【実施例】
【0037】
本発明による配設を
図4〜6において、本来の加工ステップ前に較正目的で実施する先に述べた色々な較正ないし位置参照ステップで示している。
図7は、本来の加工品加工を行うステップを示している。以下においては、異なった参照符号の別の意味を明確に言及しない限り、これらは最初に記載した
図1の参照符号に相当している。以下において
図4〜7を使い、本発明による構造および本発明による方法の実施例を説明することにする。
【0038】
本発明で基本となる考えは、最初に検討した従来技術との違いとして、第一対象物O1に少なくとも二つの走査検知ユニットE
1,E
2が、基準尺Sを走査検知するために配設されており、それにより該当形式で第一対象物O1と第二対象物O2間の相対位置を、移動方向xに沿って高精度で測定することにある。図示の実施例では、例えば干渉方式による走査検知原理を介して、基準尺Sを高分解能で光学的に走査検知するようにしている。そこで二つの走査検知ユニットE
1,E
2は、
図4〜7の図示から分かるように、規定に従って選択されたオフセット
【0039】
【数12】
を有している;図示の実施例ではオフセット
【0040】
【数13】
が、移動方向xに沿って延伸している。二つの走査検知ユニットE
1,E
2間のオフセット
【0041】
【数14】
は本発明に従い、加工工具BとアライメントセンサW間の間隔
【0042】
【数15】
とほぼ同一で選択する;それどころか、可能な実施形態ではそれと完全に同一である。このオフセットを、条件
【0043】
【数16】
(式1)
で選択する。ただし、
【0044】
【数17】
=移動方向に沿った二つの走査検知ユニット間のオフセット
【0045】
【数18】
=移動方向に沿った加工工具とアライメントセンサ間の間隔
である。これによると、移動方向xに沿った二つの走査検知ユニットE
1,E
2間のオフセット
【0046】
【数19】
にとって利点のあることが基本的に分かっている。
利点のある実施形態では例えば、
【0047】
【数20】
(式1.1)
を選択する。
第一対象物O1において少なくとも二つの走査検知ユニットE
1,E
2を、規定に従うオフセット
【0048】
【数21】
で使用することにより、走査検知する基準尺Sで場合により現れる変形に基づく最初に説明した位置測定時の測定誤差を大きく減少できるが、それを以下において
図4〜8の説明を使って詳細に示す。
【0049】
本来の加工品加工を行う前の、本発明による構造を使った第一較正ステップV1を、
図4に図示している。そこでは対象物アライメントマークM
1が加工工具Bの位置に移動し、第一走査検知ユニットE
1を使って、第一対象物O1と第二対象物O2間の相対位置を検出し、−図示していない−制御ユニットにより記録する。
図4において第一走査検知ユニットE
1と基準尺S間にある破線の接続により明示しているように、位置測定のためのこのステップにおいて第一走査検知ユニットE
1を介して、基準尺SのR
1で表された第一範囲を走査検知する。
【0050】
次の較正ステップV2を、
図5で示している。ここで対象物アライメントマークM1がアライメントセンサWの位置に移動し、第二走査検知ユニットE
2を使って、第一対象物O1と第二対象物O2間の相対位置を検出して、制御ユニットにより記録する。このステップで第二走査検知ユニットE
2が、基準尺S上で分かるように同じくR
1で表された第一範囲、即ち前記の較正ステップと同じ範囲を走査検知する。
【0051】
本発明による配設を使った第三較正ステップを、
図6で示している。ここでは加工品アライメントマークM
2がアライメントセンサWの位置に移動し、第二走査検知ユニットE
2を使って、第一対象物O1と第二対象物O2間の相対位置を検出して、制御ユニットにより記録する。
図6から分かるように、この方法ステップでは第二走査検知ユニットE
2を介して、基準尺S上の第二範囲R
2の走査検知が行われる。
【0052】
ここで、これら三つの方法ステップV1〜V3は、本来の加工品加工の前における較正目的のために、必ずしも記載の順序で行う必要はないことを示唆しておきたい;更に云えば、これら方法ステップの別の順序も可能である。
【0053】
最後に
図7において、較正ステップV1〜V3に続く加工品の加工が分かるようにしている。ここでは加工品WSが加工工具Bを介して、加工品アライメントマークM
2の近くで加工される。このステップにおいては図から分かるように、基準尺S上の第二範囲R
2を走査検知する第一走査検知ユニットE
1を使って、位置測定が行われる。
【0054】
この実施例の色々な方法ステップで位置測定のために使用されるのは、それぞれ二つの走査検知ユニットE
1,E
2の一つのみである。即ち、上位配設された制御ユニットが機能させるのは、それぞれ二つの走査検知ユニットE
1,E
2の一つのみである。従って走査検知ユニットE
1,E
2は、選択的に機能できるように構成されている。
【0055】
この本発明による構造を使った色々な方法ステップの説明から明らかなように、二つの走査検知ユニットE
1,E
2を使って行う基準尺Sの走査検知は、較正中も本来の加工品加工中も基準尺S上の二つの範囲R
1,R
2のみに限られている。加えて、これら二つの範囲R
1,R
2が有する幅は、基準尺Sの目盛面で例えば上記の間隔
【0056】
【数22】
より小さいレベルの直径を有する比較的小さな面のみである。以上により
図7による加工工程中の位置測定となるのは、小さい幅を有する二つの範囲R
