特許第6204813号(P6204813)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6204813
(24)【登録日】2017年9月8日
(45)【発行日】2017年9月27日
(54)【発明の名称】インダクティブ位置測定装置
(51)【国際特許分類】
   G01D 5/245 20060101AFI20170914BHJP
【FI】
   G01D5/245 E
【請求項の数】15
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-255652(P2013-255652)
(22)【出願日】2013年12月11日
(65)【公開番号】特開2014-119453(P2014-119453A)
(43)【公開日】2014年6月30日
【審査請求日】2016年9月8日
(31)【優先権主張番号】10 2012 223 037.8
(32)【優先日】2012年12月13日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】390014281
【氏名又は名称】ドクトル・ヨハネス・ハイデンハイン・ゲゼルシヤフト・ミツト・ベシユレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】DR. JOHANNES HEIDENHAIN GESELLSCHAFT MIT BESCHRANKTER HAFTUNG
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100101373
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 茂雄
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100114487
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 幸作
(74)【代理人】
【識別番号】100153947
【弁理士】
【氏名又は名称】家成 隆彦
(72)【発明者】
【氏名】マルク・オリバー・ティーマン
(72)【発明者】
【氏名】マルティン・ホイマン
【審査官】 深田 高義
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−213408(JP,A)
【文献】 特表2011−516872(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/124836(WO,A1)
【文献】 特開2005−214722(JP,A)
【文献】 米国特許第05894678(US,A)
【文献】 特開2006−349377(JP,A)
【文献】 特開2013−029511(JP,A)
【文献】 特開2001−082915(JP,A)
【文献】 特開2002−365006(JP,A)
【文献】 特開2015−068640(JP,A)
【文献】 特開2015−094725(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 5/245
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いが第一方向(X)で相対的に可動である走査検知要素(1:1’)および目盛要素(2:2’)を有するインダクティブ位置測定装置において、
−走査検知要素(1:1’)に、励起配線(1.4,1.5;1.4’,1.5’)および三つのレシーバートラック(1.1,1.2,1.3;1.1’,1.2’,1.3’)を含んでおり、レシーバートラック(1.1,1.2,1.3;1.1’,1.2’,1.3’)のそれぞれが、少なくとも一つのレシーバー配線(1.11,1.12,1.21;1.22,1.31,1.32)を有しており、第一および第二レシーバートラック(1.1,1.2;1.1’,1.2’)が、第一方向(X)に対して直角に延伸する間隔(Z1;Z1’)をおいて互いに配設されており、第三レシーバートラック(1.3;1.3’)が、第一および第二レシーバートラック(1.1,1.2;1.1’,1.2’)の間に配設されており、
−目盛要素(2;2’)に、二つの目盛トラック(2.1,2.2;2.1’,2.2’)を含んでおり、それが第一方向(X)に対して直角に延伸する間隔(Z2;Z2’)をおいて互いに配設されていると共に、第一方向(X)に沿って異なった目盛周期(P2.1,P2.2;P2.1’,P2.2’)を有し、
当該位置測定装置が、励起配線(1.4,1.5;1.4’,1.5’)により生成された電磁界を目盛トラック(2.1,2.2;2.1’,2.2’)により変調できるように構成されており、それにより第一および第二レシーバートラック(1.1,1.2;1.1’,1.2’)のレシーバー配線(1.11,1.12,1.21;1.22)を使って、第一方向(X)における相対位置を検知できる一方、第三レシーバートラック(1.3;1.3’)の少なくとも一つのレシーバー配線(1.31,1.32;1.31’,1.32’)を使って、第一方向(X)に対して直角に向いている第二方向(Z)における相対位置を検知することができる
