(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
アイシング材は、製菓・製パン分野ではパンや菓子の表面に焼成後に塗布する純白の艶のある糖衣のことを指す。その種類としてはグラッセ・アイシング、ロイヤル・アイシング、フォンダン・アイシング 、ボイルド・アイシング、ファッジ・アイシングなど様々であるが、その共通する特徴は糖類の微結晶である。
これらのアイシング材はパンや菓子の表面に塗布した当初は上記のように純白の艶のある外観であるが、空中の水分や、パンや菓子の水分からの吸湿により、砂糖の微結晶が溶解し、「泣き」という現象を生じ、べたつき、透明化や離水を起こす。
この点の改善については古くから研究されており、例えばガム質や乳化剤を添加する方法(たとえば特許文献1〜3参照)や、カルシウム塩類を添加する方法(たとえば特許文献4参照)や、水分含量を一定範囲とする方法(たとえば特許文献5参照)などの方法が提案されている。
【0003】
しかしこれらの方法は「泣き」の改良効果が乏しく、更には、特許文献1〜4記載の方法は食感や食味に影響があり、特許文献5に記載の方法は絞ることができる程度に軟らかい物性にならない、という問題があった。
ここで、アイシング材に対し高融点の油脂を添加することで、「泣き」が防止されることが広く知られている。
実際、特許文献1、5には、極度硬化油脂を使用することが記載されている。
しかし、高融点油脂の使用は、アイシング材の固化性を高めることにより「泣き」を防止しているため、経日的な吸湿による「泣き」の発生の防止には殆ど効果がなく、また、パンや菓子の表面に塗布する際に硬すぎた物性になってしまうなどの問題があることに加え、食感についても油性感が感じられてしまうという問題があった。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明のアイシング用油脂組成物に説明する。
まず上記(1)の条件について述べる。
本発明のアイシング用油脂組成物は油相中にエステル交換油脂を50〜100質量%、好ましくは80〜100質量%、更に好ましくは80〜99質量%含有する。
上記範囲でエステル交換油脂を含有することにより、トリグリセリド組成のランダム化が図れるため、エステル交換油脂の含有量が50質量%未満であると、トリグリセリド組成のランダム化が不十分なため、本発明の効果、特に経日的な吸湿による「泣き」の防止効果が得られない。
【0009】
上記エステル交換油脂は、その含有量の下限である50質量%であっても、下記の(2)(3)の条件を満たすことが可能である点においてエステル交換油脂のSFCが、10℃で3〜45%、且つ、20℃で1〜25%であることが好ましい。
上記エステル交換油脂の具体例としては、液状油と極度硬化油をエステル交換したエステル交換油脂、及び、パーム分別軟部油を70質量%以上含む油脂配合物をエステル交換して得られたエステル交換油脂を挙げることができる。
本発明では、上記2種のエステル交換油脂の1種を使用してもよく、また2種を併用してもよい。
【0010】
ここで、まず、液状油と極度硬化油をエステル交換したエステル交換油脂について述べる。
上記液状油としては、大豆油、菜種油(キャノーラ油)、コーン油、綿実油、オリーブ油、落花生油、米油、べに花油、ハイオレイックサフラワー油、ひまわり油、ハイオレイックひまわり油等の常温(25℃)で液状の油脂が挙げられるが、その他に、パーム油、パーム核油、ヤシ油、シア脂、サル脂、マンゴ脂、乳脂、牛脂、乳脂、豚脂、カカオ脂、魚油、鯨油等の常温で固体の油脂を分別することで得られた軟部油であって、常温で液状である油脂も使用することもできる。また、これらの油脂に対し、水素添加、分別、エステル交換等の物理的又は化学的処理の1種又は2種以上の処理を施した油脂についても、得られる加工油脂が常温で液状である範囲内において使用することもできる。本発明においては、これらの油脂を単独で用いることもでき、又は2種以上を組み合わせて用いることもできる。
