特許第6203018号(P6203018)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ キユーピー株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6203018
(24)【登録日】2017年9月8日
(45)【発行日】2017年9月27日
(54)【発明の名称】パン
(51)【国際特許分類】
   A21D 13/00 20170101AFI20170914BHJP
   A21D 2/34 20060101ALI20170914BHJP
   A21D 2/26 20060101ALI20170914BHJP
   A21D 2/18 20060101ALI20170914BHJP
【FI】
   A21D13/00
   A21D2/34
   A21D2/26
   A21D2/18
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-247840(P2013-247840)
(22)【出願日】2013年11月29日
(65)【公開番号】特開2015-104343(P2015-104343A)
(43)【公開日】2015年6月8日
【審査請求日】2016年4月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001421
【氏名又は名称】キユーピー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】笹川 伸之
(72)【発明者】
【氏名】吉田 美咲
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 四郎
【審査官】 厚田 一拓
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−325140(JP,A)
【文献】 特表2010−501195(JP,A)
【文献】 特開昭60−192538(JP,A)
【文献】 特開2008−099581(JP,A)
【文献】 特開平07−322811(JP,A)
【文献】 特開平07−222592(JP,A)
【文献】 米国特許第06270813(US,B1)
【文献】 特開昭59−088040(JP,A)
【文献】 特表2001−526058(JP,A)
【文献】 特開2002−325559(JP,A)
【文献】 特開2000−116312(JP,A)
【文献】 特開昭54−163842(JP,A)
【文献】 特開2001−112413(JP,A)
【文献】 平成24年度日本調理科学会大会研究発表要旨集,2012年 9月25日,2B-a3
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A21D 2/00 − 17/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/FSTA/WPIDS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも卵黄を含有したパンの製造方法において、
組成がマルトース5%以上25%以下、マルトトリオース50%以上80%以下、マルトテトラオース5%以上25%以下であるマルトオリゴ糖、及び酵素活性を有するホスホリパーゼA2を添加し、焼成により前記酵素活性を失活させた、
パンの製造方法。
【請求項2】
リゾ化率10%以下の乾燥卵黄、組成がマルトース5%以上25%以下、マルトトリオース50%以上80%以下、マルトテトラオース5%以上25%以下であるマルトオリゴ糖、及び酵素活性を有するホスホリパーゼA2を含有する乾燥卵黄調整品を添加し、焼成により前記酵素活性を失活させた、
パンの製造方法
【請求項3】
請求項1又は2に記載のパンの製造方法において、
穀粉100gに対し、前記マルトオリゴ糖が0.1g以上になるように添加した、
パンの製造方法
【請求項4】
請求項1乃至のいずれかに記載のパンの製造方法において、
生卵黄換算で1gの卵黄液に対し、ホスホリパーゼA2が3単位以上になるように添加した、
パンの製造方法
【請求項5】
