(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記イオン化することは、前記ホウ素ドーパント種のイオンビームを生成するように行われ、前記ホウ素ドーパント種の前記イオンビームは、基板にホウ素を含有するイオンを注入するために電場によって加速される、請求項1に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本開示は、同位体濃縮ホウ素含有化合物、組成、並びにその製造方法及び使用方法に関する。
1つの局面における本開示は、2つ以上のホウ素原子と、少なくとも1つのフッ素原子とを含む、同位体濃縮ホウ素含有化合物であって、少なくとも1つの該ホウ素原子は、ホウ素の所望の同位体を(所望の同位体の)天然存在濃度あるいは天然存在割合よりも高い濃度あるいは割合で含んでいる化合物に関する。
【0030】
該ホウ素含有化合物は、いかなる適切なタイプのものであってもよく、ホウ素原子をいくつ含んでいてもよい。1つの実施例において、該ホウ素含有化合物は、少なくとも2つのホウ素原子と、少なくとも1つのフッ素原子とを含んでいる。他の実施例において、該ホウ素含有化合物は2〜80のホウ素原子を含んでおり、その中には例えばB
2F
4,B
2
H
6,H
2B
2F
6,H
2B
2F
2O
3,H
2B
2F
2O
6,およびH
2B
2F
4O
2などのジボラン化合物、例えばB
3F
6などのトリボロン化合物、例えばH
4B
4F
10,B(BF
2)
3CO,および(F
2B)
3BCOなどのテトラボロン化合物、ペンタボロン化合物、ヘキサボロン化合物、セプタボロン(ヘプタボロン)化合物、例えばB
8F
12などのオクタボロン化合物、
ノナボラン化合物、例えばB
10F
12などのデカボロン化合物、ウンデカボロン化合物、ドデカボロン化合物など、B
80フラーレン類縁体などのB
80化合物までが含まれる。他の実施例において、該ホウ素含有化合物は2,3,4,5,6,7,8,9,10,あるいは
11のホウ素原子を含むことが可能である。追加の実施例では、ホウ素クラスター化合物を含んでいてもよい。更に他の実施例において、該ホウ素含有化合物はジボロン化合物であってもよい。他の実施例において、該ホウ素含有化合物は特定のホウ素含有化合物種、例えばジボラン以外のジボロン化合物、を備えることが可能である。従って、本開示では、その広い範囲において幅広い種類のホウ素含有化合物が考慮されているということが明らかである。
【0031】
同位体濃縮ホウ素含有化合物の1つの実施例において、所望の同位体は原子量10のホウ素であり、また天然存在濃度は約19.9%である。このようなホウ素化合物において、原子量10のホウ素同位体の濃度は、特定の組成変形体において、例えば19.9%,20%,25%,30%,35%,40%,45%,50%,55%,60%,65%,70%,80%,85%,90%,95%,96%,97%,98%,99%,99.9%,あるいは99.99%より大きくてもよい。例えば、原子量10のホウ素同位体の濃度は20〜25%,25〜30%,30〜35%,35〜40%,40〜45%,45〜50%,50〜55%,55〜60%,60〜65%,65〜70%,70〜75%,75〜80%,80〜85%,85〜90%,90〜95%,95〜99%あるいは95〜99.9%であってもよい。他の実施例において、原子量10のホウ素同位体の濃度は20〜30%,30〜40%,40〜50%,50〜60%,60〜70%,70〜80%,80〜90%,あるいは90〜99%であってもよい。これらの様々な実施例のうちのいくつかの実施例において、該ホウ素含有化合物は2つのホウ素原子を含む。
【0032】
