特許第6203476号(P6203476)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6203476
(24)【登録日】2017年9月8日
(45)【発行日】2017年9月27日
(54)【発明の名称】基板温度制御方法及びプラズマ処理装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/3065 20060101AFI20170914BHJP
   H01L 21/683 20060101ALI20170914BHJP
【FI】
   H01L21/302 101R
   H01L21/68 R
【請求項の数】9
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-48810(P2012-48810)
(22)【出願日】2012年3月6日
(65)【公開番号】特開2012-199535(P2012-199535A)
(43)【公開日】2012年10月18日
【審査請求日】2014年12月11日
【審判番号】不服2016-11938(P2016-11938/J1)
【審判請求日】2016年8月8日
(31)【優先権主張番号】特願2011-49781(P2011-49781)
(32)【優先日】2011年3月8日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001092
【氏名又は名称】特許業務法人サクラ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】輿水 地塩
【合議体】
【審判長】 鈴木 匡明
【審判官】 加藤 浩一
【審判官】 矢頭 尚之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−232098(JP,A)
【文献】 特開平7−86382(JP,A)
【文献】 特開2005−39120(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L21/3065
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空処理チャンバー内に設置され、冷却又は加温される載置台の基板載置面に基板を載置し、当該基板の裏面と前記載置台の前記基板載置面との間に伝熱ガスを供給し、かつ、前記伝熱ガスの圧力を検出し、検出された圧力検出値と圧力設定値とを比較して、前記圧力検出値が前記圧力設定値となるように前記伝熱ガスの供給を制御しつつ、前記基板にプラズマを作用させてプラズマ処理するプラズマ処理装置における基板温度制御方法であって、
前記伝熱ガスの圧力を前記プラズマ処理装置において安定した圧力制御ができる下限圧力値未満の低圧力値とし、前記基板と前記載置台との熱交換を抑制して前記基板の温度制御を行う際に、
前記プラズマ処理の最中に、前記圧力設定値を、前記下限圧力値以上の第1圧力設定値とする第1期間と、前記低圧力値より低い第2圧力設定値とする第2期間とを交互に繰り返す
ことを特徴とする基板温度制御方法。
【請求項2】
請求項1記載の基板温度制御方法であって、
前記第1期間及び前記第2期間は、0.01秒から10秒の範囲である
ことを特徴とする基板温度制御方法。
【請求項3】
請求項1又は2記載の基板温度制御方法であって、
前記伝熱ガスが、ヘリウムガス、アルゴンガス、窒素ガス、酸素ガスのいずれかである
ことを特徴とする基板温度制御方法。
【請求項4】
請求項1又は2記載の基板温度制御方法であって、
前記伝熱ガスが、ヘリウムガス、アルゴンガス、窒素ガス、酸素ガスのうちのいずれか2種のガスであり、前記第1期間と前記第2期間では、当該2種のガスを交互に供給する
ことを特徴とする基板温度制御方法。
【請求項5】
請求項1〜いずれか1項記載の基板温度制御方法であって、
前記載置台に設けられ前記伝熱ガスの圧力に応じて変形する隔膜と、当該隔膜の変形量を検出する検出機構とを具備した圧力計で前記伝熱ガスの圧力を検出する
ことを特徴とする基板温度制御方法。
【請求項6】
請求項1〜いずれか1項記載の基板温度制御方法であって、
前記伝熱ガスの圧力を前記下限圧力値未満の低圧力値とし、前記基板と前記載置台との熱交換を抑制して前記基板の温度制御を行う際に、
前記第1期間と、前記第2期間と、前記第1圧力設定値より低く前記第2圧力設定値より高い第3圧力設定値とする第3期間とを順次繰り返す
