(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
縦方向及びそれに直交する横方向と、肌対向面及びその反対側に位置する非肌対向面とを有し、前後ウエスト域の一方である第1ウエスト域と他方である第2ウエスト域と、前記第1及び第2ウエスト域の間に位置するクロッチ域とを含み、前記第1及び第2ウエスト域において前記縦方向へ延びる側縁部どうしが連結されており、前記第1ウエスト域の前記非肌対向面側に取り付けられたテープファスナとを含む使い捨てのパンツ型着用物品において、
前記テープファスナは、繊維不織布製の基材シートによって形成され、前記非肌対向面側に位置する固定部と、少なくとも1つの折曲部位によって折り畳まれた自由部と、折り畳まれた状態における長さ方向と、それに直交し、かつ、前記縦方向とほぼ並行に延びる幅方向と、前記幅方向において対向する両側縁部と、前記固定部と前記自由部とを剥離可能に部分的に固定する少なくとも1つの仮止め部とを有し、
前記仮止め部は、前記両側縁部のうちの少なくとも一方側縁部には配置されておらず、前記一方側縁部において重ねられた部分は接合されておらず、
前記自由部の外面には、前記基材シートとは別体の被覆シートが取り付けられており、
前記被覆シートの両端部が前記テープファスナの両端部に位置しており、
前記基材シートと前記被覆シートとの接合域は、前記長さ方向又は前記幅方向において所与寸法離間して位置する複数の接合部位から形成されていることを特徴とするパンツ型着用物品。
前記自由部は、前記非肌対向面に止着可能な止着域を有し、前記止着域は前記固定部と対向する面に位置し、かつ、フック要素を有するフックシートから形成されており、折り畳まれた状態における前記テープファスナの前記両側縁部どうしが近づく方向のKES曲げ剛性値は、5.5mN〜17.7mN・cm2/cmである請求項1又は2に記載のパンツ型着用物品。
前記テープファスナは、前記固定部に連なる第1自由部と、厚さ方向において前記第1自由部に重ねられる第2自由部とをさらに有し、前記固定部、前記第1及び第2自由部が前記長さ方向において離間する第1及び第2仮止め部によって仮止めされており、前記第1及び第2仮止め部は前記幅方向において離間する一対のドット状を有する請求項1〜4のいずれかに記載のパンツ型着用物品。
前記仮止め部の面積が、折り畳まれた状態における前記テープファスナの表面積の0.5%以上であって、5.0%以下の大きさを有する請求項1〜5のいずれかに記載のパンツ型着用物品。
前記クロッチ域を中心として前記第1及び第2ウエスト域に延びる吸液性コアをさらに有し、前記テープファスナを展開した状態において、前記自由部の前記止着域が前記吸液性コアの側縁部と平面視において重なって位置する請求項3〜8のいずれかに記載のパンツ型着用物品。
前記クロッチ域を中心として前記第1及び第2ウエスト域に延びる吸液性コアをさらに有し、前記テープファスナを展開した状態において、前記テープファスナが前記第1及び第2ウエスト域の前記側縁部どうしが連結されたサイドシームを跨いで、前記自由部の前記止着域が前記第2ウエスト域に位置する前記吸液性コアと平面視において重なって位置する請求項3〜8のいずれかに記載のパンツ型着用物品。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1〜3を参照すると、本発明の第1実施形態に係る
使い捨てのパンツ型着用物品の一例である使い捨ておむつ10は、その幅寸法を二等分する縦軸P及びその長さ寸法を二等分する横軸Qと、縦軸Pに沿う縦方向Y及び横軸Qに沿う横方向Xと、肌対向面及びそれに対向する非肌対向面とを有し、弾性のウエストパネル11と、ウエストパネル11の肌対向面側に取り付けられた吸液構造体12とを含む。また、おむつ10は、前ウエスト域(第1又は第2ウエスト域)13と、後ウエスト域(第1又は第2ウエスト域)14と、前後ウエスト域13,14間に位置するクロッチ域15とを有し、後ウエスト域14の両側部19には、一対のテープファスナ18が配置される。ここで、「後ウエスト域14の両側部19」とは、吸液構造体12の両側縁と後ウエスト域14の両外側縁17cとの間に位置する領域をいう。テープファスナ18は、パンツ型のおむつ10においてサイズ調整用及び廃棄用に使用されるものであるから、後ウエスト域14の横方向Xにおける両側部19間に位置する中央部ではなく両側部19に位置することが好ましい。また、テープファスナ18は、後ウエスト域14の一方側部19にのみ配置されていてもよいし、後ウエスト域14の側部19ではなく、前ウエスト域13の側部に配置されていてもよい。
