特許第6204881号(P6204881)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6204881
(24)【登録日】2017年9月8日
(45)【発行日】2017年9月27日
(54)【発明の名称】被処理体を処理する方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/3065 20060101AFI20170914BHJP
   G03F 7/40 20060101ALI20170914BHJP
   G03F 7/42 20060101ALI20170914BHJP
   H01L 21/683 20060101ALI20170914BHJP
【FI】
   H01L21/302 105A
   G03F7/40 521
   G03F7/42
   H01L21/68 R
【請求項の数】11
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-131631(P2014-131631)
(22)【出願日】2014年6月26日
(65)【公開番号】特開2016-9837(P2016-9837A)
(43)【公開日】2016年1月18日
【審査請求日】2016年5月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100122507
【弁理士】
【氏名又は名称】柏岡 潤二
(74)【代理人】
【識別番号】100169063
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 洋平
(72)【発明者】
【氏名】戸花 敏勝
(72)【発明者】
【氏名】楊 元
(72)【発明者】
【氏名】岡田 聡一郎
【審査官】 齊田 寛史
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/041958(WO,A1)
【文献】 特開2010−040822(JP,A)
【文献】 特開2014−053558(JP,A)
【文献】 特開2002−075965(JP,A)
【文献】 特開2004−289032(JP,A)
【文献】 特開2007−227496(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/3065
G03F 7/40
G03F 7/42
H01L 21/683
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理体を処理する方法であって、
プラズマ処理装置の処理容器内に設けられた静電チャックに対して被処理体を静電吸着する第1工程であり、該被処理体は、シリコンを含有する基板、該基板上に設けられた有機ポリマー層、及び、該有機ポリマー層上にネガトーンレジストからなるレジストマスクを有する、該第1工程と、
前記レジストマスクを介して前記有機ポリマー層をエッチングするよう、前記処理容器内において発生させた第1のガスのプラズマに前記被処理体を晒す第2工程と、
前記第2工程の後、前記処理容器内において第2のガスのプラズマを生成しつつ前記静電チャックから前記被処理体を脱着する第3工程と、
前記第3工程の後、前記レジストマスクを剥離する第4工程と、
前記第4工程の後、前記被処理体上に、第1のポリマー及び第2のポリマーを含み自己組織化可能なブロック・コポリマー層を形成する第5工程と、
前記ブロック・コポリマー層に前記第1のポリマーを含む第1の領域及び前記第2のポリマーを含む第2の領域を形成するよう前記被処理体を処理する第6工程と、
前記第6工程の後、前記プラズマ処理装置を用いて前記第2の領域をエッチングする第7工程と、
を含み、
前記第2のガスは、酸素ガス、又は、アルゴンガスよりも原子量の小さい希ガスと酸素ガスとの混合ガスであり、
前記第4工程は、アルカリ性溶液によって前記レジストマスクの剥離処理を行うステップと、前記有機ポリマー層に付着している有機残渣を紫外線の照射によって除去するステップとをこの順序で有する、方法。
【請求項2】
前記第4工程は、前記アルカリ性溶液によって前記レジストマスクの剥離処理を行うステップの後であり且つ前記有機残渣を紫外線の照射によって除去するステップの前に、
前記被処理体に残存する前記レジストマスクの一部を有機溶剤によって除去するステップを更に有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
被処理体を処理する方法であって、
