特許第6203358号(P6203358)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6203358
(24)【登録日】2017年9月8日
(45)【発行日】2017年9月27日
(54)【発明の名称】洗眼用容器
(51)【国際特許分類】
   A61H 35/02 20060101AFI20170914BHJP
【FI】
   A61H35/02 503
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-198921(P2016-198921)
(22)【出願日】2016年10月7日
(62)【分割の表示】特願2012-202801(P2012-202801)の分割
【原出願日】2012年9月14日
(65)【公開番号】特開2017-12836(P2017-12836A)
(43)【公開日】2017年1月19日
【審査請求日】2016年10月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000186588
【氏名又は名称】小林製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100101373
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 茂雄
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100118083
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 孝美
(72)【発明者】
【氏名】吉川 侑
【審査官】 古川 峻弘
(56)【参考文献】
【文献】 英国特許出願公開第2451821(GB,A)
【文献】 実開昭59−154247(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61H 35/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カップ状に形成され、開口部の周縁が人の目の周囲に適合する形状に形成された洗眼用
容器であって、
前記洗眼用容器は、底部と、前記底部と一体的に形成され前記底部の周縁から上方へ向
かって延びる周壁とを有し、前記周壁の上端部には、該上端部から外方に向かって延びる
接眼部が前記周壁と一体的に形成されており、
前記底部と前記周壁は第1の樹脂から形成され、
前記接眼部は第1の樹脂とは異なる第2の樹脂から形成され、
前記第2の樹脂は、前記第1の樹脂とは異なる硬さを有し、
前記第2の樹脂から形成される前記接眼部は、前記第1の樹脂から形成される前記底部及び周壁とは異なる色調にされる
ことを特徴とする、洗眼用容器。
【請求項2】
請求項1に記載の洗眼用容器において、JIS K 7202に基づいて測定したとき
、前記第1の樹脂の硬さはR70以上またはD40以上の値であり、JIS K 625
3に基づいて測定したとき、前記第2の樹脂の硬さは1から80の間の値である、洗眼
用容器。
【請求項3】
請求項1または2に記載の洗眼用容器において、
前記周壁と前記接眼部との境界部分から前記接眼部の縁部までの距離は、3mmから7
mmの間の値である、洗眼用容器。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の洗眼用容器において、
前記洗眼用容器の内面における前記周壁と前記接眼部との境界部分は略面一に形成され
ていることを特徴とする、洗眼用容器。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の洗眼用容器において、
前記底部及び前記周壁は、前記接眼部より透明度が高いことを特徴とする、洗眼用容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カップ状に形成された、開口部の周縁が人の目の周囲に適合する形状とされた洗眼用容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、眼病予防、花粉症対策等のため、カップ状の洗眼用容器に洗眼液を入れ、洗眼用容器の開口部の周縁を人の目の周囲に当接させた状態で顔を上に向けることで、目の表面を洗眼液に浸して洗眼を行うことが知られている。このような洗眼用容器には、顔を上に向けたときに容器と顔との当接部分からの洗眼液の漏れを防止することが要求される。
