特許第6202870号(P6202870)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6202870
(24)【登録日】2017年9月8日
(45)【発行日】2017年9月27日
(54)【発明の名称】EDS信号の解析方法
(51)【国際特許分類】
   G01T 1/36 20060101AFI20170914BHJP
   G01T 1/24 20060101ALI20170914BHJP
   G01N 23/225 20060101ALI20170914BHJP
   G01N 23/223 20060101ALI20170914BHJP
   G01N 23/04 20060101ALI20170914BHJP
【FI】
   G01T1/36 A
   G01T1/36 D
   G01T1/24
   G01N23/225
   G01N23/223
   G01N23/04
【請求項の数】14
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2013-87150(P2013-87150)
(22)【出願日】2013年4月18日
(65)【公開番号】特開2013-224938(P2013-224938A)
(43)【公開日】2013年10月31日
【審査請求日】2016年4月15日
(31)【優先権主張番号】12164724.2
(32)【優先日】2012年4月19日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】501233536
【氏名又は名称】エフ イー アイ カンパニ
【氏名又は名称原語表記】FEI COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100091214
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 進介
(72)【発明者】
【氏名】コルネリス サンダー クージマン
(72)【発明者】
【氏名】ヘンドリック ヤン デ フォス
【審査官】 藤本 加代子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2005/121988(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0126763(US,A1)
【文献】 特開平06−300854(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0034682(US,A1)
【文献】 特開平11−195123(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01T 1/00−1/16
G01T 1/167−7/12
G01N 23/00−23/227
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無作為に離間したステップを含む放射線センサの信号を解析する方法であって:
ステップの存在を検出する手順;
隣接するステップ間の時間間隔を推定する手順;
第1フィルタ挙動によってステップの前の信号をフィルタリングする手順;
第2フィルタ挙動によってステップの後の信号をフィルタリングする手順;
前記ステップの高さを推定する手順;
複数のステップから、前記の推定されたステップ高さに従って密度分布又はヒストグラムを生成する手順;
を有し、
前記ステップの高さ分散が、前記ステップの前のプラトーの分散の推定と前記ステップの後のプラトーの分散の推定を用いることによって推定され、
前記プラトーの分散の推定は、前記プラトーの各々の間隔の長さ基づき、
前記複数のステップの各々は、重み因子に従った密度分布又はヒストグラムに寄与し、
前記重み因子は前記分散の関数で、
前記関数は、低分散のステップを、高分散のステップよりも大きな重み因子と関連付け、
その結果、分散のステップ高さの推定が強調される、
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記プラトーの各々の間隔の長さに基づいて前記プラトーの分散を推定する手順が、さらに前記信号のノイズ挙動を考慮したモデルに基づく、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記信号が固体素子の信号で、かつ、
前記ステップは、X線光子が前記固体素子に衝突する結果である、
請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記ステップの高さがX線光子のエネルギーを表す、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
各ステップは、推定されたステップ高さとステップ高さの分散によって表され、かつ、
重み因子に従った前記密度分布又はヒストグラムへの前記ステップの寄与は、確率分布関数に比例する寄与の形態をとる、
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記確率分布関数が、ガウス型確率密度関数と前記重み因子との積である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