プラズマ処理装置の処理容器内に設けられた静電チャックに対して被処理体を静電吸着する第1工程であり、該被処理体は、シリコンを含有する基板、該基板上に設けられた有機ポリマー層、及び、該有機ポリマー層上にポジトーンレジストからなるレジストマスクを有する、該第1工程と、
前記レジストマスクを介して前記有機ポリマー層をエッチングするよう、前記処理容器内において発生させた第1のガスのプラズマに前記被処理体を晒す第2工程と、
前記第2工程の後、前記処理容器内において第2のガスのプラズマを生成しつつ前記静電チャックから前記被処理体を脱着する第3工程と、
前記第3工程の後、前記レジストマスクを剥離する第4工程と、
前記第4工程の後、前記被処理体上に、第1のポリマー及び第2のポリマーを含み自己組織化可能なブロック・コポリマー層を形成する第5工程と、
前記ブロック・コポリマー層に前記第1のポリマーを含む第1の領域及び前記第2のポリマーを含む第2の領域を形成するよう前記被処理体を処理する第6工程と、
前記第6工程の後、前記プラズマ処理装置を用いて前記第2の領域をエッチングする第7工程と、
を含み、
前記第2のガスは、酸素ガス、又は、アルゴンガスよりも原子量の小さい希ガスと酸素ガスとの混合ガスであり、
前記第4工程は、有機溶剤によって前記レジストマスクの剥離処理を行うステップと、前記有機ポリマー層に付着している有機残渣を紫外線の照射によって除去するステップとをこの順序で有する、方法。
【請求項4】
前記第4工程は、前記有機溶剤によって前記レジストマスクの剥離処理を行うステップの後であり且つ前記有機残渣を紫外線の照射によって除去するステップの前に、
前記被処理体に残存する前記レジストマスクの一部をアルカリ性溶液によって除去するステップを更に有する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記有機ポリマー層は、ポリスチレン、又はポリスチレンとポリメチルメタクリレートとのランダム共重合体を含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記アルカリ性溶液は、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド水溶液である、請求項1,2,4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記有機溶剤は、酢酸ブチルである、請求項2〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記有機溶剤は、4−メチル−2−ペンタノールである、請求項2〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記紫外線の波長は330nm以下である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記紫外線の波長は200nm以下である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記紫外線の照射が行われる処理雰囲気の酸素濃度は1000体積ppm以下である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、被処理体を処理する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体素子といったデバイスの更なる微細化を実現するために、従来のリソグラフィ技術に代わる技術として、秩序パターンを自発的に組織化する自己組織化(self−assembled)材料を用いて、微細パターンを形成する技術、即ち自己組織化技術が着目されている。
【0003】
自己組織化技術では、基板上に有機ポリマー層を形成し、当該有機ポリマー層上にレジストマスクを形成することによって、被処理体が準備される。次いで、プラズマ処理装置内において生成されたガスのプラズマに被処理体が晒される。これにより、有機ポリマー層がエッチングされる。次いで、レジストマスクが剥離される。その後、自己組織化可能なブロック・コポリマー層が被処理体上に形成され、当該ブロック・コポリマー層に含まれる二種のポリマーに自己組織化を生じさせる処理が行われる。これにより、ブロック・コポリマー層に二つの領域が形成される。最後に、ブロック・コポリマー層の二つの領域のうち一方を選択的にエッチングすることにより、パターンが形成される。
【0004】
上述した自己組織化技術では、レジストマスクを剥離するために、有機ポリマー層のエッチングの後、被処理体はプラズマ処理装置の静電チャックから脱着され、当該プラズマ処理装置から別の装置に移される。
【0005】