【0003】
かかる洗眼用容器として、例えば特許文献1、2、または3に記載されているようなものがある。特許文献1に開示されている洗眼用容器は、洗眼用容器を目の周囲に押しあてたときの密着感を向上すべく、容器底部から延びる周壁部の開口側を底部側より薄肉に形成されている。
【0004】
また、特許文献2には、洗眼用容器の周壁を、底壁から立ち上がる第1周壁と該第1周壁に内嵌される第2周壁との2部材で構成し、第2周壁を軟弾性エラストマーで成形した洗眼用容器が開示されている。
【0005】
また、特許文献3には、容器本体とフランジ部とからなる洗眼用容器であって、容器本体とフランジ部とを同一の材料で一体的に形成するものが開示されている。
そして、このように形成された洗眼用容器は、洗眼液を充填したボトルの口部に被せてシュリンクフィルム等で覆うことで、洗眼液と共に販売されることが一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−157703号公報
【特許文献2】特開2002−345919号公報
【特許文献3】特開2008−61787号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記特許文献1に開示されている洗眼用容器のように開口部周囲を薄肉とした場合、販売用にシュリンクフィルム等を容器外方から被せてシュリンクさせる工程において、薄肉部分がクリープし変形しやすいという問題があった。また、製造時に薄肉部分の周縁がシャープになってしまうため、洗眼用容器を目の周囲へ押しあてるときに痛みを生じさせる可能性があった。また、洗眼液を入れる周壁部分と比較して薄肉部分を成形しにくいという問題もあった。さらに、顔に当接する部分の距離が短すぎると顔に密着する部分が少なくなるために使用時に洗眼液が漏れる可能性があるが、長くしすぎると、洗眼用容器を目の周囲に押しあてたときに目が外方へ引っ張られる違和感が生じるとともに、容器内に減圧状態が生じやすくなり、目に痛みを感じさせてしまうという問題があった。
【0008】
また、特許文献2に記載の洗眼用容器は、一体成形されるものではないため、第1周壁に第2周壁を内嵌したときに生じる段部に汚れ(例えば洗眼液の残り等)が溜まりやすいという問題がある。洗眼用容器は衛生的に使用される必要があるため、汚れが残りにくい構造とすることが要求される。
【0009】
また、人の目の周囲は目の瞼側(上側)、目尻側(外側)、目元側(内側)、及び頬側(下側)とで異なり、それぞれの部位に応じた寸法設計が要求されるが、上記特許文献1〜3はそれぞれの部位に対して適切な形状に容器を形成するものではなかった。特許文献3は、目尻側と目元側の当接部の幅を調整することを開示するが、当接部の距離や肉厚を当接する部位に応じて形状や寸法を設定するものではなく、目の瞼側と頬側部分については考慮もしていない。
【0010】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、人の目の周囲への密着性をより向上させて液漏れを防止することができる洗眼用容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明の洗眼用容器は、カップ状に形成され、開口部の周縁が人の目の周囲に適合する形状に形成された洗眼用容器であって、洗眼用容器は、底部と、底部と一体的に形成され底部の周縁から上方へ向かって延びる周壁とを有し、周壁の上端部には、該上端部から外方に向かって延びる接眼部が周壁と一体的に形成されており、底部と周壁は第1の樹脂から形成され、接眼部は第1の樹脂とは異なる第2の樹脂から形成され、第2の樹脂は、第1の樹脂とは異なる硬さを有することを特徴とする(第1の態様)。
【0012】
上記発明において、第1の樹脂の硬さは、JIS K 7202(プラスチック‐硬さの求め方 ロックウェル硬さ)に基づいて測定したときR70以上またはD40以上の値とし、第2の樹脂の硬さはJIS K 6253(加流性ゴム及び熱可塑性ゴム‐硬さの求め方)に基づいて測定したとき、1から80の間の値とすることができる(第2の態様)。