ことを特徴とするインダクティブ位置測定装置。
【請求項2】
請求項1に記載のインダクティブ位置測定装置において、
レシーバートラック(1.1,1.2,1.3;1.1’,1.2’,1.3’)の少なくとも一つが、少なくとも二つのレシーバー配線(1.11,1.12,1.21;1.22,1.31,1.32)を有している
ことを特徴とするインダクティブ位置測定装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載のインダクティブ位置測定装置において、
目盛トラック(2.1,2.2;2.1’,2.2’)の少なくとも一つが、第一方向(X)に沿って交互に配設された導電性部分および非導電性部分を有する目盛構造(2.11,2.12;2.21,2.22)で出来ている
ことを特徴とするインダクティブ位置測定装置。
【請求項4】
請求項1、2または3に記載のインダクティブ位置測定装置において、
目盛トラック(2.1,2.2)の少なくとも一つが、第一方向(X)に沿って交互に配設された目盛線および間隙を有する目盛構造(2.11,2.12;2.21,2.22)で出来ている
ことを特徴とするインダクティブ位置測定装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のインダクティブ位置測定装置において、
目盛要素(2)が、湾曲した外側面を有しており、その上に目盛トラック(2.1,2.2)が、アキシャル方向間隔(Z2)をおいて配設されている
ことを特徴とするインダクティブ位置測定装置。
【請求項6】
請求項5に記載のインダクティブ位置測定装置において、
第一または第二レシーバートラック(1.1,1.2)が、少なくとも一つのレシーバー配線(1.11,1.12,1.21;1.22)を有しており、それが第一方向(X)に沿って少なくとも270°の角度で延伸している
ことを特徴とするインダクティブ位置測定装置。
【請求項7】
請求項5または6に記載のインダクティブ位置測定装置において、
第三レシーバートラック(1.3)が、少なくとも一つのレシーバー配線(1.31,1.32)を有しており、それが第一方向(X)に沿って少なくとも270°の角度に亘って延伸している
ことを特徴とするインダクティブ位置測定装置。
【請求項8】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のインダクティブ位置測定装置において、
目盛要素(2’)がフラットな面を有しており、その上に目盛トラック(2.1’,2.2’)が配設されている
ことを特徴とするインダクティブ位置測定装置。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載のインダクティブ位置測定装置において、
励起配線(1.4,1.5;1.4’,1.5’)の少なくとも一つが、これにより電磁界を生成することが可能であり、その変調後に、
−第一および第二レシーバートラック(1.1,1.2;1.1’,1.2’)のレシーバー配線(1.11,1.12,1.21;1.22)を使って、第一方向(X)における相対位置が検知可能であり、そして更に
−第三レシーバートラック(1.3;1.3’)のレシーバー配線(1.31,1.32;1.31’,1.32’)を使って、第二方向(Z)における相対位置が検知可能である
ように配設されている。
ことを特徴とするインダクティブ位置測定装置。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載のインダクティブ位置測定装置において、
二つのレシーバートラック(1.1,1.2,1.3;1.1’,1.2’,1.3’)に並んで少なくとも部分的に、第一方向(X)に対して直角に向いている第二方向(Z)に関して、それぞれ両側に励起配線(1.4,1.5;1.4’,1.5’)が配設されている
ことを特徴とするインダクティブ位置測定装置。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項に記載のインダクティブ位置測定装置において、
第一および第二レシーバートラック(1.1,1.2;1.1’,1.2’)の間に、少なくとも部分的に二つの励起配線(1.4,1.5;1.4’,1.5’)が配設されている
ことを特徴とするインダクティブ位置測定装置。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1項に記載のインダクティブ位置測定装置において、
第二目盛トラック(2.2;2.2’)の目盛周期(P2.2;P2.2’)に対する第一目盛トラック(2.1;2.1’)の目盛周期(P2.1;P2.1’)の割合が、1/4〜4の範囲内にある
