特許第6204416号(P6204416)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6204416フィルム検査装置、フィルム検査方法、およびフィルム製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6204416
(24)【登録日】2017年9月8日
(45)【発行日】2017年9月27日
(54)【発明の名称】フィルム検査装置、フィルム検査方法、およびフィルム製造方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/892 20060101AFI20170914BHJP
【FI】
   G01N21/892 A
【請求項の数】13
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2015-143382(P2015-143382)
(22)【出願日】2015年7月17日
(65)【公開番号】特開2017-26390(P2017-26390A)
(43)【公開日】2017年2月2日
【審査請求日】2016年11月1日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100127498
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 和哉
(74)【代理人】
【識別番号】100146329
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】田鍋 祐司
(72)【発明者】
【氏名】片岡 達哉
(72)【発明者】
【氏名】西方 源次郎
【審査官】 立澤 正樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−192307(JP,A)
【文献】 特開2006−105816(JP,A)
【文献】 特開2013−231662(JP,A)
【文献】 特開平08−313453(JP,A)
【文献】 特開2006−003226(JP,A)
【文献】 特開平05−032030(JP,A)
【文献】 特開2008−221722(JP,A)
【文献】 特開2009−264743(JP,A)
【文献】 特開2004−157034(JP,A)
【文献】 特開2010−085209(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/892
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルムに対して照射され上記フィルムを介して戻ってきた光を受光することにより、上記フィルムに含まれる欠陥を検出するための信号を生成する受光装置と、
上記受光装置の視野内において上記フィルムを上記受光装置とは反対側から支持しつつ搬送する第1ローラーと、
を備え、
上記受光装置は、上記信号として、上記フィルムを介して戻ってきた光の強度に対応する強度の信号を生成し、
上記フィルムに欠陥が含まれている場合、
上記受光装置が生成する信号の強度のうち、上記フィルムにおける上記欠陥が含まれている箇所を介して戻ってきた光に対応する上記信号の強度は、上記フィルムにおける上記欠陥が含まれていない箇所を介して戻ってきた光に対応する上記信号の強度より小さく、
さらに、上記フィルムに対して可視光を照射する第1光源と、上記フィルムに対して紫外光または赤外光を照射する第2光源とを備え、
上記受光装置は、上記可視光と、上記紫外光または赤外光とを、上記フィルムを介して戻ってきた光として受光し、
上記受光した、上記可視光と、上記紫外光または赤外光とを比較することで上記欠陥の種類を特定することを特徴とするフィルム検査装置。
【請求項2】
フィルムに対して照射され上記フィルムを介して戻ってきた光を受光することにより、上記フィルムに含まれる欠陥を検出するための信号を生成する受光装置と、
上記受光装置の視野内において上記フィルムを上記受光装置とは反対側から支持しつつ搬送する第1ローラーと、
を備え、
さらに、上記フィルムに対して可視光を照射する第1光源と、上記フィルムに対して紫外光または赤外光を照射する第2光源とを備え、
上記受光装置は、上記可視光と、上記紫外光または赤外光とを、上記フィルムを介して戻ってきた光として受光し、
上記受光した、上記可視光と、上記紫外光または赤外光とを比較することで上記欠陥の種類を特定することを特徴とするフィルム検査装置。
【請求項3】
上記第1ローラーは、上記フィルムにおける、上記受光装置の光軸が通る部分を支持していることを特徴とする請求項1又は2に記載のフィルム検査装置。
【請求項4】
上記第1ローラーは、上記受光装置に対して上記フィルムを介して対向する位置に配置されていることを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載のフィルム検査装置。
【請求項5】
上記受光装置が受光する光は、上記フィルムを透過し上記第1ローラーによって反射または散乱され再度上記フィルムを透過して戻ってきた光を含むことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載のフィルム検査装置。
【請求項6】
上記第1ローラーの上記フィルムに接する外周面は、白色であることを特徴とする請求項5に記載のフィルム検査装置。
【請求項7】
上記フィルムの搬送経路にそった上記第1ローラーの直前または直後の位置、かつ上記フィルムに対して上記第1ローラーと同じ側に配置された第2ローラーをさらに備えることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載のフィルム検査装置。
【請求項8】
上記フィルムの搬送経路にそった上記第1ローラーの直前または直後の位置、かつ上記フィルムに対して上記第1ローラーとは反対側に配置された第2ローラーをさらに備えることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載のフィルム検査装置。
【請求項9】
上記第2ローラーは、
上記フィルムの搬送経路にそった上記第1ローラーの直前の位置に配置されており、
上記フィルムを上記第2ローラーの回転軸方向に伸ばす形状または機構を有する、
ことを特徴とする請求項7または8に記載のフィルム検査装置。
【請求項10】
上記第1ローラーは、上記フィルムを上記第1ローラーの回転軸方向に伸ばす形状を有することを特徴とする請求項1から9のいずれか一項に記載のフィルム検査装置。
【請求項11】
フィルムに対して照射され上記フィルムを介して戻ってきた光を受光装置によって受光することにより、上記フィルムに含まれる欠陥を検出するための信号を生成する工程と、
