特許第6203502号(P6203502)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6203502加工品に対して加工工具を位置決めするための構造および方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6203502
(24)【登録日】2017年9月8日
(45)【発行日】2017年9月27日
(54)【発明の名称】加工品に対して加工工具を位置決めするための構造および方法
(51)【国際特許分類】
   G01B 11/00 20060101AFI20170914BHJP
   G01B 21/00 20060101ALI20170914BHJP
【FI】
   G01B11/00 C
   G01B21/00 C
【請求項の数】12
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2013-27814(P2013-27814)
(22)【出願日】2013年2月15日
(65)【公開番号】特開2013-171043(P2013-171043A)
(43)【公開日】2013年9月2日
【審査請求日】2015年11月16日
(31)【優先権主張番号】10 2012 202 443.3
(32)【優先日】2012年2月17日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】390014281
【氏名又は名称】ドクトル・ヨハネス・ハイデンハイン・ゲゼルシヤフト・ミツト・ベシユレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】DR. JOHANNES HEIDENHAIN GESELLSCHAFT MIT BESCHRANKTER HAFTUNG
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100096013
【弁理士】
【氏名又は名称】富田 博行
(74)【代理人】
【識別番号】100092967
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 修
(74)【代理人】
【識別番号】100114487
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 幸作
(74)【代理人】
【識別番号】100153947
【弁理士】
【氏名又は名称】家成 隆彦
(72)【発明者】
【氏名】ヴォルフガング・ホルツアップフェル
(72)【発明者】
【氏名】イェルク・ドレシャー
(72)【発明者】
【氏名】マルクス・マイスナー
(72)【発明者】
【氏名】ラルフ・ヨルガー
(72)【発明者】
【氏名】ベルンハルト・ミュッシュ
(72)【発明者】
【氏名】トーマス・ケルベーエル
【審査官】 小川 浩史
(56)【参考文献】
【文献】 特表2010−527013(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/001627(WO,A1)
【文献】 特開平2−283011(JP,A)
【文献】 米国特許第6043482(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/00−11/30
G01B 21/00−21/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工品(WS)に対して加工工具(B)を位置決めするための構造において、
対象物アライメントマーク(M)および加工品(WS)が配設されている第一対象物(O1)を有しており、加工品(WS)には、加工品アライメントマーク(M)が配設されており、
少なくとも一つの移動方向(x)に沿って可動で、第一対象物(O1)に対向して配設されている第二対象物(O2)を有しており、第二対象物(O2)には
加工工具(B)が配設されており、加工工具(B)を介して対象物アライメントマーク(M)を検知でき、
第二対象物(O2)にはアライメントセンサ(W)が配設されており、アライメントセンサ(W)を介して対象物アライメントマーク(M)および加工品アライメントマーク(M)を検知でき、
第二対象物(O2)には少なくとも一つの移動方向(x)に沿って延伸していると共に走査検知可能な基準尺(S)が配設されており、
第一対象物(O1)には基準尺(S)を走査検知するために、少なくとも二つの走査検知ユニット(E,E)が配設されており、少なくとも二つの走査検知ユニット(E,E)により移動方向(x)に沿って第一および第二対象物(O1,O2)間の相対位置を測定し、二つの走査検知ユニット(E,E)の間のオフセット
【数1】
が、
条件
【数2】
を満たしており、
ここで、
【数3】
=二つの走査検知ユニット間のオフセット
【数4】
=加工工具とアライメントセンサ間の間隔