ことを特徴とする基板温度制御方法。
【請求項7】
請求項記載の基板温度制御方法であって、
前記伝熱ガスが、ヘリウムガス、アルゴンガス、窒素ガス、酸素ガスのうちのいずれか3種のガスであり、前記第1期間と前記第2期間と前記第3期間では、当該3種のガスを順次供給する
ことを特徴とする基板温度制御方法。
【請求項8】
真空処理チャンバー内に設置され、冷却又は加温される載置台の基板載置面に基板を載置し、当該基板の裏面と前記載置台の前記基板載置面との間に伝熱ガスを供給して前記基板の温度を制御しつつ、前記基板にプラズマを作用させてプラズマ処理するプラズマ処理装置であって、
前記伝熱ガスの圧力を検出する圧力検出機構と、
前記圧力検出機構で検出された圧力検出値と圧力設定値とを比較し、前記圧力検出値が前記圧力設定値となるように前記伝熱ガスの供給を制御する伝熱ガス供給制御機構と
を具備し、前記伝熱ガス供給制御機構は、
前記伝熱ガスの圧力を前記プラズマ処理装置において安定した圧力制御ができる下限圧力値未満の低圧力値とし、前記基板と前記載置台との熱交換を抑制して前記基板の温度制御を行う際に、
前記プラズマ処理の最中に、前記圧力設定値を、前記下限圧力値以上の第1圧力設定値とする第1期間と、前記低圧力値より低い第2圧力設定値とする第2期間とを交互に繰り返す
ことを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項9】
請求項記載のプラズマ処理装置であって、
前記圧力検出機構は、
前記載置台に設けられ前記伝熱ガスの圧力に応じて変形する隔膜と、
当該隔膜の変形量を検出する検出機構と
を具備することを特徴とするプラズマ処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板温度制御方法及びプラズマ処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、半導体装置の製造工程においては、真空処理チャンバー内に配置した基板(例えば、半導体ウエハ)にプラズマを作用させてエッチング処理や成膜処理を行うプラズマ処理が用いられている。
【0003】
このようなプラズマ処理装置では、基板を載置する載置台に温調機構を設けて加熱又は冷却するとともに、載置台の基板載置面と、基板の裏面との間にヘリウム(He)ガス等の熱媒体となる伝熱ガス(所謂バックサイドガス)を供給して、載置台と基板との熱交換を促進する構成となっているものが知られている。
【0004】
また、このようなプラズマ処理装置において、バックサイドガスとして熱伝導率の異なるガス、例えば、ヘリウム(He)ガスとアルゴン(Ar)ガスの流量を個別に制御して供給する技術が知られている(例えば、特許文献1)。
【0005】
また、伝熱ガスの流量を間欠的に調整して、伝熱ガスの圧力を制御する技術が知られている(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−327275号公報
【特許文献2】特開2000−232098号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のプラズマ処理装置のうち、載置台に高周波電力を印加する構造のプラズマ処理装置では、ヘリウム(He)ガス等の伝熱ガスの供給ライン内で放電が発生する虞がある。このため、伝熱ガスの供給ラインを絶縁体で覆うとともに、伝熱ガスの供給ラインの距離を長く細くし、あるいは邪魔板を挿入する等してコンダクタンスや電界強度を下げることが行われている。このようにコンダクタンスを低下させた結果、ヘリウム(He)ガス等の伝熱ガスを供給し難くなり、特に伝熱ガスの圧力が低い領域、例えば1330Pa(10Torr)以下の領域では、伝熱ガスの圧力を精度良く制御することが困難になり、このような伝熱ガスの低い圧力領域における基板の温度制御を精度良く行うことができず、実質的に温度制御範囲が限定されるという問題がある。
【0008】