同位体濃縮ホウ素含有化合物の他の実施例において、所望の同位体は原子量11のホウ素であり、天然存在濃度は約80.1%である。このようなホウ素化合物において、原子量11のホウ素同位体の濃度は、例えば80.1%,85%,90%,95%,96%,97%,98%,99%,99.9%あるいは99.99%より大きくてもよく、特定の組成変形体であってもよい。例えば、原子量11のホウ素同位体の濃度は81〜85%,85〜90%,90〜95%,95〜99%,95〜99.9%であってもよい。特定の実施例において、原子量11のホウ素同位体の濃度は81〜90%あるいは90〜99%であってもよい。これらの様々な実施例のうちのいくつかの実施例において、該ホウ素含有化合物は2つのホウ素原子と少なくとも1つのフッ素原子とを含み、その他の化合物において、
11Bの
10Bに対する割合は4.1〜10,000の範囲である。
【0033】
上記の同位体濃縮ホウ素含有化合物の様々な実施例において、該ホウ素含有化合物は化学式B
2F
4を有する。上記の同位体濃縮ホウ素含有化合物のその他の様々な実施例においては、該ホウ素含有化合物は化学式B
2F
6を有する。
【0034】
より一般的には、本開示の同位体濃縮ホウ素含有化合物において、2つあるいはそれより多くのホウ素原子における所望の同位体の濃度は、互いに同一であっても、異なっていてもよい。本開示の同位体濃縮ホウ素含有化合物のいくつかの実施例において、該ホウ素含有化合物は3,4,5,6,7,8,9,10,あるいは11のホウ素原子を含んでいる。
【0035】
1つの局面において本開示は、ホウ素を基板に注入する方法に関し、該方法は本開示において様々に記載されている通り、同位体濃縮ホウ素含有化合物をイオン化し、ホウ素イオンを生成するステップと、該ホウ素イオンを基板に注入するステップとを含む。このような方法において、該同位体濃縮ホウ素含有化合物は、上記のいかなる適切なタイプのものであってもよい。1つの実施例において、該化合物は化学式B
2F
4を有する。このような方法のその他のいくつかの実施例において、該同位体濃縮ホウ素含有化合物は、化学式B
2F
6を有する。
【0036】
本開示は他の局面において、同位体濃縮ホウ素含有化合物のソースを備える、ビームラインイオン注入、プラズマ浸漬イオン注入あるいはプラズマドーピングシステムに関し、該化合物は上記のいかなるタイプのものであってもよい。1つの実施例において、該化合物は化学式B
2F
4を有する。このような方法のその他のいくつかの実施例において、該同位体濃縮ホウ素含有化合物は、化学式B
2F
6を有する。本開示は他の実施例において、ホウ素イオンが生成され、電界によって加速されて、基板上、例えばマイクロ電子装置の基板上、で衝突が起こるイオン注入に関する。ホウ素含有イオンを注入するこのような方法は、1つの実施例において、ホウ素を含むドーパント種を少なくとも15%の高いイオン化効率で、100ボルト未満、好ましくは90ボルト未満、より好ましくは80ボルト未満、最も好ましくは70ボルト未満のアーク電圧と従来の熱陰極イオンソースとを用いて、あるいは同等の電圧と別のイオンソースとを用いて、イオン化するステップを含む。他の実施において、イオン注入ではプラズマ浸漬工程が明確に除外されている。
【0037】
上記のビームラインイオン注入、プラズマ浸漬イオン注入あるいはプラズマドーピングシステムは、その特定の実施例において、同位体濃縮ホウ素含有化合物をイオン化チャンバへと運搬するようにされた導管を備えており、該導管は、導管の詰まりおよび/あるいは導管中への該化合物の堆積を最小化、あるいは抑制するのに効果的な温度に維持されている。そのため、イオン化チャンバおよび/あるいは前駆体供給管は、例えばイオン化チャンバへと流入する流入ドーパントガスの温度を下げる役割を果たす熱交換流回路を設けることによって、能動的な冷却能力を備えていてもよい。
【0038】
