特許第6203383号(P6203383)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6203383封止フィルム及びそれを用いた有機電子デバイスの封止方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6203383
(24)【登録日】2017年9月8日
(45)【発行日】2017年9月27日
(54)【発明の名称】封止フィルム及びそれを用いた有機電子デバイスの封止方法
(51)【国際特許分類】
   H05B 33/04 20060101AFI20170914BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20170914BHJP
   H05B 33/10 20060101ALI20170914BHJP
   B32B 7/02 20060101ALI20170914BHJP
   B32B 27/38 20060101ALI20170914BHJP
   B32B 27/18 20060101ALI20170914BHJP
   B32B 27/32 20060101ALI20170914BHJP
【FI】
   H05B33/04
   H05B33/14 A
   H05B33/10
   B32B7/02 101
   B32B27/38
   B32B27/18 Z
   B32B27/32 C
【請求項の数】21
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2016-515267(P2016-515267)
(86)(22)【出願日】2014年5月21日
(65)【公表番号】特表2016-520247(P2016-520247A)
(43)【公表日】2016年7月11日
(86)【国際出願番号】KR2014004549
(87)【国際公開番号】WO2014189291
(87)【国際公開日】20141127
【審査請求日】2016年1月19日
(31)【優先権主張番号】10-2013-0057127
(32)【優先日】2013年5月21日
(33)【優先権主張国】KR
(31)【優先権主張番号】10-2013-0057307
(32)【優先日】2013年5月21日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ヒュン・ジー・ユ
(72)【発明者】
【氏名】ヒュン・スク・キム
(72)【発明者】
【氏名】スク・キ・チャン
(72)【発明者】
【氏名】スン・ミン・イ
(72)【発明者】
【氏名】ジュン・オク・ムーン
【審査官】 濱野 隆
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/060621(WO,A2)
【文献】 特開2007−298732(JP,A)
【文献】 特表2011−526629(JP,A)
【文献】 特表2014−500586(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0240862(US,A1)
【文献】 国際公開第2011/152045(WO,A1)
【文献】 特開2002−260847(JP,A)
【文献】 特開2003−282242(JP,A)
【文献】 特開2003−282261(JP,A)
【文献】 特開2005−327522(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 33/04
B32B 7/02
B32B 27/18
B32B 27/32
B32B 27/38
H01L 51/50
H05B 33/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機電子デバイスを封止する封止フィルムであって、
前記封止フィルムは、常温で0.001〜500MPaの引張弾性率を有する亀裂防止層と、常温で500〜1000MPaの引張弾性率を有する水分防止層と、を含む封止層を含み、
前記亀裂防止層が、有機電子デバイス封止時に有機電子デバイスと接触するように形成され
前記水分防止層は水分吸着剤を含み、
前記亀裂防止層の引張弾性率は前記水分防止層の引張弾性率より低いことを特徴とする、封止フィルム。
【請求項2】
亀裂防止層及び水分防止層は、封止樹脂を含むことを特徴とする、請求項1に記載の封止フィルム。
【請求項3】
亀裂防止層は、ガラス転移温度が0℃以下の封止樹脂を含むことを特徴とする、請求項1に記載の封止フィルム。
【請求項4】
水分防止層は、ガラス転移温度が85℃以上の封止樹脂を含むことを特徴とする、請求項1に記載の封止フィルム。
【請求項5】
封止樹脂は、スチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、熱可塑性エラストマー、ポリオキシアルキレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリフェニレンサルファイド系樹脂、炭化水素の混合物、ポリアミド系樹脂、アクリレート系樹脂、エポキシ系樹脂、シリコン系樹脂、フッ素系樹脂またはこれらの混合物であることを特徴とする、請求項3に記載の封止フィルム。
【請求項6】
封止樹脂は、炭素−炭素二重結合を含むオレフィン系化合物の共重合体であることを特徴とする、請求項3に記載の封止フィルム。
【請求項7】
封止樹脂は、硬化性樹脂を含むことを特徴とする、請求項4に記載の封止フィルム。
【請求項8】
硬化性樹脂は、グリシジル基、イソシアナート基、ヒドロキシ基、カルボキシル基、アミド基、エポキシド基、環状エーテル基、サルファイド基、アセタール基及びラクトン基から選択される1つ以上の硬化性官能基を含むことを特徴とする、請求項7に記載の封止フィルム。
【請求項9】
硬化性樹脂が分子構造内で環状構造を含むエポキシ樹脂であることを特徴とする、請求項7に記載の封止フィルム。
【請求項10】
硬化性樹脂がシラン変性エポキシ樹脂であることを特徴とする、請求項7に記載の封止フィルム。
【請求項11】
封止フィルム内の全体の水分吸着剤の質量に基づいて、前記亀裂防止層には0〜20%、前記水分防止層には80〜100%の水分吸着剤を含むことを特徴とする、請求項に記載の封止フィルム。
【請求項12】
水分吸着剤は、水分反応性吸着剤、物理的吸着剤、またはこれらの混合物であることを特徴とする、請求項に記載の封止フィルム。
【請求項13】
水分反応性吸着剤は、アルミナ、金属酸化物、金属塩または五酸化リンであって、前記物理的吸着剤は、シリカ、ゼオライト、ジルコニア、チタニアまたはモンモリロナイトであることを特徴とする、請求項12に記載の封止フィルム。
【請求項14】
水分反応性吸着剤が、P、LiO、NaO、BO、CaO、MgO、LiSO、NaSO、CaSO、MgSO、CoSO、Ga(SO、Ti(SO、NiSO、CaCl、MgCl、SrCl、YCl、CuCl、CsF、TaF、NbF、LiBr、CaBr、CeBr、SeBr、VBr、MgBr、BaI、MgI、Ba(ClO、及びMg(ClOからなる群から選択された1つ以上であることを特徴とする、請求項12に記載の封止フィルム。
【請求項15】
亀裂防止層は、接着付与剤をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の封止フィルム。
【請求項16】
接着付与剤は、水素化された環状オレフィン系重合体であることを特徴とする、請求項15に記載の封止フィルム。
【請求項17】
封止層は合着層をさらに含み、前記合着層は亀裂防止層の下部に位置し、前記合着層が有機電子デバイス封止時に有機電子デバイスと接触するように形成されていることを特徴とする、請求項1に記載の封止フィルム。
【請求項18】
合着層は、封止樹脂または水分吸着剤を含むことを特徴とする、請求項17に記載の封止フィルム。
【請求項19】
基板と、前記基板上に形成された有機電子デバイスと、前記有機電子デバイスを封止する請求項1〜18のいずれか一項による封止フィルムと、を含み、前記封止フィルムが前記有機電子デバイスの全面に付着していることを特徴とする有機電子デバイスの封止製品。
【請求項20】
