッダ部について公知の可逆圧縮処理(例えば、ランレングス圧縮法)を行って圧縮ヘッダを生成してもよい((1)ヘッダ圧縮)。その場合でも、多重化部113は、データ部については可逆圧縮処理を行わなくてもよい。そして、多重化部113は、圧縮ヘッダとデータ部に所定のデータをヘッダ部として新たに付加し、新たに付加したヘッダ部、圧縮ヘッダ及びデータ部とを含むTLVパケットを生成する((2)カプセル化)。新たに付加したヘッダ部には、格納されているデータの種別を示すパケット種別とデータ長を示すデータが含まれる。
なお、多重化部113は、入力されたIPパケットについてヘッダ圧縮を行わずに、そのままカプセル化を行ってTLVパケットを生成してもよい。また、その他のデータについてカプセル化を行ってTLVパケットを生成してもよい。
【0034】
図4の右上には、多重化部113又は送信処理部114が生成した伝送制御信号((3)伝送制御信号生成)に、ヘッダ部としてパケット種別とデータ長を示すデータを付加したTLVパケットを生成する処理((4)カプセル化)が示されている。
伝送制御信号には、例えば、上述した休止状態データ、送信先アドレスならびにポート番号、放送サービスの種別を示すデータ等、伝送の制御に関わるデータを適用してもよい。
【0035】
図4の下方には、送信処理部114が、生成されたTLVパケットを伝送スロットに挿入する処理((5)伝送スロットに挿入)が示されている。伝送スロットの先頭(図4では左方)には、予め定めた容量及び形式のデータであるスロットヘッダが付加される。TLVパケットの容量は個々に異なることがあるのに対し、各伝送スロットの情報量は、予め定められた一定量である。従って、1個の伝送スロットに含まれるTLVパケットの個数は可変である。スロットヘッダは、各TLVパケットの先頭位置を示すデータを含んでもよい。これにより、受信処理部311は、スロットヘッダで指定された先頭位置に格納されたTLVパケットを伝送スロットから抽出することができる。
【0036】
図5は、TLVパケットの構成例を示す図である。
図5は、TLVパケットを構成するデータの内訳を左側から右側に送出される順序(送出順)が早い順に示す。
TLVパケットは、値‘01’を有するデータ、値‘111111’を有するデータ、パケット種別及びデータ長を示すデータをヘッダ部として、8×N(Nは、0よりも大きい整数)ビットのデータを格納するパケットである。ヘッダ部を構成する各項目のデータの情報量は、それぞれ、2、6、8、16ビットである。ここで、パケット種別は、格納されるデータの種別(データタイプ)を示す。パケット種別は、例えば、伝送制御信号を示す制御タイプ、所定のダミーデータを示すヌルタイプ、IPパケット、ヘッダ部が圧縮されたヘッダ圧縮IPパケット、等がある。受信処理部311、休止状態判定部312及び多重分離部313は、TLVに含まれるパケット種別に基づいて、TLVパケットの種別や、格納されるデータの種別を判定することができる。
【0037】
図6は、伝送制御信号の構成例を示す図である。
図6は、伝送制御信号を構成するデータの内訳を左方から右方に向けて送出される順序が早い順に示す。
伝送制御信号は、テーブル識別子、セクションシンタクス指示、値‘1’を有するデータ、値‘11’を有するデータ、セクション長、テーブル識別子拡張、値‘11’を有するデータ、バージョン番号、カレントネクスト指示、セクション番号及び最終セクション番号を示すデータをヘッダ部として、8×N(Nは、0よりも大きい整数)ビットのデータを格納するパケットである。
【0038】
テーブル識別子は、伝送制御信号の種別を示すデータである。例えば、予め定めた値、例えば、値‘0xfd’を示すテーブル識別子は、伝送制御信号の種別が休止状態データ(休止タイプメッセージ)であることを示す。先頭の‘0x’は、後続する‘fd’が16進数であることを示す識別子である。そこで、送信装置11において、多重化部113は、値‘0xfd’を有するテーブル識別子を含むTLVパケットを生成する。また、多重化部113は、TLVパケットを生成する際、所定のダミーデータ(例えば、所定の値‘0xff’が連続するデータ列)を休止状態データとしてデータ部に格納する。受信装置31において、休止状態判定部312は、テーブル識別子が値‘0xfd’を示すTLVパケットが休止状態データを有すると判定する。これにより、休止状態データは、従来は伝送データがない場合に休止状態であるか否かに関わらず挿入されていたダミーデータ(例えば、ヌルタイプTLVパケット)と、テーブル識別子又は格納されるデータの値に基づいて区別される。
【0039】
