(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6204917
(24)【登録日】2017年9月8日
(45)【発行日】2017年9月27日
(54)【発明の名称】アルゴンガス希釈によるシリコン含有層を堆積するための方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/205 20060101AFI20170914BHJP
H01L 21/316 20060101ALI20170914BHJP
H01L 29/786 20060101ALI20170914BHJP
H01L 21/336 20060101ALI20170914BHJP
C23C 16/24 20060101ALI20170914BHJP
C23C 16/42 20060101ALI20170914BHJP
C23C 16/56 20060101ALI20170914BHJP
H01L 21/20 20060101ALI20170914BHJP
【FI】
H01L21/205
H01L21/316 X
H01L29/78 618B
H01L29/78 627G
H01L29/78 618A
H01L29/78 619A
H01L29/78 617V
C23C16/24
C23C16/42
C23C16/56
H01L21/20
【請求項の数】12
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2014-534591(P2014-534591)
(86)(22)【出願日】2012年9月24日
(65)【公表番号】特表2015-501078(P2015-501078A)
(43)【公表日】2015年1月8日
(86)【国際出願番号】US2012056928
(87)【国際公開番号】WO2013052298
(87)【国際公開日】20130411
【審査請求日】2015年8月28日
(31)【優先権主張番号】61/544,432
(32)【優先日】2011年10月7日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/611,532
(32)【優先日】2012年3月15日
(33)【優先権主張国】US
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】390040660
【氏名又は名称】アプライド マテリアルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】APPLIED MATERIALS,INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】100101502
【弁理士】
【氏名又は名称】安齋 嘉章
(72)【発明者】
【氏名】ワン クンフア
(72)【発明者】
【氏名】ワン ウェイジエ
(72)【発明者】
【氏名】チョイ ヤング ジン
(72)【発明者】
【氏名】チョー セオン−ミー
(72)【発明者】
【氏名】クイ イー
(72)【発明者】
【氏名】パーク べオム スー
(72)【発明者】
【氏名】チョイ スー ヤング
【審査官】
河合 俊英
(56)【参考文献】
【文献】
特開平11−102861(JP,A)
【文献】
特開2002−176180(JP,A)
【文献】
特開平05−062919(JP,A)
【文献】
特開2009−283777(JP,A)
【文献】
特開2011−139052(JP,A)
【文献】
特開平10−074835(JP,A)
【文献】
特開平08−288271(JP,A)
【文献】
特開昭63−228626(JP,A)
【文献】
特開2001−168100(JP,A)
【文献】
特開2003−289046(JP,A)
【文献】
特開2005−004183(JP,A)
【文献】
特開2002−198364(JP,A)
【文献】
特開2008−122956(JP,A)
【文献】
特開2011−176332(JP,A)
【文献】
特開2008−141119(JP,A)
【文献】
特開2011−141524(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2011/0108706(US,A1)
【文献】
特開2003−264198(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/205
C23C 16/24
C23C 16/42
C23C 16/56
H01L 21/20
H01L 21/316
H01L 21/336
H01L 29/786
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化ケイ素層を形成するための方法であって、
処理チャンバ内にシリコン系ガス、不活性ガス、及び酸素含有ガスを有するガス混合物を供給する工程であって、ガス混合物は、不活性ガスの基板の表面積当たりの体積流量が、シリコン系ガスの基板の表面積当たりの体積流量の約11倍〜約80倍であるガス混合物を供給する工程と、
ガス混合物を点火してプラズマ化するためにRF電力を印加する工程と、
基板上に酸化ケイ素層を形成する工程と、
酸化ケイ素層が基板上に形成された後の基板を処理チャンバ内で摂氏約450度〜摂氏約500度の温度に5分未満の間、インサイチューで熱処理する工程を含む方法。
【請求項2】
シリコン系ガスはシランを含む請求項1記載の方法。
【請求項3】
酸素含有ガスはO2を含む請求項2記載の方法。
【請求項4】
酸素含有ガスはN2Oを含む請求項2記載の方法。
【請求項5】
シリコン系ガスはTEOSを含む請求項1記載の方法。
【請求項6】
酸素含有ガスはN2Oを含む請求項5記載の方法。
【請求項7】
ガス混合物は、不活性ガスの基板の表面積当たりの体積流量が、酸素含有ガスの基板の表面積当たりの体積流量の約0.6倍〜約1.7倍である請求項1記載の方法。
【請求項8】
