(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して、本実施形態に係る基板処理方法を実施するのに好適な基板処理装置について説明する。
【0012】
前述したように、にウエハ上に酸化シリコン膜等の酸化物系の膜を成膜した場合には、窒化シリコン膜等の窒化物系の膜を成膜した場合よりも、パーティクルが発生しやすい。そのため、本実施形態においては、真空容器内にウエハが複数枚回転可能に載置される回転テーブルを有し、載置されたウエハに一例として酸化シリコン膜等の酸化膜を成膜可能な基板処理装置の構成例、及びこの基板処理装置を用いた基板処理方法について説明するが、本発明はこの点において限定されない。
【0013】
(基板処理装置の構成)
図1に、本実施形態に係る基板処理装置の一例の概略縦断面図を示す。また、
図2に、本実施形態に係る基板処理装置の一例の概略平面図を示す。なお、
図2では、説明の便宜上、天板11の描画を省略している。
【0014】
図1に示すように、本実施形態に係る基板処理装置は、平面形状が概ね円形である真空容器1(以後、処理容器1と呼ぶ)と、この処理容器1内に設けられ、処理容器1の中心に回転中心を有すると共にウエハWを公転させるための回転テーブル2と、を備えている。
【0015】
処理容器1は、回転テーブル2の後述する凹部24に対向する位置に設けられた天板(天井部)11と、容器本体12とを備えている。また、容器本体12の上面の周縁部には、リング状に設けられたシール部材13が設けられている。そして、天板11は、容器本体12から着脱可能に構成されている。平面視における処理容器1の直径寸法(内径寸法)は、限定されないが、例えば1100mm程度とすることができる。
【0016】
処理容器1内の上面側における中央部には、処理容器1内の中心部領域Cにおいて互いに異なる処理ガス同士が混ざり合うことを抑制するために分離ガスを供給する、分離ガス供給管51が接続されている。
【0017】
回転テーブル2は、中心部にて概略円筒形状のコア部21に固定されており、このコア部21の下面に接続されると共に鉛直方向に伸びる回転軸22に対して、鉛直軸周り、
図2に示す例では時計回りに、駆動部23によって回転自在に構成されている。回転テーブル2の直径寸法は、限定されないが、例えば1000mm程度とすることができる。
【0018】
回転軸22及び駆動部23は、ケース体20に収納されており、このケース体20は、上面側のフランジ部分が処理容器1の底面部14の下面に気密に取り付けられている。また、このケース体20には、回転テーブル2の下方領域に窒素ガス等をパージガス(分離ガス)として供給するためのパージガス供給管72が接続されている。
【0019】
処理容器1の底面部14におけるコア部21の外周側は、回転テーブル2に下方側から近接するようにリング状に形成されて突出部12aを為している。
【0020】
回転テーブル2の表面部には、直径寸法が例えば300mmのウエハWを載置するための円形状の凹部24が基板載置領域として形成されている。この凹部24は、回転テーブル2の回転方向に沿って、複数個所、例えば5箇所に設けられている。凹部24は、ウエハWの直径よりも僅かに、具体的には1mm乃至4mm程度大きい内径を有する。また、凹部24の深さは、ウエハWの厚さにほぼ等しいか、又はウエハWの厚さよりも大きく構成される。したがって、ウエハWが凹部24に収容されると、ウエハWの表面と、回転テーブル2のウエハWが載置されない領域の表面とが同じ高さになるか、ウエハWの表面が回転テーブル2の表面よりも低くなる。なお、凹部24の深さは、ウエハWの厚さよりも深い場合であっても、あまり深くすると成膜に影響が出ることがあるので、ウエハWの厚さの3倍程度の深さまでとすることが好ましい。また、凹部24の底面には、ウエハWを下方側から突き上げて昇降させるための例えば後述する3本の昇降ピンが貫通する、図示しない貫通孔が形成されている。