同位体濃縮ホウ素含有化合物をイオン注入機に供給する際に、該同位体濃縮ホウ素含有化合物は、例えば他の化学成分と共に該イオン注入機に供給されてもよい。該他の化学成分とは、例えばアルゴン、キセノン、窒素、ヘリウムなどの不活性ガス種、水素、アンモニア、例えば天然存在ホウ素前駆体などの他のホウ素前駆体、他の同位体濃縮ホウ素を含む前駆体、他のドーパント前駆体(すなわち非ホウ素ドーパント前駆体)、あるいは1つあるいはそれより多くの上述の化学成分である。
【0039】
1つの実施例において、同位体濃縮ホウ素含有化合物、例えば同位体濃縮された原子量11のホウ素を含むB
2F
4、は同位体濃縮された原子量11のホウ素を含むBF
3と共に
イオン注入機へと併流される。こうすることによって、同位体濃縮されたB
2F
4と同位体濃縮されたBF
3との希釈物は、注入機に接続する供給管に前駆体の流れが詰まるのを防
ぐ役割を果たす。このような場合、ビーム電流は、操作面で大きな利益をもたらすと同時に、イオンソースの寿命を最大化するレベルで維持されてもよい。
【0040】
同位体濃縮ホウ素を含む前駆体を用いるその他のいくつかの実施例において、イオン注入システムの操作を、該システムのコンポーネントのその場(in situ)洗浄と並行して行ってもよい。例えば、洗浄剤を該システムあるいは洗浄されるシステムの特定のコンポーネントに流すことによって、定期的に行ってもよい。このような操作に用いられる洗浄剤は、いかなる適切なタイプのものであってもよく、例えば二フッ化キセノン、フッ素、三フッ化窒素、あるいはイオン注入システムあるいは洗浄されるイオン注入システムの特定のコンポーネントに形成された堆積物に接触し、そのような堆積物を少なくとも部分的に除去するのに効果的な、その他の洗浄剤であってもよい。洗浄剤が定期的に導入されることによって洗浄されるイオン注入システムの場所は、ガス管、アークチャンバ、前方ライン(forelines)、あるいはイオン注入操作に用いられる化学種によって堆積物が形成され得る、該注入機のいかなる場所あるいは領域、あるいは補助器具であってもよい。
【0041】
同位体濃縮ホウ素含有化合物を前駆体として用いる他の実施例において、イオン注入機は、同位体濃縮された原子量11のホウ素B
2F
4を、唯一のドーパント前駆体として用い
て操作される。更に他の実施例において、イオン注入は、同位体濃縮された原子量11のホウ素B
2F
4を、イオン注入機においてドーパント種として用いて行われ、該イオン注入機はアルシン、ホスフィン、二酸化炭素、一酸化炭素、四フッ化ケイ素、および三フッ化ホウ素で構成される群から選択されたドーパント前駆体を用いて、ドーピング操作を行うためにも用いられる。
【0042】
本開示の更なる局面は、ガス貯蔵・分配容器に関し、該容器は、本開示で様々に記述されたいかなるタイプの、同位体濃縮ホウ素含有化合物を備える。このようなガス貯蔵・分配容器は、例えば化学式B
2F
4を有する、同位体濃縮ホウ素含有化合物を含んでいてもよい。特定の実施例におけるガス貯蔵・分配容器は、1以上の調整器、逆止弁、吸着剤、フィルタおよび該容器の内部容積に設けられたキャピラリー流量制限装置を備えていてもよい。該容器は、他の実施例において、ホウ素含有化合物を貯蔵する固相物理吸着などの貯蔵媒体、あるいはイオン液体貯蔵媒体を含んでいてもよい。更に他の実施例において、該容器は、容器の内部容積あるいは該容器の出力ポートなどの接続ポートのどちらかに設けられた、流量制限オリフィスを備えていてもよい。
【0043】
本発明の他の局面は、ホウ素を含むガスを金属ホウ素に接触させるステップを備える、上記のいかなるタイプの同位体濃縮ホウ素含有化合物を合成する方法に関する。このような方法において、ホウ素を含むガスおよび金属ホウ素の一方あるいは両方は、同位体濃縮されていてもよい。従って本開示では、例えば1つの実施例において、同位体濃縮された金属ホウ素と天然存在三フッ化ホウ素との組合せが、接触されたものとして検討されており、他の実施例では天然存在金属ホウ素と同位体濃縮された三フッ化ホウ素との組合せが接触された種として検討されており、更に他の実施例では同位体濃縮された金属ホウ素と同位体濃縮された三フッ化ホウ素との接触が検討されている。
