特許第6203286号(P6203286)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 新日鐵住金株式会社の特許一覧 ▶ 新日鉄住金化学株式会社の特許一覧

特許6203286固体高分子形燃料電池用の担体炭素材料及び金属触媒粒子担持炭素材料、並びにこれらの製造方法
<>
  • 特許6203286-固体高分子形燃料電池用の担体炭素材料及び金属触媒粒子担持炭素材料、並びにこれらの製造方法 図000005
  • 特許6203286-固体高分子形燃料電池用の担体炭素材料及び金属触媒粒子担持炭素材料、並びにこれらの製造方法 図000006
  • 特許6203286-固体高分子形燃料電池用の担体炭素材料及び金属触媒粒子担持炭素材料、並びにこれらの製造方法 図000007
  • 特許6203286-固体高分子形燃料電池用の担体炭素材料及び金属触媒粒子担持炭素材料、並びにこれらの製造方法 図000008
  • 特許6203286-固体高分子形燃料電池用の担体炭素材料及び金属触媒粒子担持炭素材料、並びにこれらの製造方法 図000009
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6203286
(24)【登録日】2017年9月8日
(45)【発行日】2017年9月27日
(54)【発明の名称】固体高分子形燃料電池用の担体炭素材料及び金属触媒粒子担持炭素材料、並びにこれらの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/86 20060101AFI20170914BHJP
   H01M 8/10 20160101ALI20170914BHJP
   H01M 4/92 20060101ALI20170914BHJP
   H01M 4/88 20060101ALI20170914BHJP
   B01J 37/08 20060101ALI20170914BHJP
   B01J 37/06 20060101ALI20170914BHJP
   B01J 23/50 20060101ALI20170914BHJP
   B01J 23/42 20060101ALI20170914BHJP
   B01J 23/89 20060101ALI20170914BHJP
【FI】
   H01M4/86 B
   H01M8/10
   H01M4/92
   H01M4/88 K
   B01J37/08
   B01J37/06
   B01J23/50 M
   B01J23/42 M
   B01J23/89 M
【請求項の数】7
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2015-552548(P2015-552548)
(86)(22)【出願日】2014年12月12日
(86)【国際出願番号】JP2014083043
(87)【国際公開番号】WO2015088025
(87)【国際公開日】20150618
【審査請求日】2016年5月16日
(31)【優先権主張番号】特願2013-257777(P2013-257777)
(32)【優先日】2013年12月13日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】新日鐵住金株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000006644
【氏名又は名称】新日鉄住金化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【弁理士】
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100102990
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 良博
(74)【代理人】
【識別番号】100144417
【弁理士】
【氏名又は名称】堂垣 泰雄
(72)【発明者】
【氏名】松本 克公
(72)【発明者】
【氏名】飯島 孝
(72)【発明者】
【氏名】日吉 正孝
(72)【発明者】
【氏名】林田 広幸
(72)【発明者】
【氏名】水内 和彦
(72)【発明者】
【氏名】河野 巧
(72)【発明者】
【氏名】樋口 雅一
(72)【発明者】
【氏名】片山 正和
【審査官】 守安 太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−008472(JP,A)
【文献】 特開2008−041253(JP,A)
【文献】 国際公開第2004/114444(WO,A1)
【文献】 特開2008−276949(JP,A)
【文献】 特開2001−085020(JP,A)
【文献】 特開2011−115760(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/129597(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/86
H01M 4/88
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質炭素材料であって、水素含有量が0.004質量%以上0.010質量%以下の範囲にあって、窒素吸着BET比表面積が600m2/g以上1500m2/g以下であり、且つ、ラマン分光スペクトルから得られるD-バンドと呼ばれる1200〜1400cm-1の範囲のピーク強度(ID)と、G-バンドと呼ばれる1500〜1700cm-1の範囲のピーク強度(IG)との相対的強度比(ID/IG)が1.0以上2.0以下であることを特徴とする固体高分子形燃料電池用担体炭素材料。
【請求項2】
前記水素含有量が0.004質量%以上0.006質量%以下であって、ラマン分光スペクトルより求まる相対的強度比(ID/IG)が1.4以上2.0以下であることを特徴とする請求項1に記載の固体高分子形燃料電池用担体炭素材料。
【請求項3】
前記窒素吸着BET比表面積が800m2/g以上1400m2/g以下であって、ラマン分光スペクトルより求まる相対的強度比(ID/IG)が1.4以上2.0以下であることを特徴とする請求項1に記載の固体高分子形燃料電池用担体炭素材料。
【請求項4】
前記水素含有量が0.004質量%以上0.006質量%以下であり、窒素吸着BET比表面積が800m2/g以上1400m2/g以下であり、且つ、ラマン分光スペクトルより求まる相対的強度比(ID/IG)が1.4以上2.0以下であることを特徴とする請求項1に記載の固体高分子形燃料電池用担体炭素材料。
【請求項5】
前記請求項1〜4のいずれかに記載の固体高分子形燃料電池用担体炭素材料に、Pt単独、又は、Ptを主成分とする金属触媒粒子が担持されていることを特徴とする固体高分子形燃料電池用金属触媒粒子担持炭素材料。
【請求項6】