また、多重化部113は、TLVパケットを生成する際、送信処理部114において放送データに割り当てられる伝送スロット数に応じた情報量のダミーデータ(例えば、値‘0xff’が連続するデータ列)をTLVパケットのデータ部に格納する。ここで、多重化部113は、放送データに割り当てられる情報量が多いほど、休止状態データとしてTLVパケット一つ当たりに格納するダミーデータの情報量を多くする。例えば、割り当てられる伝送スロット数が1〜5個である場合、多重化部113は、一つのTLVパケットに所定の情報量(例えば、512バイト)を有するダミーデータを格納する。他方、多重化部113は、割り当てられる伝送スロット数がより多い場合(例えば、120個)、より多い情報量(例えば、1400バイト)を有するダミーデータを格納する。また、多重化部113は、放送データを伝送するならば、放送データに割り当てられるべき情報量のダミーデータを休止状態データとして格納してもよい。
【0040】
これより、より多くの伝送スロットを用いる高いビットレートの伝送では、より情報量が多い休止状態データがTLVパケットに格納される。他方、より少ない伝送スロットを用いる低いビットレートの伝送では、より少ない情報量が少ない休止状態データがTLVパケットに格納される。従って、送信処理部114が伝送スロットに挿入するTLVパケットの数や、受信処理部311が伝送スロットから抽出するTLVパケット数の変化が、TLVパケットの情報量を一定にした場合よりも緩和される。特に、伝送容量が多い場合には、処理すべきTLVパケット数が増加することによって送信処理部114における伝送路符号化処理の処理量や受信処理部311における伝送路復号処理の処理量が著しく増加することを防ぐことができる。また、処理可能なTLVパケット数の上限が予め定められている場合には、その上限を超過することを防ぐことができる。
なお、多重化部113は、放送サービスの種別毎に、その放送サービスに割り当てられる伝送スロット数に応じた情報量のダミーデータを格納してもよい。
【0041】
(伝送スロット)
次に、伝送スロットについて説明する。
図7は、TLVパケットが挿入された伝送スロットの例を示す概念図である。
図7の各行は、送信処理部114が伝送スロット#1〜#3のそれぞれに挿入したTLVパケットの例を示す。ここで、伝送スロットの番号#1等、TLVパケットの番号#1等が小さいほど、それぞれ送出される順序が早いことを示す。
伝送スロット#1には、TLVパケット#1の全体とTLVパケット#2の前半が挿入されたことを示す。伝送スロット#2には、TLVパケット#2の後半とTLVパケット#3の後半が挿入されたことを示す。伝送スロット#3には、TLVパケット#3の後半とヌルタイプTLVパケットが挿入されたことを示す。
【0042】
図7に示すように、送信処理部114は、入力されたTLVパケットを伝送スロットに順次格納し、TLVパケットが格納できなかった部分が生じた場合には、その部分を次の伝送スロットに格納する。これは、各伝送スロットの容量が一定であるのに対し、各TLVパケットの情報量が可変であるところ、伝送スロットに空き領域ができないようにするためである。
また、伝送スロット#3の後半に示されるヌルタイプTLVパケットは、TLVパケット#1〜#3だけでは満たすことができずに生じうる、伝送スロット#3の空き領域を満たすために挿入されたダミーデータ(パディング)を含むパケットである。
【0043】
次に、本実施形態に係る送信処理の例について説明する。
図8は、本実施形態に係る送信処理の例を示すフローチャートである。
(ステップS101)データ入力部111には、コンテンツを構成する放送データ(例えば、IPパケットに格納されたメディアコンポーネント)が入力される。その後、ステップS102に進む。
(ステップS102)多重化部113は、放送データを送信しない休止状態を示す休止状態データが、休止状態設定部112により設定されたか否かを判定する。休止状態データが設定されたと判定した場合には(ステップS102 YES)、ステップS103に進む。休止状態データが設定されていないと判定した場合には(ステップS102 NO)、ステップS104に進む。
【0044】
(ステップS103)多重化部113は、休止状態データを有する所定の形式の伝送データ(例えば、休止タイプメッセージを有する制御タイプTLVパケット)を生成する。その後、ステップS105に進む。
(ステップS104)多重化部113は、入力された放送データを含む所定の形式の伝送データ(例えば、IPパケットを有するTLVパケット)を生成する。その後、ステップS105に進む。
