【実施例】
【0085】
<実施例1>
純度99.999%以上のアルミニウムに、0.5重量%の銅を添加し、これらの混合物を溶融して鋳造して得られる鋳塊(スラブ)を圧延して熱処理した後に円盤状にくり抜き、ターゲット材の予備成形体を得た。
【0086】
かかるターゲット材の予備成形体と、
図2に示す形状の支持部材6とを電子ビーム(EB)溶接にて接合し、さらに切削加工によりターゲット材の予備成形体を
図2に示すターゲット材Tの形状に成形することにより、本発明のスパッタリングターゲットを製造した。ターゲット材Tの各寸法は、以下の通りである。
【0087】
r
s:159.57mm
r
1:112.00mm
d
1:1.65mm(第2の領域2の厚さd
3の5.98%)
d
2:23.94mm
d
3:27.60mm
d
4:319.14mm
d
5:44.57mm
d
6:3.00mm
θ:29°
r
1/r
s:70.2%
スパッタリングターゲット全体の高さ(第2の領域の上面から支持部材のフランジ部の裏面までの距離):56.26mm
【0088】
<参照例>
実施例1と同様にして、
図3に示す標準形状のターゲット材T
0を備えたスパッタリングターゲットを作製した。なお、ターゲット材T
0の支持部材は、実施例1と同一形状のものを使用した。
【0089】
標準形状のターゲット材T
0の形状は、
図3の断面図に示す通りであり、各寸法は、以下の通りである。
【0090】
スパッタリング面の直径:323.42mm
ターゲット材T
0の接合部xを除く最大厚さd
0:19.61mm
スパッタリングターゲット全体の高さ(ターゲット材T
0の上面から支持部材のフランジ部の裏面までの距離):48.26mm
【0091】
<比較例1>
実施例1と同様にして、
図4の断面図および
図6の上面図に示す形状のターゲット材Tc
1を備えたスパッタリングターゲットを作製した。なお、ターゲット材Tc
1の支持部材は、実施例1と同一形状のものを使用した。
【0092】
ターゲット材Tc
1は、参照例の標準形状のターゲット材T
0の厚さを全体的に均一にして、d
10だけ増加させたものである(
図4の断面図参照)。なお、
図4のターゲット材Tc
1において、点線Lは、参照例の標準形状のターゲット材T
0のスパッタリング面の位置を示す。
【0093】
ターゲット材Tc
1の各寸法は、以下の通りである。
【0094】
ターゲット材Tc
1の厚さ(d
0+d
10):27.61mm
d
0:19.61mm
d
10:8.00mm
スパッタリング面の直径(平面領域101の直径)d
11:319.14mm
スパッタリングターゲット全体の高さ(ターゲット材T
C1の上面から支持部材のフランジ部の裏面までの距離):56.26mm
【0095】
<比較例2>
実施例1と同様にして、
図4の断面図および
図6の上面図に示す形状のターゲット材Tc
2を備えたスパッタリングターゲットを作製した。なお、ターゲット材Tc
2の支持部材は、実施例1と同一の形状のものを使用した。
【0096】
ターゲット材Tc
2は、比較例1のターゲット材Tc
1の周縁部に段差を設けたものである(
図4の断面図参照)。
【0097】
ターゲット材Tc
2の各寸法は、以下の通りである。
【0098】
ターゲット材Tc
2の厚さ(d
0+d
10):27.61mm
d
0:19.61mm
d
10:8.00mm
d
12(中心平面領域102の直径):260.00mm
d
13(段差部の幅):16.71mm
d
14(傾斜部の幅):15.00mm
スパッタリングターゲット全体の高さ(ターゲット材Tc
2の最上面から支持部材のフランジ部の裏面までの距離):56.26mm
【0099】
<比較例3>
実施例1と同様にして、
図5の断面図および
図7の上面図に示す形状のターゲット材Tc
3を備えたスパッタリングターゲットを作製した。なお、ターゲット材Tc
3の支持部材は、実施例1と同一形状のものを使用した。
【0100】
ターゲット材Tc
3は、参照例の標準形状のターゲット材T
0のスパッタリング面にリング状の平面領域201を同心円状に隆起させて形成したものである(
図5の断面図参照)。
【0101】
ターゲット材Tc
3の各寸法は、以下の通りである。
【0102】
d
0:19.61mm
d
15(リングの高さ):8.00mm(ターゲット材の厚さ(d
0+d
15)の29.0%)
d
16(中心平面領域103の直径):200.00mm
d
17(リング状の平面領域201のリング幅):15.00mm
d