シリコン系ガスはシランを含む請求項7記載の方法。
【請求項9】
酸素含有ガスはO2又はN2Oを含む請求項7記載の方法。
【請求項10】
ガス混合物は、酸素含有ガスの基板の表面積当たりの体積流量が、シリコン系ガスの基板の表面積当たりの体積流量の約11倍〜約72倍である請求項7記載の方法。
【請求項11】
ガス混合物は、酸素含有ガスの基板の表面積当たりの体積流量が、シリコン系ガスの基板の表面積当たりの体積流量の約11倍〜約72倍である請求項1記載の方法。
【請求項12】
基板と、
基板上に配置され、実質的に水素を含まない酸化ケイ素層を含むゲート絶縁層と、
ゲート絶縁層上に配置され、InGaZnO、InGaZnON、ZnO、ZnON、ZnSnO、CdSnO、GaSnO、TiSnO、CuAlO、SrCuO、LaCuOS、GaN、InGaN、AlGaN、又はInGaAlNのうちの少なくとも1つを含むアクティブチャネルと、
アクティブチャネル上に配置されたソース・ドレイン電極と、
ソース・ドレイン電極層上に配置され、実質的に水素を含まない酸化ケイ素層を含むパッシベーション層を含み、実質的に水素を含まない酸化ケイ素層は、
処理チャンバ内にシリコン系ガス、不活性ガス、及び酸素含有ガスを有するガス混合物を供給する工程であって、ガス混合物は、不活性ガスの基板の表面積当たりの体積流量が、シリコン系ガスの基板の表面積当たりの体積流量の約11倍〜約80倍であるガス混合物を供給する工程と、
ガス混合物に点火してプラズマ化するRF電力を印加する工程と、
基板上に実質的に水素を含まない酸化ケイ素層を形成する工程と、
酸化ケイ素層が基板上に形成された後の基板を処理チャンバ内で摂氏約450度〜摂氏約500度の温度に5分未満の間、インサイチューで熱処理する工程によって作られる金属酸化物TFTデバイス。
【発明の詳細な説明】
【0001】
(発明の分野)
本発明の実施形態は、概して、シリコン含有層を形成するための方法に関する。特に、本発明は、薄膜トランジスタ(TFT)デバイス内で使用することができるシリコン含有層を形成するための方法に関する。
【0002】
(関連技術の説明)
プラズマディスプレイパネル及び液晶ディスプレイは、しばしばフラットパネルディスプレイ用に使用される。液晶ディスプレイ(LCD)は、一般に、液晶材料の層を間に挟んで共に接合された2枚のガラス基板を含む。ガラス基板は、半導体基板であることができ、又は、透明基板(例えば、ガラス、石英、サファイア、又は透明なプラスチックフィルム)であることができる。LCDは、背面照明用の発光ダイオードを含むこともできる。
【0003】
LCDに対する解像度の要求が高まるにつれて、画素と呼ばれる多数の液晶セルの別々の領域を制御することが望ましくなっている。現代のディスプレイパネルでは、100万を超える画素が存在する場合がある。少なくとも同じ数のトランジスタが、ガラス基板上に形成され、これによって各画素は、基板上に配置された他の画素に対して、通電・非通電状態間の切り替えができる。
【0004】
シリコン含有材料は、ほとんどのTFTの構成要素となっている。シリコン含有材料は、例えば、低温多結晶シリコン(LTPS)TFT用の多結晶シリコンや、TFT内にゲート誘電体層、界面層、パッシベーション層、又は更にはエッチストップ層を形成する際に使用される要素として、チャネル材料を形成するために使用されてきた。
【0005】
したがって、シリコン含有材料を用いることによって、安定した信頼性の高い性能を有するTFTを形成する方法に対するニーズが、当該技術分野にはある。
【発明の概要】
【0006】
本開示の実施形態は、概して、TFT、OLED、LED、及び太陽電池デバイス内にシリコン含有層を形成する方法を提供する。シリコン含有層は、LTPS、金属酸化物TFTデバイス等を含むTFTデバイス内にアクティブチャネルを形成するために使用する、又はゲート誘電体層、界面層、パッシベーション層、又は更にはエッチストップ層内の要素として使用することができる。シリコン含有層は、気相堆積プロセスによって堆積され、これによって不活性ガス(アルゴン等)が、シリコン含有前駆体と共に導入される。不活性ガスは、ケイ素−水素又はケイ素−ケイ素の弱いダングリングボンドを追い出すように機能し、これによってケイ素−ケイ素又はケイ素−酸素の強い結合が残る。
【0007】
一実施形態では、基板上にシリコン層を形成する方法が開示される。本方法は、処理チャンバ内に基板を搬送する工程と、シリコン系ガス及び不活性ガスを有し、実質的に水素ガスを有さないガス混合物を処理チャンバ内に供給する工程を含む。ガス混合物は、不活性ガスの基板の表面積当たりの体積流量が、シリコン系ガスの基板の表面積当たりの体積流量の約1.8倍〜約79倍である。本方法はまた、ガス混合物を点火してプラズマ化するためにRF電力を印加する工程と、基板上にアモルファスシリコン層を形成する工程を含む。
【0008】
別の一実施形態では、酸化ケイ素層を形成するための方法が開示される。本方法は、処理チャンバ内にシリコン系ガス、不活性ガス、及び酸素含有ガスを有するガス混合物を供給する工程を含む。ガス混合物は、不活性ガスの基板の表面積当たりの体積流量が、シリコン系ガスの基板の表面積当たりの体積流量の約11倍〜約80倍である。本方法は、また、ガス混合物を点火してプラズマ化するためにRF電力を印加する工程と、基板上に酸化ケイ素層を形成する工程を含む。
【0009】
更に別の一実施形態では、金属酸化物TFTデバイスは、基板と、基板上に配置され、実質的に水素を含まない酸化ケイ素層を含むゲート絶縁層と、ゲート絶縁層上に配置され、InGaZnO、InGaZnON、ZnO、ZnON、ZnSnO、CdSnO、GaSnO、TiSnO、CuAlO、SrCuO、LaCuOS、GaN、InGaN、AlGaN、又はInGaAlNのうちの少なくとも1つを含むアクティブチャネルと、アクティブチャネル上に配置されたソース・ドレイン電極と、ソース・ドレイン電極層上に配置され、実質的に水素を含まない酸化ケイ素層を含むパッシベーション層を含む。