【0013】
上記発明において、周壁と接眼部との境界部分から接眼部の縁部までの距離は、3mmから7mmの間の値とすることが好ましい(第3の態様)。
上記発明において、当該洗眼用容器の目元側部分における周壁と接眼部との境界部分から接眼部の縁部までの距離は、該洗眼用容器の目尻側部分における周壁と接眼部との境界部分から接眼部の縁部までの距離より大きな値であり、該洗眼用容器の目元側部分と前記目尻側部分との間の部分における、周壁と接眼部との境界部分から接眼部の縁部までの距離は、該洗眼用容器の目元側部分における周壁と接眼部との境界部分から接眼部の縁部までの距離と同じか又はこれより大きな値であることが好ましい(第4の態様)。
【0014】
上記発明において、当該洗眼用容器の目元側部分における接眼部の肉厚は、洗眼用容器の目尻側部分における接眼部の肉厚より薄いか同じである。洗眼容器の目元側部分と目尻側部分との間の部分における洗眼用容器の肉厚は、目元側部分における肉厚、及び目尻側部分における肉厚より薄い構成としてもよい(第5の態様)。
【0015】
上記発明において、第2の樹脂から形成される接眼部は、第1の樹脂から形成される底部及び周壁とは異なる色調にしてもよい(第6の態様)。
上記発明において、洗眼用容器の内面における周壁と接眼部との境界部分は略面一に形成されていてもよい(第7の態様)。
【0016】
底部及び周壁は、接眼部より透明度を高くしてもよい(第8の態様)。
【発明の効果】
【0017】
第1の態様によれば、底部と周壁と接眼部とを含む洗眼用容器の底部と周壁を第1の樹脂から形成し、接眼部を第2の樹脂から形成し、第2の樹脂の硬さを第1の樹脂の硬さよ
り軟らかくしたので、接眼部を目の周囲に当接させたときの密着性を向上させることができる。また、洗眼用容器を一体的に成形したので、多部品構成の容器と比較して、製造工程を少なくすることができるとともに、容器の構成を簡単なものとすることができ、製造にかかる時間及びコストを少なくすることが可能となる。また、多部品構成の容器の場合、これらの接続部分に洗眼液が溜まる恐れがあるが、本態様では洗眼容器を一体的に成形したので、そのような問題が生じることはない。
【0018】
第2の態様によれば、JIS K 7202基づいて測定したときの第1の樹脂の硬さをR70以上またはD40以上の値とし、JIS K 6253に基づいて測定したときの第2の樹脂の硬さを1から80の間の値としたので、接眼部を目の周囲に当接させたときの密着感をより向上させることが可能となる。
【0019】
第3の態様によれば、周壁と接眼部との境界部分から接眼部の縁部までの距離を3mmから7mmの間の値としたので、上記距離が短すぎたり長すぎたりする場合の従来の不具合を解消しつつ、目の周囲と洗眼用容器との密着性を向上させることが可能となる。
【0020】
第4の態様によれば、洗眼用容器の目元側部分における周壁と接眼部との境界部分から接眼部の縁部までの距離を、該洗眼用容器の目尻側部分における周壁と接眼部との境界部分から接眼部の縁部までの距離より大きな値にするとともに、洗眼用容器の目元側部分と目尻側部分との間の部分における、周壁と接眼部との境界部分から接眼部の縁部までの距離を、該洗眼用容器の目元側部分における前記周壁と前記接眼部との境界部分から接眼部の縁部までの距離と同じか又はこれより大きな値とする。従って、洗眼液が最も漏れやすい目尻側部分における上記距離を一番短く設定することで、使用時の目尻側部分における容器の変形を他の部分と比べて少なくし又は抑制することができる。これにより目尻側部分での洗眼液の漏れを効果的に防止することが可能となる。
【0021】
第5の態様によれば、洗眼用容器の目元側部分における接眼部の肉厚を洗眼用容器の目尻側部分における接眼部の肉厚より薄いか同じにし、洗眼用容器の目元側部分と目尻側部分との間の部分における洗眼用容器の肉厚を、目元側部分における肉厚、及び目尻側部分における肉厚より薄くしたので、洗眼液が最も漏れやすい目尻側部分の肉厚を最も厚くして目尻側部分での容器の変形を他の部分より少なくする、または抑制することができる。これにより目尻側部分での洗眼液の漏れを効果的に防止することが可能となる。
