(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも次の事項が明らかとなる。
互いに直交する長手方向、幅方向、及び厚さ方向を有し、
吸収体と、
前記厚さ方向の非肌側にそれぞれウィング粘着部を備えた、前記幅方向の外側に突出する一対のウィング部と、を有する吸収性物品であって、
前記吸収体は、
前記幅方向における前記吸収体の中央領域に、前記厚さ方向に凹み、前記長手方向に沿う、排泄物を誘導する中央誘導部と、
前記長手方向における前記吸収体の前側領域に、前記厚さ方向に凹み、前記長手方向と交差する前側圧搾部と、を有しており、
前記吸収体が吸収したときに前記排泄物が存在する領域を排泄物存在領域としたとき、
前記排泄物が前記前側圧搾部の前記長手方向の最も前側の端に到達するまでの状態において、常に、
前記排泄物存在領域の前記長手方向の長さの半分を、前記排泄物存在領域の前記幅方向の長さで除した値が、
前記吸収体の前記前側圧搾部の前記長手方向の最も前側の端から前記ウィング粘着部の前記長手方向の中央までの距離を、前記中央における前記吸収体の前記幅方向の長さで除した値以上となるように、前記中央誘導部が前記排泄物を誘導することを特徴とする吸収性物品。
【0010】
このような吸収性物品によれば、排泄物存在領域が吸収体の幅方向の両端に達するより前に前側圧搾部に達するように排泄物を誘導することができるため、吸収体のより広い範囲で排泄物を吸収させることができる。
【0011】
かかる吸収性物品であって、
前記排泄物が前記前側圧搾部の前記長手方向の最も前側の端に到達したときの前記排泄物存在領域を最大排泄物存在領域
としたとき、
前記最大排泄物存在領域の前記長手方向の長さの半分を、前記最大排泄物存在領域の前記幅方向の長さで除した値が、前記吸収体の前記前側圧搾部の前記長手方向の最も前側の端から前記ウィング粘着部の前記長手方向の中央までの距離を、前記中央における前記吸収体の前記幅方向の長さで除した値以上
であることが好ましい。
【0012】
このような吸収性物品によれば、排泄物が最大排泄物存在領域まで広がった状態においても、吸収体の幅方向の両端から排泄物が漏れてしまう恐れを軽減することができる。
【0013】
かかる吸収性物品であって、前記吸収体は、前記長手方向における前記吸収体の少なくとも中央領域に、前記長手方向に沿った一方側線状圧搾部及び他方側線状圧搾部が設けられてり、前記一方側線状圧搾部は、前記幅方向において、前記吸収体の一方側の端と前記中央誘導部との間に位置しており、前記他方側線状圧搾部は、前記幅方向において、前記吸収体の他方側の端と前記中央誘導部との間に位置しており、前記排泄物存在領域の前記長手方向の長さの半分を、前記排泄物存在領域の前記幅方向の長さで除した値が、前記吸収体の前記前側圧搾部の前記長手方向の最も前側の端から前記中央までの距離を、前記中央における前記幅方向における前記一方側線状圧搾部の前記幅方向の外側の端と前記他方側線状圧搾部の前記幅方向の外側の端との距離で除した値以上となるように、前記中央誘導部が前記排泄物を誘導することが好ましい。
【0014】
このような吸収性物品によれば、排泄物存在領域が、吸収体の一方側線状圧搾部の幅方向の外側の端及び他方側線状圧搾部の幅方向の外側の端に達するより前に前側圧搾部に達するように排泄物を誘導することができるため、吸収体のより広い範囲で排泄物を吸収させることができる。
【0015】