前記請求項1〜4のいずれかに記載の固体高分子形燃料電池用担体炭素材料を製造するための方法であり、
金属又は金属塩を含む溶液中にアセチレンガスを吹き込み、金属アセチリドを生成させるアセチリド生成工程と、
前記金属アセチリドを60℃以上80℃以下の温度で加熱し、金属粒子が内包された金属粒子内包中間体を作製する第1の加熱処理工程と、
前記金属粒子内包中間体を160℃以上200℃以下の温度で加熱し、前記金属粒子内包中間体から金属粒子を噴出させ、炭素材料中間体を得る第2の加熱処理工程と、
前記第2の加熱処理工程で得られた炭素材料中間体を120℃以上290℃未満であり、90質量%以上100質量%以下の熱濃硫酸と接触させ、炭素材料中間体を清浄化する洗浄処理工程と、
前記洗浄処理工程で清浄化された炭素材料中間体を真空中、不活性ガス雰囲気中、又は空気雰囲気中で、1000℃以上2100℃以下の温度に加熱して、担体炭素材料を得る第3の加熱処理工程とを有することを特徴とする固体高分子形燃料電池用担体炭素材料の製造方法。
【請求項7】
前記請求項6に記載の方法で得られた前記請求項1〜4のいずれかに記載の担体炭素材料を液体分散媒中に分散させ、得られた分散液中に、白金を主成分とする金属の錯体又は塩と還元剤とを添加し、液相で金属イオンを還元して白金を主成分とする微細な金属触媒粒子を析出させると共に、この析出した金属触媒粒子を前記担体炭素材料に担持させ、前記請求項5に記載の固体高分子形燃料電池用金属触媒粒子担持炭素材料を製造することを特徴とする固体高分子形燃料電池用金属触媒粒子担持炭素材料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、固体高分子形燃料電池用の担体炭素材料及び金属触媒粒子担持炭素材料、並びにこれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
固体高分子形燃料電池は、一般に、プロトン伝導性の電解質膜を挟んでアノードとなる触媒層とカソードとなる触媒層とが配置され、更にこれらを挟んでその外側にガス拡散層が配置され、更にその外側にセパレーターが配置された構造を基本構造としており、この基本構造は単位セルと称されている。そして、燃料電池は、通常は、必要な出力を達成するために必要な数の単位セルをスタックすることにより構成されている。
【0003】
このような基本構造の固体高分子形燃料電池(単位セル)から電流を取り出すためには、アノード側とカソード側にそれぞれ配されたセパレーターのガス流路から、カソード側には酸素や空気等の酸化性ガスを、また、アノード側には水素等の還元性ガスをそれぞれ供給し、これら供給された酸化性ガス及び還元性ガスを、それぞれガス拡散層を介して、触媒層まで供給し、アノードの触媒層で起こる化学反応とカソードの触媒層で起こる化学反応との間のエネルギー差(電位差)を利用して、電流を取り出す。例えば、水素ガスと酸素ガスを利用する場合、アノードの触媒層の金属触媒粒子上で起こる化学反応〔H2→2H++2e-(E0=0V)〕と、カソードの触媒層の金属触媒粒子上で起こる化学反応〔O2+4H++4e-→2H2O(E0=1.23V)〕とのエネルギー差(電位差)を電流として取り出すこととなる。
【0004】
従って、セパレーターのガス流路からカソード側あるいはアノード側の触媒層内部の金属触媒粒子まで酸化性ガスあるいは還元性ガスが移動するガス拡散経路や、アノード触媒層の金属触媒粒子上で発生したプロトン(H+)がプロトン伝導性電解質膜を経由してカソード触媒層の金属触媒粒子まで移動するプロトン伝導経路や、更にはアノード触媒層の金属触媒粒子上で発生した電子(e-)がガス拡散層、セパレーター、及び外部回路を通じてカソード触媒層の金属触媒粒子まで移動する電子伝達経路が、それぞれ分断されることなく連続して連なっていないと、効率良く電流を取り出すことができない。
【0005】
そして、触媒層の内部では、一般に、構成材料の間隙に形成されて酸化性ガスあるいは還元性ガスの拡散経路となる気孔、プロトン伝導経路となる電解質材料、及び、電子伝導経路となる炭素材料や金属材料等の導電性材料が、それぞれの連続したネットワークを形成していることも重要である。
【0006】
また、プロトン伝導性電解質膜や触媒層中のプロトン伝導経路(プロトン伝導性電解質であるアイオノマー)については、高分子電解質材料としてパーフルオロスルホン酸ポリマーに代表されるイオン交換樹脂が用いられているが、一般に、これらの高分子電解質材料は、湿潤環境下で初めて高いプロトン伝導性を発現するものであり、乾燥環境下ではプロトン導電性が低下してしまう。従って、効率良く燃料電池を作動させるためには、高分子電解質材料を十分な湿潤状態に維持することが必須であり、カソード側やアノード側に供給されるガスと共に水蒸気を供給し、常に加湿条件に維持することが行われている。
【0007】
しかしながら、このような加湿条件では、カソード触媒層の金属触媒粒子上で生成するH2Oがカソード触媒層中のガス拡散経路において酸化性ガスの拡散を阻害し、結果として固体高分子形燃料電池の電池性能が低下する現象(フラッディング)が発生する。例えば、非特許文献1には、炭素担体の親水性官能基がH2Oを吸着して触媒層中にH2Oが溜まり易くなることが、酸素ガスの拡散を低下させること、いわゆるフラッディングの要因であると推定される、との記載がある。
【0008】
また、一般に、電池性能に優れた固体高分子形燃料電池を得るためには、その金属触媒粒子担持炭素材料中の金属触媒粒子は、担体である炭素材料上に「高分散状態」で、且つ、固定された状態で担持されている必要がある。ここで、「高分散状態」とは、酸化性ガスの拡散や水の排出ができるように、担体である炭素材料上に金属触媒粒子が互いにある一定の距離をもって、且つ、必要以上に離れないように分散している状態のことである。以降、本明細書では、金属触媒粒子が担持される担体としての炭素材料を、「担体炭素材料」という。
【0009】
従って、高加湿条件下での発電性能に優れた固体高分子形燃料電池を提供するために、担体炭素材料に要求される特性は、下記の通りとなる。
(a)担体炭素材料に親水性官能基が少ないこと。
(b)担体炭素材料に金属触媒粒子を高分散状態で担持させるために、担体炭素材料が大きな表面積を有すること。
(c)担体炭素材料に前記金属触媒粒子を高分散状態に固定するために、担体炭素材料が適度な量のサイトを有すること。
【0010】
具体的には、(a)の特性は、担体炭素材料にヒドロキシル基やカルボキシル基等、官能基の末端に水素を含有する親水性官能基を少なくさせ、フラッディングの発生を抑えることであり、また、(b)の特性は、担体炭素材料に、酸化性ガスの拡散や水の排出ができるように、金属触媒粒子が互いにある一定の距離をもって、且つ、必要以上に離れないように分散させるために、大きな表面積を持たせることであり、更に、(c)の特性は、金属触媒粒子を担体炭素材料に高分散状態で担持させるために、担体炭素材料の表面積を大きくすることに加えて、金属触媒粒子を担体炭素材料に高分散状態で固定させるサイトを適度に存在させることであり、例え担体炭素材料の表面積が大きくても、金属触媒粒子を固定するサイトが少なければ、金属触媒粒子を高分散状態で担体炭素材料に担持させることができない。従って、上記(a)、(b)、及び(c)の特性は、高加湿条件下での発電性能に優れた固体高分子形燃料電池を提供する上で、達成しなければならない必要不可欠な事項である。