【0010】
更に別の一実施形態では、金属酸化物TFTデバイスは、基板と、基板上のソース・ドレイン電極とゲート絶縁層の間に配置されたアクティブチャネルを含み、アクティブチャネルとゲート絶縁層との間に形成される界面は、実質的に水素を含まない誘電体表面を含む。
【図面の簡単な説明】
【0011】
本発明の上述した構成を達成し、詳細に理解することができるように、上記に簡単に要約した本発明のより具体的な説明を、その実施形態を参照して行う。実施形態は添付図面に示されている。
【
図1】薄膜トランジスタデバイス構造の断面図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る、アモルファスシリコン層を堆積するために使用することができる処理チャンバの断面図を示す。
【
図3】アモルファスシリコン層を形成し、後にデバイス構造内で使用することができる多結晶シリコン層に形質転換される方法の一実施形態のプロセスフロー図を示す。
【
図4D】本発明の一実施形態に係る、アモルファスシリコン層を多結晶シリコン層に形質転換するためのシーケンスを段階的に示したアモルファスシリコン層を有するデバイス構造の一実施形態を示す。
【
図5B】一実施形態に係るTFTデバイスの概略断面図である。
【
図6】一実施形態に係るTFTデバイスの概略断面図である。
【0012】
理解を促進するために、図面に共通する同一の要素を示す際には可能な限り同一の参照番号を使用している。一実施形態の要素及び構成を更なる説明なしに他の実施形態に有益に組み込んでもよいと理解される。
【0013】
しかしながら、添付図面は本発明の例示的な実施形態を示しているに過ぎず、したがってこの範囲を制限されていると解釈されるべきではなく、本発明は他の等しく有効な実施形態を含み得ることに留意すべきである。
【0014】
本開示の実施形態は、概して、TFTデバイス内にシリコン含有層を形成する方法を提供する。シリコン含有層は、LTPS TFT又は他の適当な金属酸化物TFTデバイス内にアクティブチャネルを形成するために使用する、又はゲート誘電体層、界面層、パッシベーション層、又は更にはエッチストップ層内の要素として利用することができる。シリコン含有層は、気相堆積プロセスによって堆積され、これによって不活性ガス(アルゴン等)がシリコン前駆体と共に導入される。不活性ガスは、ケイ素−水素又はケイ素−ケイ素の弱いダングリングボンドを追い出すように機能し、これによってケイ素−ケイ素又はケイ素−酸素の強い結合が残る。
【0015】
一実施形態では、後に多結晶シリコン層に形質転換することができるアモルファスシリコン層を形成する方法が開示される。アモルファスシリコン層は、チャネル材料としてLTPS TFTデバイス内で使用することができる。あるいはまた、アモルファスシリコン層、酸化ケイ素層、窒化ケイ素層、酸窒化ケイ素層、又は本明細書に記載の方法により形成される他の適切なシリコン含有層も、適切なTFTデバイス(例えば、金属酸化物TFTデバイス)内で使用することができる。アモルファスシリコン層、酸化ケイ素層、窒化ケイ素層、酸窒化ケイ素層、又は他の適切なシリコン含有層等はまた、フォトダイオード、半導体ダイオード、発光ダイオード(LED)、又は有機発光ダイオード(OLED)、又は他のディスプレイアプリケーション内でも使用することができる。アモルファスシリコン層、酸化ケイ素層、窒化ケイ素層、酸窒化ケイ素層は、最小の水素含有量により、高い膜品質及び安定性と低い膜の漏れを提供し、これによってトランジスタデバイスの電気的性能を効率的に向上させる。なお、アモルファスシリコン層は、上記の用途に加えて、他の適切なデバイス内で使用可能であることに留意すべきである。
【0016】
LTPS TFTデバイス150の例示的な一実施形態が
図1に示されている。LTPS TFTデバイスは、ソース領域109a、チャネル領域109c、及びドレイン領域109bが光学的に透明な基板102上に形成され、その上に配置された任意選択の誘電体層104を伴って又は伴わないで作られたMOSデバイスである。ソース領域109a、チャネル領域109c、及びドレイン領域109bは、一般に、最初に堆積されたアモルファスシリコン(a−Si)層から形成され、アモルファスシリコン(a−Si)層は後に多結晶シリコン層を形成するために熱処理(例えば、アニーリング)される。ソース、チャネル及びドレイン領域109a、109c、109bは、光学的に透明な基板102上の領域をパターニングし、堆積された初期のa−Si層にイオンドーピングを行うことによって形成することができ、初期のa−Si層は、後に多結晶シリコン層を形成するために熱処理される。その後、ゲート誘電体層106が、堆積された多結晶シリコン層の最上部の上に堆積され、これによってチャネル領域109c、ソース領域109a、及びドレイン領域109bからゲート電極114を分離する。ゲート電極114は、ゲート誘電体層106の最上部の上に形成される。その後、絶縁層112及びデバイス接続部110a、110bが、絶縁層112を貫通して作られ、これによってTFTデバイス150の制御を可能にする。
【0017】
LTPS TFTデバイス150の性能は、MOS構造を形成するように堆積される膜の品質に依存する。MOSデバイスの主要な性能要素は、多結晶シリコンチャネル層108、ゲート誘電体層106、及び多結晶シリコンチャネル層/ゲート誘電体層界面の品質である。多結晶シリコンチャネル層108の品質は、近年多くの注目を浴びている。上述したように、多結晶シリコンチャネル層108は、最初にアモルファスシリコン層として形成され、次いで、摂氏約450度まで又はそれ以上に加熱され、これによってアモルファスシリコン層から水素を除去する脱水素化処理を行う。脱水素化処理の後、レーザアニーリング処理が実行され、これによってアモルファスシリコン層を多結晶シリコン層に形質転換することができる。続いて、ゲート絶縁層又は他の適切な層がその上に形成され、これによってデバイス構造を完了することができる。
【0018】
