特許第6204487号(P6204487)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6204487混合正極材を含む二次電池の出力推定装置及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6204487
(24)【登録日】2017年9月8日
(45)【発行日】2017年9月27日
(54)【発明の名称】混合正極材を含む二次電池の出力推定装置及び方法
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/36 20060101AFI20170914BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20170914BHJP
   H01M 10/02 20060101ALI20170914BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20170914BHJP
   H01M 4/485 20100101ALI20170914BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20170914BHJP
   H01M 4/525 20100101ALI20170914BHJP
   H01M 4/58 20100101ALI20170914BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20170914BHJP
【FI】
   G01R31/36 A
   H01M10/48 P
   H01M10/02
   H01M4/36 E
   H01M4/485
   H01M4/505
   H01M4/525
   H01M4/58
   H02J7/00 Q
【請求項の数】22
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2015-545373(P2015-545373)
(86)(22)【出願日】2013年11月29日
(65)【公表番号】特表2016-507722(P2016-507722A)
(43)【公表日】2016年3月10日
(86)【国際出願番号】KR2013011034
(87)【国際公開番号】WO2014084680
(87)【国際公開日】20140605
【審査請求日】2015年5月28日
(31)【優先権主張番号】10-2012-0137320
(32)【優先日】2012年11月29日
(33)【優先権主張国】KR
(31)【優先権主張番号】10-2013-0147620
(32)【優先日】2013年11月29日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ウォン−テ・ジョ
(72)【発明者】
【氏名】スン−ヨン・チャ
【審査官】 山崎 仁之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−156351(JP,A)
【文献】 特開2010−169609(JP,A)
【文献】 特開2006−129588(JP,A)
【文献】 特開2004−340587(JP,A)
【文献】 特表2011−517361(JP,A)
【文献】 特開2010−223768(JP,A)
【文献】 特開2005−345136(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/36
H01M 4/36
H01M 4/485
H01M 4/505
H01M 4/525
H01M 4/58
H01M 10/02
H01M 10/48
H02J 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも第1正極材と第2正極材とが混合された混合正極材を含む二次電池が放電するとき、作動イオンが主に挿入される正極材が第1正極材から第2正極材に変更され、且つ、前記二次電池の充電状態に対応する転移放電率よりも大きい相異なる複数の放電率条件で前記二次電池を放電させる放電手段と、
前記複数の放電率条件に対応する複数の放電終了電圧を測定するセンサー手段と、
前記複数の放電率と前記複数の放電終了電圧との間の相関関係を2次元の線形方程式に近似し、前記線形方程式を用いて放電下限電圧に対応する二次電池の最大放電率を計算し、計算された最大放電率から二次電池の最大出力を推定する制御手段と、を含むことを特徴とする二次電池の出力推定装置。
【請求項2】
前記放電手段が、相異なる複数の放電率条件で二次電池をパルス放電させることを特徴とする請求項1に記載の二次電池の出力推定装置。
【請求項3】
前記第1正極材及び第2正極材の種類及び混合比率は、前記二次電池の放電抵抗プロファイルがコンベックスパターンを有するように設定されたものであることを特徴とする請求項1に記載の二次電池の出力推定装置。
【請求項4】
前記第1正極材及び第2正極材の種類及び混合比率は、前記二次電池の開放電圧プロファイルが少なくとも1つの電圧平坦領域を有するように設定されたものであることを特徴とする請求項1に記載の二次電池の出力推定装置。
【請求項5】
前記第1正極材及び前記第2正極材は、放電モードで二次電池の作動イオンと反応する電圧帯域が相異なることを特徴とする請求項1に記載の二次電池の出力推定装置。
【請求項6】
前記制御手段が、少なくとも2組の放電率及び放電終了電圧を用いて線形方程式を近似することを特徴とする請求項1に記載の二次電池の出力推定装置。
【請求項7】
前記複数の放電率条件が、前記二次電池の充電状態毎に測定されたI−Vプロファイルで観察される転移放電率の最大値より大きいことを特徴とする請求項1に記載の二次電池の出力推定装置。
【請求項8】
前記制御手段が、下記数式
最大放電率(Cmax)=(線形方程式のY切片−放電下限電圧)/線形方程式の傾きの絶対値
を用いて前記最大放電率を計算することを特徴とする請求項1に記載の二次電池の出力推定装置。
【請求項9】
前記制御手段が、下記数式
max=最大放電率*放電下限電圧={(線形方程式のY切片−放電下限電圧)/線形方程式の傾きの絶対値}*放電下限電圧
を用いて二次電池の最大出力を推定することを特徴とする請求項1または請求項8に記載の二次電池の出力推定装置。
【請求項10】
前記制御手段と組み合わせられた表示手段をさらに含み、
前記制御手段は、前記表示手段を通じて前記推定された二次電池の最大出力を出力することを特徴とする請求項1に記載の二次電池の出力推定装置。
【請求項11】
前記制御手段が、前記推定された二次電池の最大出力を外部のコントロールユニットに伝送することを特徴とする請求項1に記載の二次電池の出力推定装置。
【請求項12】
前記制御手段と組み合わせられた保存手段をさらに含み、
前記制御手段は、前記複数の放電率及び放電終了電圧、前記近似した線形方程式の傾き及びY切片、または前記推定された二次電池の最大出力を前記保存手段に記録することを特徴とする請求項1に記載の二次電池の出力推定装置。
【請求項13】
前記第1正極材は、一般化学式A[A]O2+z(ここで、AはLi、Na、及びKのうち少なくとも1つの元素を含み、MはNi、Co、Mn、Ca、Mg、Al、Ti、Si、Fe、Mo、V、Zr、Zn、Cu、Al、Mo、Sc、Zr、Ru、及びCrから選択された少なくとも1つの元素を含み、x≧0、1≦x+y≦2、−0.1≦z≦2であり、x、y、z、及びMに含まれた成分の化学量論係数は化合物が電気的中性を維持するように選択される)で表されるアルカリ金属化合物であり、
前記第2正極材は、一般化学式LiFe1‐x1‐y4‐z(ここで、MはTi、Si、Mn、Co、Fe、V、Cr、Mo、Ni、Nd、Al、Mg、及びAlから選択された少なくとも1つの元素を含み、MはTi、Si、Mn、Co、Fe、V、Cr、Mo、Ni、Nd、Al、Mg、Al、As、Sb、Si、Ge、V、及びSから選択された少なくとも1つの元素を含み、MはFを含むハロゲン族元素から選択された少なくとも1つの元素を含み、0<a≦2、0≦x≦1、0≦y<1、0≦z<1であり、a、x、y、z、M、M、及びMに含まれた成分の化学量論係数は化合物が電気的中性を維持するように選択される)、または、Li(PO(ここで、MはTi、Si、Mn、Fe、Co、V、Cr、Mo、Ni、Al、Mg、及びAlから選択された少なくとも1つの元素を含む)で表されるリチウム金属フォスフェートであることを特徴とする請求項1に記載の二次電池の出力推定装置。
【請求項14】
請求項1に記載の二次電池の出力推定装置を含む電気駆動装置。
【請求項15】
(a)少なくとも第1正極材と第2正極材とが混合された混合正極材を含む二次電池が放電するとき、作動イオンが主に挿入される正極材が第1正極材から第2正極材に変更され、且つ、前記二次電池の充電状態に対応する転移放電率よりも大きい相異なる複数の放電率条件で前記二次電池を放電させる段階と、