【0012】
<ウエストパネル>
ウエストパネル11は、前ウエスト域13に位置する前ウエストパネル16と、後ウエスト域14に位置する後ウエストパネル17とから構成される。前ウエストパネル16は、略長方形状であって、吸液構造体12の前端部12Aと交差し、横方向Xへ延びる内端縁16aと、縦方向Yにおいて内端縁16aと離間対向して横軸Qの方向へ延びる外端縁16bと、外端縁16bから下方へ延びる両外側縁16cとを有する。後ウエストパネル17は、略台形状であって、吸液構造体12の後端部12Bと交差し、横方向Xへ延びる中間内端縁17aと、縦方向Yにおいて中間内端縁17aと離間対向して横方向Xへ延びる外端縁17bと、内外端縁17a,17bにおいて縦方向Yへ延びる両外側縁17c、両外側縁17cと中間内端縁17aとつなぎ、かつ、縦軸Pに対して傾斜して延びる両内側縁17dとを有する。
【0013】
前ウエストパネル16の両外側縁16cと、それらに前後方向において対向する後ウエストパネル17の両外側縁17cとは、互いに重ね合わされて、縦方向Yへ断続的に延びるサイドシーム20によって連結されることによってウエスト開口及び一対のレッグ開口が画定される。サイドシーム20は、熱又は超音波によるエンボス加工によって互いに重なり合うシートが融着される。
【0014】
<前後ウエストパネル>
図2を参照すると、前後ウエストパネル16,17は、肌対向面側に位置する内層シート21,22と、非肌対向面側に位置する外層シート23,24と、横方向Xへ延びる複数条のストリング状又はストランド状の弾性材料から形成され、内外層シート21,22,23,24の間においてホットメルト接着剤を介して伸長状態で収縮可能に取り付けられた前後ウエスト弾性体25,26とを有する。
【0015】
前後ウエスト弾性体25,26は、内層シート21,22と外層シート23,24との間にホットメルト接着剤を介して固定されており、ウエスト開口縁側に位置する上方ウエスト弾性体25A,26Aと、その下方に位置する下方ウエスト弾性体25B,26Bとを有する。内外層シート21,22,23,24は、それらの内面のいずれかに塗布されたホットメルト接着剤を介して固定されていてもよいし、各ウエスト弾性体25,26の外周に塗布されたホットメルト接着剤を介して両シートが固定されていてもよい。また、本実施形態において、内層シート21,22は、前後ウエスト域13、14を形成する1枚のシート材料のみから形成されているところ、複数のシート材料から形成することできる。前後ウエスト弾性体25,26は、繊度が約300〜940dtexであって、収縮または弛緩された状態から約1.5〜3.0倍に伸長されたストリング状またはストランド状の弾性材料から形成することができる。
【0016】
図2を参照すると、吸液構造体12は、縦長の略矩形状であって、前ウエストパネル16の肌対向面と連結された前端部12Aと、後ウエストパネル17の肌対向面と連結された後端部12Bと、前後端部12A,12B間において縦方向Yへ延び、クロッチ域15の一部を形成する中間部12Cとを有する。
【0017】
図2及び3を参照すると、吸液構造体12は、肌対向面側に位置する透液性の身体側ライナ30と、着衣対向面側に位置する疎水のバックシート31と、それらの間に介在されたパッド状の吸液性を有する吸収体32とを含む。身体側ライナ30は、例えば、質量約15〜25g/m
2の親水化処理されたスパンボンド繊維不織布、SMS繊維不織布等から形成することができる。バックシート31は、質量約10〜20g/m