18(リングの内側の傾斜部の幅):15.00mm
d
19(リングの外側の傾斜部の幅):15.00mm
d
20(段差部の幅):16.71mm
スパッタリングターゲット全体の高さ(ターゲット材Tc
3の最上面から支持部材のフランジ部の裏面までの距離):56.26mm
【0103】
<比較例4>
実施例1と同様にして、
図5の断面図および
図7の上面図に示す形状のターゲット材Tc
4を備えたスパッタリングターゲットを作製した。なお、ターゲット材Tc
4の支持部材は、実施例1と同一形状のものを使用した。
【0104】
ターゲット材Tc
4は、参照例の標準形状のターゲット材T
0のスパッタリング面に二重のリング状の平面領域202(外側)および203(内側)を同心円状に隆起させて形成したものである(
図5の断面図参照)。
【0105】
ターゲット材Tc
4の各寸法は、以下の通りである。
【0106】
d
0:19.61mm
d
21(内側リングの高さ):8.00mm(ターゲット材の厚さ(d
0+d
21(=d
0+d
22))の29.0%)
d
22(外側リングの高さ):8.00mm(ターゲット材の厚さ(d
0+d
21(=d
0+d
22))の29.0%)
d
23(中心平面領域104の直径):10.00mm
d
24(内側リングのリング幅):20.00mm
d
25(内側リングの内側傾斜部の幅):15.00mm
d
26(内側リングの外側傾斜部の幅):15.00mm
d
27(外側リングのリング幅):15.00mm
d
28(外側リングの内側傾斜部の幅):15.00mm
d
29(外側リングの外側傾斜部の幅):15.00mm
d
30(段差部の幅):16.71mm
d
31(外側平面領域105の幅):45.00mm
スパッタリングターゲット全体の高さ(ターゲット材T
C4の最上面から支持部材のフランジ部の裏面までの距離):56.26mm
【0107】
<比較例5>
実施例1と同様にして、
図8の上面図および断面図に示す形状のターゲット材Tc
5を備えたスパッタリングターゲットを作製した。なお、ターゲット材Tc
5の支持部材は、実施例1と同一形状のものを使用した。
【0108】
ターゲット材Tc
5の形状は、主に、実施例1のターゲット材T(
図2)のd
1およびd
2の寸法を変更し、さらに周縁部5に段差部9を形成したものである(
図8の断面図参照)。
【0109】
ターゲット材Tc
5の各寸法は、以下の通りである。
【0110】
r
s:161.71mm
r
1:105.00mm
d
1:4.49mm(第2の領域の厚さd
3の16.3%)
d
2:21.11mm
d
3:27.60mm
d
4:323.42mm
d
5:15.00mm
d
6:10.00mm
d
7:15.00mm
d
8:16.71mm
d
9:19.61mm
θ:24°
r
1/r
s:64.9%
スパッタリングターゲット全体の高さ(第2の領域2の上面から支持部材のフランジ部の裏面までの距離):56.26mm
【0111】
<比較例6>
r
1およびd
5の寸法を変更したこと以外は、実施例1と同様にして、ターゲット材Tc
6を備えたスパッタリングターゲットを作製した。なお、ターゲット材Tc
6の支持部材は、実施例1と同一形状のものを使用した。
【0112】
ターゲット材Tc
6の各寸法は、以下の通りである。
【0113】
r
s:159.57mm
r
1:52.00mm
d
1:1.65mm(第2の領域2の厚さd
3の5.98%)
d
2:23.94mm
d
3:27.60mm
d
4:319.14mm
d
5:104.57mm
d
6:3.00mm
θ:29°
r
1/r
s:32.6%
スパッタリングターゲット全体の高さ(第2の領域の上面から支持部材のフランジ部の裏面までの距離):56.26mm
【0114】
<スパッタリング>
マグネトロンスパッタリング装置(アプライド・マテリアルズ社製のEndura 5500、マグネット:Dura−type)、ならびに実施例、参照例および比較例のスパッタリングターゲットをそれぞれ使用して、直径が200mmの基板(LG Siltron社製のシリコン基板)に、以下の条件にて、薄膜を形成した。
【0115】
スパッタリング条件
出力:10600W
不活性ガス:アルゴン
チャンバ内圧力:2.75mTorr
基板温度:300℃
ターゲット−基板間の距離(TS距離):35mm(ターゲット材:T、Tc
1〜Tc
6)または43mm(ターゲット材:T
0)
【0116】
<スパッタリングターゲットの評価>
【0117】