請求項1乃至のいずれかに記載のパンの製造方法において、
ホスホリパーゼA2が微生物由来である、
パンの製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも卵黄を含有したパンにおいて、マルトオリゴ糖、及び酵素活性を有するホスホリパーゼA2を添加し、焼成により前記酵素活性を失活させた、ふっくらとしたボリュームを有するパンに関する。
また、リゾ化率10%以下の乾燥卵黄、マルトオリゴ糖、及び酵素活性を有するホスホリパーゼA2を含有する乾燥卵黄調整品を添加し、焼成により前記酵素活性を失活させた、
ふっくらとしたボリュームを有するパンに関する。
【背景技術】
【0002】
パンは、小麦粉等の穀粉を主体とした原料に水を加え、混捏し、必要に応じて発酵した生
地を焼成等により加熱することで製造され、食卓に欠かせない食品の一つである。
種類も多く、さまざまなパンが市販されているが、ふっくらとしたボリュームを有するパンが日本人の嗜好に叶うため消費者に好まれる傾向がある。
また、製造者としても、ふっくらとしたボリュームを有するパンが製造できれば、少ない原材料で多くの商品を生産できるため、好ましい。
【0003】
そこで、ふっくらとしたボリュームを有するパンを製する方法として、例えば、マルトトリオースを添加する方法(昭60−192538号公報)、穀物蛋白質の部分分解物及びリパーゼを添加する方法(特許第3414652号)、マルトヘキサオース及びマルトペンタオースを添加する方法(特許第4367889号)等が提案されている。
【0004】
しかしながら、これらの方法は、いずれも十分満足しうるものには至っておらず、ふっくらとしたボリュームを有するパンを製する方法には更なる検討の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】昭60−192538号公報
【特許文献2】特許第3414652号
【特許文献3】特許第4367889号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明の目的は、少なくとも卵黄を含有したパンにおいて、マルトオリゴ糖、及び酵素活性を有するホスホリパーゼA2を添加し、焼成により前記酵素活性を失活させた、ふっくらとしたボリュームを有するパンを提供するものである。
また、リゾ化率10%以下の乾燥卵黄、マルトオリゴ糖、及び酵素活性を有するホスホリパーゼA2を含有する乾燥卵黄調整品を添加し、焼成により前記酵素活性を失活させた、ふっくらとしたボリュームを有するパンを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、少なくとも卵黄を含有したパンにおいて、マルトオリゴ糖、及び酵素活性を有するホスホリパーゼA2を添加し、焼成により前記酵素活性を失活させたところ、意外にもふっくらとしたボリュームを有するパンが得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
また、別の様態として、リゾ化率10%以下の乾燥卵黄、マルトオリゴ糖、及び酵素活性を有するホスホリパーゼA2を含有する乾燥卵黄調整品を添加し、焼成により前記酵素活性を失活させた、ふっくらとしたボリュームを有するパンを提供できる。
【0008】
すなわち、本発明は、
(1)少なくとも卵黄を含有したパンにおいて、
マルトオリゴ糖、及び酵素活性を有するホスホリパーゼA2を添加し、焼成により前記酵素活性を失活させた、
パン、
(2)(1)のパンにおいて、
マルトオリゴ糖が、平均重合度2以上5以下のマルトオリゴ糖の混合物である、
パン
(3)(1)又は(2)のパンにおいて、
マルトオリゴ糖の組成が、マルトース30%以下、マルトトリオース40%以上、マルトテトラオース30%以下になるように含有した、
パン、
(4)リゾ化率10%以下の乾燥卵黄、マルトオリゴ糖、及び酵素活性を有するホスホリパーゼA2を含有する乾燥卵黄調整品を添加し、焼成により前記酵素活性を失活させた、
パン、
(5)(1)乃至(4)のいずれかのパンにおいて、
穀粉100gに対し、マルトオリゴ糖が0.1g以上になるように添加した、
パン、
(6)(1)乃至(5)のいずれかのパンにおいて、