(b)前記複数の放電率条件に対応する複数の放電終了電圧を測定する段階と、
(c)前記複数の放電率と前記複数の放電終了電圧との間の相関関係を2次元の線形方程式に近似し、前記線形方程式を用いて放電下限電圧(Vmin)に対応する二次電池の最大放電率(Cmax)を計算する段階と、
(d)前記計算された最大放電率から二次電池の最大出力を推定する段階と、を含むことを特徴とする二次電池の出力推定方法。
【請求項16】
前記(a)段階が、相異なる複数の放電率条件で前記二次電池をパルス放電させる段階であることを特徴とする請求項15に記載の二次電池の出力推定方法。
【請求項17】
前記(c)段階において、少なくとも2組の放電率及び放電終了電圧を用いて前記線形方程式を近似することを特徴とする請求項15に記載の二次電池の出力推定方法。
【請求項18】
前記(a)段階において、前記複数の放電率条件は、前記二次電池の充電状態毎に測定されたI−Vプロファイルで観察される転移放電率の最大値より大きいことを特徴とする請求項15に記載の二次電池の出力推定方法。
【請求項19】
前記(d)段階が、下記数式
max=最大放電率*放電下限電圧={(線形方程式のY切片−放電下限電圧)/線形方程式の傾きの絶対値}*放電下限電圧
を用いて二次電池の最大出力を推定することを特徴とする請求項15に記載の二次電池の出力推定方法。
【請求項20】
前記推定された二次電池の最大出力を表示する段階をさらに含むことを特徴とする請求項15に記載の二次電池の出力推定方法。
【請求項21】
前記推定された二次電池の最大出力を外部に伝送する段階をさらに含むことを特徴とする請求項15に記載の二次電池の出力推定方法。
【請求項22】
前記複数の放電率及び放電終了電圧、前記近似した線形方程式の傾き及びY切片、または前記推定された二次電池の最大出力を保存する段階をさらに含むことを特徴とする請求項15に記載の二次電池の出力推定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、混合正極材を含む二次電池の出力を推定する装置及び方法に関する。
本出願は、2012年11月29日出願の韓国特許出願第10−2012−0137320号、及び2013年11月29日出願の韓国特許出願第10−2013−0147620号に基づく優先権を主張するものであり、該当韓国出願の明細書及び図面に開示された内容は、すべて本出願に援用される。
【背景技術】
【0002】
電池は、電気化学的な酸化及び還元反応を通じて電気エネルギーを生成するものであって、幅広い範囲で多様な用途に用いられる。例えば、携帯電話、ラップトップパソコン、デジカメ、ビデオカメラ、タブレットパソコン、電動工具などのように持ち運び可能な装置;電気自転車、電気バイク、電気自動車、ハイブリッド自動車、電気船、電気飛行機などのような各種電気駆動動力装置;新再生エネルギーを用いて発電した電力や余剰発電電力を貯蔵するときに使用される電力貯蔵装置;サーバーコンピューターと通信用基地局を含む各種情報通信装置に電力を安定的に供給するための無停電電源供給装置などに至るまで、電池の使用領域はますます拡がっている。
【0003】
電池は、3つの基本構成要素を含む。すなわち、放電する間に電子を放出しながら酸化される物質を含む負極(anode)、放電する間に電子を収容しながら還元される物質を含む正極(cathode)、そして負極と正極との間でイオンの移動を可能にする電解質である。
【0004】
電池は、放電した後は再使用が不可能な一次電池と、電気化学反応が少なくとも部分的には可逆的であって、繰り返して充電と放電が可能な二次電池とに分類することができる。
二次電池としては、鉛‐酸電池、ニッケル‐カドミウム電池、ニッケル‐亜鉛電池、ニッケル‐鉄電池、銀酸化物電池、ニッケル金属水素化物(hydride)電池、亜鉛‐マンガン酸化物電池、亜鉛‐臭化物電池、金属‐空気電池、リチウム二次電池などが知られている。そのうち、リチウム二次電池は、他の二次電池に比べてエネルギー密度及び電池電圧が高く、保存寿命が長いという点で商業的に多大に関心を集めている。
【0005】
リチウム二次電池は、正極と負極とでリチウムイオンの挿入(intercalation)と脱離(de−intercalation)の反応が起きるという特性がある。すなわち、放電が行われる間には、負極に含まれた負極材からリチウムイオンが脱離した後、電解質を通じて正極に移動し、正極に含まれた正極材に挿入される。充電が行われるときは、その逆である。
リチウム二次電池においては、正極材として使用される物質が二次電池の性能に重要な影響を及ぼすため、高温で安定性を維持しながらも高いエネルギー容量を提供でき、且つ、製造コストの低い正極材を提供しようとして多様に試みられている。しかし未だ、市場で要求する性能を全て充足するには、ある1つの正極材のみでは限界がある。
【0006】
一方、近年、化石燃料の枯渇と大気汚染の深刻化のため、環境にやさしいエネルギーに対する要求が急増している。それ故に、二次電池から供給される電気エネルギーを使用して運行できる電気自動車やハイブリッド自動車のような電気駆動自動車の商用化が先進国を中心に活発に行われている。
電気駆動自動車の運行速度は二次電池の出力に比例する。したがって、電気駆動自動車のコントロールユニットは、二次電池が提供できる出力がどの程度であるかをモニタリングする機能を持つ。また、前記コントロールユニットは、二次電池が出力できる最大出力の範囲内で電気駆動自動車が安全に駆動できるように、モーターを含む各種駆動装置を制御する。そこで、電気駆動自動車の走行性能を最適化するためには、二次電池の出力を正確に計算できる方法が必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第6677082号明細書
【特許文献1】米国特許第6680143号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
二次電池の出力は、正極材の電気化学的物性によって影響を受ける。したがって、二次電池に含まれた正極材の種類によって、二次電池は特異な電気化学的挙動を示すことがあり得る。このような場合、二次電池の出力を正確に推定することがさらに難しくなる。
本発明は、市場が求める二次電池の性能を考慮して、2つ以上の正極材を混合した混合正極材を含み、前記混合正極材によって特異な電気化学的挙動を示す二次電池の出力を正確に推定する装置及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を達成するため、本発明による二次電池の出力推定装置は、少なくとも第1正極材と第2正極材とが混合された混合正極材を含む二次電池の出力を推定する装置であって、相異なる複数の放電率(C−rate)条件で二次電池を放電させる放電手段と、前記複数の放電率条件に対応する複数の放電終了電圧(V)を測定するセンサー手段と、前記複数の放電率と前記複数の放電終了電圧との間の相関関係を2次元の線形方程式に近似し、前記線形方程式を用いて放電下限電圧(Vmin)に対応する二次電池の最大放電率(Cmax)を計算し、計算された最大放電率から二次電池の最大出力(Pmax)を推定する制御手段と、を含む。
【0010】
上記の課題を達成するため、本発明による二次電池の出力推定方法は、(a)少なくとも第1正極材と第2正極材とが混合された混合正極材を含む二次電池を相異なる複数の放電率(C−rate)条件で放電させる段階と、(b)前記複数の放電率条件に対応する複数の放電終了電圧(V)を測定する段階と、(c)前記複数の放電率と前記複数の放電終了電圧との間の相関関係を2次元の線形方程式に近似し、前記線形方程式を用いて放電下限電圧(Vmin)に対応する二次電池の最大放電率(Cmax)を計算する段階と、(d)前記計算された最大放電率から二次電池の最大出力(Pmax)を推定する段階と、を含む。
【0011】
一態様によれば、前記放電手段は、相異なる複数の放電率条件で二次電池を一定時間間隔を置いてパルス放電させる。
別の態様によれば、前記複数の放電率条件は、二次電池の充電状態(SOC:State Of Charge)毎に測定したI−Vプロファイルで観察される転移放電率の最大値より大きい。
【0012】
ここで、前記I−Vプロファイルは、同じ充電状態の二次電池を相異なる放電率で一定時間放電させた直後に測定した二次電池の放電終了電圧(V)を放電率の変化に従って図化したグラフである。
前記I−Vプロファイルは、同じ充電状態条件で放電率を変化させたとき、二次電池の動的電圧(Dynamic voltage)がどのくらい降下するのかを示す。前記I−V測定プロファイルは、通常、負の傾きを有する一次関数の形態である。
