特許第6204581号(P6204581)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6204581リチウム二次電池用正極活物質の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6204581
(24)【登録日】2017年9月8日
(45)【発行日】2017年9月27日
(54)【発明の名称】リチウム二次電池用正極活物質の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/505 20100101AFI20170914BHJP
   H01M 4/525 20100101ALI20170914BHJP
   C01G 45/02 20060101ALI20170914BHJP
【FI】
   H01M4/505
   H01M4/525
   C01G45/02
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-518284(P2016-518284)
(86)(22)【出願日】2014年7月31日
(65)【公表番号】特表2016-520983(P2016-520983A)
(43)【公表日】2016年7月14日
(86)【国際出願番号】KR2014007021
(87)【国際公開番号】WO2015016621
(87)【国際公開日】20150205
【審査請求日】2015年12月7日
(31)【優先権主張番号】10-2013-0090956
(32)【優先日】2013年7月31日
(33)【優先権主張国】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ウォン・ジュン・キム
(72)【発明者】
【氏名】ヘ・ジン・ハー
(72)【発明者】
【氏名】ジェ・ヨン・キム
【審査官】 市川 篤
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−096626(JP,A)
【文献】 特開2012−234772(JP,A)
【文献】 特開2012−195082(JP,A)
【文献】 特表2012−504316(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00−4/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式(1)で表される化合物から選択された1つ以上のリチウム遷移金属酸化物を、BFが溶解している溶液に付加して撹拌し、前記リチウム遷移金属酸化物を熱処理することを含む化学的脱リチウム化過程と、
化学的脱リチウム化されたリチウム遷移金属酸化物の表面改質過程と、
を含み、
前記化学的脱リチウム化されたリチウム遷移金属酸化物の表面改質過程を機械的ミリング法で行う、リチウム二次電池用正極活物質の製造方法:
(1−x)LiM’O2−y−xLiMnO3−y’y’ (1)
前記式中、
M’が、Mnであり、
Mが、Ni、Ti、Co、Al、Cu、Fe、Mg、B、Cr、Zr、Zn及び2周期の遷移金属からなる群から選択される1つ以上であり、
Aが、PO、BO、CO、F及びNOのアニオンからなる群から選択される1つ以上であり、
0<x<1、0≦y≦0.02、0≦y’≦0.02、0.5≦a≦1.0、0≦b≦0.5、a+b=1である。
【請求項2】
前記熱処理を250℃以上の温度で行うことを特徴とする、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記熱処理を300℃以上の温度で行うことを特徴とする、請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記熱処理を400℃以上の温度で行うことを特徴とする、請求項3に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウム二次電池用正極活物質の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
モバイル機器に対する技術開発及び需要の増加に伴い、エネルギー源としての二次電池に対して需要が急増しており、そのような二次電池の中でも、高いエネルギー密度と作動電位を示し、サイクル寿命が長く、自己放電率の低いリチウム二次電池が商用化されて広く使用されている。
【0003】