アモルファスシリコン層中の水素元素の過剰量(例えば、過度に高濃度の水素含有量)は、多結晶シリコンチャネル層108を形成する前に、隣接するゲート誘電体層106又は他の隣接する層の中に浸透し、これによって電流のリーク又は他のタイプのデバイス故障をもたらす可能性がある。アモルファスシリコン層は、プラズマ強化化学蒸着(PECVD)などの適切な蒸着プロセスによって形成することができる。
【0019】
図2は、アモルファスシリコン層又は他のシリコン含有層(例えば、酸化ケイ素)を形成することができるPECVDチャンバ200の一実施形態の概略断面図である。1つの適切なPECVDチャンバは、カリフォルニア州サンタクララにあるアプライドマテリアルズ社(Applied Materials, Inc.)から入手可能である。なお、他の製造業者からのものを含む他の堆積チャンバが本発明を実施するために利用可能であることが理解される。
【0020】
チャンバ200は、一般的に、壁部202、底部204、及び蓋212を含む。ガス分配プレート210と基板支持アセンブリ230は、処理容積206を画定する。処理容積206は、壁部202を貫通して形成された開口部208を介してアクセスされ、これによって基板102をチャンバ200の内外へ搬送することができる。
【0021】
基板支持アセンブリ230は、基板102を上で支持するための基板受け面232を含む。基板受け面232は、一般的に、基板102と同じサイズであるか、又は基板102よりもわずかに大きい。ステム234は、基板搬送位置と基板処理位置との間で基板支持アセンブリ230を昇降させるリフトシステム236に基板支持アセンブリ230を結合する。基板102の縁部上への堆積を防止するように処理する場合、シャドウフレーム233をオプションで基板102の周縁部の上方に配置することができる。リフトピン238は、基板支持アセンブリ230を貫通して可動に配置され、基板102の挿入及び除去中に、基板受け面232から基板102を離間させるように用いられる。基板支持アセンブリ230はまた、基板支持アセンブリ230を所望の温度に維持するために利用される加熱及び/又は冷却要素239を含むことができる。基板支持アセンブリ230は、また、基板支持アセンブリ230の周囲に、RFリターンパスを短縮するためにRFリターンストラップ231を含むことができる。
【0022】
ガス分配プレート210は、サスペンション214によって、その周辺で、チャンバ200の蓋212又は壁部202に結合される。ガス分配プレート210はまた、1以上の中央支持体216によって蓋212に結合され、これによってガス分配板210の垂下を防止し、及び/又はガス分配板210の真直度/曲率を制御するのを助けることができる。一実施形態では、ガス分配プレート210は、異なる寸法の異なる構成を有する。例示的な一実施形態では、ガス分配プレート210は、四辺形の下流面250を有する。下流面250は、基板支持アセンブリ230上に配置された基板102の上面218に対向して、複数の開口部211が内部に形成されている。開口部211は、ガス分配プレート210全域に亘って、異なる形状、数、密度、寸法、及び分布を有することができる。
【0023】
ガス源220は蓋212に結合され、これによって蓋212を通って、次いで、ガス分配プレート210内に形成された開口部211を通って、処理容積206へとガスを供給する。真空ポンプ209はチャンバ200に結合され、これによって所望の圧力で処理容積206内のガスを維持する。
【0024】
RF電源222は、蓋212及び/又はガス分配プレート210に結合され、これによってガス分配プレート210と基板支持アセンブリ230との間に電界を作るRF電力を供給し、これによってガス分配プレート210と基板支持アセンブリ230との間でガスからプラズマを生成することができる。RF電力は、1以上のRF周波数で印加することができる。例えば、RF電力は、約0.3MHz〜約200MHzの周波数で印加することができる。一実施形態では、RF電力は、13.56MHzの周波数で供給される。
【0025】
リモートプラズマ源224(例えば、誘導結合リモートプラズマ源)もまた、ガス源とバッキングプレートとの間に結合することができる。基板を処理する間に、洗浄ガスをリモートプラズマ源224内で通電し、これによってチャンバコンポーネントを洗浄するために利用されるプラズマを遠隔で供給することができる。洗浄ガスは、RF電源222によってガス分配プレート210に供給されるRF電力によって更に励起してもよい。適切な洗浄ガスとしては、NF
3、F
2、及びSF
6を含むが、これらに限定されない。
【0026】
一実施形態では、チャンバ200内で処理することができる基板102は、10000cm
2以上(例えば、40000cm
2以上(例えば、約55000cm
2以上))の表面積を有することができる。処理後に、基板は、より小さなデバイスを形成するために切断することができることが理解される。
【0027】
一実施形態では、加熱要素及び/又は冷却要素239は、堆積中に約400℃以下(例えば、約100℃〜約400℃又は約150℃〜約300℃(例えば、約200℃))の基板支持アセンブリの温度を提供するように設定することができる。
【0028】
基板受け面232上に配置された基板102の上面218とガス分配プレート210との間の堆積中の間隔は、一般的に、400ミル〜約1200ミル(例えば、400ミル〜約800ミル)に、又は所望の堆積結果を提供するように選択された基板102とガス分配プレート210との間の他の距離に変えることができる。凹面下流面ガス分配プレート210が利用される例示的な一実施形態では、プレート210の縁部の中央部と基板受け面232との間の間隔は、約400ミル〜約1400ミルとの間であり、プレート210の角部と基板受け面232との間の間隔は、約300ミル〜約1200ミルの間である。
【0029】
図3は、