上記受光装置の視野内において上記フィルムを上記受光装置とは反対側から支持しつつ搬送する工程とを含み、
上記信号を生成する工程においては、上記信号として、上記フィルムを介して戻ってきた光の強度に対応する強度の信号を生成し、
上記フィルムに欠陥が含まれている場合、
上記信号を生成する工程において生成する信号の強度のうち、上記フィルムにおける上記欠陥が含まれている箇所を介して戻ってきた光に対応する上記信号の強度は、上記フィルムにおける上記欠陥が含まれていない箇所を介して戻ってきた光に対応する上記信号の強度より小さく、
また、上記受光装置は、第1光源から上記フィルムに対して照射した可視光と、第2光源から上記フィルムに対して照射した紫外光または赤外光とを、上記フィルムを介して戻ってきた光として受光し、
上記受光した、上記可視光と、上記紫外光または赤外光とを比較することで上記欠陥の種類を特定することを特徴とするフィルム検査方法。
【請求項12】
フィルムに対して照射され上記フィルムを介して戻ってきた光を受光装置によって受光することにより、上記フィルムに含まれる欠陥を検出するための信号を生成する工程と、
上記受光装置の視野内において上記フィルムを上記受光装置とは反対側から支持しつつ搬送する工程とを含み、
また、上記受光装置は、第1光源から上記フィルムに対して照射した可視光と、第2光源から上記フィルムに対して照射した紫外光または赤外光とを、上記フィルムを介して戻ってきた光として受光し、
上記受光した、上記可視光と、上記紫外光または赤外光とを比較することで上記欠陥の種類を特定することを特徴とするフィルム検査方法。
【請求項13】
請求項11又は12に記載のフィルム検査方法が含む各工程と、
上記生成する工程において生成された信号に基づき検査した上記フィルムの欠陥部位を除去する工程と、
を含むことを特徴とするフィルム製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送中のフィルムの欠陥検査に関する。
【背景技術】
【0002】
搬送中のフィルムの欠陥検査には、光学的な手法が用いられることが多い。特許文献1には、光源からフィルムなどの被検査物に対して可視光と不可視光とを照射し、被検査物が反射するこれらの光を受光することにより、被検査物の欠陥を検査する欠陥検査が開示されている。特許文献2には、フィルム両面に照射した光をカメラで撮像し、その画像を画像処理する欠陥検査を用いることが記載されている。光の反射を用いたフィルムの欠陥検査では、光源と受光装置とをフィルムに対して同じ側へ配置し、光源からフィルムへ照射されて異物などの欠陥によって反射された光を受光装置に集光している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014−20910号公報(2014年2月3日公開)
【特許文献2】特開2008−116437号公報(2008年5月22日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
搬送中のフィルムはフィルム面に垂直な方向へ変位する、いわゆる「バタつく」ことが多い。フィルムの長手方向に張力をかけることで、この変位をある程度抑制できる。しかし、この張力は、大きくなるほど搬送中のフィルムが伸びる、または破断する虞も大きくなるため、ある程度以下にとどめなければならない。そして、フィルムがバタつくと、受光装置に集光される反射光の強度がフィルム欠陥とは無関係に変動するため、正確な検査結果を得られなくなる。特に、フィルムが機械的強度の低い多孔質の二次電池用セパレータなどであるときには、この傾向は顕著である。特許文献1および2の従来技術では、この問題が考慮されていない。本発明は、以上の問題に鑑み、搬送中のフィルムの欠陥を正確に測定することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するために、本発明のフィルム検査装置は、フィルムに対して照射され上記フィルムを介して戻ってきた光を受光することにより、上記フィルムに含まれる欠陥を検出するための信号を生成する受光装置と、上記受光装置の視野内において上記フィルムを上記受光装置とは反対側から支持しつつ搬送する第1ローラーとを備える。
【0006】
上記構成によれば、受光装置は、フィルムに対して照射され、フィルムを介して戻ってきた光を受光する。このフィルムは、受光装置の視野内において受光装置とは反対側から第1ローラーにより支持されつつ搬送されている。
【0007】
そのため、受光装置が受光する光には、フィルムのうち、第1ローラーによって支持された部分、すなわち、受光装置に対する位置および姿勢の変化が抑制された部分を介して戻ってきた光が含まれることになる。その結果、上記構成によれば、第1ローラーを備えない構成と比較して、受光装置が受光する光において、フィルム欠陥とは無関係な光強度の変動が起こりにくくなる。よって、このフィルム検査装置では、第1ローラーを備えない従来のフィルム検査装置と比較して、受光装置が、より正確にフィルムの欠陥を反映した信号を出力できる。
【0008】
したがって、上記フィルム検査装置は、従来よりも正確にフィルムの欠陥を検査できる。
【0009】
なお、上記「フィルムを介して戻ってきた光」には、フィルムの表面または内部において反射されることにより戻ってきた光、フィルムの表面または内部において散乱されることにより戻ってきた光、フィルムを透過し第1ローラーによって反射または散乱され再度フィルムを透過して戻ってきた光などが該当する。
【0010】
また、本発明のフィルム検査装置では、上記第1ローラーは、上記フィルムにおける、上記受光装置の光軸が通る部分を支持していることが望ましい。
【0011】
上記構成によれば、受光装置が受光する光において、フィルムのうち、受光装置に対する位置および姿勢の変化が抑制された部分を介して戻ってきた光の割合が大きくなる。そのため、上記フィルム欠陥とは無関係な光強度の変動がより起こりにくくなる。
【0012】
また、本発明のフィルム検査装置では、上記第1ローラーは、上記受光装置に対して上記フィルムを介して対向する位置に配置されていることが望ましい。
【0013】
上記構成によれば、受光装置が受光する光において、フィルムのうち、受光装置に対する位置および姿勢の変化が抑制された部分を介して戻ってきた光の割合がさらに大きくなる。そのため、上記フィルム欠陥とは無関係な光強度の変動がさらにより起こりにくくなる。
【0014】
また、本発明のフィルム検査装置では、上記受光装置が受光する光は、上記フィルムを透過し上記第1ローラーによって反射または散乱され再度上記フィルムを透過して戻ってきた光を含むことが望ましい。
【0015】