本発明では、上記液状油として、大豆油、菜種油(キャノーラ油)、コーン油、綿実油、オリーブ油、落花生油、米油、べに花油、ハイオレイックサフラワー油、ひまわり油、ハイオレイックひまわり油等の常温で液状の油脂のうちの1種又は2種以上を使用することが好ましい。
【0011】
上記極度硬化油としては、食用油脂に対し、ヨウ素価が好ましくは5以下、更に好ましくは2以下、最も好ましくは1以下となるまで水素添加することによって得られる水素添加油脂を挙げることができる。水素添加に用いる食用油脂としては、大豆油、菜種油(キャノーラ油)、ハイエルシン菜種油、コーン油、綿実油、オリーブ油、落花生油、米油、べに花油、ハイオレイックサフラワー油、ひまわり油、ハイオレイックひまわり油、ひまわり油、からし油、パーム油、パーム核油、ヤシ油、シア脂、サル脂、マンゴ脂、乳脂、牛脂、乳脂、豚脂、カカオ脂、魚油、鯨油等の食用油脂、また、これらの油脂に対し水素添加、分別、エステル交換等の物理的又は化学的処理の1種又は2種以上の処理を施した油脂を使用することができる。本発明においては、上記水素添加に用いる油脂として、これらの油脂を単独で用いることもでき、又は2種以上を混合した混合油を用いることもできる。
また、上記極度硬化油として、上記のようにして得られた極度硬化油を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
【0012】
本発明では上記極度硬化油として、脂肪酸組成において、炭素数16の飽和脂肪酸含量が好ましくは10〜35質量%、より好ましくは15〜25質量%であり、且つ炭素数20以上の飽和脂肪酸含量が好ましくは15〜50質量%、より好ましくは25〜45質量%である極度硬化油を使用することが、より経日的な吸湿による「泣き」の防止効果の高いアイシング材が得られる点で好ましい。
【0013】
上記特定の脂肪酸比を有する極度硬化油を得る方法としては、炭素数16の脂肪酸を多く含有する油脂の極度硬化油と、炭素数20以上の脂肪酸を多く含有する油脂の極度硬化油とを混合する方法や、炭素数16の脂肪酸を多く含有する油脂と炭素数20以上の脂肪酸を多く含有する油脂との混合油脂を水素添加により極度硬化油とする方法、更には、炭素数16の脂肪酸を多く含有する油脂と炭素数20以上の脂肪酸を多く含有する油脂とのエステル交換油脂を水素添加により極度硬化油とする方法が挙げられる。
上記炭素数16の脂肪酸を多く含有する油脂としては、パーム油、或いはパーム油に対し水素添加、分別、エステル交換等の物理的又は化学的処理の1種又は2種以上の処理を施した油脂を挙げることができ、好ましくはパーム油及び/又はパーム分別硬部油を使用する。また、上記炭素数20以上の脂肪酸を多く含有する油脂としては、ハイエルシン菜種油、からし油、及びこれらの油脂に対し水素添加、分別、エステル交換等の物理的又は化学的処理の1種又は2種以上の処理を施した油脂を挙げることができ、好ましくはハイエルシン菜種油を使用する。
【0014】
本発明のアイシング用油脂組成物においては、上記の通り、上記液状油と上記極度硬化油をエステル交換したエステル交換油脂を使用するが、ここで、エステル交換前の液状油及び極度硬化油の配合割合は、良好な本発明の効果を得るためには、液状油及び極度硬化油の合計量に対する極度硬化油の配合割合が5〜35質量%であることが好ましく、より好ましくは12〜25質量%、更に好ましくは12〜20質量%である。ここで極度硬化油の配合割合が5質量%未満であると、得られるエステル交換油脂の融点が低すぎ本発明の効果が得られないおそれがあり、一方、35質量%を超えると、得られるエステル交換油脂の融点が高くなり、得られるアイシング材の物性が硬すぎて作業性が悪く、また口溶けが悪化するおそれがある。
【0015】