所定の閾値よりも大きな分散を有するステップについては、前記重み因子がゼロに等しくなる、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記ステップの発生が、1次元再帰双方向フィルタを用いることによって検出される、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
サーボ制御ループによって前記ステップ間で各プラトーの傾斜の補正が適用される、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
刺激に応答して試料から放出されるX線を観測する装置であって、
当該装置はX線検出器を有し、前記X線検出器は固体素子又はガス比例カウンタで、
前記X線検出器はステップを有する信号を発生させ、
前記信号は、前記ステップの存在を検出し、
記ステップ間の時間間隔を推定し、第1フィルタ挙動によって前記ステップの前の信号をフィルタリングし、第2フィルタ挙動によって前記ステップの後の信号をフィルタリングし、前記ステップの高さを推定し、かつ、多数のステップから前記の推定されたステップ高さに従って密度分布又はヒストグラムを生成するようにプログラムされた信号処理装置によって処理される装置において、
前記信号処理装置が、前記ステップの前のプラトーの分散の推定と前記ステップの後のプラトーの分散の推定とを用いて前記ステップの高さの分散を推定し、前記プラトーの分散の推定は、前記プラトーの各々の間隔の長さに基づき、かつ、密度分布又はヒストグラムに寄与する前記多数のステップの各々に、前記分散の関数である重み因子を割り当てるように構成されている、
ことを特徴とする装置。
【請求項11】
前記信号処理装置がさらに、前記信号のノイズ挙動を考慮したモデルを用いて前記プラトーの分散を推定するように構成されている、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記信号処理装置は、前記X線検出器からの信号を解析する手順を実行するようにプログラムされたプログラム可能な信号処理装置である、請求項10又は11に記載の装置。
【請求項13】
前記刺激は電子ビーム又はX線ビームである、請求項10乃至12のいずれか一項に記載の装置。
【請求項14】
請求項1乃至9のいずれか一項に記載の方法を実行させるように請求項10に記載の装置のプログラム可能な信号処理装置をプログラムするコードを保持するソフトウエア媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無作為に離間したステップを含む放射線センサの信号を解析する方法に関する。当該方法は、
− ステップの存在を検出する手順、
− 隣接するステップ間の時間間隔を推定する手順、
− 第1フィルタ挙動によってステップ前の信号をフィルタリングする手順、
− 第2フィルタ挙動によってステップ後の信号をフィルタリングする手順、
− ステップ高さを推定する手順、
− 複数のステップから、前記推定されたステップ高さに従って密度分布又はヒストグラムを生成する手順、
を有する。
【0002】
本発明はさらに、当該方法を実行する装置にも関する。
【背景技術】
【0003】
そのような方法は特許文献1から既知である。
【0004】
特許文献1は、X線検出器−たとえば固体検出器又はガス比例検出器−からの信号を解析する方法について記載している。固体検出器では、X線光子が固体素子−たとえばPINダイオード又はシリコンドリフトダイオード−に衝突する。光子は多数の電子/正孔対を生成する。前記多数の電子/正孔対は収集されて、信号増幅装置へ送られる。前記多数の電子/正孔対はX線光子のエネルギーに依存する。そのため各光子は、検出器の信号においてステップを生じさせる。そのステップ高さは光子のエネルギーに依存する。
【0005】
そのような検出器はたとえば、電子顕微鏡に用いられる。電子顕微鏡では、試料は、選択可能なエネルギー−たとえば10〜30keV−の電子ビームに曝露される。電子は、試料材料と相互作用し、その試料材料からX線を放出させる。電子の一部は、試料から所謂特性X線を放出させる。そのエネルギーは、電子が相互作用する元素に依存するので、その試料材料の情報を含む。従って、エネルギーを決定することによって、試料の組成を決定することができる。
【0006】
X線検出器の信号を決定するとき、信号はノイズ−たとえばフリッカノイズ、1/fノイズ等−を含む。ステップの高さは、そのステップの前の信号とそのステップの後の信号との(プラトー前とプラトー後との)差異である。信号中のノイズは、ステップ高さの推定の誤差又は不正確さに変わる。信号中のノイズは、適切なフィルタリングによってプラトー値を“平滑化”することによって低下しうる。しかし検出器が依然として信号をフィルタリングしている一方で他の光子が検出されるとき、誤差が発生し、かつ、古いステップと新しいステップの両方が破棄されなければならない。これはパイルアップとして知られている。
【0007】
従って迅速な検出と低ノイズ検出とは矛盾する要求である。つまり迅速な検出(高計数率)では、時定数の短いフィルタリングが用いられなければならないが、この結果、信号のノイズは大きくなるので、ステップ高さの不正確さが大きくなる。ステップ高さの不正確差への他の寄与はファノノイズに起因する。つまり所与のエネルギーの光子によって生成される電子/正孔対の数が、ファノノイズによって表されるように変化する。
【0008】
特許文献1は、検出器の信号がサンプリングされて記憶される方法について記載している。ステップが検出され、続いてそのステップの各対間の時間間隔が推定される。この時間間隔に従って、適切なフィルタが、対を生成する2つのステップ間の信号に適用される。その結果、ステップの各対間のフィルタ条件が最適化される。そのようにして見いだされたステップ高さの推定は、ステップ高さを表す密度分布又はヒストグラムを生成するのに用いられる。これはスペクトルとしても知られている。