しかし、混合正極材を含む二次電池の場合、充電状態(または開放電圧)が特定の範囲に属するとき、前記I−V測定プロファイルは特定の放電率を基準にしてプロファイルの傾きが変わる。
このように、I−Vプロファイルの傾きが変化する放電率を転移放電率と定義でき、前記転移放電率は二次電池の充電状態(または開放電圧)に依存して変化する。前記I−V測定プロファイルは、二次電池の充電状態毎に図化し得る。
【0013】
また、さらに別の態様によれば、前記制御手段は、少なくとも2組の放電率及び放電終了電圧を用いて線形方程式を近似することができる。
また、さらに別の態様によれば、前記制御手段は、下記数式1及び数式2を用いて二次電池の最大放電率(Cmax)と最大出力(Pmax)を計算する。
ここで、前記最大放電率はC−rate単位で表されるが、アンペア(ampere)単位に変換して表すこともできることは自明である。
<数式1>
最大放電率(Cmax)=(線形方程式のY切片−放電下限電圧)/線形方程式の傾きの絶対値
<数式2>
max=最大放電率(Cmax)*放電下限電圧(Vmin
【0014】
本発明において、前記第1正極材及び第2正極材は、電圧の変化と共にこれらと反応する作動イオンの反応濃度が変化する。
このような場合、前記第1及び第2正極材を含む二次電池は、充電状態の変化に従って抵抗プロファイルを測定したとき、抵抗プロファイル上にコンベックス(convex)パターンを有し、コンベックスパターンの頂点を前後にして2つの変曲点が現れる。
また、前記第1及び第2正極材を含む二次電池は、充電状態の変化に従って開放電圧(OCV:Open Circuit Voltage)プロファイルを測定したとき、開放電圧プロファイル上に少なくとも1つの電圧平坦領域(plateau)を有する。
【0015】
ここで、前記作動イオンは、混合正極材を含む二次電池が充電または放電する過程で前記第1及び第2正極材と電気化学的反応をするイオンを指称する。
前記作動イオンは、二次電池の種類によって変わり得る。一例として、リチウム二次電池である場合、作動イオンはリチウムイオンであり得る。
前記電気化学的反応は、二次電池の充電と放電過程で伴われる前記第1及び第2正極材の酸化及び還元反応を含むものであって、二次電池の作動メカニズムによって変わり得る。
一例として、前記電気化学的反応は、作動イオンが前記第1正極材及び/または前記第2正極材の内部に挿入されるか又は逆に内部から脱離することを意味し得る。
このような場合、前記第1及び第2正極材に挿入される作動イオンの濃度、または、前記第1及び第2正極材から脱離する作動イオンの濃度は、二次電池の電圧の変化によって変わり得る。
【0016】
一例として、二次電池が放電する条件において、ある電圧帯域では前記第2正極材よりも前記第1正極材に作動イオンが優先的に挿入され、他の電圧帯域ではその逆になり得る。
別の例として、二次電池が充電される条件において、ある電圧帯域では前記第1正極材よりも前記第2正極材から作動イオンが優先的に脱離し、他の電圧帯域ではその逆になり得る。
以下では、二次電池が放電するとき、高い電圧帯域では作動イオンが前記第2正極材よりも第1正極材に優先的に挿入され、低い電圧帯域では作動イオンが前記第1正極材よりも第2正極材に優先的に挿入されるとして説明する。
【0017】
二次電池の開放電圧は、二次電池の充電または放電が中断し、二次電池が電気化学的に安定した状態にあるときに測定した電圧を意味する。前記開放電圧は、二次電池の充電状態と1:1の対応関係を有するため、充電状態と均等な概念であると言える。
本発明において、前記第1及び第2正極材として使用可能な物質は、二次電池の電圧レベルに従って作動イオンと反応する濃度が変わる物質であれば特に制限がない。
【0018】
一態様によれば、前記第1正極材は、一般化学式A[A]O2+z(AはLi、Na、及びKのうち少なくとも1つの元素を含む;MはNi、Co、Mn、Ca、Mg、Al、Ti、Si、Fe、Mo、V、Zr、Zn、Cu、Al、Mo、Sc、Zr、Ru、及びCrから選択された少なくとも1つの元素を含む;x≧0、1≦x+y≦2、−0.1≦z≦2;x、y、z、及びMに含まれた成分の化学量論係数は化合物が電気的中性を維持するように選択される)で表されるアルカリ金属化合物であり得る。
選択的に、前記第1正極材は、米国特許第6,677,082号(特許文献1)、米国特許第6,680,143号(特許文献2)などに開示されたアルカリ金属化合物xLiM‐(1‐x)Li(Mは平均酸化状態3を有する少なくとも1つの元素を含む;Mは平均酸化状態4を有する少なくとも1つの元素を含む;0≦x≦1)であり得る。
【0019】
別の態様によれば、前記第2正極材は、一般化学式LiFe1‐x1‐y4‐z(MはTi、Si、Mn、Co、Fe、V、Cr、Mo、Ni、Nd、Al、Mg、及びAlから選択された少なくとも1つの元素を含む;MはTi、Si、Mn、Co、Fe、V、Cr、Mo、Ni、Nd、Al、Mg、Al、As、Sb、Si、Ge、V、及びSから選択された少なくとも1つの元素を含む;MはFを含むハロゲン族元素から選択された少なくとも1つの元素を含む;0<a≦2、0≦x≦1、0≦y<1、0≦z<1;a、x、y、z、M、M、及びMに含まれた成分の化学量論係数は化合物が電気的中性を維持するように選択される)、または、Li(PO(MはTi、Si、Mn、Fe、Co、V、Cr、Mo、Ni、Al、Mg、及びAlから選択された少なくとも1つの元素を含む)で表されるリチウム金属フォスフェートであり得る。
【0020】
さらに別の態様によれば、前記第1正極材は、Li[LiNiCoMn2+z](a≧0;a+b+c+d=1;b、c、及びdのうち少なくとも1つは0でない;0.1≦z≦2)であり得る。また、前記第2正極材は、LiFePO、LiMnFePO(0<x+y≦1)、及びLiFe(POからなる群より選択された1つ以上であり得る。
さらに別の態様によれば、前記第1正極材及び/または前記第2正極材は、コーティング層を含むことができる。前記コーティング層は炭素層を含むか、若しくは、Ti、Si、Mn、Co、Fe、V、Cr、Mo、Ni、Nd、Al、Mg、Al、As、Sb、Si、Ge、V、及びSからなる群より選択された少なくとも1つの元素を含む酸化物層またはフッ化物層を含むことができる。
【0021】
本発明において、前記第1正極材と第2正極材との混合比率は、製造しようとする二次電池の用途と性能を考慮し、放電抵抗プロファイルでコンベックスパターンが現れるか又は開放電圧プロファイルで少なくとも1つの電圧平坦領域が現れるように選択する。
一実施態様として、放電出力に優れた二次電池を所望する場合、Li[Ni1/3Mn1/3Co1/3]OとLiFePOをそれぞれ第1正極材と第2正極材として選択し、第1正極材と第2正極材との混合比率を5:5に設定することができる。
別の実施態様として、高温安全性に優れた二次電池を所望する場合、Li[Ni1/3Mn1/3Co1/3]OとLiFePOをそれぞれ第1正極材と第2正極材として選択し、第1正極材と第2正極材との混合比率を2:8に設定することができる。
【0022】
さらに別の実施態様として、製造コストが安い二次電池を所望する場合、Li[Ni1/3Mn1/3Co1/3]OとLiFePOをそれぞれ第1正極材と第2正極材として選択し、第1正極材と第2正極材との混合比率を1:9に設定することができる。
さらに別の実施態様として、放電出力が良く高温安全性に優れた二次電池を所望する場合、[Ni1/3Mn1/3Co1/3]OとLiFePOをそれぞれ第1正極材と第2正極材として選択し、第1正極材と第2正極材との混合比率を4:6に設定することができる。
さらに別の実施態様として、重量当りの容量が大きい二次電池を所望する場合、Li[Ni0.5Mn0.3Co0.2]OとLiFePOをそれぞれ第1正極材と第2正極材として選択し、第1正極材と第2正極材との混合比率を9:1に設定することができる。
【0023】
上述した前記第1及び第2正極材の選択と混合比率の調節方式は、一例に過ぎない。したがって、混合正極材に与えようとする電気化学的物性の相対的加重値とバランスを考慮して前記第1及び第2正極材を適切に選択し、それぞれの正極材の混合比率を適切に設定できることは当業者にとって自明である。
【0024】
本発明において、前記混合正極材に含まれ得る正極材の数は2種に限定されない。一実施態様として、前記混合正極材は3種の相異なる正極材を含むことができ、その例としては、LiMn、Li[LiNiCoMn](a≧0;x+y+z=1;x、y、及びzのうち少なくとも1つは0でない)、及びLiFePOが含まれた混合正極材が挙げられる。さらに別の実施態様として、前記混合正極材は4種の相異なる正極材を含むことができ、その例としてはLiNiO、LiMn、Li[LiNiCoMn](a≧0;x+y+z=1;x、y、及びzのうち少なくとも1つは0でない)、及びLiFePOが含まれた混合正極材が挙げられる。
【0025】