図2に示されるようなチャンバ200又は他の適切な処理チャンバ内で実施することができる堆積プロセス300の一実施形態のフロー図を示す。プロセス300は、アモルファスシリコン層や、TFTデバイス又はダイオードデバイス内で使用することができる他の適切なシリコン含有層を堆積する方法を示す。一実施形態では、シリコン含有層は、単独で、又は任意の他の適切な膜と組み合わせて使用し、これによってTFT又はダイオードデバイス内の電気的特性及び性能を改善することができる。特定の一実施形態では、説明したようなシリコン含有層は、アモルファスシリコン層であり、後に多結晶シリコン層を形成するように熱処理することができる。
【0030】
図4Aに示されるように、プロセス300は、基板102を処理チャンバ(例えば、
図2に示されるPECVDチャンバ200)内へ搬送することによってステップ302で始まる。基板102は、オプションの誘電体層104を上部に配置してもよい。なお、基板102は、以前に上に形成された膜、構造、又は層とは異なる組み合わせを有し、これによって基板102上に異なるデバイス構造を形成することを促進してもよいことに留意すべきである。誘電体層104が存在しない実施形態では、アモルファスシリコン層は、直接基板102上に形成することができる。
【0031】
一実施形態では、基板102は、ガラス基板、プラスチック基板、ポリマー基板、金属基板、単一化された基板、ロールツーロール基板、又は上に薄膜トランジスタを形成するのに好適な他の適切な透明基板のうちのいずれであってもよい。
【0032】
ステップ304では、ガス混合物が、ガス分配プレート210を介して処理チャンバ内へ供給され、これによって
図4Bに示されるように、基板102上にアモルファスシリコン層402を堆積する。ガス混合物を処理チャンバ内へ供給し、これによってアモルファスシリコン層402を堆積する場合、ガス混合物は、シリコン系ガス、不活性ガスを含み、実質的に水素ガス(H
2)を含まないことができる。用語「実質的に水素ガスを含まない」は、ガス混合物を形成するために水素ガスの直接的な供給源を利用しないことを意味することを意図している。微量の水素ガスが不活性ガス及び/又はシリコン系ガスの供給源内に存在してもよい。適切なシリコン系ガスとしては、シラン(SiH
4)、ジシラン(Si
2H
6)、四フッ化ケイ素(SiF
4)、テトラオルトシロキサン(TEOS)、四塩化ケイ素(SiCl
4)、ジクロロシラン(SiH
2Cl
2)、及びこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。不活性ガスの適切な例としては、He、Ar、Ne、Kr等が挙げられる。一実施形態では、本明細書に記載のシリコン系ガスはシラン(SiH4)ガスであり、不活性ガスはアルゴンである。
【0033】
シリコン系ガス及び不活性ガスは、所定のガス流量比で供給される。不活性ガスのシリコン系ガスに対する所定のガス流量比は、膜内に含まれる水素原子の最小数を有するアモルファスシリコン層の堆積を助長する。一実施形態では、シリコン系ガス及び不活性ガスは、処理チャンバ内へ所定の比で(例えば、1:20を超えて)供給される。一実施形態では、不活性ガス(例えば、アルゴンガス)のシリコン系ガス(例えば、シラン)に対する比率(R)は、約20(Ar/SiH
4)を超えるように、例えば、50を超えるように、例えば、約60〜約200、別の一例では、約70〜100(例えば、約75)となるように制御される。あるいはまた、処理チャンバ内に供給されるシリコン系ガス及び不活性ガスは、基板表面積(又はおおよそ等価として、基板支持面)当たりの体積流量によって供給することができる。一実施形態では、SiH
4ガスは、処理チャンバ内へ約0.042sccm/cm
2〜約0.31sccm/cm
2で供給することができ、一方、不活性ガスは、処理チャンバ内へ約0.55sccm/cm
2〜約3.29sccm/cm
2の流量で供給することができる。従って、シリコン系ガスに対する不活性ガスの基板表面積当たりの体積流量の比は、約1.8:1〜約79:1の間である。換言すれば、ガス混合物は、シリコン系ガスの基板の表面積当たりの体積流量の約1.8倍〜約79倍の不活性ガスの基板の表面積当たりの体積流量を有する。一実施形態では、シリコン系ガスはシランであり、不活性ガスはアルゴンである。
【0034】
ガス混合物に供給される不活性ガス(例えば、アルゴン)は、シリコン系ガス(例えば、シランガス)内で供給されるケイ素及び水素原子よりも相対的に高い分子量を有すると考えられる。処理中にガス混合物を供給する場合、混合ガス中のアルゴン原子は、シリコン層内のケイ素−水素及び/又は弱いケイ素−ケイ素結合の弱いダングリングボンドを追い出すのを助長し、これによってシリコン層内のケイ素原子が、シランガスからのケイ素−水素結合ではなく、強いケイ素−ケイ素結合を形成するのを可能にする。上述のように、強いケイ素−ケイ素結合は、膜の純度及び高いシリコン結合エネルギーを高め、これによってアモルファスシリコン層402内に形成された膜の品質及び純度を増加させる。更に、Ar原子は、強く頑強なシリコン結合の形成を助長し、不純物を追い出すので、シリコン層内の欠陥が低減されるだけでなく、アモルファスシリコン層内で良好な均一性を得ることができ、これによって望ましくないランダムな粒界及び粒界の欠陥を低減することができる。また、従来の水素希釈の代わりにアルゴン希釈を用いることによって、堆積プロセス中における水素原子の供給が最小化又は排除され、これによって結果として得られるアモルファスシリコン層402内に水素元素を形成する可能性を低減させることができる。アルゴン希釈堆積プロセスはまた、良好な(例えば、毎分300Åより大きい)堆積速度を提供し、これによって製造のスループットを向上させることができるとも考えられている。
【0035】
いくつかのプロセスパラメータは、堆積プロセス中に制御することができる。RFソース電力は、堆積中、プラズマを維持するために印加することができる。一実施形態では、RFソース電力密度は、約10ミリワット/cm
2〜約200ミリワット/cm