【0009】
ステップ間の時間間隔に依存するフィルタ挙動(時定数)で信号がフィルタリングされるとき、これは適応フィルタリングとして知られていることに留意して欲しい。ステップの前の信号をフィルタリングするのに用いられるフィルタのフィルタリング挙動は、前記ステップの後の信号をフィルタリングするのに用いられるフィルタのフィルタリング挙動と同一である必要はない。つまりフィルタリングは対称でなくても良い。また好適には、サンプリングはアナログ−デジタル変換を含み、かつ、フィルタリングは、デジタルフィルタリングで、たとえば有限インパルス応答(FIR)フィルタによる処理を有して良いことにも留意して欲しい。よって異なるフィルタリング挙動は、異なるタップ係数及びタップ長に対応する。2つのステップが、許容可能な精度で別個に処理できないほど近接して発生するときに、パイルアップが生じることに留意して欲しい。そのような場合に両カウントは拒絶され、計数率が実効的に低下する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第7966155B2号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2006/126763A1号明細書
【特許文献3】米国特許第7855370B1号明細書
【特許文献4】米国特許第8039787B2号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
たとえ適応フィルタリングを用いた信号の解析が、非適応フィルタリングを用いた信号の解析よりも改善されるとしても、信号を解析する方法は改善される必要がある。
【0012】
本発明は、そのような改善された方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的のため、本発明による方法は以下のような特徴を有する。
− ステップ高さの推定の分散が、ステップの前のプラトーの分散の推定とステップの後のプラトーの分散の推定を用いることによって推定され、前記プラトーの分散の推定は、前記プラトーの各々の間隔の長さと、前記間隔の長さと前記信号のノイズ挙動を考慮したモデルに基づく。
− 複数のステップの各々は、重み因子に従った密度分布又はヒストグラムに寄与し、前記重み因子は前記分散の関数で、前記関数は、低分散のステップが、高分散のステップよりも大きな重み因子と関連付けられる。
【0014】
その結果、高信頼性に相当する低分散のステップ高さの推定が強調される。
【0015】
本願発明者等は、信号を処理するとき、高分散(低信頼性)のステップよりも、低分散(高信頼性)のステップに大きな重み因子による重み付けを行う結果、スペクトルは滑らかになり、半値全幅(FWHM)の小さなピークを示した。
【0016】
このことは以下のように説明される。
【0017】
適応フィルタリングを用いるとき、ステップの後の信号のフィルタリング挙動に対して異なるステップの前の信号のフィルタリング挙動を選ぶことが可能である。信号が毎秒N回サンプリングされ、ステップの前の信号がN1のサンプルを網羅する時定数でフィルタリングされ、かつ、ステップの後の信号がN2のサンプルを網羅する時定数でフィルタリングされると仮定されるとき、ステップの前のプラトーは、1/N1に比例する分散σ1を有し、かつ、ステップの後のプラトーは、1/N2に比例する分散σ2を有する。よってステップ高さは、(1/N1+1/N2)に比例する分散σTを有する。分散の小さい(高信頼性の)ステップは、真の値に近づこうとする。よって低信頼性のステップにも信頼できるデータと同じ重みを与える代わりに、これらのステップを強調することには意味がある。
【0018】
サンプル範囲を無限に長くとる(N→∞)結果、分散が最低になることが示唆されるとしても、これはホワイトノイズの場合にしか成立しない。電気信号は、たとえば1/fノイズのようなホワイトノイズ挙動を示すとは限らない。
【0019】
ここで用語の説明をすると、確率密度関数とは一般的に、連続ランダム変数に対してのみ定義される。確率密度関数とは、このランダム変数が所与の点で生じる尤度を表す関数である。ランダム変数が特定の領域内に存在する確率は、領域全体にわたる変数の密度の積分によって与えられる。負の確率は存在しないので、確率密度関数はどこでも負にはならない。全空間にわたる確率密度関数の積分は1に等しい。すべての確率分布が密度関数を有する訳ではないことに留意して欲しい。たとえば離散的なランダム変数の分布は密度関数を有しない。
【0020】
本発明において解析される信号は通常、nビットのアナログ−デジタル変換器(ADC)によってサンプリングされる。厳密には、その結果は連続変数ではない。一般化された関数−たとえばディラックのδ関数−を用いることよっても、そのような離散的ランダム変数を表すことが可能である。これにより、離散的確率分布と連続的確率分布の取り扱いが実質的に統一される。従ってそのような離散的変数の統計的特性(たとえば平均値と分散)は、連続分布の特性と似たように用いられ得る。
【0021】
他の解決法はヒストグラムの利用である。ヒストグラムでは、各測定値が、間隔すなわちビンでの測定値として表される。典型的には、これらのビンはすべて同一のサイズを有する。
【0022】