【0044】
上記の合成方法の特定の実施例の通り、該接触のステップにおいて合成された同位体濃縮ホウ素含有化合物は、B
2F
4であってもよく、該ホウ素を含むガスは、三フッ化ホウ素であってもよい。
【0045】
上記の合成方法は、ホウ素金属における原子量10のホウ素同位体を、いかなる適切な濃度で用いて実施してもよい。特定の実施例において、ホウ素金属における原子量10のホウ素同位体の濃度は19.9%,20%,25%,30%,35%,40%,45%,50%,55%,60%,65%,70%,80%,85%,90%,95%,99%,99.9%,あるいは99.99%より大きくてもよい。
【0046】
他の実施例において、該合成方法は、ホウ素金属における原子量11のホウ素同位体を用いて行われてもよい。また、このようなタイプの特定の実施例において、ホウ素金属における原子量11のホウ素同位体の濃度は、80.1%,85%,90%,95%,99%,99.9%あるいは99.99%よりも大きくてもよい。
【0047】
三フッ化ホウ素が用いられる合成方法の更に他の実施例において、同位体濃縮された三フッ化ホウ素種、例えば原子量10のホウ素同位体の濃度が19.9%,20%,25%,30%,35%,40%,45%,50%,55%,60%,65%,70%,80%,85%,90%,95%,99%,99.9%,あるいは99.99%よりも大きい三フッ化ホウ素、を用いることが可能である。
【0048】
他の実施例において、同位体濃縮された形態の三フッ化ホウ素を用いる合成方法は、該三フッ化ホウ素が原子量11のホウ素同位体において濃縮された形態で行われてもよく、該三フッ化ホウ素における原子量11のホウ素同位体の濃度は、80.1%,85%,90%,95%,99%,99.9%あるいは99.99%よりも大きい。
【0049】
更なる局面において本開示は、イオン注入工程のためのビーム電流を向上させる方法に関し、該方法は、そのような向上したビーム電流を生成するのに効果的な同位体濃縮ホウ素含有化合物を、対応する非同位体濃縮ホウ素含有化合物に対して用いるというステップを含む。特定の実施例において、同位体濃縮ホウ素含有化合物は、同位体濃縮されたB
2
F
4を含む。
【0050】
本開示の更なる局面は、イオン注入工程においてビーム電流を向上させる方法に関し、該方法は、上記のいかなる適切なタイプの同位体濃縮ホウ素含有化合物を流すステップと、該化合物からイオンビームを生成するステップとを備える。このような方法において、該同位体濃縮ホウ素含有化合物は、化学式B
2F
4を有する化合物を備えていてもよい。このようなホウ素含有化合物はイオン化されると、B
2F
4+,B
2F
3+,B
2F
2+,BF
3+,
BF
2+,BF
+,B
+,F
+,B
2F
4++,B
2F
3++,B
2F
2++,BF
3++,BF
2++,BF
++
,B
++,F
++,B
2F
4+++,B
2F
3+++,B
2F
2+++,BF
3+++,BF
2+++,BF
+++,B
+++,およびF
+++の中から1つあるいはそれ以上の種を含んだ、いくつかのイオン種およびフラグメントを形成してもよい。
【0051】
同位体濃縮ホウ素含有化合物とそれに対応して濃縮されたホウ素を含むイオン種およびフラグメントとを用いて、これらがAMUマグネットを備えるセレクタあるいはその他のセレクタによって注入用に選択されるに従って、ビーム電流を顕著に向上させることが可能である。このようないくつかの実施例において、ホウ素含有化合物と該化合物から生成されるイオン種およびそのフラグメントとにおける原子量11のホウ素同位体の濃度は、80.1%,85%,90%,95%,99%,99.9%あるいは99.99%より大きくてもよい。あるいは、原子量10のホウ素同位体において濃縮されたホウ素含有化合物、すなわち原子量10のホウ素同位体の濃度が19.9%,20%,25%,30%,35%,40%,45%,50%,55%,60%,65%,70%,80%,85%,90%,95%,99%,99.9%あるいは99.99%より大きいホウ素含有化合物と、該化合物から生成されたイオン種およびそのフラグメントとが用いられてもよい。