上記構成によれば、上記第1ローラーを反射ローラーとして機能させることができる。そのため、上記第1ローラーの上記フィルムに接する外周面の特性(色、表面粗さ等)を調整することにより、受光装置が受光する光において、フィルムの正常部分と欠陥部分とのコントラストを高めたり、当該光に含まれるノイズ成分を低減したりすることができる。その結果、上記フィルム検査装置は、より正確にフィルムの欠陥を検査できる。
【0016】
また、本発明のフィルム検査装置では、上記第1ローラーの上記フィルムに接する外周面は、白色であることが望ましい。
【0017】
フィルムの異物は、暗い色であることが多い。上記構成によれば、上述したコントラストを高めることができるため、上記フィルム検査装置は、より正確にフィルムの欠陥を検査できる。
【0018】
また、本発明のフィルム検査装置は、上記フィルムの搬送経路にそった上記第1ローラーの直前または直後の位置、かつ上記フィルムに対して上記第1ローラーと同じ側に配置された第2ローラーをさらに備えることが望ましい。
【0019】
上記構成によれば、第1ローラーと第2ローラーとが、フィルムに対して同じ側に配置される。このため、受光装置を設ける空間を広く確保できる。よって、上記フィルム検査装置では、受光装置を設けるときの自由度が高まる。
【0020】
また、本発明のフィルム検査装置は、上記フィルムの搬送経路にそった上記第1ローラーの直前または直後の位置、かつ上記フィルムに対して上記第1ローラーとは反対側に配置された第2ローラーをさらに備えることが望ましい。
【0021】
上記構成によれば、第2ローラーはフィルムを第1ローラーに押し付けるように作用するので、フィルムの受光装置に対する位置および姿勢の変化がより抑制される。よって、上記フィルム検査装置は、より正確にフィルムの欠陥を検査できる。
【0022】
また、本発明のフィルム検査装置では、上記第2ローラーは、上記フィルムの搬送経路にそった上記第1ローラーの直前の位置に配置されており、上記フィルムを上記第2ローラーの回転軸方向に伸ばす形状または機構を有することが望ましい。
【0023】
上記構成によれば、フィルムが第1ローラーまで搬送される前に、第2ローラーによって確実にフィルムのしわなどが伸ばされる。ゆえに、このフィルム検査装置では、確実に、フィルムの欠陥検査位置における表面状態の変動を抑制し、より正確にフィルムの欠陥を検査できる。
【0024】
また、本発明のフィルム検査装置では、上記第1ローラーは、上記フィルムを上記第1ローラーの回転軸方向に伸ばす形状を有することが望ましい。
【0025】
上記構成によれば、第1ローラーは、搬送中にフィルムに生じたしわなどを伸ばすことができる。その結果、フィルムにおけるしわなどの発生を抑制し、表面状態をより一定に近づけることができる。よって、上記フィルム検査装置では、フィルムの欠陥検査位置における表面状態の変動を抑制し、より正確にフィルムの欠陥を検査できる。
【0026】
本発明のフィルム検査方法は、フィルムに対して照射され上記フィルムを介して戻ってきた光を受光装置によって受光することにより、上記フィルムに含まれる欠陥を検出するための信号を生成する工程と、上記受光装置の視野内において上記フィルムを上記受光装置とは反対側から支持しつつ搬送する工程とを含む。
【0027】
上記方法によれば、従来よりも正確にフィルムの欠陥を検査できる。
【0028】
本発明のフィルム製造方法は、上述のフィルム検査方法が含む各工程と、上記生成する工程において生成された信号に基づき検査した上記フィルムの欠陥部位を除去する工程とを含む。
【0029】
上記製造方法によれば、従来よりも欠陥の少ないフィルムを製造できる。
【発明の効果】
【0030】
本発明は、従来よりも正確にフィルムの欠陥を検査できるという効果を奏する。また、本発明は、従来よりも欠陥の少ないフィルムを製造できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】実施形態1のフィルム検査装置の構成を示す側面図・断面図である。
図2図1に示されるフィルム検査装置の受光装置が出力する電気信号のグラフである。
図3図1に示されるフィルム検査装置の受光装置と反射ローラーとがとり得る配置・姿勢を説明する側面図である。
図4】実施形態2のフィルム検査装置の構成を示す側面図である。
図5】実施形態3のフィルム検査装置の構成を示す断面図である。
図6図1に示されるフィルム検査装置の変形例を示す側面図である。
図7図1に示されるフィルム検査装置の他の変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
〔実施形態1〕
《フィルム検査装置1の構成》
図1は、本実施形態のフィルム検査装置1の構成を示す図であって、(a)は側面図であり、(b)は(a)の受光装置12と反射ローラー13(第1ローラー)とを含む面の断面図である。なお、図1に示されるXYZ軸は、他の図に示されるXYZ軸に対応している。
【0033】
フィルム検査装置1は、Y軸正方向側に搬送中のフィルム2の欠陥を検査する装置である。図1の(a)(b)に示されるように、フィルム検査装置1は、光源11a・11bと、受光装置12と、反射ローラー13と、検査部14と、搬送ローラー3a・3b(第2ローラー)とを備える。なお、図1の(b)では、図を簡潔にするために、光源11a・11bは破線で示されており、搬送ローラー3a・3bは省略されている。
【0034】
(フィルム2)
フィルム2は、二次電池用セパレータに加工する前の無孔フィルムである。なお、二次電池用セパレータとは、例えばリチウムイオン二次電池の正極と負極との間を分離しつつ、これらの間におけるリチウムイオンの移動を可能にする多孔質フィルムである。
【0035】
具体的には、フィルム2は、超高分子量ポリエチレンと、無機充填剤(フィラー:例えば、炭酸カルシウム、シリカ)または可塑剤(例えば、低分子量ポリオレフィン、流動パラフィン)とを混練して得たポリエチレン樹脂組成物を成形したフィルムである。このポリエチレン樹脂組成物は、例えば、超高分子量ポリエチレン100重量部と、無機充填剤100〜400重量部と、重量平均分子量1万以下の低分子量ポリオレフィン5〜200重量部とを混練して得る。
【0036】
なお、フィルム検査装置1の検査対象は、上述のフィルム2に限定されず、以下に列挙するものであってもよい。検査対象は、光をある程度透過するものが望ましい。この場合、後述する「反射ローラー13の外周面の色・表面粗さの影響」の項において説明する反射ローラー13による効果(検査光に対応する電気信号において、フィルム2の正常部分と欠陥部分とのコントラストを高めたり、ノイズ成分を低減したりすることができる効果)が奏される。ただし、検査対象は、ある程度の厚みを有する金属フィルム等、全く光を透過しないフィルムであってもよい。この場合にも、フィルム2が検査領域において受光装置12に対する位置および姿勢の変化が抑制されるという効果は奏される。