また、最近は、環境問題への関心が高まるにつれて、大気汚染の主要原因の一つであるガソリン車両、ディーゼル車両などの化石燃料を使用する車両を代替し得る電気自動車(EV)、ハイブリッド電気自動車(HEV)などに対する研究が多く行われている。このような電気自動車(EV)、ハイブリッド電気自動車(HEV)などの動力源としては、主にニッケル水素金属(Ni−MH)二次電池が使用されているが、高いエネルギー密度、高い放電電圧及び出力安定性のリチウム二次電池を使用する研究が盛んに行われており、一部は商用化されている。
【0004】
リチウム二次電池は、電極集電体上にそれぞれ活物質が塗布されている正極と負極との間に多孔性の分離膜が介在した電極組立体に、リチウム塩を含む非水系電解質が含浸されている構造となっている。
【0005】
このようなリチウム二次電池には、主にリチウム含有コバルト酸化物(LiCoO)が使用されており、その他に層状結晶構造のLiMnO、スピネル結晶構造のLiMnなどのリチウム含有マンガン酸化物、及びリチウム含有ニッケル酸化物(LiNiO)の使用も考慮されている。
【0006】
LiCoOは、優れたサイクル特性などの諸物性に優れているので、現在多く使用されているが、安全性が低く、原料としてのコバルトの資源的限界により高価であり、電気自動車などのような分野の動力源として大量使用するには限界がある。LiNiOは、その製造方法による特性上、合理的なコストで実際の量産工程に適用するのに困難がある。
【0007】
反面、LiMnO、LiMnなどのリチウムマンガン酸化物は、原料として資源が豊富で且つ環境に優しいマンガンを使用するという利点を有しているので、LiCoOを代替し得る正極活物質として多くの関心を集めている。しかし、これらリチウムマンガン酸化物もサイクル特性などが悪いという欠点を有している。
【0008】
まず、LiMnOは、初期容量が小さく、特に、一定の容量に到達するまで数十回の充放電サイクルが必要であるという欠点を有している。また、LiMnは、サイクルが続くことから、容量の低下が深刻であり、特に、50℃以上の高温で電解液の分解、マンガンの溶出などによりサイクル特性が急激に低下するという欠点を有している。
【0009】
一方、リチウム含有マンガン酸化物の中にはLiMnO、LiMn以外に、LiMnOがある。LiMnOは、構造的安定性が非常に優れているが、電気化学的に不活性であるため、それ自体としては二次電池の正極活物質として使用できない。したがって、一部の先行技術では、LiMnOをLiMO(M=Co、Ni、Ni0.5Mn0.5、Mn)と固溶体を形成して正極活物質として使用する技術を提示している。このような固溶体正極活物質は、4.4Vの高電圧でLiとOが結晶構造から離脱して電気化学的活性を示すようになるが、高電圧で電解液の分解及びガス発生の可能性が高く、前記LiMO(M=Co、Ni、Ni0.5Mn0.5、Mn)のような相対的に高価の物質を多量使用しなければならないという問題がある。
【0010】
また、リチウム含有マンガン酸化物は、導電性が低いため、粒子の大きさに応じて抵抗の差が大きく、高容量を発現するために4.4V以上の高電圧で活性化が行われる場合、LiMnOからLiOが離脱して構造の変化を起こすという問題が発生することがあり、結晶構造的特性により、所望の程度の安定性を担保しにくく、エネルギー密度の向上を期待するのに限界がある。
【0011】
また、前記リチウム二次電池用負極としてはカーボン系物質が主に使用されている。しかし、前記カーボン系物質は、リチウム対比0Vの低い電位を有することによって、電解液を還元させてガスを発生させるという問題がある。このような問題点を解決するために、電位が相対的に高いリチウム金属酸化物を負極活物質として使用することもある。
【0012】
しかし、この場合にも、活性化段階及び充放電過程でガスが多量発生し、電解質副反応を促進して、二次電池の安全性を低下させる要因となる。
【0013】
したがって、前記のような問題を解決できる技術に対する必要性が非常に高い実情である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、前記のような従来技術の問題点及び過去から要請されてきた技術的課題を解決することを目的とする。
【0015】
本発明の目的は、正極活物質からリチウムが脱離される充電において、金属酸化数の増加による電荷均衡(charge valance)を合せるために、金属酸化物の酸素が活性ガス状態に還元する過程を原材料段階で行う予備活性化工程を含むことで、追加的な副反応を抑制し、電池の性能が改善される効果があるリチウム二次電池の製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