生卵黄換算で1gの卵黄液に対し、ホスホリパーゼA2が3単位以上になるように添加した、
パン、
(7)(1)乃至(6)のいずれかのパンにおいて、
ホスホリパーゼA2が微生物由来のホスホリパーゼA2である、
パン、
である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、少なくとも卵黄を含有したパンにおいて、マルトオリゴ糖、及び酵素活性を有するホスホリパーゼA2を添加し、焼成により前記酵素活性を失活させることにより、ふっくらとしたボリュームを有するパンを提供できる。
また、リゾ化率10%以下の乾燥卵黄、マルトオリゴ糖、及び酵素活性を有するホスホリパーゼA2を含有する乾燥卵黄調整品を添加し、焼成により前記酵素活性を失活させることにより、ふっくらとしたボリュームを有するパンを提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。
なお、本発明において「%」は「質量%」を意味する。
【0011】
<本発明の特徴>
本発明は、少なくとも卵黄を含有したパンにおいて、マルトオリゴ糖、及び酵素活性を有するホスホリパーゼA2を添加し、焼成により前記酵素活性を失活させた、ふっくらとしたボリュームを有するパンに特徴を有する。
また、リゾ化率10%以下の乾燥卵黄、マルトオリゴ糖、及び酵素活性を有するホスホリパーゼA2を含有する乾燥卵黄調整品を添加し、焼成により前記酵素活性を失活させた、ふっくらとしたボリュームを有するパンに特徴を有する。
【0012】
<パン>
本発明のパンとは、一般的なパンと称されるものであって、卵黄と、薄力粉、強力粉、全粒粉等の小麦粉、もち米粉、うるち米粉、上新粉等の米粉、大麦粉、ライ麦粉、玄米粉、そば粉、とうもろこし粉等の穀粉を配合し、水を加え、混捏し、発酵した生地を焼成等により加熱したものであれば、特に限定されるものではない。例えば、コッペパン、クロワッサン、テーブルロール、バターロール、ジャムパン、アンパン、クリームパン、グラハムパン、バンズパン又はブリオッシュ等が挙げられる。
【0013】
<卵黄>
本発明のパンは、卵黄を含有したものである。
本発明に用いる卵黄は、パンやケーキ等に用いられるものであれば、いずれのもので良い。
例えば、鶏卵を割卵し卵白と分離させた生卵黄あるいは卵黄液、前記生卵黄あるいは卵黄液にスプレードライやフリーズドライ等の乾燥処理を施した乾燥卵黄、前記生卵黄あるいは卵黄液に砂糖を加えた加糖卵黄、前記生卵黄あるいは卵黄液や加糖卵黄等を凍結した凍結卵黄、その他、脱糖処理、殺菌処理、脱コレステロール処理等を施した処理卵黄等が挙げられる。
また、本発明においては、本発明の効果を損なわない範囲で卵白を含んだ例えば、全卵や上述した処理等を施したもの等も用いることができる。
この場合、全卵の卵黄部分が本発明の卵黄に相当する。
【0014】
<卵黄の配合量>
本発明のパン全体中の卵黄の含有量は、一般的にパンに含有される量であれば良い。
具体的には、穀粉100%に対し、固形分換算で0.3%以上7.5%以下とすると良く、さらに0.8%以上4.5%以下とすると良い。
上記固形分換算量を生卵黄に換算すると、穀粉100%に対し、固形分換算0.3%以上7.5%以下は0.7%以上17%以下となり、0.8%以上4.5%以下は1.7%以上10%以下となる。
【0015】
<マルトオリゴ糖>
本発明のパンは、必須成分としてマルトオリゴ糖を添加したものである。
マルトオリゴ糖とは、グルコースのみを構成糖とし、α―1,4グリコシド結合を基本構造にしたオリゴ糖であり、例えば、マルトース、マルトトリオース、マルトテトラオース、マルトペンタオース、マルトヘキサオース又はマルトヘプタオース等が挙げられる。
【0016】
<マルトオリゴ糖の種類及び組成>
本発明で用いるマルトオリゴ糖としては、ふっくらとしたボリュームを有するパンが得られ易いことから、平均重合度2以上5以下のマルトオリゴ糖の混合物を用いると良い。
また、マルトオリゴ糖の組成は、マルトース30%以下、マルトトリオース40%以上、マルトテトラオース30%以下であると良く、さらに、マルトース5%以上25%以下、マルトトリオース50%以上80%以下、マルトテトラオース5%以上25%以下であると良い。