【0045】
(ステップS105)送信処理部114は、多重化部113が生成した伝送データを伝送スロットに挿入することで、予め定めた時間間隔で伝送データを放送伝送路21に送信する。休止状態データを有する伝送データと放送データを有する伝送データとで満たされない伝送スロットには、送信処理部114は、所定のダミーデータ(例えば、ヌルタイプTLVパケット)を挿入する。その後、図8に係る送信処理を終了する。
【0046】
次に、本実施形態に係る受信装置31が行う受信処理の例について説明する。
図9は、本実施形態に係る受信処理の例を示すフローチャートである。
(ステップS201)受信処理部311は、放送伝送路21から予め定めた時間間隔で所定の形式(例えば、TLVパケット)の伝送データを受信する。ここで、受信処理部311は、伝送スロットから所定の形式の伝送データを抽出する。抽出した伝送データに所定のダミーデータが含まれている場合、そのダミーデータを廃棄する。その後、ステップS202に進む。
【0047】
(ステップS202)休止状態判定部312は、受信処理部311から入力された伝送データが休止状態データを有するか(例えば、休止タイプメッセージを有する制御タイプTLVパケット)否かに基づいて送信装置11が休止状態であるか否かを判定する。休止状態であると判定された場合には(ステップS202 YES)、ステップS203に進む。休止状態ではないと判定された場合には(ステップS202 NO)、ステップS204に進む。
【0048】
(ステップS203)休止状態判定部312は、受信した休止状態データを廃棄する。その後、図9に係る受信処理を終了する。
(ステップS204)多重分離部313は、受信した伝送データから放送データ(例えば、IPパケットに格納されたメディアコンポーネント)を分離する。その後、ステップS205に進む。
(ステップS205)データ出力部314は、多重分離部313が分離した放送データを他機器、例えば、ネットワークで接続された端末装置51(図12)に出力する。その後、図9に係る受信処理を終了する。
【0049】
(変形例)
なお、上述では、送信装置11(図2)において、データ入力部111、休止状態設定部112及び多重化部113を含む多重化装置(図示せず)と、送信処理部114とを含む放送送信機(図示せず)とが一体化している場合を例にとって説明した。本実施形態では、これには限られず、その多重化装置と放送送信機が別個に構成されていてもよい。その場合、多重化部113と送信処理部114との間は、ネットワーク(例えば、LAN(Local Area Network、構内通信網)、専用回線、等)で接続されていてもよい。
【0050】
ここで、多重化部113は、データ入力部111から入力された放送データに基づいて生成したTLVパケットについて伝送路符号化処理を行い、そのTLVパケットを格納したIPパケットを生成する。多重化部113は、生成したIPパケットを送信処理部114に送信する。送信処理部114は、多重化部113から受信したIPパケットを伝送路復号して、そのIPパケットからTLVパケットを抽出する。送信処理部114は、上述したように抽出したTLVパケットを伝送スロットに挿入する。
【0051】
また、受信装置31(図3)において、受信処理部311及び休止状態判定部312を含む復調器(図示せず)と、多重分離部313及びデータ出力部314を含む多重分離装置(図示せず)とが一体化している場合を例にとって説明した。本実施形態では、これには限られず、その復調器と受信装置が別個に構成されていてもよい。その場合、休止状態判定部312と多重分離部313との間は、ネットワークで接続されていてもよい。
【0052】
ここで、休止状態判定部312は、多重化部113と同様に、休止状態データを有しないと判定されたTLVパケットを伝送路符号化して、そのTLVパケットを格納したIPパケットを生成する。休止状態判定部312は、生成したIPパケットを多重分離部313に送信する。多重分離部313は、休止状態判定部312と同様に、休止状態判定部312から受信したIPパケットを伝送路復号して、そのIPパケットからTLVパケットを抽出する。多重分離部313は、上述したように抽出したTLVパケットから放送データを分離する
【0053】
次に、多重化部113又は休止状態判定部312が生成したTLVパケットを格納したIPパケットの例について説明する。
図10は、TLVパケットを格納したIPパケットの例を示す図である。