ことを特徴とするインダクティブ位置測定装置。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか1項に記載のインダクティブ位置測定装置において、
第三レシーバートラック(1.3;1.3’)が、少なくとも一つのレシーバー配線(1.11,1.12,1.21;1.22,1.31,1.32;1.11’,1.12’,1.21’;1.22’,1.31’,1.32’)を有しており、それが第一方向(X)に沿って、長い方の目盛周期(P2.1,P2.2;P2.1’,P2.2’)より大きい長さで延伸している
ことを特徴とするインダクティブ位置測定装置。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか1項に記載のインダクティブ位置測定装置において、
第一、第二、あるいは第三レシーバートラック(1.1,1.2,1.3)が複数のセグメント(10.1,10.2,10.3)を有しており、その内部に少なくとも一つのレシーバー配線(1.11,1.12,1.21;1.22,1.31,1.32)が配設されている一方、第一方向(X)に沿ったセグメント(10.1,10.2,10.3)の外側にはレシーバー配線(1.11,1.12,1.21;1.22,1.31,1.32)が配設されていない
ことを特徴とするインダクティブ位置測定装置。
【請求項15】
請求項14に記載のインダクティブ位置測定装置において、
セグメント(10.1,10.2,10.3)が、軸(A)上の点に関して点対称で配設されている
ことを特徴とするインダクティブ位置測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、相対位置を測定するための、請求項1に記載のインダクティブ位置測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
インダクティブ位置測定装置はロータリエンコーダとして、互いが相対的に回転自在である二つの機械部品の角度位置を特定するために使用される。インダクティブ(誘導)位置測定装置では多くの場合に励起コイルとレシーバーコイルが、例えば共通したプリント基板の導線の形態で装着されており、そのプリント基板がロータリエンコーダのステータと固定接続されている。そのプリント基板に対向して目盛要素があり、その上に周期的な間隔をおいて交互に導電性および非導電性の面または目盛線および間隙が、目盛構造として設けられており、それがロータリエンコーダのロータと回転固定して接続されている。交流の励起電流が励起コイルに印加されると、ロータとステータ間で相対回転する間にレシーバーコイルで角度位置に対応する信号が生成される。そしてこの信号が、評価エレクトロニクス機器で更に処理される。
【0003】
インダクティブ位置測定装置は更に、軸に沿った長手方向移動量を直接測定するためにも多く使用される。その場合に先に挙げたロータリエンコーダの時と同じ測定原理が使用されるが、レシーバーコイルおよび目盛構造が直線の軸に沿って移動する。
【0004】
当該形式のインダクティブ位置測定装置は、該当する機械部品の相対移動ないし相対位置を特定するために、しばしば電気駆動部用の測定器として使用される。その場合には駆動部を制御するために、生成された位置値が対応して配設されたインターフェイスを介して後続のエレクトロニクス機器に送られる。
【0005】
本出願人による特許文献1において角度測定装置が記載されており、そこでは角度位置を測定する以外に追加してアキシャル方向の移動量を、測定温度との関係で特定することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】EP 1 750 101 B1号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、インダクティブ位置測定装置を得ることであり、それにより簡単な方法で、本来の測定方向に対して直角な方向を有する移動量を特定することが可能になるものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題を本発明に従い、請求項1の特徴により解決する。
【0009】
本インダクティブ位置測定装置は、走査検知要素および目盛要素を有しており、走査検知要素が、目盛要素に対して相対的に第一方向で直線的または回転方向に可動である。走査検知要素に含まれるのは、電磁界を発生させるための励起配線および、それぞれ少なくとも一つのレシーバー配線を有する三つのレシーバートラックである。第一および第二レシーバートラックは、第一方向に対して直角に延伸する間隔をおいて互いに配設されている。第三レシーバートラックは、第一および第二レシーバートラックの間に配設されている。そして目盛要素に含まれるのは二つの目盛トラックであり、それが第一方向に対して直角に延伸する間隔をおいて互いに配設されていると共に、第一方向に沿って異なった目盛周期を有している。位置測定装置は更に、励起配線により生成された電磁界を目盛トラックにより変調できるように構成されており、それにより第一および第二レシーバートラックのレシーバー配線を使って第一方向における相対位置を検知でき、他方で第三レシーバートラックの少なくとも一つのレシーバー配線を使って、第一方向に対して直角に向いている第二方向における相対位置を検知することができる。