である
ことを特徴とする構造。
【請求項2】
請求項1に記載の構造において、
二つの走査検知ユニット(E,E)間のオフセット
【数5】
が、加工工具(B)とアライメントセンサ(W)間の間隔
【数6】
とほぼ同一で選択されている
ことを特徴とする構造。
【請求項3】
請求項1に記載の構造において、
二つの走査検知ユニット(E,E)間のオフセット
【数7】
が、加工工具(B)とアライメントセンサ(W)間の間隔
【数8】
と同一で選択されている
ことを特徴とする構造。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の構造において、
移動方向(x)に沿って第一および第二対象物(O1,O2)間の相対位置を測定するために、走査検知ユニット(E1,E2)が選択的に機能できるように構成されている
ことを特徴とする構造。
【請求項5】
請求項1に記載の構造において、
対象物アライメントマーク(M)および/または加工品アライメントマーク(M)が、微細構造として構成されている
ことを特徴とする構造。
【請求項6】
請求項1に記載の構造において、
基準尺が、直線目盛または角度目盛として、または二次元の十字格子目盛として構成されている
ことを特徴とする構造。
【請求項7】
加工品(WS)に対して加工工具(B)を位置決めするための方法において、
第一対象物(O1)に対象物アライメントマーク(M)および加工品(WS)が配設され、そして加工品(WS)に加工品アライメントマーク(M)が配設されており、
第二対象物(O2)が、少なくとも一つの移動方向(x)に沿って可動で、第一対象物(O1)に対向して配置されており、第二対象物(O2)には、
加工工具(B)が配設されており、加工工具(B)を介して対象物アライメントマーク(M)を検知し、
第二対象物(O2)にはアライメントセンサ(W)が配設されており、アライメントセンサ(W)を介して対象物アライメントマーク(M)および加工品アライメントマーク(M)を検知し、
第二対象物(O2)には少なくとも一つの移動方向(x)に沿って延伸していると共に
走査検知可能な基準尺(S)が配設されており、
第一対象物(O1)には基準尺(S)を走査検知するために、少なくとも二つの走査検知ユニット(E,E)が配設されており、少なくとも二つの走査検知ユニット(E,E)により移動方向(x)に沿って第一および第二対象物間(O1,O2)の相対位置を測定し、二つの走査検知ユニット(E,E)の間のオフセット
【数9】
が、
条件
【数10】
を満たしており、
ここで、
【数11】
=二つの走査検知ユニット間のオフセット
【数12】
=加工工具とアライメントセンサ間の間隔
である
ことを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項に記載の方法において、
二つの走査検知ユニット(E,E)間のオフセット
【数13】
が、加工工具(B)とアライメントセンサ(W)間の間隔
【数14】
とほぼ同一で選択されている
ことを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項に記載の方法において、
二つの走査検知ユニット(E,E)間のオフセット
【数15】
が、加工工具(B)とアライメントセンサ(W)間の間隔
【数16】
と同一で選択されている
ことを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項に記載の方法において、
第一および第二対象物(O1,O2)間の相対位置を測定するために、二つの走査検知ユニット(E,E)の一つだけを選択的に機能させる
ことを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項7から10のいずれか1項に記載の方法において、
一つの方法ステップで、対象物アライメントマーク(M)が加工工具(B)の位置に移動し、そこで第一走査検知ユニット(E)を使って検出した第一および第二対象物(O1,O2)間の相対位置を記録し、
次の方法ステップで、対象物アライメントマーク(M)がアライメントセンサ(W)の位置に移動し、そこで第二走査検知ユニット(E)を使って検出した第一および第二対象物(O1,O2)間の相対位置を記録し、
次の方法ステップで、加工品アライメントマーク(M)がアライメントセンサ(W)の位置に移動し、そこで第二走査検知ユニット(E)を使って検出した第一および第二対象物(O1,O2)間の相対位置を記録する、ただし
三つの異なった方法ステップの順序は、任意に選択できる
ことを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項11に記載の方法において、
前記三つの異なった方法ステップの測定結果をベースにして、引き続いて第二対象物(O2)に対する第一対象物(O1)の位置決めを、加工品アライメントマーク(M)の周辺で加工工具(B)を使って加工品(WS)を加工する間に行う