2の疎水性のSMS繊維不織布やスパンボンド不織布等から形成される。バックシート31と吸収体32との間には、質量約10〜25g/m
2の通気性を有するプラスチックフィルムから形成された防漏フィルム33が配置される。吸液構造体12は、吸収体32の前後端縁よりも縦方向Yの外側に延出した身体側ライナ30、バックシート31及び防漏フィルム33の一部から形成されたエンドフラップと、吸収体の両側縁よりも横方向Xの外側に延出した両シートの一部から形成されたサイドフラップとをさらに有する。サイドフラップには、縦方向Yへ延びる複数条のストリング状又はストランド状の弾性材料からなるレッグ弾性体35が伸長状態で収縮可能に取り付けられる。
【0018】
吸収体32は、前後ウエスト域13,14に位置する前後端縁32a,32bと、前後端縁32a,32b間において縦方向Yへ延びる凹曲状の両側縁32cとを有し、フラッフ木材パルプや超吸収性ポリマー粒子等の吸収材料から形成された吸液性コアと、吸液性コア全体を包被する質量約10〜20g/m
2のティッシュペーパ等から形成された透液性のコアラップシートとを含む。
【0019】
<テープファスナ>
図4を参照すると、テープファスナ18は、後ウエスト域14の両側部16に折り畳まれた状態で配置された1本のテープ片からなる基材シートから形成される。テープファスナ18は、折り畳まれた状態において、長さ方向Eとそれに交差する幅方向Fと、それらに交差する厚さ方向Zと、長さ方向Eにおいて対向する、縦軸P側に位置する一方端部18aとサイドシーム20側に位置する他方端部18bと、幅方向Fにおいて離間対向して長さ方向Eへ延びる両側縁部18cとを有する。本実施形態においては、テープファスナ18は、長さ方向Eが横方向X、幅方向Fが縦方向Yに沿うように横軸Qに並行して(縦軸Pに対して直交して)配置されている。テープファスナ18は、縦軸Pに対して僅かに斜めに取り付けられていてもよいが、パンツ型のおむつ10の廃棄用又はサイズ用の締結手段として使用するためには、少なくとも、幅方向Fが縦方向Yとほぼ並行するように配置する好ましい。
【0020】
図5を参照すると、テープファスナ18は、断面Z字型に折り畳まれており、後ウエスト域14の両側部16にファスナ接合域40を介して固定された固定部41と、固定部41から長さ方向Eへ延びる自由部42とをさらに有する。テープファスナ18は、第1及び第2折曲部43,44において折り曲げられており、固定部41と連なりそれと厚さ方向Zにおいて対向する第1自由部51と、第1自由部51と連なってそれと厚さ方向Zにおいて対向する第2自由部52とを有する。第2自由部52の外面には、基材シートとは別体の被覆シート53がホットメルト接着剤等の公知の接合手段からなるカバー接合域54を介して取り付けられる。カバー接合域54は、第2自由部52と被覆シート53との対向面全体に形成されたものではなく、長さ方向E又は幅方向Fにおいて所与寸法離間して位置する複数の接合部位から形成されるものであるから、全面に形成される場合に比してテープファスナ18は柔軟性に優れる。本実施形態においては、カバー接合域54は、長さ方向Eにおいて互いに離間し、かつ、幅方向Fにライン状に延びる複数の接合部位から形成されている。接合部位は直状のほかに、スパイラル状、Ω状、ドット状等の各種公知の塗布パターンを採用することができる。なお、被覆シート53はオプションであって、後記の本願発明の効果を奏する限りにおいて基材シートに取り付けられていなくてもよい。
【0021】
テープファスナ18を構成する基材シートは、従来公知の繊維不織布、好ましくは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン等の熱融着性の合成繊維を含む繊維不織布から形成することができ、例えば、質量が約15〜100g/m
2、好ましくは、30〜80g/m