上記エステル交換の反応は、化学的触媒による方法でも、酵素による方法でもよく、また、ランダムエステル反応であっても、位置選択性のエステル交換反応であってもよいが、化学的触媒又は位置選択性のない酵素を用いた、ランダムエステル反応であることが好ましい。
上記化学的触媒としては、例えば、ナトリウムメチラート等のアルカリ金属系触媒が挙げられ、また、上記酵素としては、位置選択性のない酵素、例えば、アルカリゲネス(Alcaligenes)属、リゾープス(Rhizopus)属、アスペルギルス(Aspergillus)属、ムコール(Mucor)属、ペニシリウム(Penicillium)属等に由来するリパーゼが挙げられる。なお、該リパーゼは、イオン交換樹脂或いはケイ藻土及びセラミック等の担体に固定化して、固定化リパーゼとして用いることもできるし、粉末の形態で用いることもできる。
【0016】
上記液状油と上記極度硬化油をエステル交換したエステル交換油脂の好ましいSFC(固体脂含量)は0℃で5〜25%、好ましくは5〜15%、より好ましくは10〜15%であり、10℃で3〜15%、好ましくは3〜10%であり、20℃で1〜5%、好ましくは、1〜4%、より好ましくは1〜3%であり、40℃で0〜2%、好ましくは0〜1%、より好ましくは0%である。
【0017】
次に、パーム分別軟部油を70質量%以上含む油脂配合物をエステル交換して得られたエステル交換油脂について述べる。
上記エステル交換油脂は、パーム分別軟部油を70質量%以上、好ましくは90質量%以上、より好ましくは100質量%含有する油脂配合物をエステル交換した油脂である。
ここで、上記油脂配合物に使用するパーム分別軟部油とは、アセトン分別やヘキサン分別等の溶剤分別、ドライ分別等の無溶剤分別等の方法によって、パーム油を分別した際に得られる低融点部であり、通常、ヨウ素価52〜70のものである。本発明に用いられるパーム分別軟部油としては、ヨウ素価が52以上のパームオレインを使用することが、より経日的な吸湿による「泣き」の発生が抑制される点で好ましく、ヨウ素価54以上のパームオレインを使用することがより好ましく、ヨウ素価60以上のパームスーパーオレインを使用することが更に好ましい。
【0018】
上記油脂配合物に必要に応じ配合する、上記パーム分別軟部油以外の油脂は、求める油脂組成物の硬さに応じ、適宜選択することができ、その代表例としては、大豆油、キャノーラ油、コーン油、綿実油、オリーブ油、落花生油、米油、べに花油、ひまわり油等の常温で液体の油脂が挙げられるが、その他に、パーム油、パーム核油、ヤシ油、サル脂、マンゴ脂、乳脂、牛脂、乳脂、豚脂、カカオ脂等の常温で固体の油脂も用いることができ、更に、これらの油脂に水素添加、分別、エステル交換等の物理的又は化学的処理の1種又は2種以上の処理を施した油脂を使用することもできる。
本発明においては、これらの油脂を単独で用いることもでき、又は2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0019】
また、上記エステル交換油脂を得るためのエステル交換反応は、化学的触媒による方法でも、酵素による方法でもよく、また、ランダムエステル反応であっても、位置選択性のエステル交換反応であってもよいが、化学的触媒又は位置選択性のない酵素を用いた、ランダムエステル反応であることがより好ましい。
上記化学的触媒としては、例えば、ナトリウムメチラート等のアルカリ金属系触媒が挙げられ、また、上記位置選択性のない酵素としては、例えば、アルカリゲネス(Alcaligenes) 属、リゾープス(Rhizopus)属、アスペルギルス(Aspergillus) 属、ムコール(Mucor) 属、ペニシリウム(Penicillium) 属等に由来するリパーゼが挙げられる。なお、該リパーゼは、イオン交換樹脂或いはケイ藻土やセラミック等の担体に固定化して、固定化リパーゼとして用いることもできるし、粉末の形態で用いることもできる。