したがって、本発明の非制限的な例において、正極活物質の製造方法は、下記化学式(1)で表される化合物から選択された1つ以上のリチウム遷移金属酸化物の予備活性化(pre−activation)過程、及び予備活性化されたリチウム遷移金属酸化物の表面改質過程を含むことを特徴とする:
(1−x)LiM’O2−y −xLiMnO3−y’y’(1)
前記式中、
M’は、Mnであり、
Mは、Ni、Ti、Co、Al、Cu、Fe、Mg、B、Cr、Zr、Zn及び2周期の遷移金属からなる群から選択される1つ以上であり、
Aは、PO、BO、CO、F及びNOのアニオンからなる群から選択される1つ以上であり、
0<x<1、0<y≦0.02、0<y’≦0.02、0.5≦a≦1.0、0≦b≦0.5、a+b=1である。
【0017】
前記予備活性化過程は、化学的脱リチウム化(delithiation)過程を含むことができる。
【0018】
前記化学的脱リチウム化過程は、BF塩、アンモニウム塩などからなるリチウム吸着剤と反応させる過程であってもよい。前記予備活性化過程は、高温脱リチウム化過程を含むことができる。
【0019】
前記高温脱リチウム化過程は、前記リチウム遷移金属酸化物を250℃以上の温度で熱処理する過程を含むことができる。
【0020】
前記高温脱リチウム化過程は、前記リチウム遷移金属酸化物を300℃以上の温度で熱処理する過程を含むことができる。
【0021】
前記高温脱リチウム化過程は、前記リチウム遷移金属酸化物を400℃以上の温度で熱処理する過程を含むことができる。
【0022】
前記表面改質過程は、原子層蒸着法(ALD)、機械的ミリング法、湿式法、化学的蒸着(CVD)、プラズマ化学的蒸着法(PCVD)からなる群から選択された1つ以上の方法で行うことができる。
【0023】
本発明はまた、前記製造方法により製造される正極活物質を提供することができる。
【0024】
また、前記正極活物質を含むことを特徴とする電池を提供することができる。
【0025】
前記電池は、一般に、正極、負極、前記正極と負極との間に介在する分離膜及びリチウム塩含有非水電解質で構成されており、リチウム二次電池のその他の成分について、以下で説明する。
【0026】
一般に、前記正極は、正極集電体上に正極活物質、導電材及びバインダーの混合物である電極合剤を塗布した後、乾燥して製造され、必要に応じて、前記混合物に充填剤をさらに添加することもある。
【0027】
前記正極活物質は、前記化学式1で表される電極活物質以外に、リチウムコバルト酸化物(LiCoO)、リチウムニッケル酸化物(LiNiO)などの層状化合物や、1つまたはそれ以上の遷移金属で置換された化合物;化学式Li1+xMn2−x(ここで、xは0〜0.33である)、LiMnO、LiMn、LiMnOなどのリチウムマンガン酸化物;リチウム銅酸化物(LiCuO);LiV、LiFe、V、Cuなどのバナジウム酸化物;化学式LiNi1−x(ここで、M=Co、Mn、Al、Cu、Fe、Mg、BまたはGaであり、x=0.01〜0.3である)で表されるNiサイト型リチウムニッケル酸化物;化学式LiMn2−x(ここで、M=Co、Ni、Fe、Cr、ZnまたはTaであり、x=0.01〜0.1である)またはLiMnMO(ここで、M=Fe、Co、Ni、CuまたはZnである)で表されるリチウムマンガン複合酸化物;LiNiMn2−xで表されるスピネル構造のリチウムマンガン複合酸化物;化学式のLiの一部がアルカリ土金属イオンで置換されたLiMn;ジスルフィド化合物;Fe(MoOなどを含むことができるが、これらに限定されるものではない。
【0028】
前記正極集電体は、一般に3〜500μmの厚さに製造される。このような正極集電体は、当該電池に化学的変化を誘発せずに高い導電性を有するものであれば、特に制限されるものではなく、例えば、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素、またはアルミニウムやステンレススチールの表面にカーボン、ニッケル、チタン、銀などで表面処理したものなどを使用することができる。集電体は、その表面に微細な凹凸を形成して正極活物質の接着力を高めることもでき、フィルム、シート、ホイル、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体などの様々な形態が可能である。
【0029】