【0021】
図2に示すように、回転テーブル2における凹部24の通過領域と対向する位置には、例えば石英からなる複数本のノズルが配置されている。
図2に示す例では、ウエハWに酸化シリコン膜を成膜するための、例えば4本のノズル31、32、41、42と、処理容器1内のパーティクルの発生を抑制するための、例えば2本のノズル35、36とを有して構成される。なお、理由については後述するが、
図2に示す例では、ノズル32がノズル36を兼用する構成となっている。
【0022】
これら各々のノズル31、32、35、36、41、42は、回転テーブル2と天板11との間に配置される。また、これら各々のノズル31、32、35、36、41、42は、例えば処理容器1の外周壁から中心部領域Cに向かってウエハWに対向して水平に伸びるように取り付けられている。なお、各ノズル31、32、35、36、41、42は、流量調整バルブを介して、図示しない各々のガス供給源に接続されている。
【0023】
成膜用のノズル31、32、41、42に関して、
図2に示す例では、後述する搬送口15から時計回り(回転テーブル2の回転方向)に、分離ガスノズル41、第1の処理ガスノズル31、分離ガスノズル42、第2の処理ガスノズル32がこの順番で配置されている。
【0024】
また、パーティクル抑制用の第3の処理ガスノズル35、第4の処理ガスノズル36は、第2の処理ガスノズル32の近傍に配置されている。
図2に示す例では、第2の処理ガスノズル32は、第4の処理ガスノズル36を兼ねる構成を有しており、第3の処理ガスノズル35は、第2の処理ガスノズル32に対して、回転テーブル2の回転方向上流側に配置されている。
【0025】
第1の処理ガスノズル31は、第1の処理ガス供給部をなしている。第1の処理ガスとしては、例えばウエハW上にシリコン酸化膜を成膜する場合には、3DMAS[トリスジメチルアミノシラン]ガス、DIPAS[ジイソプロピルアミノシラン]、BTBAS[ビスターシャルブチルアミノシラン]、DCS[ジクロロシラン]、HCD[ヘキサクロロジシラン]等のシリコン含有ガスを使用することができる。
【0026】
第2の処理ガスノズル32は、第2の処理ガス供給部をなしている。第2の処理ガスノズルは、通常、第2の処理領域P2内の、回転方向上流側に配置されている。第2の処理ガスとしては、例えばウエハW上にシリコン酸化膜を成膜する場合には、酸素(O
2)ガス、オゾン(O
3)ガス等の酸素含有ガスを使用することができる。なお、後述するようにパーティクル発生用のノズル36は、例えば酸素ガスを供給するノズルである。そのため、第2の処理ガスノズル32は、パーティクル発生用の第4の処理ガスノズル36を兼用する構成であっても良い(
図2参照)。
【0027】
分離ガスノズル41、42は、第1の処理ガス及び第2の処理ガスが混合することを防ぐための分離ガス供給部をなしている。分離ガスとしては、例えばN
2ガス、希ガス等の不活性ガスを使用することができる。
【0028】
第3の処理ガスノズル35及び第4の処理ガスノズル36は、各々、第3及び第4の処理ガス供給部をなしている。第3の処理ガスとしては、水素(H
2)ガスを使用することができ、第4の処理ガスとしては、酸素(O
2)ガス、オゾン(O
3)を使用することができる。なお、後述する本実施形態に係る基板処理方法では、第3の処理ガス及び第4の処理ガスを反応させることで、処理容器1内に水蒸気を導入する。なお、第3の処理ガスノズル35及び第4の処理ガスノズル36は、互いに近接して配置されることが好ましい。前述したように、
図2に示す例では、第4の処理ガスノズル36は、第2の処理ガスノズル32を兼用する構成となっている。そのため、第3の処理ガスノズル35も、第2の処理領域P2内の、回転方向上流側に配置されている。
【0029】
図2で示した第3の処理ガスノズル35及び第4の処理ガスノズル36を用いて処理容器1内に水蒸気を導入する実施形態の変形例を、