【0020】
上記油脂配合物をエステル交換して得られたエステル交換油脂の好ましいSFC(固体脂含量)は0℃で30〜50%、好ましくは35〜45%であり、10℃で20〜45%、好ましくは25〜35%であり、20℃で5〜25%、好ましくは、10〜20%であり、40℃で0〜5%、好ましくは1〜4%である。
【0021】
次に上記(2)の条件について述べる。
本発明のアイシング用油脂組成物はトリグリセリド組成におけるトリ飽和グリセリド含有量が1〜7質量%、好ましくは2〜6質量%である。
トリ飽和グリセリドの含有量が1質量%未満又は7質量%超であると、得られるアイシング材において、経日的な吸湿による「泣き」の防止効果が得られない。また、7質量%を超えると、得られるアイシング材の物性や口溶けが悪化してしまう。
【0022】
次に上記(3)の条件について述べる。
本発明のアイシング用油脂組成物はSFCが10℃で3〜35%、好ましくは4〜32%であり、且つ、20℃で1〜20%、好ましくは1〜15%である。
SFCが10℃で3%未満又は20℃で1%未満であると、経日的な吸湿による「泣き」の防止効果が得られない。一方、SFCが10℃で35%を超える、及び/又は20℃で20%を超えると、得られるアイシング材において経日的な吸湿による「泣き」の防止効果が得られないことに加え、物性や口溶けが悪化してしまう。
【0023】
また、本発明のアイシング用油脂組成物は、上記トリ飽和トリグリセリド含量の範囲内において、極度硬化油脂を添加することができる。
上記極度硬化油脂は、原料油脂に対し、ヨウ素価が好ましくは10以下、更に好ましくは5以下、最も好ましくは1未満となるまで水素添加し、実質的に構成成分である不飽和脂肪酸をほぼ完全に飽和することによって得られる油脂であって、その融点は、好ましくは50℃以上、より好ましくは55℃以上である。
【0024】
また、上記極度硬化油脂は、上記極度硬化油脂を更に分別した硬部油、或いは1種又は2種以上の極度硬化油脂をエステル交換したものであってもよく、また、極度硬化油脂と、飽和脂肪酸や、飽和脂肪酸を主体とする部分グリセリド等とをエステル交換したものであってもよい。本発明では、これら全てを極度硬化油脂として扱う。本発明のアイシング用油脂組成物が極度硬化油脂を含有する場合、該油脂組成物の油相中、上記極度硬化油脂の含有量が1〜5質量%であることが好ましく、1〜2質量%であることが更に好ましい。
【0025】
本発明のアイシング用油脂組成物においては、上記のエステル交換油脂、及び上記極度硬化油脂以外に、上記(2)(3)を満たす範囲内でその他の油脂を配合することができる。
【0026】
上記その他の油脂としては、食用に適する油脂であればよく、その代表例としては、大豆油、菜種油、コーン油、綿実油、オリーブ油、落花生油、米油、べに花油、ひまわり油等の常温で液体の油脂が挙げられるが、その他に、パーム油、パーム核油、ヤシ油、サル脂、マンゴ脂、乳脂、牛脂、乳脂、豚脂、カカオ脂、魚油、鯨油等の常温で固体の油脂も用いることができ、更に、これらの食用油脂に水素添加、分別、エステル交換等の物理的又は化学的処理の1種又は2種以上の処理を施した油脂を使用することもできる。本発明においては、これらの油脂を単独で用いることもでき、又は2種以上を組み合わせて用いることもできる。
ただし、本発明のアイシング用油脂組成物では、上記その他の油脂として、上記の常温で液体である油脂を使用すると、特に30℃を超える環境において固液分離しやすくなるため、これについては使用しないことが好ましい。
【0027】
本発明のアイシング用油脂組成物における上記その他の油脂の配合量は、油相中に、油相基準で好ましくは0〜50質量%、より好ましくは0〜20質量%、最も好ましくは使用しないことが好ましい。
【0028】