前記導電材は、通常、正極活物質を含んだ混合物の全重量を基準として1〜50重量%で添加される。このような導電材は、当該電池に化学的変化を誘発せずに導電性を有するものであれば特に制限されるものではなく、例えば、天然黒鉛や人造黒鉛などの黒鉛;カーボンブラック、アセチレンブラック、ケチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラックなどのカーボンブラック;炭素繊維や金属繊維などの導電性繊維;フッ化カーボン、アルミニウム、ニッケル粉末などの金属粉末;酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー;酸化チタンなどの導電性金属酸化物;ポリフェニレン誘導体などの導電性素材などを使用することができる。
【0030】
一方、前記弾性を有する黒鉛系物質が導電材として使用されてもよく、前記物質と共に使用されてもよい。
【0031】
前記バインダーは、活物質と導電材などの結合及び集電体に対する結合を助ける成分であって、通常、正極活物質を含む混合物の全重量を基準として1〜50重量%で添加される。このようなバインダーの例としては、ポリフッ化ビニリデン、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース(CMC)、澱粉、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン、テトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン−ジエンターポリマー(EPDM)、スルホン化EPDM、スチレンブタジエンゴム、フッ素ゴム、様々な共重合体などを挙げることができる。
【0032】
前記充填剤は、正極の膨張を抑制する成分として選択的に使用され、当該電池に化学的変化を誘発せずに繊維状材料であれば特に制限されるものではなく、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのオレフィン系重合体;ガラス繊維、炭素繊維などの繊維状物質が使用される。
【0033】
前記負極は、負極集電体上に負極活物質を塗布、乾燥及びプレスして製造され、必要に応じて、前記のような導電材、バインダー、充填剤などが選択的にさらに含まれてもよい。
【0034】
前記負極活物質は、例えば、難黒鉛化炭素、黒鉛系炭素などの炭素;LiFe(0≦x≦1)、LiWO(0≦x≦1)、SnMe1-xMe’(Me:Mn、Fe、Pb、Ge;Me’:Al、B、P、Si、周期律表の1族、2族、3族元素、ハロゲン;0<x≦1、1≦y≦3、1≦z≦8)などの金属複合酸化物;リチウム金属;リチウム合金;ケイ素系合金;錫系合金;SnO、SnO、PbO、PbO、Pb、Pb、Sb、Sb、Sb、GeO、GeO、Bi、Bi、Biなどの金属酸化物;ポリアセチレンなどの導電性高分子;Li−Co−Ni系材料;チタン酸化物;リチウムチタン酸化物などを使用することができ、詳細には、炭素系物質及び/又はSiを含むことができる。
【0035】
前記負極集電体は、一般に3〜500μmの厚さに製造される。このような負極集電体は、当該電池に化学的変化を誘発せずに導電性を有するものであれば、特に制限されるものではなく、例えば、銅、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素、銅やステンレススチールの表面にカーボン、ニッケル、チタン、銀などで表面処理したもの、アルミニウム−カドミウム合金などを使用することができる。また、正極集電体と同様に、表面に微細な凹凸を形成して負極活物質の結合力を強化させることもでき、フィルム、シート、ホイル、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体などの様々な形態で使用することができる。
【0036】
前記分離膜は、正極と負極との間に介在し、高いイオン透過度及び機械的強度を有する絶縁性の薄い薄膜が使用される。一般に、分離膜の気孔径は0.01〜10μmで、厚さは5〜300μmである。このような分離膜としては、例えば、耐化学性及び疎水性のポリプロピレンなどのオレフィン系ポリマー;ガラス繊維またはポリエチレンなどで作られたシートや不織布などが使用される。電解質としてポリマーなどの固体電解質が使用される場合には、固体電解質が分離膜を兼ねることもできる。
【0037】
前記リチウム塩含有非水電解質は、非水電解質とリチウムからなっており、非水電解質としては、非水系有機溶媒、有機固体電解質、無機固体電解質などが使用されるが、これらに限定されるものではない。
【0038】