実施例、参照例および比較例の各スパッタリングターゲットについて、上記の条件で0〜2000kWhの範囲にわたって、スパッタリング操作を行い、各スパッタリングターゲットの寿命を評価した。
【0118】
また、上記のスパッタリング条件において、実施例、参照例および比較例の各スパッタリングターゲットを用いて、基板上に形成した薄膜のシート抵抗値(Ω/□)を所定の積算電力で
図9に示す49点で測定し、そこから各点における膜厚を算出し、その最大値(max)と最小値(min)とから、式:(max−min)/(max+min)×100(%)に従って、膜厚均一性を決定し、各スパッタリングターゲットによって、各基板上に形成された薄膜の膜厚均一性を評価した。
【0119】
それと同時に、上記の49点で測定したシート抵抗値(Ω/□)から膜厚を算出し、そこから標準偏差σを計算し、1σ%(パーセント1シグマ)の値を算出した。なお、ここで標準偏差σは、下式で算出されるものである。
【0120】
【数1】
【0121】
式中、nはデータ数、X
AVEは平均値を表す。
【0122】
さらに、この49点で測定したシート抵抗値(Ω/□)から算出した膜厚の平均値に対して、
図9に示す中央の1点(Point 1)、その周囲の8点(Point 2−9(中心からの距離:30mm))、その周囲の16点(Point 10−25(中心からの距離:60mm))、さらにその周囲の24点(Point 26−49(中心からの距離:90mm))の割合をそれぞれパーセントで算出した(平均膜厚に対する膜厚(%))。
【0123】
・参照例のスパッタリングターゲットの評価結果
図10のグラフに示す通り、参照例の標準形状のスパッタリングターゲット(ターゲット材T
0(
図4参照))では、膜厚均一性に優れるが、その寿命は1200kWhであり、十分に満足できるものではなかった。
【0124】
また、
図11のグラフに示す通り、参照例の標準形状のスパッタリングターゲットでは、基板上に形成した薄膜の全面にわたって(すなわち、Point 1〜49のすべてにおいて)、ある程度の膜厚均一性は確保できるが、その中央部(Point 1)において、その膜厚が低いことがわかった。
【0125】
・実施例1のスパッタリングターゲットの評価結果
図12のグラフに示す通り、本発明の実施例1のスパッタリングターゲット(ターゲット材T(
図2参照))では、2000kWhの長寿命を有することが明らかとなった。なお、参照例の標準形状のスパッタリングターゲットの寿命は、上述の通り1200kWhであり(
図10および12)、これに対して、本発明の実施例1のスパッタリングターゲットは、参照例の標準形状のスパッタリングターゲットの1.5倍以上の寿命を有することがわかった。
【0126】
また、
図12のグラフに示す通り、本発明の実施例1のスパッタリングターゲットによると、0〜2000kWhの全域において、上述の参照例の標準形状のスパッタリングターゲットよりも優れた膜厚均一性を示すことがわかった。
【0127】
さらに
図13のグラフに示す通り、本発明の実施例1のスパッタリングターゲットによると、0〜2000kWhの全域にわたって、基板上に形成した薄膜の全面において、優れた膜厚均一性を提供できることがわかった。
【0128】
このように、本発明の実施例1のスパッタリングターゲットは、2000kWhの長寿命を有し、なおかつ0〜2000kWhの寿命の全域において、基板の全面にわたって、優れた膜厚均一性を提供できることがわかった。
【0129】
・比較例1のスパッタリングターゲットの評価結果
図14に示す通り、比較例1のスパッタリングターゲット(ターゲット材Tc
1(
図4参照))では、2000kWhまでスパッタリングを行うことはできるが、その初期段階、特に0〜300kWhにおいて、膜厚均一性が著しく悪化することがわかった。
【0130】
また、
図15に示す通り、比較例1のスパッタリングターゲットでは、基板の中央部分(Point 1)において、膜厚が小さく、特にその初期段階(0〜300kWh)において、基板の中央部分(Point 1)の膜厚が著しく小さいことがわかった。
【0131】
このように、ターゲット材の厚さを単に全体的に増加させただけでは(
図4のターゲット材Tc
1参照)、スパッタリングの初期段階(0〜300kWh)において、膜厚均一性が悪く、特に、その中央部(Point 1)において、膜厚が著しく小さいことがわかった。
【0132】
・比較例2のスパッタリングターゲットの評価結果
図16に示す通り、比較例2のスパッタリングターゲット(ターゲット材Tc