ことを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工品に対して加工工具を位置決めするための構造および方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体構成要素の製造および/または検査で使用される装置ではしばしば、加工工具を加工品に対して精密に位置決めするという要求がある。それで例えばウエハの形態にある加工品を高精度で、工具の下方に位置決めすることが求められることがある。該当する構造を図1において、著しく概略化した形態で図示している。そこではウエハないし加工品WSが、装置の第一対象物O1、即ちテーブル上に配設されている。第一対象物O1には更に、対象物アライメントマークMが設けられている;これは例えばテーブルにある円形の凹み、或いはテーブルに固定されたプレート上にリソグラフでつくられた微細構造として構成されていることがある。第一対象物O1に配置された加工品WS、或いはウエハには更に、例えば部分的に境界を有する微細構造として構成された加工品アライメントマークMが配設されている。
【0003】
装置には第二対象物O2、即ち対応する装置部品が、少なくとも一つの移動方向xにおいて第一対象物O1に対して相対的に可動で設けられている。二つの対象物O1,O2間の相対的な移動は、対象物O1、図示の例ではテーブルを少なくとも移動方向xに沿って可動で配設するようにして確保することができる;それに対して第二対象物O2は、固定して配設されている。
【0004】
第二対象物O2には、加工工具BおよびアライメントセンサWが設けられている。その加工工具Bを介して加工品の加工または検査が、製造プロセス中に可能である。
アライメントセンサWは、例えば顕微鏡または、エレクトロニクス画像センサを備えたカメラとして構成されている。アライメントセンサWを介することにより、対象物アライメントマークMも加工品アライメントマークMも検知が可能である。即ち、移動方向xに沿ってアライメントセンサWの位置が、対象物アライメントマークMないし加工品アライメントマークMと一致する場合に、アライメントセンサWを介して該当アライメント信号を生成することができる。そのアライメント信号は、後続配設された−図1では示していない−制御ユニットに、更に処理するために送信することができる。
【0005】
図1では図示していない追加のセンサ系を介して更に、移動方向xに沿って加工工具Bの位置が対象物アライメントマークMの位置と一致する時、別のアライメント信号を生成することができる。これは例えば、対象物アライメントマークMの側に同じく顕微鏡または、エレクトロニクス画像センサを備えたカメラを配設して行うことができる。加工工具Bが光を発する場合にはセンサ系として、対応する光ディテクタを使用することがあり、それにより、対象物アライメントマークMが反射、透過、または拡散する光を検知する。逆に対象物アライメントマークMが、加工工具Bにある光ディテクタにより検知できる光を発することもあるだろう。以上のようなアライメント信号を生成するために、これに対する代替として加工工具Bと対象物アライメントマークM間の機械的な接触を、接触電流または適切な応力センサにより検知することもできるであろう。
【0006】
第一対象物O1と第二対象物O2間の相対位置を測定するために、第二対象物O2に例えば光学的に走査検知できる基準尺Sが、少なくとも一つの移動方向xに沿って延伸して設けられている。この基準尺Sは例えば、公知の照射回折格子として構成されていることがある。第一対象物O1の側には基準尺Sを走査検知するために、光学式位置測定装置の走査検知ユニットEが配設されている。走査検知ユニットEには、例えば光源、複数の光学要素、およびディテクタ構造を含んでいることがあり、それらを介して公知の形式と方法により、例えば干渉方式による走査検知原理を介して、第一および第二対象物O1,O2の相対位置に関する高精度の位置信号を、後続配設された制御ユニットのために生成する。
【0007】
加工工具Bによる加工品の加工中に、加工品アライメントマークMに対して相対的な加工工具Bの位置を高精度で測定することが必要である。加工品アライメントマークMに対して加工工具Bを直接アライメントする位置信号を生成できないので、この測定は一連の個別較正ステップを介して行わねばならない。
【0008】
そのために対象物アライメントマークMを使って、第一対象物O1に対して加工工具Bを位置参照することが必要である。更に対象物アライメントマークMを使って、第一対象物O1に対するアライメントセンサWの位置参照を行わねばならない。そして最後に加工品アライメントマークMを使って、加工品WSに対するアライメントセンサWの位置参照が必要である。
【0009】