2で供給することができる。あるいはまた、VHF電力を利用して、これによって約27MHz〜約200MHzまでの周波数を提供することができる。処理圧力は、約0.1トール〜約10トール(例えば、約0.5トール〜約5トール(例えば、約0.8トール〜約2トール))に維持される。ガス分配プレートアセンブリに対する基板の間隔は、基板寸法に応じて制御することができる。一実施形態では、1平方メートルより大きな基板の処理間隔は、約400ミル〜約1200ミル(例えば、約400ミル〜約850ミル(例えば、580ミル))に制御される。基板温度は、摂氏約150度〜摂氏約500度(例えば、摂氏約370度)に制御することができる。
【0036】
一実施形態では、比較的低い(例えば、1500ワット未満又は100ミリワット/cm
2未満の)RF電力を利用することができる。堆積中に利用されるより低いRF電力は、良好な均一性制御を有するアモルファスシリコン層402の形成を助長することができると考えられる。使用されるような比較的低いRF電力は、不活性ガスによって生成される可能性のあるスパッタリング効果を低減し、これによって比較的穏やかなプラズマ環境内でアモルファスシリコン層402を堆積するのを助長し、これによって良好な均一性及び表面粗さ制御を有するアモルファスシリコン層402を形成することができると考えられる。
【0037】
ステップ306では、
図4Cに示されるように、アモルファスシリコン層402を基板102上に形成した後、脱水素化ポストベークプロセスを実行して、これによってアモルファスシリコン層402から水素を除去することができる。脱水素化ポストベークプロセスの後、アモルファスシリコン層402に含まれる水素含有量は、
図4Cに示されるように、大部分が追い出され、これによって脱水素化されたアモルファスシリコン層404を形成することができる。上述のように、脱水素化されたアモルファスシリコン層404は、水素ガスの代わりに希釈ガスとして不活性ガス(例えば、アルゴンガス)を用いた実質的に水素を含まないガス混合物によって形成されるので、脱水素化ポストベークプロセスは、比較的短い時間フレームの間(例えば、5分未満)実行することができ、又は必要に応じて省略してもよい。
【0038】
一実施形態では、脱水素化ポストベークプロセスは、アモルファスシリコン層402を堆積させた処理チャンバ内で、インサイチューで処理を行ってもよい。脱水素化ポストベークプロセスは、摂氏400度を超える(例えば、摂氏約450度〜摂氏約550度の間の)温度まで基板102を加熱し、これによって水素元素を蒸発させて脱水素化されたアモルファスシリコン層404を形成するのを助長することができる。
【0039】
アモルファスシリコン層402内で水素含有量が高くない実施形態では、ステップ306で実行されるポストベーク脱水素化プロセスは、必要に応じて省略してもよい。
【0040】
ステップ308では、
図4Dに示すように、ポストベーク脱水素化プロセスの後、レーザアニーリングプロセスが実行され、これによって脱水素化されたアモルファスシリコン層404を多結晶シリコン層406に形質転換する。レーザプロセスは、脱水素化されたアモルファスシリコン層404を結晶化させて多結晶シリコン層406にするのを助長する。レーザアニーリングプロセスの間に提供された熱エネルギーは、多結晶シリコン層406からの粒子を成長させて大きなサイズにして、多結晶シリコン層406を形成する結晶化された粒子にするのを助長する。一実施形態では、アモルファスシリコン層402を結晶化させるのに使用されるようなレーザアニーリングプロセスは、エキシマレーザアニーリングプロセスである。レーザアニーリングプロセスは、摂氏約100度〜摂氏約1500度の間の温度に基板を熱的に処理することができる。
【0041】
レーザアニーリングプロセスの後、脱水素化されたアモルファスシリコン層404は、主に(111)面の結晶方位を有し、部分的に(220)面を有する多結晶シリコン層406に形質転換される。多結晶シリコン層406の所望の結晶が形成されるので、高い光/暗伝導度比を得ることができ、多結晶シリコン層406全体の電気的特性を向上させることができる。
【0042】
図1を参照して図示及び上記したように、脱水素化されたアモルファスシリコン層404が多結晶シリコン層406になった後で、パターニングプロセス、イオン注入又は他の堆積プロセスが実行され、これによってソース・ドレイン領域、ゲート誘電体層、及びソース・ドレイン電極層を形成することができ、これによってTFTデバイス構造が完成する。
【0043】
上述したように、シリコン含有層は、TFTデバイス中に他の層を製造する際に利用することができる。
図5Aは、本発明の別の一実施形態に係るTFTデバイス500の別の一実施形態の概略断面図である。TFTデバイス500は、ゲート電極層504が上に形成された基板502を含む。基板502は、ガラスを含むことができるが、他の基板材料(例えば、ポリマー系の基板及びフレキシブル基板)も考えられる。一実施形態では、ゲート電極層504は、任意の適切な金属材料(例えば、インジウムスズ酸化物(ITO)、酸化インジウム亜鉛(IZO)、インジウム錫亜鉛酸化物(ITZO)、アルミニウム(Al)、タングステン(W)、クロム(Cr)、タンタル(Ta)、モリブデン(Mo)、銅(Cu)、チタン(Ti)、それらの合金、又はそれらの組み合わせから製造することができる。
【0044】
基板502及びゲート電極層504の上に、ゲート絶縁層506が形成されている。ゲート絶縁層506に適した材料は、酸化ケイ素(SiO
2)、酸窒化ケイ素(SiON)、窒化ケイ素(SiN)、又はそれらの組み合わせ等であることができる。ゲート絶縁層506は、必要に応じて、単層、複合層、二重層、複数の層、又はそれらの他の組み合わせの形態であることができる。一実施形態では、ゲート絶縁層506は、点線520で示されるように、酸化ケイ素上に配置された窒化ケイ素層又はその逆を有し、これによって基板520上に二重層として形成される。あるいはまた、ゲート絶縁層506は、必要に応じて、酸化ケイ素単層又は窒化ケイ素単層であってもよい。酸化ケイ素層及び窒化ケイ素層(又は酸窒化ケイ素層)は、上述のようにプロセス300から製造することができる。酸化ケイ素及び/又は窒化ケイ素層は、シリコン系ガスと不活性ガス(例えば、アルゴン)を有し、水素ガスを有さないガス混合物を供給することによって製造することができる。