図10の最上行は、TLVパケットを格納したIPパケットを示す。このIPパケットは、ヘッダ部にIPv4(Internet Protocol version 4)ヘッダ及びUDP(User Datagram Protocol)ヘッダを有し、データとしてTLVパケットを有する。IPv4ヘッダには、送信先アドレスとして送信処理部114又は多重分離部313のIPv4がそれぞれ含まれることがある。多重化部113又は休止状態判定部312が、送信先の機器として、それぞれ送信処理部114又は多重分離部313のみに接続されている場合には、送信先アドレスとして、例えば予め定めたブロードキャストアドレスが用いられてもよい。UDPヘッダを有することで、UDPプロトコルを用いて高い転送速度でデータを送信することが指定される。
【0054】
図10の第2行〜第4行は、それぞれTLVパケットの例を示す。いずれも、ヘッダ部に値‘0x7f’を有するデータ、パケット種別、データ長を有する。値‘0x7f’を有するデータは、冒頭の値‘01’を有するデータ(図5)と後続する値‘111111’を有するデータ(図5)とを結合したデータに相当する。
図10の第2行〜第4行は、パケット種別がそれぞれ、IPv6(Internet Protocol version 6)パケット、圧縮ヘッダパケット(cIP)、伝送制御信号(signalling)であるTLVパケットである。第2行、第3行に示されるTLVパケットには、そのデータ領域にそれぞれMMT(MPEG(Moving Picture Expert Group) Media Transport)パケットを含む。MMTパケットは、多様なメディアに係るメディアコンポーネントを格納するパケットである。また、第3行に示される圧縮ヘッダは、第2行に示されるIPv6ヘッダとUDPヘッダの情報量を圧縮したヘッダである。
【0055】
なお、図10では、TLVパケットを格納するIPv4パケットであり、そのTLVパケットがIPv6パケットを格納する場合を例にとって説明したが、本実施形態ではこれには限られない。多重化部113又は休止状態判定部312は、TLVパケットを格納するIPv6パケットを生成してもよいし、そのTLVパケットはIPv4パケット、IPv6パケットのいずれを格納するものであってもよい。
【0056】
このように、本実施形態によれば、送信装置11において、放送されるコンテンツに係る放送データを多重化して所定の形式の伝送データを生成し、放送データを送信しない休止状態を設定する。また、送信装置11では、生成した放送データを有する伝送データ、又は設定した休止状態を示す休止状態データを有する所定の形式の伝送データを予め定めた時間間隔で放送伝送路21に送信する。
また、本実施形態では、受信装置31において、送信装置11が送信した伝送データを放送伝送路21から受信し、受信した伝送データが休止状態データを有するか否かに基づいて送信装置11が放送データを送信しない休止状態か否かを判定する。
そのため、本実施形態では、意図的な放送サービスの休止と偶発的な障害とを識別することができる。ひいては、本実施形態は放送サービスの提供状況の管理に資する。
【0057】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。第1の実施形態と同一の構成については同一の符号を付して説明を援用する。
本実施形態に係る放送システム1a(図示せず)は、送信装置11a、放送伝送路21及び受信装置31を含んで構成される。即ち、放送システム1aは、放送システム1(図1)において送信装置11に代えて、送信装置11aを備える。
【0058】
図11は、本実施形態に係る送信装置11aの構成例を示す概略ブロック図である。
送信装置11aは、データ入力部111、休止状態設定部112a、多重化部113a及び送信処理部114aを備える。
休止状態設定部112aは、放送データを送信しない状態である休止状態を示す休止状態データを送信処理部114aに設定する。休止状態設定部112aが休止状態データを取得する処理は、休止状態設定部112(図2)と同様であってもよい。但し、休止状態データの設定先が送信処理部114aである点が、多重化部113(図2)である休止状態設定部112とは異なる。
休止状態設定部112aは、多重化部113(図2)と同様に、休止状態データを有するTLVパケットを生成する際、放送データに割り当てられる伝送スロット数に応じた情報量のダミーデータをデータの領域に格納してもよい。
【0059】
多重化部113aは、多重化部113(図2)と同様に、データ入力部111から入力された放送データを含む所定の形式(例えば、TLVパケット)の伝送データを生成し、生成した伝送データを送信処理部114に出力する。但し、多重化部113aは、多重化部113とは異なり、休止状態データを有する所定の形式の伝送データを生成する処理を省略してもよい。
