特許第6204848号(P6204848)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6204848
(24)【登録日】2017年9月8日
(45)【発行日】2017年9月27日
(54)【発明の名称】研磨装置および研磨方法
(51)【国際特許分類】
   B24B 21/00 20060101AFI20170914BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20170914BHJP
   B24B 9/00 20060101ALI20170914BHJP
【FI】
   B24B21/00 A
   H01L21/304 621E
   B24B9/00 601G
【請求項の数】8
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-27780(P2014-27780)
(22)【出願日】2014年2月17日
(65)【公開番号】特開2015-150662(P2015-150662A)
(43)【公開日】2015年8月24日
【審査請求日】2016年10月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100091498
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 勇
(74)【代理人】
【識別番号】100118500
【弁理士】
【氏名又は名称】廣澤 哲也
(72)【発明者】
【氏名】関 正也
(72)【発明者】
【氏名】保科 真穂
【審査官】 稲葉 大紀
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−27000(JP,A)
【文献】 特開平10−217077(JP,A)
【文献】 特開2002−126981(JP,A)
【文献】 米国特許第7115023(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 21/00
B24B 9/00, 9/06
B24B 7/04
B24B 1/00
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を保持して回転させる基板保持部と、
前記基板のエッジ部を研磨テープを用いて研磨する少なくとも1つの研磨ユニットとを備え、
前記研磨ユニットは、
前記研磨テープを支持する外周面を有する円盤ヘッドと、
前記円盤ヘッドを前記基板の接線方向に移動させ、前記円盤ヘッドの外周面上の前記研磨テープを前記基板のエッジ部に接触させるヘッド移動装置とを有し、
前記円盤ヘッドの軸心は、前記基板の表面と平行であり、かつ前記接線方向に対して垂直であることを特徴とする研磨装置。
【請求項2】
前記研磨ユニットは、
前記研磨テープの両端部をそれぞれ保持した第1のリールおよび第2のリールと、
前記第1のリールおよび前記第2のリールを互いに反対方向に回転させるトルクを発生する第1のモータおよび第2のモータをさらに有することを特徴とする請求項1に記載の研磨装置。
【請求項3】
前記研磨ユニットは、前記研磨テープを前記円盤ヘッドの外周面に押し付けて前記研磨テープを前記外周面に沿って湾曲させるニップローラーをさらに備えたことを特徴とする請求項1に記載の研磨装置。
【請求項4】
前記研磨ユニットは、前記ニップローラーを前記円盤ヘッドの軸心まわりに移動させるニップローラー移動装置をさらに備えたことを特徴とする請求項3に記載の研磨装置。
【請求項5】
前記研磨ユニットは、前記円盤ヘッドをその軸心まわりに回転させるヘッドモータをさらに有することを特徴とする請求項1に記載の研磨装置。
【請求項6】
前記少なくとも1つの研磨ユニットは、複数の研磨ユニットであることを特徴とする請求項1に記載の研磨装置。
【請求項7】
複数の研磨ユニットは、第1の研磨テープが取り付けられた第1の研磨ユニットと、前記第1の研磨テープよりもきめの細かい研磨面を有する第2の研磨テープが取り付けられた第2の研磨ユニットを少なくとも含むことを特徴とする請求項6に記載の研磨装置。