ところで、被処理体の静電チャックからの脱着時には、通常、プラズマ処理装置の処理容器内においてアルゴンガスなどの希ガスのプラズマが生成される。この希ガスのプラズマに被処理体を晒しつつ、被処理体を除電することにより、被処理体に加わる応力を低減しつつ、当該被処理体を静電チャックから脱着することが可能となる。このような除電については、下記の特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−273093号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、希ガスのプラズマ中で被処理体の除電が行われると、有機ポリマー層に異物が付着する。異物は、基板材料、例えばシリコンを含有する。当該異物は、レジストマスクの剥離後にも残渣として残される。有機ポリマー層は後述するブロック・コポリマー層の下地となる層であるので、有機ポリマー層上に残渣が存在する状態で、ブロック・コポリマー層のエッチングが行われると、形成されるパターンが初期のパターンとは異なるものとなる。
【0008】
したがって、被処理体の処理において、プラズマ処理装置の静電チャックからの除電による残渣の発生を抑制することが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一側面においては、被処理体を処理する方法が提供される。この方法は、(a)プラズマ処理装置の処理容器内に設けられた静電チャックに対して被処理体を静電吸着する第1工程であり、被処理体は、シリコンを含有する基板、基板上に設けられた有機ポリマー層、及び、有機ポリマー層上にレジストマスクを有する、該第1工程と、(b)レジストマスクを介して有機ポリマー層をエッチングするよう、処理容器内において発生させた第1のガスのプラズマに被処理体を晒す第2工程と、(c)第2工程の後、第2のガスのプラズマを生成しつつ静電チャックから被処理体を脱着する第3工程と、(d)第3工程の後、レジストマスクを剥離する第4工程と、(e)第4工程の後、被処理体上に、第1のポリマー及び第2のポリマーを含み自己組織化可能なブロック・コポリマー層を形成する第5工程と、(f)ブロック・コポリマー層に第1のポリマーを含む第1の領域及び第2のポリマーを含む第2の領域を形成するよう被処理体を処理する第6工程と、(g)第6工程の後、プラズマ処理装置を用いて第2の領域をエッチングする工程と、を含む。この方法では、第2のガスは、酸素ガス、又は、アルゴンガスよりも原子量の小さい希ガスと酸素ガスの混合ガスとの混合ガスである。
【0010】
上記方法では、酸素ガス、又は、アルゴンガスよりも原子量の小さい希ガスと酸素ガスのプラズマ中で静電チャックから被処理体が脱着されるので、有機ポリマー層上に残渣が発生することが抑制され得る。また、上記形態の方法によれば、残渣の量が低減されたポリマー層を下地として用いてブロック・コポリマー層を形成するので、当該ブロック・コポリマー層から高精度にパターンを形成することが可能となる。
【0011】
一形態においては、有機ポリマー層は、スチレン重合体、又はスチレンとメタクリル酸メチルとのランダム共重合体を含んでいてもよい。
【発明の効果】
【0012】
以上説明したように、被処理体の処理において、プラズマ処理装置の静電チャックからの除電による残渣の発生を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】一実施形態に係る被処理体を処理する方法を示す流れ図である。
図2図1に示す方法の各工程により作成される生産物を示す断面図である。
図3】プラズマ処理装置の一実施形態を概略的に示す図である。
図4】ネガトーンレジストを使用した場合の工程ST4の一例を示す流れ図である。
図5】ポジトーンレジストを使用した場合の工程ST4の一例を示す流れ図である。
図6】別の実施形態に係る被処理体を処理する方法を示す流れ図である。
図7図6に示す方法の各工程により作成される生産物を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して種々の実施形態について詳細に説明する。なお、各図面において同一又は相当の部分に対しては同一の符号を附すこととする。
【0015】
図1は、一実施形態に係る被処理体を処理する方法を示す流れ図である。図1に示す方法MT1は、工程ST1〜工程ST7を含んでいる。また、方法MT1は、工程STaを含んでいる。図2は、図1に示す方法の各工程により作成される生産物を示す断面図である。以下、図1と共に、図2を参照する。
【0016】
図1に示す方法の処理対象である被処理体(以下、「ウエハ」という)は、初期的には図2の(a)に示す断面構造を有している。図2の(a)に示すウエハWは、基板Sb、被エッチング層EL、及び、有機ポリマー層OLを含んでいる。基板Sbは、例えばシリコンから構成されている。被エッチング層ELは、基板Sb上に設けられている。被エッチング層ELは、シリコンを含有する層である。被エッチング層ELは、例えばSiN層、シリコン酸化層、又はシリコンを含有するレジスト層であり得る。