2のスパンボンド繊維不織布(SB繊維不織布)やSMS繊維不織布から形成することができる。本実施形態において基材シートは、1枚の繊維不織布から形成されているが、少なくとも一部において複数の同一種類又は複数種類の繊維不織布から形成してもよいし、固定部41と自由部42とが別々のシートから形成されていてもよいし、固定部41,第1自由部51及び第2自由部52とが別々のシートから形成されていてもよい。被覆シート53は基材シートよりも柔軟かつ肌触り良いシート材料であって、具体的には、例えば、質量約10〜50g/m
2の(基材シートよりも単位面積当たりの質量の小さい)スパンボンド繊維不織布、SMS繊維不織布やエアスルー繊維不織布から形成することができる。また、被覆シート53はおむつ10の外面を形成する外層シート23,24と同種類の繊維不織布から形成することが好ましい。このように、非展開状態におけるテープファスナ18の外面の繊維不織布として、おむつ本体の外面に用いた不織布と同一のものを用いたり、同一若しくは互いに相似するエンボスパターンの不織布を用いたり、または、同一の色彩、同一又は互いに相似する模様、図柄を施したものを用いることによって、おむつ10の外面に取り付けられたテープファスナ18がおむつ本体と視覚的に一体感が得られ、おむつ本体に別体のテープファスナ18を取り付けることによって
生じる異物感を低減することができる。
【0022】
テープファスナ18は、第1折曲部43に位置する第1仮止め部61と第2折曲部44に位置する第2仮止め部62とによって積層された部分が剥離可能に固定され、折り畳まれた状態が維持される。第1仮止め部61と第2仮止め部62とは、長さ方向Eにおいて互いに離間しており、それぞれ、幅方向Fにおいて離間する一対のドット状を有する。第1及び第2仮止め部61,62は、テープファスナ18の両側縁部18cに配置されておらず、その外側縁から幅方向Fにおいて所与寸法離間している。テープファスナ18の自由部42は、第2自由部52において第2仮止め部61から自由端縁まで延びる摘持部63を有する。第2自由部52の第1仮止め部61と第2仮止め部62との間における内面(第1自由部との対向面)には、メカニカルファスナのフック要素や粘着剤から形成された止着域が位置する。本実施形態においては、止着域には、フック要素をプラスチックシートに接合したフックシート64が配置される。
【0023】
ファスナ接合域40及びカバー接合域54には、例えば、質量約5〜20g/m
2のホットメルト接着剤を使用することができる。第1及び第2仮止め部61、62は、公知の加圧処理や加圧加熱処理を施すことによって形成することができ、例えば、公知のエンボス処理やソニック処理を用いることができる。加圧加熱処理する場合には、テープファスナ18自体が熱融着性を有する合成繊維を含むことからより安定的に仮止めされる。本実施形態においては、第1及び第2仮止め部61,62は、ソニック処理によって形成されている。エンボス処理の場合には、加圧加熱された部位の反対側の面が突出して、着用者の肌に触れたときに刺激を与えるおそれがあるところ、ソニック処理の場合には、加圧加熱された部分が剥離可能に溶着されて、それを剥離したときにエンボス処理に比べて凹凸が付き難く、かかる不利益を生じるおそれはない。
【0024】
かかる積層状態において、着用者がテープファスナ18の摘持部63を摘持して横方向Xの外側へ引っ張って、第1仮止め部61と第2仮止め部62とにおける仮止めを順に解除することによって、テープファスナ18を展開することができる。テープファスナ18をおむつ10の廃棄用として使用する場合には、おむつ10を丸めた後に、その丸めた状態を維持するように展開したテープファスナの第2自由部52の止着域をおむつ10の外面のいずれかに止着する。一方、テープファスナ18をサイズ調整用として使用する場合には、テープファスナ18を展開し、固定部41を縦軸Pに向かって引っ張って両側縁部を内方へ引き寄せて、固定部41と止着域による止着部位との間の寸法を縮めることによって、おむつ10の幅寸法(又はウエスト回り寸法)を小さくして、着用者の身体によりフィットさせることができる。
【0025】