かかる吸収性物品であって、前記吸収性物品は、肌側面を内側にして折り畳むための、前記幅方向に沿った複数の折り畳み部を有しており、前記吸収体は、前記長手方向における前記吸収体の後側領域に、前記厚さ方向に凹み、前記長手方向と交差する後側圧搾部を有しており、前記折り畳み部は、前記ウィング粘着部より前記長手方向の前側、及び前記長手方向の後側に、それぞれ1つ以上設けられており、前記前側圧搾部が、前記長手方向の前側に位置する前記折り畳み部のうち、前記ウィング粘着部に最も近い前側折り畳み部より前側に設けられ、かつ、前記後側圧搾部が、前記長手方向の後側に位置する前記折り畳み部のうち、前記ウィング粘着部に最も近い後側折り畳み部より後側に設けられていることが好ましい。
【0016】
このような吸収性物品によれば、長手方向の前側及び後側にそれぞれ折り畳み部より外側に前側圧搾部及び後側圧搾部を設けることによって、長手方向に沿って誘導された排泄物が、前側圧搾部及び後側圧搾部でより幅方向に誘導されるため、前側圧搾部及び後側圧搾部より長手方向の外側に排泄物が誘導されることを軽減しつつ、吸収体のより広い範囲で排泄物を吸収させることができる。
【0017】
かかる吸収性物品であって、前記吸収体は、前記長手方向における前記吸収体の後側領域に、前記厚さ方向に凹み、前記長手方向に沿った、線状の後側線状圧搾部を有していることが好ましい。
【0018】
このような吸収性物品によれば、後側線状圧搾部によって排泄物を誘導させることができるため、特に前側より後側の方が長い吸収性物品の場合において、より後側に排泄物を拡散することができ、吸収体のより広い範囲で排泄物を吸収させることができる。
【0019】
かかる吸収性物品であって、前記吸収体は、前記長手方向における前記吸収体の後側領域に、前記厚さ方向に凹み、前記長手方向と交差する後側圧搾部を少なくとも1つ有しており、前記後側線状圧搾部は、前記長手方向における、前記ウィング粘着部の後側の端から、最も後側に位置する前記後側圧搾部の最も後側の端までの間に位置していることが好ましい。
【0020】
このような吸収性物品によれば、後側線状圧搾部によって誘導した排泄物を後側圧搾部で幅方向に拡散することができるため、後側圧搾部より長手方向の外側に排泄物が拡散することを軽減することができる。
【0021】
かかる吸収性物品であって、一対の前記後側線状圧搾部と、前記後側線状圧搾部の前記長手方向の各端と接続された前記後側圧搾部とを有する第1圧搾部と、一対の他の前記後側線状圧搾部、及び他の前記後側線状圧搾部の前記長手方向の各端と接続された他の前記後側圧搾部とを有する第2圧搾部と、を備えており、前記長手方向及び前記幅方向において、前記第1圧搾部は、前記第2圧搾部より内側に位置していることが好ましい。
【0022】
このような吸収性物品によれば、第1圧搾部の後側線状圧搾部によって、排泄物を長手方向のより外側に誘導することができ、第1圧搾部の後側線状圧搾部の幅方向のより外側に排泄物が移動した場合であっても、外側に位置する第2圧搾部の他の後側線状圧搾部によって、吸収体の幅方向の外側に排泄物が漏れてしまう恐れを軽減することができる。また、第1圧搾部の後側圧搾部によって、排泄物を幅方向のより外側に移動させることができ、第1圧搾部の後側圧搾部より長手方向の外側に排泄物が移動した場合であっても、外側に位置する第2圧搾部の他の後側圧搾部によって、吸収体の長手方向の外側に排泄物が漏れてしまう恐れを軽減することができる。
【0023】
かかる吸収性物品であって、前記中央誘導部は、前記吸収体の前側の端から後側の端まで設けられており、前記中央誘導部は、前記前側圧搾部及び前記後側圧搾部と交差していることが好ましい。
【0024】
このような吸収性物品によれば、長手方向への誘導を促す傾向が強い中央誘導部を吸収体の前側の端から後側の端まで設けた場合においても、中央誘導部が前側圧搾部及び後側圧搾部と交差することによって、それぞれ交差した部分で前側圧搾部及び後側圧搾部が幅方向への誘導を促すことができるため、吸収体の長手方向の外側に排泄物が拡散することを軽減することができる。