以上の較正ステップにおける色々な装置の位置および後続する本来の加工中に、光学式位置測定装置の走査検知ユニットEが、図1において参照符号R,R,R,Rを付している基準尺Sの範囲を走査検知する。図示から分かるように、これらの範囲は移動方向xに沿って、走査検知する基準尺Sで互いが比較的大きく離れている部分に位置している。例えば範囲RとRの間隔は大まかに、加工工具BとアライメントセンサW間の間隔
【0010】
【数1】
の寸法レベルに相当しているが、その理由は加工品WSの加工が、加工品アライメントマークMの近くで加工工具Bを使って行われるからである。しかしながら加工工具Bは、先に述べた第三ステップにおいて加工品アライメントマークMを検出できるアライメントセンサWから、間隔
【0011】
【数2】
だけ離れた位置にある。従って加工工具Bを位置決めする時には、概略長さ
【0012】
【数3】
の基準尺部分の変形により生じる測定誤差を考慮せねばならない。
図2は、使用する基準尺Sで存在する長波の変形に対する例示的な図を示している。類似した偏差は更に、基準尺Sが加工工具Bと一列になって配設されていない(アッベ誤差)時に、装置ガイド部の誤差によっても発生する。図3において、そのような基準尺Sを使用する時に生じる位置決め誤差ないし測定誤差Δxrelを、先に説明した対応に従う色々な装置の位置に関して明らかにしている。この図から分かるように該当する測定誤差Δxrelは、基準となる位置xrel=0の近辺で大きい;ここでxrelは、加工品アライメントマークMからの加工位置の間隔を表している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の課題は、加工品に対して加工工具を位置決めするための構造および方法を提供することであり、それにより加工工具の高精度な位置決めを保証すると共に、そこで使用する基準尺の誤差から生じる測定誤差を、特に最小化ないし回避するものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この課題を本発明に従って、請求項1の特徴を有する構造により解決する。
この課題を本発明に従って更に、請求項8の特徴を有する方法により解決する。
本発明による構造および本発明による方法で利点ある実施方法は、それぞれの従属請求項にある方策から得られる。
【0015】
加工品に対して加工工具を位置決めするための本発明による構造には、対象物アライメントマークおよび加工品が配設されている第一対象物を含んでおり、加工品には、加工品アライメントマークが配設されている。構造には更に、少なくとも一つの移動方向に沿って可動で、第一対象物に対向して配設されている第二対象物を含んでいる。第二対象物には加工工具が配設されており、加工工具を介して対象物アライメントマークを検知できる。第二対象物には更にアライメントセンサも配設されており、アライメントセンサを介して対象物アライメントマークおよび加工品アライメントマークを検知できる。第二対象物には更に、少なくとも一つの移動方向に沿って延伸していると共に走査検知可能な基準尺が配設されている。第一対象物には基準尺を走査検知するために、少なくとも二つの走査検知ユニットが配設されており、それにより移動方向に沿って第一および第二対象物間の相対位置を測定し、そこで二つの走査検知ユニットが規定のオフセットを有している。
【0016】
その場合に、二つの走査検知ユニット間のオフセットを、加工工具とアライメントセンサ間の間隔とほぼ同一で選択することがある。
更に、二つの走査検知ユニット間のオフセットを、加工工具とアライメントセンサ間の間隔と同一で選択することがある。
【0017】
二つの走査検知ユニット間のオフセットが、条件
【0018】
【数4】
または条件
【0019】
【数5】
を満たし、
ただし、
【0020】
【数6】
=二つの走査検知ユニット間のオフセット
【0021】
【数7】
=加工工具とアライメントセンサ間の間隔
であると利点がある。
移動方向に沿って第一および第二対象物間の相対位置を測定するために、走査検知ユニットが選択的に機能できるように構成されているようにすることがある。
【0022】
対象物アライメントマークおよび/または加工品アライメントマークが、微細構造として構成されていることがある。
基準尺が、直線目盛または角度目盛として、または二次元の十字格子目盛として構成されていることがある。
【0023】
加工品に対して加工工具を位置決めするための本発明による方法の範疇では、第一対象物に対象物アライメントマークおよび加工品を配設し、そして加工品に加工品アライメントマークが配設されているようにしている。第二対象物が、少なくとも一つの移動方向に沿って可動で、第一対象物に対向して配置されている。第二対象物には加工工具が配設されており、加工工具を介して対象物アライメントマークを検知する。第二対象物には更にアライメントセンサが配設されており、アライメントセンサを介して対象物アライメントマークおよび加工品アライメントマークを検知する。第二対象物には更に、少なくとも一つの移動方向に沿って延伸していると共に走査検知可能な基準尺が配設されている。第一対象物には基準尺を走査検知するために、少なくとも二つの走査検知ユニットが配設されており、少なくとも二つの走査検知ユニットにより移動方向に沿って第一および第二対象物間の相対位置を測定し、二つの走査検知ユニットが規定のオフセットを有している。