図3を参照して説明する。
図3に、本実施形態に係る基板処理装置の他の例の概略平面図を示す。
【0030】
図3に示す基板処理装置は、第3の処理ガスノズル35及び第4の処理ガスノズル36が配置されず、代わりに貯水槽37、導入管38及び流量調整バルブ39が配置される点で、
図2に示す基板処理装置と異なる。
【0031】
貯水槽37は、処理容器1内に導入される水蒸気源となる水を貯蔵する槽であり、図示しない加熱装置によって、貯水槽37に貯蔵された水は、水蒸気へと気化され、導入管38を介して処理容器1へと導入される。また、導入管38は、貯水槽37と処理容器1とを接続する管であり、処理容器1へと導入するための、図示しない吐出口が形成されている。また、導入管38には流量調整バルブ39が設けられている。
【0032】
図3に示す実施形態の基板処理装置においても、
図2に示す基板処理装置と同様に、処理容器1内に水蒸気を導入することができる。
【0033】
ノズル31、32、35,36、41、42の下面側(回転テーブル2に対向する側)には、前述の各ガスを吐出するためのガス吐出孔が回転テーブル2の半径方向に沿って各々複数箇所に例えば等間隔に形成されている。各ノズル31、32、35、36、41、42の各々の下端縁と回転テーブル2の上面との離間距離は、例えば1〜5mm程度となるように配置されている。
【0034】
第1の処理ガスノズル31の下方領域は、第1の処理ガスをウエハWに吸着させるための第1の処理領域P1であり、第2の処理用ガスノズル34の下方領域は、第1の処理ガスが吸着したウエハWに酸化ガスを供給して、酸化シリコン膜を形成させるための第2の処理領域P2となる。分離ガスノズル41、42は、第1の処理領域P1と第2の処理領域P2とを分離する分離領域Dを形成するためのものである。
【0035】
図4に、本実施形態に係る基板処理装置の回転テーブルの同心円に沿った断面図を示す。なお、
図4は、分離領域Dから第1の処理領域P1を経て分離領域Dまでの回転テーブルの回転方向に沿った断面図である。
【0036】
分離領域Dにおける処理容器1の天板11には、概略扇形の凸状部4が設けられている。凸状部4は、天板11の裏面に取り付けられており、処理容器1内には、凸状部4の下面である平坦な低い天井面44(第1の天井面)と、この天井面44の周方向両側に位置する、天井面44よりも高い天井面45(第2の天井面)とが形成される。
【0037】
天井面44を形成する凸状部4は、
図2に示すように、頂部が円弧状に切断された扇型の平面形状を有している。また、凸状部4には、周方向中央において、半径方向に伸びるように形成された溝部43が形成され、分離ガスノズル41、42がこの溝部43内に収容されている。なお、凸状部4の周縁部(処理容器1の外縁側の部位)は、各処理ガス同士の混合を阻止するために、回転テーブル2の外端面に対向すると共に容器本体12に対して僅かに離間するように、L字型に屈曲している。
【0038】
第1の処理ガスノズル31の上方側には、第1の処理ガスをウエハWに沿って通流させるために、且つ分離ガスがウエハWの近傍を避けて処理容器1の天板11側を通流するように、ノズルカバー230が設けられている。ノズルカバー230は、
図4に示すように、第1の処理ガスノズル31を収納するために下面側が開口する概略箱形のカバー体231と、このカバー体231の下面側開口端における回転テーブル2の回転方向上流側及び下流側に各々接続された板状体である整流板232とを備えている。なお、回転テーブル2の回転中心側におけるカバー体231の側壁面は、第1の処理ガスノズル31の先端部に対向するように回転テーブル2に向かって伸び出している。また、回転テーブル2の外縁側におけるカバー体231の側壁面は、第1の処理ガスノズル31に干渉しないように切り欠かれている。
【0039】
回転テーブル2の外周側において、回転テーブル2よりも僅かに下位置には、