また、本発明のアイシング用油脂組成物は、トランス脂肪酸を実質的に含有しないことが好ましい。なお、ここでいう「トランス脂肪酸を実質的に含有しない」とは、トランス脂肪酸の含有量が、本発明の
アイシング用油脂組成物に含まれる油脂の全構成脂肪酸中、好ましくは10質量%未満、更に好ましくは5質量%以下、最も好ましくは2質量%以下であることを意味する。
【0029】
水素添加は、油脂の融点を上昇させる典型的な方法であるが、水素添加油脂は、極度硬化油脂を除いて、通常、構成脂肪酸中にトランス脂肪酸を10〜50質量%程度含んでいる。一方、天然油脂中にはトランス脂肪酸が殆ど存在せず、反芻動物由来の油脂に10質量%未満含まれているにすぎない。近年、化学的な処理、特に水素添加に付されていない油脂組成物、即ち実質的にトランス脂肪酸を含まない油脂組成物であって、適切なコンシステンシーを有するものも要求されている。
【0030】
本発明のアイシング用油脂組成物においては、パーム分別軟部油、液状油、極度硬化油脂のいずれも、実質的にトランス脂肪酸を含まないため、上記油脂配合物に必要に応じ配合するパーム分別軟部油以外の油脂、及び、上記その他の油脂として、水素添加油脂を使用せずに、実質的にトランス脂肪酸を含まない油脂を使用することにより、トランス脂肪酸を含まずとも適切な物性を有するアイシング用油脂組成物を得ることができる。
【0031】
本発明のアイシング用油脂組成物における油相含量は、50〜100質量%、好ましくは80〜100質量%、より好ましくは90〜100質量%、最も好ましくは99質量%〜100質量%である。
また、本発明のアイシング用油脂組成物における水相含量は、50質量%以下、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下、最も好ましくは1質量%以下である。
油相含量が50質量%未満、すなわち水相成分が50質量%超であると、魚肉との混合時に水相が分離してしまうおそれがあり、また、得られる魚肉加工食品において油分分離やドリップが発生してしまう問題がある。
【0032】
本発明のアイシング用油脂組成物は、上記以外のその他の成分を含有することができる。該その他の成分としては、例えば、グリセリン脂肪酸エステル、グリセリン酢酸脂肪酸エステル、グリセリン乳酸脂肪酸エステル、グリセリンコハク酸脂肪酸エステル、グリセリン酒石酸脂肪酸エステル、グリセリンクエン酸脂肪酸エステル、グリセリンジアセチル酒石酸脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ショ糖酢酸イソ酪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ステアロイル乳酸カルシウム、ステアロイル乳酸ナトリウム、ポリオキシエチレンソルビタンモノグリセリド等の乳化剤、ローカストビーンガム、カラギーナン、アルギン酸類、ペクチン、キサンタンガム、結晶セルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、寒天、グルコマンナン、ゼラチン、澱粉、化工澱粉等の増粘安定剤、食塩、塩化カリウム等の塩味剤、酢酸、乳酸、グルコン酸等の酸味料、糖類や糖アルコール類、ステビア、アスパルテーム等の甘味料、β−カロチン、カラメル、紅麹色素等の着色料、トコフェロール、茶抽出物等の酸化防止剤、小麦蛋白や大豆蛋白といった植物蛋白、卵及び各種卵加工品、着香料、乳製品、調味料、pH調整剤、食品保存料、日持ち向上剤、果実、果汁、コーヒー、ナッツペースト、香辛料、ココアマス、ココアパウダー、穀類、豆類、野菜類、肉類、魚介類等の食品素材や食品添加物が挙げられる。
【0033】
次に、本発明のアイシング用油脂組成物の好ましい製造方法について説明する。
先ず、下記の(1)〜(3)の全てを満たす油相を溶解し、必要により水相を混合乳化する。そして、次に殺菌処理するのが望ましい。殺菌方法は、タンクでのバッチ式でも、プレート型熱交換機や掻き取り式熱交換機を用いた連続式でも構わない。