【0024】
二つの走査検知ユニット間のオフセットを、加工工具とアライメントセンサ間の間隔とほぼ同一で選択することがある。
更に、二つの走査検知ユニット間のオフセットを、加工工具とアライメントセンサ間の間隔と同一で選択することがある。
【0025】
利点ある実施形態では二つの走査検知ユニット間のオフセットが、条件
【0026】
【数8】
または条件
【0027】
【数9】
で選ばれ、ただし、
【0028】
【数10】
=二つの走査検知ユニット間のオフセット
【0029】
【数11】
=加工工具とアライメントセンサ間の間隔
となる。
第一および第二対象物間の相対位置を測定するために、二つの走査検知ユニットの一つだけを選択的に機能させるようにすることがある。
【0030】
本発明による変形例では一つの方法ステップで、対象物アライメントマークが加工工具の位置に移動し、そこで第一走査検知ユニットを使って検出した第一および第二対象物間の相対位置を記録する。次の方法ステップで、対象物アライメントマークがアライメントセンサの位置に移動し、そこで第二走査検知ユニットを使って検出した第一および第二対象物間の相対位置を記録する;次の方法ステップで、加工品アライメントマークがアライメントセンサの位置に移動し、そこで第二走査検知ユニットを使って検出した第一および第二対象物間の相対位置を記録する。ただし、三つの異なった方法ステップの順序は、任意に選択できる。
【0031】
この本発明による方法の変形例では引き続いて、先行する三つの方法ステップの測定結果をベースにして、第二対象物に対する第一対象物の位置決めを、加工品アライメントマークの周辺で加工工具を使って加工品を加工する間に行う。
【0032】
本発明による解決手段の特別な利点として挙げられることは、加工品に対して加工工具を正確に位置決めするために今や、位置測定のために使用する基準尺の比較的大きな範囲を走査検知する必要がないことである。本発明による少なくとも二つの走査検知ユニットによる走査検知は対照的に、基準尺の空間的に狭く限られた範囲に制限される。それにより位置測定の精度に影響するのは、この空間的に限られた範囲における基準尺の誤差のみである。この範囲の幅は、ここで加工される加工品の面に関係する。従って位置測定およびそれをベースにして加工工具と加工品を相対的に位置決めする時に生じる誤差は、全体として明らかに小さい。
【0033】
それにより精度仕様に応じて、使用する基準尺で費用工数のかかる較正を省くことができる。その他に熱膨張に起因する測定誤差は、基準尺の走査検知範囲で小さい寸法内では無視できるので、より簡単に当該装置の熱的な安定化を行うことができる。走査検知する範囲間の熱膨張は、本発明により間隔をおいた少なくとも二つの走査検知ユニットを使用することにより、もはや影響を生じない。
【0034】
本発明の更なる利点および詳細は、添付の図面を使った以下の実施例の説明から分かる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】従来技術を説明するための概略図。
図2】基準尺に存在する長波の変形に対する例示的な図示。
図3】従来技術による方法で色々な位置において生じる位置決め誤差の図示。
図4】本発明による配設を使用した方法ステップ。
図5】本発明による配設を使用した方法ステップ。
図6】本発明による配設を使用した方法ステップ。
図7】本発明による配設を使用した方法ステップ。
図8】本発明による配設を使用した方法で色々な位置において生じる位置決め誤差の図示。
【発明を実施するための形態】
【0036】
【実施例】
【0037】
本発明による配設を図4〜6において、本来の加工ステップ前に較正目的で実施する先に述べた色々な較正ないし位置参照ステップで示している。図7は、本来の加工品加工を行うステップを示している。以下においては、異なった参照符号の別の意味を明確に言及しない限り、これらは最初に記載した図1の参照符号に相当している。以下において図4〜7を使い、本発明による構造および本発明による方法の実施例を説明することにする。
【0038】
本発明で基本となる考えは、最初に検討した従来技術との違いとして、第一対象物O1に少なくとも二つの走査検知ユニットE,Eが、基準尺Sを走査検知するために配設されており、それにより該当形式で第一対象物O1と第二対象物O2間の相対位置を、移動方向xに沿って高精度で測定することにある。図示の実施例では、例えば干渉方式による走査検知原理を介して、基準尺Sを高分解能で光学的に走査検知するようにしている。そこで二つの走査検知ユニットE,Eは、図4〜7の図示から分かるように、規定に従って選択されたオフセット
【0039】
【数12】
を有している;図示の実施例ではオフセット