本発明は、かかる従来の事情に対処してなされたもので、伝熱ガスの低い圧力領域における基板の温度制御を精度良く行うことができ、温度制御範囲を拡張してプロセスマージンの拡大を図ることのできる基板温度制御方法及びプラズマ処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の基板温度制御方法の一態様は、真空処理チャンバー内に設置され、冷却又は加温される載置台の基板載置面に基板を載置し、当該基板の裏面と前記載置台の前記基板載置面との間に伝熱ガスを供給し、かつ、前記伝熱ガスの圧力を検出し、検出された圧力検出値と圧力設定値とを比較して、前記圧力検出値が前記圧力設定値となるように前記伝熱ガスの供給を制御しつつ、前記基板にプラズマを作用させてプラズマ処理するプラズマ処理装置における基板温度制御方法であって、前記伝熱ガスの圧力を前記プラズマ処理装置において安定した圧力制御ができる下限圧力値未満の低圧力値とし、前記基板と前記載置台との熱交換を抑制して前記基板の温度制御を行う際に、前記プラズマ処理の最中に、前記圧力設定値を、前記下限圧力値以上の第1圧力設定値とする第1期間と、前記低圧力値より低い第2圧力設定値とする第2期間とを交互に繰り返すことを特徴とする。
【0010】
本発明のプラズマ処理装置の一態様は、真空処理チャンバー内に設置され、冷却又は加温される載置台の基板載置面に基板を載置し、当該基板の裏面と前記載置台の前記基板載置面との間に伝熱ガスを供給して前記基板の温度を制御しつつ、前記基板にプラズマを作用させてプラズマ処理するプラズマ処理装置であって、前記伝熱ガスの圧力を検出する圧力検出機構と、前記圧力検出機構で検出された圧力検出値と圧力設定値とを比較し、前記圧力検出値が前記圧力設定値となるように前記伝熱ガスの供給を制御する伝熱ガス供給制御機構とを具備し、前記伝熱ガス供給制御機構は、前記伝熱ガスの圧力を前記プラズマ処理装置において安定した圧力制御ができる下限圧力値未満の低圧力値とし、前記基板と前記載置台との熱交換を抑制して前記基板の温度制御を行う際に、前記プラズマ処理の最中に、前記圧力設定値を、前記下限圧力値以上の第1圧力設定値とする第1期間と、前記低圧力値より低い第2圧力設定値とする第2期間とを交互に繰り返すことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、伝熱ガスの低い圧力領域における基板の温度制御を精度良く行うことができ、温度制御範囲を拡張してプロセスマージンの拡大を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態に用いるプラズマエッチング装置の概略構成を模式的に示す図。
図2図1のプラズマエッチング装置の要部概略構成を模式的に示す図。
図3】一実施形態に係る基板温度制御方法を説明するためのグラフ。
図4】一実施形態に係る基板温度制御方法を説明するためのグラフ。
図5】変形例に係る基板温度制御方法を説明するためのグラフ。
図6】変形例に係るプラズマエッチング装置の要部概略構成を模式的に示す図。
図7】変形例に係るプラズマエッチング装置の要部概略構成を模式的に示す図。
図8】変形例に係るプラズマエッチング装置の要部概略構成を模式的に示す図。
図9】変形例に係るプラズマエッチング装置の要部概略構成を模式的に示す図。
図10】変形例に係るプラズマエッチング装置の要部概略構成を模式的に示す図。
図11】変形例に係るプラズマエッチング装置の要部概略構成を模式的に示す図。
図12】変形例に係るプラズマエッチング装置の要部概略構成を模式的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。図1は、本実施形態に使用するプラズマエッチング装置の構成を示すものである。まず、プラズマエッチング装置の構成について説明する。
【0014】
プラズマエッチング装置は、気密に構成され、電気的に接地電位とされた真空処理チャンバー1を有している。この真空処理チャンバー1は、円筒状とされ、例えば表面に陽極酸化被膜を形成されたアルミニウム等から構成されている。真空処理チャンバー1内には、被処理基板である半導体ウエハWを水平に支持する載置台2が設けられている。
【0015】
載置台2は、その基材2aが導電性の金属、例えばアルミニウム等で構成されており、下部電極としての機能を有する。この載置台2は、絶縁板3を介して絶縁体の支持台4に支持されている。また、載置台2の上方の外周には、例えば単結晶シリコンで形成されたフォーカスリング5が設けられている。さらに、載置台2及び支持台4の周囲を囲むように、例えば石英等からなる円筒状の内壁部材3aが設けられている。
【0016】