有機電子デバイスが有機発光ダイオードであることを特徴とする、請求項19に記載の有機電子デバイスの封止製品。
【請求項21】
上部に有機電子デバイスが形成された基板に、請求項1〜18のいずれか一項による封止フィルムが、前記有機電子デバイスの全面に付着するように適用する段階と、前記封止フィルムを硬化する段階と、を含むことを特徴とする有機電子デバイスの封止方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、封止フィルム及びそれを用いた有機電子デバイスの封止方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機電子デバイス(OED;organic electronic device)は正孔及び電子を用いて電荷の交流を発生する有機材料層を含む装置を意味しており、その例としては、光電池デバイス(photovoltaic device)、整流器(rectifier)、トランスミッター(transmitter)、及び有機発光ダイオード(OLED;organic light emitting diode)などが挙げられる。
【0003】
前記有機電子デバイスのうちの有機発光ダイオード(OLED:Organic Light Emitting Didoe)は、既存光源と比較して電力消費量が少なく、応答速度が早く、表示装置または照明の小型化に有利である。さらに、OLEDは空間活用性に優れ、各種携帯機器、モニタ、ノートパソコン、及びTVに亘る多様な分野に適用されると期待されている。
【0004】
OLEDの商用化及び用途拡大において、最も重要な問題点が耐久性問題である。OLEDに含まれた有機材料及び金属電極などは、水分などの外部的要因により非常に酸化し易くなる。よって、OLEDを含む製品は環境的要因に最も敏感である。近来にはパネルが大型化されてベゼルが短くなるにつれ、外気と有機素子までの距離が短くなって同一素材を使用して封止した場合、水分浸透による素子信頼性が低下する。短くなったベゼルを補うために水分吸着剤の含量を増量した場合に水分との反応により膨脹する絶対値が大きくなって接着破壊もしくは下部層の損傷などを招くことになる。したがって、OLEDなどのような有機電子デバイスに対する外部からの酸素または水分などの浸透を効果的に遮断するために、多様な方法が提案されている。
【0005】
従来には、金属カンやガラスに溝を有するようにキャップ状に加工し、その溝に水分吸収のための乾湿剤をパウダー状に搭載したり、フィルム状に製造されて両面テープを用いて接着する方法を使用した。
【0006】
特許文献1は、有機化合物からなる有機発光層が互いに対向する一対の電極間に置かれた構造を有する積層体と、このような積層体を外気と遮断する気密性容器と気密性容器内に配置されたアルカリ金属酸化物、アルカリ金属酸化物のような乾燥手段を有する有機EL素子を開示している。しかしながら、このような有機EL素子はその気密性容器の形状により表示装置全体の厚さが厚くなり、内部空間による物理的衝撃に弱く、大型化における防熱特性が良くない。
【0007】
特許文献2は、0.1〜200μmの粒子大きさを有する固体粒子を含む水分吸着剤及びバインダを用いて形成された吸湿層を採用した電子素子の乾燥法を開示しているが、これは水分吸着能力が十分ではなかった。水分吸着剤を取り囲むバインダの特性により硬化状態での透湿度が50g/m・day以下を満たさない場合、加速テスト進行中に、逆に水分の吸着速度が高くなり十分な性能を発揮することができない。
【0008】
これを改善するために特許文献3では、エポキシシーラントに水分吸着剤を含ませることで、有機発光素子内に流入した水分を化学的に吸着して有機発光素子に水分が浸透される速度を遅らせることはできたが、水分吸着剤が水分と反応して体積を膨張させることで、有機発光素子に物理的損傷を与え、さらに水分吸着剤として金属酸化物を使用する場合には水分と反応して強塩基性物質を作って保護層及び陰極層などに化学的損傷を負わせる。
【0009】
したがって、有機電子デバイスの要求寿命を確保し、水分の浸透を効果的に遮断しながら有機電子デバイスの損傷を低減できる封止材の開発が要求される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平9−148066号公報
【特許文献2】米国特許第6、226、890号明細書
【特許文献3】大韓民国特許出願公開第2007−0072400号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本出願は、封止フィルム、これを用いた有機電子デバイスの封止製品、及び有機電子デバイスの封止方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の実現例についてより詳細に説明する。また、本出願の説明において、関連公知の汎用的な機能または構造に関する詳細な説明は省略する。なお、添付図面は本出願の理解を助けるための概略的なもので、本出願をより明確に説明するために説明と関係ない部分は省略し、図面において、複数の層及び領域を明確に表現するために厚さを拡大して示しており、図面に表示された厚さ、大きさ、割合などにより本出願の範囲は制限されない。
【0013】
本出願は、有機電子デバイス封止用フィルムに関する。本出願の一つの態様による封止フィルムは有機電子デバイスの全面に付着するように使用される多層構造の封止層を含む。
【0014】
本明細書において、用語の「有機電子デバイス」は、互いに対向する一対の電極間に正孔及び電子を用いて電荷の交流を発生させる有機材料層を含む構造を有する物品または装置を意味し、その例としては、光電池装置、整流器、トランスミッター、及び有機発光ダイオード(OLED)などが挙げられるが、これに限らない。本出願の一実施形態において前記有機電子デバイスはOLEDとすることができる。
【0015】
本出願の1つの実現例は、水分防止層と、亀裂防止層を含む封止層とを含む封止フィルムを提供する。前記封止フィルムは、前記水分防止層及び亀裂防止層をそれぞれ1つ以上含むことができ、水分防止層及び亀裂防止層以外に別の層をさらに含むことができる。
【0016】
一実施形態において、本出願に係る封止フィルムは、有機電子デバイスを封止する封止フィルムであって、常温で0.001〜500MPaの引張弾性率を有する亀裂防止層と、常温で500〜1000MPaの引張弾性率を有する水分防止層とを含む封止層を含み、前記亀裂防止層は有機電子デバイス封止時に有機電子デバイスと接触するように形成される。すなわち前記亀裂防止層は有機電子デバイス封止時に有機電子デバイスの全面を封止するように形成される。前記亀裂防止層の引張弾性率は水分防止層の引張弾性率と比較して低くてもよい。
【0017】
本出願に係る亀裂防止層及び水分防止層は、前記引張弾性率の範囲を満たす限り、その素材は特に限定されない。本明細書において、引張弾性率は特に規定しない限り、25℃の温度で測定した引張弾性率である。また、本明細書において、引張弾性率は、特に規定しない限り、硬化可能な構造に対する引張弾性率は、硬化後に測定を行った引張弾性率である。一実施形態において、前記引張弾性率は、約100℃の温度で約120分間硬化した後に測定した引張弾性率と、照射量約1J/cm以上の紫外線を照射した後に測定した引張弾性率と、または紫外線の照射後に熱硬化をさらに進行させた後に測定した引張弾性率とを意味する。
【0018】