【0010】
目盛周期とは、目盛構造により決められている幾何的な長さである。一つの目盛周期の中に例えばそれぞれ、正確に一つの導通面および一つの非導通面ないし正確に一つの目盛線および一つの間隙がある。目盛周期を通過する時に、走査検知要素により信号周期が生成される。
【0011】
トラック、即ち励起トラック、第一、第二、第三レシーバートラック、および目盛トラックは、第一方向に沿って延伸すると共に第二方向で幅を有する幾何的な範囲を有する。角度測定装置の場合にはトラックを、円周に沿って延伸し特に第一方向で連続する矩形の面として解釈できる。並進的な相対位置を測定する位置測定機器では、トラックが矩形形状を有しているとすることができる。第一、第二、第三レシーバートラックは、完全な測定長さないし完全な円周に亘って、あるいは部分的またはセグメント的にのみレシーバー配線を有していることがある。その位置測定機器は特に、レシーバー配線が少なくとも一つの別のレシーバートラックのレシーバー配線に対して相対的に、第一方向でオフセットして配設されるように構成されていることがある。
【0012】
通常は走査検知要素および目盛要素が、互いに対向して配設されており、そして第一および第二方向に対して直角に向いている第三方向で延伸する空隙を介して、互いに間隔をおいている。本発明は空隙の幅の検知に関するものではない。相対移動は、回転移動である場合もあるし直線移動の場合もある。したがって相対位置は、角度位置あるいは並進的な位置である場合がある。目盛周期が異なっていることにより適切な信号評価方法を使い、例えばノギスのバーニア原理に従って、走査検知要素と目盛周期間のアブソリュート相対位置を特定できるようにすることもできる。
【0013】
インダクティブ位置測定装置は特に、レシーバー配線を備えた第一および第二レシーバートラックが走査検知要素に配設されているように構成されている。そこで目盛要素に含まれるのは第一目盛トラックおよび第二目盛トラックであり、その位置測定装置の構成は、走査検知要素と目盛要素間で同じ相対移動の時に、第二レシーバートラックのレシーバー導線と較べて第一レシーバートラックのレシーバー導線により、多い数の信号周期を生成できるようになっている。同じ相対移動ということは、同じ量の相対移動と解釈し、例えば一定角度量の相対回転、あるいは一定長さ量の長手方向移動である。
【0014】
レシーバートラックの少なくとも一つが、少なくとも二つのレシーバー配線を有していると利点がある。
【0015】
本発明の別の構成では目盛トラックの少なくとも一つが、第一方向に沿って交互に配設された導電性部分および非導電性部分を有する目盛構造で出来ている。
【0016】
インダクティブ位置測定装置の構成は又、目盛トラックの少なくとも一つが、第一方向に沿って交互に配設された目盛線および間隙を有する目盛構造で出来ていることもある。目盛トラックは、メッキされた金属層として形成されていることもある。
【0017】
位置測定装置により角度位置を特定する必要がある場合に特に、目盛要素が湾曲した外側面を有していることがあり、その上に目盛トラックが、アキシャル方向間隔をおいて配設されている、即ち回転を行う中心となる軸に関して、アキシャル方向でオフセットしている。第一または第二レシーバートラックが、少なくとも一つのレシーバー配線を有していると利点があり、それが第一方向に沿って180°以上の角度、特に225°以上に亘って延伸しており、利点があるのは少なくとも270°の角度で延伸している。ここで記載の角度は、走査検知要素に対して相対的に目盛要素が回転する軸を中心点とした中心角に関するものである。
【0018】
同様に第三レシーバートラックの一つまたは複数のレシーバー配線が、第一方向に沿って180°以上の角度、特に225°以上に亘って延伸しており、利点があるのは少なくとも270°の角度で延伸していることもある。
【0019】
第三レシーバートラックのレシーバー配線は、これが第一方向に沿って中断部を有するように構成されていることもある。即ち、対応する目盛周期を円周の複数の箇所で走査検知することもある。例えば目盛トラックを走査検知する位置、即ち第三レシーバートラックの少なくとも一つのレシーバー配線がある位置が、軸上の中心点に関して対向して配設されていることがある。このような構成では第三レシーバートラックのレシーバー配線が、それぞれ軸上に中心点を有して少なくとも60°の中心角、利点があるのは少なくとも75°または少なくとも100°に亘って延伸していることがある。
【0020】