2(
図4参照))は、スパッタリングの直後の初期段階から、膜厚均一性が著しく悪化することがわかった。
【0133】
さらに、
図16に示す通り、比較例2のスパッタリングターゲットでは、800kWhの時点から、膜厚均一性が著しく悪化するため(膜厚均一性:(max−min)/(max+min)=5.4%、1σ=3.7%)、もはやそれ以上、スパッタリングを続けても、スパッタリングターゲットの長寿命化は達成できないことが明らかとなった。
【0134】
また、
図17に示す通り、比較例2のスパッタリングターゲットでは、スパッタリングの直後の初期段階から、基板の外周部(Point 26−49)において形成される薄膜の膜厚は小さく、基板の全面にわたって均一な膜厚が得られないことがわかった。
【0135】
このように、ターゲット材の厚さを単に全体的に増加させ、さらにターゲット材の周縁部に段差を設けると(
図4のターゲット材Tc
2参照)、スパッタリングの初期段階から、膜厚均一性が著しく悪化することがわかった。
【0136】
また、
図18には、比較例2のスパッタリングターゲットにおけるターゲット材のエロージョン量を示す。
図18において、実線は、参照例のスパッタリングターゲットのターゲット材のエロージョン量を示し、破線は、比較例2のスパッタリングターゲットのターゲット材のエロージョン量を示す(0〜800kWhで400kWh毎)。
【0137】
図18から、比較例2のスパッタリングターゲットでは、参照例と比べて、ターゲット材の最も消費される部分がより外周部付近にあることがわかった。その結果、基板の外周部からより遠い位置のスパッタ量が増え、基板の外周部(Point 26−49)へ到達することなく消費されてしまうので、基板の外周部(Point 26−49)での膜厚が減少する。このことは、上述の
図17のグラフに示す結果と一致する。
【0138】
・比較例3、4および5のスパッタリングターゲットの評価結果
以下の表に示す通り、比較例3、4および5のスパッタリングターゲットは、いずれも初期段階(特に100kWh)での膜厚均一性が著しく悪いことが明らかとなった。
【0139】
・比較例6のスパッタリングターゲットの評価結果
以下の表に示す通り、比較例6のスパッタリングターゲットは、第1の領域の直径がスパッタリング面の外周の直径の32.6%であることから、第1の領域の直径がスパッタリング面の外周の直径の70.2%である実施例1に比べると、膜厚均一性が悪化することがわかった。
【0140】
【表1】
【0141】
なお、比較例3、4および5のスパッタリングターゲットにおいても、上述の比較例2と同様に、スパッタリングターゲットの長寿命化が達成できないことも明らかとなった。
【0142】
・段差についての検討
ここで、ターゲット材の周縁部に段差のない参照例(
図3、ターゲット材T
0参照)、本発明の実施例1(
図3、ターゲット材T参照)および比較例1(
図4、ターゲット材Tc
1参照)について、膜厚均一性の結果を以下の表にまとめる(
図10、12および14の結果もあわせて参照のこと)。
【0143】
【表2】
【0144】
これらの結果からも、実施例1のように、ターゲット材の周縁部に段差がない場合には、優れた膜厚均一性が得られることが実証されている。特に本発明の実施例1では、参照例および比較例1と比べても、その膜厚均一性は、初期および長期の両方、特に初期段階において、飛躍的に向上していることがわかる。
【0145】
従って、スパッタリングターゲットの長寿命化および膜均一性の向上において、ターゲット材の周縁部に段差を設けない方が良いことが実証されている。
【0146】
なお、参照例および比較例1では、100kWhでの1σの値がそれぞれ1.2%(参照例)、1.3%(比較例1)であり、いずれの場合においても、膜厚均一性が良好なように見える。しかし、比較例1では、上述の
図14および
図15で説明した通り、初期段階(0〜300kWh)における膜厚均一性は、著しく悪く、また、
図15に示すように、特に、初期段階(0〜300kWh)において、測定した49点のうち、その中心点(Point 1)の膜厚だけが著しく低いものであった。そして、このような結果は、その中心点(Point 1)の膜厚が、1σの計算に殆ど反映されないため、1σの値からは、見かけ上、膜厚均一性が良いように見えるからである。従って、このようなことから、1σの値によって膜厚均一性を評価することは、あまり適切でないこともわかった。
【0147】
・ターゲット材のエロージョン量に基づく長寿命化の検討