前述のように、亀裂防止層は、常温で0.001〜500MPaの引張弾性率を有することができ、例えば、亀裂防止層の引張弾性率は、0.001〜490Mpa、0.001〜480Mpa、0.001〜470Mpa、0.001〜460Mpa、0.001〜450Mpa、0.001〜440Mpa、0.001〜430Mpa、0.001〜420Mpa、0.001〜410Mpa、0.001〜400Mpa、0.05〜450Mpa、0.1〜450Mpa、0.2〜450Mpa、0.3〜450Mpa、0.5〜450Mpaまたは0.5〜450Mpaとすることができる。また、水分防止層の引張弾性率は、常温で500〜1000Mpa、530〜1000Mpa、550〜980Mpa、580〜950Mpa、600〜930Mpa、630〜900Mpaまたは650〜900Mpaとすることができる。前述のように、亀裂防止層の引張弾性率が水分防止層の引張弾性率よりも低いと、大面積の装置への適用に有利であって、後述する水分吸着剤の層間の割合の調節を介してフィルムに効果的な水分遮断性を付与することができる。本明細書において、用語の「水分吸着剤」は、例えば、封止フィルムに浸透した水分や湿気との化学的反応を介して上記を除去することができる物質を意味する。通常に水分吸着剤がフィルム内で水分と反応すると、水分と反応した分の体積が膨脹して応力(stress)が発生する。したがって、水分除去による膨張応力を緩和する程度の十分な弾性を有しなければ、フィルムが被着材から剥離され得る。多層構造の封止層の場合、有機素子パネルなどで界面付着特性が脆弱である、いずれか一層の層間破壊あるいはクラックが発生され得る。例えば、封止層の弾性率を低く調節すると、前記応力による剥離などを防止することができる。すなわち、上記のように弾性率が互いに異なる2つの層を積層させ、弾性率が低い亀裂防止層を有機電子デバイスと接触するように位置させると、水分防止層の水分吸着剤が水分と反応して応力が発生しても、前記亀裂防止層が前記応力を緩和する役割をする。また、これと共に、フィルムの耐久性のような多様な物性も満たすことができる。
【0019】
本出願の具体例において、前記封止層は、100μm厚さのフィルム状に製造された状態で前記フィルムの厚さ方向に対して測定した透湿度(Water Vapor Transmission Rate)が100°F及び100%の相対湿度下で50g/m・day以下、40g/m・day以下、30g/m・day以下、20g/m・day以下または10g/m・day以下とすることができる。このような透湿度を有するように、封止層を構成して、電子装置の封止またはカプセル化構造に適用された場合に外部から浸透する水分や酸素などを効果的に遮断して素子を安定的に保護できる封止またはカプセル化構造を実現することができる。前記透湿度は、低いほど優れる水分遮断性を示すので、その下限を特に限定しないが、例えば、0g/m・dayとすることができる。
【0020】
本明細書において、用語の「封止層」は、封止フィルムを構成するすべての層を意味する。すなわち、本明細書において、用語の「封止層」は前述の水分防止層、亀裂防止層、または後述する合着層のそれぞれを意味し、各層をすべて含む多層構造を意味する。
【0021】
封止フィルムは、多様な構造を有し、例えば、水分防止層の一面に亀裂防止層が配置されている構造または水分防止層の両面に亀裂防止層が配置されている構造などが可能である。ここで、水分防止層の一面または両面に亀裂防止層が配置されている構造には、水分防止層に亀裂防止層が直接的に付着している構造と、水分防止層に別の他の層を媒介に亀裂防止層が間接的に付着している構造とが含まれる。
【0022】
本出願の具体例において、封止フィルムの亀裂防止層及び水分防止層は、封止樹脂または水分吸着剤を含む。本明細書において、用語の「封止樹脂」は、水分防止層、亀裂防止層または合着層を構成するベース樹脂を意味する。例えば、前記亀裂防止層は、ガラス転移温度が0℃以下の封止樹脂を含むことができる。また、前記水分防止層は、ガラス転移温度が85℃以上の封止樹脂を含むことができる。ただし、これに限定されず、前述の弾性率を満たす限り、亀裂防止層はガラス転移温度が85℃以上の封止樹脂を含むことができ、逆に水分防止層はガラス転移温度が0℃以下の封止樹脂を含むことができる。
【0023】
このような多層構造の封止層を介して、有機電子デバイスの要求寿命を確保し、水分の浸透を効果的に遮断しながら有機電子デバイスの化学的、物理的損傷を防止することができる。前記封止層を亀裂防止層と水分防止層とに区分して多層構造を有する方法は、多層構造の封止層を形成する方法であるなら、当該技術分野で用いる方法を制限なく用いることができる。また、前記封止層の亀裂防止層、水分防止層、及び合着層を構成する成分、例えば、封止樹脂、水分吸着剤、粘着付与剤、硬化剤、その他の添加剤またはフィラーの種類及び含量などは、それぞれ同一か相互に異なってもよい。
【0024】
すなわち、封止層を構成する成分としては、前述した引張弾性率を満足する封止層を提供できれば特に制限なしに当業者に公知の素材を使用することが可能である。また、前記引張弾性率を満たさなくても組み合わせによって前記引張弾性率を満たすことができれば封止層を構成する成分として用いることができる。
【0025】
本出願の具体例において、封止樹脂は、ガラス転移温度が0℃以下、例えば、−10℃以下、−20℃以下、−30℃以下、または−40℃以下の樹脂とすることができる。さらに他の例示において、封止樹脂は、ガラス転移温度が85℃以上、90℃以上、95℃以上、または100℃以上の樹脂とすることができる。本明細書において、ガラス転移温度は特に規定しない限り、約100℃の温度で約120分間硬化した後のガラス転移温度;照射量約1J/cm以上の紫外線を照射した後のガラス転移温度;または紫外線の照射後に熱硬化をさらに進行させた後のガラス転移温度を意味する。
【0026】
一実施形態において、ガラス転移温度が0℃以下の封止樹脂は、スチレン系樹脂またはエラストマー、ポリオレフィン系樹脂またはエラストマー、その他のエラストマー、ポリオキシアルキレン系樹脂またはエラストマー、ポリエステル系樹脂またはエラストマー、ポリ塩化ビニル系樹脂またはエラストマー、ポリカーボネート系樹脂またはエラストマー、ポリフェニレンサルファイド系樹脂またはエラストマー、炭化水素の混合物、ポリアミド系樹脂またはエラストマー、アクリレート系樹脂またはエラストマー、エポキシ系樹脂またはエラストマー、シリコン系樹脂またはエラストマー、フッ素系樹脂またはエラストマーまたはこれらの混合物などを含むことができる。
【0027】
上記において、スチレン系樹脂またはエラストマーとしては、例えば、スチレン−エチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(ABS)、アクリロニトリル−スチレン−アクリレートブロック共重合体(ASA)、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン系単独重合体またはこれらの混合物が例示され得る。前記オレフィン系樹脂またはエラストマーとしては、例えば、高密度ポリエチレン系樹脂またはエラストマー、低密度ポリエチレン系樹脂またはエラストマー、ポリプロピレン系樹脂またはエラストマーまたはこれらの混合物が例示され得る。前記エラストマーとしては、例えば、エステル系熱可塑性エラストマー、オレフィン系エラストマー、シリコン系エラストマー、アクリル系エラストマーまたはこれらの混合物などが用いられる。その中にオレフィン系熱可塑性エラストマーとしてポリブタジエン樹脂またはエラストマーまたはポリイソブチレン樹脂またはエラストマーなどが用いられる。前記ポリオキシアルキレン系樹脂またはエラストマーとしては、例えば、ポリオキシメチレン系樹脂またはエラストマー、ポリオキシエチレン系樹脂またはエラストマーまたはこれらの混合物などが例示され得る。前記ポリエステル系樹脂またはエラストマーとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート系樹脂またはエラストマー、ポリブチレンテレフタレート系樹脂またはエラストマーまたはこれらの混合物などが例示され得る。前記ポリ塩化ビニル系樹脂またはエラストマーとしては、例えば、ポリビニリデンクロライドなどが例示され得る。前記炭化水素の混合物としては、例えば、ヘキサトリアコンタン(hexatriacotane)またはパラフィンなどが例示され得る。前記ポリアミド系樹脂またはエラストマーとしては、例えば、ナイロンなどが例示され得る。前記アクリレート系樹脂またはエラストマーとしては、例えば、ポリブチル(メタ)アクリレートなどが例示され得る。前記エポキシ系樹脂またはエラストマーとしては、例えば、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ビスフェノールS型、及びこれらの水添加物などのビスフェノール型;フェノールノボラック型やクレゾールノボラック型などのノボラック型;トリグリシジルイソシアヌレート型やヒダントイン型などの含窒素環型;脂環式型;脂肪族型;ナフタレン型、ビフェニール型などの芳香族型;グリシジルエテル型、グリシジルアミン型、グリシジルエステル型などのグリシジル型;ジシクロペンタジエン型などのジシクロ型;エステル型;エーテルエステル型、またはこれらの混合物などが例示され得る。前記シリコン系樹脂またはエラストマーとしては、例えば、ポリジメチルシロキサンなどが例示され得る。また、前記フッ素系樹脂またはエラストマーとしては、ポリトリフルオロエチレン樹脂またはエラストマー、ポリテトラフルオロエチレン樹脂またはエラストマー、ポリクロロトリフルオロエチレン樹脂またはエラストマー、ポリヘキサフルオロプロピレン樹脂またはエラストマー、ポリフルオレン化ビニリデン、ポリフルオレン化ビニル、ポリフルオレン化エチレンプロピレンまたはこれらの混合物などが例示され得る。