【請求項8】
基板をその軸心まわりに回転させ、
第1の円盤ヘッドを前記基板の接線方向に移動させながら、前記第1の円盤ヘッドの外周面で第1の研磨テープを前記基板のエッジ部に押し付けて前記エッジ部に段部を形成し、
第2の円盤ヘッドを前記基板の接線方向に移動させながら、前記第2の円盤ヘッドの外周面で第2の研磨テープを前記段部に押し付けて前記段部を研磨する工程を含み、
前記第2の研磨テープは、前記第1の研磨テープの研磨面よりもきめの細かい研磨面を有していることを特徴とする研磨方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェハなどの基板を研磨する研磨装置および研磨方法に関し、特にウェハのエッジ部を研磨テープを用いて研磨する研磨装置および研磨方法に関する。
【背景技術】
【0002】
図11は、ウェハWのエッジ部を研磨テープ101を用いて研磨する研磨装置を示す模式図である。研磨装置は、ウェハWを回転させながら、研磨テープ101を押圧部材100でウェハWのエッジ部に下方に押し付けて該エッジ部を研磨する。研磨テープ101の下面は、砥粒が固定された研磨面を構成している。押圧部材100は、平坦な下面を有しており、その平坦な下面で研磨テープ101をウェハWのエッジ部に対して下方に押し付け、図12に示すような垂直面と水平面からなる段部をエッジ部に形成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国公開公報2008/0293344号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ウェハWの研磨中、研磨テープ101とウェハWとの間に発生する摩擦力により、研磨テープ101が押圧部材100上の所定の位置からずれることがある。このような場合、エッジ部に形成すべき垂直面が粗くなってしまう。滑らかな垂直面をエッジ部に形成するために、きめの粗い研磨面を有する粗研磨テープと、きめの細かい研磨面を有する仕上げ研磨テープの2つの研磨テープを用いてウェハWのエッジ部を研磨する場合もある。しかしながら、図12から分かるように、ウェハWの研磨中、粗研磨テープは常にエッジ部の垂直面に接触しているため、粗研磨テープとの接触によってエッジ部の垂直面が粗くなってしまう。仕上げ研磨テープのみを使用すれば、滑らかな垂直面を形成することは可能である。しかしながら、仕上げ研磨テープのみを使用すると、研磨レートが下がり、研磨装置のスループットが低下してしまう。
【0005】
そこで、本発明は、ウェハなどの基板の研磨中に研磨テープの位置ずれを防止することができ、滑らかな垂直面を基板のエッジ部に形成することができる研磨装置および研磨方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した目的を達成するために、本発明の一態様は、基板を保持して回転させる基板保持部と、前記基板のエッジ部を研磨テープを用いて研磨する少なくとも1つの研磨ユニットとを備え、前記研磨ユニットは、前記研磨テープを支持する外周面を有する円盤ヘッドと、前記円盤ヘッドを前記基板の接線方向に移動させ、前記円盤ヘッドの外周面上の前記研磨テープを前記基板のエッジ部に接触させるヘッド移動装置とを有し、前記円盤ヘッドの軸心は、前記基板の表面と平行であり、かつ前記接線方向に対して垂直であることを特徴とする研磨装置である。
【0007】
本発明の好ましい態様は、前記研磨ユニットは、前記研磨テープの両端部をそれぞれ保持した第1のリールおよび第2のリールと、前記第1のリールおよび前記第2のリールを互いに反対方向に回転させるトルクを発生する第1のモータおよび第2のモータをさらに有することを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記研磨ユニットは、前記研磨テープを前記円盤ヘッドの外周面に押し付けて前記研磨テープを前記外周面に沿って湾曲させるニップローラーをさらに備えたことを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記研磨ユニットは、前記ニップローラーを前記円盤ヘッドの軸心まわりに移動させるニップローラー移動装置をさらに備えたことを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記研磨ユニットは、前記円盤ヘッドをその軸心まわりに回転させるヘッドモータをさらに有することを特徴とする。