レシーバー配線の長さが比較的大きいことにより、生成された信号は偏心誤差およびふらつき誤差に対して感度が非常に鈍い。結果として、製造および組み付けで比較的大きな許容差が認められる。
【0021】
代替として、第一、第二、または第三レシーバートラックが複数のセグメントを有するように、走査検知要素が構成されていることもあり、それによりレシーバートラックおよび選択肢として励起配線も、見たところ(実質的に)第一方向に沿って中断している。その場合には少なくとも一つのレシーバー配線が、セグメントの内部に配設されていることがあり、他方で第一方向に沿ったセグメントの外側にはレシーバー配線が配設されない。
【0022】
例えば角度位置を特定できるようにする位置測定装置では、少なくとも第三レシーバートラックが、円周でセグメントとして配分されたレシーバー配線を有していることがあり、そこでレシーバー配線の範囲が、それぞれ30°(即ち、全周の1/12)以下、特に15°(即ち、全周の1/24)以下の角度セグメントに亘って延伸していることがある。角度位置を(回転)軸に関して特定できるようにする位置測定装置で上記のような構成では、個々のセグメントが軸上の点に関して点対称で配設されていると利点がある。
【0023】
本発明の別の構成では目盛要素がフラットな面を有しており、その上に目盛トラックが配設されている。そのような実施方法は特に、並進的な移動または位置の測定との関連で利点がある。
【0024】
本発明の別の構成によれば励起配線の少なくとも一つが、これにより電磁界を生成することを可能にし、目盛要素によるその変調後に、
a)第一および第二レシーバートラックのレシーバー配線を使って、第一方向における相対位置が検知可能であると共に、
b)第三レシーバートラックのレシーバー配線を使って、第二方向における相対位置が検知可能である
ように配設されている。従って、第三レシーバートラックのレシーバー配線を使って信号を生成するための、別個または追加の励起配線を廃止することができる。
【0025】
二つのレシーバートラックに並んで少なくとも部分的に、第一方向に直角であるが空隙方向に向いていない第二方向に関して、それぞれ両側に励起配線が配設されていると利点がある。特に走査検知要素は、三つのレシーバートラック全てに並んで少なくとも部分的に第二方向に関して、それぞれ両側に励起配線が配設されているように構成されていることがある。本発明の利点ある構成では第一および第二レシーバートラックの間に、少なくとも部分的に二つの励起配線が配設されている。特にレシーバー配線の両側に励起配線が配設されている。
【0026】
第二目盛トラックの目盛周期に対する第一目盛トラックの目盛周期の割合が、1/4〜4の範囲内にあると利点がある。その割合が特に、最小1/3で最大3である場合があり、その割合が1/2〜2の範囲内にあると利点がある。例えば、角度位置を測定することに特定されている位置測定装置の場合、第一目盛トラックの目盛周期の数は、第二目盛トラックの目盛周期の数に対して数が一つだけ異なっている。
【0027】
二つの目盛トラックは異なった目盛周期を有している。従って、目盛周期の長い目盛トラックおよび目盛周期の短い目盛トラックがある。第三レシーバートラックが第一方向に沿って、長い方の目盛周期より大きい長さで延伸していると利点がある。
【0028】
本発明の利点ある構成は、従属請求項から分かる。
【0029】
本発明によるインダクティブ位置測定装置の更なる詳細および利点は、添付の図面を使った二つの実施例の以下における説明から得られる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】相対的な角度位置を特定する位置測定装置の遠視外観。
図2】走査検知要素の部分範囲の上部外観。
図3】第二実施例に従い相対的な角度位置を特定する位置測定装置の上部外観。
図4】並進的な相対位置を特定する位置測定装置の遠視外観。
図5a】並進的な相対位置を特定する位置測定装置の目盛要素の部分範囲を上から見た外観。
図5b】並進的な相対位置を測定する位置測定装置の走査検知要素の部分範囲を上から見た外観。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0031】
図1および2による第一実施例で本発明を、走査検知要素1と目盛要素2ないしスケールとの間の角度位置を検出するために特定されている位置測定装置を使って説明する。構造を説明するために、図1では走査検知要素1と目盛要素2を分離して図示している。使用する状態では走査検知要素1と目盛要素2が、ラジアル方向空隙を有して互いが同心で対向している。
【0032】
この実施例で目盛要素2はリングとして構成されており、その外面側に間隔Z2をおいて配設された二つの目盛トラック2.1,2.2がある。提示の例で目盛トラック2.1,2.2に含まれるのは、目盛線2.11,2.21およびその間に位置する間隙2.12,2.22であり、第一目盛トラック2.1が、このような目盛線2.11を64個有している一方で、第二目盛トラック2.2に含まれるのは63個の目盛線2.21に過ぎない。例示では円周溝2.4が、アキシャル方向幅Z2を有して目盛線2.11,2.21の間に位置している。