【0052】
同位体濃縮された化合物をイオン注入のための供給ガスのソースとして用いることに加え、本開示ではホウ素含有ソース化合物の複数の組合せを用い、様々な改善が得られる設定が検討されている。該改善とは、例えばビーム電流の改善および/あるいはイオン注入操作に関するその他の操作パラメータの改善、分解の程度および分解によって生成される堆積物の量の減少、イオン注入システム内の流路の詰まりに対する耐性の強化などである。
【0053】
本開示では更に、ホウ素イオン注入のための前駆体として、ホウ素同位体が同質の化合物を用いることが検討されている。それはすなわち、ホウ素含有化合物と、該化合物から生成されるイオン種およびそのフラグメントとであって、ビーム電流、あるいはイオン注入操作およびシステムのその他の操作パラメータにおいて改善を得るために、ホウ素原子が全て
10Bあるいは
11Bである化合物である。
【0054】
同位体濃縮ホウ素含有化合物を用いることによって、選択されたイオン種のためのビーム電流を大幅に向上可能であるということが示されている。例えば、イオン注入用に選択された特定のイオン種によっては、ビーム電流が5〜30%あるいはそれより大きく向上される。ホウ素において同位体濃縮されたイオン種は、いかなる適切なタイプのものであってもよく、例えばB
2F
4+,B
2F
3+,B
2F
2+,BF
3+,BF
2+,BF
+,B
+,F
+,B
2F
4++,B
2F
3++,B
2F
2++,BF
3++,BF
2++,BF
++,B
++,F
++,B
2F
4+++,B
2F
3+++,B
2F
2+++,BF
3+++,BF
2+++,BF
+++,B
+++,およびF
+++の1つあるいはそれより多くのものを含んでいてもよい。従って、同位体の濃縮を用いて、質量分析マグ
ネットによる所望のタイプのイオン、例えばBF
2+,BF
+あるいはF
+、の選択を向上させることが可能である。イオン注入機のビーム電流に、このような同位体濃縮された種を増加させることによって、ソースのガス流量およびソースのアーク電力を増加させる必要性を回避することが可能である。さもなければビーム電流のレベルを高くする必要があり得るが、それは非効率的であり、イオン注入のためのソースガスの利用度が低くなってしまう。
【0055】
同位体濃縮されたB
2F
4を用いることは特に好ましい。それは、このようなホウ素ソース化合物は天然存在の同位体組成においても、三フッ化ホウ素を用いて同一の条件で同一のイオン注入機において得られる、例えばBF
2+およびB
+などのイオン種のためのビー
ム電流と比較して、ビーム電流に大幅な向上をもたらすからである。同位体の濃縮は、このような向上の度合いを更に増加させることが可能である。
【0056】
他の局面において本開示は、同位体濃縮ホウ素含有化合物のイオン化において、イオン種を生成することに関する。該生成はイオン注入に有用であり、該生成において、同位体濃縮ホウ素を含むイオン種はB
2F
4+,B
2F
3+,B
2F
2+,BF
3+,BF
2+,BF
+,B
+,F
+,B
2F
4++,B
2F
3++,B
2F
2++,BF
3++,BF
2++,BF
++,B
++,F
++,B
2F
4+++,B
2F
3+++,B
2F
2+++,BF
3+++,BF
2+++,BF
+++,B
+++,およびF
+++の中か
ら選択される。本開示では更に、同位体濃縮ホウ素含有化合物のイオン化から生成されるこのようなイオン種の1つあるいはそれより多くの種を、質量分析マグネット(AMUマグネット)が選択することについて、およびこのような同位体濃縮ホウ素を含むイオン種を基板、例えばマイクロ電子装置の基板、に注入することについて検討されている。
