(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本明細書において「工程」との語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の作用が達成されれば、本用語に含まれる。また本明細書において「〜」を用いて示された数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。さらに本明細書において組成物中の各成分の量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
【0012】
本発明の太陽電池の製造方法は、半導体基板の一方の面上の部分領域に、p型不純物を含むガラス粉末及び分散媒を含有する第1のp型拡散層形成組成物を付与する工程と、前記第1のp型拡散層形成組成物が付与される半導体基板の面上であって、少なくとも前記部分領域以外の領域に、p型不純物を含むガラス粉末及び分散媒を含有し、前記第1のp型拡散層形成組成物よりもp型不純物濃度が低い第2のp型拡散層形成組成物を付与する工程と、前記第1のp型拡散層形成組成物及び第2のp型拡散層形成組成物が付与された半導体基板を熱処理してp型拡散層を形成する工程と、前記部分領域上に電極を形成する工程とを含み、必要に応じてのその他の工程を含んで構成される。
【0013】
まず、本発明における第1のp型拡散層形成組成物、及び第2のp型拡散層形成組成物(以下、併せて単に「p型拡散層形成組成物」ともいう)について説明し、次にこれらのp型拡散層形成組成物を用いる選択エミッタ構造の形成方法について説明する。
前記p型拡散層形成組成物は、p型不純物を含むガラス粉末の少なくとも1種と、分散媒の少なくとも1種と、を含有し、更に塗布性などを考慮してその他の添加剤を必要に応じて含有してもよい。
ここで、p型拡散層形成組成物とは、p型不純物を含有し、シリコン基板に塗布した後にこのp型不純物を熱拡散することでp型拡散層を形成することが可能な材料をいう。p型拡散層形成組成物を用いることで、所望の部位にp型拡散層が形成される。
また、ガラス粉末中のp型不純物は焼成中でも揮散しにくいため、揮散ガスの発生によってp型拡散層形成組成物を付与した部分のみでなく裏面や側面にまでp型拡散層が形成されるということが抑制される。この理由として、p型不純物がガラス粉末中の元素と結合しているか、又はガラス中に取り込まれているため、揮散しにくいものと考えられる。
【0014】
(ガラス粉末)
前記ガラス粉末に含まれるp型不純物とは、シリコン基板中に拡散することによってp型拡散層を形成することが可能な元素である。p型不純物としては第13族の元素が使用でき、例えばB(ホウ素)、Al(アルミニウム)、及びGa(ガリウム)などが挙げられる。
p型不純物含有物質としては、B
2O
3、Al
2O
3、及びGa
2O
3が挙げられ、B
2O
3、Al
2O
3及びGa
2O
3から選択される少なくとも1種を用いることが好ましい。
また、ガラス粉末は、必要に応じて成分比率を調整することによって、溶融温度、軟化点、ガラス転移点、化学的耐久性等を制御することが可能である。更に以下に記すガラス成分物質を含むことが好ましい。
【0015】
ガラス成分物質としては、SiO
2、K
2O、Na
2O、Li
2O、BaO、SrO、CaO、MgO、BeO、ZnO、PbO、CdO、Tl
2O、V
2O
5、SnO、WO
3、MoO
3、MnO、La
2O
3、Nb
2O
5、Ta
2O
5、Y
2O
3、TiO
2、ZrO
2、GeO
2、TeO
2及びLu
2O
3等が挙げられ、SiO
2、K
2O、Na
2O、Li
2O、BaO、SrO、CaO、MgO、BeO、ZnO、PbO、CdO、V
2O
5、SnO、ZrO
2、TiO
2、及びMoO
3から選択される少なくとも1種を用いることが、好ましい。
p型不純物を含むガラス粉末の具体例としては、前記p型不純物含有物質と前記ガラス成分物質の双方を含むが挙げられ、B
2O
3−SiO
2系(p型不純物含有物質−ガラス成分物質の順で記載、以下同様)、B
2O
3−ZnO系、B
2O
3−PbO系、B
2O
3単独系等のp型不純物含有物質としてB
2O
3を含む系、Al
2O
3−SiO
2系等のp型不純物含有物質としてAl
2O
3を含む系、Ga
2O
3−SiO
2系、系等のp型不純物含有物質としてGa
2O
3を含む系などのガラス粉末が挙げられる。
また、Al
2O
3−B
2O
3系、Ga
2O
3−B