また、混合正極材の物性を改善するために他の添加物、例えば導電材、バインダーなどを混合正極材に添加することは特に制限されない。したがって、少なくとも2つの正極材が含まれた混合正極材であれば、正極材の数と他の添加物の存在如何と関係なく、本発明の範疇に含まれると解釈することができる。
【0026】
本発明によれば、前記二次電池は、開放電圧を基準に予め定義された放電下限電圧と放電上限電圧との間で充電または放電する。一例として、前記放電下限電圧は2.0〜3.0Vであって、前記放電上限電圧は4.0〜4.6Vであり得る。以下、前記放電下限電圧と前記放電上限電圧との間の電圧範囲を二次電池の使用電圧範囲と称する。
ここで、前記使用電圧範囲は、第1正極材及び第2正極材の種類と混合比率によって変わり得、大きく3つの電圧区間、すなわち、第1正極材電圧区間(△V)、転移電圧区間(△V)、及び第2正極材電圧区間(△V)に分けられる。
ここで、前記第1正極材電圧区間(△V)は、二次電池が放電するとき、放電率の大きさと関係なく主に第1正極材に作動イオンが挿入される電圧区間である。また、前記転移電圧区間(△V)は、二次電池が放電するとき、特定の放電率(転移放電率)を基準に作動イオンが主に挿入される正極材が第1正極材から第2正極材に変更される電圧区間である。また、前記第2正極材電圧区間(△V)は、二次電池が放電するとき、放電率の大きさと関係なく主に第2正極材に作動イオンが挿入される電圧区間である。
【0027】
前記二次電池がパルス放電するとき、放電率(C−rate)を増加させれば、放電終了電圧(V)は放電率が増加するほど減少するようになる。すなわち、パルス放電する前の二次電池の開放電圧(OCV)が同じであっても(すなわち、充電状態が同じであっても)、放電率が増加するほど二次電池の放電終了電圧(V)が減少する。放電率が増加するほど二次電池から流れ出るエネルギーが増加して、二次電池の充電状態が低くなるためである。しかし、OCVが前記3つの電圧区間のどこに属するかによって、放電率の増加に伴う放電終了電圧(V)の減少パターンが変わり得る。
【0028】
<ケース1:OCVが第1正極材電圧区間(△V)に属する>
二次電池がパルス放電するとき、作動イオンが第1正極材に主に挿入されるため、二次電池の放電率に関係なく、放電終了電圧(V)が第1正極材の抵抗特性に依存性を見せながら減少する。したがって、I−Vプロファイルは、放電率の増加と共に放電終了電圧(V)が負の傾きを有して線形的に減少するパターンを有し、第1正極材電圧区間(△V)内でOCVが低くなるほど前記I−Vプロファイルは下方に移動する。
【0029】
<ケース2:OCVが転移電圧区間(△V)に属する>
二次電池がパルス放電するとき、転移放電率を基準に作動イオンが主に挿入される正極材の種類が第1正極材から第2正極材に変わる。
説明の便宜上、前記転移放電率より小さい放電率の区間を第1放電率区間とし、前記転移放電率区間より大きい放電率の区間を第2放電率区間とする。そして、前記第1放電率区間で観察されるI−Vプロファイルを第1プロファイルとし、前記第2放電率区間で観察されるI−Vプロファイルを第2プロファイルとする。
【0030】
前記二次電池がパルス放電するとき、放電率が前記第1放電率区間に属する場合は、作動イオンが前記ケース1と同様に第1正極材に主に挿入される。したがって、第1放電率区間で観察される第1プロファイルは、第1正極材の抵抗特性に依存して減少するパターンを見せる。しかし、前記第1プロファイルの減少する傾きは前記ケース1のI−Vプロファイルより大きい。第1正極材に挿入された作動イオンの量が増加するほど、第1正極材の抵抗が増加するためである。また、前記転移電圧区間(△V)内で、OCVが低いほど前記第1プロファイルの減少する傾きは増加する。前記転移電圧区間(△V)内でOCVが低くなるほど、第1正極材に作動イオンが挿入可能な容量が消尽しながら第1正極材の抵抗がさらに増加するためである。ここで、前記第1プロファイルの減少する傾きの増加程度は第1正極材の種類によって変わり得る。
【0031】
一方、前記二次電池が放電するとき、放電率が前記第2放電率区間に属する場合は、第1正極材に作動イオンが挿入可能な容量が実質的に消尽して、第2正極材に作動イオンが挿入され始める。したがって、第2放電率区間で観察される第2プロファイルは、第2正極材の抵抗特性に依存しながら減少するパターンを見せる。ただし、前記第2プロファイルの減少する傾きは前記第1プロファイルの減少する傾きより小さい。
【0032】
なお、OCVが前記転移電圧区間(△V)の下限電圧に該当し、二次電池の放電率が前記第2放電率区間に属する場合、前記第2放電率区間で観察される第2プロファイルは下方境界プロファイル(lower−bounded profile)と称し得る。OCVが前記転移電圧区間(△V)の下限電圧に近接するほど、第2放電率区間で観察される第2プロファイルが前記下方境界プロファイルに収束するためである。
また、前記転移放電率は一定値に固定されず、転移電圧区間(△V)内で二次電池のOCVが減少すれば、共に減少する傾向を有する。OCVが減少すれば、その分第1正極材に作動イオンが挿入可能な容量が減少して、二次電池が低い放電率で放電しても第2正極材に作動イオンが挿入され始めるためである。
【0033】
<ケース3:OCVが第2正極材電圧区間(△V)に属する>
二次電池がパルス放電するとき、放電率の大きさと関係なく、作動イオンが第2正極材に主に挿入される。したがって、全体放電率区間にわたってI−Vプロファイルは一定傾きを有して線形的に減少するパターンを有し、前記第2正極材電圧区間(△V)内でOCVが低いほどI−Vプロファイルの減少する傾きは増加する。OCVが低くなるほど、第2正極材に作動イオンが挿入可能な容量が消尽しながら、第2正極材の抵抗が共に増加するか又は負極材の抵抗が増加するためである。ここで、前記減少する傾きの増加程度は第2正極材の種類によって変わり得る。
【0034】
前記放電手段が異なる放電率で二次電池を放電させるとき、それぞれの放電率は前記転移放電率より大きく設定することが望ましい。
本発明において、前記放電手段が異なる放電率で二次電池を放電させるとき、それぞれの放電率は前記転移放電率の最大値より大きく設定することが望ましい。
本発明において、前記線形方程式を近似するときに使用する放電率と放電終了電圧(V)に関するデータ組をI−Vデータと定義するとき、前記I−Vデータの数は少なくとも2つ、望ましくは3つ以上であり得る。
一方、二次電池のOCVが転移電圧区間(△V)に属するとき、前記数式1及び数式2によって計算される最大出力Pmaxは二次電池が出せる最大出力の下限値に該当する。したがって、二次電池が実際に出せる最大出力は計算された最大出力(Pmax)より大きいか又は同じ値を有する。
【0035】
本発明による二次電池の出力推定装置は、前記制御手段と組み合わせられた表示手段をさらに含み得、前記制御手段は、前記表示手段を通じて前記推定された二次電池の最大出力を示すことができる。前記最大出力は、数字、文字、グラフ、またはこれらの組合せで示し得る。
本発明による二次電池の出力推定装置は、前記推定された二次電池の最大出力を外部のコントロールユニットに伝送することができる。
本発明による二次電池の出力推定装置は、前記制御手段と組み合わせられた保存手段をさらに含み得、前記制御手段は、前記複数の放電率及び放電終了電圧(V)、及び/または、前記近似した線形方程式の傾き及びY切片、及び/または、前記推定された二次電池の最大出力を前記保存手段に記録することができる。
【0036】
本発明による二次電池の出力推定装置は、電気駆動装置に含まれ得る。
一態様によれば、前記電気駆動装置は、携帯電話、ラップトップパソコン、タブレットパソコンなどのモバイルコンピューター装置、またはデジタルカメラ、ビデオカメラ、オーディオ/ビデオ再生装置などを含む手持ち式のマルチメディア装置であり得る。
別の態様によれば、前記電気駆動装置は、電気自動車、ハイブリッド自動車、電気自転車、電気バイク、電気列車、電気船、電気飛行機などのように電気によって移動可能な電気動力装置、または電気ドリル、電気グラインダーなどのようにモーターを備えるパワーツールであり得る。
さらに別の態様によれば、前記電気駆動装置は、電力グリッドに設けられて新再生エネルギーや余剰発電電力を貯蔵する大容量電力貯蔵装置、または停電などの非常状況でサーバーコンピューターや移動通信装備などを含む各種の情報通信装置の電源を供給する無停電電源供給装置であり得る。
【0037】
また、前記二次電池は、作動イオンが含まれた電解質と、正極と負極とを電気的に分離して作動イオンの移動を許可する分離膜をさらに含むことができる。
前記電解質は、作動イオンを含み、作動イオンを介して正極と負極で電気化学的な酸化または還元反応を行えるものであれば、その種類に特に制限がない。