【0022】
第6の態様によれば、第2の樹脂から形成される接眼部は、第1の樹脂から形成される底部及び周壁とは異なる色調にされるので、例えば洗眼時にコンタクトレンズや眼鏡を外した場合であっても洗眼用容器が見えにくくなることを防止し、洗眼液を入れるための開口部を確実に認識して洗眼液を溢さずに容器に注ぐことができるようになる。
【0023】
第7の態様によれば、洗眼用容器の内面における周壁と接眼部との境界部分は略面一に形成されているので、例えば洗眼後の洗眼液や除去したゴミ等が境界部分に溜まってしまうことを防止することが可能となる。
【0024】
第8の態様によれば、底部及び周壁は、接眼部より透明度を高くしたので、洗眼により目から除去された汚れを目視により確認できるようになり、容器の衛生的な洗浄・保管が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の第1の実施の形態に係る洗眼用容器を示す側面図である。
図2図1に示した周壁と接眼部との境界部分から接眼部の上縁部までの距離について説明するための、洗眼用容器の側面図である。
図3図3(a)は本発明の第2の実施の形態に係る洗眼用容器を説明するための側面図であり、図3(b)は図3(a)の線A−Aにおける断面図であり、図3(c)は図3(a)に示した洗眼用容器の正面図であり、図3(d)は図3(c)の線B−Bにおける断面図である。
図4】色調規格値の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下図面を参照して、本発明の洗眼用容器を具体的に説明する。まず、本発明の一実施形態について、図1及び図2を参照して説明する。
図1は、第1の実施の形態に係る洗眼用容器の一例を示す側面図である。本実施形態における洗眼用容器は、洗眼液を入れるためにカップ状に形成され、容器開口の周縁部が人の目の周囲に適合する形状に形成されている。
【0027】
より具体的には、図1に示したように、洗眼用容器1は、底部2及び底部2の周縁から上方へ向かって延びる周壁3を有する、上方が開口した全体としてカップ状に形成されている。周壁3の上端部には、該上端部から外方に向かって延びる接眼部4が設けられており、該接眼部4により洗眼用容器1の開口周縁部が画定される。本実施形態において、洗眼用容器1の底部2、周壁3、及び接眼部4は一体的に成形される。
【0028】
本実施形態において、底部2及び周壁3は、例えば熱可塑性樹脂等の、第1の樹脂で作られ、接眼部4は、例えば熱可塑性エラストマー等の、第1の樹脂とは異なる、第1の樹脂より軟らかい第2の樹脂で作られる。熱可塑性樹脂としては、ポリプロピレン、ポリエチレンを用いることが好ましい。熱可塑性エラストマーとしては、スチレン系エラストマーを用いることが好ましい。スチレン系エラストマーは、成形時に第1の樹脂として使用されるポリプロピレン等の熱可塑性樹脂との接着性が良好であるため、使用中に接眼部4と周壁3との間の境界部分5で接眼部4が周壁3から破断分離することがない。
【0029】
このように、接眼部4を底部2及び周壁3の第1の樹脂より軟らかい第2の樹脂で製造することにより、接眼部4を目の周囲に当接させたときの密着性を向上させることができ
る。また、従来技術として説明したような多部品構成の容器と比較して、製造工程を少なくすることができるとともに、容器1の構成を簡単なものとすることができ、製造にかかる時間及びコストを少なくすることが可能となる。また、多部品構成の容器の場合、これらの接続部分に洗眼液が溜まる恐れがあるが、本態様では洗眼容器を一体的に成形したので、そのような問題は生じない。
【0030】
底部2及び周壁3の第1の樹脂は、JIS K 7202(プラスチック‐硬さの求め方 ロックウェル硬さ)の測定方法を用いた場合に、例えばR70以上またはD40以上の硬さを有するものとすることが好ましく、R80以上またはD40以上の硬さがより好ましく、R90以上またはD40以上の硬さが最も好ましい。接眼部4の第2の樹脂はJIS K 6253の測定方法(加流性ゴム及び熱可塑性ゴム‐硬さの求め方)を用いた場合に、例えば1point以上80point以下の硬さを有するものとすることが好ましく、30point以上80point以下の硬さがより好ましく、40point以上55point以下の硬さが最も好ましい。すなわち、第2の樹脂の硬さを第1の樹脂の硬さより軟らかくすることにより、従来技術として説明したように接眼部を全体として肉薄にすることなく、目の周囲への密着性に優れた洗眼用容器1を得ることができる。また、第1の樹脂の硬さをJIS K 7202においてR70以上またはD40以上とすることにより、使用者が使用中に洗眼用容器1を指で押しても周壁3部分は変形しにくくなる。したがって、使用時に洗眼用容器1が変形して容器1から洗眼液が漏れることを