2O
3系等のように、2種類以上のp型不純物含有物質を含むガラス粉末でもよい。
上記では1成分ガラスあるいは2成分を含む複合ガラスを例示したが、B
2O
3−SiO
2−Na
2O等、3成分以上の物質を含むガラス粉末でもよい。
【0016】
ガラス粉末中のガラス成分物質の含有比率は、溶融温度、軟化点、ガラス転移点、化学的耐久性等を考慮して適宜設定することが望ましく、一般には、0.1質量%以上95質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以上90質量%以下であることがより好ましい。
【0017】
ガラス粉末の軟化点は、拡散処理時の拡散性、液だれの観点から、200℃〜1000℃であることが好ましく、300℃〜900℃であることがより好ましい。
ガラス粉末の形状としては、略球状、扁平状、ブロック状、板状、および鱗片状等が挙げられ、n型拡散層形成組成物とした場合の基板への塗布性や均一拡散性の点から略球状、扁平状、または板状であることが望ましい。ガラス粉末の平均粒径は、100μm以下であることが望ましい。100μm以下の平均粒径を有するガラス粉末を用いた場合には、平滑な塗膜が得られやすい。更に、ガラス粉末の平均粒径は50μm以下であることがより望ましく、10μm以下がさらに望ましい。なお、下限は特に制限されないが、0.01μm以上であることが好ましい。
ここで、ガラスの平均粒径は、体積平均粒子径を表し、レーザー散乱回折法粒度分布測定装置等により測定することができる。
【0018】
p型不純物を含むガラス粉末は、以下の手順で作製される。
最初に原料を秤量し、るつぼに充填する。るつぼの材質としては白金、白金−ロジウム、イリジウム、アルミナ、石英、炭素等が挙げられるが、溶融温度、雰囲気、溶融物質との反応性、不純物の混入等を考慮して適宜選ばれる。
次に、電気炉でガラス組成に応じた温度で加熱し融液とする。このとき融液が均一となるよう攪拌することが望ましい。
続いて得られた融液をジルコニア基板やカーボン基板等の上に流し出して融液をガラス化する。
最後にガラスを粉砕し粉末状とする。粉砕にはジェットミル、ビーズミル、ボールミル等公知の方法が適用できる。
【0019】
p型拡散層形成組成物中のp型不純物を含むガラス粉末の含有比率は、塗布性、p型不純物の拡散性等を考慮して決定される。一般には、p型拡散層形成組成物中のガラス粉末の含有比率は、0.1質量%以上95質量%以下であることが好ましく、1質量%以上90質量%以下であることがより好ましく、1.5質量%以上85質量%以下であることがさらに好ましく、2質量%以上80質量%以下であることが特に好ましい。
【0020】
(分散媒)
次に、分散媒について説明する。
分散媒とは、組成物中において上記ガラス粉末を分散させる媒体である。具体的に分散媒としては、バインダーや溶剤などが採用される。
【0021】
−バインダー−
バインダーとしては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド類、ポリビニルアミド類、ポリビニルピロリドン、ポリ(メタ)アクリル酸類、ポリエチレンオキサイド類、ポリスルホン酸、アクリルアミドアルキルスルホン酸、セルロースエーテル類、セルロース誘導体、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、エチルセルロース、ゼラチン、澱粉及び澱粉誘導体、アルギン酸ナトリウム類、キサンタン及びキサンタン誘導体、グア及びグア誘導体、スクレログルカン及びスクレログルカン誘導体、トラガカント及びトラガカント誘導体、デキストリン及びデキストリン誘導体、(メタ)アクリル酸樹脂、(メタ)アクリル酸樹脂、(メタ)アクリル酸エステル樹脂(例えば、アルキル(メタ)アクリレート樹脂、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート樹脂等)、ブタジエン樹脂、スチレン樹脂、及びこれらの共重合体、並びに、シロキサン樹脂などを適宜選択しうる。これらは1種類を単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。
バインダーの分子量は特に制限されず、組成物としての所望の粘度を鑑みて適宜調整することが望ましい。
【0022】
−溶剤−
溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチル−n−プロピルケトン、メチル−iso−プロピルケトン、メチル−n−ブチルケトン、メチル−iso−ブチルケトン、メチル−n−ペンチルケトン、メチル−n−ヘキシルケトン、ジエチルケトン、ジプロピルケトン、ジ−iso−ブチルケトン、トリメチルノナノン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、メチルシクロヘキサノン、2,4−ペンタンジオン、アセトニルアセトン等のケトン系溶剤;ジエチルエーテル、メチルエチルエーテル、メチル−n−プロピルエーテル、ジ−iso−プロピルエーテル、テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメチルジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジ−n−プロピルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールメチル−n−プロピルエーテル、ジエチレングリコールメチル−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールジ−n−プロピルエーテル、ジエチレングリコールジ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールメチル−n−ヘキシルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールメチルエチルエーテル、トリエチレングリコールメチル−n−ブチルエーテル、トリエチレングリコールジ−n−ブチルエーテル、トリエチレングリコールメチル−n−ヘキシルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジエチルエーテル、テトラジエチレングリコールメチルエチルエーテル、テトラエチレングリコールメチル−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールジ−n−ブチルエーテル、テトラエチレングリコールメチル−n−ヘキシルエーテル、テトラエチレングリコールジ−n−ブチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジ−n−プロピルエーテル、プロピレングリコールジブチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエチルエーテル、ジプロピレングリコールメチル−n−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールジ−n−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールジ−n−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールメチル−n−ヘキシルエーテル、トリプロピレングリコールジメチルエーテル、トリプロピレングリコールジエチルエーテル、トリプロピレングリコールメチルエチルエーテル、トリプロピレングリコールメチル−n−ブチルエーテル、トリプロピレングリコールジ−n−ブチルエーテル、トリプロピレングリコールメチル−n−ヘキシルエーテル、テトラプロピレングリコールジメチルエーテル、テトラプロピレングリコールジエチルエーテル、テトラジプロピレングリコールメチルエチルエーテル、テトラプロピレングリコールメチル−n−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールジ−n−ブチルエーテル、テトラプロピレングリコールメチル−n−ヘキシルエーテル、テトラプロピレングリコールジ−n−ブチルエーテル等のエーテル系溶剤;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸i−プロピル、酢酸n−ブチル、酢酸i−ブチル、酢酸sec−ブチル、酢酸n−ペンチル、酢酸sec−ペンチル、酢酸3−メトキシブチル、酢酸メチルペンチル、酢酸2−エチルブチル、酢酸2−エチルヘキシル、酢酸2−(2−ブトキシエトキシ)エチル、酢酸ベンジル、酢酸シクロヘキシル、酢酸メチルシクロヘキシル、酢酸ノニル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、酢酸ジエチレングリコールメチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールエチルエーテル、酢酸ジプロピレングリコールメチルエーテル、酢酸ジプロピレングリコールエチルエーテル、ジ酢酸グリコール、酢酸メトキシトリグリコール、プロピオン酸エチル、プロピオン酸n−ブチル、プロピオン酸i−アミル、シュウ酸ジエチル、シュウ酸ジ−n−ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸n−ブチル、乳酸n−アミル、エチレングリコールメチルエーテルプロピオネート、エチレングリコールエチルエーテルプロピオネート、エチレングリコールメチルエーテルアセテート、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールプロピルエーテルアセテート、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン等のエステル系溶剤;アセトニトリル、N−メチルピロリジノン、N−エチルピロリジノン、N−プロピルピロリジノン、N−ブチルピロリジノン、N−ヘキシルピロリジノン、N−シクロヘキシルピロリジノン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶剤;メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、n−ブタノール、i−ブタノール、sec−ブタノール、t−ブタノール、n−ペンタノール、i−ペンタノール、2−メチルブタノール、sec−ペンタノール、t−ペンタノール、3−メトキシブタノール、n−ヘキサノール、2−メチルペンタノール、sec−ヘキサノール、2−エチルブタノール、sec−ヘプタノール、n−オクタノール、2−エチルヘキサノール、sec−オクタノール、n−ノニルアルコール、n−デカノール、sec−ウンデシルアルコール、トリメチルノニルアルコール、sec−テトラデシルアルコール、sec−ヘプタデシルアルコール、フェノール、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノール、ベンジルアルコール、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール等のアルコール系溶剤;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ヘキシルエーテル、エトキシトリグリコール、テトラエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールモノエーテル系溶剤;α−テルピネン、α−テルピネオール、ミルセン、アロオシメン、リモネン、ジペンテン、α−ピネン、β−ピネン、ターピネオール、カルボン、オシメン、フェランドレン等のテルペン系溶剤;水が挙げられる。これらは1種類を単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。p型拡散層形成組成物とした場合、基板への塗布性の観点から、α−テルピネオール、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、酢酸2−(2−ブトキシエトキシ)エチルが好ましい。
【0023】
p型拡散層形成組成物中の分散媒の含有比率は、塗布性、p型不純物濃度を考慮し決定される。
p型拡散層形成組成物の粘度は、塗布性を考慮して、10mPa・s以上1000000mPa・s以下であることが好ましく、50mPa・s以上500000mPa・s以下であることがより好ましい。
【0024】
本発明においては、p型不純物濃度の異なる少なくとも2種のp型拡散層形成組成物を用いる。本発明においては例えば、p型不純物濃度の高い第1のp型拡散層形成組成物を、半導体基板の一方の面上の電極形成領域に付与し、p型不純物濃度の低い第2のp型拡散層形成組成物を、同一面の電極形成領域以外の領域または全面に付与する。その後、加熱処理によってp型拡散層形成組成物中のp型不純物を半導体基板中に拡散させてp型拡散層を形成することで、電極形成領域にp型不純物濃度が高い選択エミッタを、効率的に形成することができる。
【0025】
前記第1のp型拡散層形成組成物及び第2のp型拡散層形成組成物におけるp型不純物の濃度は、第1のp型拡散層形成組成物のほうが大きい限り特に制限されない。高濃度p型拡散層(選択エミッタ)の形成効率、光発電効率の観点から、第2のp型拡散層形成組成物におけるp型不純物濃度に対する、第1のp型拡散層形成組成物におけるp型不純物濃度の比(第1のp型拡散層形成組成物/第2のp型拡散層形成組成物)が、1.1〜50であることが好ましく、1.2〜20であることがより好ましい。