・上述のポリエチレン樹脂組成物を成形したフィルムから無機充填剤または可塑剤を除去したフィルム
・このフィルムを一軸または二軸延伸した延伸フィルム
・延伸フィルムにアラミドを含む溶液を塗布したフィルム、および、当該溶液から溶媒を除くことによりアラミド耐熱層を片面または両面に形成した積層フィルム
・延伸フィルムにアルミナ/カルボキシメチルセルロースを含む溶液を塗布したフィルム、および、当該溶液から溶媒を除くことによりアルミナ耐熱層を片面または両面に形成した積層フィルム
・延伸フィルムにポリフッ化ビニリデンを含む溶液を塗布したフィルム、および、当該溶液から溶媒を除くことにより接着層を片面または両面に形成した積層フィルム
・光学フィルム
・布、紙、パルプ、セルロース
上記の延伸フィルムおよび積層フィルムは二次電池用セパレータとして使用される。近年、二次電池の高容量化に伴い、二次電池用セパレータには一層の薄膜化が求められている。具体的には、膜厚5〜10μmの二次電池用セパレータが求められている。このようなフィルムは特に強度が低いため、搬送中にバタつく、伸びる、または破断する虞が特に大きくなる。すなわち、このような二次電池用セパレータの検査において、本発明は特に後述する優れた効果を奏する。
【0037】
(フィルム2の欠陥)
フィルム検査装置1が検査するフィルム2の欠陥は、例えばフィルム2に混入した以下に列挙する異物である。
・金属(鉄・ステンレス鋼・アルミニウム・銅・亜鉛・真鍮など)
・ゲル(超高分子量ポリエチレンなど)
・フィラー(炭酸カルシウムなど)凝集物
・油滴
・ローラー研磨材
・金属酸化物(酸化アルミ、酸化クロムなど)
・焼付き防止剤(金属塩)
以上のように、フィルム検査装置1が検査するフィルム2の異物は、フィルム2とは光学的特性が異なるものである。なお、フィルム2の穴・しわ・むらなども、フィルム検査装置1が検査するフィルム2の欠陥に含まれる。
【0038】
(搬送ローラー3a・3b)
搬送ローラー3a・3bは、フィルム2に接しかつ回転することにより、フィルム2をY軸方向側に搬送するローラーである。図1の(a)に示されるように、搬送ローラー3a・3bは、円柱形状であり、回転可能に支持されている。外部の搬送装置がフィルム2を搬送しているときには、フィルム検査装置1は、搬送ローラー3a・3bを備えていなくてもよい。なお、搬送ローラー3aは、自身に嵌められた円筒形状のコアに巻きつけられたフィルム2を巻き出すための巻出ローラーであってもよい。また、搬送ローラー3bは、自身に嵌められた円筒形状のコアにフィルム2を巻き取るための巻取ローラーであってもよい。
【0039】
(光源11a・11b)
光源11a・11bは、フィルム2へ光を照射するものである。光源11aが照射する光は、可視光である。光源11bが照射する光は、紫外光または赤外光である。
【0040】
図1の(b)に示されるように、光源11a・11bは、フィルム2のX軸方向のおおむね全体に光を照射する。なお、X軸方向は、フィルム2の長手方向と厚み方向とに垂直な方向である。また、光源11a・11bは、フィルム2の同一箇所に光を照射する。以上のように光を照射するために、光源11a・11bは、例えば、X軸方向に並ぶ複数の発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)、他の発光素子、またはLEDもしくは他の発光素子と拡散板もしくは波長フィルタとを組み合わせたものを備える。
【0041】
なお、フィルム2を照射する光として、フィルム検査装置1の外部からフィルム2へ照射される光を利用可能な場合は、フィルム検査装置1としては光源11a・11bを備える必要はない。
【0042】
(受光装置12)
受光装置12は、光源11a・11bによってフィルム2に対して照射され、フィルム2を介してZ軸正方向側に戻ってきた光を受光することにより、フィルム2に含まれる欠陥を検出するための信号を生成する装置である。
【0043】
なお、フィルム2から戻ってきた光には、フィルム2の表面または内部において反射された光、フィルム2の表面または内部において散乱された光、フィルム2を透過し反射ローラー13によって反射または散乱され再度フィルム2を透過した光が含まれている。これらの光を、以下では「検査光」と称することとする。
【0044】
受光装置12は、検査光を集光するレンズを備えており、図1の(b)に示されるようにフィルム2のX軸方向のおおむね全体から検査光を集光する。このレンズの被写界深度は、反射ローラー13上のフィルム2の表面および裏面をおおむね含むように設定されている。
【0045】
また、受光装置12は、2つの電荷結合素子(CCD:Charge Coupled Device)と、これらに対応する2つの光学フィルターとをさらに備える。2つのCCDは、それぞれ集光した検査光を電気信号に変換する。2つの光学フィルターは、上記2つのCCDごとに備えられており、一方のCCDが光源11aからの光成分を電気信号に変換でき、他方のCCDが光源11bからの光成分を電気信号に変換できるように、それぞれ特定の光のみを透過する。これにより、受光装置12は、集光した検査光を、光源11aからの光の成分と、光源11bからの光の成分とに分け、各成分を電気信号に変換できる。
【0046】
(反射ローラー13)
図1の(a)(b)に示されるように、反射ローラー13は、受光装置12に対してフィルム2を介して対向する位置に配置され、フィルム2のZ軸負方向側の一面に接してフィルム2を支持し、かつフィルム2を搬送する方向へ回転している。
【0047】
そのため、受光装置12が受光する検査光は、フィルム2のうち、反射ローラー13によって一面から支持された部分、すなわち、受光装置12に対する位置および姿勢の変化が抑制された部分を介した検査光となる。
【0048】
なお、フィルム2を搬送する搬送ローラー3a・3bは、フィルム2に対して反射ローラー13と同じ側、かつフィルム2の搬送経路にそった反射ローラー13の直前および直後の位置にそれぞれ配置されている。
【0049】
反射ローラー13は、光源11a・11bによってフィルム2に照射された光のうち、フィルム2を透過した光を反射又は散乱するものである。この反射ローラー13におけるフィルム2に接する外周面は、つや消し処理されていない白色の塩化ビニルからなっている。具体的には、マンセル表色系で表したときに、この外周面の色相は5Yであり、明度は9であり、彩度は0.5である。
【0050】
(検査部14)
図1の(a)(b)に示されるように、検査部14は、受光装置12に接続されており、受光装置12が変換した電子信号を受けとる。この電気信号は、受光装置12がフィルム2のX軸方向のおおむね全体から受光した検査光の強度を反映している。検査部14は、この電気信号から、フィルム2の欠陥を検査する。なお、フィルム検査装置1は、検査部14と同等の機能をもつ外部の検査部に接続されてもよい。このとき、フィルム検査装置1は、検査部14を備えなくてもよい。