【0028】
前述の樹脂またはエラストマーは、例えば、マレン酸無水物などとグラフトされて用いることができ、前述以外の樹脂またはエラストマーあるいは樹脂またはエラストマーを製造するための単量体と共重合されて用いることができ、その他に異なる化合物によって変性させて用いることもできる。前記異なる化合物の例としては、カルボキシル−末端ブタジエン−アクリロニトリル共重合体などが挙げられる。
【0029】
一具体例において、前記封止樹脂として、炭素−炭素二重結合を含むオレフィン系化合物の共重合体を含むことができるが、これに限らない。
【0030】
また、前記封止樹脂は、ジエン及び1つの炭素−炭素二重結合を含むオレフィン系化合物の共重合体とすることができる。ここで、オレフィン系化合物は、イソブチレン、プロピレンまたはエチレンなどを含むことができ、ジエンは前記オレフィン系化合物と重合可能な単量体とすることができ、例えば、1−ブテン、2−ブテン、イソプレンまたはブタジエンなどを含むことができる。すなわち、本発明の封止樹脂は、例えば、イソブチレン単量体の単独重合体;イソブチレン単量体と重合可能な他の単量体を共重合した共重合体;またはこれらの混合物などが用いられる。一実施形態において、1つの炭素−炭素二重結合を含むオレフィン系化合物及びジエンの共重合体はブチルゴムとすることができる。
【0031】
前記封止樹脂は、フィルム状に成形が可能な程度の重量平均分子量(Mw:Weight Average Molecular Weight)を有することができる。例えば、前記樹脂は、約10万〜200万、10万〜150万または10万〜100万程度の重量平均分子量を有することができる。本明細書において、用語の重量平均分子量は、GPC(Gel Permeation Chromatograph)で測定した標準ポリスチレンに対する換算数値を意味する。ただし、前記言及した重量平均分子量を前記樹脂またはエラストマー成分が必ずしも有しなくてもよい。例えば、樹脂またはエラストマー成分の分子量がフィルムを形成するほどの水準でなければ、別のバインダ樹脂が封止層を構成する成分として配合され得る。
【0032】
さらに他の例示において、ガラス転移温度が85℃以上の封止樹脂は、硬化性樹脂を含むことができる。一実施形態において、前述の封止層の水分防止層を構成する成分は、水分防止層が前記引張弾性率またはガラス転移温度を満たす限り、特に限定されないが、例えば、硬化性樹脂を含むことができる。
【0033】
本出願で用いられる硬化性樹脂の具体的な種類は、特に制限されず、例えば、この分野で公知の多様な熱硬化性または光硬化性樹脂が用いられる。用語の「熱硬化性樹脂」は、適切な熱の印加または成熟(aging)工程を介して、硬化され得る樹脂を意味し、用語の「光硬化性樹脂」は、電子波の照射で硬化され得る樹脂を意味する。また、前記において電子波の範疇には、マイクロ波(microwaves)、赤外線(IR)、紫外線(UV)、X線、及びγ線は勿論、α−粒子線(α−particle beam)、プロトンビーム(proton beam)、中性子ビーム(neutron beam)、及び電子ビーム(electron beam)のような粒子ビームなどが含まれる。本出願において、光硬化型樹脂の一例としては、陽イオン光硬化型樹脂を有することができる。陽イオン光硬化型樹脂は、電子波の照射で誘導された陽イオン重合または陽イオン硬化反応によって硬化され得る樹脂を意味する。また、前記硬化性樹脂は、熱硬化と光硬化の特性をすべて含むデュアル硬化型樹脂とすることができる。
【0034】
本出願において、硬化性樹脂の具体的な種類は、前述の特性を有するものであれば、特に制限されない。例えば、硬化されて接着特性を示すもので、グリシジル基、イソシアナート基、ヒドロキシ基、カルボキシル基、またはアミド基などのような熱硬化可能な官能基を1つ以上含むか、あるいはエポキシド(epoxide)基、環状エーテル(cyclic ether)基、サルファイド(sulfide)基、アセタール(acetal)基またはラクトン(lactone)基などのような電子波の照射で硬化可能な官能基を1つ以上含む樹脂を有することができる。また、前記のような樹脂の具体的な種類としては、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、イソシアネート樹脂またはエポキシ樹脂などが含まれるが、これに限らない。
【0035】
本出願では前記硬化性樹脂として、芳香族または脂肪族;または直鎖型または分枝鎖型のエポキシ樹脂が用いられる。本出願の一具現例では、2つ以上の官能基を含むものであって、エポキシ当量が180〜1、000g/eqのエポキシ樹脂が用いられる。前記範囲のエポキシ当量を有するエポキシ樹脂を使用することで、硬化物の接着性及びガラス転移温度などの特性を効果的に維持することができる。このようなエポキシ樹脂の例としては、クレゾールノボラックエポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型ノボラックエポキシ樹脂、フェノールノボラックエポキシ樹脂、4官能性エポキシ樹脂、ビフェニール型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、アルキル変性トリフェノールメタンエポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂またはジシクロペンタジエン変性フェノール型エポキシ樹脂の1種または2種以上の混合が挙げられる。
【0036】
本出願において、好ましくは分子構造内に環状構造を含むエポキシ樹脂が用いられ、より好ましくは芳香族基(例えば、フェニル基)を含むエポキシ樹脂が用いられる。エポキシ樹脂が芳香族基を含む場合、硬化物が優れた熱的及び化学的安定性を有しながら、低い吸湿量を示し、有機電子デバイス封止構造の信頼性を向上させることができる。本出願で用いる芳香族基含有のエポキシ樹脂の具体的な例としては、ビフェニール型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール型エポキシ樹脂、クレゾール系エポキシ樹脂、ビスフェノール系エポキシ樹脂、ザイロック系エポキシ樹脂、多官能エポキシ樹脂、フェノールノボラックエポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、及びアルキル変性トリフェノールメタンエポキシ樹脂などの1種または2種以上を混合することができるが、これに限らない。
【0037】
本出願において、最も好ましくは、前記エポキシ樹脂としてシラン変性エポキシ樹脂、好ましくは芳香族基を有するシラン変性エポキシ樹脂が用いられる。このようにシランに変性されて構造的にシラン基を有するエポキシ樹脂を用いる場合、有機電子デバイスのガラス基板または基板無機材などとの接着性を極大化させ、さらに水分バリア性や耐久性及び信頼性などを向上させることができる。本出願で用いる前記のようなエポキシ樹脂の具体的な種類は特に制限されることなく、このような樹脂は、例えば、国都化学などのような仕入先から容易に購入することができる。
【0038】