【0045】
酸化ケイ素層が形成されるように構成される実施形態では、ガス混合物は、シリコン系ガス、酸素含有ガス、及び不活性ガスを含む。シリコン系ガスの適切な例としては、シラン(SiH
4)、ジシラン(Si
2H
6)、テトラオルトシロキサン(TEOS)、四フッ化ケイ素(SiF
4)、四塩化ケイ素(SiCl
4)、ジクロロシラン(SiH
2Cl
2)、及びこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。酸素含有ガスの適切な例としては、O
2、N
2O、NO
2、H
2O、H
2O
2、O
3等が挙げられる。不活性ガスの適切な例としては、He、Ar、Ne、Kr等が挙げられる。特定の一実施形態では、ここで形成される酸化ケイ素層を形成するためのガス混合物は、SiH
4、O
2、及びArガスか、又はSiH
4、N
2O又はNO
2、及びArガスを含む。しかしながら、もしもTEOSがシリコン系前駆体として使用されるならば、チャンバ内の全酸素含有量が高くなるので、O
2を使用しないのが好ましいことに留意すべきである。
【0046】
窒化ケイ素層が形成された実施形態において、ガス混合物は、シリコン系ガス、窒素含有ガス、及び不活性ガスを含む。シリコン系ガス及び不活性ガスの種類は、上記のものを使用することができる。窒素含有ガスの適切な例としては、N
2、N
2O、NO
2、NO、又はNH
3等が挙げられる。特定の一実施形態では、ここで形成される酸化ケイ素層を形成するためのガス混合物は、SiH4、N
2又はNH
3、及びArガスを含む。
【0047】
不活性ガスが使用されているので、不活性ガスを使用しない場合と比較して、必要とされるRFパワーがより少ない。具体的には、RF電力の約20%が低減可能である。不活性ガス原子は重く、したがって処理中にイオン衝撃を増強するため、RF電力の低減が可能である。印加することができる適切なRF電力は、約1200mW/cm
2〜約1300mW/cm
2である。更に、シリコン系ガスと不活性ガスを特定の比率でチャンバに送出するときに、必要なRF電力量が減少するだけでなく、成膜厚さの均一性が増加する。このように、不活性ガスの添加は、再現性があり、信頼性が高く、高品質の酸化ケイ素層をもたらす。一実施形態では、不活性ガス(例えば、アルゴン)の基板表面積当たりの体積流量は、約1.05sccm/cm
2〜約1.828sccm/cm
2(例えば、1.65sccm/cm
2)であることができる。シリコン含有前駆体は、約0.095sccm/cm
2〜約0.023sccm/cm
2(例えば、約0.025sccm/cm
2)の基板面積当たりの体積流量で送出することができる。酸素含有前駆体は、約1.05sccm/cm
2〜約1.66 sccm/cm
2(例えば、約1.16sccm/cm
2)の基板面積当たりの体積流量で送出することができる。このように、不活性ガスの量は、送出されるシリコン系前駆体の量よりも約11〜約80倍多い。不活性ガスの量は、送出される酸素系ガスの量よりも約0.6〜約1.70倍多い。酸素系ガスの量は、送出されるシリコン系前駆体の量よりもよりも約11〜約72倍多い。
【0048】
更に、プロセスパラメータは必要に応じて、プロセス300を参照してステップ304を参照して上述したアモルファスシリコン層を形成するために制御されたプロセスパラメータから同様に制御することができることに留意すべきである。
【0049】
続いて、アクティブチャネル508をゲート絶縁層506上に配置することができる。アクティブチャネル508は、
図3を参照して上述したプロセスによって製造された低温多結晶シリコン層(LTPS)であることができる。適切なドーパント(例えば、n型又はp型ドーパント)は、必要に応じて低温多結晶シリコン層(LTPS)内に配置して、これによってアクティブチャネル508を形成することができる。アクティブチャネル508の上にオプションのエッチストップ514を形成し、これによってソース・ドレイン電極510、512の形成時に、アクティブチャネル508を保護することができる。エッチストップ514用に利用することができる適切な材料は、酸化ケイ素、窒化ケイ素、及び酸窒化ケイ素を含む。エッチストップ514は、上述したように、ゲート絶縁層506を形成するために利用されるプロセスと同様のプロセスによって形成することができる。いくつかの実施形態では、ソース・ドレイン電極510、512の前に、別の活性層511、513を形成することができる。活性層511、513は、p型活性層又はn型活性層(例えば、n型シリコン含有層又はp型シリコン含有層)であることができる。
【0050】
ソース・ドレイン電極510、512、及び(存在するならば)オプションのエッチストップ514の上に、パッシベーション層518を形成することができる。パッシベーション層518のために利用することができる適切な材料は、酸化ケイ素、窒化ケイ素、及び酸窒化ケイ素を含む。一実施形態では、上述のゲート絶縁層506と同様に、パッシベーション層518は、必要に応じて、単層、複合層、二重層、複数の層、又はこれらの他の組み合わせの形態であることができる。一実施形態では、パッシベーション層518は、点線516で示されるように、酸化ケイ素上に配置された窒化ケイ素層又はその逆を有し、これによってソース・ドレイン電極510、512上に二重層として形成される。酸化ケイ素層及び窒化ケイ素層(又は酸窒化ケイ素層)は、上記のようにプロセス300から製造することができ、又は酸化ケイ素層及び窒化ケイ素層は、ゲート絶縁層506を形成するために利用される上述のプロセスから形成することもできる。酸化ケイ素及び/又は窒化ケイ素層は、シリコン系ガスと不活性ガス(例えば、アルゴン)を有し水素ガスを含まないガス混合物を供給することによって製造することができる。あるいはまた、パッシベーション層は、酸化ケイ素単層又は窒化ケイ素単層であってもよい。