【0025】
かかる吸収性物品であって、前記吸収体は、液体吸収性繊維を有し、前記中央誘導部の前記幅方向の両側にそれぞれ、前記厚さ方向に凹んだ点状圧搾部が複数設けられており、前記中央誘導部の前記液体吸収性繊維の密度は、前記幅方向において、中央部の方が端部よりも高く、前記点状圧搾部の前記液体吸収性繊維の密度は、前記幅方向において、中央部の方が端部よりも高く、前記中央誘導部の中央部の前記厚さ方向における中央位置は、前記点状圧搾部の中央部の前記厚さ方向における中央位置より、前記厚さ方向において肌側に位置することが好ましい。
【0026】
このような吸収性物品によれば、吸収体が中央誘導部によって肌側に折れ曲がることで、使用者の膣口等の排泄口に当接されるため、まず、中央誘導部で吸収した排泄物を肌側から非肌側へ移動させて、点状圧搾部へ移動させるため、吸収性物品のフィット性を向上させつつ、肌に当接する面の肌触りを向上させることができる。
【0027】
かかる吸収性物品であって、前記中央誘導部と、前記中央誘導部と前記幅方向に隣接する前記点状圧搾部との間に、前記中央誘導部についての前記中央部及び前記点状圧搾部についての前記中央部の前記液体吸収性繊維の密度より低い前記液体吸収性繊維の密度を有する領域が設けられていることが好ましい。
【0028】
このような吸収性物品によれば、排泄物を貯留することができる液体吸収性繊維の低い領域は、中央誘導部で吸収した排泄物を貯留し、貯留した排泄物を隣接する点状圧搾部に吸収させる流路の役割を担うことができる。
【0029】
かかる吸収性物品によれば、前記液体吸収性繊維の密度は、前記中央誘導部についての前記中央部より、前記点状圧搾部についての前記中央部の方が高いことが好ましい。
【0030】
このような吸収性物品によれば、まず中央誘導部で吸収した排泄物を、液体吸収性繊維がより高い点状圧搾部に誘導することができる。
【0031】
かかる吸収性物品によれば、前記点状圧搾部の前記長手方向の長さは、前記幅方向の長さより長いことが好ましい。
【0032】
このような吸収性物品によれば、排泄物をより長手方向に拡散することができるため、吸収体のより広い範囲で排泄物を吸収させることができる。
【0033】
かかる吸収性物品によれば、前記幅方向において、前記幅方向に隣接する前記点状圧搾部同士の中心の間隔が均等であることが好ましい。
【0034】
このような吸収性物品によれば、吸収体の剛性を一定にしつつ、排泄物の拡散を一定にすることができる。
【0035】
<<<生理用ナプキン1の基本的構成>>>
以下、本発明に係る吸収性物品として生理用ナプキンを例に挙げて実施形態を説明する。
図1は、生理用ナプキン1(以下、「ナプキン1」という。)を肌側から見た平面図である。
図2は、ナプキン1を非肌側から見た平面図である。
図3は、
図1中のA−A矢視で示す概略断面図である。ナプキン1は、互いに直交する長手方向、幅方向、及び厚さ方向を有する。また、ナプキン1の長手方向のうち、着用者の下腹部に当接する側を「前側」、着用者の臀部に当接する側を「後側」と呼ぶ。また、ナプキン1の厚さ方向のうち、着用者に当接する側を「肌側」、その反対側を「非肌側」と呼ぶ。また、図中のX−X線は幅方向におけるナプキン1の中心線である。
【0036】
図3に示すように、ナプキン1では、厚さ方向の肌側から順に、トップシート3と、吸収体10と、バックシート5が積層されている。各部材3、10、5は厚さ方向に隣接する部材と不図示の接着剤で接合されている。また、ナプキン1は、吸収体10が設けられたナプキン本体部20と、ナプキン本体部20の長手方向中央領域から幅方向の両外側に延出した一対のウィング部30とを有する。