本出願の具現例では、有機電子デバイスを封止する封止フィルムが封止層を含んでいて、前記封止層が有機電子デバイスの封止時に有機電子デバイスと接触する亀裂防止層と有機電子デバイスと接触しない水分防止層を含む多層構造を有する。また、前記封止フィルム内の全体の水分吸着剤の質量に基づいて前記亀裂防止層には、0〜20%、0〜18%、0〜16%、0〜14%、0〜12%、0〜10%、0〜8%、0〜6%、0〜4%、または0〜2%の水分吸着剤が含まれる。さらに、前記水分防止層には、80〜100%、82〜100%、84〜100%、86〜100%、88〜100%、90〜100%、92〜100%、94〜100%、96〜100%、または98〜100%の水分吸着剤が含まれる。有機電子デバイスに近い亀裂防止層に水分吸着剤の含量が20%を超える場合、水分吸着剤が異物のように有機電子デバイスを押して物理的損傷を誘発することができ、水分との反応後にイオン性物質が過量に排出されて陰極あるいは無機保護膜の化学的損傷を誘発することができる。
【0039】
用語の「水分吸着剤」は、前述のように、物理的または化学的反応などを介して、外部から流入する水分や湿気を吸着または除去する成分を総称する意味として使用される。すなわち、水分反応性吸着剤または物理的吸着剤を意味し、その混合物も使用可能である。
【0040】
前記水分反応性吸着剤は、封止層内部に流入した湿気、水分または酸素などと化学的に反応して水分や湿気を吸着する。前記物理的吸着剤は、封止構造に浸透する水分や湿気の移動経路を長くしてその浸透を抑制することができ、封止樹脂のマトリクス構造と水分反応性吸着剤などとの相互作用を介して水分や湿気に対する遮断性を極大化することができる。
【0041】
本出願に用いる水分吸着剤の具体的な種類は特に制限されなく、例えば、水分反応性吸着剤の場合、アルミナなどの金属粉末、金属酸化物、金属塩または五酸化リン(P)などの1種または2種以上の混合物が挙げられ、物理的吸着剤の場合、シリカ、ゼオライト、チタニア、ジルコニアまたはモンモリロナイトなどが挙げられる。
【0042】
前記において、金属酸化物の具体的な例としては、五酸化リン(P)、リチウム酸化物(LiO)、酸化ナトリウム(NaO)、酸化バリウム(BaO)、酸化カルシウム(CaO)またはマグネシウム酸化物(MgO)などが挙げられ、金属塩の例としては、硫酸リチウム(LiSO)、硫酸ナトリウム(NaSO)、硫酸カルシウム(CaSO)、硫マグネシウム(MgSO)、硫酸コバルト(CoSO)、硫酸ガリウム(Ga(SO)、硫酸チタン(Ti(SO)または硫酸ニッケル(NiSO)などのような硫酸塩、塩化カルシウム(CaCl)、塩化マグネシウム(MgCl)、塩化ストロンチウム(SrCl)、塩化イットリウム(YCl)、塩化銅(CuCl)、フッ化セシウム(CsF)、フッ化タンタル(TaF)、フッ化ニオビウム(NbF)、臭化リチウム(LiBr)、臭化カルシウム(CaBr)、臭化セシウム(CeBr)、臭化セレニウム(SeBr)、臭化バナジウム(VBr)、臭化マグネシウム(MgBr)、沃化バリウム(BaI)または沃化マグネシウム(MgI)などのような金属ハロゲン化物;または過塩素酸バリウム(Ba(ClO)または過塩素酸マグネシウム(Mg(ClO)などのような金属塩素酸塩などが挙げられるが、これに限らない。
【0043】
本出願においては、前記金属酸化物などのような水分吸着剤を適切に加工した状態で組成物に配合することができる。例えば、封止フィルムを適用しようとする有機電子デバイスの種類に応じて封止層の厚さが30μm以下の薄膜とすることができ、この場合に水分吸着剤の粉砕工程が必要とされる。水分吸着剤の粉砕には、3ロールミル、ビードミルまたはボールミルなどの工程が用いられる。また、本出願の封止フィルムが上部発光(top emission)型の有機電子デバイスなどに用いる場合、封止層自体の透過度が最も重要となり、水分吸着剤の大きさが小さくなる必要がある。したがって、そのような用途からも粉砕工程が要求され得る。
【0044】
本出願における封止層の水分防止層は、水分吸着剤を封止樹脂100重量部に対して、1〜100重量部、好ましくは5〜50重量部の量で含むことができる。水分吸着剤の含量を5重量部以上に制御して、封止層が優れた水分や湿気遮断性を示すことができる。さらに、水分吸着剤の含量を50重量部以下に制御して、薄膜の封止構造を形成しながら、優れた水分遮断特性を示すことができる。
【0045】
本明細書において、特に規定しない限り、単位の「重量部」は各成分間の重量比率を意味する。
【0046】
また、これにより本出願の封止層の亀裂防止層は、水分吸着剤を封止樹脂100重量部に対して、0〜10重量部の量で含むことができる。水分吸着剤が0重量部の場合には、前記亀裂防止層には水分吸着剤がなく、水分防止層だけに水分吸着剤が存在することになる。水分吸着剤の含量を10重量部以下に制御することで、水分遮断特性を極大化しながら有機電子デバイスに対する水分吸着剤による物理的、化学的損傷を最小化することができる。
【0047】
本出願の具体例において、前記封止フィルムの封止層が合着層をさらに含むことができる。前記合着層が亀裂防止層の下部に含まれることができ、その場合に前記合着層が有機電子デバイスを封止する際、有機電子デバイスと接触するように形成される。前記合着層は前述の封止樹脂または水分吸着剤を含むことができる。例えば、合着層は前述の硬化性樹脂を含むことができる。前記合着層は、亀裂防止層または水分防止層が有機電子素子に封止時に合着性及び工程性を向上させる役割を果たすことができる。
【0048】
本出願の具体例において、封止層は封止樹脂の種類に応じて、接着付与剤をさらに含むことができる。例えば、前記亀裂防止層は前述の封止樹脂以外にも接着付与剤をさらに含むことができる。接着付与剤としては、例えば、石油樹脂を水素化して得られる水素化した石油樹脂が用いられる。水素化した石油樹脂は部分的または完全に水素化されることができ、そのような樹脂の混合物とすることができる。このような接着付与剤は、封止層を構成する成分と相溶性が優れながらも水分遮断性が優れるものを選択することができる。水素化した石油樹脂の具体的な例としては、水素化したテルペン系樹脂、水素化したエステル系樹脂または水素化したジシクロペンタジエン系樹脂などが挙げられる。前記接着付与剤の重量平均分子量は約200〜5、000であってもよい。前記接着付与剤の含量は必要に応じて適切に調節することができる。例えば、接着付与剤は、封止樹脂100重量部対に対して5〜100重量部の割合で第1層に含まれ得る。
【0049】
封止層には、前述した構造以外にもフィルムの用途及びフィルムの製造工程によって多様な添加剤が含まれ得る。例えば、耐久性及び工程性などを考慮して亀裂防止層には硬化性物質がさらに含まれ得る。ここで硬化性物質は、前述した亀裂防止層を構成する成分以外に別に含まれる熱硬化性官能基及び/または活性エネルギー線硬化性官能基を有する物質を意味することができる。また、亀裂防止層に含まれる硬化性物質の含量はフィルムの目的とする物性に応じて調節し得る。
【0050】
本出願の具体例において、封止層は封止樹脂の種類に応じて、硬化剤をさらに含むことができる。例えば、前述の封止樹脂と反応して、架橋構造などを形成する硬化剤または前記樹脂の硬化反応を開始することができる開始剤をさらに含むことができる。
【0051】
硬化剤は、封止樹脂またはその樹脂に含まれる官能基の種類に応じて適切な種類が選択及び使用される。
【0052】
一実施形態において封止樹脂がエポキシ樹脂の場合、硬化剤としては、この分野で公知されているエポキシ樹脂の硬化剤であって、例えば、アミン硬化剤、イミダゾール硬化剤、フェノール硬化剤、リン硬化剤または酸無水物硬化剤などの1種または2種以上が用いられるが、これに限らない。
【0053】
一実施形態において、前記硬化剤としては、常温で固相であり、融点または分解温度が80℃以上のイミダゾール化合物が用いられる。このような化合物としては、例えば、2−メチルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾールまたは1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾールなどが例示され得るが、これに限らない、
【0054】