【0051】
図5Bは、本発明の一実施形態に従って利用することができる金属酸化物TFTデバイス550の一実施形態を示す。金属酸化物TFTデバイス550は、アクティブチャネル508の材質が異なる点を除いて、
図5Aを参照して上述したLTPS TFTデバイス500と類似の構造を有することができる。金属酸化物TFTデバイス550は、金属含有層から製造されるアクティブチャネル530が含む。金属酸化物TFTデバイス550内に形成されたアクティブチャネル530の適切な例は、とりわけInGaZnO、InGaZnON、ZnO、ZnON、ZnSnO、CdSnO、GaSnO、TiSnO、CuAlO、SrCuO、LaCuOS、GaN、InGaN、AlGaN、又はInGaAlNを含む。特定の一実施形態では、アクティブチャネル530は、InGaZnO(IGZO)層である。同様に、ゲート絶縁層506及びパッシベーション層518は、必要に応じて、単層、複合層、二重層、複数の層、又はこれらの他の組み合わせの形態であることができる。一例では、パッシベーション層518及びゲート絶縁層506は、酸化ケイ素上に配置された窒化ケイ素層を有する二重層であることができる。
【0052】
アルゴン希釈ガスから製造された実質的に水素を含まない酸化ケイ素層が、金属酸化物TFTデバイスに使用される場合、金属酸化物TFTデバイスは、電気的特性を向上させることができる。例えば、V
on(電源オン時の電圧)及びS値(サブスレッショルド電圧振幅)の両方が顕著に低減される。一例では、V
onは、約−5.5 Vから約−0.25Vへ低減する。S値は、0.7V/decadeから0.4 V/decadeへ低減する。I
on(オン電流)は、3.3E−04から1.4E−04Aへ低減する。I
off(オフ電流)は、4.8E−12から1.4E−13Aへ低減する。移動度(MO)は、約9.8cm
2/(V・s)から約9.9cm
2/(V・s)へ増加する。
【0053】
図6は、本発明の一実施形態に従って利用することができる金属酸化物TFTデバイス600の一実施形態を示す。金属酸化物TFTデバイス600は、
図5Bを参照して上述した金属酸化物TFTデバイス550と類似の構造を有することができる。金属酸化物TFTデバイス600はまた、金属含有層から製造されたアクティブチャネル530も含む。金属酸化物TFTデバイス600内に形成されるアクティブチャネル530の適当な例は、とりわけInGaZnO、InGaZnON、ZnO、ZnON、ZnSnO、CdSnO、GaSnO、TiSnO、CuAlO、SrCuO、LaCuOS、GaN、InGaN、AlGaN、又はInGaAlNを含む。更に、アクティブチャネル530と接触している上部界面540及び下部界面542は、実質的に水素なしの膜特性を有するように構成される。上部界面540及び下部界面542は、水素を含まない材料から作られる。例えば、下部界面542は、アクティブチャネル530とゲート絶縁層506との間に形成される。この場合、ゲート絶縁層506は、
図5A〜
図5Bに記載のTFTデバイスを参照して上述したように、実質的に水素を含まない酸化ケイ素層から形成するように選択することができる。ゲート絶縁層506が二層となるように構成される実施形態では、ゲート絶縁層506は、基板502上に配置された窒化ケイ素層と、アクティブチャネル530と接触している窒化ケイ素層上に配置された実質的に水素を含まない酸化ケイ素層を有することができる。同様に、上部界面540は、アクティブチャネル530と、ソース・ドレインチャネル532の開口部によって画定されるパッシベーション層518との間に形成される。
図5A〜
図5Bに記載のTFTデバイスを参照して上述したように、上部界面540もまた、実質的に水素を含まない酸化ケイ素層から形成するように選択することができる。パッシベーション層518が二層となるように構成される実施形態では、パッシベーション層518は、アクティブチャネル530と接触してアクティブチャネル530上に配置された水素を含まない酸化ケイ素層と、水素を含まない酸化ケイ素層上に配置された窒化ケイ素層を有することができる。
【0054】
あるいはまた、追加の層を界面保護層として界面542、540に形成することもできる。一実施形態では、エッチストップ層を界面542、540に形成される界面保護層として使用し、これによって実質的に水素を含まない界面を維持することもできる。同様に、一実施例では、界面保護層は、
図5A〜
図5Bに記載のTFTデバイスを参照して上記したように、実質的に水素を含まない酸化ケイ素層である。別の一実施例では、界面保護層は、金属含有誘電体層(例えば、TaN、TiN、WN、CuN、及び水素を実質的に含まない任意の他の適切な材料(例えば、最小の水素含有量を有する))である。
【0055】
なお、実質的に水素を含まない界面540、542のアクティブチャネル530との接触を維持することにより、アクティブチャネルへの水素攻撃の可能性を低減し、これによって高品質の界面を得て、金属酸化物TFTデバイス600の電子性能を改善することができると考えられる。
【0056】
なお、本出願において使用される窒化ケイ素層はまた、当該技術分野で利用可能な任意の他の適切なプロセス又は技術によって得ることができることに留意すべきである。
【0057】
このように、本明細書に記載の方法は、有利なことに、シリコン含有層の水素含有量を最小化することによって、電気的デバイスの電子移動度、安定性、及び均一性を改善し、これによってデバイス性能を向上させる。
【0058】
上記は本発明の実施形態を対象としているが、本発明の他の及び更なる実施形態は本発明の基本的範囲を逸脱することなく創作することができ、その範囲は以下の特許請求の範囲に基づいて定められる。