【0008】
本発明の好ましい態様は、前記少なくとも1つの研磨ユニットは、複数の研磨ユニットであることを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、複数の研磨ユニットは、第1の研磨テープが取り付けられた第1の研磨ユニットと、前記第1の研磨テープよりもきめの細かい研磨面を有する第2の研磨テープが取り付けられた第2の研磨ユニットを少なくとも含むことを特徴とする。
【0009】
本発明の他の態様は、基板をその軸心まわりに回転させ、第1の円盤ヘッドを前記基板の接線方向に移動させながら、前記第1の円盤ヘッドの外周面で第1の研磨テープを前記基板のエッジ部に押し付けて前記エッジ部に段部を形成し、第2の円盤ヘッドを前記基板の接線方向に移動させながら、前記第2の円盤ヘッドの外周面で第2の研磨テープを前記段部に押し付けて前記段部を研磨する工程を含み、前記第2の研磨テープは、前記第1の研磨テープの研磨面よりもきめの細かい研磨面を有していることを特徴とする研磨方法である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、図11に示す押圧部材の平坦面で研磨テープを基板に押し付ける場合に比べて、基板に接触している研磨テープと円盤ヘッドの外周面との間には比較的大きな静止摩擦が働く。したがって、基板の研磨中に研磨テープが所定の位置からずれることを防止することができる。
【0011】
また、本発明によれば、円盤ヘッドが基板の接線方向に移動しながら、円盤ヘッドの外周面によって研磨テープが基板のエッジ部に押し付けられる。このため、エッジ部の研磨は、該エッジ部の外側から内側に徐々に進行する。したがって、きめの粗い研磨面を有する第1の研磨テープでエッジ部を研磨して段部を形成し、きめの細かい研磨面を有する第2の研磨テープで段部をさらに研磨することで、滑らかな垂直面をエッジ部に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】研磨装置の一実施形態を示す正面図である。
図2】研磨装置の側面図である。
図3】研磨テープがウェハのエッジ部に接触したときの円盤ヘッドとウェハのエッジ部との相対位置を示す平面図である。
図4】円盤ヘッドが図3に示す位置にあるときに研磨テープによって研磨されたエッジ部の断面図である。
図5】円盤ヘッドをウェハの接線方向にさらに移動させたときの円盤ヘッドとウェハのエッジ部との相対位置を示す平面図である。
図6】円盤ヘッドが図5に示す位置にあるときに研磨テープによって研磨されたエッジ部の断面図である。
図7】ウェハの上から見たときに円盤ヘッドの中心軸がウェハの半径方向に一致したときの、円盤ヘッドとウェハのエッジ部との相対位置を示す平面図である。
図8】円盤ヘッドが図7に示す位置にあるときに研磨テープによって研磨されたエッジ部の断面図である。
図9】2つの研磨ユニットを有する研磨装置を示す模式図である。
図10】研磨装置の他の実施形態を示す側面図である。
図11】ウェハのエッジ部を研磨テープを用いて研磨する研磨装置を示す模式図である。
図12】エッジ部に形成された段部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、研磨装置の一実施形態を示す正面図であり、図2は、研磨装置の側面図である。研磨装置は、基板の一例であるウェハWを保持して回転させる基板保持部1と、研磨具である研磨テープ5を用いてウェハWのエッジ部を研磨する研磨ユニット7とを備えている。基板保持部1は、ウェハWの下面を保持し、ウェハWをその中心軸まわりに水平に回転させるように構成されている。
【0014】