【0011】
そこで、従来においても、高加湿条件下での発電性能に優れた固体高分子形燃料電池を開発するために幾つかの取り組みが行われており、例えば、特許文献1では、上記(a)の特性を達成するための方法として、カーボンブラック等のカーボン粒子からなる担体炭素材料の表面に、修飾基として疎水性官能基であるフッ素化基を導入し、これによってフラッディングの発生を低減させることが提案されている。
【0012】
また、特許文献2では、市販の活性炭やカーボンブラック等の担体炭素材料を用いて、触媒層の構造をガス拡散が良好になるように最適化し、これによって高加湿条件でも金属触媒粒子上で生成した水が酸素ガスの拡散経路を閉塞するのを防止し、加湿条件によらずに高い電池性能を発現する固体高分子形燃料電池が提案されている。
【0013】
更に、上記特許文献1、2の取り組み以外に、特許文献3においては、上記(b)及び(c)の特性を有する材料として、以下の方法で製造された担体炭素材料が開示されている。
すなわち、金属又は金属塩を含む溶液中にアセチレンガスを吹き込み、金属アセチリドを生成させる工程(アセチリド生成工程)と、前記金属アセチリドを60〜80℃の温度で12時間以上加熱し、金属を金属粒子として偏析させ内包させた金属粒子内包中間体を作製する第1の加熱処理工程と、前記金属粒子内包中間体を160〜200℃の温度で10〜30分間加熱し、前記金属粒子内包中間体から金属粒子を噴出させた炭素材料中間体を得る第2の加熱処理工程と、前記第2の加熱処理工程で得られた炭素材料中間体を硝酸水溶液、特に濃硝酸と接触させ、噴出した金属粒子やその他の不安定な炭素化合物を溶解除去して炭素材料中間体を清浄化する溶解洗浄処理工程(洗浄処理工程)と、前記溶解洗浄処理工程で清浄化された炭素材料中間体を真空中、不活性ガス雰囲気中、又は空気雰囲気中、180〜200℃の温度で24〜48時間加熱し、担体炭素材料を得る第3の加熱処理工程とを有する固体高分子形燃料電池用の担体炭素材料の製造方法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2006-216,503号公報
【特許文献2】特願2011-152,795号公報
【特許文献3】特願2009-545,410号公報
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】東レリサーチセンター The TRC News No. 108 (Jul. 2009)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
しかしながら、特許文献1の方法では、上記(a)の特性を付与するために、担体炭素材料上に新たに官能基を導入する工程でフッ素系ガスの使用が不可欠であり、しかも、フッ素化基が導入されることにより、金属触媒粒子を担持させるための表面積が低下し、また、金属触媒粒子を固定するサイトがフッ素化基に置き換わってしまい、担体炭素材料に要求される上記(b)及び(c)の特性の低下は不可避であり、フラッディングに対しての効果は期待できるが、金属触媒粒子を高分散状態に担持させるという点ではむしろ逆効果であり、担体炭素材料としての能力は低下してしまう。
【0017】
また、特許文献2の方法では、加湿条件によらずに高い電池性能を発現させることができるという利点はあるものの、高加湿条件下では、市販の活性炭やカーボンブラック等の担体炭素材料表面の親水性官能基にH2Oが吸着することは不可避であり、触媒層中にH2Oが溜まる傾向にあるという問題がある。
【0018】
更に、本発明者らが、特許文献3の方法で得られた担体炭素材料について、その高加湿条件下での電池性能を確認したところ、フラッディングによる性能低下がみられ、十分なセル電圧を得ることができなかった。そして、この要因について詳細に検討した結果、上記(b)及び(c)の特性については満たされていることを確認できたが、上記(a)の特性が満たされていないことを突き止めた。
【0019】
また、発明者らが、市販の担体炭素材料について、その高加湿条件下での電池性能を確認したが、フラッディング、又は金属触媒粒子が担体炭素材料に高分散状態に担持されていないことに起因する性能低下がみられ、上記(a)、(b)、及び(c)の特性の全てを満足する担体炭素材料はこれまで存在しなかったことが判明した。
【0020】
ところで、特許文献3に記載された担体炭素材料に特許文献1に記載の技術を適用し、特許文献3に不足している上記(a)の特性を付与することも考えられるが、特許文献1のフッ素化基を導入する方法では、上記(b)及び(c)の特性が大きく低下し、フラッディングによる性能低下は改善できるものの、燃料電池の電池性能を発現する担体炭素材料の能力を犠牲にしてしまう。
【0021】
以上のことから、本発明は上記(a)、(b)、及び(c)の特性の全てを満足する担体炭素材料を得ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
そこで、発明者らは、上記(a)〜(c)の特性の全てについて満足できる担体炭素材料を開発すべく鋭意検討した結果、上記(a)の特性を満たすためには、担体炭素材料中の水素含有量(質量%)を低減させることが必要であることに想到した。担体炭素材料中の水素含有量は、親水性官能基の末端部の水素量に相当するからである。また、上記(b)の特性を満たすためには、窒素吸着BET比表面積より算出されるBET表面積(m2/g)を大きくすることが必要であり、更に、上記(c)の特性を満たすためには、担体炭素材料と金属触媒粒子と間で相互作用を発揮するグラファイトのエッジ部を適度な量で存在させること、つまりグラファイトの結晶子が適度な範囲にあることが必要であることに想到した。
【0023】
ここで、グラファイトのエッジ部とは、結晶子の端部のことを指し、グラファイトの結晶子(La)は、La=44Å/(ID/IG)の式〔F. Tuinstra, J. L. Koenig, J. Chem. Phys., 53, p1126 (1970)〕において提案されており、ID/IGは、ラマン分光スペクトルから得られるD-バンドと呼ばれる1200〜1400cm-1の範囲のピーク強度(以下、ID)と、G-バンドと呼ばれる1500〜1700cm-1の範囲のピーク強度(以下、IG)との相対的強度比を表し、このID/IGが適度な範囲になるように、グラファイトのエッジ部を制御すればよい。すなわち、ID/IGが大きくて結晶子が小さいと、エッジの数も多くなる。なお、このグラファイトのエッジ部には、キノン基やラクトン基の如き酸素を含有する官能基が存在する〔Z. Linら、J. Phys. Chem. C 115, p7120 (2011)〕と推定されており、この酸素の孤立電子対と金属触媒粒子との間の静電的相互作用により金属触媒粒子が担体炭素材料に固定されると考えられている。