【0057】
同位体濃縮ホウ素を含む種は、原子量11のホウ素同位体の濃度あるいは原子量10のホウ素同位体の濃度を、天然存在比とは異なる上記のいずれかの濃度になるように同位体濃縮されてもよい。すなわち、該イオン種における原子量11のホウ素同位体の濃度が80.1%,85%,90%,95%,99%,99.9%あるいは99.99%より大きくなるように、あるいは原子量10のホウ素同位体の濃度が19.9%,20%,25%,30%,35%,40%,45%,50%,55%,60%,65%,70%,80%,85%,90%,95%,99%,99.9%あるいは99.99%より大きい同位体
濃縮ホウ素を含む種を提供するべく、同位体濃縮されてもよい。
【0058】
本開示の他の局面は、熱分解およびイオン注入機の表面への材料の堆積を、同位体濃縮ホウ素を含むソース化合物を用いることによって減少させる方法に関する。イオン注入において用いられるホウ素を含むソース化合物の熱分解は、元素ホウ素を堆積させ、三フッ化ホウ素あるいはその他の副生ガス種を発生させ得る。たとえガス供給ラインが十分に冷却されても、アークチャンバの壁面にある程度の熱蒸着が起こることは避けられない。このような分解およびそれに関連する堆積によって形成される堆積物は、ソースガス由来の金属ホウ素とアークチャンバの壁面からのタングステンあるいはモリブデンとの混合物であり得る。堆積物はイオンソース付近のガス供給ライン、また、ノズルの内部および表面、アークチャンバのベースプレート、およびイオン化装置のベースプレートライナーの下にも形成され得る。このような堆積物は、例えば、適切な洗浄ガスを、堆積物を含んだ注入機に流し堆積物を揮発させて除去するといった、研磨クリーニングおよび化学的な方法による定期的な除去メンテナンスが必要である。その結果生じる排水は、排水流から得られる特定の材料を修復あるいは回復させるべく処理されてもよい。
【0059】
イオン注入機がホウ素ドーパントのみを用いて操作されるものでない場合は、様々なタイプの固形材料あるいはイオンが、ホウ素ソース化合物由来のイオンと、構成材料によっては真空チャンバ内に存在する材料、例えば上記のタングステンおよびモリブデン材料など、との相互作用によって形成されてもよい。アルミニウムの絶縁体を有するタングステ
ンアークチャンバにおいて、イオンは、x=0,1,2,3,4,5あるいは6であるWF
x+、およびy=0,1,2,あるいは3であるAlF
y+を含む、幅広い様々なタイプから形成されてもよい。このようなイオンは同位体濃縮ホウ素を含むソース化合物と反応可能で、対応する同位体濃縮された堆積物を形成する。このような堆積物の同位体の性質によって、自身の同位体組成と同一のものに対して選択的である洗浄剤を用いる機会が得られてもよい。
【0060】
本開示の更なる局面は、上記のいかなる適切なタイプの同位体濃縮ホウ素含有化合物のソースを準備する方法であって、貯蔵・分配容器を該化合物で満たすステップを含む方法に関する。このような方法において、該同位体濃縮ホウ素含有化合物は、1つの実施例において、化学式B
2F
4を有する。
【0061】
本開示の該同位体濃縮ホウ素含有化合物は、多様な化合物を含んでおり、これらの化合物の特定のものは、標準状態(1大気圧、25℃)において気体、固体あるいは液体の状態である。
【0062】
従って本開示では、イオン注入のためのイオン種を生成するための質量分析マグネットによる分離に有用な、イオン化組成について検討されている。前記組成はBF
3以外のホ
ウ素前駆体化合物に由来し、前記ホウ素前駆体化合物は、
10Bおよび
11Bの一方において天然存在度を超えて同位体濃縮されている。また、前記組成はB
2F
4+,B
2F
3+,B
2F
2+,BF
3+,BF
2+,BF
+,B
+,F
+,B
2F
4++,B
2F
3++,B