【0037】
トップシート3は液透過性のシートであり、エアスルー不織布等を例示できる。バックシート5は液不透過性のシートであり、ポリエチレン(PE)の樹脂フィルム等を例示できる。トップシート3及びバックシート5の平面形状は同形状であり、その平面サイズは吸収体10よりも大きく、吸収体10の平面全体を覆っている。
【0038】
ナプキン本体部20の非肌側面(バックシート5の非肌側面)には、本体部用粘着部21が設けられている。ナプキン1の使用時に本体部用粘着部21は下着等の肌側面に貼り付けられ、これによりナプキン1は下着等に固定される。
図2に示す本体部用粘着部21は、長手方向に長辺を有する長方形状の3個の粘着部が長手方向に間隔を空けて並ぶと共に、その3個の粘着部の列が幅方向に間隔を空けて8列並ぶ。
【0039】
同様に各ウィング部30の非肌側面(バックシート5の非肌側面)には、ウィング部用粘着部31が設けられている。ナプキン1の使用時にウィング部30は非肌側に折り曲げられ、ウィング部用粘着部31は下着等の非肌側面に貼り付けられ、これによりナプキン1は下着等に固定される。
図2に示すウィング部用粘着部31は長手方向に長辺を有する長方形状の粘着部である。
【0040】
吸収体10は、排泄物を吸収して内部に保持する部材であり、吸収性コア12と、吸収性コア12よりも肌側に肌側シート11と、吸収性コア12よりも非肌側に非肌側シート13とを有しており、各部材11〜13は厚さ方向に積層されている。吸収性コア12は、平面視縦長形状に成形され(
図1の破線部分)、液体吸収性繊維であるパルプ繊維等に液体吸収性粒状物である高吸収性ポリマー(所謂SAP)等が加えられ、液体吸収性繊維の目付構成比率が約90%、SAPの目付構成比率が約10%で構成されている。なお、液体吸収性繊維としては、セルロース系吸収性繊維を挙げることができる。
【0041】
肌側シート11は、液透過性のシートであり、ティッシュペーパー等を例示できる。非肌側シート13は、液透過性のシートであっても液不透過性のシートであってもよく、SMS(スパンボンド/メルトブローン/スパンボンド)不織布等を例示できる。吸収性コア12、肌側シート11及び非肌側シート13は、略同形の平面形状であり、吸収性コア12を肌面側及び非肌面側からそれぞれ覆うようにして接着剤(不図示)によって接合されている(
図3)。なお、肌側シート11及び非肌側シート13は、平面形状が異なるものであってもよく、各部材11〜13は接着剤によって互いに接合されていなくてもよい。
【0042】
また、ナプキン1は、長手方向の前側から順に前側領域R1、中央領域R2、後側領域R3を有している(
図1)。「前側領域R1」とは、ウィング部30が設けられた部分より前側の領域で、ウィング部用粘着部31より上側でナプキン1が最も幅方向に窪んだ部分より前側の領域をいう。「後側領域R3」とは、ウィング部30が設けられた部分より後側の領域で、ウィング部用粘着部31より後側でナプキン1が最も幅方向に窪んだ部分より後側の領域をいう。長手方向の前側領域R1と後側領域Bの間の領域で、ウィング部30が設けられている領域を中央領域R2という。ナプキン1は、前側領域R1に位置する前側折り畳み部Ffと、後側領域R3に位置する後側折り畳み部Fbで、3つ折りにされて個別に包装される。
【0043】
<中央誘導部14、吸収体点状圧搾部15、及び圧搾部25について>
図4は、吸収体10を非肌側から見た平面図である。