参照例、比較例1および実施例1の各スパッタリングターゲットについて測定したターゲット材のエロージョン量を
図19に示す。破線は、参照例でのエロージョンを示し、点線は、比較例1でのエロージョンを示し、実線は、実施例1でのエロージョンを示す(400〜2000kWhで、400、800、1200および2000kWh、ただし、参照例は、1200kWhまで)。
【0148】
図19のグラフから、本発明の実施例1のスパッタリングターゲットにおいては、中心から70〜125mmの部分、特に中心から90mm付近(すなわち、スパッタリング面の半径159.57mmに対して56.4%)から125mm付近(スパッタリング面の半径159.57mmに対して78.3%)にかけて、エロージョンが増加することが分かった。
【0149】
従って、スパッタリング面の外周の直径の60%〜80%の領域にかけて、本発明の第1の領域を設けることによって、ターゲット材の長寿命化および優れた膜厚均一性が達成できることがわかった。
【0150】
・膜厚均一性の向上の検討
【0151】
参照例、比較例1および比較例2の結果から、スパッタリング面の厚さを単に増加させただけでは、基板上に形成される薄膜の膜厚均一性は、向上しないことがわかった(
図10、11、14〜17)。
【0152】
また、
図11および
図15に示すグラフから、スパッタリングの初期段階(特に、0〜300kWh付近)において、基板上に形成される薄膜の中央部(Point 1)の膜厚が極端に小さいことが明らかとなった(特に
図15の比較例1のターゲット材Tc
1の場合)。
【0153】
なお、比較例1のターゲット材Tc
1を使用した場合において、このように基板上に形成される薄膜の中央部(Point 1)の膜厚が極端に薄くなる原因は、ターゲット材の厚さを増したことにより、ターゲット材−基板間の距離(TS距離)が短くなり、そして
図19に示すようにターゲット材の外周付近が激しく消費されることによって、基板の外周部の膜厚が大きくなり、基板の中央部(Point 1)での膜の形成量が相対的に低下したためであると考えられる。
【0154】
また、
図20および21に示すように、スパッタリングの極めて初期段階(特に0〜160kWh)において、
図20に示す比較例4(ターゲット材Tc
4)と比べて、
図21に示す比較例3(ターゲット材Tc
3)では、基板の中央部(Point 1)に形成される薄膜の膜厚が向上することが明らかとなった。
【0155】
これは、
図20に示す比較例4(ターゲット材Tc
4)では、スパッタリング面の中央付近にリング状の凸部が形成されているために中央付近が肉厚となっているのに対して、
図21に示す比較例3(ターゲット材Tc
3)では、スパッタリング面の中央部付近が一定の範囲で平坦であることに起因するものと考えられる(
図5)。
【0156】
従って、スパッタリング面の中央部は、ある程度の範囲にわたって、好ましくは上述の通り、スパッタリング面の外周の直径の60%〜80%の範囲にわたって平坦であると(
図19参照)、スパッタリングの初期段階において、基板上に形成される薄膜の中央部(Point 1)の膜厚を増加させて、膜厚均一性を向上させることができることがわかった。
【0157】
また、上述の
図20および21に示す結果は、スパッタリングターゲットの中央部の厚さと、基板上に形成される薄膜の中央部(Point 1)の膜厚との間に何らかの相関関係があることを示唆している。
【0158】
そこで、
図2に示す本発明の実施例1のスパッタリングターゲットにおいて、d
1を変更することによりターゲット材の中央部の厚さd
2を変更して、初期段階(特に100kWh)において、基板上に形成される薄膜の膜厚を測定した。その結果を
図22に示す。
【0159】
図22に示す結果では、d
1の値が8mmから小さくなるにつれて、各ポイントでの膜厚が収束して膜厚均一性が向上することが明らかとなった。なかでも、d
1が4.0mm以下、特に1.65mmにおいて、膜厚均一性が顕著に向上することが明らかとなった。
【0160】
従って、d
1の値を、好ましくは4.0mm以下にすること(従って、第1の領域を第2の領域に対して、最大で第2の領域の厚さの15%低い位置に配置すること)によって、基板上に形成される薄膜の膜厚均一性を向上させることができた。
【0161】
本願は、2014年1月21日に日本国で出願された特願2014−008740を基礎として、その優先権を主張するものであり、その内容はすべて本明細書中に参照することにより援用される。