載置台2の基材2aには、第1の整合器11aを介して第1の高周波電源10aが接続され、また、第2の整合器11bを介して第2の高周波電源10bが接続されている。第1の高周波電源10aは、プラズマ発生用のものであり、この第1の高周波電源10aからは所定周波数(27MHz以上例えば40MHz)の高周波電力が載置台2の基材2aに供給されるようになっている。また、第2の高周波電源10bは、イオン引き込み用(バイアス用)のものであり、この第2の高周波電源10bからは第1の高周波電源10aより低い所定周波数(13.56MHz以下、例えば3.2MHz)の高周波電力が載置台2の基材2aに供給されるようになっている。一方、載置台2の上方には、載置台2と平行に対向するように、上部電極としての機能を有するシャワーヘッド16が設けられており、シャワーヘッド16と載置台2は、一対の電極(上部電極と下部電極)として機能するようになっている。
【0017】
載置台2の上面には、半導体ウエハWを静電吸着するための静電チャック6が設けられている。この静電チャック6は絶縁体6bの間に電極6aを介在させて構成されており、電極6aには直流電源12が接続されている。そして電極6aに直流電源12から直流電圧が印加されることにより、クーロン力によって半導体ウエハWが吸着されるよう構成されている。
【0018】
載置台2の内部には、冷媒流路2bが形成されており、冷媒流路2bには、冷媒入口配管2c、冷媒出口配管2dが接続されている。そして、冷媒流路2bの中に適宜の冷媒、例えば冷却水等を循環させることによって、載置台2を所定の温度に制御可能となっている。
【0019】
また、載置台2等を貫通するように、半導体ウエハWの裏面側にヘリウムガス等の伝熱ガス(バックサイドガス)を供給するためのバックサイドガス供給配管30が設けられている。図2に拡大して示すように、バックサイドガス供給配管30は、絶縁体からなる基台4内において屈曲された屈曲部30aを有し、この屈曲部30aによって電界強度及びコンダクタンスを低下させ、これによってバックサイドガス供給配管30内で放電が発生することを抑制できるようになっている。
【0020】
バックサイドガス供給配管30は、バックサイドガス供給源300に接続されている。また、バックサイドガス供給配管30には、圧力制御バルブ301が介挿されており、この圧力制御バルブ301の下流側から分岐する排気配管302が接続されている。排気配管302には、排気制御弁303が介挿されており、排気配管302の端部には図示しない排気装置が接続されている。また、バックサイドガス供給配管30には、バックサイドガスの圧力を検出するための圧力計304が配設されている。
【0021】
そして、圧力制御部310が、圧力計304による圧力検出値と、圧力制御部310に予め設定された圧力設定値とを比較して、圧力検出値と圧力設定値とが一致するように圧力制御バルブ301及び排気制御弁303の開度を調整し、バックサイドガスの圧力が所定の圧力(圧力設定値)となるように制御を行う。すなわち、これらのバックサイドガス供給源300、圧力制御バルブ301、排気配管302、排気制御弁303、圧力計304、圧力制御部310等によって、伝熱ガス(バックサイドガス)供給制御機構が構成されている。
【0022】
上記の冷媒流路2b、冷媒入口配管2c、冷媒出口配管2d等の冷媒循環機構と、上記の伝熱ガス(バックサイドガス)供給制御機構により、載置台2の上面に静電チャック6によって吸着保持された半導体ウエハWを、所定の温度に制御することができるようになっている。
【0023】
上記したシャワーヘッド16は、真空処理チャンバー1の天壁部分に設けられている。シャワーヘッド16は、本体部16aと電極板をなす上部天板16bとを備えており、絶縁性部材45を介して真空処理チャンバー1の上部に支持されている。本体部16aは、導電性材料、例えば表面が陽極酸化処理されたアルミニウムからなり、その下部に上部天板16bを着脱自在に支持できるように構成されている。
【0024】
本体部16aの内部には、ガス拡散室16c,16dが設けられ、このガス拡散室16c,16dの下部に位置するように、本体部16aの底部には、多数のガス通流孔16eが形成されている。ガス拡散室16c,16dは、中央部に設けられたガス拡散室16cと、周縁部に設けられたガス拡散室16dとに2分割されており、中央部と周縁部とで独立に処理ガスの供給状態を変更できるようになっている。
【0025】