ステップを強調するための分散の利用は特許文献2で示唆されている。ここで同様な信号について、推定されるエネルギーは、その推定の質に従ってスペクトルに寄与すべきことが示唆される。この従来技術は、どのようにして質(分散)を決定するのかで異なっている。この従来技術は、カルマンフィルタの利用又は行列の積の演算を実行することによって推定を決定することを示唆している。本願発明は、端部の前と後の間の間隔の長さに基づいて、分散ひいては信号の質を検討する。より具体的には、この従来技術は、推定されたステップ高さの質を決定するのにステップ間の長さを利用することを示唆していない。
【0023】
ホワイトノイズについては、間隔の長さは直接利用できるが(特許文献2で提案されたカルマンフィルタの出力であって良い)、他のノイズ挙動(赤色ノイズ、ピンクノイズ、又は最尤バスタブノイズ)については、補正が用いられ得ることに留意して欲しい。本発明による方法については、これは、ルックアップテーブル(LUT)の利用に基づいて良い。
【0024】
他の実施例では、各ステップはステップ高さとステップ分散によって表され、かつ、重み因子に従った密度分布又はヒストグラムへのステップの寄与は、確率分布関数に比例する寄与の形態をとる。
【0025】
各異なるステップの寄与を確率分布として追加する−たとえば各ステップが期待値と偏差を有してピーク面積が規格化されたガウス関数によって表されると推定する−ことによって、さらに良好な近似が可能となる。
【0026】
ヒストグラムを用いるとき、このことは、非常に信頼性のある(低分散を示す)測定が、小数のビンに高い寄与を与える一方で、信頼性の低い(高分散を示す)測定は、多数のビンに小さな寄与を与えることを示唆している。すべてのビンへの寄与の合計が常に等しいとき、すでに重み因子が用いられているが(重み因子は確率分布に比例する)、良好な結果は、低分散を示す測定結果について重み因子をさらに増大させることによって実現されうることに留意して欲しい。換言すると、寄与の合計を分散に依存させることによって実現されうる。
【0027】
ヒストグラムについて説明してきたが、このことは、密度分布についても同様に実現されうる。
【0028】
他の実施例では、信号は固体素子の信号で、かつ、ステップは、X線光子が前記固体素子に衝突する結果である。
【0029】
固体検出器は、ボルテージフォロワ又は電荷増幅器に続いて固体素子−たとえばPINダイオード又はシリコンドリフトダイオード−を有する。検出器はまた、たとえば電荷増幅器の信号を処理する信号処理装置を有する。信号のステップ高さは、検出される衝突X線光子のエネルギーに比例すると近似される。
【0030】
他の実施例では、所定の閾値を超える分散を有するステップの重み因子はゼロである。
【0031】
これは、標準的なパイルアップ検出において行われるように、所定の値未満の周期によって分離されるステップの拒絶と等価である。ステップを拒絶することが計数率を下げるとしても、これは、スペクトルのFWHM値を改善しうる。
【0032】
ある態様では、刺激に応答して試料から放出されるX線を観測する装置が供される。当該装置はX線検出器を有する。前記X線検出器は固体素子又はガス比例カウンタである。前記X線検出器は、ステップを示す信号を発生させる。前記信号は、ステップの存在を検出するようにプログラムされた信号処理装置によって処理される。当該装置は、ステップ間の時間間隔を推定し、第1フィルタ挙動によって前記ステップの前の信号をフィルタリングし、第2フィルタ挙動によって前記ステップの後の信号をフィルタリングし、前記ステップの高さを推定し、かつ、多数のステップから前記の推定されたステップ高さに従って密度分布又はヒストグラムを生成する。当該装置は、前記信号処理装置が、前記ステップの高さの分散を推定し、かつ、密度分布又はヒストグラムに寄与する前記多数のステップの各々に、前記分散の関数である重み因子を割り当てるように備えられていることを特徴とする。
【0033】
好適には、前記信号処理装置は、前記X線検出器からの信号を解析する手順を実行するようにプログラムされたプログラム可能な信号処理装置である。
【0034】
好適実施例では、前記刺激は電子ビームである。
【0035】
たとえば走査電子顕微鏡、走査型透過電子顕微鏡、電子マイクロプローブアナライザでは、調節可能なエネルギー−たとえば典型的には数keV〜数百keV−の電子ビームが集束され、前記試料全体にわたって走査される。前記試料から放出されるX線は検出器によって検出される。前記特性X線のエネルギーは、(位置に依存する)前記試料の組成を決定するのに用いられる。前記検出器−典型的には固体検出器−の信号は、信号処理装置によって処理される。信号処理を改善することによって、エネルギー分解能(つまり組成分析)が改善される。
【0036】
好適には前記信号処理装置は、前記処理装置のファームウエアのアップデートを可能にするプログラム可能な信号処理装置である。
【0037】
他の刺激として、X線ビームが用いられて良い。前記X線は、X線管によって発生して、X線蛍光によってX線を放出するように前記試料を刺激する。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】試料と固体素子を概略的に表している。
図2A】シリコンドリフトダイオードである固体素子を概略的に表している。
図2B】シリコンドリフトダイオードである固体素子を概略的に表している。
図3】固体検出器を概略的に表している。
図4図3の固体検出器によって生成された信号を概略的に表している。
図5】シミュレーションによる信号から決定されるステップの分散の逆数の結果を概略的に表している。
図6A】同一の入力信号から得られた、3つの異なる形状を用いたシミュレーションによる出力信号の結果を概略的に表している。