【0060】
送信処理部114aは、送信処理部114(図2)と同様に、多重化部113aから入力された伝送データを伝送スロットに挿入することで放送伝送路21に送信する。
休止状態データが休止状態設定部112によって設定された場合には、送信処理部114aは、休止状態データを有する所定の形式の伝送データ(例えば、休止タイプメッセージを有する制御タイプTLVパケット)を生成する。送信処理部114aは、生成した伝送データを送信処理部114(図2)と同様に、伝送スロットに挿入することで放送伝送路21に送信する。その場合には、多重化部113aから伝送データが入力されるか否かに関わらず、送信処理部114aは、その入力された伝送データを伝送スロットに挿入する処理を停止する。これにより、送信処理部114aは、多重化部113aから入力された伝送データの代わりに、休止状態データを有する所定の形式の伝送データを送信する。
【0061】
なお、送信装置11aは、休止状態設定部112(図2)をさらに備え、休止状態設定部112が多重化部113aに休止状態データを設定してもよい。その場合、多重化部113aは、多重化部113(図2)と同様に、休止状態データを有する所定の形式の伝送データを生成し、生成した伝送データを送信処理部114aに送信してもよい。
【0062】
送信処理部114aが休止状態データとして制御タイプのTLVパケットを生成する場合、そのテーブル識別子は、多重化部113aが休止状態データとして生成したTLVパケットのテーブル識別子と同一であってもよいし、異なっていてもよい。例えば、後者が示す値が‘0xfd’である場合、前者が示す値が‘0xfc’であってもよい。その場合には、受信装置31の休止状態判定部312は、休止状態データが設定された構成部が、多重化部113(図2)であるか送信処理部114aであるかをテーブル識別子に基づいて識別することができる。
【0063】
また、送信処理部114aが休止状態データとして制御タイプのTLVパケットを生成する場合、データ部に格納されるダミーデータの値が、多重化部113(図2)が休止状態データとして生成したTLVパケットのダミーデータの値と同一であってもよいし、異なっていてもよい。例えば、後者の値が‘0xff’である場合、前者が示す値が‘0xfb’であってもよい。その場合にも、受信装置31の休止状態判定部312は、休止状態データが設定された構成部が、多重化部113(図2)であるか送信処理部114aであるかをダミーデータの値に基づいて識別することができる。これにより、送信側において休止状態データを設定した構成が、送信装置11aの多重化部113aであるか送信処理部114aであるかを、受信装置31は識別することができる。
【0064】
このように、本実施形態によれば、送信装置11の送信処理部114aにおいて、放送データを送信しない休止状態を示す休止状態データが設定されたとき、当該休止状態データを有する所定の形式の伝送データを生成する。
そのため、本実施形態でも、第1の実施形態と同様に、受信装置31において、受信した伝送データが休止状態データを有するか否かに基づいて送信装置11が放送データを送信しない休止状態か否かを判定する。従って、本実施形態は、意図的な放送サービスの休止と偶発的な障害とを識別することができる。
【0065】
(応用例)
上述した実施形態に係る放送システム1、1aは、例えば、放送番組等のコンテンツを通信ネットワークに接続された端末装置に配信するコンテンツ配信システムに応用してもよい。放送システム1を応用したコンテンツ配信システム4の構成例について説明する。
【0066】
図12は、放送システム1を応用したコンテンツ配信システム4の構成例を示す概略ブロック図である。
コンテンツ配信システム4は、放送システム1、ホームネットワーク41、端末装置51、52、ゲートウェイ装置53及びインターネット61を含んで構成される。
【0067】
ホームネットワーク41は、受信装置31、端末装置51、52及びゲートウェイ装置53の相互間でデータを伝送するネットワークである。端末装置51、52は、例えば、多機能携帯電話機(いわゆるスマートフォンを含む)、タブレット端末装置、パーソナルコンピュータ等、テレビジョン放送サービスを提供する機能を有する電子機器である。ここで、端末装置51、52は、受信装置31が送信した放送データをIPパケットで受信することができる。
【0068】