また、本発明のパンにおいて、マルトオリゴ糖を添加せず、マルトオリゴ糖以外の糖、例えば、フラクトオリゴ糖、乳果オリゴ糖又はガラクトオリゴ糖等の構成糖としてグルコース以外の単糖を含む糖、環状構造を有する糖であるシクロデキストリン、分岐構造を有する糖であるイソマルトオリゴ糖を添加した場合、ふっくらとしたボリュームを有するパンが得られない。
【0017】
<マルトオリゴ糖の添加量>
本発明のパンにおいて、ふっくらとしたボリュームを有するパンが得られ易いことから、マルトオリゴ糖の添加量は、穀粉100gに対し、0.1g以上とすると良く、さらに、0.5g以上とすると良い。
マルトオリゴ糖の添加量が0.1g以上の場合、澱粉の老化が防止され、ふっくらとしたパンのボリュームが維持されやすい。
なお、上限は規定するものではないが、糖類を大量に添加した場合は食味に影響する場合がある。
よって、マルトオリゴ糖の添加量は、穀粉100gに対し、40g以下とすると良く、さらに30g以下とすると良い。
【0018】
<ホスホリパーゼA2>
本発明のパンは、必須成分としてホスホリパーゼA2を添加したものである。
ホスホリパーゼA2とは、リン脂質を加水分解する酵素で、リン脂質の2位のエステル結合を加水分解し、リン脂質をリゾリン脂質に分解する酵素である。
また、ホスホリパーゼA2の単位とは、リン脂質を基質として1分間に1マイクロモルの遊離脂肪酸を生成する活性を1単位(U)としたものである。
【0019】
<ホスホリパーゼA2の種類>
ホスホリパーゼA2には、豚膵臓由来のものと微生物由来のものがある。
本発明のパンにおいて、風味の点で優れたパンが得られ易いことから、微生物由来のホスホリパーゼA2を用いると良い。
前記微生物由来のホスホリパーゼA2としては、例えば、アスペルギルス属等の糸状菌由来、バチルス属、ラクト・バチルス属、ストレプトコッカス属、又はストレプトマイセス属等の細菌由来のホスホリパーゼA2が挙げられる。
本発明のパンの製造工程では、酵素活性を有するホスホリパーゼA2を他の原料と混合してはじめてリゾ化反応が開始する。
さらに、焼成によって前記酵素活性が失活し、リゾ化反応が停止する。
微生物由来のホスホリパーゼA2は、パン生地の焼成によって容易に失活させ、リゾ化反応を停止させることができるが、豚膵臓由来のホスホリパーゼA2は、焼成によって失活させることができないため、パンの製造が終了した後もリゾ化反応が進行してしまい、パンの物性が不安定になるという問題がある点からも、微生物由来のホスホリパーゼA2の方が好ましい。
【0020】
<ホスホリパーゼA2の添加量>
本発明のパンにおいて、ふっくらとしたボリュームを有するパンが得られ易いことから、
ホスホリパーゼA2の添加量は、生卵黄換算で1gの卵黄液に対し、ホスホリパーゼA2が3単位以上とすると良く、さらに、6単位以上とすると良い。
なお、上限は規定するものではないが、生卵黄換算で1gの卵黄液に対し、ホスホリパーゼA2を60単位以上多く配合しても、添加量に応じた本発明の効果が得られ難く、経済的ではない。
よって、ホスホリパーゼA2の添加量は、生卵黄換算で1gの卵黄液に対し、60単位以下とすると良く、さらに、45単位以下とすると良い。
【0021】
<乾燥卵黄調整品>
本発明のパンは、ふっくらとしたボリュームを有するパンを得るために、リゾ化率10%以下の乾燥卵黄、マルトオリゴ糖、及び酵素活性を有するホスホリパーゼA2を含有する乾燥卵黄調整品を添加しても良い。
ここでいうリゾ化率とは、リン脂質のリゾリン脂質への変換率のことであり、すなわち全リン脂質に対するリゾリン脂質の質量百分率のことである。
前記乾燥卵黄調整品に用いる乾燥卵黄のリゾ化率は10%以下である必要があり、さらに8%以下とすると良い。
【0022】
<乾燥卵黄調整品の調製方法>
本発明に用いる乾燥卵黄調整品の調整方法としては、卵黄液にスプレードライやフリーズドライ等の乾燥処理を施した乾燥卵黄、マルトオリゴ糖、及び酵素活性を有するホスホリパーゼA2を混合する方法でも良いし、卵黄液、マルトオリゴ糖、及び酵素活性を有するホスホリパーゼA2を混合した後、速やかにスプレードライやフリーズドライ等の乾燥処理を施す方法でもよい。
【0023】
<パンの製造方法>