図6B】同一の入力信号から得られた、3つの異なる形状を用いたシミュレーションによる出力信号の結果を概略的に表している。
図6C】同一の入力信号から得られた、3つの異なる形状を用いたシミュレーションによる出力信号の結果を概略的に表している。
図7】適応フィルタを用いて入力信号から得られるスペクトルと、本発明によるフィルタを用いて入力信号から得られるスペクトルとの比較を概略的に表している。
図8】1次元再帰双方向フィルタを概略的に表している。
【発明を実施するための形態】
【0039】
ここで本発明について図を用いて説明する。
【0040】
可動式試料ホルダ102上に載置された試料100が、集束電子ビーム104によって照射される。電子ビームを構成する電子は、X線を観測するとき、典型的には10keV〜40keVの選択可能なエネルギーを有する。集束レンズは、ヨーク112とコイル110を有する磁気対物レンズである。偏向コイル106は、軸108からビームを偏向させ、かつ、試料全体にわたって前記ビームを走査するのに用いられる。電子は、試料から放射線を放出させる。前記放射線は、2次電子(エネルギーが50eV未満)、後方散乱電子(エネルギーが50eVよりも大きい)、可視光の光子、及び、X線光子を有する。固体素子114は、シリコンドリフトダイオードを有するウエハである。中央に貫通孔を有する前記ウエハは、電子ビームが前記貫通孔を通過し、かつ、試料から放出されて素子に衝突するX線光子の一部が検出されるように設置される。検出器116は、試料から放出される他の放射線−たとえば2字電子−を検出するのに用いられる。
【0041】
X線は小さな体積−たとえば1μm3以下−の試料から発生する。ビームが試料全体にわたって走査されることで、試料のどの位置からX線が放出されたのかを示すマップが作成されうる。たとえば偽色で放出される光子を示すことによって、試料の組成の位置情報を与えることができる。静止ビームによって試料を解析することによって、単一スポットの解析が可能となる。
【0042】
−たとえば2次電子を利用して−X線以外の種類の放射線を検出することによって試料を可視化するとき、500eV以下のエネルギーの電子ビームが用いられて良いことに留意して欲しい。そのような可視化により生成される像の解像度は、X線像の解像度よりもはるかに良好で、典型的には1〜5nmである。しかしそのような低いエネルギーでは、電子は、500eVを超えるX線を試料から放出させて、多くの関心材料を解析するのに十分なエネルギーを有しない。多くの関心材料の効率的なX線発生のため、5keV−好適には10keV−を超えるビームエネルギーが用いられなければならない。
【0043】
迅速な解析のためには、X線光子の大部分が検出されなければならないことにさらに留意して欲しい。このことは、試料から見た検出器が、大きな受容角を網羅しなければならないことを意味する。これを実現するため、中心に孔を備えるウエハの形態をとる検出器が好ましい。ビームは、レンズを通過し、中心孔を通過して試料へ向かう。このようにして、検出器の大きな受容角が実現されうる。その結果X線光子の大部分が検出される。しかしこれは、軸の周りのレンズと試料の間に多数の検出器を並べて設けることによっても実現されうる。
【0044】
図2Aは、シリコンドリフトダイオードの形態をとる固体素子を概略的に表している。
【0045】
簡明を期すため、中心孔の設けられていない素子が図示されていることに留意して欲しい。
【0046】
シリコンドリフトダイオードは、シリコンウエハ200上/内に形成される。シリコンドリフトダイオードは、高純度の体積を有し、又は、第1面202と第2面218との間にほとんど再結合サイトを有していない。面218は、放射線(X線)に対して感受性を有する面である。面202は多数の電極214-iのみならず陽極212をも有する。面218は陰極216を有する。動作中、陽極212と、陰極216と、電極214-iとの間には電圧差が存在する。その結果、これら2つの面間の体積内で生成される電子/正孔対の電子は陽極212へ移動し、かつ、正孔は陰極216又は任意の電極214-iへ移動する。面202は、FETのドレインを構成する中心電極204を有する。中心電極204を取り囲む電極206はFETのゲートを構成する。電極206を取り囲む電極208はFETのソースを構成する。FETは、電極204、206、208を取り囲む遮蔽電極210によって、シリコンウエハの残りの部分から遮蔽される。どの電極もウエハ「内部」で横方向に並んでいる。陽極212はFETのゲートと接続する(図1Aには接続は図示されていない)。
【0047】
陽極212を取り囲む多数の同心円電極214-iが形成される。これらの同心円電極のうち最も内側の電極は、陽極電圧に近い電圧に接続される。電圧と接続する連続する輪214-iは、最も内側の電極の陽極電圧よりもわずかに大きな電圧から、最も外側の電極の陰極電圧に近い電圧にまで増大する。環状電極214-iは、生成された電子/正孔対から陽極へ電子を案内する電場をウエハ内部に生じさせる。前記陽極は、小さな構造物で、陰極に対して小さなキャパシタンスしか有していない。
【0048】
動作中、電位差が陽極/陰極に印加されることに留意して欲しい。ここで陰極に対する陽極のキャパシタンスは減少する。動作中わずか0.15pFの陽極キャパシタンスしか有していないシリコンドリフトダイオードは市販されている。
【0049】