前記非水系有機溶媒としては、例えば、N−メチル−2−ピロリジノン、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、γ−ブチロラクトン、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロキシフラン(franc)、2−メチルテトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、1,3−ジオキソラン、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、ジオキソラン、アセトニトリル、ニトロメタン、ホルム酸メチル、酢酸メチル、リン酸トリエステル、トリメトキシメタン、ジオキソラン誘導体、スルホラン、メチルスルホラン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、プロピレンカーボネート誘導体、テトラヒドロフラン誘導体、エーテル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチルなどの非プロトン性有機溶媒を使用することができる。
【0039】
前記有機固体電解質としては、例えば、ポリエチレン誘導体、ポリエチレンオキシド誘導体、ポリプロピレンオキシド誘導体、リン酸エステルポリマー、ポリエジテーションリシン(agitation lysine)、ポリエステルスルフィド、ポリビニルアルコール、ポリフッ化ビニリデン、イオン性解離基を含む重合体などを使用することができる。
【0040】
前記無機固体電解質としては、例えば、LiN、LiI、LiNI、LiN−LiI−LiOH、LiSiO、LiSiO−LiI−LiOH、LiSiS、LiSiO、LiSiO−LiI−LiOH、LiPO−LiS−SiSなどのLiの窒化物、ハロゲン化物、硫酸塩などを使用することができる。
【0041】
前記リチウム塩は、前記非水系電解質に溶解しやすい物質であって、例えば、LiCl、LiBr、LiI、LiClO、LiBF、LiB10Cl10、LiPF、LiCFSO、LiCFCO、LiAsF、LiSbF、LiAlCl、CHSOLi、(CFSONLi、クロロボランリチウム、低級脂肪族カルボン酸リチウム、4フェニルホウ酸リチウム、イミドなどを使用することができる。
【0042】
また、前記リチウム塩含有非水電解質には、充放電特性、難燃性などの改善を目的として、例えば、ピリジン、トリエチルホスファイト、トリエタノールアミン、環状エーテル、エチレンジアミン、n−グリム(glyme)、ヘキサリン酸トリアミド、ニトロベンゼン誘導体、硫黄、キノンイミン染料、N−置換オキサゾリジノン、N,N−置換イミダゾリジン、エチレングリコールジアルキルエーテル、アンモニウム塩、ピロール、2−メトキシエタノール、三塩化アルミニウムなどが添加されてもよい。場合によっては、不燃性を付与するために、四塩化炭素、三フッ化エチレンなどのハロゲン含有溶媒をさらに含ませることもでき、高温保存特性を向上させるために二酸化炭酸ガスをさらに含ませることもでき、FEC(Fluoro−Ethylene Carbonate)、PRS(Propene sultone)などをさらに含ませることができる。
【0043】
一具体例において、LiPF、LiClO、LiBF、LiN(SOCFなどのリチウム塩を、高誘電性溶媒であるEC又はPCの環状カーボネートと、低粘度溶媒であるDEC、DMC又はEMCの線状カーボネートとの混合溶媒に添加し、リチウム塩含有非水系電解質を製造することができる。
【0044】
本発明は、前記二次電池を単位電池として含む電池モジュール、前記電池モジュールを含む電池パック、及び前記電池パックを電源として含むデバイスを提供する。
【0045】
このとき、前記デバイスの具体的な例としては、電池的モーターによって動力を受けて動くパワーツール(power tool);電気自動車(Electric Vehicle、EV)、ハイブリッド電気自動車(Hybrid Electric Vehicle、HEV)、プラグインハイブリッド電気自動車(Plug−in Hybrid Electric Vehicle、PHEV)などを含む電気車;電気自転車(E−bike)、電気スクーター(E−scooter)を含む電気二輪車;電気ゴルフカート(electric golf cart);電力貯蔵用システムなどを挙げることができるが、これに限定されるものではない。
【発明を実施するための形態】
【0046】
以下、実施例を参照して本発明をさらに詳述するが、下記の実施例は本発明を例示するためのものであり、本発明の範疇がこれらのみに限定されるものではない。
【0047】
<実施例1>
正極の製造