【0024】
そして、本発明者らは、上記(a)〜(c)の特性の全てを満足する担体炭素材料を開発するための具体的な方策として、特許文献3の担体炭素材料の製造方法を見直して発展させることとし、この特許文献3の担体炭素材料の製造工程について詳細に検討した。その結果、担体炭素材料中の水素含有量を低減させるためには、担体炭素材料中に水素が導入される溶解洗浄処理工程(洗浄処理工程)において水素を含有する親水性官能基の導入を抑制し、また、担体炭素材料中に導入された水素が脱離する第3の加熱処理工程において水素を含有する親水性官能基の脱離を促進させることが必要であることを突き止めた。更に、如何にして溶解洗浄処理工程(洗浄処理工程)で親水性官能基の導入を抑制し、また、第3の加熱処理工程で親水性官能基の脱離を促進させるかについて検討を進めた。
【0025】
以上の詳細な検討の結果、本発明者らは、溶解洗浄処理工程(洗浄処理工程)において、これまでの硝酸水溶液(濃硝酸)に代えて熱濃硫酸を使用し、また、第3の加熱処理工程での加熱温度をこれまでの180〜200℃から1000〜2100℃に上昇させることにより、上記(a)〜(c)の特性の全てを満足する新たな担体炭素材料を製造することができ、これによって高加湿運転性能に優れた固体高分子形燃料電池を製造する上で好適な担体炭素材料及び金属触媒粒子担持炭素材料の開発に成功し、本発明を完成した。
【0026】
即ち、本発明は、以下の構成よりなるものである。
(1) 多孔質炭素材料であって、水素含有量(質量%、以下「H」と表記することがある。)が0.004質量%以上0.010質量%以下の範囲にあって、窒素吸着BET比表面積(m2/g、以下「S」と表記することがある。)が600m2/g以上1500m2/g以下であり、且つ、ラマン分光スペクトルから得られるD-バンドと呼ばれる1200〜1400cm-1の範囲のピーク強度(ID)と、G-バンドと呼ばれる1500〜1700cm-1の範囲のピーク強度(IG)との相対的強度比(ID/IG、以下「ラマン相対強度比」と略称することがある。)が1.0以上2.0以下であることを特徴とする固体高分子形燃料電池用担体炭素材料。
【0027】
(2) 前記水素含有量が0.004質量%以上0.006質量%以下であって、ラマン分光スペクトルより求まる相対的強度比(ID/IG)が1.4以上2.0以下であることを特徴とする前記(1)に記載の固体高分子形燃料電池用担体炭素材料。
(3) 前記窒素吸着BET比表面積が800m2/g以上1400m2/g以下であって、ラマン分光スペクトルより求まる相対的強度比(ID/IG)が1.4以上2.0以下であることを特徴とする前記(1)に記載の固体高分子形燃料電池用担体炭素材料。
【0028】
(4) 前記水素含有量が0.004質量%以上0.006質量%以下であり、窒素吸着BET比表面積が800m2/g以上1400m2/g以下であり、且つ、ラマン分光スペクトルより求まる相対的強度比(ID/IG)が1.4以上2.0以下であることを特徴とする前記(1)に記載の固体高分子形燃料電池用担体炭素材料。
(5) 前記(1)〜(4)のいずれかに記載の固体高分子形燃料電池用担体炭素材料に、Pt単独、又は、Ptを主成分とする金属触媒粒子が担持されていることを特徴とする固体高分子形燃料電池用金属触媒粒子担持炭素材料。
【0029】
(6) 前記(1)〜(4)のいずれかに記載の固体高分子形燃料電池用担体炭素材料を製造するための方法であり、金属又は金属塩を含む溶液中にアセチレンガスを吹き込み、金属アセチリドを生成させるアセチリド生成工程と、前記金属アセチリドを60℃以上80℃以下の温度で加熱し、金属粒子が内包された金属粒子内包中間体を作製する第1の加熱処理工程と、前記金属粒子内包中間体を160℃以上200℃以下の温度で加熱し、前記金属粒子内包中間体から金属粒子を噴出させ、炭素材料中間体を得る第2の加熱処理工程と、前記第2の加熱処理工程で得られた炭素材料中間体を熱濃硫酸と接触させ、炭素材料中間体を清浄化する洗浄処理工程と、前記洗浄処理工程で清浄化された炭素材料中間体を真空中、不活性ガス雰囲気中、又は空気雰囲気中で、1000℃以上2100℃以下の温度に加熱して、担体炭素材料を得る第3の加熱処理工程とを有することを特徴とする固体高分子形燃料電池用担体炭素材料の製造方法。
【0030】
(7) 前記請求項6に記載の方法で得られた前記(1)〜(4)のいずれかに記載の担体炭素材料を液体分散媒中に分散させ、得られた分散液中に、白金を主成分とする金属の錯体又は塩と還元剤とを添加し、液相で金属イオンを還元して白金を主成分とする微細な金属触媒粒子を析出させると共に、この析出した金属触媒粒子を前記担体炭素材料に担持させ、前記(5)に記載の固体高分子形燃料電池用の金属触媒粒子担持炭素材料を製造することを特徴とする固体高分子形燃料電池用金属触媒粒子担持炭素材料の製造方法。
【0031】
本発明の固体高分子形燃料電池用の担体炭素材料において、求まる水素含有量(H)が0.004質量%以上0.010質量%以下である必要があり、好ましくは0.004質量%以上0.006質量%以下である。このHが0.004質量%未満であると、担体炭素材料に存在する親水性官能基が少なく、フラッディングに対しては有効であるが、担体炭素材料の親水性が過度に失われることになり、湿潤環境下であるからこそ達成される高分子膜のプロトン伝導性が低下し、燃料電池に利用した場合に良好な電池性能が得られない。反対に、Hが0.010質量%を越えて大きくなると、従来の担体炭素材料と同じく、担体炭素材料に存在する親水性官能基が多くなり過ぎ、金属触媒粒子上で発生した水が酸化性ガスの拡散経路を阻害するため、フラッディングの課題は解決されない。
【0032】
担体炭素材料中の水素含有量を測定する方法としては、微量の水素を分析できる手法を用いればよい。例えば、不活性ガス融解−熱伝導度法が例示される。この方法では、試料としての担体炭素材料を黒鉛るつぼ内に入れ、所定温度(例えば、800℃以上)に加熱して、発生した水素を他のガスから分離し、熱伝導度検出器を用いて水素量を測定する。
【0033】
また、本発明の固体高分子形燃料電池用の担体炭素材料において、窒素吸着BET比表面積(S)は600m2/g以上1500m2/g以下である必要があり、好ましくは800m2/g以上1400m2/g以下である。このSが600m2/g未満であると、担体炭素材料は金属触媒粒子を高分散状態で担持するために必要な表面積を有しておらず、担体炭素材料に担持された金属触媒粒子同士の粒子間距離が狭くなり、酸化性ガスの拡散性が不十分になって、燃料電池に利用した場合に電池性能が低下する。反対に、このSが1500m2/gを超えて大きくなると、担体炭素材料に金属触媒粒子を高分散状態で担持させる上では理想的な表面積であるが、このSの上限値は後述する製造過程の第3の加熱処理工程での加熱条件で決定され、Sの値を大きくすることと前記水素含有量(H)の値を小さくすることとはトレードオフの関係にあり、Sの値を大きくするとHの値も大きくなってフラッディングの問題が発生し、1500m2/gを超えてSの値を大きくすることはできない。窒素吸着BET比表面積は、窒素ガスを吸着ガスとして、BET1点法により測定すればよい。