【0017】
有機ポリマー層OLは、被エッチング層EL上に設けられている。有機ポリマー層OLは、例えば、ポリスチレンから構成されている。有機ポリマー層OLは、例えば、ポリスチレンの希釈溶液をスピンコートといった方法により被エッチング層EL上に塗布して膜を形成し、次いで、膜形成後のウエハに熱処理を施して架橋反応を生じさせることにより、形成される。熱処理の温度は、例えば200℃である。
【0018】
次いで、有機ポリマー層OLの上に、レジスト材料が塗布される。レジスト材料は、一実施形態では、ネガトーンレジスト又はポジトーンレジストであり得る。なお、ネガトーンレジストとは露光した部分が現像液に溶解しない特性に変化するレジスト材料である。ネガトーンレジスト用の現像液として、例えば、酢酸ブチル、4−メチル−2−ペンタノールなどの有機溶剤が使用され得る。他方、ポジトーンレジストとは露光した部分が現像液に溶解する特性に変化するレジスト材料である。ポジトーンレジスト用の現像液として、例えば、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAH)水溶液が使用され得る。フォトリソグラフィ技術によってレジスト材料をパターニングすることにより、図2の(b)に示すように、有機ポリマー層OL上にレジストマスクRM1が形成される。
【0019】
このように準備されたウエハWに対して、方法MT1では、まず、工程ST1(第1工程)が行われる。工程ST1では、ウエハWがプラズマ処理装置内に搬送されて、静電チャックに静電吸着される。図3は、方法MT1の実施に用いることが可能なプラズマ処理装置の一実施形態を概略的に示す図である。図3に示すプラズマ処理装置1は、容量結合型の平行平板プラズマ処理装置であり、略円筒形の処理容器10を有している。処理容器10は接地されている。処理容器10の内面には、アルマイト処理(陽極酸化処理)が施されている。
【0020】
処理容器10の底部には、セラミックなどの絶縁板12を介して円柱状のサセプタ支持台14が配置されている。サセプタ支持台14の上には、例えばアルミニウムから構成されたサセプタ16が設けられている。
【0021】
サセプタ16の上面には、ウエハWを静電吸着力で保持するための静電チャック18が設けられている。この静電チャック18は、導電膜からなるチャック用の電極20を一対の絶縁層又は絶縁シートの間に挟み込んだものである。電極20には直流電源22がスイッチ24を介して電気的に接続されている。このプラズマ処理装置1では、直流電源22からの直流電圧により、ウエハWを静電気力で静電チャック18に吸着保持することができる。
【0022】
静電チャック18の周囲且つサセプタ16上には、エッチングの面内均一性を向上させるためのフォーカスリング26が配置されている。フォーカスリング26は、例えば、シリコン製である。また、サセプタ16及びサセプタ支持台14の側面には、例えば石英製の円筒状の内壁部材28が貼り付けられている。
【0023】
サセプタ支持台14の内部には、冷媒室30が設けられている。冷媒室30は、例えば、サセプタ支持台14内において環状に延在している。この冷媒室30には、外付けのチラーユニットから配管32a,32bを介して所定温度の冷媒cw、例えば冷却水が循環供給される。プラズマ処理装置1では、冷媒cwの温度を制御することにより、サセプタ16上のウエハWの温度が制御される。さらに、伝熱ガス供給機構(図示せず)からの伝熱ガス、例えばHeガスが、ガス供給ライン34を介して静電チャック18の上面とウエハWの裏面との間に供給される。
【0024】
また、サセプタ16には、プラズマ生成用の第1高周波電源36、イオン引き込み用の第2高周波電源38がそれぞれ整合器40,42及び給電棒44,46を介して電気的に接続されている。
【0025】
第1高周波電源36は、プラズマ生成に適した周波数、例えば40MHzの第1周波数の電力を発生する。なお、第1周波数は、60MHz或いは100MHzといった周波数であってもよい。一方、第2高周波電源38は、サセプタ16上のウエハWにプラズマのイオンを引き込むのに適した比較的低周波の周波数、例えば13MHzの第2周波数の電力を発生する。
【0026】