【0040】
【数13】
が、移動方向xに沿って延伸している。二つの走査検知ユニットE,E間のオフセット
【0041】
【数14】
は本発明に従い、加工工具BとアライメントセンサW間の間隔
【0042】
【数15】
とほぼ同一で選択する;それどころか、可能な実施形態ではそれと完全に同一である。このオフセットを、条件
【0043】
【数16】
(式1)
で選択する。ただし、
【0044】
【数17】
=移動方向に沿った二つの走査検知ユニット間のオフセット
【0045】
【数18】
=移動方向に沿った加工工具とアライメントセンサ間の間隔
である。これによると、移動方向xに沿った二つの走査検知ユニットE,E間のオフセット
【0046】
【数19】
にとって利点のあることが基本的に分かっている。
利点のある実施形態では例えば、
【0047】
【数20】
(式1.1)
を選択する。
第一対象物O1において少なくとも二つの走査検知ユニットE,Eを、規定に従うオフセット
【0048】
【数21】
で使用することにより、走査検知する基準尺Sで場合により現れる変形に基づく最初に説明した位置測定時の測定誤差を大きく減少できるが、それを以下において図4〜8の説明を使って詳細に示す。
【0049】
本来の加工品加工を行う前の、本発明による構造を使った第一較正ステップV1を、図4に図示している。そこでは対象物アライメントマークMが加工工具Bの位置に移動し、第一走査検知ユニットEを使って、第一対象物O1と第二対象物O2間の相対位置を検出し、−図示していない−制御ユニットにより記録する。図4において第一走査検知ユニットEと基準尺S間にある破線の接続により明示しているように、位置測定のためのこのステップにおいて第一走査検知ユニットEを介して、基準尺SのRで表された第一範囲を走査検知する。
【0050】
次の較正ステップV2を、図5で示している。ここで対象物アライメントマークM1がアライメントセンサWの位置に移動し、第二走査検知ユニットEを使って、第一対象物O1と第二対象物O2間の相対位置を検出して、制御ユニットにより記録する。このステップで第二走査検知ユニットEが、基準尺S上で分かるように同じくRで表された第一範囲、即ち前記の較正ステップと同じ範囲を走査検知する。
【0051】
本発明による配設を使った第三較正ステップを、図6で示している。ここでは加工品アライメントマークMがアライメントセンサWの位置に移動し、第二走査検知ユニットEを使って、第一対象物O1と第二対象物O2間の相対位置を検出して、制御ユニットにより記録する。図6から分かるように、この方法ステップでは第二走査検知ユニットEを介して、基準尺S上の第二範囲Rの走査検知が行われる。
【0052】
ここで、これら三つの方法ステップV1〜V3は、本来の加工品加工の前における較正目的のために、必ずしも記載の順序で行う必要はないことを示唆しておきたい;更に云えば、これら方法ステップの別の順序も可能である。
【0053】
最後に図7において、較正ステップV1〜V3に続く加工品の加工が分かるようにしている。ここでは加工品WSが加工工具Bを介して、加工品アライメントマークMの近くで加工される。このステップにおいては図から分かるように、基準尺S上の第二範囲Rを走査検知する第一走査検知ユニットEを使って、位置測定が行われる。
【0054】
この実施例の色々な方法ステップで位置測定のために使用されるのは、それぞれ二つの走査検知ユニットE,Eの一つのみである。即ち、上位配設された制御ユニットが機能させるのは、それぞれ二つの走査検知ユニットE,Eの一つのみである。従って走査検知ユニットE,Eは、選択的に機能できるように構成されている。
【0055】
この本発明による構造を使った色々な方法ステップの説明から明らかなように、二つの走査検知ユニットE,Eを使って行う基準尺Sの走査検知は、較正中も本来の加工品加工中も基準尺S上の二つの範囲R,Rのみに限られている。加えて、これら二つの範囲R,Rが有する幅は、基準尺Sの目盛面で例えば上記の間隔
【0056】
【数22】
より小さいレベルの直径を有する比較的小さな面のみである。以上により図7による加工工程中の位置測定となるのは、小さい幅を有する二つの範囲R,Rの走査検知による相対的な位置測定であるので、基準尺Sでの場合による長波の誤差に起因する最初に述べた誤差を、著しく最小化することができる。本発明による方策により、加工プロセスにおいて最適化された位置測定が得られる。
【0057】
以下においては本発明による方策に基づき、どのようにして上記の誤差最小化が得られるかを、図4〜7を参照して説明することにする。
加工工具Bが加工品アライメントマークMの上方にある時の対象物O1、即ちテーブルの位置を、
【0058】
【数23】
で表すことにする。三つの較正方法ステップV1〜V3および加工方法ステップV4における対象物位置は、次のとおりである:
【0059】
【数24】
(式2.1)
【0060】
【数25】
(式2.2)
【0061】