また、上部天板16bには、当該上部天板16bを厚さ方向に貫通するようにガス導入孔16fが、上記したガス通流孔16eと重なるように設けられている。このような構成により、ガス拡散室16c,16dに供給された処理ガスは、ガス通流孔16e及びガス導入孔16fを介して真空処理チャンバー1内にシャワー状に分散されて供給されるようになっている。なお、本体部16a等には、冷媒を循環させるための図示しない配管が設けられており、プラズマエッチング処理中にシャワーヘッド16を所望温度に冷却できるようになっている。
【0026】
上記した本体部16aには、ガス拡散室16c,16dへ処理ガスを導入するための2つのガス導入口16g,16hが形成されている。これらのガス導入口16g,16hにはガス供給配管15a,15bが接続されており、このガス供給配管15a,15bの他端には、エッチング用の処理ガスを供給する処理ガス供給源15が接続されている。ガス供給配管15aには、上流側から順にマスフローコントローラ(MFC)15c、及び開閉弁V1が設けられている。また、ガス供給配管15bには、上流側から順にマスフローコントローラ(MFC)15d、及び開閉弁V2が設けられている。
【0027】
そして、処理ガス供給源15からプラズマエッチングのための処理ガスが、ガス供給配管15a,15bを介してガス拡散室16c,16dに供給され、このガス拡散室16c,16dから、ガス通流孔16e及びガス導入孔16fを介して真空処理チャンバー1内にシャワー状に分散されて供給される。
【0028】
上記した上部電極としてのシャワーヘッド16には、ローパスフィルタ(LPF)51を介して可変直流電源52が電気的に接続されている。この可変直流電源52は、オン・オフスイッチ53により給電のオン・オフが可能となっている。可変直流電源52の電流・電圧ならびにオン・オフスイッチ53のオン・オフは、後述する制御部60によって制御されるようになっている。なお、後述のように、第1の高周波電源10a、第2の高周波電源10bから高周波が載置台2に印加されて処理空間にプラズマが発生する際には、必要に応じて制御部60によりオン・オフスイッチ53がオンとされ、上部電極としてのシャワーヘッド16に所定の直流電圧が印加される。
【0029】
真空処理チャンバー1の側壁からシャワーヘッド16の高さ位置よりも上方に延びるように円筒状の接地導体1aが設けられている。この円筒状の接地導体1aは、その上部に天壁を有している。
【0030】
真空処理チャンバー1の底部には、排気口71が形成されており、この排気口71には、排気管72を介して排気装置73が接続されている。排気装置73は、真空ポンプを有しており、この真空ポンプを作動させることにより真空処理チャンバー1内を所定の真空度まで減圧することができるようになっている。一方、真空処理チャンバー1の側壁には、半導体ウエハWの搬入出口74が設けられており、この搬入出口74には、当該搬入出口74を開閉するゲートバルブ75が設けられている。
【0031】
図中76,77は、着脱自在とされたデポシールドである。デポシールド76は、真空処理チャンバー1の内壁面に沿って設けられ、真空処理チャンバー1にエッチング副生物(デポ)が付着することを防止する役割を有している。このデポシールド76の半導体ウエハWと略同じ高さ位置には、直流的にグランドに接続された導電性部材(GNDブロック)79が設けられており、これにより異常放電が防止される。
【0032】
上記構成のプラズマエッチング装置は、制御部60によって、その動作が統括的に制御される。この制御部60には、CPUを備えプラズマエッチング装置の各部を制御するプロセスコントローラ61と、ユーザインターフェース62と、記憶部63とが設けられている。なお、図2に示した圧力制御部310も、制御部60から制御される。
【0033】
ユーザインターフェース62は、工程管理者がプラズマエッチング装置を管理するためにコマンドの入力操作を行うキーボードや、プラズマエッチング装置の稼働状況を可視化して表示するディスプレイ等から構成されている。
【0034】
記憶部63には、プラズマエッチング装置で実行される各種処理をプロセスコントローラ61の制御にて実現するための制御プログラム(ソフトウエア)や処理条件データ等が記憶されたレシピが格納されている。そして、必要に応じて、ユーザインターフェース62からの指示等にて任意のレシピを記憶部63から呼び出してプロセスコントローラ61に実行させることで、プロセスコントローラ61の制御下で、プラズマエッチング装置での所望の処理が行われる。また、制御プログラムや処理条件データ等のレシピは、コンピュータで読取り可能なコンピュータ記憶媒体(例えば、ハードディスク、CD、フレキシブルディスク、半導体メモリ等)などに格納された状態のものを利用したり、或いは、他の装置から、例えば専用回線を介して随時伝送させてオンラインで利用したりすることも可能である。