防止することが可能となる。
【0031】
図1に示したように、接眼部4の長さ、すなわち、図1の側面図において周壁3と接眼部4との境界部分5の延長線から、接眼部4の上縁部4Aまでの距離Lは、好ましくは1〜7mmであり、より好ましくは2mm〜7mmであり、最も好ましくは3mm〜7mmである。洗眼用容器において、周壁3と接眼部4との境界部分5の延長線から、接眼部4の上縁部4Aまでの距離Lを長くしすぎると、眼の周囲への密着性は高まるが、密着しすぎると眼が飛び出すような感じになり、却って洗眼しにくくなるため、眼の周囲への適度な密着性を得るために、上記範囲の距離Lとすることが好ましい。
【0032】
上述した周壁3と接眼部4との境界部分5から接眼部4の上縁部4Aまでの距離Lは、洗眼用容器1の部位に応じて異なる長さとすることが望ましい。図2は、図1に示した周壁3と接眼部4との境界部分5から接眼部4の上縁部4Aまでの距離について説明するための、洗眼用容器1の側面図である。説明のため、洗眼用容器1の目元側部分1Aにおける周壁3と接眼部4との境界部分5から接眼部4の上縁部4Aまでの距離をA、該洗眼用容器1の目尻側部分1Bにおける周壁3と接眼部4との境界部分5から接眼部4の上縁部4Aまでの距離をB、洗眼用容器1の目元側部分1Aと目尻側部分1Bとの間の部分1Cにおける周壁3と接眼部4との境界部分5から接眼部4の上縁部4Aまでの距離をCとする。図面から明らかなように、距離Cは、図2において水平線と境界部分5とが接するときの該水平線と、当該水平線を図2における上方へ平行移動させた際に接眼部4の上縁と接するときの該水平線との間の距離と言い換えることもできる。本実施の形態においては、洗眼用容器1の目元側部分1Aにおける距離Aは、洗眼用容器1の目尻側部分1Bにおける周壁3と接眼部4との境界部分5から接眼部4の上縁部4Aまでの距離Bより長く形成される。また、洗眼用容器1の目元側部分1Aと目尻側部分1Bとの間の部分1Cにおける周壁3と接眼部4との境界部分5から接眼部4の上縁部4Aまでの距離Cは、洗眼用容器1の目元側部分1Aにおける周壁3と接眼部4との境界部分5から接眼部4の上縁部4Aまでの距離Aと同じか又はこれより長く形成される。すなわち、接眼部4の各部分における距離A、B、Cは、
B<A≦C
という関係が成立するように寸法設計される。
【0033】
このように、洗眼用容器1の接眼部4のうち、洗眼用容器1の目尻側部分1Bにおける距離Bが最も短くなるように寸法決めすることにより、洗眼液の漏れが最も生じやすい目尻側部分1Bにおける接眼部4洗眼液の液漏れを確実に防止することができる。
【0034】
なお、周壁3を第1の樹脂で形成し接眼部4を第2の樹脂で形成するので、第1の樹脂から第2の樹脂へ移行する領域には、第1の樹脂と第2の樹脂が重なり合う部分が存在するが、本発明では、第1の樹脂と第2の樹脂とが重なり合う部分は上記長さ(距離)には含めず、第2の樹脂のみが存在する部分の長さ(距離)の寸法の調整を意図している。
【0035】
以上説明したように、本実施形態によれば、洗眼用容器1の接眼部4を形成する第2の樹脂として、底部2及び周壁3の第1の樹脂より軟らかいものを使用するので、接眼部4全体を肉薄にすることなく、目の周囲への密着性に優れた洗眼用容器を提供することが可能となる。また、底部2、周壁3、接眼部4を一体的に成形したので、多部品構成の場合のように接続部分に洗眼液が溜まるおそれがなくなり、容器を衛生的に使用することができるようになる上、容器の構成を簡単なものとし、製造工程を少なくし、製造時間及びコストを抑制することが可能となる。また、洗眼用容器1の接眼部4のうち、洗眼液が最も漏れやすい目尻側部分1Bにおける距離Bを最も短く寸法決めすることにより、使用時の目尻側部分1Bにおける容器の変形を他の部分と比べて少なくしまたは抑制することができる。したがって、目尻側部分での洗眼液の液漏れを効果的に防止することができる。