前記二次電池は、また、前記正極、負極、及び分離膜を密封する包装材をさらに含むことができる。前記包装材は、化学的に安全性を有するものであれば、その材質に特に制限がない。
前記二次電池の外形は、包装材の構造によって決定される。前記包装材の構造は当業界で知られた多様な構造のうち1つであり得るが、代表的に円筒型、角形、パウチ型、コイン型などの構造を有し得る。
【発明の効果】
【0038】
本発明によれば、混合正極材を含む二次電池が特異な放電挙動を示しても二次電池の出力を信頼性高く推定することができる。
本明細書に添付される図面は、本発明の望ましい実施形態を例示するものであって、発明の詳細な説明とともに本発明の技術的な思想をさらに理解させる役割をするためのものであり、本発明は図面に記載された事項だけに限定されて解釈されてはならない。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】二次電池が充電状態(SOC)毎に出せる最大出力を確認するため、二次電池に対して10秒及び5Cのパルス放電条件でHPPC(Hybrid Pulse Power Characterization)実験を行った結果を示したグラフである。
図2】二次電池を5Cの放電率でパルス放電させながら、充電状態の変化に従って二次電池の内部抵抗を測定した結果を示したグラフである。
図3】二次電池を5Cの放電率でパルス放電させながら、充電状態の変化に従って二次電池の開放電圧を測定した結果を示したグラフである。
図4】二次電池の充電状態を変化させながら二次電池を相異なる放電率でパルス放電させたとき、放電終了電圧(V)の変化パターンを測定して記録したI−Vプロファイルを示したグラフである。
図5】本発明の実施形態による二次電池の出力推定装置の構成を示したブロック図である。
図6】本発明の実施形態による二次電池の出力推定方法を示したフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、添付された図面を参照して本発明の望ましい実施形態を詳しく説明する。これに先立ち、本明細書及び請求範囲に使われた用語や単語は、通常的や辞書的な意味に限定して解釈されてはならず、発明者自らは発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適切に定義できるという原則に則して本発明の技術的な思想に応ずる意味及び概念で解釈されねばならない。したがって、本明細書に記載された実施形態及び図面に示された構成は、本発明のもっとも望ましい一実施形態に過ぎず、本発明の技術的な思想のすべてを代弁するものではないため、本出願の時点においてこれらに代替できる多様な均等物及び変形例があり得ることを理解せねばならない。
【0041】
後述される実施形態は、本発明の技術的思想がリチウム二次電池に適用された場合に関する。ここで、リチウム二次電池とは、充電と放電が行われる間に、リチウムイオンが作動イオンとして働いて正極と負極で電気化学的反応を引き起こす二次電池のことを総称する。前記作動イオンは、二次電池が充電または放電する過程で電気化学的な酸化及び還元反応に参加するイオンを意味し、例えばリチウムイオンが該当する。したがって、リチウム二次電池に使用された電解質や分離膜の種類、二次電池の包装に使用された包装材の種類、リチウム二次電池の内部または外部の構造などによって二次電池の名称が変更しても、リチウムイオンが作動イオンとして使用される二次電池であれば、何れも前記リチウム二次電池の範疇に含まれると解釈できる。
【0042】
また、本発明は、リチウム二次電池以外の他の二次電池にも適用することができる。したがって、作動イオンがリチウムイオンではなくても、本発明の技術的思想が適用可能な二次電池であればその種類に関係なく全て本発明の範疇に含まれると解釈せねばならない。
一部の実施形態において、リチウム二次電池の代わりに二次電池との用語を使用する場合、該当実施形態における二次電池は多様な種類の二次電池を含む概念で用いられたことを明らかにしておく。
【0043】
また、二次電池は、それを構成する要素の数によって限定されない。したがって、二次電池は負極、電解質、及び正極を基本単位にする単一セルを始めとして、単一セルのアセンブリ、多数のアセンブリが直列及び/または並列に接続されたモジュール、多数のモジュールが直列及び/または並列に接続されたパック、多数のパックが直列及び/または並列に接続された電池システムなども含むと解釈されねばならない。
【0044】
本発明の実施形態において、二次電池は、第1正極材及び第2正極材としてLiNi1/3Co1/3Mn1/3(NMC正極材)及びLiFePO(LFP正極材)を含む。前記NMC正極材と前記LFP正極材との混合比率は7:3(重量比)である。二次電池に含まれた負極材はグラファイトであり、電解質としてはEC(エチレンカーボネート):DMC(ジメチルカーボネート):EMC(エチルメチルカーボネート)が3:4:3(重量比)の比率で混合された溶媒に、リチウム塩LiPFが添加された電解液である。分離膜としては、多孔性ポリオレフィン基材の表面に無機物粒子をコーティングしたものを使用した。二次電池はパウチ型二次電池で製作され、43.05Ahの容量を有する。二次電池は開放電圧を基準に2.6ないし4.2V範囲で充電及び放電可能に製作された。
【0045】
図1は、二次電池が充電状態(SOC)毎に出せる最大出力を確認するため、二次電池に対して10秒及び5Cのパルス放電条件でHPPC実験を行った結果を示したグラフである。
二次電池の最大出力は、下記数式3を用いて計算した。数式3において、Vminは二次電池の放電下限電圧(=2.6V)を、OCVは二次電池がパルス放電する前の開放電圧を、Vはパルス放電が終わった直後に測定した二次電池の動的電圧を、Rdisは二次電池の放電中に観察された電圧減少量から計算できる二次電池の内部抵抗を、Cdisは放電率(5C)を示す。
<数式3>
max=Vmin*(OCV−Vmin)/Rdis
dis=(OCV−V)/Cdis
【0046】
図1を参照すれば、二次電池の最大出力(Pmax)は充電状態の増加と共に線形的に減少し、充電状態が約15〜40%のとき、ディップ(Dip)パターン(点線の四角形を参照)を見せることが確認できる。以下、ディップパターンが現れる充電状態区間を転移状態区間と称する。
一方、転移状態区間で■で示された点線プロファイルは、数式2を使用せず、CP(Constant Power)放電実験を通じて実際測定した二次電池の最大出力を示す。
ディップパターンの付近で、実線プロファイルと点線プロファイルとを比べると、数式3を使用して計算した二次電池の最大出力と実測した最大出力とに相当な誤差があることが確認できる。すなわち、数式3を用いて計算された最大出力が実測された最大出力より小さい。
このように、二次電池が転移状態区間で放電するときに最大出力の誤差が生じる理由は、二次電池の抵抗特性が前記転移状態区間で急激に変化するためである。
【0047】
図2及び図3は、二次電池を5Cの放電率でパルス放電させながら、充電状態の変化に従って二次電池の内部抵抗と開放電圧を測定した結果を示したグラフである。
図2を参照すれば、転移状態区間で二次電池の内部抵抗が局所的に増加してから減少するコンベックスパターンが現れ、コンベックスパターンの頂点を前後にして2つの変曲点(点線の円を参照)が現れることが観察できる。
図3を参照すれば、転移状態区間で変曲点を含む電圧平坦区間(点線の四角形を参照)が観察できる。ここで、電圧平坦区間とは、変曲点を基準にして電圧の変化が小さいプロファイル部分を意味する。
【0048】
このように、内部抵抗及び開放電圧プロファイルでコンベックスパターンと電圧平坦区間が観察される理由は、二次電池が放電するとき、リチウムイオンが挿入される正極材の種類がNMC正極材からLFP正極材に変更されながら、二次電池の内部抵抗に寄与する正極材の種類が変わるためである。
すなわち、転移状態区間より大きい充電状態区間で二次電池が放電すれば、主にNMC正極材にリチウムイオンが挿入され、NMC正極材に挿入されたリチウムイオンの量が増加するほど、二次電池の開放電圧は低くなる。一方、転移状態区間より低い充電状態区間で二次電池が放電すれば、主にLFP正極材にリチウムイオンが挿入され、LFP正極材に挿入されたリチウムイオンの量が増加するほど、二次電池の開放電圧は低くなる。そして、二次電池が転移状態区間で放電するときは、リチウムイオンが主に挿入される正極材の種類がNMC正極材からLFP正極材に変更される。このような正極材種類の変更は、図3に示された開放電圧プロファイルで、変曲点が生じる開放電圧(3.2V)付近の充電状態で二次電池が放電するときに行われる。
【0049】
一方、図2に示された内部抵抗のコンベックスパターンをより具体的に観察すれば、二次電池の内部抵抗が急に増加する充電状態区間(頂点の右側)と、逆に二次電池の内部抵抗が再び低くなる充電状態区間(頂点の左側)が確認できる。