後ウエスト域14の外面には、後ウエスト弾性体26の収縮によって横方向Xに連続する複数のギャザー65が形成される。後ウエスト域14の外面に固定されたテープファスナ18の固定部41においてもギャザーがされるので、第1仮止め部61と第2仮止め部62との間の固定部41の寸法が縮められて、第1及び第2自由部51,52が外方へ凸となる湾曲状を形成する。それによって、摘持部63が外面から離間し、着用者が摘持易くなる。テープファスナ18は、繊維不織布から形成されているので、プラスチックシートによって形成されている場合に比して柔軟であって、より湾曲状を呈することができる。
【0026】
また、テープファスナ18をおむつ10の廃棄用テープとして使用するときに、展開したテープファスナ18の止着域が前ウエスト域13に位置する吸収体32と平面視において重なって位置することが好ましい。かかる場合には、丸めて廃棄するときに止着域がシート部材のみからなる領域に比して形状の安定した吸収体32の存在域に位置するので、安定的に止着することができる。また、テープファスナ18をおむつ10のサイズ調整用テープとして使用するときには、展開したテープファスナ18の止着域が後ウエスト域14の吸収体32の側縁部と平面視において重なって位置することが好ましい。かかる場合には止着域の止着が安定するとともに、着用動作等による吸収体32の両側縁部の浮き上がりを抑えることができる。特に、本実施形態のように、ウエストパネル11と吸液構造体12とが別体で形成された場合には、吸液構造体12(吸収体32)が着用者の動きによって移動し易くなるので、止着域によって側縁部を身体にフィットさせてかかる移動を規制することができる。
【0027】
通常、パンツ型おむつの廃棄用又はサイズ調整用に使用されるテープファスナは、開放型おむつの前後ウエスト域の側縁部どうしの連結に使用されるテープファスナに比べて剛性が高いものであって、積層された部分が全体的に接着剤等によって接合されていることによって、両側縁部は複数層が一体化されて、剛性が高くなっている。したがって、着用者がおむつ10の着用中に、例えば、着用者が仰臥状態で大腿部を動かしたとき等にウエスト域を形成するシート部材を介して間接的にテープファスナの側縁部が腹部に当たった場合、肌に刺激を与えるおそれがある。特に、着用者が乳幼児の場合には、肌が弱く、テープファスナが当接することによって痛みを与えたり、肌に傷が付いたりするおそれがある。さらに、テープファスナを廃棄用として使用する場合には、廃棄操作中にテープファスナの両側縁部の操作者の指が直接触れて、肌を刺激するおそれがある。
【0028】
本実施形態におけるテープファスナ18は、全体がプラスチックシートに比して柔軟な繊維不織布から形成されており、かつ、第1及び第2仮止め部61,62が両側縁部18cの外側縁から所与寸法離間して位置していることによって、両側縁部18cにおいて互いに重ねられた基材シートの固定部41、第1及び第2自由部51,52が一体化されておらず互いに分離していることから、それらが一体的に(束になって)着用者の肌に触れることはなく、テープファスナ18の両側縁部18cは従来のパンツ型おむつに使用されるテープファスナに比して柔軟性に優れる。したがって、乳幼児の肌等に間接的または直接的にテープファスナ18の側縁部18cが当接したとしても、痛みを与えたり、肌を傷つけたりするおそれはない。
【0029】
このように、テープファスナ18の両側縁部18cが所要の柔軟性を有するためには、両側縁部18cの外側縁から第1及び第2仮止め部61,62までの幅方向における離間寸法R1が約1.0〜10.0mm、好ましくは、2.0〜4.0mmであることが好ましい。1.0mm未満の場合には、第1及び第2仮止め部61,62によって単層化かつ硬化された積層部分(本実施形態の場合にはソニック処理によって、熱溶着された部分)が間接的に肌に触れて刺激を与えるおそれがあり、一方、10.0mm未満の場合には、仮止めされていない部分の幅方向Fの寸法が比較的に大きくなり、おむつ10の搬送中や着用中に、第1及び第2自由部51,52の側縁部が捲れて折れ曲がったりするおそれがある。