図2に示すように、カバー体であるサイドリング100が配置されている。サイドリング100の上面には、互いに周方向に離間するように例えば2箇所に排気口61、62が形成されている。別の言い方をすると、処理容器1の床面には、2つの排気口が形成され、これら排気口に対応する位置におけるサイドリング100には、排気口61、62が形成されている。
【0040】
本明細書においては、排気口61、62のうち一方及び他方を、各々、第1の排気口61、第2の排気口62と呼ぶ。ここでは、第1の排気口61は、第1の処理ガスノズル31と、この第1の処理ガスノズル31に対して、回転テーブル2の回転方向下流側に位置する分離領域Dとの間において、分離領域D側に寄った位置に形成されている。また、第2の排気口62は、第2の処理ガスノズル32と、この第2の処理ガスノズル32よりも回転テーブル2の回転方向下流側の分離領域Dとの間において、分離領域D側に寄った位置に形成されている。
【0041】
第1の排気口61は、第1の処理ガスや分離ガスを排気するためのものであり、第2の排気口62は、第2の処理ガスや分離ガスを排気するためのものである。これら第1の排気口61及び第2の排気口62は、各々、バタフライバルブ等の圧力調整部65が介設された排気管63により、真空排気機構である例えば真空ポンプ64に接続されている。
【0042】
天板11の下面における中央部には、
図1に示すように、凸状部4における中心部領域C側の部位と連続して周方向に亘って概略リング状に形成されると共に、その下面が凸状部4の下面(天井面44)と同じ高さに形成された突出部5が設けられている。この突出部5よりも回転テーブル2の回転中心側におけるコア部21の上方側には、中心部領域Cにおいて各種ガスが互いに混ざり合うことを抑制するためのラビリンス構造部110が配置されていても良い。コア部21の上方側にラビリンス構造を形成することにより、ガスの流路を稼ぎ、ガス同士が混ざり合うことを防止することができる。
【0043】
より具体的には、ラビリンス構造部110は、回転テーブル2側から天板11側に向かって垂直に伸びる壁部と、天板11側から回転テーブル2に向かって垂直に伸びる壁部とが、各々周方向に亘って形成されると共に、回転テーブル2の半径方向において交互に配置された構造を有する。ラビリンス構造部110では、例えば第1の処理ガスノズル31から吐出されて中心部領域Cに向かおうとする第1の処理ガスは、ラビリンス構造部110を乗り越えていく必要がある。そのため、中心部領域Cに向かうにつれて流速が遅くなり、拡散しにくくなる。結果として、処理ガスが中心部領域Cに到達する前に、中心部領域Cに供給される分離ガスにより、処理領域P1側に押し戻されることになる。また、中心部領域Cに向かおうとする他のガスについても、同様にラビリンス構造部110によって中心部領域Cに到達しにくくなる。そのため、処理ガス同士が中心部領域Cにおいて互いに混ざり合うことが防止される。
【0044】
一方、分離ガス供給管51からこの中心部領域Cに供給された窒素ガスは、周方向に勢いよく拡散しようとするが、ラビリンス構造部110を設けているため、ラビリンス構造部110を乗り越えるうちに流速が抑えられていく。この場合、窒素ガスは、例えば回転テーブル2と突起部92との間の極めて狭い領域へも侵入しようとするが、ラビリンス構造部110により流速が抑えられているので、例えば搬送アーム10の進退領域等の比較的広い領域へと流れていく。
【0045】
回転テーブル2と処理容器1の底面部14との間の空間には、
図1に示すように、加熱機構であるヒータユニット7が設けられている。ヒータユニット7は、回転テーブル2を介して回転テーブル2上のウエハWを例えば室温〜760℃程度に加熱することができる構成となっている。なお、