尚、p型拡散層形成組成物におけるp型不純物濃度は、ガラス粉末の含有率、ガラス粉末に含まれるp型不純物の含有率等を適宜選択することで調整することができる。
【0026】
(太陽電池の製造方法)
まず、シリコン基板の表面にあるダメージ層を、酸性あるいははアルカリ性の溶液を用いてエッチングして除去する。
次に、シリコン基板の一方の表面に珪素の酸化物膜あるいは珪素の窒化物膜からなる保護膜を形成する。ここで、珪素の酸化物膜は、たとえばシランガスと酸素を用いた常圧CVD法により形成することができる。また、珪素の窒化物膜は、たとえば、シランガス、アンモニアガス及び窒素ガスを用いたプラズマCVD法により形成することができる。
【0027】
次に、シリコン基板の保護膜が形成されていない側の表面にテクスチャ構造と呼ばれる微細な凹凸構造を形成する。テクスチャ構造は、たとえば、保護膜が形成されたシリコン基板を水酸化カリウムとイソプロピルアルコール(IPA)とを含む約80℃程度の液に浸漬させることによって形成することができる。
続いて、シリコン基板をフッ酸に浸漬させることによって、保護膜をエッチング除去する。
【0028】
次に、n型シリコン基板上にp型拡散層を形成してpn接合を形成する。本発明においては、受光面電極が形成される電極形成領域(電極形成予定領域)に、p型拡散層形成組成物を付与することで、電極形成領域における不純物濃度を、電極形成領域以外よりも高くすることが特徴となっている。
本発明において、不純物濃度が高い電極形成領域の形状及び大きさは、構成される太陽電池の構造に応じて適宜選択することができる。形状としては例えば、ライン状等とすることができる。
【0029】
本発明では、n型シリコン基板上の受光面電極が形成される電極形成領域に、前記第1のp型拡散層形成組成物を付与する工程と、少なくとも前記電極形成領域以外の領域に、前記第2のp型拡散層形成組成物を付与する工程とにより、n型シリコン基板上にp型拡散層形成組成物層を形成する。
前記電極形成領域には、第1のp型拡散層形成組成物のみが付与されていてもよいし、第1のp型拡散層形成組成物及び第2のp型拡散層形成組成物の両方が付与されていてもよい。
【0030】
また、第1のp型拡散層形成組成物及び第2のp型拡散層形成組成物を付与する順番は特に制限されない。すなわち、第1のp型拡散層形成組成物を電極形成領域に付与した後、第2のp型拡散層形成組成物を受光面全面あるいは電極形成領域以外の領域に付与してもよく、また、第2のp型拡散層形成組成物を受光面全面あるいは電極形成領域以外の領域に付与した後、第1のp型拡散層形成組成物を電極形成領域に付与してもよい。
【0031】
第1のp型拡散層形成組成物及び第2のp型拡散層形成組成物の付与方法は、特に制限されず通常用いられる方法を用いることができる。例えば、スクリーン印刷法、グラビア印刷法などの印刷法、スピン法、刷毛塗り、スプレー法、ドクターブレード法、ロールコーター法、インクジェット法等を用いて行うことができる。さらに第1のp型拡散層形成組成物及び第2のp型拡散層形成組成物の付与方法はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。
前記第1及び第2のp型拡散層形成組成物の付与量としては特に制限はない。例えば、ガラス粉末量として0.01g/m
2〜100g/m
2とすることができ、0.1g/m
2〜10g/m
2であることが好ましい。また第1のp型拡散層形成組成物の付与量に対する第2のp型拡散層形成組成物の付与量の比(第2のp型拡散層形成組成物/第1のp型拡散層形成組成物)は特に制限されず、形成されるp型拡散層が所望の不純物濃度となるように適宜選択することができる。
【0032】
シリコン基板上にp型拡散層形成組成物が付与された後には、分散媒の少なくとも一部を除去する加熱工程を設けてもよい。加熱工程においては例えば、100℃〜200℃で加熱処理することで、溶剤の少なくとも一部を揮発させることができる。また例えば、200℃〜500℃で加熱処理することでバインダーの少なくとも一部を除去してもよい。
【0033】
次に、p型拡散層形成組成物が付与されたシリコン基板を熱処理することによって、p型拡散層を形成する。熱処理によってp型拡散層形成組成物からp型不純物がシリコン基板中に拡散し、受光面電極が形成される電極形成領域には高濃度のp型拡散層が、それ以外の領域には低濃度のp型拡散層が形成される。
ここで、熱処理温度は800℃以上1100℃以下であることが好ましく、さらに850℃以上1100℃以下が好ましく、900℃以上1100℃以下がより好ましい。