【数26】
(式2.3)
【0062】
【数27】
(式2.4)
ここで、
【0063】
【数28】
は、求める量、即ち、テーブル位置
【0064】
【数29】
において加工中の加工品アライメントマークMに対する相対的な加工工具Bのオフセットである。簡単にするために以下において考えるのは、基準尺Sおよび走査検知ユニットE,Eで構成するシステムとし、それを使うことにより、測定方向
【0065】
【数30】
に沿った
【0066】
【数31】
の単一成分のみを測定することができる。実際の応用では、走査検知ユニットE,Eおよび異なった測定方向を有する基準尺Sで構成するシステムを互いに組合せて、
【0067】
【数32】
の多数の成分を測定することができる。
測定位置
【0068】
【数33】
での基準尺Sの読み取り時における走査検知ユニットEの出力測定値mE1は、関数
【0069】
【数34】
(式2.5)
として記載され、ここで、
【0070】
【数35】
は、不均等ないし変形した基準尺Sに基づくと共に
【0071】
【数36】
に伴って徐々に変化する誤差項である。
走査検知ユニットEにより検出された測定値
【0072】
【数37】
は、対応して関数
【0073】
【数38】
(式2.6)
として記載される。
そして四つの装置位置における測定値m〜mは、次のように得られる:
【0074】
【数39】
(式2.7)
【0075】
【数40】
(式2.8)
【0076】
【数41】
(式2.9)
【0077】
【数42】
(式2.10)
求める量
【0078】
【数43】
は、未知の誤差項uを除いて、測定値m〜mの適切な直線組合せから得られる:
【0079】
【数44】
(式2.11)
ここで、
【0080】
【数45】
を代入している。
ここでは、
【0081】
【数46】
の著しい変化が予想されるスライド量の大きさレベルに較べて、
【0082】
【数47】
および
【0083】
【数48】
が小さいと前提することにする。基準尺誤差が基準尺Sの殆ど同じ位置でそれぞれ異なった正負の符号で現れるので、このような前提の下で誤差項は、それぞれ式2.11の第二および第三の行で大部分吸収される。このことは、測定方向
【0084】
【数49】
と関係なく、従って二つの対象物O1,O2の相対移動の測定自由度すべてに当て嵌まる。
以上の検討から明らかなように基準尺Sの誤差が影響するのは、本発明による方策により最終的に、空間的に制限された比較的小さい範囲R,R内のみである。この範囲R,Rの大きさは、加工品アライメントマークM周りの加工する加工品面により得られる。図2に記載の基準尺で現れる変形を仮定すると、本発明により少なくとも二つの走査検知ユニットを説明したように使用する時には、図3の図示に相当して図8が、種々の装置位置において生じる位置決め誤差ないし測定誤差Δxrelを示している。図8から分かるように、基準尺の変形から生じる測定誤差Δxrelは、
【0085】
【数50】
の時にゼロに解消する。加工工具Bの位置決めが、加工品アライメントマークMの周辺で今や高精度で可能である。
説明した本発明による構造の実施例および本発明による方法の他に勿論、本発明の範疇において更に別の構成の可能性がある。
【0086】
従って直線の基準尺に対する代替として、十字格子目盛として構成された二次元の基準尺を使用するようにもできる。対象物が互いの間で回転可能な場合には、基準尺を角度目盛として構成し、間隔をおいた二つの走査検知ユニットが、それを走査検知することも可能である。この場合には本発明に従い二つの走査検知ユニットの角度間隔が、概ね対象物アライメントマークと加工品アライメントマーク間の角度間隔に相当していなければならない。
【0087】
更に基準尺の光学的な走査検知に対する代替として磁気的、容量的、または誘電的な走査検知を、基準尺および走査検知ユニットを対応した構成にして行うこともできる。
また本発明による構造に、複数の加工工具および/またはアライメントセンサが備わっていることもある。この場合には、対応して複数の走査検知ユニットも必要となるであろう。そして個々の方法ステップに対して、先に記載した方策に相当して適切な走査検知ユニットを選択することになる。
【0088】
本発明による方法の変形例ないし展開例において更に、先に説明した較正ステップの前に、機能する二つの走査検知ユニットを使って、測定範囲に沿って追加の測定過程を実施することも可能であろう;二つの走査検知ユニットで生成された測定値は、互いの間で差異がある。先に説明した後続の方法ステップが、そこで生じた測定値を、先行する測定過程で得られた較正データを使って補正することができる。
【符号の説明】
【0089】
B 加工工具
E 走査検知ユニット
O1 第一対象物
O2 第二対象物
R 範囲
S 基準尺
W アライメントセンサ
WS 加工品
M アライメントマーク
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8