本発明のパンの製造方法は、上述した卵黄、マルトオリゴ糖、及び酵素活性を有するホスホリパーゼA2、又は上述した乾燥卵黄調整品を、常法に則り他の原料と混合して、リゾ化反応を開始させ、さらに焼成によって前記酵素活性を失活させて、製造すれば良く、例えば、以下のように製造することができる。公知の直捏法(ストレート法)や中種法等に準じて、上記卵黄、マルトオリゴ糖、及びホスホリパーゼA2、又は上記乾燥卵黄調整品と他の原料を混合し、混捏し、必要に応じて発酵し、焼成により加熱することで本発明のパンが得られる。具体的には、コッペパンの場合は、パン生地を型に入れ成型後、必要に応じて最終発酵(ホイロ)してからオーブン等で焼成すればよい。
【0024】
<他の原料>
本発明のパンには、上述した卵黄、リゾ化率10%以下の乾燥卵黄、マルトオリゴ糖、及びホスホリパーゼA2以外の食品素材を本発明の効果が損なわれない範囲で適宜添加することができる。
具体的には、イースト、生クリーム、動植物油、ショートニング、バター又はマーガリン等の油脂類、グラニュー糖、上白糖、三温糖又は黒糖等の糖類、カルシウム、ナトリウム、カリウム又はマグネシウム等のミネラル類又はその塩、アスコルビン酸又はビタミンE等の酸化防止剤、香辛料、グレープフルーツフレーバー、オレンジフレーバー、りんごフレーバー又はレモンフレーバー等の香料、イーストフード、増粘剤、乳化剤、色素等が挙げられる。
また、本発明のパンには、アイシングソース、フィリング、フルーツ等、必要に応じてトッピングしてもよい。
【0025】
次に、本発明を実施例、比較例及び試験例に基づき、さらに説明する。
なお、本発明はこれに限定するものではない。
【実施例】
【0026】
[実施例1]パンの製造
配合表1に記載された配合に基づいて、実施例1のパンを製造した。
つまり、攪拌機に、強力粉、清水、グラニュー糖、生卵黄、マルトオリゴ糖の混合物(平均重合度3、マルトース8%、マルトトリオース75%、マルトテトラオース15%、マルトペンタオース2%)、ホスホリパーゼA2(微生物由来、酵素活性:100,000−120,000U/g、ナガセケムテックス(株)製)、脱脂粉乳、水で溶いた生イースト、食塩を投入して、26℃で、低速3分、中速5分、高速4分混捏した。
ついで、マーガリンを投入して、低速3分、中速5分、高速2分混捏し、パン生地を得た。得られたパン生地を28℃、湿度85%で90分間一次発酵を行った。ベンチタイムを20分間とった後、成形し、パウンド型に入れて、35℃、湿度75%で60分間二次発酵を行った。
最後にオーブンに入れ、上火170℃、下火210℃で20分間焼成し、室温にてあら熱をとり、実施例1のパンを得た。
ホスホリパーゼA2の添加量は、生卵黄換算で1gの卵黄液に対し、12単位である。
【0027】
[配合表1]
(強力粉100gに対する質量(g))
強力粉 100g
清水 57g
マルトオリゴ糖の混合物 16g
マーガリン 8g
生卵黄 3.4g(固形分換算で1.5g)
脱脂粉乳 2g
生イースト 2g
食塩 1.5g
ホスホリパーゼA2 40単位
【0028】
[実施例2]
実施例1において、マルトオリゴ糖の混合物の組成は変更せずに、添加量を35g、ホスホリパーゼA2の添加量を13単位にそれぞれ変更し、実施例1と同様の製造方法により実施例2のパンを製造した。
ホスホリパーゼA2の添加量は、生卵黄換算で1gの卵黄液に対し、4単位である。
【0029】
[実施例3]
実施例1において、マルトオリゴ糖の混合物の組成は変更せずに、添加量を0.3g、ホスホリパーゼA2の添加量を167単位にそれぞれ変更し、実施例1と同様の製造方法により実施例3のパンを製造した。
ホスホリパーゼA2の添加量は、生卵黄換算で1gの卵黄液に対し、50単位である。
【0030】
[実施例4]
実施例1において、微生物由来のホスホリパーゼA2を豚膵臓由来のホスホリパーゼA2に変更し、実施例1と同様の製造方法により実施例4のパンを製造した。
【0031】
[比較例1]
実施例1において、マルトオリゴ糖の混合物及びホスホリパーゼA2を添加せず、実施例1と同様の製造方法により比較例1のパンを製造した。
【0032】
[比較例2]
実施例1において、マルトオリゴ糖の混合物を添加せず、実施例1と同様の製造方法により比較例2のパンを製造した。
【0033】
[比較例3]
実施例1において、ホスホリパーゼA2を添加せず、実施例1と同様の製造方法により比較例3のパンを製造した。