硬化剤の含量は、組成物の組成、例えば、封止樹脂の種類や比率に応じて選択され得る。例えば、硬化剤は、封止樹脂100重量部に対して、1〜20重量部、1〜10重量部または1〜5重量部で含むことができる。しかしながら、前記重量比率は、封止樹脂またはその樹脂の官能基の種類や比率、または実現しようとする架橋密度などによって変更され得る。
【0055】
封止樹脂が活性エネルギー線の照射で硬化され得る樹脂の場合、開始剤としては、例えば、陽イオン光重合開始剤が用いられる。
【0056】
陽イオン光重合開始剤としては、オニウム塩(onium salt)または有機金属塩(organometallic salt)系列のイオン化陽イオン開始剤または有機シランまたは潜在性硫酸(latent sulfonic acid)系列や非イオン化陽イオン光重合開始剤が用いられる。オニウム塩系列の開始剤としては、ジアリールヨードニウム塩(diaryliodonium salt)、トリアリールスルホニウム塩(triarylsulfonium salt)またはアリールジアゾニウム塩(aryldiazonium salt)などが例示され、有機金属塩系列の開始剤としては、鉄アレーン(iron arene)などが例示され、有機シラン系列の開始剤としては、o−ニトリルベンジルトリアリールシリルエーテル(o−nitrobenzyl triaryl silyl ether)、トリアリールシリルパーオキシド(triaryl silyl peroxide)またはアシルシラン(acyl silane)などが例示され、潜在性硫酸系列の開始剤としては、α−スルホニルオキシケトンまたはα−ヒドロキシメチルベンゾのスルホネートなどが例示され得るが、これに限らない。
【0057】
一実施形態から陽イオン開始剤としては、イオン化陽イオン光重合開始剤が用いられる。
【0058】
また、封止樹脂が活性エネルギー線の照射で硬化され得る樹脂である場合、開始剤としては、例えば、ラジカル開始剤が用いられる。
【0059】
ラジカル開始剤は、光開始剤または熱開始剤とすることができる。光開始剤の具体的な種類は、硬化速度及び黄変可能性などを考慮して適切に選択され得る。例えば、ベンジイン系、ヒドロキシケトン系、アミノケトン系またはフォスフィンオキシド系光開始剤などが用いられ、具体的には、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインn−ブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、アセトフェノン、ジメチルアニノアセトフェノン、2、2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2、2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノ−プロパン−1−オン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−2−(ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、ベンゾフェノン、p−フェニルベンゾフェノン、4、4’−ジエチルアミノベンゾフェノン、ジクロロベンゾフェノン、2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン、2−アミノアントラキノン、2−メチルチオキサントン(thioxanthone)、2−エチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2、4−ジメチルチオキサントン、2、4−ジエチルチオキサントン、ベンジルジメチルケタル、アセトフェノンジメチルケタル、p−ジメチルアミノ安息香酸エステル、オリゴ[2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパンノン]及び2、4、6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−ホスフィンオキシドなどが用いられる。
【0060】
開始剤の含量は、硬化剤の場合のように、封止樹脂またはその樹脂の官能基の種類及び比率、または実現しようとする架橋密度などによって変更され得る。例えば、前記開始剤は、封止樹脂100重量部に対して、0.01〜10重量部または0.1〜3重量部の割合で配合され得る。
【0061】
封止層には、前述した構造以外にもフィルムの用途及びフィルムの製造工程に応じて多様な物質が含まれ得る。例えば、封止層をフィルムまたはシート状に成形する際に成形性などを考慮して、水分防止層にはバインダ樹脂を含むことができる。
【0062】
本出願の具体例において、前記封止層はフィラー、好ましくは無機フィラーを含むことができる。フィラーは、封止構造に浸透する水分や湿気の移動経路を長くしてその浸透を抑制することができ、封止樹脂及び水分吸着剤などとの相互作用を介して水分や湿気に対する遮断性を極大化することができる。本出願に用いるフィラーの具体的な種類は特に制限なく、例えば、クレイ、タルクまたは針状シリカなどの1種または2種以上の混合が用いられる。
【0063】
本出願では、さらに、フィラー及び有機バインダとの結合有効性を高めるために、前記フィラーとして有機物質で表面処理された製品を用いるか、さらにカップリング剤を添加して用いることができる。
【0064】
本出願の封止層は、封止樹脂100重量部に対して1〜50重量部、好ましくは1〜20重量部のフィラーを含むことができる。フィラー含量を1重量部以上に制御して、優れた水分や湿気遮断性及び機械的物性を有する硬化物を提供することができる。また、本出願においてフィラー含量を50重量部以下に制御することで、フィルム状の製造が可能であり、薄膜に形成された場合にも優れた水分遮断特性を示す封止構造を提供することができる。
【0065】
本出願の封止フィルムの構造は、前記亀裂防止層及び水分防止層が含まれていれば、特に制限されないが、一例として、基材フィルムまたは離型フィルム(以下、「第1フィルム」と称する場合がある);及び前記基材フィルムまたは離型フィルム上に形成される前記封止層を含む構造を有することができる。
【0066】
本出願の封止フィルムは、また前記封止層上に形成された基材フィルムまたは離型フィルム(以下、「第2フィルム」と称する場合がある)をさらに含むことができる。
【0067】
図1ないし図3は、本出願の一実施形態に係る封止フィルムの断面図を示す図である。
【0068】
本出願の封止フィルムは、図1及び図2に示すように、基材フィルムまたは離型フィルム11上に形成された封止層12を含むことができる。図1は、本出願の封止フィルムに含まれる封止層12が水分防止層12b及び亀裂防止層12aを含み、水分防止層12bだけに水分吸着剤13が存在することを図示している。また、図2は、封止層12が、亀裂防止層12a、水分防止層12b及び合着層(12c)を含む場合を示している。
【0069】
本出願の他の態様では、図3に示すように、本出願の封止フィルムは、前記封止層12上に形成された基材フィルムまたは離型フィルム14をさらに含むことができる。しかし、前記図面に示す封止フィルムは本出願の一態様に過ぎず、封止層の亀裂防止層、水分防止層及び合着層の積層順序は必要に応じて変化され得る。
【0070】
本出願に用いる前記第1フィルムの具体的な種類は特に限定されない。本出願では前記第1フィルムとして、例えば、この分野の一般的な高分子フィルムが用いられる。本出願では、例えば、前記基材または離型フィルムとして、ポリエチレンテレフタレート膜、ポリテトラフルオロエチレンフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリブテンフィルム、ポリブタジエンフィルム、塩化ビニル共重合体フィルム、ポリウレタンフィルム、エチレン−ビニルアセタートフィルム、エチレン−プロピレン共重合体フィルム、エチレン−アクリル酸エチル共重合体フィルム、エチレン−アクリル酸メチル共重合体フィルムまたはポリイミドフィルムなどが用いられる。また、本出願の前記基材フィルムまたは離型フィルムの一面または両面には適切な離型処理が行われる。基材フィルムの離型処理に用いる離型剤の例としては、アルキド系、シリコン系、フッ素系、不飽和エステル系、ポリオレフィン系またはワックス系などが用いられ、その中で、耐熱性測面からアルキド系、シリコン系またはフッ素系離型剤を用いるのが好ましいが、これに限らない。