一のウエハ上に多数のシリコンドリフトダイオードを形成し、中央から離れた場所にFETを設けることは既知であることにさらに留意して欲しい。これにより、図1で述べたように、中心貫通孔を利用することが可能となる。そのような素子の例はPNセンサ株式会社のRococo2である。電子顕微鏡鏡筒により生成される電子ビームを通過させる中心孔を備えるシリコンドリフトダイオードも既知である。
【0050】
図2Bは、図1Aに図示されたシリコンドリフトダイオードの詳細を概略的に表している。図2Bは中心から陽極までの部分を図示している。ここで陽極212とFETのゲートとの間での接続は、メタライゼーション222として概略的に表されている。陰極216の直下には、感受性を有する体積220が図示されている。感受性を有する表面上に入射するX線は、その体積へ侵入し、この体積内に多数の電子/正孔対を生成する。電子/正孔対の量は光子のエネルギーに依存する。
【0051】
電荷は陽極に蓄積して、陽極がたとえばリセットダイオード(図示されていない)によってリセットされるまで、陽極の電圧を(陰極に対して)負に帯電させる。あるいはその代わりにFETのドレインからゲートへの漏れ電流は、平均の電荷蓄積を補償するのに用いられて良い。
【0052】
通常フィードバックキャパシタは、シリコンドリフトダイオード上に集積されて、陽極と出力とを接続するが、このキャパシタはシリコンドリフトダイオードの外部に設けられても良いことに留意して欲しい。
【0053】
図3は、シリコンドリフトダイオードを備える検出器の検出器回路を概略的に表している。
【0054】
シリコンウエハ200は、光子が電子/正孔対を生成する真性体積300を有する。真性体積は、陰極302と陽極301を備えるダイオードの一部である。電子/正孔対の電子は陰極へ向かって移動する。正孔は陽極で収集される。ウエハ上に設けられたFET303のゲートは陰極に接続される。FET303のソースは、ウエハ外部に設けられた増幅器306に接続される。ウエハ上のキャパシタ305は、増幅器の出力からのフィードバックをFETのゲートに供する。それによりFETと増幅器は、電荷増幅装置として機能する。パルス発生装置307は、電荷増幅装置の出力信号を監視する。出力信号の電圧が閾値レベルを超えて上昇するとき、キャパシタンスを放電して電荷増幅装置をリセットするパルスが、ウエハ上のダイオード304を介して生成される。ピン310上に存在する電荷増幅装置の出力での信号は、信号を処理してモニタ309上にスペクトルを生成する信号処理装置308へ供給される。
【0055】
信号処理装置はまた、たとえば元素とその量を列挙したリストを与えることにより、又は、可能な無機組成物のリストを供することによって、他の方法で試料の情報を与えても良い。後者は、処理装置がたとえば走査電子顕微鏡の位置分解能と組み合わせられることで特に魅力的なものとなる。たとえば偽色により着色された像中に位置依存する材料の組成を示す像が供される。
【0056】
ピン310上に存在する信号が図4に図示されていることにさらに留意して欲しい。
【0057】
図4は、ピン310(図3参照)での電荷増幅装置の後のシリコンドリフト検出器の出力信号を概略的に表している。
【0058】
出力信号−典型的には電圧−は、間隔−たとえば間隔403−によって分離された多数のステップ−たとえばステップ401と402−を有する。これらのステップは、光子がダイオードに衝突した結果である。ステップの高さは、変化し、かつ、光子のエネルギーの指標である。ステップ間の信号に、ピーク間値404のノイズが明確に見える。信号は、ステップ間の間隔中でフィルタリング又は平滑化されて良い。その結果、間隔の分散よりも小さな分散を有する値が、短い間隔にわたって平滑化される。よってステップ401が、ステップ405を取り囲む2つの間隔よりも長い2つの間隔によって取り囲まれることで、ステップ401のステップ高さの分散は、ステップ405のステップ高さの分散よりも小さくなる。信号が所定のレベルを超えるとき、電荷増幅装置はリセットされる。その結果信号406は低下する。
【0059】
図5は、シミュレーションによる信号から決定されたステップの分散の逆数の結果を概略的に表している。4つの明確に分離される成分を含むノイズの現実的なモデルを示す信号のシミュレーションがモデル化される。
1. 増幅装置入力での一連のノイズ。これは、第1FETのゲートの入力に存在するホワイトノイズである。根本原因は、入力での一連のノイズ電圧としてモデル化されたFETのドレイン電流でのノイズである。
2. 入力での並列ノイズ。これらは、検出器と平行なホワイトノイズ源で、FETゲート漏れ電流と、入力で並列な抵抗の熱雑音を有する。
3. FETの入力での1/fノイズ
4. ファノノイズ。ファノノイズの結果、ステップ高さは、半値全幅FWHMfanoが2.355(εEF)1/2である他の分散を有する。ここでεは半導体材料のイオン化エネルギー(シリコンであれば3.7eV)、Eは衝突する光子のエネルギー(たとえばMnのKα線では5.9keV)で、Fはファノ因子である(シリコンでは0.115)。
【0060】
図5は、104の数のステップのシミュレーションについての変数(分散の逆数)を有する結果である。低計数率であるためステップ間での長い平均時間については、分散は低く、高計数率であるためステップ間での短い平均時間については、分散は高いことに留意して欲しい。分散はまた検出器内でのノイズの関数でもある。従って以下のシミュレーションパラメータは、シミュレーションを再現する際には重要である。
− 入力計数率=4×105[カウント/秒]
− (増幅装置)前方の感受性:1mV/keV
− サンプリング時間=25ns
− (前置増幅後の)ノイズ密度:6nV/Hz(広帯域ホワイトノイズ)
− 漏れ電流:10fA