【0033】
従って、二つの目盛トラック2.1,2.2はそれぞれ、交互に配設された目盛線2.11,2.21および間隙2.12,2.22の周期的な並びで構成されている。
【0034】
第一目盛トラック2.1の第一目盛周期P2.1は、目盛線2.11ひとつの長さT1および間隙2.12ひとつの長さG1の合計から得られ、長さT1,G1は方向Xで延伸している。同様に第二目盛周期P2.2は、第二目盛トラック2.2で目盛線2.21ひとつの一つの長さT2および間隙2.22ひとつの長さG2の合計を示している。両方の目盛トラック2.1,2.2は次の関係、即ちT1/G1≒T2/G2が当て嵌まるように寸法が決められている。
【0035】
目盛トラック2.1,2.2は、特に第一方向Xに沿って、ここでは円周方向で異なった目盛周期P2.1,P2.2(図2)を有している、即ち:
P2.1=円周/64、および
P2.2=円周/63
【0036】
従って、第二目盛トラック2.2の目盛周期P2.2に対する第一目盛トラック2.1の目盛周期P2.1の割合は、次のようになる:
P2.1:P2.2=(円周/64):(円周/63)=63/64≒0.984
【0037】
走査検知要素1は、リング状で配設されたフレキシブルなプリント基板で出来ており、その上に二つの励起配線1.4,1.5および三つのレシーバートラック1.1,1.2,1.3が配設されている。励起配線1.4,1.5もレシーバートラック1.1,1.2,1.3も、方向Xに沿って又は円周方向に沿って、更に厳密に言えば走査検知要素1の概ね全周に亘って延伸している。全周に亘って完全に延伸して製造することは実際には殆どできない、または非常な工数と費用を使ってのみ可能である、というのは、励起配線1.4,1.5およびレシーバートラック1.1,1.2,1.3のために、走査検知要素1には接続部分が設けられているからであり、それが結果として−極く僅かであっても−不連続部分になる。加えて第一および第二レシーバートラック1.1,1.2は、互いが間隔Z1をおいて走査検知要素1に設けられている。間隔Z1は第一方向Xに対して、即ち円周方向に対して直角に延伸しており、そして特に間隔Z2に対して平行ないしアキシャル方向に向いている。
【0038】
走査検知要素1には更に、第三レシーバートラック1.3がある。これはアキシャル方向で、第一および第二レシーバートラック1.1,1.2の間に配設されており、接続部分を除いて方向Xで走査検知要素1のほぼ全周に亘って延伸している。励起配線1.4,1.5およびレシーバートラック1.1,1.2,1.3は、走査検知要素1として使用する多層構造のフレキシブルなプリント基板の導線として構成されている。
【0039】
加えて走査検知要素1には、エレクトロニクス回路およびコネクタ要素が配設されているが、図ではそれを図示していない。走査検知要素1は、リング状のハウジング11に組み付けられている。ケーブル30を介して走査検知要素1は、後続のエレクトロニクス機器と接続可能である。
【0040】
図2において部分詳細図で、三つのレシーバートラック1.1,1.2,1.3および二つの励起配線1.4,1.5を、目盛トラック2.1,2.2と共に示している。第一および第二のレシーバートラック1.1,1.2は、それぞれペアのレシーバー導線1.11,1.12;1.21,1.22を有している。第三レシーバートラック1.3に含まれるのは、同じく導線として構成されている二つのレシーバーループ1.31,1.32である。
【0041】
図2で分かるように、第一レシーバートラック1.1の傍にも第二レシーバートラック1.2の傍にも、Z方向でそれぞれ両側に励起配線1.4,1.5が配設されている。言い換えれば、方向Xに対して直角に向いている方向(Z方向)で、第一および第二レシーバートラック1.1,1.2の間に二つの励起配線1.4,1.5がある。
【0042】
使用する状態では目盛要素2が、接触することなくラジアル方向で走査検知要素1の内側に位置している。一般的に目盛要素2はロータとして使用され、軸Aを中心にして回転自在の機械部品に固定される。それに対して走査検知要素1は、位置測定装置のステータとなるので、静止している機械部品に固定される。軸Aを中心にして目盛要素2と走査検知要素1間で相対回転する時には、走査検知要素1においてインダクション効果により、その時の角度位置に対応した信号を生成することができる。
【0043】