【0035】
次に、上記構成のプラズマエッチング装置における半導体ウエハWの温度制御方法について説明する。前述したとおり、載置台2は、冷媒流路2b内を循環する冷媒によって所定の温度に温度調整されている。載置台2上に載置され、固定された半導体ウエハWには、プラズマPが作用してその温度が上昇することから、多くの場合、載置台2は、冷却されている。そして、バックサイドガス供給配管30を通じて、載置台2のウエハ載置面と半導体ウエハWの裏面との間にヘリウムガス等のバックサイドガスを供給し、これらの間に一定圧力のバックサイドガスが存在することによって、半導体ウエハWと載置台2との間の熱交換が促進され、この結果、プラズマ処理中の半導体ウエハの温度は所定の温度に保たれる。
【0036】
したがって、バックサイドガスの圧力が高ければ、半導体ウエハWの温度はより載置台2の温度に近くなり、一方、バックサイドガスの圧力が低くなると、半導体ウエハWと載置台2との間の熱交換量が減少し、半導体ウエハWの温度と載置台2の温度に差が生じる。例えば、載置台2が所定温度に冷却されている場合、バックサイドガスの圧力が高いほど、半導体ウエハWの温度が低くなり、バックサイドガスの圧力を低くすると半導体ウエハWの温度が高くなる。
【0037】
縦軸を温度、横軸をバックサイドガスの圧力として図3のグラフに示す直線Aが、上記の半導体ウエハWの温度とバックサイドガスの圧力との関係を示している。圧力制御部310は、図3のグラフに示す直線Aのように、必要とされる半導体ウエハWの温度に基づいて決定されるバックサイドガスの圧力に基づき、バックサイドガスの圧力を調節して半導体ウエハWの温度を制御する。このような制御は、所定の下限圧力値(図3のグラフの場合1330Pa(10Torr)以上の圧力の場合、換言すれば、図3のグラフに示す上限温度以下の設定温度の場合について行われる。
【0038】
一方、バックサイドガスの圧力を、所定の下限圧力値(図3のグラフの場合1330Pa(10Torr))未満としなければならない場合、換言すれば、図3のグラフに示す上限温度以上の設定温度の場合、次のようなバックサイドガスの圧力制御による半導体ウエハWの温度制御を行う。
【0039】
バックサイドガスの圧力を下限圧力値未満の低圧力値、例えば665Pa(5Torr)とし、半導体ウエハWと載置台2との熱交換を抑制して半導体ウエハWの温度をある程度高温に温度制御する必要がある場合、ガス圧力制御部310における圧力設定値を、低圧力値(665Pa(5Torr))より高く、かつ、下限圧力値(1330Pa(10Torr))以上の第1圧力設定値とする第1期間と、低圧力値(665Pa(5Torr))より低い第2圧力設定値とする第2期間とを交互に繰り返す。
【0040】
縦軸を圧力、横軸を時間とした図4のグラフは、上記の第1圧力設定値を1330Pa(10Torr)とし、第2圧力設定値を0Paとした場合の例を示すもので、第1圧力設定値とする第1期間及び第2圧力設定値とする第2期間は、例えば、0.01秒から10秒程度さらに好ましくは0.1秒から10秒程度の間の短時間であり、これらの期間を交互に複数回繰り返す制御を行う。
【0041】
これは次のような理由による。すなわち、前述したとおり、バックサイドガス供給配管30は、載置台2に印加される高周波電力に起因する放電を防止するため、そのコンダクタンスが低く設定されており、低い圧力設定値にバックサイドガスの圧力を制御しようとすると安定した圧力制御を行うことが困難となる。一般的には、安定した圧力制御を行えるバックサイドガス圧は、1330Pa(10Torr)程度であり、この圧力未満の圧力では、安定した圧力制御を行うことができない。このため、安定した圧力制御を行える設定圧力とした第1期間と、目標とする圧力よりも低い圧力とする第2期間を交互に繰り返すことによって、多少の温度変動を許容しながら、平均した温度が所望の温度となるように、バックサイドガスの圧力を制御する。
【0042】
これによって、従来では精度良い温度制御が困難なため、温度設定することができなかった高温領域の温度に半導体ウエハWの温度を設定することができ、かつ、伝熱ガスの低い圧力領域における半導体ウエハWの温度制御を精度良く行うことができる。また、温度制御範囲を拡張することによってプロセスマージンの拡大を図ることができる。