図5は、吸収体10を肌側から見た吸収体点状圧搾部15の拡大模式図である。平面視縦長形状の吸収体10のうち、幅方向において両外側の長手方向に沿った端をそれぞれ横端10e、長手方向の前側の湾曲形状の端を前端10et、後側の湾曲形状の端を後端10ebという。吸収体10は、吸収体点状圧搾部15によって厚さ3mm以下、望ましくは2mm以下となった所謂薄型の吸収体である。
【0044】
図4及び
図5に示すように、吸収体10には、長手方向は前端10etから後端10ebの間、幅方向は一方側の横端10eから他方側の横端10etの間の領域に、千鳥状で配置された複数の吸収体点状圧搾部15を有している。吸収体点状圧搾部15は、肌側及び非肌側からそれぞれ厚さ方向に凹んでいる。また、吸収体点状圧搾部15の平面形状は幅方向の長さLm2より長手方向の長さLm1の方が長い楕円形で(Lm1>Lm2)、排泄物等の長手方向への拡散を促している。
【0045】
吸収体点状圧搾部15は、幅方向に隣接する吸収体点状圧搾部15同士の中心の間隔が均等であり、長手方向に隣接する吸収体点状圧搾部15同士の中心の間隔が均等である。これにより、吸収体10の剛性を一定にしつつ、排泄物等の拡散を一定にすることができる。また、幅方向に隣接する吸収体点状圧搾部15同士の縁の間隔をLbは、吸収体点状圧搾部15の幅方向の長さLm2より短い(Lm2>Lb)。長手方向に隣接する吸収体点状圧搾部15の縁の間隔Ljは、幅方向に隣接する吸収体点状圧搾部15同士の縁の間隔Lbより短い(Lj<Lb)。
【0046】
吸収体10には、幅方向の中央部に長手方向に沿った中央誘導部14が設けられている。中央誘導部14は、吸収体10の前端10etから後端10ebまで、肌側及び非肌側からそれぞれ厚さ方向に凹んでいる。中央誘導部14は、中央誘導部14を基点として吸収体10を厚さ方向の肌側に折れ曲がるように誘導し、かつ、排泄物等を長手方向に誘導する。中央誘導部14による折れ曲がりの誘導と排泄物の誘導の詳細は後述する。
【0047】
点状圧搾部25は、トップシート2と吸収体10が厚さ方向に一緒に圧搾されており、円形状の圧搾部である。点状圧搾部25は、肌面側から厚さ方向に凹んでおり、後述の圧搾部26、27、28がトップシート2上に区画する略閉じた領域内に離散的に設けられている。
【0048】
図6A〜
図6Dは、中央誘導部14、吸収体点状圧搾部15、及び点状圧搾部25の形成について説明する図である。
図6Aは、
図1中のE−E矢視で示す部分の吸収体10に吸収体点状圧搾部15を形成した概略断面図である。
図6Bは、
図6Aの吸収体10に中央誘導部14を形成した概略断面図である。
図6Cは、
図6Bの吸収体10にトップシート3を積層した概略断面図である。
図6Dは、
図1中のE−E矢視で示す部分のナプキン1の概略断面図である。なお、
図6A、
図6B、
図6C中のy−y線は厚さ方向における吸収体10の中心線であり、
図6D中のY−Yは、厚さ方向におけるナプキン1の中心線である。中央誘導部14、吸収体点状圧搾部15、点状圧搾部25は、複数の突部を有する凸ローラー(不図示)と、表面が平らなアンビルローラー(不図示)との間のロール間隙に吸収体10、又はトップシート3を重ねた吸収体10を通して圧搾加工を行い形成される。
【0049】
まず、吸収体点状圧搾部15を形成する。加工前の吸収体10に非肌面側から圧搾(エンボス加工)すると、吸収体点状圧搾部15が形成され、圧搾されていない領域aと、圧搾加工されて肌側及び非肌側から凹んだ領域bとが形成される(
図6A)。領域bは液体吸収性繊維が押し潰されて、領域aより厚みが薄くなり、領域aより液体吸収性繊維の密度が高くなる。つまり、液体吸収性繊維の密度は、幅方向における、吸収体点状圧搾部15の中央部bcの方が、吸収体点状圧搾部15の端部より高い。このとき、吸収体点状圧搾部15は、吸収体10の厚さ方向における略中央部に位置している。