【0034】
更に、本発明の固体高分子形燃料電池用の担体炭素材料において、ラマン分光スペクトルから得られるD-バンドと呼ばれる1200〜1400cm-1の範囲のピーク強度(ID)とG-バンドと呼ばれる1500〜1700cm-1の範囲のピーク強度(IG)との相対的強度比(ID/IG、ラマン相対強度比)の値は1.0以上2.0以下であることが必要であり、好ましくは1.4以上2.0以下である。このラマン相対強度比(ID/IG)の値が1.0未満であると、グラファイトのエッジ部の量が不足し、金属触媒粒子が担体炭素材料に固定され難くなり、燃料電池に利用した場合に電池性能が低下してしまう。反対に、このラマン相対強度比(ID/IG)が2.0を超えると、グラファイトのエッジ部の量が多くなり過ぎて化学的に弱くなり、固体高分子燃料電池の作動条件下では、担体炭素材料が酸化消耗し易くなって燃料電池の耐久性が低下する。ラマン分光スペクトルは、市販のレーザラマン分光光度計を用いて取得すればよい。
【0035】
ここで、水素含有量(H)の低減は、フラッディングの要因となる親水性官能基の量の低減を示すもので、燃料電池の電池性能に対する寄与が大きく、高加湿条件での電池性能、特に発電性能に大きな影響を及ぼすものである。また、窒素吸着BET比表面積(S)の増加は、燃料電池の電池性能に対する寄与が大きく、また、ラマン相対強度比(ID/IG)に比較して数値の変動幅が大きく、担体炭素材料に金属触媒粒子を高分散状態に担持させるための前提条件である。
【0036】
特に、水素含有量(H)が0.004質量%以上0.006質量%以下、窒素吸着BET比表面積(S)が800m2/g以上1400m2/g以下、及びラマン相対強度比(ID/IG)が1.4以上2.0以下である担体炭素材料を用いて燃料電池を作製した場合、より良好な電池性能を達成することができる。すなわち、このような担体炭素材料を用いた場合、その親水性が過度に失われることがないので、湿潤環境下であるからこそ達成される高分子膜のプロトン伝導性を低下させることがなく、しかも、フラッディングの発生を効果的に抑制でき、また、担体炭素材料に担持される金属触媒粒子を高分散させるのに十分な表面積とグラファイトのエッジ部とを有しており、担体炭素材料に担持された金属触媒粒子同士の粒子間距離が広く、酸化性ガスの拡散性も十分に確保され、電池性能に優れた燃料電池の作成が可能である。
【0037】
また、本発明の固体高分子形燃料電池用の金属触媒粒子担持炭素材料において、使用される金属触媒粒子は、Ptを主成分とするものであり、触媒金属としてはPt単独でもよく、また、このPt以外に他の触媒金属を含むものであってもよい。そして、このPt以外の添加可能な触媒金属としては、金属触媒の活性向上を目的として添加されるCo、Ni、Fe、Pd、Au、Ru、Rh、及びIr等から選ばれた1種又は2種以上の混合物を例示することができ、これらPt以外の触媒金属の添加量については、金属触媒粒子中の全触媒金属の原子数に対するPt以外の触媒金属の原子数の割合(原子組成百分率)が0〜50at%の範囲、好ましくは33〜50at%の範囲で添加される。このPt以外の触媒金属の添加量が50at%より高くなると、金属触媒粒子表面の添加元素の存在割合が多くなり、燃料電池作動下で溶解することで、電池性能が低下してしまう。
【0038】
そして、本発明の金属触媒粒子担持炭素材料における金属触媒粒子の担持率(質量%)は、金属触媒粒子と担体炭素材料の合計質量に対して10〜60質量%、好ましくは20〜50質量%の範囲であるのがよい。これは、金属触媒粒子担持炭素材料を触媒層として固体高分子形燃料電池を形成した場合、発電する際に燃料となる水素等の還元性ガス又は酸素等の酸化性ガスの拡散が必須であるが、この触媒層中のこれら還元性ガス又は酸化性ガスの拡散を良好にするための条件である。また、この金属触媒粒子の担持率は金属触媒粒子同士の粒子間距離と相関関係があり、触媒層中の金属触媒粒子の量を等しくした場合、金属触媒粒子の担持率が低いと、触媒層が厚くなって酸化性ガスの拡散性が低下し、電池性能が低下する。しかし、金属触媒粒子の担持率が低ければ、金属触媒粒子同士の粒子間距離が長くなるため、金属触媒粒子は凝集せず、適度な粒子間距離を保つことで、拡散した酸化性ガスを金属触媒粒子表面で効率的に反応させることができ、 反対に、金属触媒粒子の担持率が高いと、触媒層が薄くなって酸化性ガスの拡散はし易くなる傾向にあるが、金属触媒粒子同士の粒子間距離が短くなって、金属触媒粒子は凝集し、金属触媒粒子の表面積が低下することで、拡散した酸化性ガスを金属触媒粒子表面で効率的に反応出来ないという問題が生じる。
【0039】
本発明の担体炭素材料の製造方法については、特に制限されるものではなく、例えば以下に示す方法により製造される。
すなわち、金属又は金属塩を含む溶液中にアセチレンガスを吹き込み、金属アセチリドを生成させる(アセチリド生成工程)。
【0040】
次いで、生成した金属アセチリドを60℃以上80℃以下の温度で加熱し、前記金属を金属粒子として偏析させ、この金属粒子が内包された金属粒子内包中間体を得る(第1の加熱処理工程)。この第1の加熱処理工程での加熱時間は、通常12時間以上、好ましくは12〜24時間である。
【0041】
このようにして得られた金属粒子内包中間体については、次に160℃以上200℃以下の温度で加熱し、前記金属粒子内包中間体を爆発させてこの金属粒子内包中間体により金属粒子を噴出させ、炭素材料中間体を得る(第2の加熱処理工程)。この第2の加熱処理工程での加熱時間は、通常10〜30分間、好ましくは20〜30分である。
【0042】
この第2の加熱処理工程で得られた炭素材料中間体については、次に熱濃硫酸と接触させ、第2の加熱処理工程で噴出し表面に付着した金属粒子やその他の不安定な炭素化合物等を溶解し洗浄して除去し、炭素材料中間体を清浄化すると共に、熱濃硫酸の脱水作用により炭素材料中間体の水素含有量(H)を低減させる(洗浄処理工程)。この熱濃硫酸を用いた炭素材料中間体の洗浄処理は、硫酸濃度90質量%以上、好ましくは96質量%以上、より好ましくは98質量%以上の濃硫酸を用い、温度120℃以上、好ましくは140℃以上、より好ましくは160℃以上の加熱下に、30分以上、好ましくは30〜60分、より好ましくは30分の処理条件下に行われる。すなわち、本発明では、熱濃硫酸は、濃硫酸の温度(処理温度)が120℃以上、好ましくは140℃以上、より好ましくは160℃以上である濃硫酸を意味する。なお、硫酸濃度が90質量%未満であると、濃硫酸の脱水作用が低く、また、担体炭素材料表面に対する反応性が高くなる。後者は具体的に、硫酸濃度を希釈する際に添加されるH2Oが担体炭素材料表面と反応し、グラファイトのエッジ部が増大傾向にあるためである。よって、硫酸濃度が90質量%未満であると、本発明では不適当であり、反対に、硫酸濃度が高いことは本発明では好ましく、硫酸濃度100質量%の濃硫酸を好適に用いることができる。また、濃硫酸の温度(処理温度)については、120℃未満では、担体炭素材料表面に対する反応性が乏しく、表面積が減少する傾向にあり、金属粒子やその他の不安定な炭素化合物等に対する溶解や、所望の脱水作用を発揮できず、反対に、この濃硫酸の温度(処理温度)には特に上限はなく、硫酸の沸点(290℃)まで適用可能である。