【0051】
検査部14は、集積回路(ICチップ)などに形成された論理回路(ハードウェア)によって実現してもよいし、CPU(Central Processing Unit)を用いてソフトウェアによって実現してもよい。
【0052】
後者の場合、検査部14は、その機能を実現するソフトウェアであるプログラムの命令を実行するCPU、上述のプログラムおよび各種データがコンピュータ(またはCPU)で読み取り可能に記録されたROM(Read Only Memory)または記憶装置(これらを「記録媒体」と称する)、上述のプログラムを展開するRAM(Random Access Memory)などを備えている。そして、コンピュータ(またはCPU)が上述のプログラムを上述の記録媒体から読み取って実行することにより、本発明の目的が達成される。上述の記録媒体としては、「一時的でない有形の媒体」、例えば、テープ、ディスク、カード、半導体メモリ、プログラマブルな論理回路などを用いることができる。また、上述のプログラムは、該プログラムを伝送可能な任意の伝送媒体(通信ネットワークや放送波など)を介して上述のコンピュータに供給されてもよい。なお、本発明は、上述のプログラムが電子的な伝送によって具現化された、搬送波に埋め込まれたデータ信号の形態でも実現され得る。
【0053】
《フィルム検査装置1の動作》
(欠陥の有無の検査)
検査部14が受光装置12から受けとる電気信号の強度は、フィルム2からの検査光の強度に対応する。そして、フィルム2に欠陥があるときには、検査光の強度が変化する。よって、検査部14は、あらかじめ取得した欠陥のないフィルム2からの検査光の強度に対応する電気信号を基準値として保持しておき、この基準値と、欠陥の有無を検査したいフィルム2からの検査光の強度に対応する被検査電気信号とを比較することにより、フィルム2の欠陥の有無を検査できる。例えば、検査部14は、被検査電気信号を基準値で除算した値がある値よりも小さくなることをもって「欠陥が存在する」と欠陥の有無を検査できる。
【0054】
なお、検査部14は、受光装置12から複数回にわたって複数の電気信号を受けとり、これらの電気信号の平均を上述の基準値または被検査電気信号としてもよい。ここで、電気信号は、フィルム2に欠陥がないときにもフィルム2の表面状態を反映して変動する。検査部14は、複数の電気信号を平均することにより、この変動が抑制された電気信号を得ることができる。
【0055】
(欠陥の位置の検査)
図2は、図1に示されるフィルム検査装置1の受光装置12が出力する電気信号のグラフであって、(a)〜(d)は表面の色または処理方法が異なる反射ローラー13を用いたときのグラフである。これらのグラフの横軸「検査幅」は、フィルム2のX軸方向の位置に対応する。グラフの縦軸「信号強度」は、横軸に対応するフィルム2のX軸方向の位置において反射されて受光装置12によって受光された検査光の強度に対応する。縦軸の原点の値は、受光装置12が出力可能な電気信号の下限値である。
【0056】
図2の(a)に示されるように、フィルム2のX軸方向の中央部からの検査光の強度は、フィルム2のX軸方向の端部からの検査光の強度よりも小さい。よって、検査部14は、図2の(a)のグラフに示される電気信号を受けとり「検査光の光量を減少させる欠陥が、フィルム2のX軸方向の中央部に存在する」と欠陥の位置を検査できる。
【0057】
(欠陥の寸法の検査)
フィルム2の欠陥がX軸方向に大きくなるほど、図2の(a)のグラフに示される電気信号の強度が小さくなる範囲は広がる。ゆえに、検査部14は、図2の(a)のグラフに示される電気信号の波形に基づいて欠陥のX軸方向の寸法を検査できる。具体的には、検査部14は、電気信号の強度がある値よりも小さくなる検査幅の範囲を求め、受光装置12のレンズの倍率を乗算してフィルム2のX軸方向の長さに変換することにより、フィルム2のX軸方向の寸法を検査できる。
【0058】
また、フィルム2の欠陥がY軸方向に大きくなるほど、図2の(a)のグラフに示される電気信号の強度が小さくなる期間は長くなる。ゆえに、検査部14は、連続的に受けとった図2の(a)のグラフに示される電気信号の波形に基づいて欠陥のY軸方向の寸法を検査できる。具体的には、検査部14は、電気信号の強度がある値よりも小さくなる期間を求め、フィルム2の搬送速度を乗算してフィルム2のY軸方向の長さに変換することにより、フィルム2のY軸方向の寸法を検査できる。
【0059】
以上のように、検査部14は、フィルム2のX・Y軸方向の寸法を検査できる。
【0060】
(欠陥の種類の検査)
フィルム2の欠陥の種類が異なれば、光源11aからの可視光に対応する検査光の強度(以下「第1強度」)と、光源11bからの赤外光または紫外光に対応する検査光の強度(以下「第2強度」)との間で、欠陥の有無による強度変化の度合に違いが生じる。フィルム2の欠陥が例えば金属であるときには、第1強度と第2強度とは同程度に変化することになる。一方、この欠陥が例えば油であるときには、第1強度に対して第2強度の方が変化の割合が大きくなる。よって、光源11aが照射する可視光の第1強度と、光源11bが照射する赤外光または紫外光の第2強度とを受光装置12が同時に測定し、検査部14がこれらを比較することにより、フィルム2の欠陥の種類を特定できる。
【0061】
なお、この欠陥の種類の検査を行わないときには、フィルム検査装置1は、二つの光源を備えるのではなく、一つの光源を備えていればよい。
【0062】
《フィルム検査装置1の効果》
図1の(a)(b)に示されるように、フィルム検査装置1が反射ローラー13を備えることにより、フィルム2は、本フィルム検査装置1における検査領域において、受光装置12に対する位置および姿勢の変化が抑制される。よって、フィルム検査装置1では、反射ローラー13を備えない従来のフィルム検査装置と比較して、受光装置12は、より正確にフィルム2の欠陥を反映した電気信号を出力することができる。
【0063】
したがって、フィルム検査装置1は、従来よりも正確にフィルム2の欠陥を検査できるという効果を奏する。なお、この効果は、受光装置12と反射ローラー13とを、図1に示されるように配置したときにのみ奏されるわけではない。
【0064】
(受光装置12の視野と反射ローラー13の配置との関係)
図3は、図1の(a)に示されるフィルム検査装置1の受光装置12と反射ローラー13とがとり得る配置・姿勢を説明する側面図である。なお、図3では、図を簡潔にするために、光源11a・11bと検査部14と搬送ローラー3a・3bとは省略されている。
【0065】