ここで、二次電池の内部抵抗が急に増加する理由は、NMC正極材がリチウムイオンを収容可能な容量の殆どを消尽しながら、NMC正極材の抵抗が急に増加するためである。
また、二次電池の内部抵抗が再び低くなる理由は、LFP正極材にリチウムイオンが挿入され始めながら、LFP正極材の低い抵抗特性が二次電池の内部抵抗として現れるためである。
さらに、二次電池が転移状態区間より低い充電状態区間で放電する場合、充電状態が低くなるほど二次電池の内部抵抗が再び増加することが確認できる。このような内部抵抗の増加は、負極材(グラファイト)として使用された物質の抵抗が転移状態区間の以下で増加するという点でその原因を探すことができる。
【0050】
図4は、二次電池の充電状態を変化させながら二次電池を相異なる放電率でパルス放電させたとき、放電終了電圧(V)の変化パターンを測定して記録したI−Vプロファイルを示したグラフである。図4に示されたグラフの横軸は二次電池の放電率(C−rate)であり、縦軸は二次電池の放電終了電圧(V)である。縦軸には、二次電池の使用電圧範囲が2.60〜4.20Vである点を勘案して、全体使用電圧範囲を示した。勿論、二次電池の使用電圧範囲は第1正極材及び第2正極材の種類と混合比率によって変わり得る。
ここで、放電終了電圧(V)は、10秒間二次電池をパルス放電させた直後に測定した二次電池の動的電圧を意味する。そして、二次電池を多数の放電率条件でパルス放電させるとき、パルス放電が始まる前の二次電池の開放電圧(OCV)は同一に設定した。したがって、同じプロファイル上にある複数の点は、同じ充電状態条件で相異なる放電率でパルス放電したときの放電終了電圧(V)を測定した結果を示す。
【0051】
図4において、それぞれのプロファイルがY軸と交差する点はパルス放電が始まる前の二次電池の開放電圧(OCV)を示す。例えば、充電状態100%に該当するI−Vプロファイル(No.1)は、OCVが4.20Vの二次電池をそれぞれ5C及び10Cの放電率で10秒間放電したとき、放電終了電圧(V)がどのように変化するのかを示している。
図4の縦軸に示した使用電圧範囲は、大きく第1電圧区間(△V)、転移電圧区間(△V)、及び第2電圧区間(△V)に分けられる。
Y切片(すなわち、OCV)が第1電圧区間(△V)と第2電圧区間(△V)に属するI−Vプロファイルは、一定の傾きで放電終了電圧(V)が減少するパターンを有する。一方、Y切片(すなわち、OCV)が転移電圧区間(△V)に属するプロファイルは、放電終了電圧(V)が減少する傾きが変化するパターンを有する。
【0052】
まず、二次電池のOCVが第1電圧区間(△V)に属するとき、二次電池がパルス放電すれば、作動イオンがNMC正極材に主に挿入される。したがって、二次電池の放電率に関係なく、放電終了電圧(V)がNMC正極材の抵抗特性に依存性を見せながら減少する。したがって、I−Vプロファイル(No.1〜5)は放電率の増加と共に一定の傾きを有して線形的に減少するパターンを有し、第1電圧区間(△V)内でOCVが低くなるほどI−Vプロファイルは下方に移動することが分かる。
【0053】
次に、二次電池のOCVが転移電圧区間(△V)に属するとき、二次電池がパルス放電すれば、転移放電率(C〜C)を基準にして作動イオンが挿入される正極材の種類がNMC正極材からLFP正極材に変更される。ここで、転移放電率(C〜C)は、図3に示された開放電圧プロファイルで電圧平坦区間が現れる開放電圧(約3.2V)をY切片にする水平直線(A)とI−Vプロファイル(No.6〜9)とが交差する地点の放電率を意味する。前記転移放電率(C〜C)は、二次電池のOCVが低いほど左側にシフトされる。OCVが減少すれば、その分NMC正極材に作動イオンが挿入可能な容量が減少して、二次電池が低い放電率で放電してもLFP正極材に作動イオンが挿入されるためである。
【0054】
以下では、説明の便宜上、前記転移放電率より小さい放電率区間を第1放電率区間と称し、前記転移放電率より大きい放電率区間を第2放電率区間と称する。そして、前記第1放電率区間で観察されるI−Vプロファイルを第1プロファイル(B)と称し、前記第2放電率区間で観察されるI−Vロパイルを第2プロファイル(D)と称する。
【0055】
前記二次電池がパルス放電するとき、放電率が前記第1放電率区間に属する場合は、作動イオンが相変らずNMC正極材に挿入される。したがって、第1放電率区間で観察される第1プロファイル(B)は、NMC正極材の抵抗特性に依存して減少するパターンを見せる。そして、前記第1プロファイル(B)の負の傾きはI−Vプロファイル(No.1〜5)より大きい。NMC正極材に挿入された作動イオンの量が増加するほど、NMC正極材の抵抗が増加するためである。また、前記転移電圧区間(△V)内でOCVが低いほど、前記第1プロファイル(B)の減少する傾きは増加する。前記転移電圧区間(△V)内でOCVが低くなるほど、NMC正極材に作動イオンが挿入可能な容量が消尽しながらNMC正極材の抵抗がさらに増加するためである。勿論、前記第1プロファイル(B)の減少する傾きの増加程度は第1正極材の種類によって変わり得る。
【0056】
一方、前記二次電池が放電するとき、放電率が前記第2放電率区間に属する場合は、NMC正極材に作動イオンが挿入可能な容量が実質的に消尽して、LFP正極材に作動イオンが挿入され始める。したがって、第2放電率区間で観察される第2プロファイル(D)はLFP正極材の抵抗特性に依存性を見せながら減少するパターンを有する。ただし、前記第2プロファイル(D)の減少する傾きは前記第1プロファイル(B)の減少する傾きより小さい。
【0057】
一方、OCVが前記転移電圧区間(△V)の下限電圧(3.2V付近)に該当し、二次電池の放電率が前記第2放電率区間に属する場合、前記第2放電率区間で観察されるI−Vプロファイル(E)は下方境界プロファイルと称し得る。OCVが前記転移電圧区間(△V)の下限電圧に近接するほど、第2放電率区間で観察されるI−Vプロファイルが前記下方境界プロファイルに収束するためである。
【0058】
次に、二次電池のOCVが第2電圧区間(△V)に属するとき、二次電池がパルス放電すれば、放電率の大きさと関係なく、作動イオンがLFP正極材に主に挿入される。したがって、全体放電率区間にわたってI−Vプロファイル(No.10及び11)は一定の傾きを有して線形的に減少するパターンを有し、I−Vプロファイル(No.10及び11)の傾きは前記第2電圧区間(△V)内でOCVが低くなるほど増加する。OCVが低くなるほど負極材として使用された物質の抵抗が増加し、二次電池の内部抵抗が増加するためである。
【0059】
図4に示されたI−Vプロファイルは、二次電池の電圧が放電率の大きさによって如何に変化するのかを示すため、I−Vプロファイルの傾きは実質的に二次電池の内部抵抗に該当する。
I−VプロファイルNo.1〜5、10、及び11は傾きが一定であるため、二次電池の放電率が変化しても二次電池の内部抵抗は一定であると見なせる。一方、I−VプロファイルNo.6〜9は、二次電池の放電率の増加と共に傾きが減少し、下方境界プロファイル(E)に収束する。したがって、二次電池のOCVが転移電圧区間(△V)に属するときに二次電池を放電させれば、放電率が増加するほど二次電池の内部抵抗が徐々に減少してから一定値に収束すると見なせる。
【0060】
二次電池の最大出力は、二次電池を放電下限電圧(2.6V)にまで落とす最大放電率(Cmax)と放電下限電圧(Vmin)との乗算によって算出することができる。
前記最大放電率(Cmax)は、図4に示されたプロファイルをX軸方向に延ばしたときX軸と接する地点の放電率(すなわち、X軸交差放電率)に該当する。
前記X軸交差放電率(Cmax)は、上述した数式3の(OCV−Vmin)/Rdisに該当するが、分母のRdisは、二次電池が放電するとき放電率と放電終了電圧(V)をサンプリングすれば、数式(OCV−V)/Cdisを使用してリアルタイムで計算することができる。
【0061】
二次電池のOCVが第1電圧区間(△V)または第2電圧区間(△V)に属するときには、二次電池の放電終了電圧(V)が放電率の大きさと関係なく一定の傾きを有して減少するため、数式3を用いて二次電池の最大出力をリアルタイムで推定しても実測される最大出力と誤差が生じない。しかし、二次電池のOCVが転移電圧区間(△V)に属するとき、数式3を用いて最大出力を推定すれば、実測される最大出力と誤差が生じるようになる。
【0062】