− 最小時間平均:25ns
− 最大時間平均:12.5μs
図6は、同一の入力信号から得られた、3つの異なる形状を用いた(シミュレーションによる)出力信号の結果を概略的に表している。
【0061】
入力信号は、100eV、170eV、及び300eVに3本のスペクトル線を有するシミュレーションによる信号である。図6A図6Bでは、多数のビンすなわち間隔が、横軸すなわちエネルギー軸に沿って配置されている。縦軸は、各ビンすなわち間隔でのイベント数である。図6Cでは、各イベントは、1/σ2でスケーリングされた推定分散に従った分散σを有するガウシアン曲線によって表される。ガウシアンは、積分したら1になるので、分散の小さいガウシアンは、分散の大きなガウシアンよりも大きなピーク値を有することに留意して欲しい。ガウシアンに1/σ2でスケーリング(を乗じる)ことによって、曲線の積分は変調される。
【0062】
図6Aは、時定数T=0.5μsの固定フィルタを用いて得られた出力信号を表している。図6Bは、時定数T=200ns〜25μsの適応フィルタを用いて得られた出力信号を表している。図6Cは、本発明による重み付けされたフィルタリングを用いて得られた出力信号を表している。
【0063】
固定フィルタを用いることによって、わずか1676のイベントしか登録されず、残りはパイルアップによって失われた。つまり(複数の)次のイベントは、フィルタリング時間内に到着してしまう。パイルアップは検出可能で、一般的には、結果として2つ以上の歩パルスが拒絶される。図6Aに図示されているように、この出力信号の統計は不十分である。100eVでのエネルギー線と170eVでのエネルギー線は分解できない。
【0064】
図6Bは、時定数T=200ns〜25μsの適応フィルタを用いて得られた出力信号である。適応フィルタを用いることによって、3452のイベントを登録される。100eVでのエネルギー線と、170eVでのエネルギー線と、300eVでのエネルギー線は分解できる。
【0065】
本発明による重み付けされたフィルタを用いることによって、3488のイベントが登録される。これは適応フィルタによって登録された数とほぼ同数である。曲線は、多数のガウス曲線を追加した結果である。各ガウス曲線には1/σ2が乗じられる。ここでσは、対応するイベントについて決定される分散である。低分散の(つまり高信頼性の)イベントが強調される。このことは、「現実の」値に近い値のイベント−通常は低分散を示す−が供されることを意味している。これらのガウス曲線すべてを加える結果、意図したエネルギーの出力信号が強調される。具体的には、100eVでのピークと170eVでのピークがはるかに良好に分解される。
【0066】
図7は、適応フィルタを用いて入力信号から得られたスペクトルと、本発明のフィルタを用いて入力信号から得られたスペクトルとの比較を概略的に表している。
【0067】
図7は、時定数T=200ns〜25μsの適応フィルタを用いて得られた約6×105のサンプルすなわちイベントを含む出力信号(図6Bでも用いられている)と、本発明による重み付けされたフィルタを用いて得られた約6×105のサンプルすなわちイベントを含む出力信号との比較を概略的に表している。図示されたバーは、適応フィルタの結果が表されているビンに対応する。他方曲線701は、重み付けされたフィルタリングからえられた重み付け因子を乗じた全てのガウス関数を加えたものである。図から分かるように、本発明による出力信号は、適応フィルタリングにより得られた信号よりも、良好に分解されて明確になっている。
【0068】
好適には、強調因子を乗じたガウス関数が各ステップに用いられることに留意して欲しい。しかし実験中、低分散である結果ピーク値が大きくなる他の分布が用いられても良い。非常に有用な分布はたとえば、(従来技術に係る方法で得られたバーのように)ヒストグラムに追加/統合される、分散の関数である標準的な幅と高さを有するバーである。
【0069】
図8は、1次元再帰双方向フィルタを概略的に表している。
【0070】
入力信号におけるイベントの信頼できる検出がこの方法にとっては重要である。このことは固定時間整形器にとっても当てはまる。課題は、パイルアップカウントを避けるための最小可能時間でのステップの存在を検出することである。これは通常、信号をサンプリングして、短いFIRフィルタ(典型的には100〜200ns)を用いて、その後閾値を有するコンパレータを用いることによって行われる。低検出限界とノイズ防止による誤始動との間での妥協が必要となる。閾値の値が低すぎると、誤始動により大きなゼロ電圧ピークが生じて石舞う。閾値の値が高すぎると、パルスが失われる。現在の整形器は通常、様々な幅が一定の整形器を組み合わせて利用する(特許文献3参照)。
【0071】
ここで閾値を下げながらも良好なパイルアップ検出を維持する考え方について説明する。その考え方は、1次元再帰双方向フィルタを用いて、フィルタ帯域を、そのフィルタの実際の出力を有する「将来の」入力サンプルの偏差に適応させることである。
【0072】
その動作は以下のようなものである。
【0073】
入力信号は、アナログ−デジタル変換器(ADC)800によってサンプリングされる。その結果出力信号S(t)が生成される。ルックアヘッド(先読み)フィルタ801は実効的に、nのサンプル(たとえば4つのサンプル)を平均化する。ルックアヘッドフィルタ801は、伝達関数U(t)=U(t-Δ)+(S(t+Δ)-S(t))/nを有するFIR又はIIRであることが好ましい。ここで、S(t)はADCの出力信号で、U(t)は時刻tでのルックアヘッドフィルタ801の出力信号で、Δはサンプル間での時間差である。信号は、伝達関数V(t)=V(t-Δ)+α×[S(t)-V(t-Δ)]を有する再帰アベレージャ808によっても平均化される。ここで、V(t)は時刻tでの再帰フィルタの出力信号で、αはフィルタ定数である。