受光装置12は、図3において破線で示されるように、受光装置12のレンズがCCDに検査光を集光できる範囲である視野Vから検査光を集光する。この視野V内のフィルム2は、そのY軸方向中央部において、反射ローラー13によって受光装置12とは反対側から支持されつつ搬送されている。
【0066】
ただし、受光装置12の視野Vと反射ローラー13の配置との関係は、上記に限定されるものではなく、受光装置12の視野内においてフィルム2が受光装置12とは反対側から支持されつつ搬送されるようになっておればよい。
【0067】
例えば、受光装置12を位置12aに移動させてもよい。この場合、視野Vは視野Vaに変化するが、視野Va内のフィルム2は、そのY軸方向端部において、反射ローラー13によって受光装置12とは反対側から支持されつつ搬送されている。なお、図3における位置12aは、受光装置12に対して、Y軸負方向側に移動しているが、Y軸正方向側に移動させてもよい。
【0068】
また、受光装置12を位置12bに移動させるとともに姿勢を傾斜させてもよい。この場合も、視野Vは視野Vaに変化するが、上述のとおり、視野Va内のフィルム2は、そのY軸方向端部において、反射ローラー13によって受光装置12とは反対側から支持されつつ搬送されている。なお、図3における位置12bは、受光装置12に対して、Y軸正方向側に移動しているが、Y軸負方向側に移動させてもよい。
【0069】
これらの場合、受光装置12が受光する検査光には、フィルム2のうち、反射ローラー13によって支持された部分P、すなわち、受光装置12に対する位置および姿勢の変化が抑制された部分Pを介して戻ってきた検査光が含まれることになる。その結果、反射ローラー13を備えない構成と比較して、受光装置12が受光する検査光において、フィルム2の欠陥とは無関係な光強度の変動が起こりにくくなる。よって、フィルム検査装置1では、反射ローラー13を備えない従来のフィルム検査装置と比較して、受光装置12が、より正確にフィルム2の欠陥を反映した信号を出力できる。
【0070】
したがって、フィルム検査装置1は、従来よりも正確にフィルム2の欠陥を検査できるという効果を奏する。
【0071】
(受光装置12の光軸と反射ローラー13の配置との関係)
受光装置12は、図3において一点鎖線で示されるように、受光装置12のレンズの中心と焦点とを結んだ直線である光軸OAを中心軸として検査光を集光する。この光軸OAは、反射ローラー13によって支持されたフィルム2の部分Pを通っている。
【0072】
また、光軸OAは、反射ローラー13の回転軸と垂直に交差する位置関係にあるが、受光装置12を位置12cに移動させるとともに姿勢を傾斜させ、光軸OAが光軸OAaに変化してもよい。なお、図3における位置12cは、受光装置12に対して、Y軸正方向側に移動するとともにX軸を中心軸として右回転する方向に姿勢が傾斜しているが、Y軸負方向側に移動させるとともにX軸を中心軸として左回転する方向に姿勢を傾斜させてもよい。
【0073】
これらの場合、受光装置12が受光する検査光において、フィルム2のうち、受光装置12に対する位置および姿勢の変化が抑制された部分Pを介して戻ってきた検査光の割合が大きくなる。そのため、フィルム2の欠陥とは無関係な光強度の変動がより起こりにくくなる。
【0074】
なお、光軸OAがフィルム2と反射ローラー13との接触位置を通り、かつ反射ローラー13の回転軸と垂直に交差する位置関係、すなわち、反射ローラー13が受光装置12に対してフィルム2を介して対向する位置関係にある場合、受光装置12が受光する検査光において、フィルム2の部分Pを介して戻ってきた検査光の割合がさらに大きくなる。そのため、フィルム2の欠陥とは無関係な光強度の変動がさらにより起こりにくくなる。
【0075】
(反射ローラー13の外周面の色・表面粗さの影響)
フィルム2が検査領域において受光装置12に対する位置および姿勢の変化が抑制されるという効果は、検査光に、フィルム2を透過し反射ローラー13によって反射または散乱され再度フィルム2を透過した光が含まれていない場合であっても、奏されるものである。
【0076】
一方、検査光に、フィルム2を透過し反射ローラー13によって反射または散乱され再度フィルム2を透過した光が含まれている場合には、反射ローラー13のフィルム2に接する外周面の特性(色、表面粗さ等)を調整することにより、図2の(a)のグラフに示されるように、検査光に対応する電気信号において、フィルム2の正常部分と欠陥部分とのコントラストを高めたり、ノイズ成分を低減したりすることができる。以下では、反射ローラー13のフィルム2に接する外周面の特性の影響について説明する。
【0077】
上述のとおり、図2の(a)のグラフに示される電気信号は、フィルム2に接する外周面が白色であり、つや消し処理されていない(表面粗さの小さい)反射ローラー13を用いたときに、受光装置12が出力する電気信号である。フィルム2の異物は、暗い色であることが多い。上記構成によれば、反射ローラー13上で、このような異物とフィルム2とのコントラストが高まるため、フィルム検査装置は、より正確にフィルムの欠陥を検査できる。
【0078】
図2の(b)のグラフに示される電気信号は、フィルム2に接する外周面が白色であり、つや消し処理されている反射ローラー13を用いたときに、受光装置12が出力する電気信号である。図2の(b)のグラフに示されるように、この電気信号の波形は、検査幅の中央部では図2の(a)のグラフに示される電気信号の波形と同様であるものの、検査幅の端部ではノイズ成分により比較的大きく変動している。このとき、検査部14は、上述の基準値と被検査電気信号とを比較しても、有意な差を検出できないことがある。よって、フィルム2の欠陥の検査においては、反射ローラー13のフィルム2に接する外周面は、つや消し処理されていないことが望ましい傾向にある。
【0079】
図2の(c)のグラフに示される電気信号は、フィルム2に接する外周面が灰色であり、つや消し処理されていない反射ローラー13を用いたときに、受光装置12が出力する電気信号である。図2の(c)のグラフに示されるように、この電気信号の波形は、検査幅の中央部では「信号強度」が下限値に達している。そして「信号強度」は、図2の(a)のグラフに示される電気信号の「信号強度」よりも、全体的に低い値である。このとき、検査部14は、上述の基準値と被検査電気信号とを比較しても、有意な差を検出できないことがある。よって、フィルム2の欠陥の検査においては、反射ローラー13のフィルム2に接する外周面は、白色であることが望ましい傾向にある。
【0080】