【0071】
さらに、本出願に用いる第2フィルム(以下、「カバーフィルム」と称する場合がある)の種類も特に限定されない。例えば、本出願では、前記第2フィルムとして、前述の第1フィルムで例示した範疇内において、第1フィルムと同一または異なった種類が用いられる。さらに本出願においては、前記第2フィルムにも適切な離型処理を行って用いることができる。
【0072】
本出願において、前記のような基材フィルムまたは離型フィルム(第1フィルム)の厚さは特に限定されず、適用する用途に応じて適切に選択され得る。例えば、本出願において前記第1フィルムの厚さは、10〜500μm、好ましくは20〜200μm程度とすることができる。前記厚さが10μm未満であれば製造過程で基材フィルムの変形が生じやすく、500μmを超えると経済性が低下する。
【0073】
また、本出願において前記第2フィルムの厚さも特に制限されない。本出願においては、例えば、前記第2フィルムの厚さを第1フィルムと同じく設定することができる。本出願においては、さらに工程性などを考慮して第2フィルムの厚さを第1フィルムと比較して相対的に薄く設定することができる。
【0074】
本出願の封止フィルムに含まれる封止層の厚さは特に制限されず、前記フィルムが適用される用途を考慮し、下記の条件によって適切に選択することができる。ただし、封止層の亀裂防止層が水分防止層と比較して厚さが薄いことが好ましい。本出願の封止フィルムに含まれる封止層は、例えば、封止層の亀裂防止層の厚さは1〜20μm、好ましくは2〜15μm程度とすることができる。前記厚さが1μm未満の場合は、例えば、本出願の封止フィルムが有機電子デバイスの封止材として用いられる際に、封止層の水分防止層の損傷因子から保護する能力が低下する恐れがあり、20μmを超える場合には封止層の水分防止層の水分遮断能力の有効性を低下させることになる。封止層の水分防止層の厚さは、5〜200μm、好ましくは5〜100μm程度とすることができる。水分防止層の厚さが5μm未満の場合には十分な水分遮断能力を発揮することができず、200μm超える場合には工程性を確保することが困難であり、水分反応性によって厚さ膨張が大きく有機発光素子の蒸着膜に損傷を与えるので経済性が低下する。
【0075】
本出願は、また封止フィルムの製造方法に関する。例示的な封止フィルムは、前記封止層をフィルムまたはシート状に成形することを含む。
【0076】
一実施形態において前記方法は、前述の封止層を構成する成分を含むコーティング液を、基材または離型フィルム上にシートまたはフィルム状に適用し、前記適用されたコーティング液を乾燥することを含む。前記製造方法は、さらに乾燥したコーティング液上に追加的に基材または離型フィルムを付着することを含む。
【0077】
コーティング液は、例えば、前記記述した各封止層の成分を適切な溶媒に溶解または分散させて製造することができる。一実施形態において前記封止層は、必要に応じて前記水分吸着剤またはフィラーを溶媒に溶解または分散させ、粉碎した後に粉砕された前記水分吸着剤またはフィラーを封止樹脂と混合することを含む方式で製造することができる。
【0078】
コーティング液製造に用いる溶剤の種類は特に限定されない。ただし、溶剤の乾燥時間が長すぎるか、または高温での乾燥が必要な場合、作業性または封止フィルムの耐久性測面から問題が生じるので、揮発温度が150℃以下の溶剤が用いられる。フィルム成形性などを考慮して、前記範囲以上の揮発温度を有する溶剤を少量混合して用いることができる。溶剤としては、メチルエチルケトン(MEK)、アセトン、トルエン、ジメチルホルムアミド(DMF)、メチルセロソルブ(MCS)、テトラヒドロフラン(THF)、キシレンまたはN−メチルピロリドン(NMP)などの1種または2種以上が例示され得るが、これに限らない。
【0079】
前記コーティング液を基材または離型フィルムに適用する方法は特に限定されず、例えば、ナイフコート、ロールコート、スプレーコート、グラビアコート、カーテンコート、コンマコートまたはリップコートなどのような公知のコーティング方式を適用することができる。
【0080】
適用したコーティング液を乾燥し、溶剤を揮発させて封止層を形成することができる。前記乾燥は、例えば、70〜150℃の温度で1〜10分間行う。前記乾燥の条件は、使用する溶剤の種類を考慮して変更することができる。
【0081】
乾燥に続いて封止層上に追加的な基材または離型フィルムを形成することができる。
【0082】
本出願の他の具現例は、基板と、前記基板上に形成された有機電子デバイスと、前記有機電子デバイスを封止する前述の封止フィルムとを含み、前記封止フィルムが前記有機電子デバイスの前面に付着される有機電子デバイス封止製品に関する。
【0083】
本出願において有機電子デバイスは有機発光ダイオードとすることができる。
【0084】
前記有機電子デバイス封止製品は、前記封止フィルムと有機電子デバイスとの間に前記有機電子デバイスを保護する保護膜をさらに含む。
【0085】
前記有機電子デバイス封止製品において前記封止フィルム上に、封止フィルムをカバーするカバー基板をさらに含むことができる。基板及びカバー基板は互いに対向するように配置される。また、有機電子デバイスは基板の一面に形成され、基板の一面はカバー基板と対向する面とすることができる。フィルムは基板とカバー基板との間に位置し、フィルムの亀裂防止層は、有機電子デバイスが形成されている基板と接するように位置することができる。このような構造において封止フィルムは、実質的に前記有機電子デバイスの全面を覆ってもよい。一実施形態において、図4のように、フィルムは亀裂防止層12a及び水分防止層12bを含み、亀裂防止層12aが有機電子デバイス25と基板21と接するように配置され得る。さらに、カバー基板24は水分防止層12b上に位置することができる。
【0086】
本出願のさらに他の具現例は、上部に有機電子デバイスが形成された基板に前述の封止フィルムが前記有機電子デバイス全面に付着するように適用する段階と、前記封止フィルムを硬化する段階とを含む有機電子デバイスの封止方法に関する。
【0087】
前記封止フィルムを前記有機電子デバイスに適用する段階は、封止フィルムのホットロ−ルラミネート、熱圧着(hot press)または真空圧着方法で行うことができ、特に制限されない。
【0088】
また、追加封止材料のガラスや金属などに、前記封止フィルムの水分防止層が接するように付着する段階を追加することができる。
【0089】
本出願において、有機電子デバイスの封止方法は、例えば、ガラスまたは高分子フィルムのような基板上に真空蒸着またはスパッタリングなどの方法で透明電極を形成し、前記透明電極上に有機材料層を形成する。前記有機材料層は、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子注入層及び/または電子輸送層を含むことができる。続いて、前記有機材料層上に第2電極をさらに形成する。その後、前記基板21上の有機電子デバイス25上部に前記有機電子デバイス25をすべてカバーできるように前述の封止フィルムを適用する。このとき、前記封止フィルムを適用する方法は特に限定されず、例えば、基板21上に形成された有機電子デバイス25の上部に、本出願の封止フィルムの封止層を事前に転写していたカバー基板(例えば、ガラスまたは高分子フィルム)24を加熱、圧着などの方法で適用することができる。前記段階では、例えば、カバー基板24上に封止フィルムを転写する際、前述の本出願の封止フィルムを用いて前記フィルムに形成された基材または離型フィルムを剥離した後、熱を加えながら、真空プレスまたは真空ラミネータなどを用いてカバー基板24上に転写することができる。この過程において、封止フィルムの硬化反応が所定範囲以上行われると、封止フィルムの密着力または接着力の減少する恐れがあるので、工程温度を約100℃以下、工程時間を5分以内に制御することが好ましい。同様に、封止フィルムが転写されたカバー基板24を有機電子デバイスに加熱圧着する場合も、真空プレスまたは真空ラミネートを用いることができる。この段階での温度条件は、前述のように設定することができ、工程時間は10分以内が好ましい。