図1における参照符号71aは、ヒータユニット7の側方側に設けられたカバー部材であり、参照符号7aは、このヒータユニット7の上方側を覆う覆い部材である。また、処理容器1の底面部14には、ヒータユニット7の下方側において、ヒータユニット7の配置空間をパージするためのパージガス供給管73が、周方向に亘って複数個所に設けられている。
【0046】
処理容器1の側壁には、
図2に示すように、搬送アーム10と回転テーブル2との間においてウエハWの受け渡しを行うための搬送口15が形成されている。この搬送口15は、ゲートバルブGより気密に開閉自在に構成されている。そして、搬送アーム10が処理容器1に対して進退する領域における天板11の上方には、ウエハWの周縁部を検知するためのカメラユニット10aが設けられている。このカメラユニット10aは、ウエハWの周縁部を撮像することにより、例えば搬送アーム10上にウエハWの有無や、回転テーブル2に載置されたウエハWの位置ずれや、搬送アーム10上のウエハWの位置ずれを検知するために使用される。カメラユニット10aは、ウエハWの直径寸法に対応する程度の幅広い視野を有するように構成されている。
【0047】
回転テーブル2の凹部24は、この搬送口15に臨む位置にて搬送アーム10との間でウエハWの受け渡しが行われる。そのため、回転テーブル2の下方側の受け渡し位置に対応する箇所には、凹部24を貫通してウエハWを裏面から持ち上げるための図示しない昇降ピン及び昇降機構が設けられている。
【0048】
また、本実施形態に係る基板処理装置には、装置全体の動作を制御するためのコンピュータからなる制御部120が設けられている。この制御部120のメモリ内には、後述の基板処理を行うためのプログラムが格納されている。このプログラムは、装置の各種動作を実行するようにステップ群が組まれており、ハードディスク、コンパクトディスク、光磁気ディスク、メモリカード、フレキシブルディスク等の記憶媒体である記憶部121から制御部120内にインストールされる。
【0049】
(基板処理方法)
次に、本実施形態に係る基板処理装置を使用した、累積膜の累積膜厚が大きくなった場合であっても、パーティクルの発生を抑制できる基板処理方法について、
図5を参照して説明する。
【0050】
図5に、本実施形態に係る基板処理方法の一例のフロー図を示す。
【0051】
本実施形態に係る基板処理方法は、
処理容器と、前記処理容器内に回転可能に設けられ、基板載置部を有する回転テーブルとを有する基板処理装置を用いた基板処理方法であって、
前記基板載置部に基板を搬入する工程(S200)と、
前記処理容器内に処理ガスを供給して、搬入された前記基板に対して処理を行う工程(S210)と、
前記基板載置部に前記基板が載置された状態で、前記処理容器内に少なくとも水蒸気を供給する工程(S220)と、
前記処理容器内の前記基板を搬出する工程(S230)と
を有する。
【0052】
本実施形態に係る各々の工程について、具体的に説明する。
【0053】
(搬入する工程S200)
ウエハW等の基板の搬入に際しては、先ず、搬送口15のゲートバルブGを開放する。そして、回転テーブル2を間欠的に回転させながら、搬送アーム10により、回転テーブル2からその上方に上昇された図示しない支持ピン上にウエハWを載置する。そして、支持ピンを下降させることにより、回転テーブル2上にウエハWを載置する。
【0054】
(処理を行う工程S210)
次いで、ゲートバルブGを閉じて、回転テーブル2を回転させながら、ヒータユニット7によりウエハWを所定の温度へと加熱する。続いて、第1の処理ガスノズル31から第1の処理ガス(例えば、3DMASガス)を所定の流量で供給した状態で、更に第2の処理ガスノズル32から第2の処理ガス(例えば、オゾンガス又は酸素ガス)を供給する。そして、真空ポンプ64及び圧力調整部65により、処理容器1内を所定の圧力に調整する。
【0055】
ウエハWの表面では、回転テーブル2の回転によって第1の処理領域P1において第1の処理ガスが吸着する。続いて、第2の処理領域P2においてウエハW上に吸着した第1の処理ガスが、第2の処理ガスによって酸化される。これにより、薄膜成分である酸化膜の分子層が1層又は複数層形成されて反応生成物が形成される。