サセプタ16の上方には、当該サセプタと平行に対面するように上部電極48が設けられている。この上部電極48は、電極板50及び当該電極板50を着脱可能に支持する電極支持体52から構成されている。電極板50には、多数のガス孔50aが形成されている。電極板50は、例えば、Si、SiCといった半導体材料から構成され得る。また、電極支持体52は、例えば、アルミニウムから構成され、その表面にはアルマイト処理が施されている。これら電極板50及び電極支持体52は、処理容器10の上部にリング状の絶縁体54を介して取り付けられている。絶縁体54は、例えば、アルミナから構成され得る。かかる上部電極48とサセプタ16との間には、プラズマ生成空間、即ち、処理空間Sが設定される。
【0027】
電極支持体52には、ガスバッファ室56が形成されている。また、電極支持体52には、ガスバッファ室56と電極板50のガス孔50aとを連通させる多数のガス通気孔52aが形成されている。ガスバッファ室56には、ガス供給管58を介してガス供給源60が接続されている。ガス供給管58には、マスフローコントローラ(MFC)62及び開閉バルブ64が設けられている。ガス供給源60から処理ガスがガスバッファ室56に導入されると、電極板50のガス孔50aからサセプタ16上のウエハWに向けて処理空間Sに処理ガスがシャワー状に噴出される。このように、上部電極48は処理空間Sに処理ガスを供給するためのシャワーヘッドを兼ねている。
【0028】
サセプタ16及びサセプタ支持台14と処理容器10の側壁との間に形成される環状の空間は、排気空間となっている。この排気空間の底には、処理容器10の排気口72が設けられている。排気口72には、排気装置76が接続されている。排気装置76は、ターボ分子ポンプなどの真空ポンプを有しており、処理容器10の室内、特に処理空間Sを所望の真空度まで減圧できるようになっている。また、処理容器10の側壁にはウエハWの搬入出口78を開閉するゲートバルブ80が取り付けられている。
【0029】
制御部88は、CPU(Central Processing Unit),ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)を有し、CPUは、例えばRAMに記憶された各種レシピに従ってプロセスの実行を制御する。
【0030】
このプラズマ処理装置1においてウエハWを処理する際には、先ずゲートバルブ80が開口され、搬送アーム上に保持されたウエハWが処理容器10内に搬入される。そして、ウエハWは、静電チャック18上に載置される。ウエハWの搬入後、ゲートバルブ80が閉じられ、ガス供給源60から処理ガスが所定の流量及び流量比で処理容器10内に導入され、排気装置76により処理容器10内の圧力が設定値に減圧される。さらに、第1高周波電源36から高周波電力がサセプタ16に供給され、必要に応じて第2高周波電源38からも高周波バイアス電力がサセプタ16に供給される。これにより、シャワーヘッドからシャワー状に導入された処理ガスが励起されてプラズマが生成される。このプラズマ中のラジカル、イオンといった活性種によってウエハWが処理される。
【0031】
再び図1及び図2を参照する。方法MT1では、工程ST1において静電チャックにウエハWが静電吸着された後、工程ST2(第2工程)が実行される。工程ST2では、図2の(c)に示すように、有機ポリマー層OLがエッチングされる。この工程ST2では、プラズマ処理装置1内で第1のガスのプラズマが生成される。工程ST2では、当該プラズマにウエハWが晒されることにより、レジストマスクRM1によって覆われていない領域の有機ポリマー層OLがエッチングされる。
【0032】
工程ST2をプラズマ処理装置1を用いて実施する場合には、ガス供給源60から第1のガスが処理容器10内に供給され、排気装置76により処理容器10内の圧力が設定値に減圧される。また、第1高周波電源36から高周波電力がサセプタ16に供給される。なお、必要に応じて、第2高周波電源38からの高周波バイアス電力がサセプタ16に供給されてもよい。工程ST2において用いられる第1のガスは、有機ポリマー層OLをエッチングするための処理ガスであるので、酸素を含み得る。一例では、第1のガスは、酸素ガス(Oガス)である。また、第1のガスは、窒素ガス及び水素ガスを含んでいてもよい。また、第1のガスは、ネオンガス及びヘリウムガスを更に含んでいてもよい。
【0033】
方法MT1では、次いで、工程ST3(第3工程)が実行される。工程ST3では、後述する工程ST4(第4工程)を別の装置において実行するために、静電チャックからウエハWが脱着される。この工程ST3では、第2のガスのプラズマが生成される。第2のガスは、酸素ガス(Oガス)、又は、酸素ガスとアルゴンよりも原子量の小さい希ガス、例えば、Heガス若しくはNeガスの混合ガスである。工程ST3では、第2のガスのプラズマにウエハWを晒しつつ当該ウエハWを脱着する。これにより、ウエハWを除電し、脱着時にウエハWに加わり得る応力を低減することが可能となる。