1,R
2の走査検知による相対的な位置測定であるので、基準尺Sでの場合による長波の誤差に起因する最初に述べた誤差を、著しく最小化することができる。本発明による方策により、加工プロセスにおいて最適化された位置測定が得られる。
【0057】
以下においては本発明による方策に基づき、どのようにして上記の誤差最小化が得られるかを、
図4〜7を参照して説明することにする。
加工工具Bが加工品アライメントマークM
2の上方にある時の対象物O1、即ちテーブルの位置を、
【0058】
【数23】
で表すことにする。三つの較正方法ステップV1〜V3および加工方法ステップV4における対象物位置は、次のとおりである:
【0059】
【数24】
(式2.1)
【0060】
【数25】
(式2.2)
【0061】
【数26】
(式2.3)
【0062】
【数27】
(式2.4)
ここで、
【0063】
【数28】
は、求める量、即ち、テーブル位置
【0064】
【数29】
において加工中の加工品アライメントマークM
2に対する相対的な加工工具Bのオフセットである。簡単にするために以下において考えるのは、基準尺Sおよび走査検知ユニットE
1,E
2で構成するシステムとし、それを使うことにより、測定方向
【0065】
【数30】
に沿った
【0066】
【数31】
の単一成分のみを測定することができる。実際の応用では、走査検知ユニットE
1,E
2および異なった測定方向を有する基準尺Sで構成するシステムを互いに組合せて、
【0067】
【数32】
の多数の成分を測定することができる。
測定位置
【0068】
【数33】
での基準尺Sの読み取り時における走査検知ユニットE
1の出力測定値m
E1は、関数
【0069】
【数34】
(式2.5)
として記載され、ここで、
【0070】
【数35】
は、不均等ないし変形した基準尺Sに基づくと共に
【0071】
【数36】
に伴って徐々に変化する誤差項である。
走査検知ユニットE
2により検出された測定値
【0072】
【数37】
は、対応して関数
【0073】
【数38】
(式2.6)
として記載される。
そして四つの装置位置における測定値m
1〜m
4は、次のように得られる:
【0074】
【数39】
(式2.7)
【0075】
【数40】
(式2.8)
【0076】
【数41】
(式2.9)
【0077】
【数42】
(式2.10)
求める量
【0078】
【数43】
は、未知の誤差項u
Sを除いて、測定値m
1〜m
4の適切な直線組合せから得られる:
【0079】
【数44】
(式2.11)
ここで、
【0080】
【数45】
を代入している。
ここでは、
【0081】
【数46】
の著しい変化が予想されるスライド量の大きさレベルに較べて、
【0082】
【数47】
および
【0083】
【数48】
が小さいと前提することにする。基準尺誤差が基準尺Sの殆ど同じ位置でそれぞれ異なった正負の符号で現れるので、このような前提の下で誤差項は、それぞれ式2.11の第二および第三の行で大部分吸収される。このことは、測定方向
【0084】
【数49】
と関係なく、従って二つの対象物O1,O2の相対移動の測定自由度すべてに当て嵌まる。
以上の検討から明らかなように基準尺Sの誤差が影響するのは、本発明による方策により最終的に、空間的に制限された比較的小さい範囲R
1,R
2内のみである。この範囲R
1,R
2の大きさは、加工品アライメントマークM
2周りの加工する加工品面により得られる。
図2に記載の基準尺で現れる変形を仮定すると、本発明により少なくとも二つの走査検知ユニットを説明したように使用する時には、
図3の図示に相当して
図8が、種々の装置位置において生じる位置決め誤差ないし測定誤差Δx
relを示している。
図8から分かるように、基準尺の変形から生じる測定誤差Δx
relは、
【0085】
【数50】
の時にゼロに解消する。加工工具Bの位置決めが、加工品アライメントマークM
2の周辺で今や高精度で可能である。
説明した本発明による構造の実施例および本発明による方法の他に勿論、本発明の範疇において更に別の構成の可能性がある。
【0086】
従って直線の基準尺に対する代替として、十字格子目盛として構成された二次元の基準尺を使用するようにもできる。対象物が互いの間で回転可能な場合には、基準尺を角度目盛として構成し、間隔をおいた二つの走査検知ユニットが、それを走査検知することも可能である。この場合には本発明に従い二つの走査検知ユニットの角度間隔が、概ね対象物アライメントマークと加工品アライメントマーク間の角度間隔に相当していなければならない。
【0087】
更に基準尺の光学的な走査検知に対する代替として磁気的、容量的、または誘電的な走査検知を、基準尺および走査検知ユニットを対応した構成にして行うこともできる。
また本発明による構造に、複数の加工工具および/またはアライメントセンサが備わっていることもある。この場合には、対応して複数の走査検知ユニットも必要となるであろう。そして個々の方法ステップに対して、先に記載した方策に相当して適切な走査検知ユニットを選択することになる。
【0088】
本発明による方法の変形例ないし展開例において更に、先に説明した較正ステップの前に、機能する二つの走査検知ユニットを使って、測定範囲に沿って追加の測定過程を実施することも可能であろう;二つの走査検知ユニットで生成された測定値は、互いの間で差異がある。先に説明した後続の方法ステップが、そこで生じた測定値を、先行する測定過程で得られた較正データを使って補正することができる。