【0050】
続いて、中央誘導部14を形成する。中央誘導部14は、吸収体点状圧搾部15が形成された吸収体10の吸収体の幅方向の中央部に非肌面側から賦型・圧搾加工をすると、中央誘導部14が形成され、新たに肌側及び非肌側から凹んだ領域cが形成される(
図6B)。領域cは、吸収体点状圧搾部15と同様に、液体吸収性繊維が押し潰されて、領域aより厚みが薄くなり、領域aより液体吸収性繊維の密度が高くなる。つまり、液体吸収性繊維の密度が、幅方向において、中央誘導部14の中央部ccの方が、中央誘導部14の端部よりも高い。
【0051】
なお、液体吸収性繊維の密度は、中央誘導部14の中央部ccより、吸収体点状圧搾部15の中央部bcの方が高いことが好ましい。これは、吸収体点状圧搾部15を形成する圧搾を、中央誘導部14を形成する圧搾より大きな加圧で行うことで実現できる。これにより、まず中央誘導部14で吸収した排泄物を、液体吸収性繊維の密度がより高い吸収体点状圧搾部15に誘導することができる。ただし、吸収体点状圧搾部15を形成した部分に、さらに中央誘導部14を形成した場合には、部分的に中央誘導部14の厚みがより薄くなり、液体吸収性繊維の密度がより高くなる。
【0052】
続いて、
図6Cに示すように吸収体10の肌側からトップシート3を積層し、接着剤(HMA)により固着する。なお、
図6C及び
図6Dでは接着剤を省略している。
【0053】
そして、点状圧搾部25を形成する。トップシート3と吸収体10とを厚さ方向に一緒に肌面側から圧搾して、新たに肌側から凹んだ領域dが形成される(
図6D)。その後、非肌側にバックシート5を積層して、接着剤で固着してナプキン1とする。領域dは、液体吸収性繊維が更に押し潰されて、領域aより厚みが薄くなり、領域aより液体吸収性繊維の密度が高くなる。つまり、液体吸収性繊維の密度は、幅方向における、点状圧搾部25の中央部dcの方が、点状圧搾部25の端部より高い。このとき、点状圧搾部25は、ナプキン1の厚さ方向における略中央部に位置している。なお、
図6Dでは、吸収体点状圧搾部15が形成された部分に点状圧搾部25を形成したが、これに限られない。吸収体点状圧搾部15と点状圧搾部25を同じ位置に形成しても、別々の位置に形成してもよい。
【0054】
<圧搾部26、27、28、29について>
また、ナプキン1には、厚さ方向の肌側から非肌側に向かって凹んでいて、隣接する部位に比べて液体吸収性繊維の密度の高い線状の圧搾部26、27、28、29が設けられている。この圧搾部26、27、28、29によって、トップシート3と吸収体が厚さ方向の肌側から圧搾(エンボス加工)され、接合一体化されている。圧搾部26、27、28は、全体として長手方向に長い略環状を成しており、吸収体10の外周縁部に沿って、圧搾部26と圧搾部27と圧搾部28が連なって形成されている。
【0055】
圧搾部26は、前側領域R1に設けられており、前側圧搾部26aと線状圧搾部26bを有している。前側圧搾部26aは、最も前側に位置し、長手方向と交差して、前側に凸形状を有するナプキン1の外形に概ね沿っている。前側圧搾部26aの後側の各端と、線状圧搾部26bの前側の各端はそれぞれ接続されており、線状圧搾部26bは前側圧搾部26aより後側で前側圧搾部26aの後側の各端から前側領域R1の後側部分に亘って設けられている。
【0056】