基板保持部1に保持されたウェハWの中心部の上方には、純水などの研磨液をウェハWの上面に供給する研磨液供給ノズル10が配置されている。ウェハWのエッジ部の研磨中は、研磨液供給ノズル10から研磨液がウェハWの中心部に供給される。研磨液は、遠心力によってウェハWの上面全体に広がり、ウェハWを研磨屑から保護する。
【0015】
研磨ユニット7は、研磨テープ5を支持する外周面を有する円盤ヘッド12と、研磨テープ5を円盤ヘッド12の外周面に押し付けるニップローラー14と、円盤ヘッド12をその軸心Oまわりに回転させるヘッドモータ18とを有している。円盤ヘッド12の軸心Oは、基板保持部1に保持されたウェハWの表面と平行であり、かつウェハWの接線方向に対して垂直である。円盤ヘッド12は、ヘッドモータ18の駆動軸に連結されている。ヘッドモータ18は所定の速度で円盤ヘッド12を回転させるように構成されている。
【0016】
ヘッドモータ18は、基台25に固定されている。ニップローラー14は、軸受アーム26によって回転可能に保持されており、軸受アーム26は、ニップローラー付勢装置としてのエアシリンダ20に保持されている。このエアシリンダ20は、軸受アーム26を介してニップローラー14を円盤ヘッド12の中心に向かって付勢するように構成されている。ニップローラー付勢装置として、エアシリンダ20に代えてばねを使用してもよい。
【0017】
エアシリンダ20は、旋回アーム32に保持されている。旋回アーム32は、ニップローラー移動装置としての旋回モータ29の回転軸に連結されている。この旋回モータ29は、基台25に固定されている。旋回モータ29の回転軸は、円盤ヘッド12の軸心Oと一直線上に並んでいる。したがって、旋回モータ29を駆動すると、ニップローラー14は円盤ヘッド12の外周面に沿って軸心Oの周りを移動する。ニップローラー14の軸心は円盤ヘッド12の軸心Oと平行である。
【0018】
基台25は、ウェハWの接線方向と平行な方向に延びる水平リニアガイド30によって支持されており、この水平リニアガイド30によって基台25の移動はウェハWの接線方向と平行な方向に制限される。ヘッドモータ18および旋回モータ29は基台25に固定されているので、円盤ヘッド12、ニップローラー14、ヘッドモータ18、および旋回モータ29は基台25とともに移動可能である。ウェハWの上から見た時に、円盤ヘッド12およびニップローラー14はウェハWの接線上に位置している。
【0019】
研磨ユニット7は、研磨テープ5の両端部をそれぞれ保持した第1のテンションリール41および第2のテンションリール42と、第1のテンションリール41および第2のテンションリール42を互いに反対方向に回転させるトルクを発生する第1のテンションモータ43および第2のテンションモータ44をさらに有している。第1のテンションリール41および第2のテンションリール42は、円盤ヘッド12の上方に配置されている。
【0020】
研磨テープ5は、第1のテンションリール41から円盤ヘッド12を経由して第2のテンションリール42に延びている。第1のテンションリール41および第2のテンションリール42には、これらテンションリール41,42を互いに反対方向に回転させるトルクが加えられているので、研磨テープ5にはテンションが与えられる。第1および第2のテンションリール41,42と円盤ヘッド12との間には、第1のガイドローラー47および第2のガイドローラー48が配置されており、第1および第2のテンションリール41,42と円盤ヘッド12との間を延びる研磨テープ5を支持している。
【0021】
研磨テープ5は、円盤ヘッド12の外周面に沿って湾曲し、この湾曲した部分がウェハWに接触される。図11に示す押圧部材100の平坦面で研磨テープ101をウェハWに押し付ける場合に比べて、ウェハWに接触している研磨テープ5と円盤ヘッド12の外周面との間には比較的大きな静止摩擦が働く。したがって、ウェハWの研磨中に研磨テープ5が所定の位置からずれることを防止することができる。円盤ヘッド12に研磨テープ5を保持させるために、研磨テープ5を真空吸引するための真空吸引孔を円盤ヘッド12の外周面に形成してもよい。
【0022】