例えば、OCVが3.55Vの二次電池を放電すれば、放電率の増加と共に放電終了電圧(V)はI−VプロファイルNo.9に沿って変化する。そして、I−VプロファイルNo.9をX軸に延ばしてX軸交差放電率(Cmax)を求めれば、約14Cの程度の放電率が得られ、実測される最大放電率と実質的に同じである。しかし、二次電池を2Cの放電率で放電し、そのとき測定された放電終了電圧(V)で二次電池の内部抵抗Rdisを計算し、数式(OCV−Vmin)/Rdisによって最大放電率を求めれば、その値は直線FをX軸に延ばしたときにX軸と交差する地点の放電率(約5C)に該当し、I−VプロファイルNo.9がX軸と交差する地点の最大放電率14Cよりかなり小さい。したがって、混合正極材を含む二次電池のOCVが転移電圧区間(△V)に属するとき、数式3を使用してリアルタイムで算出された最大放電率を用いて最大出力を推定すれば、実際の最大出力より低く推定される問題がある。それ故に、二次電池のOCVが転移電圧区間(△V)に属する場合、二次電池の最大出力を推定できる新たな方案が求められる。
【0063】
本出願の発明者等は、二次電池のOCVが転移電圧区間(△V)に属するとき、第2放電率区間で観察される第2プロファイル(D)が下方境界プロファイル(E)に収束するという点、第2プロファイル(D)のX軸交差放電率(Cmax)が実測される二次電池の最大放電率と実質的に同じであるという点、そして第2プロファイル(D)のX軸交差放電率が下方境界プロファイル(E)のX軸との交差地点の放電率(Cmax)に近似的に収束するという点に注目した。
【0064】
本出願の発明者等は、また、二次電池の最大出力をリアルタイムで推定するにあたって、十分大きい複数の放電率(C)で複数の放電終了電圧(V)をサンプリングし、サンプリングされたデータを用いて2次元線形方程式「V=−Rdis*C+OCV」に近似化したプロファイルを得て、前記線形方程式のY切片OCVと傾きRdis、そして二次電池の放電下限電圧Vminを用いて数式「Cmax=(OCV−Vmin)/Rdis」によって二次電池の最大放電率(Cmax)を得、数式「Pmax=Cmax*Vmin」によって二次電池の最大出力(Pmax)を推定すれば誤差を最小化できることを確認した。
以下、上述した従来の問題点と新たな実験的知見に基づいて創案した、本発明による二次電池の出力推定装置について詳細に説明する。
【0065】
図5は、本発明の実施形態による二次電池の出力推定装置100の構成を概略的に示したブロック図である。
図5を参照すれば、本発明による二次電池の出力推定装置100は、放電手段110、センサー手段120、及び制御手段130を含む。
前記装置100は、混合正極材を含む二次電池140の最大出力を推定するために二次電池140と負荷150との間に接続され得る。
前記二次電池140はリチウム二次電池であり得るが、本発明が電池の種類によって限定されることはない。
【0066】
前記二次電池140は、電気エネルギーで動作可能な多様な種類の電気駆動装置に搭載され得、前記電気駆動装置はその種類に特に制限がない。
一実施形態として、前記電気駆動装置は、携帯電話、ラップトップパソコン、タブレットパソコンなどのモバイルコンピューター装置、またはデジタルカメラ、ビデオカメラ、オーディオ/ビデオ再生装置などを含む手持ち式のマルチメディア装置であり得る。
別の実施形態として、前記電気駆動装置は、電気自動車、ハイブリッド自動車、電気自転車、電気バイク、電気列車、電気船、電気飛行機などのように電気によって移動可能な電気動力装置、または電気ドリル、電気グラインダーなどのようにモーターを備えるパワーツールであり得る。
さらに別の実施形態として、前記電気駆動装置は、電力グリッドに設けられて新再生エネルギーや余剰発電電力を貯蔵する大容量電力貯蔵装置、または停電などの非常状況でサーバーコンピューターや移動通信装備などを含む各種の情報通信装置の電源を供給する無停電電源供給装置であり得る。
【0067】
前記負荷150は、各種の電気駆動装置に含まれたものであって、前記二次電池140が放電するときに供給される電気エネルギーによって作動される前記電気駆動装置内に含まれたエネルギー消耗装置を意味する。前記負荷150の非制限的な例としては、モーターのような回転動力装置、インバーターのような電力変換装置などが挙げられるが、本発明が負荷の種類によって限定されることはない。
【0068】
前記放電手段110は、前記制御手段130を制御し、時間間隔を置いて放電率(C−rate)が異なる複数の放電電流で二次電池140をパルス放電させる。ここで、放電率は少なくとも2つであることが望ましい。また、前記パルス放電時間と放電休止時間は任意に設定できる。一例として、前記パルス放電時間と放電休止時間はそれぞれ10秒に設定し得る。前記放電手段110は、二次電池140の放電率を調節するための制御信号を前記制御手段130から受信することができる。前記制御信号が受信されれば、前記放電手段110は二次電池140の放電率を他の値に変更する。
【0069】
前記放電手段110が二次電池140を放電させるときに適用される放電率条件は、十分大きいことが望ましい。一例として、前記放電率条件は二次電池140に対するI−Vプロファイルで観察される転移放電率の最大値より大きく設定する。
非制限的な例として、混合正極材がNMC正極材とLFP正極材とを7:3(重量比)の比率で含んでいるとき、前記放電率条件は5C以上であることが望ましい(図4を参照)。
非制限的な例として、前記放電率条件が5C以上であるとき、前記放電率条件は6C及び8C(2種)、又は、6C、8C、及び10C(3種)に設定することができる。
【0070】
前記放電手段110は、一例として、負荷150に供給される負荷電流の大きさを可変的に制御する手段であり得る。負荷電流の大きさを制御する手段は、公知の回路を通じて容易に具現可能であるため、詳しい説明は省略する。
別の例として、前記放電手段110は、放電回路を含み、相異なる大きさの放電率で二次電池140を強制放電させる手段であり得る。
後者の場合、前記放電回路は多数の抵抗成分を含み、前記放電手段110は抵抗成分の選択的接続を通じて放電電流の放電率を制御することができる。
【0071】
前記センサー手段120は、前記制御手段130の制御下に、それぞれのパルス放電が終了したとき、二次電池の放電終了電圧(V)を測定する。望ましくは、前記センサー手段120は二次電池140の正極と負極との間に形成される電圧を測定できる電圧測定回路を含む。
前記放電終了電圧(V)は、パルス放電の印加が終了した時点で測定された二次電池の動的電圧を意味する。もし、放電率条件がn個に設定されれば、前記測定される放電終了電圧(V)の数もn個になる。
【0072】
前記センサー手段120は、前記測定された放電終了電圧(V)を前記制御手段130に出力することができる。前記センサー手段120は、放電終了電圧(V)を測定するための制御信号を前記制御手段130から受信することができる。前記制御信号が受信されれば、前記センサー手段120は放電終了電圧(V)を測定して制御手段130に出力する。
前記制御手段130は、前記放電手段110と前記センサー手段120を制御することで複数の放電率条件で測定された複数の放電終了電圧(V)を取得する。
【0073】
また、前記制御手段130は、前記複数の放電率(C)及びそれに対応する複数の前記放電終了電圧(V)を2次元線形方程式「V=−Rdis*C+OCV」に近似する。前記線形方程式において、放電率(C)及び放電終了電圧(V)が入力及び出力変数であって、−Rdis及びOCVはそれぞれ傾き及びY切片である。
また、前記制御手段130は、前記線形方程式を用いて放電率が0のときの開放電圧(OCV)を外挿(interpolation)する。ここで、開放電圧(OCV)は二次電池140がパルス放電する前の電圧であって、実質的に無負荷状態の開放電圧を意味する。
【0074】
また、前記制御手段130は、放電下限電圧(Vmin)を基準に前記開放電圧(OCV)のオフセット(OCV−Vmin)を求め、前記オフセットと前記線形方程式の傾き(Rdis)を用いて二次電池の最大放電率(Cmax)を計算する。ここで、前記最大放電率(Cmax)は、二次電池140の電圧を放電下限電圧(Vmin)まで落とす放電率を意味する。その後、前記制御手段130は、計算された最大放電率(Cmax)と放電下限電圧(Vmin)を用いて二次電池の最大出力(Cmax*Vmin)を推定する。
【0075】
前記二次電池の出力推定装置100は、保存手段160をさらに含むことができる。前記保存手段160は、情報を記録し消去できる保存媒体であれば、その種類に特に制限がない。
一例として、前記保存手段160は、RAM、ROM、レジスタ、ハードディスク、光記録媒体、または磁気記録媒体であり得る。
また、前記保存手段160は前記制御手段130によってアクセスできるように、例えばデータバスなどを通じて前記制御手段130と接続することができる。
【0076】
また、前記保存手段160は、前記制御手段130が実行する各種制御ロジックを含むプログラム及び/または前記制御ロジックが実行されるときに発生するデータを、保存及び/または更新及び/または消去及び/または伝送する。
前記保存手段160は論理的に2つ以上に分割でき、前記制御手段130内に含まれることを制限しない。