【0036】
次に、本発明の第2の実施形態について、図3を参照して説明する。図3は、本実施の
形態に係る洗眼用容器の構成を示す図であり、図3(a)は本発明の第2の実施の形態に係る洗眼用容器を説明するための左側面図、図3(b)は図3(a)の線A−Aにおける断面図、図3(c)は図3(a)に示した洗眼用容器の正面図、図3(d)は図3(c)の線B−Bにおける断面図である。なお、図3において、第1の実施の形態の図1図2に示した構成に対応する構成要素には同一の符号を付してある。
【0037】
上述した第1の実施形態では、洗眼液の漏れが生じやすい目尻側部分における、周壁3と接眼部4との境界部分5から接眼部4の上縁部4Aまでの距離Bが、他の部分における距離A、Cより短くすることで、目尻側部分1Bでの接眼部4の変形が生じにくくなるように構成した。これに対して、本実施の形態では、目元側部分1A、目尻側部分1B、これらの中間部分1Cにおける接眼部4の肉厚を適切に設定することにより、目尻側部分1Bからの洗眼液の漏れを防止するものである。
【0038】
より具体的には、図3(d)に示すように、目元側部分1Aにおける接眼部4の肉厚TAは、目尻側部分1Bにおける接眼部4の肉厚TBより若干薄いか同じである。また、図3(b)、(d)から明らかなように、目元側部分1Aと目尻側部分1Bとの間の部分1Cにおける接眼部4の肉厚TCは、目元側部分1Aの肉厚TA、及び目尻側部分1Bの肉厚TBより薄くされる。すなわち、各部分における接眼部4の肉厚は、次のように設定される。
【0039】
TC<TA≦TB
本実施の形態によれば、上述したように接眼部の肉厚を設計することにより、洗眼液の漏れが生じやすい、目尻側部分1Bにおける接眼部4の変形が他の部分に比べて生じにくくなる。したがって、目尻側部分1Bにおける洗眼液の液漏れを防止することが可能となる。
【0040】
図3に示したように、目元側部分1A、目尻側部分1B、これらの中間部分1Cにおける接眼部4の肉厚は、好ましくは0.5〜2.5mmであり、より好ましくは0.5〜2.0mmであり、最も好ましくは0.5〜1.5mmである。
【0041】
なお、第1の実施の形態で説明した洗眼用容器に対して、第2の実施の形態として上述した接眼部の肉厚の関係を適用可能であることはいうまでもない。
次に、本発明の第3の実施の形態について図4を参照して説明する。本実施形態では上述した第1、第2の実施形態として説明した洗眼用容器1において、第2の樹脂から作られている接眼部4を、底部2及び周壁3を構成する第1の樹脂とは異なる色調とするものである。
【0042】
ここで、「色調」は、色査計(KONIKA MINOLTA CHROMA METER CR-5)にて測定することができる。前記色査計のCIE L*a*b*表色系で表す場合、第1の樹脂は無色透明なものが望ましく、明度の指標であるL*の値(値が大きいと無色に近い薄い色、小さいと黒に近い暗い色を示す)は85以上が好ましく、90以上がより好ましく、また、色相と彩度の指標であるa*b*の値は0に近い値である事が望ましく、5以下が好ましく、3以下がより好ましい。一方、第2の樹脂は、有色で、半透明から不透明なものが望ましく、L*の値が50以下であることが好ましく、35以下がより好ましく、a*b*の値は特に限定されず、適宜設定することが可能である。例として赤色では、L*a*b*の値がL*=25.00〜35.0
0、a*=3.00〜20.00、b*=-3.00〜3.00であることが望ましい。また、
第2の樹脂で形成する接眼部4の色としては、第1の樹脂で形成する底部及び周壁と異なる色調であれば、赤色に限られるものではなく、第2の樹脂で作られる部分を明確に識別できる色であれば青、緑、橙などの色を採用可能であることはいうまでもない。
【0043】
第1の樹脂で形成する洗眼用容器1の底部2及び周壁3と比較して、第2の樹脂で形成する接眼部4の色調を異なるものとすると、たとえばコンタクトレンズや眼鏡をはずして洗眼を行わなければならない場合に、裸眼では識別しにくかった容器1の開口部の周縁を接眼部4によりはっきりと認識することが可能になる。そのため、洗眼時にコンタクトレンズや眼鏡を外した場合であってもカップが見えにくくなることを防止し、洗眼液を入れるための開口部を確実に認識して洗眼液を溢さずに容器に注ぐことができるようになる。