【0043】
前記第2の加熱処理工程及び洗浄処理工程を経て得られた洗浄処理後の炭素材料中間体について、真空中、不活性ガス雰囲気中、又は空気雰囲気中で、1000℃以上2100℃以下、好ましくは1600℃〜2000℃、より好ましくは1600℃〜1900℃の温度範囲の温度で例えば2〜5時間加熱し(第3の加熱処理工程)、この加熱処理により炭素材料中間体から水素を脱離させ、水素含有量(H)を低減させ、本発明の上記(a)、(b)、及び(c)の特性を満たす担体炭素材料を得る。この第3の加熱処理工程で、加熱温度が1000℃未満であると、得られた担体炭素材料中にヒドロキシル基やカルボキシル基等の親水性官能基が完全に脱離されずに残存し、Hの値が0.010を超えてしまい、この担体炭素材料を用いて製造された燃料電池において、担体炭素材料に担持された金属触媒粒子上で発生した水が酸化性ガスの拡散を阻害する、いわゆるフラッディングの問題を引き起こす虞がある。反対に、2100℃を超えて加熱すると、窒素吸着BET比表面積(S)の値が600m2/gに達しない場合があり、担体炭素材料に金属触媒粒子を高分散状態で担持させるのに必要な表面積が得られない。
【0044】
また、本発明の固体高分子形燃料電池用の金属触媒粒子担持炭素材料を製造する方法についても、特に制限されるものではないが、例えば以下に示す方法を例示することができる。
すなわち、先ず、以上のようにして製造された担体炭素材料を液体分散媒中に分散させ、得られた分散液中に、白金を主成分とした金属の錯体又は塩と還元剤とを添加し、液相で金属イオンを還元して白金を主成分とする微細な金属触媒粒子を析出させると共に、この析出した金属触媒粒子を前記担体炭素材料に担持させる方法である。
【0045】
ここで、担体炭素材料に高分散状態で担持された金属触媒粒子は、そのサイズが1〜6nm程度であり、このサイズの金属触媒粒子を均一な粒子径で製造することは機械的又は物理的には不可能であり、化学的に金属イオンを還元して生成させる。すなわち、上記の如く、白金を主成分とする金属の錯体又は金属塩を液相で還元剤により還元して金属触媒粒子を生成させる方法である。ここで、適用可能な還元剤としては、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素カリウム、水素化ホウ素リチウム、ヒドラジン、ホルムアルデヒド等のアルデヒド類、エタノールやプロパノール等のアルコール類、エチレングリコール等のポリオール、クエン酸、シュウ酸、ギ酸等のカルボン酸等を用いることができる。また、活性の高い金属触媒粒子を生成させるためには、コロイド化剤等の触媒表面を被覆する化合物の添加は避けるべきであり、そのために予め液体分散媒中に担体炭素材料を分散させておき、還元されて生成した金属触媒粒子が凝集して粗大化する前に、この生成した金属触媒粒子を担体炭素材料に固着させる。更に、生成する金属触媒粒子の粒子径の制御は、還元剤の強度、金属触媒粒子の濃度、担体炭素材料の濃度等を制御因子として最適化することができる。
【0046】
上述した本発明の固体高分子形燃料電池用の担体炭素材料は、上記(a)の特性「担体炭素材料に親水性官能基が少ないこと」、(b)の特性「担体炭素材料に金属触媒粒子を高分散状態で担持させるために、担体炭素材料が大きな表面積を有すること」、及び(c)の特性「担体炭素材料に前記金属触媒粒子を高分散状態に固定するために、担体炭素材料が適度な量のサイトを有すること」を有し、また、本発明の固体高分子形燃料電池用の金属触媒粒子担持炭素材料は、高加湿条件下で運転される燃料電池に用いられ、優れた電池性能を発揮する。
【0047】
また、特許文献2においては、触媒層の構造をガス拡散が良好になるように最適化することにより、加湿条件下でなくとも高い電池性能を発現させているが、本発明の担体炭素材料を用いた場合でも、特許文献2の場合と同様に触媒層の構造をガス拡散が良好になるように最適化することにより、加湿条件下でなくとも高い電池性能を発現させることができる。
【0048】
なお、以上の説明においては、固体高分子形燃料電池の電極としての用途のうち、求められる条件の厳しいカソード電極の用途について記載したが、カソード電極よりも求められる条件が緩やかなアノード電極の用途でも使用可能であることは勿論である。
【発明の効果】
【0049】
本発明の固体高分子形燃料電池用の担体炭素材料及び金属触媒粒子担持炭素材料は、従来の市販の担体炭素材料及び金属触媒粒子担持炭素材料に比べて、燃料電池に使用された際に、高加湿条件で高い電池性能を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0050】
図1図1は、本発明実施例1〜27の場合と、特許文献3の比較例13の場合、及び特許文献2の比較例37の場合について、第3の加熱処理工程での処理温度と水素含有量(H)との関係を調べた結果を示すグラフ図である。
【0051】
図2図2は、本発明実施例1〜27の場合と、特許文献3の比較例13の場合、及び特許文献2の比較例37 の場合について、第3の加熱処理工程での処理温度と窒素吸着BET比表面積(S)との関係を調べた結果を示すグラフ図である。
【0052】
図3図3は、本発明実施例1〜27の場合と、特許文献3の比較例13の場合、及び特許文献2の比較例37 の場合について、第3の加熱処理工程での処理温度とラマン相対強度比(ID/IG)との関係を調べた結果を示すグラフ図である。
【0053】
図4図4は、実施例4の白金触媒粒子担持炭素材料(ID/IG:1.7)を示すTEM像である。
図5図5は、比較例34の白金触媒粒子担持炭素材料(ID/IG:0.74)を示すTEM像である。
【発明を実施するための形態】
【0054】
以下、実施例及び比較例に基づいて、本発明の固体高分子形燃料電池用の担体炭素材料及び金属触媒粒子担持炭素材料を説明する。
【0055】
〔実施例1〜27及び比較例1〜37〕
1.担体炭素材料の製造
(1) アセチリド生成工程
以下の実施例及び比較例では、担体炭素材料を製造するための前駆体である金属アセチリドの金属として、銀を選択した。