また、仮止めされた部分の総面積(第1及び第2仮止め部61,62の面積)は積層された状態のテープファスナ18の表面積(摘持部63を除く、第1自由部51と第2自由部52とが積層された部分の外面の面積)の0.5%以上であって、5.0%以下の大きさであることが好ましい。かかる面積比が5.0%を超える場合には、テープファスナ18における仮止めされて溶着した部分の面積が比較的に大きくなり剛性が高くなったり、テープファスナ18を展開するときに比較的に大きな力を要して展開し難くなったりする一方、かかる面積比が0.5%未満の場合には、仮止めされてない部分が捲れたり折れ曲がったりして、テープファスナ18の折り畳み状態が不意に解除されてしまうおそれがある。既述のとおり、基材シートとして熱可塑性の合成繊維を含む繊維不織布を用いることによってソニック処理によって仮止めすることができるので、粘着剤によって仮止めする場合に比してこのように最小限度の面積で仮止めすることができる。
【0030】
また、第2自由部52において基材シートに被覆シート53が固定されていることによって、テープファスナ18の外面は基材シートのみから形成されている場合に比してクッション性が向上して肌当たりが良好であって、該外面が肌に直接触れても刺激や違和感を与えるおそれはない。さらに、テープファスナ18において最も剛性が高くなる部分はフックシート64が位置する部分(高剛性部)であるところ、フックシート64として比較的に柔軟な材料を使用することによって、テープファスナ18の幅方向Fにおける柔軟性をさらに向上させることができる。
【0031】
<曲げ剛性値>
テープファスナ18の高剛性部を除く部分の幅方向Fにおける(両側縁部どうしが近づくよう方向に折り曲げたときの)のKES曲げ剛性値は0.04〜0.44gf・cm
2/cm、折り畳まれた状態においてのテープファスナ18(フックシートを含む)の幅方向におけるKES曲げ剛性値は約0.56〜1.8gf・cm
2/cmである。従来における、廃棄用またはサイズ調整用として使用される、プラスチックフィルムから形成されたテープファスナの折り畳まれた状態におけるKES曲げ剛性値は、約2.0gf・cm
2/cmであることから、本実施形態のテープファスナは従来のテープファスナに比べて幅方向における曲げ剛性値が低く、柔軟性に優れる。かかる曲げ剛性値となるために、基材シート及び被覆シートには、質量約30〜100g/m
2のスパンボンド不織布を用いることが好ましく、少なくとも両側縁部から所与寸法離間して仮止め部が位置し、かつ、積層された部分の対向面全体が仮止めされていないことが必要である。
【0032】
<曲げ剛性値の測定方法>
本測定に使用したKES法に関しては、「風合い評価の標準化と解析」第2版(社団法人日本繊維機械学会 風合い計量と規格化研究委員会 昭和55年7月10日発行)に詳細が説明されている。よって、各力学的性質ごとの測定方法に関し、本測定に関連した計測条件についてのみ以下に述べる。
【0033】
曲げ特性の測定は、カトーテック(株)製KES−FB2を用いて、各サンプルの所定領域の1cm幅を試料として1cm間隔のチャック間に固定し、最大曲率+2.5cm
-1まで表側に曲げ、次に、最大曲率−2.5cm
-1まで裏側に曲げた後に元に戻すことによって行った。試料は重力の影響を少なくするために垂直にした状態で測定をし、曲げ剛性B[gf・cm
2/cm]は、表側に曲げはじめて曲率に対する曲モーメントの傾きがほぼ一定になったときの傾きから算出した。また、曲げ剛性Bは、おむつ10の縦方向Y(テープファスナ18の幅方向F)に関して測定したものである。
【0034】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。ただし、本発明の範囲は係る実施例に限定されるものではない。
【0035】
<実施例及び比較例>
下記表1に示すとおり、各実施例及び比較例として、各種の繊維不織布又はプラスチックシートから形成した基材シート(及び被覆シート53)から形成されたテープファスナ18を後ウエスト域14の両側部19に配置したおむつ10を製造した。
【0036】