【0034】
[試験例1]
マルトオリゴ糖及びホスホリパーゼA2添加の有無及び添加量、ならびにホスホリパーゼA2の種類の違いによる、パンのボリュームに与える影響について調べた。
つまり、実施例1乃至4、及び比較例1乃至3で製したそれぞれのパンを喫食して比較例1で製したパンを基準に滑らかさについて評価した。
【0035】
評価は、下記の評価基準に従ったものである。
◎:比較例1で製したパンよりも、非常にふっくらとしたボリュームを有している。
○:比較例1で製したパンよりも、ふっくらとしたボリュームを有している。
△:比較例1で製したパンよりも、若干ふっくらとしたボリュームを有している。
×:比較例1で製したパンと同程度である。
【0036】
【表1】
【0037】
表1より、マルトオリゴ糖及びホスホリパーゼA2を添加しないと、ふっくらとしたボリュームを有するパンが得られないことが理解でき、
さらに、穀粉100gに対し、マルトオリゴ糖が0.1g以上になるように添加し、生卵黄換算で1gの卵黄液に対し、ホスホリパーゼA2を3単位以上になるように添加した方が、ふっくらとしたボリュームを有するパンが得られ易いことが理解できる(実施例1乃至4)。
特に、穀粉100gに対し、マルトオリゴ糖が0.5g以上になるように添加し、生卵黄換算で1gの卵黄液に対し、ホスホリパーゼA2が6単位以上になるように添加すると、本発明の効果が顕著に現れた(実施例1)。
また、微生物由来のホスホリパーゼA2を添加した方が、ふっくらとしたボリュームを有するパンが得られ易いことが理解でき、さらに、風味の点で優れたパンが得られ易かった(実施例1)。
【0038】
[比較例4]
実施例1において、マルトオリゴ糖の混合物を4’-ガラクトシルラクトース(商品名:オリゴメイト55N、ヤクルト薬品工業(株)製)に変更し、実施例1と同様の製造方法により比較例4のパンを製造した。
【0039】
[比較例5]
実施例1において、マルトオリゴ糖の混合物をα―シクロデキストリン((株)シクロケム製)に変更し、実施例1と同様の製造方法により比較例5のパンを製造した。
【0040】
[比較例6]
実施例1において、マルトオリゴ糖の混合物をイソマルトトリオース(商品名:日食パノッチ、日本食品化工(株)製)に変更し、実施例1と同様の製造方法により比較例6のパンを製造した。
【0041】
[試験例2]
糖の種類の違いによる、パンのボリュームに与える影響について調べた。
つまり、実施例1、及び比較例4乃至6で製したそれぞれのパンを喫食して比較例1で製したパンを基準に滑らかさについて評価した。
【0042】
【表2】
【0043】
[実施例5]
実施例1において、マルトオリゴ糖の混合物の添加量は変更せずに、組成を、グルコース10%、マルトヘキサオース40%、マルトヘプタオース50%に変更し、実施例1と同様の製造方法により実施例5のパンを製造した。
得られたマルトオリゴ糖の混合物は、平均重合度6である。
【0044】
[実施例6]
実施例1において、マルトオリゴ糖の混合物の添加量は変更せずに、組成を、マルトース3%、マルトトリオース85%、マルトテトラオース3%、マルトペンタオース9%に変更し、実施例1と同様の製造方法により実施例6のパンを製造した。
得られたマルトオリゴ糖の混合物は、平均重合度3である。
【0045】
[実施例7]
実施例1において、マルトオリゴ糖の混合物の添加量は変更せずに、組成を、マルトース3%、マルトトリオース46%、マルトテトラオース3%、マルトペンタオース48%に変更し、実施例1と同様の製造方法により実施例7のパンを製造した。
得られたマルトオリゴ糖の混合物は、平均重合度4である。
【0046】
[実施例8]
実施例1において、マルトオリゴ糖の混合物の添加量は変更せずに、組成を、マルトース3%、マルトトリオース45%、マルトテトラオース28%、マルトペンタオース24%に変更し、実施例1と同様の製造方法により実施例8のパンを製造した。
得られたマルトオリゴ糖の混合物は、平均重合度4である。
【0047】
[実施例9]
実施例1において、マルトオリゴ糖の混合物の添加量は変更せずに、組成を、マルトース28%、マルトトリオース44%、マルトテトラオース28%に変更し、実施例1と同様の製造方法により実施例9のパンを製造した。