正極活物質としてLi1.2Co0.1Ni0.1Mn0.6を使用し、BF2.0gが溶解している100mlの溶液を前記正極活物質に付加して攪拌し、250℃の温度で熱処理した後、水で洗浄し、真空乾燥する脱リチウム化過程を行い、機械的ミリング法を用いて表面改質過程を行った正極活物質を製造した。
【0048】
製造された正極活物質、導電材(カーボンブラック)、バインダー(PVdF)をそれぞれ90:5:5の重量比でNMP(N−methyl−2−pyrrolidone)に入れ、ミキシングして、正極合剤を製造し、製造された正極合剤を、正極電流集電体として20μmの厚さのアルミニウムホイルに40μmの厚さでコーティングした後、圧延及び乾燥して、正極を製造した。
【0049】
負極の製造
負極としては天然黒鉛を使用し、導電材(カーボンブラック)、バインダー(PVdF)をそれぞれ90:5:5の重量比でNMP(N−methyl−2−pyrrolidone)に入れ、ミキシングして、負極合剤を製造した。
【0050】
10μmの銅ホイルを使用し、製造された負極合剤を前記負極電流集電体に40μmの厚さでコーティングした後、圧延及び乾燥して、負極を製造した。
【0051】
二次電池の製造
前記負極と正極との間に分離膜(Toray、厚さ:15μm)を介在して電極組立体を製造した後、前記電極組立体をパウチ型電池ケースに収納し、エチルカーボネートとジメチルカーボネートとエチルメチルカーボネートが体積比を基準として1:1:1で混合されており、リチウム塩として1MのLiPFを含んでいるリチウム非水系電解液を添加して、リチウム二次電池を製造した。
【0052】
<実施例2>
正極活物質の製造過程の脱リチウム化過程において、300℃の温度で熱処理した以外は、実施例1と同様の方法でリチウム二次電池を製造した。
【0053】
<実施例3>
正極活物質の製造過程の脱リチウム化過程において、400℃の温度で熱処理した以外は、実施例1と同様の方法でリチウム二次電池を製造した。
【0054】
<比較例1>
正極活物質の製造過程において、脱リチウム化過程及び表面改質過程を経ていないこと以外は、実施例1と同様の方法でリチウム二次電池を製造した。
【0055】
<比較例2>
正極活物質の製造過程において、脱リチウム化過程を経ていないこと以外は、実施例1と同様の方法でリチウム二次電池を製造した。
【0056】
<比較例3>
正極活物質の製造過程において、表面改質過程を経ていないこと以外は、実施例1と同様の方法でリチウム二次電池を製造した。
【0057】
<実験例1>
実施例1〜3及び比較例1〜3の二次電池を0.1C、5mAで3.35Vまで充電し、常温で2日、60℃で1日間保管した後、93kPaで30秒〜1分間副反応ガス除去過程を経た後、0.5Cで4.3Vまで充電した後、0.05Cまで定電圧充電し、0.5Cで2.5Vまで放電し、これを45℃の温度で250サイクル繰り返し行った後、電池のガス発生量を測定し、その結果を下記の表1に示す。
【0058】
【表1】
【0059】
実験の結果、表1からわかるように、本発明に係る実施例1〜3の二次電池の場合、比較例1の電池に比べてガス発生量が減少したことがわかる。これは、正極活物質の製造過程において脱リチウム化過程及び表面改質過程を同時に含むことによって、電池の内部のガス発生量を減少させ、電池の安全性を著しく向上させる効果があることを確認することができる。
【0060】
<実験例2>
実施例1及び比較例1の二次電池を、理論容量15mAh/eaを0.5Cと算定し、17.8mAの電流を印加する充放電を通じて0.5C容量を測定し、2Cに該当する100mAhの電流を印加する充放電を通じて3C容量を測定し、2C容量/1C容量でレート特性を表現して、その結果を下記の表2に示す。
【0061】
【表2】
【0062】
表2からわかるように、本発明に係る実施例1の二次電池の場合、比較例1の二次電池に比べて、脱リチウム化過程及び表面改質過程によって一部の容量減少を伴っているが、レート特性が向上したことを確認することができる。これは、電池の製造過程の正極活物質の製造過程において脱リチウム化過程及び表面改質過程を同時に含めて製造することによって、二次電池の電気化学的性能を向上させる効果があることを確認することができる。
【0063】
本発明の属する分野における通常の知識を有する者であれば、前記内容に基づいて本発明の範疇内で様々な応用及び変形を行うことが可能であろう。
【産業上の利用可能性】
【0064】
以上で説明したように、本発明に係る正極活物質の製造方法は、遷移金属酸化物の予備活性化工程を含むことで、追加的な副反応を抑制し、電池の性能が改善される効果があるリチウム二次電池の製造方法を提供することができる。