前記保存手段160は、異なる放電率条件に関するデータ、前記センサー手段120によって測定された多数の放電終了電圧(V)に関するデータ、2次元線形方程式の傾き、Y切片データと放電下限電圧(Vmin)に関するデータ、計算された最大放電率と最大出力に関するデータを含むことができる。
【0077】
前記制御手段130は、多様な制御ロジック及び/または計算ロジックを実行するために当業界に周知されたプロセッサ、ASIC(Application−Specific Integrated Circuit)、他のチップセット、論理回路、レジスタ、通信モデム、データ処理装置などを選択的に含むことができる。また、前記制御ロジックがソフトウェアとして具現されるとき、前記制御手段130はプログラムモジュールの集合として具現され得る。このとき、プログラムモジュールはメモリに保存され、プロセッサによって実行され得る。前記メモリは、プロセッサの内部または外部にあり得、周知された多様な手段でプロセッサと接続され得る。また、前記メモリは、保存手段160に含まれ得る。また、前記メモリは、デバイスの種類に関係なく情報が保存されるデバイスを総称し、特定メモリ装置を称しない。
【0078】
また選択的に、前記二次電池の出力推定装置100は表示手段150をさらに含むことができる。前記表示手段150は、前記制御手段130が推定した二次電池140の最大出力に関する情報をグラフィックインターフェースで表示できるものであれば、その種類に特に制限がない。一例として、前記表示手段150は液晶ディスプレイ、LEDディスプレイ、OLEDディスプレイ、E−INKディスプレイ、フレキシブルディスプレイなどであり得る。前記表示手段150は前記制御手段130と直接または間接的に接続され得る。後者の方式が採択される場合、前記表示手段150は前記制御手段130が位置する領域と物理的に分離した領域に位置することができる。そして、前記表示手段150と前記制御手段130との間に第3制御手段(図示せず)が介在し、前記第3制御手段が前記制御手段130から表示手段150に表示する情報の提供を受けて表示手段150に表示することができる。そのために、前記第3制御手段と前記制御手段130とを通信線路によって接続することができる。
【0079】
前記表示手段150は必ずしも本発明による装置の内部に含まれる必要はなく、本発明による装置と接続された他の装置に含まれてもよい。このような場合、前記表示手段150と前記制御手段130とは直接接続されず、前記他の装置に含まれた制御手段を介して前記表示手段150と間接的に接続される。したがって、前記表示手段150と前記制御手段130との電気的接続は、このような間接接続方式も含むと理解せねばならない。
【0080】
前記制御手段130は、外部の制御装置と通信インターフェースを形成することができる。そして、前記通信インターフェースを通じて前記外部の制御手段に二次電池の最大放電率及び/または最大出力に関するデータを伝送することができる。前記外部の制御手段は、負荷150が備えられた装置の制御手段であり得る。一例として、二次電池140が電気自動車に搭載されている場合、前記制御手段130は二次電池140の最大放電率及び/または最大出力に関するデータを、電気自動車の駆動メカニズムを統合的に制御するコントロールユニットに伝送することができる。すると、前記コントロールユニットは受信した最大放電率及び/または最大出力を用いて二次電池140の放電効率を極大化させることができる。
【0081】
本発明の多様な実施様態の説明において、「手段」と称した構成要素は物理的に区分される要素ではなく、機能的に区分される要素であると理解せねばならない。したがって、それぞれの構成要素は他の構成要素と選択的に統合されるか、又は、それぞれの構成要素が制御ロジックの効率的な実行のためにサブ構成要素に分割され得る。しかし、構成要素が統合または分割されても機能の同一性が認められれば、統合または分割された構成要素も本発明の範囲内に属すると解釈されねばならないことは当業者にとって自明である。
前記制御手段130の多様な制御ロジック及び/または計算ロジックは、少なくとも1つが選択的に組み合わせられることで、それ自体として本発明による二次電池の出力推定方法の一実施様態になり得る。
【0082】
図6は、本発明の実施形態による二次電池の最大出力推定方法を順次示したフロー図である。
まず、段階S10において、前記制御手段130は前記保存手段160から二次電池の最大出力を推定するのに必要な制御ロジックを読み込んで実行する。
次いで、段階S20において、前記制御手段130は出力を推定可能な条件が満たされたのか否かを判断する。ここで、推定条件は、二次電池が一定時間(例えば、数十秒から数分)以上無負荷状態で維持されるという条件を含み得る。選択的に、段階S20は省略することができる。
段階S20において、推定条件が満たされたと判断すれば、制御手段130はプロセスを段階S30に移行する。一方、S20で、推定条件が満たされていないと判断すれば、プロセスを段階S20に移行する。
【0083】
段階S30において、制御手段130は放電手段110とセンサー手段120を制御して、異なる複数の放電率条件で二次電池140をパルス放電させ、それぞれの放電率条件毎の二次電池の放電終了電圧(V)を取得する。
ここで、1つの放電率条件とそれに対応する放電終了電圧(V)はI−Vデータを構成する。したがって、二次電池140が3個の相異なる放電率条件でパルス放電したとすれば、前記制御手段130は3個のI−Vデータを取得する。
前記複数の放電率条件は十分大きいことが望ましい。一例として、前記複数の放電率条件は、二次電池140に対するI−Vプロファイルで観察される転移放電率の最大値より大きいことが望ましい。
【0084】
段階S40において、制御手段130は段階S30で取得した複数のI−Vデータを保存手段160に記録する。その後、段階S50において、前記制御手段130は複数のI−Vデータを用いて放電率(C)と放電終了電圧(V)との相関関係を定義した線形方程式「V=−Rdis*C+OCV」を近似的に算出する。
次いで、段階S60において、制御手段130は前記線形方程式から放電率が0のときの開放電圧(OCV)を計算し、放電下限電圧(Vmin)を基準に開放電圧(OCV)のオフセットを算出する。
その後、段階S70において、制御手段130は前記オフセット値と前記線形方程式の傾き(Rdis)を用いて二次電池の最大放電率(Cmax)を計算する。その後、段階S80において、制御手段130は最大放電率(Cmax)と放電下限電圧(Vmin)を用いて二次電池140の最大出力(Cmax*Vmin)を推定する。
【0085】
一方、前記制御手段130は、選択的に、段階S90及び/またはS100及び/またはS110を実行できる。すなわち、前記制御手段130は、段階S90において、推定された二次電池140の最大出力を保存手段160に記録する。また、前記制御手段130は、段階S100において、推定された二次電池140の最大出力を表示手段150を通じてグラフィックインターフェースで出力する。また、前記制御手段130は、推定された二次電池140の最大出力を外部のコントロールユニットに伝送する。
【0086】
本発明において、前記制御手段130の多様な制御ロジック及び/または計算ロジックは少なくとも1つが組み合わせられ、組み合わせられた制御ロジックはコンピューター可読のコード体系に作成されてコンピューター可読の記録媒体に書き込まれ得る。
前記記録媒体は、コンピューターに含まれたプロセッサによってアクセスが可能なものであれば、その種類に特に制限がない。一例として、前記記録媒体は、ROM、RAM、レジスタ、CD−ROM、磁気テープ、ハードディスク、フロッピー(登録商標)、及び光データ記録装置を含む群から選択された少なくとも1つを含む。
また、前記コード体系は、キャリア信号に変調されて特定時点に通信キャリアに含まれ得、ネットワークで接続されたコンピューターに分散して保存されて実行され得る。また、前記組み合わせられた制御ロジックを具現するための機能的なプログラム、コード、及びコードセグメントは、本発明が属する技術分野のプログラマーによって容易に推測できる。
【0087】
以上のように、本発明を限定された実施形態と図面によって説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、本発明の属する技術分野で通常の知識を持つ者によって本発明の技術思想と特許請求の範囲の均等範囲内で多様な修正及び変形が可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0088】
100 二次電池の出力推定装置
110 放電手段
120 センサー手段
130 制御手段
140 二次電池
150 負荷
150 表示手段
160 保存手段
図1
図2
図3
図4
図5
図6