研磨テープ5の一方の面は、砥粒を保持する研磨面を構成し、他方の面(すなわち裏面)は円盤ヘッド12の外周面に支持されている。円盤ヘッド12の外周面は、研磨テープ5の幅よりも広い幅を有してもよい。研磨テープ5の内側縁部(ウェハ側端部または基板側縁部)の位置は、円盤ヘッド12の縁部の位置に一致していることが好ましい。ニップローラー14は、研磨テープ5の裏面を円盤ヘッド12の外周面に押し付けることによって研磨テープ5を円盤ヘッド12の外周面に沿って湾曲させ、研磨テープ5と円盤ヘッド12との接触面積を増加させる。研磨テープ5は、ニップローラー14と円盤ヘッド12との間に挟まれる。
【0023】
研磨テープ5は、円盤ヘッド12の外周面に沿って湾曲し、さらにニップローラー14によって円盤ヘッド12の外周面上に巻き付けられる。研磨テープ5の裏面と円盤ヘッド12の外周面との間には大きな静止摩擦が働き、これによって研磨テープ5の位置ずれを確実に防止することができる。円盤ヘッド12の外周面に接触する研磨テープ5の長さ、すなわち研磨テープ5と円盤ヘッド12との接触面積は、ニップローラー14の位置に従って変わる。ニップローラー移動装置として機能する旋回モータ29は、円盤ヘッド12の軸心Oを中心にニップローラー14を移動させることにより、円盤ヘッド12の外周面に接触する研磨テープ5の長さを変えることができる。
【0024】
静止摩擦を大きくするために、円盤ヘッド12の外周面に接触する研磨テープ5の長さは、円盤ヘッド12の全周の2分の1以上であることが好ましい。ニップローラー14は、研磨テープ5が円盤ヘッド12の少なくとも半周に亘って延びる位置に配置されていることが好ましい。図1に示す例では、ニップローラー14は、研磨テープ5が円盤ヘッド12の3/4周に亘って延びる位置に配置されている。
【0025】
第1のガイドローラー47は、円盤ヘッド12の軸心Oと平行に移動可能に構成されている。円盤ヘッド12の軸方向(すなわち軸心Oの延びる方向)における研磨テープ5の円盤ヘッド12に対する相対的な位置は、第1のガイドローラー47によって調整される。
【0026】
円盤ヘッド12がヘッドモータ18によって回転されると、研磨テープ5は、第1のテンションリール41から引き出され、円盤ヘッド12の回転と同期して円盤ヘッド12の周方向に進行し、そして第2のテンションリール42に巻き取られる。研磨テープ5は、第1のガイドローラー47、円盤ヘッド12、ニップローラー14、第2のガイドローラー48をこの順に経由して、第1のテンションリール41から第2のテンションリール42に進行する。
【0027】
図1に示すように、研磨ユニット7は、円盤ヘッド12およびニップローラー14をウェハWの接線方向に移動させるヘッド移動装置としてのエアシリンダ50をさらに有している。エアシリンダ50のピストンロッド51は、基台25(図2参照)に連結されている。上述したように、円盤ヘッド12およびニップローラー14は基台25とともに移動可能である。したがって、エアシリンダ50は、研磨テープ5が円盤ヘッド12の外周面上に支持された状態で、円盤ヘッド12およびニップローラー14をウェハWの接線方向に移動させる。円盤ヘッド12の軸心OがウェハWの接線方向と垂直な状態で円盤ヘッド12およびニップローラー14をウェハWの接線方向に移動させるヘッド移動装置として、エアシリンダ50に代えて、ボールねじとサーボモータとの組み合わせを使用してもよい。
【0028】
エアシリンダ50は、円盤ヘッド12をウェハWの接線方向に移動させることによって、円盤ヘッド12の外周面上の研磨テープ5をウェハWのエッジ部に接触させる。研磨テープ5は円盤ヘッド12の下端部分によってウェハWのエッジ部に押し付けられる。円盤ヘッド12の移動方向および回転方向は、研磨テープ5がウェハWのエッジ部の移動方向とは反対に移動する方向である。これは、ウェハWの研磨レートを上げるためである。
【0029】