得られたマルトオリゴ糖の混合物は、平均重合度3である。
【0048】
[実施例10]
実施例1において、マルトオリゴ糖の混合物の添加量は変更せずに、組成を、マルトース28%、マルトトリオース45%、マルトテトラオース3%、マルトヘプタオース24%に変更し、実施例1と同様の製造方法により実施例10のパンを製造した。
得られたマルトオリゴ糖の混合物は、平均重合度3である。
【0049】
[試験例3]
マルトオリゴ糖の組成の違いによる、パンのボリュームに与える影響について調べた。
つまり、実施例1、及び5乃至10で製したそれぞれのパンを喫食して比較例1で製したパンを基準にボリュームについて評価した。
【0050】
【表3】
【0051】
表3より、マルトオリゴ糖が、平均重合度2以上5以下のマルトオリゴ糖の混合物である方が、ふっくらとしたボリュームを有するパンが得られ易いことが理解できる(実施例1、及び6乃至10)
また、マルトオリゴ糖の組成が、マルトース30%以下、マルトトリオース40%以上、マルトテトラオース30%以下になるように含有した方が、ふっくらとしたボリュームを有するパンが得られ易いことが理解できる(実施例1、及び6乃至10)
特に、マルトオリゴ糖の組成が、マルトース5%以上25%以下、マルトトリオース50%以上80%以下、マルトテトラオース5%以上25%以下になるように含有した方が、本発明の効果が顕著に現れた(実施例1)
【0052】
[調製例1]
乾燥卵黄15.3g(固形分95%、キユーピー(株)製)、マルトオリゴ糖の混合物160g(平均重合度3、マルトース8%、マルトトリオース75%、マルトテトラオース15%、マルトペンタオース2%)、及びホスホリパーゼA2(微生物由来、酵素活性:100,000−120,000U/g、ナガセケムテックス(株)製)400単位を混合し、175gの乾燥卵黄調整品1を調整した。
得られた乾燥卵黄調整品1における、乾燥卵黄のリゾ化率は2%であった。
【0053】
[調製例2]
卵黄液34g(固形分45%、キユーピー(株)製)、マルトオリゴ糖の混合物160g(平均重合度3、マルトース8%、マルトトリオース75%、マルトテトラオース15%、マルトペンタオース2%)、及びホスホリパーゼA2(微生物由来、酵素活性:100,000−120,000U/g、ナガセケムテックス(株)製)400単位を混合した後、速やかにスプレードライによって乾燥させ、175gの乾燥卵黄調整品2を調整した。
得られた乾燥卵黄調整品2における、乾燥卵黄のリゾ化率は9%であった。
【0054】
[実施例11]
実施例1において、生卵黄、マルトオリゴ糖の混合物、及びホスホリパーゼA2の代わりに、調整例1で得られた乾燥卵黄調整品1を17.5g添加し、実施例1と同様の製造方法により実施例11のパンを製造した。
【0055】
[配合表2]
(強力粉100gに対する質量(g))
強力粉 100g
清水 57g
乾燥卵黄調整品1 17.5g
マーガリン 8g
脱脂粉乳 2g
生イースト 2g
食塩 1.5g
【0056】
[実施例12]
実施例11において、調製例1で得られた乾燥卵黄調整品1を、調整例2で得られた乾燥卵黄調整品2に変更し、実施例11と同様の製造方法により実施例12のパンを製造した。
【0057】
[比較例7]
実施例11において、調整例1で得られた乾燥卵黄調整品1を添加せず、実施例11と同様の製造方法により比較例7のパンを製造した。
【0058】
[試験例4]
乾燥卵黄調整品添加の有無、及び乾燥卵黄のリゾ化率の違いによる、パンのボリュームに与える影響について調べた。
つまり、実施例11及び12、比較例7で製したそれぞれのパンを喫食して比較例1で製したパンを基準にボリュームについて評価した。
【0059】
【表4】
【0060】
表4より、リゾ化率10%以下の乾燥卵黄、マルトオリゴ糖、及び酵素活性を有するホスホリパーゼA2を含有する乾燥卵黄調整品を添加しないと、ふっくらとしたボリュームを有するパンが得られないことが理解できる(実施例11及び12)。
特に、リゾ化率8%以下の乾燥卵黄、マルトオリゴ糖、及び酵素活性を有するホスホリパーゼA2を含有する乾燥卵黄調整品を添加すると、本発明の効果が顕著に現れた(実施例11)。