【0074】
両フィルタの出力信号は、減算器802によって互いに減じられる。入力信号が大きく変化しないとき、減算器の出力803は所定の上側閾値Th804を下回る。この場合、コンパレータ806は、再帰アベレージャに低い値のαを使用させる信号809を、セレクタ807を介して出力する。この結果、大きなノイズ抑制が、誤ったトリガ発生を減少させる。
【0075】
入力信号が上昇するとき、ルックアヘッドフィルタはすぐにこれに追随し、かつ、減算器の信号は閾値Thを超えて上昇する。その結果、コンパレータ806が始動し、パルスが検出されることを示す信号が発生する。同時に、再帰アベレージャに大きな値のαが採用される結果、フィルタリングは最小となる。このことで、入力信号の立ち上がり時間中での入力信号の迅速な追跡が保証される。
【0076】
一旦出力信号とルックアヘッドフィルタ出力との差異が、所定の下側閾値Tl805よりも小さくなると、再帰アベレージャ808は、小さな値のαを有する最大フィルタリングに切りかわる。
【0077】
再帰アベレージャ808の出力信号810は、ステップ高さのさらなる処理と決定に用いられて良い。ただしADC800の出力信号が用いられても良い。コンパレータ806の出力809はパイルアップ検出等に用いられ得る。
【0078】
このパルス検出によって、約2σのノイズに相当する非常に低いエネルギー閾値のレベルが設定可能となり、かつ、95%の成功率で5%の失敗警告率が実現される。実際の設定では、100eV周辺の閾値レベルである(ベリリウム未満)。これは、現在の処理装置/方法での値よりもはるかに小さい。
【0079】
当業者はすぐに理解するように、検出器内での漏れ電流と全種類の電子オフセットによる入力信号の一定の傾斜が、ステップ高さの推定において誤りを生じさせる。一定の整形器については、一定の誤りにしかならない。適応フィルタについては、プラトーの長さが変化するので、この結果、出力結果においてノイズが生じる。
【0080】
よって適応整形器については、傾斜を連続的に測定して、その傾斜をサーボ制御ループによって補正することが重要である。各プラトーでの傾斜値は、最初と最後が除かれた3つの等距離の部分においてプラトーの長さを分割することによって、計算されることが好ましい。これにより、理想的な最小二乗直線フィッティングに非常に近い推定が与えられる。この方法は、2つの区分で1つのプラトーを分割することによって傾斜を決定する特許文献3の方法とは異なることに留意して欲しい。実際、理想的な最小平均二乗フィッティングがFPGA資源の観点から負担が大きいと考えられる場合には、(特許文献3のように2つではなく)3つの領域での分割は、精度とホワイトノイズの観点から最適な方法である。
【0081】
信号のノイズ特性、LFバリエーション(ドリフト)、及び100Hzの考えられる干渉(うなり)等に依存して、実際の傾斜値による局所的な補正を行う必要があると考えられる。
【0082】
極限では、当該方法は、(所定の)値よりも大きな分散を有する(低信頼性の)値を破棄する手順を含むことに留意して欲しい。これはデータを破棄することを意味するが、その効果は予想ほど深刻ではないと考えられる。破棄されたデータは定義により信頼できないデータだからである。
【0083】
上限をフィルタ周期に設定して、たとえば低周波ノイズの効果(たとえばフリッカノイズ)を避け、かつ、検出器(大抵は逆バイアスダイオード)内での漏れ電流の効果を除去することは通常は有利であることにさらに留意して欲しい。このことは、本明細書で述べた信号処理から独立して、漏れ電流の推定ができないことを意味する訳ではない。一般的に信号処理は、データのサンプリングとデジタル化で開始されるので、すべてのデータは必要とされる任意の処理にとって利用可能である。
【0084】
上述の例では、X線検出器−より具体的にはSDD−が、信号を生成するセンサとして用いられることに留意して欲しい。当業者に知られているように、イベントのエネルギーを検出する他のセンサ−たとえば(深)紫外光子、中性子、電子、イオンを含む粒子放射線を検出する放射線センサ−も同様の信号を生成する。そのようなセンサは放射線センサと総称される。
【符号の説明】
【0085】
100 試料
102 試料ホルダ
104 電子ビーム
106 偏向コイル
108 軸
110 コイル
112 ヨーク
114 固体素子
116 検出器
200 Siウエハ
202 第1面
204 中心電極
206 電極
208 電極
210 電極
212 陽極
214-i 電極
214-10 電極
216 陰極
218 第2面
220 感受性を有する体積
222 メタライゼーション
300 真性体積
301 陽極
302 陰極
303 FET
304 ダイオード
305 キャパシタ
306 増幅器
307 パルス発生装置
308 信号処理
309 モニタ
310 ピン
401 ステップ
402 ステップ
403 間隔
404 ピーク間間隔
405 間隔
406 信号
800 アナログ−デジタル変換器
801 ルックアヘッドフィルタ
802 減算器
803 出力
804 上側閾値
805 下側閾値
806 コンパレータ
807 セレクタ
808 再帰アベレージャ
809 信号
810 出力信号
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図7
図8