最初に、硝酸銀を1.1モル%の濃度で含むアンモニア水溶液(NH3濃度:1.9質量%)をフラスコに用意し、このフラスコ内の空気を不活性ガス(アルゴンや乾燥窒素等)で置換して酸素を除去した後、撹拌下に上記硝酸銀のアンモニア水溶液150mLに対してアセチレンガスを25mL/min.の流速で約4分間吹き付け、アンモニア水溶液中に銀アセチリドの固形物を沈殿させた。次いで、前記沈殿物をメンブレンフィルターで濾過し、得られた沈殿物をメタノールで洗浄し、更に洗浄後に若干のメタノールを加えてこの沈殿物中にメタノールを含浸させた。
【0056】
(2) 第1の加熱処理工程
次いで、前記メタノールを含浸した状態の沈殿物を直径6mm程度の試験管にそれぞれ50mgずつ小分けして入れ、これを真空加熱容器に入れて60〜80℃の温度で12時間加熱し、銀粒子内包中間体を調製した。
【0057】
(3) 第2の加熱処理工程
上記第1の加熱処理工程で得られた銀粒子内包中間体を真空加熱容器内から取り出すことなく、そのまま真空中で連続して160〜200℃の温度まで昇温させ、この温度で20分間加熱し、爆発により銀粒子内包中間体から銀粒子を噴出させ、炭素材料中間体を得た。
【0058】
(4) 洗浄処理工程
上記第2の加熱処理工程で得られた銀粒子噴出後の炭素材料中間体について、表1及び表2に示すように、96質量%の濃硫酸を200℃で1時間接触させて洗浄する熱濃硫酸洗浄処理、又は、濃硝酸に1時間接触させて洗浄する濃硝酸洗浄処理を実施し、炭素材料中間体の表面に残存した銀粒子やその他不安定な炭素化合物を除去し清浄化した。
【0059】
(5) 第3の加熱処理工程
上記洗浄処理工程で清浄化した炭素材料中間体について、不活性雰囲気中において表1及び表2に示す処理温度で2時間加熱し、実施例1〜27及び比較例1〜27の担体炭素材料を得た。なお、比較例13は特許文献3の担体炭素材料に相当するものである。
【0060】
〔比較例28〜34〕
比較例28〜34においては、市販品の担体炭素材料(ライオン(株)社製商品名:EC600JD)を用い、表2に示す処理温度で第3の加熱処理を施し、比較例28〜34の担体炭素材料とした。
【0061】
〔比較例34〜36〕
比較例34においては、市販品の担体炭素材料(電気化学工業(株)社製商品名:デンカブラックFX-35)をそのまま比較例34の担体炭素材料とした。
比較例35においては、市販品の担体炭素材料(クラレケミカル(株)社製商品名:YP50F)をそのまま比較例35の担体炭素材料とした。
比較例36においては、市販品の担体炭素材料(ライオン(株)社製商品名:EC600JD)をそのまま比較例36の担体炭素材料としたものであり、特許文献2の担体炭素材料に相当するものである。
【0062】
A:担体炭素材料中の水素含有量(H)の測定
以上のようにして調製された実施例1〜27及び比較例1〜37の担体炭素材料について、その水素含有量(H)を以下のようにして測定した。
測定はガス分析装置(RECO製、RH402型)を用い、不活性ガス融解熱伝導度法に従って行った。先ず、試料の担体炭素材料を約1g測り採り、これを黒鉛るつぼで800℃に加熱し、その際に発生した水素量を測定し、測定された水素量から水素含有量(H)の値(mass%)を算出した。
【0063】
実施例1〜27の結果を表1に示すと共に比較例1〜37の結果を表2に示す。また、図1には、本発明の実施例1〜27の場合、特許文献3の比較例13の場合及び特許文献2の比較例37の場合について、第3の加熱処理工程での処理温度と水素含有量(H)との関係を調べた結果を示す。
表1及び表2と図1に示す結果から明らかなように、本発明の実施例1〜27の担体炭素材料が何れも水素含有量(H)の値の範囲「0.004〜0.010mass%」を満たしているのに対し、濃硫酸を用いて洗浄処理を行った比較例1〜12のうち、濃硫酸の温度(処理温度)が、120℃未満の比較例1及び3の場合、第3の加熱処理時の処理温度が2200℃の比較例4〜6の場合、及び第3の加熱処理時の処理温度が900℃又は800℃の比較例7〜10の場合や、濃硝酸を用いて洗浄処理を行った比較例13、15〜27の場合や、濃硫酸を用いて洗浄処理を行った比較例14の場合や、更には、市販品を用いた場合のうち、市販品EC600JDに対して1700℃の処理温度で第3の加熱処理を行った比較例32以外の場合には、水素含有量(H)の値の範囲「0.004〜0.010mass%」を満足しなかった。
【0064】
B:担体炭素材料中の窒素吸着BET比表面積(S)の測定
上記実施例1〜27及び比較例1〜37の担体炭素材料について、その窒素吸着BET比表面積(S)を以下のようにして測定した。
測定は、試料の担体炭素材料を約50mg測り採り、これを90℃で真空乾燥し、得られた乾燥後の試料について、自動比表面積測定装置(日本ベル製、BELSORP36)を使用し、窒素ガスを用いたガス吸着法にて測定し、BET法に基づく1点法にて比表面積を決定した。
【0065】
実施例1〜27の結果を表1に示すと共に比較例1〜37の結果を表2に示す。また、図2には、本発明の実施例1〜27の場合、特許文献3の比較例13の場合及び特許文献2の比較例37の場合について、第3の加熱処理工程での処理温度と窒素吸着BET比表面積(S)との関係を調べた結果を示す。
表1及び表2と図2に示す結果から明らかなように、本発明の実施例1〜27の担体炭素材料が何れも窒素吸着BET比表面積(S)の値の範囲「600〜1500m2/g」を満たしているのに対し、濃硫酸の温度(処理温度)が、120℃未満の比較例1〜3の場合、第3の加熱処理を2200℃の処理温度で行った比較例5、6の場合、濃硝酸を用いて洗浄処理を行った比較例13の場合、市販品EC600JDを用いて1700〜2000℃の処理温度で第3の加熱処理を行った比較例32〜34 の場合、及び、市販品デンカブラックFX-35を用いた比較例35の場合には、この窒素吸着BET比表面積(S)の値の範囲「600〜1500m2/g」を満足しなかった。
【0066】
C:担体炭素材料のラマン相対強度比(ID/IG)の測定
上記実施例1〜27及び比較例1〜37の担体炭素材料について、そのラマン相対強度比(ID/IG)を以下のようにして測定した。
測定は、試料の担体炭素材料を約3mg測り採り、レーザラマン分光光度計(日本分光(株)製、NRS-7100型)を用い、励起レーザー532nm、レーザーパワー100mW(試料照射パワー:0.1mW)、顕微配置:Backscattering、スリット:100μm×100μm、対物レンズ:×100、スポット径:1μm、露光時間:30sec、観測波数:3200〜750cm-1、積算回数:2回の測定条件で実施し、各測定で得られたラマンスペクトルからD-バンドと呼ばれる1200〜1400cm-1の範囲のピーク強度(ID)と、G-バンドと呼ばれる1500〜1700cm-1の範囲のピーク強度(IG)との相対的強度比(ID/IG)を算出した。測定は3回実施し、その3回の平均値を測定データとした。
【0067】