【0043】
なお、このような半導体ウエハWの温度制御を、載置台2の冷媒流路2bに流す冷媒の温度を変更して行うことも考えられるが、この冷媒の温度を変更して載置台2の温度を変更するには、時間がかかり、短時間で行うことはできない。このため、真空処理チャンバー1内で連続して複数種のプラズマ処理を行う際に、処理によって半導体ウハWの設定温度を変更するような場合には適用することができない。
【0044】
縦軸を圧力、横軸を時間とした図5のグラフは、伝熱ガスとして2種類のガス、例えば、ヘリウムガスとアルゴンガスを使用した変形例を示すものである。この図5のグラフに示すように、図4に示した伝熱ガスとしてのヘリウムガスの第2期間(第2設定圧力値0Pa)の間に、熱伝達の仕事関数の異なる他の種類の伝熱ガス、例えばアルゴンガスを供給するようにしてもよい。なお、伝熱ガスとしては、ヘリウムガス、アルゴンガスの他、窒素(N)ガス、酸素(O)ガス等を用いてもよい。
【0045】
また、上記した第1圧力設定値より低く第2圧力設定値より高い第3圧力設定値とする第3期間を設け、第1乃至第3期間を、第1期間、第2期間、第3期間の順、或いは、第1期間、第3期間、第2期間の順等として、順次繰り返すようにしてもよい。この場合、伝熱ガスとして、熱伝達の仕事関数の異なる3種のガスを使用し、第1乃至第3期間の各期間毎に異なる伝熱ガスを流すようにしてもよい。
【0046】
図6〜12は、圧力計304の他の実施形態の構成を示すものである。前述したとおり、載置台2には高周波電力が印加されるため、この載置台2の近傍でバックサイドガスの圧力を検出することは困難である。しかし、より載置台2の半導体ウエハWの載置面に近い部位でバックサイドガスの圧力を検出すれば、より正確にバックサイドガスの圧力を検出してより正確にバックサイドガスの圧力を制御することができる。
【0047】
図6に示す圧力計304aは、載置台2の部分のバックサイドガス供給配管30の一部に、バックサイドガスの圧力によって物理的に変形する隔膜601を設け、この隔膜601の変位をレーザー光602で読み取るレーザー変位計を設けた構成としたものである。
【0048】
図7に示す圧力計304bは、載置台2の部分のバックサイドガス供給配管30の一部に、バックサイドガスの圧力によって物理的に変形する隔膜601を設け、この隔膜601に対して音波又は電磁波603を当て、隔膜601の変位を共振周波数によって読み取る構成としたものである。
【0049】
図8に示す圧力計304cは、載置台2の部分のバックサイドガス供給配管30の一部に、バックサイドガスの圧力によって物理的に変形する隔膜601を設け、この隔膜601に対して光604を当て、光604が隔膜601から反射し戻ってきた位置をCCD605によって検出することによって隔膜601の変位を読み取る構成としたものである。
【0050】
図9に示す圧力計304dは、載置台2の部分のバックサイドガス供給配管30の一部に、バックサイドガスの圧力によって物理的に変形する隔膜601を設けるとともに、参照面606を設け、隔膜601と参照面606との距離差を、レーザー又は電磁波607を用いたレーザー干渉計又は電磁波の干渉計で測定し、隔膜601の変位を読み取る構成としたものである。
【0051】
図10に示す圧力計304eは、載置台2の部分のバックサイドガス供給配管30の一部に、バックサイドガスの圧力によって物理的に変形する隔膜601を設け、この隔膜601の変位を、隔膜601の部分に接続された導管609内の液体608の液面の上下で読み取る構成としたものである。
【0052】
図11に示す圧力計304fは、載置台2の部分のバックサイドガス供給配管30の一部に、バックサイドガスの圧力によって物理的に変形する隔膜601を設け、この隔膜601の変位を、測定回路610によって測定するようにしたものである。測定回路610は、太陽電池611を備えており、この太陽電池611に外部に設けた光源612から光を照射して電源を得るようになっている。また、測定信号は光ファイバー613によって外部に導出するようになっている。これによって、載置台2に印加される高周波電力の影響を受け難い構造となっている。
【0053】
図12に示す圧力計304gは、図11に示した圧力計304fの太陽電池611をペルチェ素子620に換え、ペルチェ素子620に熱を加えることによって電源を得るようにしたものである。他の部分については、圧力計304fと同様であるので重複した説明は省略する。