(1)エステル交換油脂を50〜100質量%含有する。
(2)トリグリセリド組成におけるトリ飽和グリセリド含有量が1〜7質量%である。
(3)SFCが10℃で3〜35%、且つ、20℃で1〜20%である。
次に、冷却し、結晶化させる。好ましくは冷却可塑化する。冷却条件は、好ましくは−0.5℃/分以上、更に好ましくは−5℃/分以上とする。この際、徐冷却より、急速冷却の方が好ましい。冷却する機器としては、密閉型連続式チューブ冷却機、例えば、ボテーター、コンピネーター、パーフェクター等のマーガリン製造機やプレート型熱交換機等が挙げられ、また、開放型のダイアクーラーとコンプレクターとの組み合わせも挙げられる。
【0034】
また、本発明のアイシング用油脂組成物を製造する際のいずれかの工程で、窒素、空気等を含気させてもよいが、本発明のアイシング用油脂組成物は、気相を含有することにより艶のあるアイシング材が得られなくなるおそれがあることから、気相は含有させないことが好ましい。
【0035】
次に、上述した本発明のアイシング材について述べる。
本発明のアイシング材は、本発明のアイシング用油脂組成物を含有してなるものであり、食感及び物性が適切であり、かつ、経日的な吸湿による「泣き」が防止されているものである。
本発明のアイシング材における本発明のアイシング用油脂組成物の使用量は、アイシング材中に本発明のアイシング用油脂組成物が好ましくは1〜10質量%、より好ましくは2〜7質量%となる量である。
【実施例】
【0036】
次に、実施例、比較例等を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、これらの実施例等は本発明を制限するものではない。
【0037】
<エステル交換油脂の製造>
〔製造例1〕エステル交換油脂Aの製造
菜種油(キャノーラ油)80質量部に、極度硬化油として、パーム油の極度硬化油と、ハイエルシンナタネ油の極度硬化油とを50:50の質量比で混合した混合油脂(炭素数16の飽和脂肪酸含量が24質量%、且つ炭素数20以上の飽和脂肪酸含量が30質量%)20質量部を添加し、溶解した油脂配合物に、ナトリウムメチラートを触媒として非選択的エステル交換反応を行った後、脱色(白土3%、85℃、9.3×10
2Pa以下の減圧下)、脱臭(250℃、60分間、水蒸気吹き込み量5%、4.0×10
2Pa以下の減圧下)を行ない、SFC(固体脂含量)が0℃で15%、10℃で8%、20℃で3%、40℃で0%であり30℃において流動状であるエステル交換油脂Aを得た。
【0038】
〔製造例2〕エステル交換油脂Bの製造
ヨウ素価65のパーム分別軟部油(パームスーパーオレイン)にナトリウムメチラートを触媒として非選択的エステル交換反応を行った後、脱色(白土3%、85℃、9.3×10
2Pa以下の減圧下)、脱臭(250℃、60分間、水蒸気吹き込み量5%、4.0×110
2Pa以下の減圧下)を行ない、SFC(固体脂含量)が0℃で39%、10℃で32%、20℃で16%、40℃で2%であり30℃において固体であり流動状を示さず融点が33℃であるエステル交換油脂Bを得た。
【0039】
<アイシング用油脂組成物の製造>
〔実施例1〕
エステル交換油脂A100質量部からなる油相を、70℃まで加温して完全に溶解し混合した後、−30℃/分の冷却速度で急冷可塑化し、ショートニングタイプのアイシング用油脂組成物を作成した。得られたアイシング用油脂組成物の油相は、トリグリセリド組成におけるトリ飽和グリセリド含有量が2質量%であった。またこの油相のSFCは10℃で8%、20℃で3%であり、トランス脂肪酸含量は2質量%未満であり、実質的にトランス脂肪酸を含有していなかった。
【0040】
〔実施例2〕