<実施例>
実施例1〜4のテープファスナ18として質量約30〜80g/m
2のスパンボンド繊維不織布(SB繊維不織布)から形成された基材シートを使用し、本実施形態と同様に、断面Z字状となるように折曲した状態で折り曲げて両側部19に固定した。実施例5のテープファスナ18として、質量約60g/m
2のスパンボンド繊維不織布(SB繊維不織布)から形成された基材シートを使用し、断面Z字状となるように折曲した状態における第2自由部52に質量約40g/m
2のエアスルー繊維不織布(AT繊維不織布)から形成された被覆シート53を接合して、両側部19に固定した。
【0037】
<比較例>
比較例1のテープファスナ18として、質量約80g/m
2のスパンボンド繊維不織布(SB繊維不織布)から形成された基材シートを使用し、断面Z字状となるように折曲した状態における第2自由部52に質量約80g/m
2のスパンボンド繊維不織布から形成された被覆シートを接合して、両側部19に固定した。比較例2として、質量70g/m
2のプラスチックフィルムから形成され基材シートを使用し、本実施形態と同様に、断面Z字状となるように折曲した状態で折り曲げて両側部19に固定した。また、実施例1〜5及び比較例1においては、基材シートが繊維不織布から形成されており、第1及び第2仮止め部61,62が両側縁部18cに配置されておらず、両側縁部18cにおいて積層された部分どうしが互いに分離している。一方、比較例2においては、基材シートがプラスチックフィルムから形成されており、積層された部分の両側縁部を含めた対向面全体が接着剤によって固定されて一体化している。
【0038】
<KES曲げ剛性値>
上記測定方法に基づいて、各テープファスナの高剛性部の幅方向(縦方向Y)におけるKES曲げ剛性値(B値)を求めた。
【0039】
<官能評価>
得られたおむつを乳幼児(0〜2才)に着用させてその母親10名を対象として、以下の評価を行った。官能評価(1)として、「おむつの着用中にテープファスナが着用者(乳幼児)の邪魔にならない(動きを阻害しない)ように感じる」という質問に対して、「支持する」を選択した人が70%以上の場合には、「○」、それ以下の場合(「支持しない」が70%以上)には「×」として評価した。また、官能評価(2)として、「着用者の肌にテープファスナが直接的又は間接的に接触しても肌に赤み跡が付いたりしない」という質問に対して、「支持する」を選択した人が70%以上の場合には「○」、それ以下の場合(「支持しない」が70%以上)の場合には「×」と評価した。
【0041】
表1に示すとおり、実施例1〜5においては、テープファスナ18の幅方向(縦方向Y)のKES曲げ剛性値が約0.56〜1.74gf・cm
2/cmであって、官能評価(1),(2)はいずれも「○」であった。すなわち、実施例5のように複数の繊維不織布を積層した場合であっても、積層された繊維不織布の質量の合計が100g/m
2以下であれば、KES曲げ剛性値が1.74gf・cm
2/cm以下となり、官能評価(1)及び(2)において好適な結果を得ることができた。一方、比較例1及び2においては、官能評価(1)及び(2)が「×」の結果となった。このことから、基材シートと被覆シート53とを繊維不織布から形成し、それらを積層する場合には、積層された繊維不織布の質量の合計が160g/m
2以上の場合や基材シート自体をプラスチックフィルムから形成し、かつ、両側縁部18cが一体化している場合には、KES曲げ剛性値が2.07gf・cm
2/cm以上となり、比較的に肌当たりが悪く、着用中に身体にテープファスナ18が間接的に触れて動きを阻害したり、肌に直接触れて刺激を与えたりするおそれがあることがわかった。
【0042】
<変更例>
図7は、本発明におけるテープファスナ18の変更例を示すものであって、第1実施形態と異なる点についてのみ述べると、本変更例においては、テープファスナ18が断面Z字型ではなくコ字型に折り畳まれており、ファスナ接合域40によって後ウエスト域14の両側部16に固定された固定部41と、固定部41と連なって長さ方向Eへ延びる自由部42とから構成されている。テープファスナ18は、第1実施形態のそれに比べて積層数が少なく全体の剛性がより低くなり、柔軟性に優れる。