圧搾部27は、主に中央領域R2に設けられており、線状圧搾部(一方側線状圧搾部、他方側線状圧搾部)27aと重畳圧搾部27b、27cを有し、中央誘導部14について対称な形状である。線状圧搾部27aは、中央領域R2の吸収体10の幅方向の両端部にそれぞれ、長手方向に沿って設けられており、一方側線状圧搾部27aは、吸収体10の一方側の横端10eと中央誘導部14との間に位置しており、他方側線状圧搾部27aは、他方側の横端10eと中央誘導部との間に位置している。この各線状圧搾部27aの最も幅方向の外側の端は、横端10eから所定距離(例えば、7mm)だけ離間された位置に配置されており、横端10eから各線状圧搾部27aの幅方向の最も外側の端までの距離が3mm以上であることが好ましい。また、重畳圧搾部27bは、線状圧搾部27aより前側の前側領域R1に設けられており、線状圧搾部26bの後側端部に幅方向の外側から隣接し、吸収体10の幅方向の両端部に位置している。重畳圧搾部27cは、線状圧搾部27aより後側の後側領域R3に設けられており、線状圧搾部28b(後述)の前側端部に幅方向の外側から隣接し、吸収体10の幅方向の両端部に位置している。なお、重畳圧搾部27bの後側の各端と、線状圧搾部27aの前側の各端はそれぞれ接続しており、線状圧搾部27aの後側の各端と、重畳圧搾部27cの前側の各端はそれぞれ接続している。
【0057】
圧搾部(第2圧搾部)28は、後側領域R3に設けられており、後側圧搾部28aと線状圧搾部28bを有し、中央誘導部14について対称な形状である。後側圧搾部28aは、最も後側に位置し、長手方向と交差して、ナプキン1の外形に概ね沿っている。後側圧搾部28aの前側の各端と、線状圧搾部28bの後側の各端はそれぞれ接続しており、線状圧搾部28bは、後側圧搾部28aより前側で、後側圧搾部28aの前側の各端から、後側領域R3の前側部分に亘って設けられている。
【0058】
圧搾部29(第1圧搾部)は、後側領域R3に位置しており、圧搾部28の長手方向及び幅方向の内側に設けられている。また、圧搾部29は、内側圧搾部29aと線状圧搾部(後側線状圧搾部)29bを有し、中央誘導部14について対称な形状である。内側圧搾部29aは、後側圧搾部28aより前側で、後側に凸形状で長手方向と交差しており、後側圧搾部28aより幅方向の長さが短い。また、線状圧搾部29bの下側の各端と、内側圧搾部29aの前側の各端はそれぞれ接続しており、線状圧搾部29bより後側で、内側圧搾部29aより前側の各端から、後側領域R3の前側部分に亘って設けられている。
【0059】
なお、本実施形態において、前側圧搾部26aと各線状圧搾部26bとの境界、線状圧搾部27aと各重畳圧搾部27b、27cとの境界、後側圧搾部28aと各線状圧搾部28bとの境界、内側圧搾部29aと各線状圧搾部29bは、便宜上設定したがこれに限られない。前側圧搾部26a、後側圧搾部28a、内側圧搾部29aは、それぞれ少なくとも中央誘導部14を跨ぐ長さを有していればよく、各線状圧搾部26b、各線状圧搾部28b、各線状圧搾部29bは、少なくとも一部分が長手方向に沿っていればよい。前側圧搾部27a、後側圧搾部28a、及び内側圧搾部29aは、少なくとも中央誘導部14を跨ぐ長さの線状の圧搾部であればよい。また、各重畳圧搾部27b、27cは必ずしも設けなくてもよいが、各重畳圧搾部27b、27cを設けることによって、折り畳み部Ff、Fbによる折れ曲がり動作の生じやすい部分から排泄物が漏れてしまう恐れをより軽減させることができる。各圧搾部26、27、28、29の長さや形状は任意に設定することができる。
【0060】
<中央誘導部14による吸収体10を肌側に折り曲げる誘導について>
吸収体10に設けられた中央誘導部14が、厚さ方向に凹んだ中央誘導部14を基点として、吸収体10を厚さ方向の肌側に折れ曲がるように誘導することができるため、ナプキン1の着用時に、着用者の脚の挟み込みの力が作用すると、吸収体10の長手方向の中央領域は、幅方向の側部から中央部に向かって肌側に凸となる形状に変形する。