当該信号を形成するための前提は、励起配線1.4,1.5が交流の励起電磁界を、レシーバートラック1.1,1.2,1.3の部分で、ないしそれを使って走査検知する目盛トラック2.1,2.2の部分で生成することである。図示している実施例では励起配線1.4,1.5が、電流通過する平行な複数の単一導線として構成されている。励起配線1.4,1.5に電流が流れると、その励起配線1.4,1.5を中心に向きが楕円チューブないし円筒形状である電磁界が形成される。生じる電磁界の磁力線は、励起配線1.4,1.5を中心にした同心円の形態で延伸し、その磁力線の方向は公知の形式と方法により、励起配線1.4,1.5における電流方向によって決まる。目盛線2.11,2.21の部分で渦電流が誘電されるので、角度位置に対応して磁界が変調される。従ってレシーバートラック1.1,1.2により、方向Xにおける相対位置を測定することができる。レシーバートラック1.1,1.2でペアのレシーバー導線1.11,1.12;1.21,1.22は、それぞれ90°位相がオフセットした信号を出すように配設されているので、回転方向の特定も行うことができる。方向Xにおける位置、即ちここでは角度位置を特定するためのレシーバートラック1.1,1.2のそれぞれは、個別の励起配線1.4,1.5により挟まれている。
【0044】
第一、第二、および第三レシーバートラック1.1,1.2,1.3は、走査検知要素1の殆ど全周、即ち軸Aを中心にした約360°を延伸している。取り付け許容差が比較的大きい時も、このような構造により正確な角度測定を達成することができる。
【0045】
二つの目盛トラック2.1,2.2が、僅かに異なった目盛周期P2.1,P2.2を有していることにより、波動干渉原理ないしノギスバーニア原理を利用してレシーバートラック1.1,1.2の信号から、走査検知要素1に対する目盛要素2のアブソリュート角度位置を特定することができる。
【0046】
目盛要素2は、例えば工作機械のスピンドルに固定されていることがあり、一次的にその回転位置および回転数を測定することになる。回転自在であるシャフトの端部に工具が取り付けられており、該当加工品の正確な加工を保証するために、その位置を正確に測定せねばならない。このような配設を長時間に亘って使用する時にはシャフトに通常、例えば駆動モータあるいは軸受からの熱が伝わる。このことが結果として、方向Zにおけるシャフトの長さ変化となる。対応してZ方向における工具の位置ずれが生じる。工作機械の精度を向上するために、そこで長さ変化の値ないし量を測定して、工作機械の数値制御部ないし位置補正する後続エレクトロニクス機器に送る。本発明による位置測定装置を使うことにより、シャフトの長さ変化を測定する別個の位置測定機器を特別に必要としない。
【0047】
方向Zにおける目盛要素2と走査検知要素1間の相対的な位置は、第三レシーバートラック1.3を使って検出する。レシーバーループ1.31,1.32により生成される信号は、該当レシーバーループ1.31,1.32と溝2.4との重なり度合に関係している。Z位置用の信号を得るために第三レシーバートラック1.3が必要とする励起磁界は、励起配線1.4,1.5により生成される。従って位置測定装置により、第一方向Xに対して直角に向いている第二方向Zにおける相対位置を、電磁界を発生する正に励起配線1.4,1.5を使用して検出することができ、その電磁界を使うことにより最終的に第一方向Xにおける相対位置も、第一および第二レシーバートラック1.1;1.2を使って検知可能である。即ち、Z方向における相対位置を検出するための特別な励起配線を廃止することができる。
【0048】
即ち、方向Zは第一方向Xに対して直角に向いている方向であるが、ラジアル方向ではない(Y方向でない)ので、シャフトの長さ変化を特定するためには、走査検知要素1と目盛要素2間の空隙幅を使用しない。
【実施例2】
【0049】
図3では位置測定装置の第二実施例を図示しており、それは同じく角度位置を検出するために特定されているものである。この実施例による位置測定装置に含まれているのは、外側のリング状ハウジング11および目盛要素2である。これらは第一実施例に相当して構成されている。それとは違って第二実施例による位置測定装置は、四つのセグメント10.1,10.2,10.3,10.4を含む走査検知要素10を有している。セグメント10.1,10.2,10.3,10.4のそれぞれが、第一実施例の走査検知要素1のように励起配線1.4,1.5および三つのレシーバートラック1.1,1.2,1.3を有しており、第一および第二レシーバートラック1.1,1.2は互いが、第一方向Xに対して直角、即ちZ方向で延伸する間隔Z1をおいて配設されている。第三レシーバートラック1.3は、第一および第二レシーバートラック1.1,1.2の間に配設されている。従って図2は、第二実施例のセグメント10.1,10.2,10.3,10.4の一つを取り出したものとして見ることもできる。
【0050】
セグメント10.1,10.2,10.3,10.4のそれぞれは、目盛要素2の円周ないしハウジング11の内周の一部範囲のみを延伸している。示している実施例では四つのセグメント10.1,10.2,10.3,10.4のそれぞれが、24°の中心角αで延伸しているので、セグメント10.1,10.2,10.3,10.4が延伸しているのは、合計で円周の26.7%(96°)のみである。
【0051】