【0034】
工程ST3をプラズマ処理装置1を用いて実施する場合には、ガス供給源60から第2のガスが処理容器10内に供給され、排気装置76により処理容器10内の圧力が設定値に減圧される。また、第1高周波電源36から高周波電力がサセプタ16に供給される。なお、工程ST3では、第2高周波電源38からの高周波バイアス電力はサセプタ16に供給されない。また、工程ST3では、静電チャック18に対する直流電圧の印加が停止される。これにより、ウエハWを除電し、静電チャック18からウエハWを脱着することができる。
【0035】
方法MT1では、次いで、プラズマ処理装置とは別の装置にウエハWが搬送されて、当該別の装置において工程ST4が実行される。工程ST4では、図2の(d)に示すように、レジストマスクRM1が剥離される。
【0036】
レジストマスクRM1がネガトーンレジストからなる場合、図4に示すように、工程TS4は、ステップTS4aを有する。ステップTS4aはアルカリ性溶液(例えばTMAH水溶液)を用いてレジストマスクRM1の全部又は大部分を剥離するステップである。なお、例えば有機ポリマー層OLの上にレジストマスクRM1を形成する際、露光量が若干足りなかった部分がレジストマスクRM1に存在していると、アルカリ性溶液による剥離処理後に当該部分がウエハW上に残存し得る。当該部分を確実に除去するため、ステップTS4は以下の2つのステップST4b,ST4cの少なくとも一方を更に有してもよい。図4には、ステップST4bの後にステップST4cが実施される場合を例示したが、ステップST4cの後にステップST4bが実施されてもよい。
・残存するレジストマスクRM1の一部を有機溶剤(例えば酢酸ブチル又は4−メチル−2−ペンタノール)によって除去するステップST4b。
・有機残渣を紫外線の照射によって除去するステップST4c(UVアッシング)。
【0037】
レジストマスクRM1がポジトーンレジストからなる場合、図5に示すように、工程ST4は、ステップTS4dを有する。ステップTS4dは有機溶剤(例えば酢酸ブチル又は4−メチル−2−ペンタノール)を用いてレジストマスクRM1の全部又は大部分を剥離するステップである。なお、例えば有機ポリマー層OLの上にレジストマスクRM1を形成する際、露光量が若干足りなかった部分がレジストマスクRM1に存在していると、有機溶剤による剥離処理後に当該部分がウエハW上に残存し得る。当該部分を確実に除去するため、ステップTS4は以下の2つのステップST4e,ST4fの少なくとも一方を更に有してもよい。図5には、ステップST4eの後にステップST4fが実施される場合を例示したが、ステップST4fの後にステップST4eが実施されてもよい。
・残存するレジストマスクRM1の一部をアルカリ性溶液(例えばTMAH水溶液)によって除去するステップST4e。
・有機残渣を紫外線の照射によって除去するステップST4f(UVアッシング)。
【0038】
ステップST4c,ST4f(UVアッシング)は、電子走査顕微鏡(SEM)では確認できないような数nmレベルの有機残渣を取り除くためのステップである。ステップST4c,ST4fでは、紫外線によって有機物の結合を切るとともに、生成される活性酸素及びオゾンなどにより有機物を酸化させ、二酸化炭素などの形で気化させることで有機残渣を除去する。つまり、有機残渣がドライ洗浄によって除去される。ステップST4c,ST4fにおいて使用する紫外線の波長は、好ましくは330nm以下であり、より好ましくは200nm以下である。より具体的には波長254nm、222nm、193nm又は172nmの紫外線が使用でき、これらのうち活性酸素及びオゾンを効率よく生成し得る観点から、波長193nm又は172nmの紫外線が更に好ましい。
【0039】
ステップST4c,ST4fにおける処理雰囲気は低酸素雰囲気であることが好ましい。より具体的には当該処理雰囲気の酸素濃度は1000体積ppm以下であることが好ましい。酸素濃度が1000体積ppm以下であれば、中性膜NL及び有機ポリマー層OL(後述のブロック・コポリマー層BCLの下地)に対する活性酸素によるダメージを十分に抑制できる。なお、酸素濃度の下限値は、例えば1体積ppmとすることができる。
【0040】
方法MT1では、次いで、工程STaが実行される。工程STaでは、図2の(e)に示すように、中性膜NLが形成される。中性膜NLは、有機ポリマー層OLの開口内、且つ、被エッチング層EL上に設けられる。この中性膜NLは、例えば、スチレンとメタクリル酸メチルのランダム共重合体である。中性膜NLは、原材料をウエハW上にスピンコートといった方法で塗布し、次いで、原材料が塗布されたウエハWに熱処理を施し、しかる後に、形成された膜の過剰な部分を除去することによって、形成される。なお、熱処理の温度は、例えば200℃である。また、形成された膜の過剰な部分は、例えば、トルエンによって除去され得る。