図2の(d)のグラフに示される電気信号は、フィルム2に接する外周面が灰色であり、つや消し処理されている反射ローラー13を用いたときに、受光装置12が出力する電気信号である。図2の(d)のグラフに示されるように、この電気信号の波形は、検査幅の中央部では図2の(c)のグラフに示される電気信号の波形と同様であるものの、検査幅の端部では比較的大きく変動している。このとき、検査部14は、上述の基準値と被検査電気信号とを比較しても、有意な差を検出できないことがある。よって、フィルム2の欠陥の検査においては、反射ローラー13のフィルム2に接する外周面は、つや消し処理されていないとともに、白色であることが望ましい傾向にある。
【0081】
(フィルム検査方法)
フィルム検査装置1が実行するフィルム検査方法も本発明に含まれる。このフィルム検査方法は、フィルム2に対して照射されフィルム2を介して戻ってきた検査光を受光装置12によって受光することにより、フィルム2に含まれる欠陥を検出するための信号を生成する工程と、受光装置12の視野VまたはVa内においてフィルム2を受光装置12とは反対側から支持しつつ搬送する工程とを含む。
【0082】
生成する工程とは、図1の(a)(b)に示されるように光源11a・11bがフィルム2に照射した光を、受光装置12が受光し、図2の(a)のグラフに示される電気信号を生成する工程である。搬送する工程とは、図1の(a)に示されるように、搬送ローラー3a・3bが規定する軌道にそってフィルム2をY軸正方向側に搬送する工程である。
【0083】
以上のフィルム検査方法により、従来よりも正確にフィルム2の欠陥を検査できる。
【0084】
(フィルム製造方法)
上述のフィルム検査方法を用いたフィルム製造方法も本発明に含まれる。このフィルム製造方法は、上述のフィルム検査方法が含む生成する工程・搬送する工程に加え、受光する工程の受光結果に基づきフィルムの欠陥部位を除去する工程を含む。
【0085】
除去する工程は、図1の(a)(b)に示されるフィルム検査装置1のY軸正方向側で実施される工程である。この除去する工程では、受光する工程の受光結果に基づき検査したフィルム2の欠陥部位を切断して除去する。切断されたフィルムは、例えば他のフィルムに繋ぎ合わされる。
【0086】
以上のフィルム製造方法により、従来よりも欠陥の少ないフィルム2を製造できる。
【0087】
〔実施形態2〕
本実施形態では、上述の実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記しその説明を省略する。後述する他の実施形態についても同様である。
【0088】
《フィルム検査装置1Aの構成》
図4は、本実施形態のフィルム検査装置1Aの構成を示す側面図である。図4に示されるとおり、フィルム検査装置1Aは、フィルム検査装置1が備える部材と同一の部材を備える。しかし、フィルム検査装置1Aでは、フィルム検査装置1とは異なり、搬送ローラー3a・3bがフィルム2のZ軸正方向側に接している。なお、Z軸正方向側は、フィルム2に対して反射ローラー13とは反対側である。
【0089】
《フィルム検査装置1Aの動作および効果》
フィルム検査装置1Aは、フィルム検査装置1と同様に動作し、従来よりも正確にフィルム2の欠陥を検査できる。さらに、フィルム検査装置1Aでは、搬送ローラー3a・3bはフィルム2を反射ローラー13に押し付けるように作用するので、フィルム2の受光装置12に対する位置および姿勢の変化がより抑制される。よって、フィルム検査装置1Aは、より正確にフィルム2の欠陥を検査できる。
【0090】
ただし、フィルム検査装置1では、搬送ローラー3a・3bと反射ローラー13とが、フィルム2に対して同じ側に配置される。このため、フィルム検査装置1では、光源11a・11bおよび受光装置12を設ける空間を、フィルム検査装置1Aよりも広く確保できる。よって、フィルム検査装置1では、光源11a・11bおよび受光装置12を設けるときの自由度が高まる。
【0091】
なお、フィルム検査装置1Aを用いて実施する上述のフィルム検査方法と、このフィルム検査方法を用いた上述のフィルム製造方法とも、本発明に含まれる。
【0092】
〔実施形態3〕
《フィルム検査装置1Bの構成》
図5は、本実施形態のフィルム検査装置1Bの構成を示す断面図である。図5は、図1の(b)に対応している。図5に示されるとおり、フィルム検査装置1Bは、凹型反射ローラー13A(第1ローラー)を除いてフィルム検査装置1が備える部材と同一の部材を備える。
【0093】
凹型反射ローラー13Aは、反射ローラー13とは異なり、その回転軸方向における中央部の直径が、両端部の直径よりも徐々に小さくなっている。このような形状のローラーは「逆クラウンローラー」と呼ばれることもある。このように、凹型反射ローラー13Aは、フィルム2を凹型反射ローラー13Aの回転軸方向に伸ばす形状を有している。
【0094】
凹型反射ローラー13Aの中央部の深さは、両端部の直径と中央部の直径との差を2で除算した値になる。そして、フィルム2の欠陥検査において最適なこの深さは、凹型反射ローラー13Aの回転軸方向の長さに依存する。例えば、この回転軸方向の長さが1000mmであれば、深さは1mm以下であることが望ましい。なお、凹型反射ローラー13Aのフィルム2に対向する外周面は、反射ローラー13と同様に、つや消し処理されていない白色の塩化ビニルからなるローラーである。
【0095】
《フィルム検査装置1Bの動作および効果》
フィルム2は、凹型反射ローラー13Aの回転軸方向の両端部側の外周面に接触しながら搬送される。これにより、両端部側の外周面において搬送されるフィルム2が外側に伸ばされ、搬送中にフィルム2に生じたしわなどを伸ばすことができる。その結果、フィルム2におけるしわなどの発生を抑制し、表面状態をより一定に近づけることができる。よって、フィルム検査装置1Bでは、フィルム2の欠陥検査位置における表面状態の変動を抑制し、より正確にフィルム2の欠陥を検査できる。
【0096】
なお、フィルム検査装置1Bの反射ローラーが凸型反射ローラーであっても、フィルム2におけるしわなどの発生を抑制し、表面状態をより一定に近づけることができる。凸型反射ローラーとは、その回転軸方向における中央部の直径が、両端部の直径よりも徐々に大きくなっている反射ローラーである。フィルム検査装置1Bを用いて実施する上述のフィルム検査方法と、このフィルム検査方法を用いた上述のフィルム製造方法とも、本発明に含まれる。
【0097】
(搬送ローラー3aの凹型ローラーなどへの置換)
図1の(a)に示されるフィルム検査装置1の搬送ローラー3aを凹型ローラー、凸型ローラー(クラウンローラー)、またはエキスパンダーローラーに置換したフィルム検査装置も、本発明に含まれる。つまり、搬送ローラー3aは、フィルム2の搬送経路にそった反射ローラー13の直前の位置に配置されており、フィルム2を搬送ローラー3aの回転軸方向に伸ばす形状または機構を有していてもよい。このフィルム検査装置では、フィルム2が反射ローラー13まで搬送される前に、搬送ローラー3aによって確実にフィルム2のしわなどが伸ばされる。ゆえに、このフィルム検査装置では、確実に、フィルム2の欠陥検査位置における表面状態の変動を抑制し、より正確にフィルム2の欠陥を検査できる。