【0056】
なお、本実施形態に係る基板処理装置における処理領域P1、P2の間には、回転テーブル2の周方向両側に分離領域Dを配置している。そのため、分離領域Dにおいて、第1の処理ガスと第2の処理ガスとの混合が阻止されながら、各ガスが排気口61、62に向かって排気されていく。
【0057】
(水蒸気を供給する工程S220)
続いて、第1の処理ガス及び第2の処理ガスの供給を停止する。なお、本実施形態に係る水蒸気を供給する工程S220において、ウエハWの温度、処理容器1内の圧力、回転テーブル2の回転速度は、処理を行う工程S210の値と同程度とすることができる。しかしながら、上記のパラメータは、処理を行う工程S210の値から変更する構成であっても良い。
【0058】
そして、第3の処理ガスノズル35から第3の処理ガス(水素ガス)を、第4の処理ガスノズル36から第4の処理ガス(酸素ガス)を供給する。
【0059】
これにより、供給された水素ガスと酸素ガスとが反応し、処理容器1内に水蒸気が導入される。これにより、処理を行う工程S210によって処理容器1の内壁に堆積した累積膜(堆積膜)のストレスを緩和することができる。そのため、累積膜の膜厚が大きくなった場合であっても、累積膜の割れや剥がれ等に起因するパーティクルの発生を抑制することができる。
【0060】
水蒸気を供給する工程における、水素ガスの流量は、限定されないが、例えば0.5slm〜4.0slmの範囲内とすることができる。また、酸素ガスの流量は、限定されないが、例えば0.5slm〜4.0slmの範囲内とすることができる。
【0061】
水蒸気を供給する工程における、ウエハWの温度は、限定されないが、例えば450℃〜760℃の範囲内とすることができる。
【0062】
また、水蒸気を供給する工程における、処理容器1内の圧力は、限定されないが、例えば6.7Torr(893Pa)とすることができる。
【0063】
さらに、水蒸気を供給する工程における、回転テーブル2の回転速度としては、限定されないが、例えば30rpm〜240rpmの範囲内とすることができる。
【0064】
またさらに、水蒸気を供給する工程における、水素ガス及び酸素ガスの供給時間としては、限定されないが、例えば2秒〜30秒の範囲内、好ましくは5秒〜10秒の範囲内とすることができる。水蒸気を供給する時間が2秒未満の場合、累積膜のストレスを緩和する効果が低くなる場合がある。一方、水蒸気を供給する時間が30秒を超える場合、ウエハW上に形成された薄膜の膜質に影響を及ぼす場合があり、また、生産性が悪化する。
【0065】
なお、前述したように水蒸気を供給する工程の変形例として、貯水槽37に貯蔵された水に熱を印加して気化して、処理容器1内に導入しても良い。この場合、貯水槽37に貯蔵された水を図示しない加熱装置により加熱して気化し、流量調整バルブ39により所定の流量で、導入管38に形成された吐出口より処理容器1内に水蒸気を導入する。
【0066】
(基板を搬出する工程S230)
ウエハWの搬出に際しては、先ず、水素ガス及び酸素ガスの供給を停止する。そして、処理容器1内を減圧して水素ガス(及び酸素ガス)を排出し、減圧状態でゲートバルブGを開放する。そして、回転テーブル2に載置されたウエハWを図示しない支持ピンにより上昇させ、支持ピン上のウエハWを搬出すると同時に、次の処理用のウエハWを支持ピン上に載置する。
【0067】
本実施形態に係る水蒸気を供給する工程S220を含む基板処理方法は、累積膜のストレスを緩和して、累積膜の割れ又は剥がれ等に起因するパーティクルの発生を抑制することができる。そのため、累積膜の累積膜厚が大きくなるまで(例えば累積膜厚が3μmを超えるまで)クリーニング処理を実施する必要がなくなり、成膜処理に割り当てることが可能な時間を長くすることができる。