【0041】
方法MT1では、次いで、工程ST5(第5工程)が実行される。工程ST5では、図2の(f)に示すような生産物が得られる。第5工程ST5では、有機ポリマー層OL及び中性膜NL上にブロック・コポリマー層が形成される。ブロック・コポリマーは、自己組織化(Self−Assembled)ブロック・コポリマーであり、第1のポリマー及び第2のポリマーを含んでいる。ブロック・コポリマーは、例えばポリスチレン−ブロック−ポリメチルメタクリレート(PS−b−PMMA)である。PS−b−PMMAは、第1のポリマーとしてポリスチレン(PS)を含み、第2のポリマーとしてポリメチルメタクリレート(PMMA)を含む。ブロック・コポリマー層は、例えば、スピンコート法といった種々の方法により形成され得る。
【0042】
方法MT1では、次いで、工程ST6(第6工程)が実行される。この工程ST6では、ブロック・コポリマー層の自己組織化による相分離のための処理が行われる。これにより、図7の(f)に示すように、ブロック・コポリマー層BCLの相分離が生じる。一実施形態では、第1のポリマー(PS)の長さと第2のポリマー(PMMA)の長さとが略同じであり、二つのポリマーの相互作用(斥力)も同程度であることから、第1のポリマー(PS)と第2のポリマー(PMMA)とは、自己組織化してライン状に相分離する。このため、図2の(f)に示すように、第1のポリマー(PS)がライン状の第1の領域R1を形成し、第1の領域間において第2のポリマー(PMMA)がライン状の第2の領域R2を形成する。また、有機ポリマー層OLは、非極性膜と呼ばれ、ポリスチレン(PS)との相性が良好である。それ故、第1の領域R1は、有機ポリマー層OL上に形成される傾向を有する。なお、相分離のための熱処理の温度は、例えば200℃〜300℃の範囲内の温度である。
【0043】
最後に、方法MT1では、工程ST7(第7工程)が実行される。工程ST7では、処理ガスのプラズマにウエハWが晒されることによって、第2の領域R2が選択的にエッチングされる。また、工程ST7では、第2の領域R2の直下の中性膜NLもエッチングされる。これにより、図2の(g)に示すパターンが被エッチング層EL上に形成される。
【0044】
プラズマ処理装置1を用いて工程ST7を実行する場合には、ガス供給源60から処理ガスが処理容器10内に供給され、排気装置76により処理容器10内の圧力が設定値に減圧される。また、第1高周波電源36から高周波電力がサセプタ16に供給される。なお、工程ST7では、必要に応じて、第2高周波電源38からの高周波バイアス電力がサセプタ16に供給されてもよい。工程ST7において用いられる処理ガスは、第2のポリマー(PMMA)を含む第2の領域R2及びその直下の中性膜NLをエッチングするための処理ガスであるので、酸素ガスを含み得る。また、当該処理ガスは、アルゴンガスといった希ガス、或いは、窒素ガスといった不活性ガスを更に含んでいてもよい。
【0045】
以上説明した方法MT1によれば、工程ST3のウエハWの脱着時に第2のガスのプラズマにウエハWが晒されることによって、ウエハWが除電される。この第2のガスは、酸素ガス、又は、酸素ガスとアルゴンよりも原子量が小さい希ガスの混合ガスである。このような第2のガスのプラズマに晒しつつウエハWを除電すると、比較的原子量の大きいアルゴンガスといった希ガスのプラズマと比較して、被エッチング層ELに対するダメージが抑制される。したがって、方法MT1によれば、除電時に被エッチング層ELからの異物が有機ポリマー層OL上に付着することを抑制することができる。故に、方法MT1によれば、有機ポリマー層OL上に残渣が発生することが抑制される。また、残渣の量が低減された有機ポリマー層OLを下地としてブロック・コポリマー層BCLを形成するので、当該ブロック・コポリマー層BCLから高精度にパターンを形成することが可能となる。
【0046】
以下、別の実施形態について説明する。図6は、別の実施形態に係る被処理体を処理する方法を示す流れ図である。図7は、図6に示す方法の各工程により作成される生産物を示す断面図である。
【0047】
図6に示す方法MT2の処理対象であるウエハW2は、初期的には図7の(a)に示す断面構造を有している。具体的に、ウエハW2は、基板Sb、及び被エッチング層EL、及び、有機ポリマー層OL2を含んでいる。基板Sb及び被エッチング層ELは、ウエハWの基板Sb及び被エッチング層ELとそれぞれ同様の基板及び被エッチング層である。有機ポリマー層OL2は、被エッチング層EL上に設けられている。有機ポリマー層OL2は、ウエハWの中性膜NLと同様の材料から構成されている。有機ポリマー層OL2の形成方法は、中性膜NLの形成方法と同様である。