目盛要素の直径が大きい時には特に、セグメント10.1,10.2,10.3,10.4が延伸するのは、代替として合計で基本的に円周の1/4以下のことがある。代替として又、二つ、三つ、あるいは四つ以上のセグメント10.1,10.2,10.3,10.4が、円周に沿って配設されることもある。
【0052】
セグメント10.1,10.2,10.3,10.4は互いが、軸A上の点に関して点対称で配設されている。このような配設は又、四つ以外の数のセグメント10.1,10.2,10.3,10.4を使用する時にも利点がある。
【実施例3】
【0053】
図4,5a,5bで図示している第三実施例によれば本発明を、並進的または直線的な相対位置を測定するために使用することもできる。
【0054】
この実施例では目盛要素2’が、ハウジング20’に組み付けられていると共に、二つの目盛トラック2.1’,2.2’を有している。その二つの目盛トラック2.1’,2.2’はそれぞれ、交互に配設された導電性の目盛構造2.11’,2.21’および非導電性の目盛構造2.12’,2.22’の周期的な並びで出来ている。導電性の部分範囲2.11’,2.21’用の材料として、示している例では基板の上に銅を装着した。それに対して非導電性の目盛構造2.12’,2.22’では、基板を被膜しなかった。目盛トラック2.1’,2.2’は、第一方向Xに沿って異なった目盛周期P2.1,P2.2(図5a)を有している。
【0055】
目盛トラック2.1’,2.2’の間には、幅Z2’を有する帯状部分2.4’があり、帯状部分2.4’は導電性の被膜を全く有していない。
【0056】
第三実施例による位置測定装置は更に、プリント基板で出来た走査検知要素1’を有しており、そのプリント基板上に、二つの励起配線1.4’,1.5’および三つのレシーバートラック1.1’,1.2’,1.3’が配設されている。第一および第二レシーバートラック1.1’,1.2’は、互いが間隔Z1’をおいて走査検知要素1’に装着されている。間隔Z1’は、第一方向Xに対して直角に延伸しており、そして特に間隔Z2’に対して平行ないしZ方向に向いている。
【0057】
同時に走査検知要素1’には、第三レシーバートラック1.3’がある。これはZ方向で、第一および第二レシーバートラック1.1’,1.2’の間に配設されている。励起配線1.4’,1.5’およびレシーバートラック1.1’,1.2’,1.3’は、走査検知要素1’として使用される多層構造のフレキシブルなプリント基板の導線として構成されている。
【0058】
加えて走査検知要素1’には、特に図示していないエレクトロニクス回路およびコネクタ要素が配設されている。走査検知要素1’はハウジング10’に組み込まれている。ケーブル30を介して走査検知要素1’が、後続エレクトロニクス機器と接続可能である。
【0059】
第一および第二レシーバートラック1.1’,1.2’は、原理的に図2での図示に類似して構成されている、即ち、それぞれペアのレシーバー導線を有し、それが正弦波状でオフセットして配設されている。二つの励起配線1.4’,1.5’も同じく、図2での図示と類似して構成されている。第三レシーバートラック1.3’は当然ながら、第一実施例のものよりX方向で短く実施されている。
【0060】
走査検知要素1’がX方向で目盛要素2’に沿って移動すると、これらの間でアブソリュートの相対位置を特定することができ、ここでもノギスのバーニア原理を使用する。同時にZ方向で目盛要素2’と走査検知要素1’間の相対位置を、第三レシーバートラック1.3’を使って検知することができる。個々のレシーバーループ1.31’,1.32’により生成される信号は、被膜されていない帯状部分2.4’と当該レシーバーループ1.31’,1.32’の重なり度合によって決まる。
【0061】
走査検知要素1’および目盛要素2’は、互いが対向して配設されており、Y方向で延伸する空隙により互いから距離を置いている。ここでも本発明は、Y方向における空隙幅の検知に関するものではない。
【0062】
インダクティブ位置測定装置が、角度測定装置として又は長さ測定装置として構成されているかどうかと関係なく、目盛線および間隙あるいは導電性の面および非導電性の面を、目盛構造として使用することができる。
【符号の説明】
【0063】
1 走査検知要素
1.1 第一レシーバートラック
1.11 レシーバー導線
1.12 レシーバー導線
1.2 第二レシーバートラック
1.21 レシーバー導線
1.22 レシーバー導線
1.3 第三レシーバートラック
1.31 レシーバーループ
1.32 レシーバーループ
1.4 励起配線
1.5 励起配線
2 目盛要素
2.1 目盛トラック
2.2 目盛トラック
2.11 目盛線
2.12 間隙
2.21 目盛線
2.22 間隙
2.4 円周溝、帯状部分
10 走査検知要素
10.1 セグメント
10.2 セグメント
10.3 セグメント
10.4 セグメント
11 ハウジング
20 ハウジング
30 ケーブル
図1
図2
図3
図4
図5a
図5b