【0043】
本発明のおむつ10を構成する各構成材料には、特に記述がなされている場合を除き、この種の分野において通常用いられている、各種の公知の材料を制限なく用いることができる。
【0044】
以上に記載した本発明に関する開示は、少なくとも下記事項に整理することができる。
縦方向及びそれに直交する横方向と、肌対向面及びその反対側に位置する非肌対向面とを有し、前後ウエスト域の一方である第1ウエスト域と他方である第2ウエスト域と、前記第1及び第2ウエスト域の間に位置するクロッチ域とを含み、前記第1及び第2ウエスト域において前記縦方向へ延びる側縁部どうしが連結されており、前記第1ウエスト域の前記非肌対向面側に取り付けられたテープファスナとを含む使い捨てのパンツ型着用物品において、
前記テープファスナは、繊維不織布製の基材シートによって形成され、前記非肌対向面側に位置する固定部と、少なくとも1つの折曲部位によって折り畳まれた自由部と、折り畳まれた状態における長さ方向と、それに直交し、かつ、前記縦方向とほぼ並行に延びる幅方向と、前記幅方向において対向する両側縁部と、前記固定部と前記自由部とを剥離可能に部分的に固定する少なくとも1つの仮止め部とを有し、
前記仮止め部は、前記両側縁部のうちの少なくとも一方側縁部には配置されておらず、前記一方側縁部において重ねられた部分は接合されて
おらず、
前記自由部の外面には、前記基材シートとは別体の被覆シートが取り付けられており、
前記被覆シートの両端部が前記テープファスナの両端部に位置しており、
前記基材シートと前記被覆シートとの接合域は、前記長さ方向又は前記幅方向において所与寸法離間して位置する複数の接合部位から形成されている。
【0045】
上記段落0044に開示した本発明に係る使い捨てのパンツ型着用物品は、少なくとも下記の実施の形態を含むことができる。
(1)前記基材シートは、熱可塑性の合成繊維を含む繊維不織布から形成されており、前記仮止め部において剥離可能に固定されている。
(2)前記自由部は、前記非肌対向面に止着可能な止着域を有し、前記止着域は前記固定部と対向する面に位置し、かつ、フック要素を有するフックシートから形成されており、折り畳まれた状態における前記テープファスナの前記両側縁部どうしが近づく方向のKES曲げ剛性値は、
5.5mN〜17.7mN・cm2/cmである
。
(3)前記テープファスナの折り畳まれた状態における、前記止着域を除く部分の前記テープファスナどうしが近づく方向のKES曲げ剛性値が
0.39mN〜4.3mN・cm2/cmである。
(4)前記テープファスナは、前記固定部に連なる第1自由部と、厚さ方向において前記第1自由部に重ねられる第2自由部とをさらに有し、前記固定部、前記第1及び第2自由部が前記長さ方向において離間する第1及び第2仮止め部によって仮止めされており、前記第1及び第2仮止め部は前記幅方向において離間する一対のドット状を有する。
(5)前記仮止め部の面積が、折り畳まれた状態における前記テープファスナの表面積の0.5%以上であって、5.0%以下の大きさを有する。
(6)前記基材シートのうちの少なくとも一部が、複数の繊維不織布を接合することによって一体化される。
(7)前記被覆シートは、同一又は互いに相似するエンボスパターンが外面に付された繊維不織布から形成される。
(8)前記クロッチ域を中心として前記第1及び第2ウエスト域に延びる吸液性コアをさらに有し、前記テープファスナを展開した状態において、前記自由部の前記止着域が前記吸液性コアの側縁部と平面視において重なって位置する。
(9)前記クロッチ域を中心として前記第1及び第2ウエスト域に延びる吸液性コアをさらに有し、前記テープファスナを展開した状態において、前記テープファスナが前記第1及び第2ウエスト域の前記側縁部どうしが連結されたサイドシームを跨いで、前記自由部の前記止着域が前記第2ウエスト域に位置する前記吸液性コアと平面視において重なって位置する。