【0098】
また、フィルム検査装置1Bの搬送ローラー3aを凹型ローラー、凸型ローラー、またはエキスパンダーローラーに置換したフィルム検査装置も、本発明に含まれる。このフィルム検査装置では、さらに確実に、フィルム2の欠陥検査位置における表面状態の変動を抑制し、より正確にフィルム2の欠陥を検査できる。
【0099】
ただし、搬送ローラー3aにおいてフィルム2のしわ伸ばし機能が十分に働く場合は、しわ伸ばし機能を有する凹型反射ローラー13Aではなく、通常の(外周面が円柱面状の)反射ローラー13を用いた方がよい場合もある。なぜなら、凹型反射ローラー13Aを用いた場合、そのしわ伸ばし機能により、検査領域内においてフィルム2のしわが伸ばされ、それに伴い検査領域内において欠陥が僅かながら変位してしまい、その結果、検査部14において計測される欠陥の位置や寸法に誤差が含まれる場合がある。一方、通常の反射ローラー13を用いた場合には、上記誤差は発生しにくいためである。
【0100】
〔変形例1〕
図6は、図1に示されるフィルム検査装置1の変形例を示す側面図であって、(a)は搬送ローラー3bがフィルム2に対してZ軸正方向側に配置されたフィルム検査装置1Cを示し、(b)は搬送ローラー3aがフィルム2に対してZ軸正方向側に配置されたフィルム検査装置1Dを示す。図6の(a)(b)に示されるように、搬送ローラー3a・3bの一方をフィルム2に対して反射ローラー13側に配置し、他方をフィルム2に対して反射ローラー13とは反対側に配置したフィルム検査装置1C・1Dも本発明に含まれる。フィルム検査装置1C・1Dは、フィルム検査装置1が奏する効果と、フィルム検査装置1Aが奏する効果とを両立した効果を奏する。
【0101】
〔変形例2〕
(複数の受光装置を備えたフィルム検査装置)
図7は、図1に示されるフィルム検査装置1の他の変形例を示す断面図であって、(a)は複数の受光装置12をX軸方向に並べた構成を示し、(b)は検出する検査光の波長が異なる一組の受光装置12A・12BをX軸方向に並べた構成を示し、(c)は複数の(b)に示される受光装置12A・12Bの組をX軸方向に並べた構成を示す。なお、図7は、図1の(b)に対応している。また、図7では、図を簡潔にするために、光源11a・11bと検査部14と搬送ローラー3a・3bとは省略されている。
【0102】
図7の(a)に示されるように、フィルム検査装置1Eは、複数の受光装置12を備える。フィルム検査装置1Eは、受光装置12の個数が異なる点をのぞき、フィルム検査装置1と同一の構成を備える。個々の受光装置12は、フィルム2のX軸方向の一部分から検査光を集光する。複数の受光装置12は、X軸方向に並べられることにより、総体としてフィルム2のX軸方向のおおむね全体から検査光を集光する。なお、検査部14は、各受光装置12に接続されている(非図示)。
【0103】
以上の構成により、個々の受光装置12が検査光を集光するフィルム2の範囲をせばめ、例えば受光装置12のレンズの直径を小さくすることができる。これにより、レンズの視野の歪みおよび色収差が抑制される。ゆえに、フィルム検査装置1Eは、一つの受光装置12のみを備えるフィルム検査装置1・1A〜1Dよりも、明瞭にフィルム2の欠陥を検査できる。
【0104】
図7の(b)に示されるように、フィルム検査装置1Fは、一組の受光装置12A・12Bを備える。また、フィルム検査装置1Fは、受光装置12をのぞき、フィルム検査装置1と同一の構成を備える。受光装置12A・12Bは、検査光を集光するレンズを備えており、フィルム2のX軸方向のおおむね全体から検査光を集光する。
【0105】
受光装置12は、その内部に2組のCCDとこれらに対応する2組の光学フィルターを備えるものであったが、受光装置12A・12BはそれぞれがCCDと光学フィルターとのペアを1つずつ備えている。そして、受光装置12Aの光学フィルターは、光源11aからの検査光のみを透過する。このため、受光装置12Aは、光源11aからの検査光のみを検出できる。受光装置12Bの光学フィルターは、光源11bからの検査光のみを透過する。このため、受光装置12Bは、光源11bからの検査光のみを検出できる。以上のように、受光装置12A・12Bが受光する検査光の波長は、互いに異なる。なお、検査部14は、受光装置12A・12Bに接続されている(非図示)。
【0106】
図7の(c)に示されるように、フィルム検査装置1Gは、複数の、図7の(b)に示される受光装置12A・12Bの組を備える。また、フィルム検査装置1Gは、受光装置12をのぞきフィルム検査装置1と同一の構成を備える。個々の受光装置12A・12Bの組は、フィルム2のX軸方向の一部分から検査光を集光している。複数のこの組は、X軸方向に並べられることにより、総体としてフィルム2のX軸方向のおおむね全体から検査光を集光する。なお、検査部14は、各受光装置12A・12Bに接続されている(非図示)。
【0107】
以上の構成により、フィルム検査装置1Gは、一つの受光装置12のみを備える上述のフィルム検査装置1・1A〜1Dよりも、明瞭かつ精密にフィルム2の欠陥を検査できる。
【0108】
(他の受光装置)
受光装置12は、レンズを含む受光器と、受光器が集光した検査光を分光する分光器とを備えた構成であってもよい。この構成では、分光器は、検査光をスペクトルに分光し、光源11aからの光の成分と、光源11bからの光の成分とに分け、各成分を電気信号に変換する。
【0109】
また、受光装置12は、密着型センサ(CIS;Contact Image Sensor)モジュールであってもよい。CISモジュールは、一方向に並ぶ複数の撮像素子(例えばCCD)と、光学フィルターと、レンズアレイとを備える。光学フィルターは、撮像素子ごとに備えられており、特定の撮像素子が特定の光のみを電気信号に変換できるように、特定の光のみを透過する。レンズアレイは、上述の一方向へ小型のレンズを並べたものである。以上の構成により、CISモジュールは、は、集光した検査光を、光源11aからの光の成分と、光源11bからの光の成分とに分け、各成分を電気信号に変換できる。
【0110】
〔付記事項〕
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0111】
1・1A〜1G フィルム検査装置
2 フィルム
3a・3b 搬送ローラー(第2ローラー)
11a・11b 光源
12・12A・12B 受光装置
13 反射ローラー(第1ローラー)
13A 凹型反射ローラー(第1ローラー)
14 検査部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7