2F
2++,BF
3++,BF
2++,BF
++,B
++,F
++,B
2F
4+++,B
2F
3+++,B
2F
2+++,BF
3+++,BF
2+++,B
F
+++,B
+++,およびF
+++の中の1つあるいはそれより多くの種を含んでおり、前記組
成の該ホウ素含有種は、
10Bおよび
11Bの一方において、天然存在度を超えて同位体濃縮されている。
【0063】
このような組成において、該ホウ素前駆体化合物は化学式B
2F
4、あるいはその他のいかなる適切な化学式を有していてもよい。該組成は、該ホウ素を含むイオン種における原子量10のホウ素同位体の濃度が19.9%,20%,25%,30%,35%,40%,45%,50%,55%,60%,65%,70%,80%,85%,90%,95%,99%,99.9%、あるいは99.99%よりも大きくなるように構成されてもよい。あるいは、該組成は、前記ホウ素を含むイオン種における原子量11のホウ素同位体の濃度が80.1%,85%,90%,95%,99%,99.9%あるいは99.99%より大きくなるように構成されてもよい。
【0064】
本開示の更なる局面は、B
2F
4+,B
2F
3+,B
2F
2+,BF
3+,BF
2+,BF
+,B
+,
B
2F
4++,B
2F
3++,B
2F
2++,BF
3++,BF
2++,BF
++,B
++,B
2F
4+++,B
2F
3+++,B
2F
2+++,BF
3+++,BF
2+++,BF
+++およびB
+++の中から選択され、
10Bおよ
び
11Bの一方において天然存在度を超えて同位体濃縮された、ホウ素イオン種に関する。該ホウ素イオン種において、前記ホウ素イオン種における原子量10のホウ素同位体の濃度は19.9%,20%,25%,30%,35%,40%,45%,50%,55%,60%,65%,70%,80%,85%,90%,95%,99%,99.9%あるいは99.99%より大きく、あるいは前記ホウ素イオン種における原子量11のホウ素同位体の濃度は80.1%,85%,90%,95%,99%,99.9%あるいは99.99%より大きい。
【0065】
本開示の更なる局面は、イオン注入工程のためのビーム電流を向上させる方法であって、このような向上したビーム電流を生成する同位体濃縮されたイオン種を形成するのに効果的な同位体濃縮ホウ素含有化合物を、対応する非同位体濃縮ホウ素含有化合物に対して用いるステップを含む方法に関する。
【0066】
同位体濃縮ホウ素含有化合物は、化学式B
2F
4を有していてもよく、あるいは他のいかなる適切な同位体濃縮ホウ素含有化合物を備えていてもよい。1つの実施例において、同位体濃縮されたイオン種における原子量10のホウ素同位体の濃度は、19.9%,20%,25%,30%,35%,40%,45%,50%,55%,60%,65%,70%,80%,85%,90%,95%,99%,99.9%、あるいは99.99%より大きい。他の実施例において、前記同位体濃縮されたイオン種における原子量11のホウ素同位体の濃度は、80.1%,85%,90%,95%,99%,99.9%あるいは99.99%より大きい。
【0067】
本開示の更なる局面は、ジボラン(B
2H
6)を、B
2F
4と組合せてドーパント前駆体組成として用いることに関する。このようなドーパント前駆体組成におけるB
2F
4は、本開示において様々に記載されているように、同位体濃縮の形態であっても、あるいは非同位体濃縮の形態であってもよい。このようなドーパント前駆体組成におけるジボランも同様に、ホウ素同位体種において同位体濃縮の形態であっても、あるいは非同位体濃縮の形態であってもよい。このようなB
2F
4およびジボランで形成されるドーパント前駆体組成を用いる際に、B
2F
4化合物およびジボランの化合物は予め互いに混合され、同一のソースパッケージから供給されてもよく、あるいはこのようなB
2F