ウェハWのエッジ部の研磨は、次のようにして行われる。ウェハWは基板保持部1によって水平に保持され、ウェハWの軸心まわりに回転される。ウェハWの中心部には研磨液供給ノズル10から研磨液(例えば純水)が供給される。ヘッドモータ18が円盤ヘッド12を所定の速度で回転させながら、エアシリンダ50は、研磨テープ5とともに円盤ヘッド12およびニップローラー14をウェハWの接線方向に移動させ、円盤ヘッド12の外周面上の研磨テープ5をウェハWのエッジ部に接触させる。エアシリンダ50が円盤ヘッド12を移動させるに従い、円盤ヘッド12の最下端部分は研磨テープ5をウェハWのエッジ部に押し付ける。ウェハWのエッジ部は研磨テープ5によって研磨され、図12に示すような段部がエッジ部に形成される。
【0030】
ウェハWの研磨中、研磨テープ5は円盤ヘッド12の外周面に沿って曲げられ、ニップローラー14によって円盤ヘッド12の外周面上に巻き付けられる。したがって、研磨テープ5の裏面と円盤ヘッド12の外周面との間には比較的大きな静止摩擦が働き、これによって研磨テープ5の位置ずれが防止される。したがって、研磨テープ5は、ウェハWのエッジ部に滑らかな垂直面(図12参照)を形成することができる。
【0031】
図3は、研磨テープ5がウェハWのエッジ部に接触したときの円盤ヘッド12とウェハWのエッジ部との相対位置を示す平面図であり、図4は、円盤ヘッド12が図3に示す位置にあるときに研磨テープ5によって研磨されたエッジ部の断面図である。図3に示すように、研磨テープ5は、円盤ヘッド12とともにウェハWの接線方向に移動する。したがって、図4に示すように、研磨テープ5はウェハWのエッジ部の最も外側の部分を研磨し、エッジ部に小さな段部を形成する。
【0032】
図5は、円盤ヘッド12をウェハWの接線方向にさらに移動させたときの円盤ヘッド12とウェハWのエッジ部との相対位置を示す平面図であり、図6は、円盤ヘッド12が図5に示す位置にあるときに研磨テープ5によって研磨されたエッジ部の断面図である。円盤ヘッド12がさらに移動すると、図6に示すように、研磨テープ5はウェハWのエッジ部のより内側の部分を研磨し、より大きな段部をエッジ部に形成する。
【0033】
図7は、ウェハWの上から見たときに円盤ヘッド12の軸心OがウェハWの半径方向に一致したときの、円盤ヘッド12とウェハWのエッジ部との相対位置を示す平面図であり、図8は、円盤ヘッド12が図7に示す位置にあるときに研磨テープ5によって研磨されたエッジ部の断面図である。研磨テープ5はウェハWのエッジ部の最も内側の部分を研磨し、図8に示すように、より大きな段部をエッジ部に形成する。
【0034】
図4図6,および図8に示すように、エッジ部の研磨は、該エッジ部の外側から内側に徐々に進行する。したがって、2種類の研磨テープを使用して、エッジ部の粗研磨と仕上げ研磨を実施することができる。すなわち、きめの粗い研磨面を有する第1の研磨テープでエッジ部を研磨して段部を形成し、きめの細かい研磨面を有する第2の研磨テープで段部をさらに研磨することで、滑らかな垂直面をエッジ部に形成することができる。
【0035】
図9は、2つの研磨ユニット7A,7Bを有する研磨装置を示す模式図である。図9に示す第1の研磨ユニット7Aおよび第2の研磨ユニット7Bは、図1および図2に示す研磨ユニット7と同一の構成を有しているが、説明の簡略化のために、図9では第1の研磨ユニット7Aおよび第2の研磨ユニット7Bの構成要素の一部は図示されていない。
【0036】
第1の研磨ユニット7Aおよび第2の研磨ユニット7Bは、基板保持部1に保持されたウェハWのエッジ部に沿って配列されている。図9に示す例では、第1の研磨ユニット7Aおよび第2の研磨ユニット7Bは、基板保持部1に保持されたウェハWを中心として対称に配置されている。第1の研磨ユニット7Aにはきめの粗い研磨面を有する第1の研磨テープ5Aが取り付けられており、第2の研磨ユニット7Bにはきめの細かい研磨面を有する第2の研磨テープ5Bが取り付けられている。
【0037】
ウェハWのエッジ部の研磨は、次のようにして行われる。ウェハWは基板保持部1によって水平に保持され、ウェハWの軸心まわりに回転される。ウェハWの中心部には研磨液供給ノズル10(図2参照)から研磨液が供給される。この状態で、第1の研磨ユニット7Aの円盤ヘッド12は、ウェハWの接線方向に移動し、第1の研磨テープ5AをウェハWのエッジ部に接触させる。第1の研磨テープ5Aは、第1の研磨ユニット7Aの円盤ヘッド12の外周面によってウェハWのエッジ部に押し付けられ、エッジ部に段部を形成する。