【0044】
なお、本実施形態のような部位に応じた色調変更は、上述した第1、第2の実施の形態にも適用可能である。
つぎに、本発明の第4の実施の形態を説明する。上述したように、洗眼用容器は衛生的に使用される必要があるため、汚れが残りにくい構造とすることが要求される。そこで、本願では容器全体を一体的に成形することとしたが、本実施形態ではさらに、洗眼用容器の内面における周壁と接眼部との境界部分を面一に形成するという条件を設定する。ここで、本願発明において「面一」とは、境界部分5における接眼部4と周壁3との段差が±0.1mm以下である状態をいうものとする。このように構成することで、洗眼後の洗眼液や除去したゴミ等が境界部分に溜まってしまうことを防止して、衛生的に容器を使用することが可能となる。
【0045】
次に、本発明の第5の実施の形態について説明する。上述したように、洗眼用容器1は、その使用目的上、衛生的に使用できることが必要であるが、洗眼用容器1の底部2及び周壁3が半透明あるいは不透明な場合、洗眼により実際に目から除去されたごみ等の汚れを目視により確認しにくいので、容器1内の洗眼液が汚れたままの状態にあるのか洗浄されているのかがわからないという問題がある。そこで、本実施形態では、底部2及び周壁3を光透過性の高い透明材料で作成する。光透過性の高い透明材料は、たとえばJIS K 7136(プラスチック透明材料のヘーズの求め方)、JIS K 7361−1(プラスチック−透明材料の全光線透過率の試験方法−第1部、シングルビーム法)、あるいはJIS K 7375(プラスチック−全光線透過率および全光線反射率の求め方)、などを採用することができる。上記シングルビーム法を用いた場合、本実施形態において底部2及び周壁3の透明度は、たとえば試験片厚さ50μmで透過度85%以上が好ましく、90%以上がより好ましい。
【0046】
このような透明性の高い底部2及び周壁3を採用することで、使用者は容器内の汚れを容易に確認することができる。もちろん、本実施例のように構成された底部2及び周壁3を第1〜第4の実施の形態に採用可能である。
【0047】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいてさまざまな変更が可能である。
【実施例】
【0048】
以下、本発明の実施例について説明する。但し、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
本態様の具体的な成形方法は、一時成形側の金型内に第1の樹脂を射出成形し、周壁部及び底部を成形した後、形成された周壁部と底部から成る成形品を取り出し、二次成形側の金型にセットし、第2の樹脂を射出成形することで接眼部を形成する一般的な二色成形方法である。
【0049】
ここでは、本発明に係る実施例1〜5のサンプルと、これと比較する比較例1〜2のサンプルを準備した。ここでは、図1に示すような洗眼用容器を準備し、容器を構成する材料の硬さを変化させ、それ以外は同じ条件のサンプルを準備した。各サンプルのスペックは、以下の表1の通りである。なお、比較例2の洗眼用容器は、底部・周壁部・接眼部を第
一の樹脂のみで一体的に成形したものである。
【0050】
【表1】
【0051】
以上の結果より、第2の樹脂が軟らかいと、多少、目が引っ張られる感覚があるが洗眼液の漏れは生じない。一方、第2の樹脂の硬さが硬過ぎると、フィット感が悪くなり洗眼液の漏れが認められた。また、底部・周壁部・接眼部を第一の樹脂のみで一体成形したものも洗眼液の漏れが認められた。したがって、第1の樹脂と第2の樹脂の硬さを、接眼部の肉厚、接眼部の長さを実施例1〜5のように所定範囲内にすることで、液漏れを防止し、適度なフィット感を得ることができる。
【符号の説明】
【0052】
1 洗眼用容器
1A 目元側部分
1B 目尻側部分
1C 目元側部分1Aと目尻側部分1Bとの間の部分
2 底部
3 周壁
4 接眼部
4A 上縁部
5 境界部分
L、A、B、C 距離
TA、TB、TC 接眼部厚さ
図1
図2
図3
図4