4化合物およびジボラン化合物はそれぞれ別のソースパッケージから供給され、このような別々のソースパッケージから処理機へと、いかなる適切な方法で流されてもよい。例えば、B
2F
4およびジボラン化合物はそれぞれ別々のソースパッケージから処理機へと併流されてもよく、あるいはこれらの化合物は順次あるいは交互に処理機へと供給されてもよい。
【0068】
本開示の他の局面において、本開示のホウ素化合物および組成は、本開示で様々に記載されているように、濃縮あるいは非濃縮のB
2F
4、およびB
2F
4含有組成に由来するホウ素イオンを用いて、太陽電池を生産するための基板のプラズマドーピングに用いられてもよい。
【0069】
図を参照すると、
図1は、同位体濃縮ホウ素を含む前駆体を前駆体供給容器から受取るために設けられたイオン注入システムを含む、本開示の1つの実施例による半導体製造設備の概略図である。
【0070】
図1に示されるように、該半導体製造設備180は、ドーパント前駆体をイオン注入システムのイオンソースチャンバへと分配するために設けられた、ドーパント前駆体供給容器182を備えている。該ドーパント前駆体供給容器182は、いかなる適切なタイプのものであってもよく、例えば、ATMI社(米国コネティカット州ダンベリー)から商標「SDS」で市販されているタイプの、吸着剤ベースの液体貯蔵・分配装置によって構成されていてもよい。該液体貯蔵・分配装置は、ドーパント前駆体がガス状で該容器の中に含まれた吸着媒体に物理的に吸着可能である場合、ドーパント前駆体ガスを大気中の圧力よりも低い圧力、例えば600トル未満、例えば約10〜約500トルの範囲の圧力、で供給するように設けられている。あるいは、該ドーパント前駆体は、例えば液体貯蔵容器からガスをより低い圧力で分配するようにされたATMI社(米国コネティカット州ダンベリー)から商標「VAC」で市販されているタイプの調圧容器などで加圧された状態で、貯蔵されている時は液体状であってもよい。更なる代替例として、該ドーパント前駆体は、固体の形状であってもよく、ATMI社(米国コネティカット州ダンベリー)から商標ProE−Vapで市販されているタイプの、固形ドーパント前駆体が加熱され、イオン注入操作のための前駆体ガスを発生させる、気化容器に供給されてもよい。
【0071】
図1のシステムにおけるドーパント前駆体は、例えば同位体濃縮された四フッ化ジボロン(B
2F
4)、あるいはその他のいかなる同位体濃縮ホウ素を含む前駆体を備えていても
よい。
【0072】
該ドーパントガスは供給管184を通り、ガス運搬部186へと流される。該ガス運搬部186は、イオンソース190の高圧インレット188の上流でドーパントガスがイオン化するのを抑制するべく構成・配置されており、該ドーパントガスはイオンソース190にてイオン化され、所望の性質を有するドーパントイオンを形成する。
【0073】
その結果生じるドーパントイオンは流路192を通って、イオンソース190から注入チャンバ194へと運ばれ、該注入チャンバ194においてウェハ(図示なし)は、ドーパント種のイオン流に対して、イオン衝突位置に配置される。
【0074】
注入チャンバからの副産物である排水は、排水処理管196を通り排水処理部198へと流され、排水は該排水処理部198において処理および/あるいは再生処理され、排水処理部198から排出される最終的な形態の排水が生じる。
【0075】
本発明は、本発明の特定の局面、特徴および実施例を参照して本明細書中に説明されてきたが、本発明の有用性は限定されるものではなく、ここに示された開示に基づくその他の多数の変形例、改良例、および代替的な実施例にまで及ぶこと、あるいはこれらを包含するということは、本発明の分野において通常の技術を持った者には明白である。従って、以下に請求される本発明は、本発明の精神および範囲において、このような全ての変形例、改良点、および代替的な実施例を含むものとして広く受取られまた解釈されるべきである。