【0054】
以上の圧力計304a〜304gのように、載置台2の部分のバックサイドガス供給配管30の一部に、バックサイドガスの圧力によって物理的に変形する隔膜601を設け、この隔膜601の変位を読み取ることによって、バックサイドガスの圧力を精度良く検出することができ、バックサイドガスの圧力を精度良く制御することができる。
【0055】
次に、上記構成のプラズマエッチング装置で、半導体ウエハWに形成された薄膜をプラズマエッチングする手順について説明する。まず、ゲートバルブ75が開かれ、半導体ウエハWが図示しない搬送ロボット等により、図示しないロードロック室を介して搬入出口74から真空処理チャンバー1内に搬入され、載置台2上に載置される。この後、搬送ロボットを真空処理チャンバー1外に退避させ、ゲートバルブ75を閉じる。そして、排気装置73の真空ポンプにより排気口71を介して真空処理チャンバー1内が排気される。
【0056】
真空処理チャンバー1内が所定の真空度になった後、真空処理チャンバー1内には処理ガス供給源15から所定の処理ガス(エッチングガス)が導入され、真空処理チャンバー1内が所定の圧力に保持される。この時、処理ガス供給源15からの処理ガスの供給状態を、中央部と周縁部とで異ならせることができ、また、処理ガスの全体の供給量のうち、中央部からの供給量と周縁部からの供給量との比率を所望の値に制御することができる。
【0057】
そして、この状態で第1の高周波電源10aから載置台2に、周波数が例えば40MHzの高周波電力が供給される。また、第2の高周波電源10bからは、イオン引き込みのため、載置台2の基材2aに周波数が例えば3.2MHzの高周波電力(バイアス用)が供給される。このとき、直流電源12から静電チャック6の電極6aに所定の直流電圧が印加され、半導体ウエハWはクーロン力により静電チャック6に吸着される。
【0058】
上述のようにして下部電極である載置台2に高周波電力が印加されることにより、上部電極であるシャワーヘッド16と下部電極である載置台2との間には電界が形成される。この電界により、半導体ウエハWが存在する処理空間には放電が生じ、それによって形成された処理ガスのプラズマにより、半導体ウエハW上に形成された薄膜がエッチング処理される。このエッチング処理の最中に、本実施形態では、従来では精度良い温度制御が困難なため、温度設定することができなかった高温領域の温度に半導体ウエハWの温度を設定することができ、かつ、伝熱ガスの低い圧力領域における半導体ウエハWの温度制御を精度良く行うことができる。また、温度制御範囲を拡張することによってプロセスマージンの拡大を図ることができる
【0059】
また、前述したとおり、プラズマ処理中にシャワーヘッド16に直流電圧を印加することができるので次のような効果がある。すなわち、プロセスによっては、高い電子密度でかつ低いイオンエネルギーであるプラズマが要求される場合がある。このような場合に直流電圧を用いれば、半導体ウエハWに打ち込まれるイオンエネルギーが抑えられつつプラズマの電子密度が増加されることにより、半導体ウエハWのエッチング対象となる薄膜のエッチングレートが上昇すると共にエッチング対象の上部に設けられたマスクとなる薄膜へのスパッタレートが低下して選択性が向上する。
【0060】
そして、上記したエッチング処理が終了すると、高周波電力の供給、直流電圧の供給及び処理ガスの供給が停止され、上記した手順とは逆の手順で、半導体ウエハWが真空処理チャンバー1内から搬出される。
【0061】
以上説明したとおり、本実施形態によれば、伝熱ガスの低い圧力領域における基板の温度制御を精度良く行うことができ、温度制御範囲を拡張してプロセスマージンの拡大を図ることのできる基板温度制御方法及びプラズマ処理装置を提供することができる。なお、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、各種の変形が可能である。
【符号の説明】
【0062】
W……半導体ウエハ、1……真空処理チャンバー、2……載置台、30……バックサイドガス供給配管、300……バックサイドガス供給源、301……圧力制御バルブ、302……排気配管、303……排気制御弁、304……圧力計、310……圧力制御部。
図1
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図12