【0038】
第1の研磨テープ5AがウェハWのエッジ部に接触している間またはその後、第2の研磨ユニット7Bの円盤ヘッド12は、ウェハWの接線方向に移動し、第2の研磨テープ5BをウェハWのエッジ部に接触させる。第2の研磨テープ5Bは、第2の研磨ユニット7Bの円盤ヘッド12の外周面によって段部に押し付けられ、段部をさらに研磨する。
【0039】
第1の研磨テープ5Aは、きめの粗い研磨面を有する粗研磨テープであり、第2の研磨テープ5Bは、きめの細かい研磨面を有する仕上げ研磨テープである。本実施形態によれば、第1の研磨テープ5Aは高い研磨レート(除去レートともいう)でウェハWのエッジ部を研磨し、第2の研磨テープ5Bは、第1の研磨テープ5Aによって形成された段部の仕上げ研磨を行う。したがって、ウェハWの研磨レートを向上しつつ、段部の垂直面を滑らかにすることができる。
【0040】
3つ以上の研磨ユニット7を設けてもよい。この場合、表面粗さの異なる研磨面を有する3つ以上の研磨テープを用いてもよい。
【0041】
図10は、研磨装置の他の実施形態を示す側面図である。特に説明しない本実施形態の構成および動作は、図1および図2に示す実施形態と同じであるので、その重複する説明を省略する。図10に示すように、本実施形態の研磨ユニット7は、円盤ヘッド12、ニップローラー14、ヘッドモータ18、および旋回モータ29を上昇および下降させる昇降機構60を備えている。この昇降機構60は、水平リニアガイド30を支持する昇降テーブル62と、この昇降テーブル62を上昇および下降させる昇降アクチュエータ64とを備えている。昇降テーブル62は鉛直リニアガイド65に連結されている。この鉛直リニアガイド65は、昇降テーブル62の移動を鉛直方向に制限するように構成されている。
【0042】
昇降アクチュエータ64は、昇降テーブル62に回転可能に連結されたボールねじ67と、このボールねじ67を回転させるサーボモータ68とを備えている。サーボモータ68がボールねじ67を回転させると、昇降テーブル62が上昇または下降する。円盤ヘッド12、ニップローラー14、ヘッドモータ18、および旋回モータ29は、水平リニアガイド30および基台25を介して昇降テーブル62に連結されているので、昇降アクチュエータ64は、円盤ヘッド12、ニップローラー14、ヘッドモータ18、および旋回モータ29を一体に昇降および下降させることができる。このように構成された研磨ユニット7は、ウェハWの研磨量(すなわち、エッジ部に形成される段部の深さ)を精密に制御することができる。
【0043】
上述した実施形態は、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が本発明を実施できることを目的として記載されたものである。上記実施形態の種々の変形例は、当業者であれば当然になしうることであり、本発明の技術的思想は他の実施形態にも適用しうる。したがって、本発明は、記載された実施形態に限定されることはなく、特許請求の範囲によって定義される技術的思想に従った最も広い範囲に解釈されるものである。
【符号の説明】
【0044】
1 基板保持部
5,5A,5B 研磨テープ
7,7A,7B 研磨ユニット
10 研磨液供給ノズル
12 円盤ヘッド
14 ニップローラー
18 ヘッドモータ
20 エアシリンダ(ニップローラー付勢装置)
25 基台
26 軸受アーム
29 旋回モータ
30 水平リニアガイド
32 旋回アーム
41 第1のテンションリール
42 第2のテンションリール
43 第1のテンションモータ
44 第2のテンションモータ
47 第1のガイドローラー
48 第2のガイドローラー
50 エアシリンダ(ヘッド移動装置)
51 ピストンロッド
60 昇降機構
62 昇降テーブル
64 昇降アクチュエータ
65 鉛直リニアガイド
67 ボールねじ
68 サーボモータ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12