エステル交換油脂A99質量部、大豆極度硬化油脂1質量部からなる油相を、70℃まで加温して完全に溶解し混合した後、−30℃/分の冷却速度で急冷可塑化し、ショートニングタイプのアイシング用油脂組成物を作成した。得られたアイシング用油脂組成物の油相は、トリグリセリド組成におけるトリ飽和グリセリド含有量が3質量%であった。またこの油相のSFCは10℃で9%、20℃で4%であり、トランス脂肪酸含量は2質量%未満であり、実質的にトランス脂肪酸を含有していなかった。
【0041】
〔実施例3〕
エステル交換油脂B100質量部からなる油相を、70℃まで加温して完全に溶解し混合した後、−30℃/分の冷却速度で急冷可塑化し、ショートニングタイプのアイシング用油脂組成物を作成した。得られたアイシング用油脂組成物の油相は、トリグリセリド組成におけるトリ飽和グリセリド含有量が5質量%であった。またこの油相のSFCは10℃で25%、20℃で16%であり、トランス脂肪酸含量は2質量%未満であり、実質的にトランス脂肪酸を含有していなかった。
【0042】
〔実施例4〕
エステル交換油脂B99質量部、大豆極度硬化油脂1質量部からなる油相を、70℃まで加温して完全に溶解し混合した後、−30℃/分の冷却速度で急冷可塑化し、ショートニングタイプのアイシング用油脂組成物を作成した。得られたアイシング用油脂組成物の油相は、トリグリセリド組成におけるトリ飽和グリセリド含有量が6質量%であった。またこの油相のSFCは10℃で26%、20℃で17%であり、トランス脂肪酸含量は2質量%未満であり、実質的にトランス脂肪酸を含有していなかった。
【0043】
〔比較例1〕
大豆液状油97質量部及び大豆極度硬化油脂3質量部からなる油相を、70℃まで加温して完全に溶解し混合した後、−30℃/分の冷却速度で急冷可塑化し、ショートニングタイプのアイシング用油脂組成物を作成した。得られたアイシング用油脂組成物の油相は、トリグリセリド組成におけるトリ飽和グリセリド含有量が3質量%であった。またこの油相のSFCは10℃で4%、20℃で2%であり、トランス脂肪酸含量は2質量%未満であり、実質的にトランス脂肪酸を含有していなかった。
【0044】
〔比較例2〕
大豆極度硬化油脂をそのままアイシング用油脂組成物とした。得られたアイシング用油脂組成物の油相は、トリグリセリド組成におけるトリ飽和グリセリド含有量が100質量%であった。またこの油相のSFCは10℃で100%、20℃で100%であり、トランス脂肪酸含量は2質量%未満であり、実質的にトランス脂肪酸を含有していなかった。
【0045】
<アイシング材の製造及び評価>
上記実施例1〜4及び比較例1〜2で得られたアイシング用油脂組成物を使用し、下記の配合・製法でアイシング材を製造した。
得られたアイシング材は55℃においてクロワッサンに線描き塗布し、25℃4日保管後に「泣き」の状態を目視により観察し、下記の評価基準にしたがって評価をおこない、その結果を表1に記載した。なお、絞る際の物性についても下記の評価基準にしたがって評価をおこない、その結果を表1に記載した。
【0046】
(アイシング材の配合・製法)
水35質量部、グラニュー糖32質量部、及び、アイシング用油脂組成物5質量部を鍋に投入し、弱火で攪拌しながら加熱し、沸騰した時点で加熱を止め、粉糖100質量部を添加、5分間十分に混錬後55℃まで放冷し、袋に入れた。
【0047】
(評価基準)
※1:離水状況
◎:なし
○:わずかに見られた
△:部分的に見られた
×:全体的に見られた
【0048】
※2:透明化状況
◎:艶のある白色であった
○:わずかに透明化していた
△:部分的に透明化していた
×:殆ど白色部分がない
【0049】
※3:食感
◎:油性感がなく口溶け良好
○:口溶け良好
△:やや油性感が感じられる
×:油性感があり口溶け不良
【0050】
※4:物性
○:良好な物性であった。
△:やや硬い物性であった。
×:硬く絞るのに力を要し不良な物性であった。
【0051】
【表1】