実施例1〜27の結果を表1に示すと共に比較例1〜37の結果を表2に示す。また、図3には、本発明の実施例1〜27の場合、特許文献3の比較例13の場合及び特許文献2の比較例37の場合について、第3の加熱処理工程での処理温度とラマン相対強度比(ID/IG)との関係を調べた結果を示す。
表1及び表2と図3に示す結果から明らかなように、本発明の実施例1〜27の担体炭素材料が何れもラマン相対強度比(ID/IG)の値の範囲「1.0〜2.0」を満たしているのに対し、第3の加熱処理を2200℃の処理温度で行った比較例4の場合、硫酸濃度が90質量%未満の比較例11及び12の場合、市販品EC600JDを用いて1800℃又は2000℃の処理温度で第3の加熱処理を行った比較例33及び34の場合、及び、市販品YP50Fを用いた比較例36の場合には、このラマン相対強度比(ID/IG)の値の範囲「1.0〜2.0」を満足しなかった。
【0068】
2.金属触媒粒子担持炭素材料の製造
上記各実施例1〜27及び比較例1〜37の担体炭素材料を蒸留水中に分散させ、この分散液にホルムアルデヒドを加え、40℃に設定したウォーターバスにセットし、分散液の温度がバスと同じ40℃になってから、撹拌下にこの分散液中にジニトロジアミンPt錯体硝酸水溶液をゆっくりと注ぎ入れた。その後、約2時間撹拌を続けた後、濾過し、得られた固形物の洗浄を行った。このようにして得られた固形物を90℃で真空乾燥した後、乳鉢で粉砕し、次いで水素雰囲気中250℃で1時間熱処理をして各実施例1〜27及び比較例1〜37の白金触媒粒子担持炭素材料を作製した。なお、前記白金触媒粒子担持炭素材料の白金触媒粒子の担持率は白金触媒粒子と担体炭素材料の合計質量に対して40質量%になるように調製した。
【0069】
D:白金触媒粒子担持炭素材料のTEM観察
上記実施例4(ID/IG:1.7)及び比較例34(ID/IG:0.74)で調製された白金触媒粒子担持炭素材料を1mg測り採り、エタノール中に分散させた。得られた分散液を銅メッシュグリッド上に滴下し、1晩真空乾燥させ、透過型電子顕微鏡(FEI製、TECNAI)を用い、加速電圧200kV、観察視野2μm×2μmの条件で観察し、代表点として0.2μm×0.2μmの領域のTEM像を撮影した。
【0070】
図4に実施例4の結果を、また、図5に比較例34の結果をそれぞれ示す。これより、ID/IGが1.0未満の担体炭素材料に白金触媒粒子を担持させた場合(比較例34)には、白金触媒粒子が固定されるサイトが少なく、一部に白金触媒粒子が固定されていない領域が見られる。
【0071】
3.触媒層、膜電極接合体(Membrane Electrode Assembly; MEA)の調製
上記各実施例1〜27及び比較例1〜37の白金触媒粒子担持炭素材料を用い、また、アイオノマー溶液として5%-ナフィオン溶液(デュポン製、DE521)を用い、アルゴン気流中でこれら白金触媒粒子担持炭素材料と5%-ナフィオン溶液とを白金触媒粒子担持炭素材料の質量に対してナフィオン固形分の質量が1.2倍になるように配合し、軽く撹拌した後、超音波で白金触媒粒子担持炭素材料を粉砕し、得られた分散液中に白金触媒粒子担持炭素材料とナフィオンの合計の固形分濃度が2質量%となるように撹拌下に酢酸ブチルを加え、各実施例1〜27及び比較例1〜37の触媒層スラリーを作製した。
【0072】
このようにして得られた各実施例1〜27及び比較例1〜37の触媒層スラリーをテフロン(登録商標)シートの片面にそれぞれスプレー法で塗布し、80℃のアルゴン気流中10分間、続いて120℃のアルゴン気流中1時間乾燥し、固体高分子形燃料電池用の触媒層を得た。なお、それぞれの触媒層は、白金使用量が0.20mg/cm2となるようにスプレー等の条件を設定して調製され、また、白金使用量は、スプレー塗布前後のテフロン(登録商標)シートの乾燥質量を測定し、その差から計算して求められた。
【0073】
更に、得られた各実施例1〜27及び比較例1〜37の固体高分子形燃料電池用触媒層から2.5cm角の大きさで2枚ずつ電解質膜を切り出し、触媒層が電解質膜と接触するように同じ種類の電極2枚で電解質膜(ナフィオン112)を挟み、130℃、90kg/cm2の条件で10分間ホットプレスを行い、次いで室温まで冷却した後、テフロン(登録商標)シートのみを注意深く剥がし取り、アノード及びカソードの触媒層をナフィオン膜に定着させた。更に、市販のカーボンクロス(ElectroChem社製、EC-CC1-060)から2.5cm角の大きさのカーボンクロス片2枚を切り出し、これら2枚のカーボンクロス片でナフィオン膜に定着させたアノード及びカソードを挟み込み、次いで130℃、50kg/cm2の条件で10分間ホットプレスを行い、各実施例1〜27及び比較例1〜37のMEAを作製した。
【0074】
E:金属触媒粒子担持炭素材料の電池性能の評価
以上のようにして作製した各実施例1〜27及び比較例1〜37のMEAについて、各MEAを燃料電池セルに組み込み、燃料電池測定装置を用いて次の手順で燃料電池の性能を評価した。この際に、カソードには空気を、また、アノードには純水素を、1000mA/cm2の発電に必要なガス量を100%として、利用率がそれぞれ40%と70%となるように供給した。また、この際に、ガス圧は0.1MPaとし、また、セル温度は80℃とした。
【0075】
測定に際しては、先ず、供給する空気と純水素を、各々80℃に保温された蒸留水中でバブリングし加湿し、次いで上記条件でセルにガスを供給した後、1000mA/cm2まで負荷を徐々に増加して行き、この1000mA/cm2に到達した時点で負荷を固定し、60分経過後のセル端子間で測定された電圧(セル電圧)を加湿条件下での燃料電池の電池性能とした。
実施例1〜27の結果を表1に示すと共に比較例1〜37の結果を表2に示す。
【0076】
〔実施例28〜39及び比較例38〜46〕
実施例4と、比較例1、7及び15とで得られた4種の担体炭素材料を使用し、白金触媒粒子担持炭素材料を調製する際に下記の操作を行ったこと以外は、上記各実施例及び比較例の場合と同様にして、MEAを調製し、また、このMEAを燃料電池セルに組み込んで電池性能の評価を行った。
【0077】
すなわち、白金触媒粒子担持炭素材料の調製の際に、還元剤として還元力の強い水素化ホウ素ナトリウムを用い、塩化白金酸と白金以外の触媒金属の塩化物とを溶解して得られた水溶液に担体炭素材料を添加し、超音波分散器で十分に分散させて分散液を調製した後、この分散液に60℃、攪拌下に大過剰の水素化ホウ素ナトリウムの水溶液を一度に注ぎ入れ、塩化白金酸及び白金以外の触媒金属の塩化物を還元し表3に示す金属触媒粒子の担持率及び組成を有する白金触媒粒子担持炭素材料を調製した。なお、実施例34〜39及び比較例41〜46においては、合金化の程度を高めるために、乾燥した触媒を不活性雰囲気中で、800℃、5分間の条件で加熱処理し、また、この際には、粒子の粗大化を抑制するため、可能な限り急速に加熱し、また、加熱処理後は急速に冷却した。
結果を表3に示す。
【0078】
【表1】
【0079】
【表2】
【0080】
【表3】
図1
図2
図3
図4
図5