【0068】
また、本実施形態に係る水蒸気を供給する工程S220は、基板処理のラン内に実施することができる。そのため、成膜処理を施したウエハWを搬出すると同時、次のウエハWを搬入(S200参照)することができる。結果として、基板処理のラン間に同様のプロセスを実施する場合と比較して、一搬送プロセス分の時間を短縮することができる。
【0069】
結果として、本実施形態に係る基板処理方法は、基板処理装置のPMサイクルが長く、基板処理装置のダウンタイムが短い方法である。
次に、具体的な実施形態を挙げて、本発明をより詳細に説明する。
【0070】
(第1の実施形態)
本実施形態に係る基板処理方法における、特に水蒸気を供給する工程(S220)の効果を確認した実施形態について、説明する。
【0071】
先ず、比較の実施形態として所定の累積膜厚の累積膜が内壁に堆積している基板処理装置に対して、シリコンウエハWを搬入し、所定の処理条件でシリコン酸化膜の成膜処理を施した。そして、成膜後のシリコンウエハWを搬出すると共に、次のシリコンウエハWを搬入し、同様の処理条件でシリコン酸化膜の成膜処理を施した。
【0072】
上述のように、シリコンウエハWの搬入、成膜処理及び搬出を1サイクル(1ラン)として、このランを93回(合計94ラン)繰り返した。そして、毎ラン後の累積膜の累積膜厚と、所定のラン後のパーティクル発生数とについて測定により求めた。
【0073】
次に、この比較の実施形態の最後のシリコンウエハWの搬出の際に、次のシリコンウエハWを搬入し、比較の実施形態と同様の処理条件でシリコン酸化膜の成膜処理を施し、更に水蒸気を供給する工程を施した。そして、水蒸気を供給する工程の後のシリコンウエハWを搬出すると共に、次のシリコンウエハWを搬入し、同様の処理条件でシリコン酸化膜の成膜処理を施した。
【0074】
上述のように、シリコンウエハWの搬入、成膜処理及び搬出を1サイクル(1ラン)として、このランを67回(合計68ラン、比較の実施形態と併せたラン数:162ラン)繰り返した。そして、比較の実施形態と同様に、毎ラン後の累積膜の累積膜厚と、所定のラン後のパーティクル発生数とについて測定により求めた。
【0075】
なお、水蒸気を供給する工程の処理条件としては、
処理温度:620℃、
処理容器1内の圧力:6.7Torr、
回転テーブル2の回転数:120rpm、
ガス流量H
2/O
2:0.8slm/1.2slm、
ガスの供給時間:10秒、
とした。
【0076】
図6に、本実施形態に係る基板処理方法の効果の一例を説明するための概略図を示す。
図6の横軸は、ラン数を示し、縦軸は、累積膜厚(折れ線グラフ)及びパーティクル数(棒グラフ)を示す。なお、パーティクル数については、所定のラン後のパーティクル数のみを測定して示している。
【0077】
図6に示されるように、最初の比較の実施形態においては、ラン数が多くなり累積膜厚が大きくなるにつれ、発生するパーティクル数も多くなっている。これは、累積膜厚が大きくなるについれ、累積膜の割れや剥がれ等に起因してパーティクルが発生しやすくなるからである。
【0078】
一方、本実施形態の基板処理方法においては、比較の実施形態と比較して累積膜厚が大きいにも係らず、パーティクル数が少ない。また、累積膜厚が大きくなった場合であっても、パーティクル数に増加の傾向が見られない。これは、本実施形態に係る基板処理方法は、水蒸気を供給する工程(S220)を実施しているため、累積膜のストレスが緩和され、累積膜の割れや剥がれが抑制されたからであると思われる。
【0079】
半導体装置の生産性の観点からは、成膜処理に割り当てる時間を長くすることが好ましく、具体的には、累積膜の膜厚が少なくとも10μm程度までクリーニング処理を必要としない基板処理装置が求められている。しかしながら、本実施形態に係る基板処理方法を実施可能な基板処理装置は、累積膜の膜厚が大きくなった場合でもパーティクルの発生を抑制することができる。