ゲートウェイ装置53は、ホームネットワーク41とインターネット61との間を接続し、その相互間でデータを伝送する。これにより、端末装置51、52は、インターネット61及びゲートウェイ装置53に接続された他の機器との間でデータをIPパケットで送信又は受信することができる。
従って、コンテンツ配信システム4において、ホームネットワーク41に接続された端末装置51、52は、通信によって取得したデータと放送されたコンテンツに係る放送データともに利用することができる。
【0069】
ここで、放送データが送信されない休止状態において、休止状態を識別するために送信装置11がIPアドレスとダミーデータとを含むIPパケットを生成し、生成したIPパケットを受信装置31に送信することも考えられる。その場合、受信装置31は、そのIPパケットを受信し、受信したIPパケットをそのIPアドレスで指定された機器を送信先としてホームネットワーク41に送信する。そのため、ホームネットワーク41におけるトラフィックが休止状態データで占有されるおそれがある。
【0070】
これに対して、前述した実施形態では、送信装置11は、所定の形式として制御タイプTLVパケットに格納された休止状態データを受信装置31に送信する。受信装置31は、受信した休止状態データに基づいて休止状態であることを判定し、この休止状態データを廃棄する。そのため、ホームネットワーク41におけるトラフィックが休止状態データで占有され、放送データの伝送に十分な伝送容量を確保することができないという問題を防ぐことができる。
【0071】
前述では、コンテンツ配信システム4が放送システム1を備える場合を例にとって説明したが、コンテンツ配信システム4は、放送システム1の代わりに放送システム1aを備えていてもよい。
また、コンテンツ配信システム4において、端末装置51、52は、受信装置31及びインターネット61に接続されていれば、必ずしもホームネットワーク41に接続されていなくてもよい。例えば、端末装置51、52は、ホームネットワーク41の代わりに公衆通信網に接続されていてもよい。また、受信装置31及び端末装置51、52は、ともにインターネット61に接続されていてもよい。
【0072】
なお、上述した実施形態における受信装置31の一部、例えば、受信処理部311、休止状態判定部312、多重分離部313及びデータ出力部314をコンピュータで実現するようにしてもよい。その場合、この制御機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現してもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、受信装置31に内蔵されたコンピュータシステムであって、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでもよい。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよく、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよい。
また、上述した実施形態における受信装置31の一部、または全部を、LSI(Large Scale Integration)等の集積回路として実現してもよい。受信装置31の各機能ブロックは個別にプロセッサ化してもよいし、一部、または全部を集積してプロセッサ化してもよい。また、集積回路化の手法はLSIに限らず専用回路、または汎用プロセッサで実現してもよい。また、半導体技術の進歩によりLSIに代替する集積回路化の技術が出現した場合、当該技術による集積回路を用いてもよい。
【0073】
以上、図面を参照してこの発明の一実施形態について詳しく説明してきたが、具体的な構成は上述のものに限られることはなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内において様々な設計変更等をすることが可能である。
【符号の説明】
【0074】
1、1a…放送システム、
11、11a…送信装置、111…データ入力部、112、112a…休止状態設定部、
113、113a…多重化部、114、114a…送信処理部、
21…放送伝送路、31…受信装置、311…受信処理部、312…休止状態判定部、
313…多重分離部、314…データ出力部、
4…コンテンツ配信システム、41…ホームネットワーク、51、52…端末装置、
53…ゲートウェイ装置、61…インターネット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12