【0034】
上記のようにしてp型拡散層が形成されたシリコン基板にはガラス層が残存しているが、該ガラス層は除去されることが好ましい。ガラス層の除去は、フッ酸などの酸に浸漬する方法、苛性ソーダなどのアルカリに浸漬する方法等公知の方法が適用できる。
【0035】
次に、p型拡散層が形成された受光面上には、反射防止膜が形成される。ここで、反射防止膜としては、たとえばプラズマCVD法により形成された窒化物膜を用いることができる。
【0036】
次に、基板裏面及び受光面に電極が形成される。電極の形成には通常用いられる方法を特に制限なく用いることができる。
例えば、受光面電極(表面電極)は、金属粒子及びガラス粒子を含む表面電極用金属ペーストを、前記電極形成領域上に所望の形状となるよう付与し、これを焼成処理することで高濃度のp型拡散層が形成された電極形成領域上に表面電極を形成することができる。
前記表面電極用金属ペーストとしては、例えば、当該技術分野で常用される銀ペースト等を用いることができる。
【0037】
また裏面電極は、例えば、アルミニウム、銀、又は銅などの金属を含む裏面電極用ペーストを塗布し、乾燥させて、これを焼成処理することで形成することができる。このとき、裏面にも、モジュール工程におけるセル間の接続のために、一部に銀電極形成用銀ペーストを設けてもよい。
【実施例】
【0038】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。尚、特に断りのない限り、薬品は全て試薬を使用した。また「部」及び「%」は質量基準である。
【0039】
[実施例1]
粒子形状が略球状で、平均粒径が1.5μm、軟化温度が約810℃のガラス粉末(B
2O
3、SiO
2、CaO、MgO、BaOを主成分とし、それぞれ30%、40%、10%、10%、10%)、エチルセルロース、テルピネオールをそれぞれ20g、8g、72g混合してペースト化し、第1のp型拡散層形成組成物(組成物A)を調製した。また、粒子形状が略球状で、平均粒径が1.5μm、軟化温度が約810℃のガラス粉末(B
2O
3、SiO
2、CaO、MgO、BaOを主成分とし、それぞれ30%、40%、10%、10%、10%)、エチルセルロース、テルピネオールをそれぞれ5g、6g、89g混合してペースト化し、第2のp型拡散層形成組成物(組成物B)を調製した。
【0040】
なお、ガラス粒子形状は、(株)日立ハイテクノロジーズ製TM−1000型走査型電子顕微鏡を用いて観察して判定した。ガラスの平均粒径はベックマン・コールター(株)製LS 13 320型レーザー散乱回折法粒度分布測定装置(測定波長:632nm)を用いて算出した。ガラスの軟化点は(株)島津製作所製DTG−60H型示差熱・熱重量同時測定装置を用いて、示差熱(DTA)曲線により求めた。
【0041】
次に、n型シリコン基板の表面の一部に組成物Aをスクリーン印刷により、ライン状に塗布し、150℃で10分間乾燥させ、続いて、シリコン基板の同じ表面全面に組成物Bをスクリーン印刷により塗布し、150℃で10分間乾燥させた。そして、350℃で3分間脱バインダー処理を行った。
【0042】
次に、大気中、950℃で10分間熱処理し、p型不純物をシリコン基板中に拡散させ、p型拡散層を形成した。続いて、シリコン基板の表面に残存したガラス層をフッ酸によって除去した。
【0043】
組成物Aを塗布した部分(電極形成領域)のシート抵抗の平均値は58Ω/□、それ以外の部分のシート抵抗の平均値は127Ω/□であり、組成物Aを塗布した部分が選択的に低抵抗化していた。なお、シート抵抗は、三菱化学(株)製Loresta−EP MCP−T360型低抵抗率計を用いて四探針法により測定した。
【0044】
[太陽電池の作製]
上記で得られたp型拡散層が形成されたシリコン基板を用い、常法により、表面に反射防止膜を、電極形成領域に表面電極を、裏面に裏面電極をそれぞれ形成して、太陽電池セルを作製した。得られた太陽電池セルは、高濃度のp型拡散層が形成された電極形成領域(選択エミッタ)を有しない太陽電池セルに比べて、良好な光変換特性を示した。
【0045】
日本国特許出願2010−157169号の開示はその全体が参照により本明細書に取り込まれる。本明細書に記載された全ての文献、特許出願、及び技術規格は、個々の文献、特許出願、及び技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書に参照により取り込まれる。