【0090】
また、本出願では、有機電子デバイス25を圧着した封止フィルムに対してさらに硬化工程を行うことができるが、このような硬化工程(本硬化)は、例えば加熱チャンバまたはUVチャンバで進行され得る。本硬化時の条件は、有機電子デバイス25の安定性などを考慮して適切に選択され得る。
【0091】
しかし、前述の製造工程は、本出願の有機電子デバイス25を封止するための一例に過ぎず、前記工程順序または工程条件などは自由に変形され得る。例えば、本出願においては、前記転写及び圧着工程のプロセスを、本出願の封止フィルムを基板21上の有機電子デバイス25に先に転写した後にカバー基板24を圧着する方式に変更することもできる。また、有機電子デバイス25上に保護層を形成し、封止フィルムを適用した後にカバー基板24を省略して、硬化させて用いることもできる。
【発明の効果】
【0092】
本出願の封止フィルムは、外部から有機電子デバイスに流入される水分または酸素を効果的に遮断すると共に、水分吸着剤が水分と反応して発生する体積膨張による接着破壊及び有機膜損傷を防止し、有機電子デバイスの寿命及び耐久性を向上させて高信頼性を付与することができる封止フィルムを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0093】
図1】本出願の一実施形態に係る封止フィルムを示す断面図である。
図2】本出願の一実施形態に係る封止フィルムを示す断面図である。
図3】本出願の一実施形態に係る封止フィルムを示す断面図である。
図4】本出願の一実施形態に係る有機電子デバイスの封止製品を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0094】
以下、本発明による実施例及び本発明によらない比較例を介して本発明をより詳しく説明するが、本発明の範囲が下記記載の実施例により制限されるものではない。
【0095】
[実施例1]
(1)亀裂防止層溶液製造
常温で反応器にシラン変性エポキシ樹脂(KSR−177、国都化学)100g及びブタジエンラバー変性エポキシ樹脂(KR−450、国都化学)100g、フェノキシ樹脂(YP−50、東都化成)150gを投入し、メチルエチルケトンで希釈した。前記均質化された溶液に硬化剤のイミダゾール(四国化成)4gを投入した後、1時間高速撹拌して亀裂防止層溶液を製造した。
【0096】
(2)水分防止層溶液製造
水分吸着剤として焼成ドロマイト(calcined dolomite)100g及び溶剤としてMEKを固形分50重量%の濃度で投入して水分吸着剤溶液を製造した。常温で反応器にシラン変性エポキシ樹脂(KSR−177、国都化学)200g及びフェノキシ樹脂(YP−50、東都化成)150gを投入し、メチルエチルケトンで希釈した。前記均質化された溶液に硬化剤のイミダゾール(四国化成)4gを投入した後、1時間高速撹拌して水分防止層溶液を製造した。前記溶液にあらかじめ準備した水分吸着剤溶液を焼成ドロマイトの含量が水分防止層の封止樹脂100重量部対に対し50重量部になるように投入し、混合させて水分防止層溶液を製造した。
【0097】
(3)フィルムの製造
前記で準備した水分防止層の溶液を離型PETの離型面に塗布し、110℃で10分間乾燥して、厚さが40μmの水分防止層を形成した。
前記で準備した亀裂防止層の溶液を離型PETの離型面に塗布し、130℃で3分間乾燥して、厚さが15μmの亀裂防止層を形成した。
前記水分防止層及び亀裂防止層を合板して多層のフィルムを製造した。
【0098】
[実施例2]
常温で反応器にシラン変性エポキシ樹脂(KSR−177、国都化学)100g及びアクリルラバー変性エポキシ樹脂(KR−692、国都化学)100g、フェノキシ樹脂(YP−50、東都化成)150gを投入し、メチルエチルケトンで希釈した。前記均質化された溶液に硬化剤のイミダゾール(四国化成)4gを投入した後、1時間高速撹拌して亀裂防止層溶液を製造した以外は、実施例1と同一方法で封止フィルムを製造した。
【0099】
[実施例3]
常温で反応器に亀裂防止層の封止樹脂として、ポリイソブテン樹脂(重量平均分子量45万)50g、及び接着付与剤として水素化したジシクロペンタジエン系樹脂(軟化点125℃)50gを投入した後、DCPD系エポキシ樹脂10g、イミダゾール(四国化成)1gをトルエンで固形分が30重量%程度になるように希釈した以外は、実施例1と同一方法で封止フィルムを製造した。
【0100】
[実施例4]
常温で反応器に亀裂防止層の封止樹脂としてポリイソブテン樹脂(重量平均分子量45万)50g、及び接着付与剤として水素化したジシクロペンタジエン系樹脂(軟化点125℃)50gを投入した後、多官能性アクリルモノマー(TMPTA)20g、光開始剤1gをトルエンで固形分が25重量%程度になるように希釈した以外は、実施例1と同一方法で封止フィルムを製造した。
【0101】
[実施例5]
常温で反応器に亀裂防止層の封止樹脂としてポリイソブテン樹脂(重量平均分子量45万)50g、及び接着付与剤として水素化したジシクロペンタジエン系樹脂(軟化点125℃)50gを投入した後、多官能性アクリルモノマー(TMPTA)10g、光開始剤1gをトルエンで固形分が25重量%程度になるように希釈した以外は、実施例1と同一方法で封止フィルムを製造した。
【0102】
[比較例1]
常温で反応器にシラン変性エポキシ樹脂(KSR−177、国都化学)200g及びフェノキシ樹脂(YP−50、東都化成)150gを投入し、メチルエチルケトンで希釈した。前記均質化した溶液に硬化剤のイミダゾール(四国化成)4gを投入した後、1時間高速撹拌して亀裂防止層溶液を製造した以外は、実施例1と同一方法で封止フィルムを製造した。
【0103】
[比較例2]
常温で反応器にシラン変性エポキシ樹脂(KSR−177、国都化学)180g及びブタジエンラバー変性エポキシ樹脂(KR−450、国都化学)50g、フェノキシ樹脂(YP−50、東都化成)150gを投入し、メチルエチルケトンで希釈した。前記均質化した溶液に硬化剤のイミダゾール(四国化成)4gを投入した後、1時間高速撹拌して亀裂防止層溶液を製造した以外は、実施例1と同一方法で封止フィルムを製造した。
【0104】
[比較例3]
常温で反応器に亀裂防止層の封止樹脂としてポリイソブテン樹脂(重量平均分子量45万)50g、及び接着付与剤として水素化したジシクロペンタジエン系樹脂(軟化点125℃)60gを投入した後、トルエンで固形分が30重量%程度になるように希釈した以外は、実施例1と同一方法で封止フィルムを製造した。
【0105】
1.引張弾性率の測定
実施例または比較例で製造した亀裂防止層または水分防止層をラミーネーションして厚さが40μmのコーティング膜を製造した。製造したコーティング膜を製造時のコーティング方向を長さ方向として、50mm×10mm(長さ×幅)の大きさで裁断して試験片を製造した後、前記試験片を長さ方向に25mmだけ残るように両端をテーピングした。続いて、テーピング部分を把持し25℃で18mm/minの速度で引っ張って引張弾性率を測定した。
【0106】
2.高温高湿の信頼性評価時、接着破壊の有無
実施例及び比較例で製造したフィルムをカバー基板にラミーネーションした後、ガラス基板との間にラミネートし、70℃条件で加圧加熱圧着して、試験片を製造した。その後、試験片を85℃及び85%相対湿度の恒温恒湿チャンバで約300時間維持しながら、接着破壊が発生する場合を「×」、発生しない場合を「O」で表示した。
【0107】
3.耐熱保持力
2.5cm×5cmのPETフィルムの一端に2.5cm×2.5cmになるように、実施例及び比較例の封止層を付着した後、同一大きさの他のPETの一端に付着した後、85℃チャンバ内で一端を固定した後に、他端に1kgの重りをつけて放置した。24時間観察して封止層がずれるか、または重りが落下したら「×」と表示した。
【0108】
【表1】
【符号の説明】
【0109】
11、14 基材フィルムまたは離型フィルム
12 封止層
12a 亀裂防止層
12b 水分防止層
12c 合着層
13 水分吸着剤
21 基板
24 カバー基板
25 有機電子デバイス
図1
図2
図3
図4