【0048】
次いで、有機ポリマー層OL2の上に、レジスト材料が塗布される。レジスト材料は、方法MT1と同様、ネガトーンレジスト又はポジトーンレジストであり得る。レジスト材料をフォトリソグラフィ技術によってパターニングすることにより、図7の(b)に示すように、有機ポリマー層OL2上にレジストマスクRM2が形成される。
【0049】
方法MT2では、このように準備されたウエハW2が、工程ST1においてプラズマ処理装置の静電チャックに静電吸着される。この工程ST1は、方法MT1の工程ST1と同様であり、プラズマ処理装置1を用いて実行され得る。
【0050】
次いで、方法MT2では、工程ST2(第2工程)が実行される。この工程ST2では、有機ポリマー層OL2がエッチングされ、ウエハW2は図7の(c)に示す状態となる。なお、工程ST2のエッチングのための処理条件は、方法MT1の工程ST2の処理条件と同様である。次いで、方法MT2では、方法MT1と同様に工程ST3が実行され、ウエハW2が静電チャックから脱着され、別の装置に搬送される。
【0051】
そして、方法MT2では、方法MT1と同様に工程ST4が実行され、レジストマスクRM2が剥離される。すなわち、レジストマスクRM2がネガトーンレジストからなる場合、工程ST4は、方法MT1と同様、ステップTS4aと、ステップTS4b及びステップTS4cの少なくとも一方とを有してもよい(図4参照)。レジストマスクRM2がポジトーンレジストからなる場合、工程ST4は、方法MT1と同様、ステップTS4dと、ステップTS4e及びステップTS4fの少なくとも一方とを有してもよい(図5参照)。
【0052】
ステップST4c,ST4f(UVアッシング)の条件(紫外線の波長及び処理雰囲気の酸素濃度)は、方法MT1と同様の条件とすることができる。これらの条件を満たすことにより、ポリスチレン層PSL及び有機ポリマー層OL2(ブロック・コポリマー層BCLの下地)に対する活性酸素によるダメージを十分に抑制できる。
【0053】
方法MT2では、次いで、工程STbが実行される。工程STbでは、ポリスチレン層PSLが形成される。具体的に、工程STbでは、原材料がスピンコート法といった方法により、被エッチング層EL及び有機ポリマー層OL2上に塗布される。次いで、ウエハW2に熱処理が施される。熱処理の温度は、例えば200℃である。これにより、ウエハW2は、図7の(e)に示す状態になる。次いで、ポリスチレン層PSLの過剰な部分が除去される。これにより、ウエハW2は図7の(f)に示す状態となる。なお、ポリスチレン層PSLの過剰な部分の除去には、例えばトルエンが用いられる。
【0054】
次いで、方法MT2では、図7の(f)に示すウエハW2上に対して工程ST5が実行される。さらに、方法MT2では、工程ST5の後に工程ST6が実行され、工程ST6の後に工程ST7が形成される。方法MT2の工程ST5、工程ST6、及び工程ST7は、方法MT1の工程ST5、ST6、及び工程ST7と同様である。
【0055】
この方法MT2においても、工程ST3のウエハW2の脱着時に第2のガスのプラズマにウエハWが晒されることによって、ウエハWが除電される。したがって、方法MT2によれば、有機ポリマー層OL2上に残渣が発生することが抑制される。また、残渣の量が低減された有機ポリマー層OL2を下地としてブロック・コポリマー層BCLを形成するので、当該ブロック・コポリマー層BCLから高精度にパターンを形成することが可能となる。
【0056】
以上、実施形態について説明してきたが、上述した実施形態に限定されることなく種々の変形態様を構成可能である。例えば、プラズマ処理装置は、容量結合型のプラズマ処理装置に限定されるものではない。例えば、これらの工程には、誘導結合型のプラズマ処理装置、又は、マイクロ波といった表面波をプラズマ源とするプラズマ処理装置を用いることが可能である。
【符号の説明】
【0057】
1…プラズマ処理装置、10…処理容器、16…サセプタ、18…静電チャック、36…第1高周波電源、38…第2高周波電源、48…上部電極、W…ウエハ、Sb…基板、EL…被エッチング層、OL…有機ポリマー層、RM1…レジストマスク、NL…中性膜、BCL…ブロック・コポリマー層、R1…第1の領域、R2…第2の領域、W2…ウエハ、OL2…有機ポリマー層、RM2…レジストマスク、PSL…ポリスチレン層。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7