図7は、ナプキン1の使用態様について説明する図である。使用者がナプキン1を装着する際には、ナプキン1を下着の股下部(クロッチ部)に固定した状態で、下着を使用者の股間201K側に引き上げる動作を行う。このとき、
図7の状態Aで表されるように吸収体10を備えたナプキン1は、中央誘導部14に沿って肌側に折れ曲がる。そして、ナプキン1が使用者の股間201Kに装着された状態では、
図7の状態Bで表されるように、中央誘導部14に沿って肌側に折れ曲がった部分が膣口等の排泄口201Heが存在する隙間に接しやすくなる。これにより、使用者に良好なフィット性を感じさせ易くなると共に、経血等の排泄物を漏れなく吸収体10に吸収させ易くすることができる。
【0061】
<中央誘導部14による排泄物の誘導について>
中央誘導部14は、長手方向に沿った形状で、圧搾加工によって厚さ方向に凹ませ、液体吸収性繊維の密度を高めているため、排泄物等の液体を長手方向に誘導することができる。以下、排泄物等の液体の拡散性について説明する。本実施形態において、吸収体10における排泄物等の拡散は、吸収体10内の液体吸収性繊維の割合が多いため(液体吸収性繊維:SAP=90:10)、所謂「毛管現象」によって、排泄物等の拡散が促されている。「毛管現象」とは、「毛細管現象」ともいい、管中の液面の上昇又は効果の度合いは液体の表面張力に比例し、管の内径に反比例することをいう。本実施形態においては、繊維と繊維の間の空間が管に相当し、繊維と繊維の間の狭い空間を重力や上下左右関係なく液体が浸透していく現象をいい、液体吸収性繊維の隙間が狭いほど液体の浸透が速まる。つまり、液体吸収性繊維の密度が高いほど、排泄物がより拡散する。
【0062】
図8A〜
図8Dは、本実施形態の吸収体10と同様にトップシート、吸収性コア、バックシートを有する吸収体であり、所定量の液体を滴下し、一定時間経過後の状態を示している。
図8A〜
図8Dにおいて、各図面の上下方向は長手方向、左右方向は幅方向を示している。
【0063】
まず、
図8Aは、吸収体点状圧搾部及び中央誘導部を有さない吸収体について説明する図である。この場合、吸収体点状圧搾部と中央誘導部を有していないため、滴下された液体がその場でほぼ同心円状で、滴下された場所でほぼ留まっている。
【0064】
図8Bは、吸収体点状圧搾部を有し、中央誘導部を有さない吸収体について説明する図である。この場合は、滴下された液体は、液体吸収性繊維の密度が高くなった吸収体点状圧搾部の毛管現象によって、隣接する吸収体点状圧搾部間へと促され、
図8Aの場合よりも広い範囲に拡散している。このとき、液体は、長手方向及び幅方向に同程度拡散して、ほぼ同心円状に拡散している。
【0065】
図8Cは、吸収体点状圧搾部を有しておらず、中央誘導部を有する吸収体について説明する図である。そのため、滴下された液体は、液体吸収性繊維の密度が高くなった中央誘導部の毛管現象によって、中央誘導部に沿って液体の拡散が促され、幅方向には液体の拡散があまり進んでいないが、中央誘導部に沿った部分については液体がより長く拡散されている。
【0066】
図8Dは、吸収体点状圧搾部と中央誘導部を有する吸収体について説明する図である。液体吸収性繊維の密度が高くなった吸収体点状圧搾部の毛管現象によって、隣接する吸収体点状圧搾部間へと促され、液体吸収性繊維の密度が高くなった中央誘導部の毛管現象によって、中央誘導部に沿って液体の拡散が促される。その結果、幅方向にも長手方向にも液体の拡散が促されている。このとき、吸収体点状圧搾部のみを形成した場合(
図8B)は、ほぼ同心円状に液体が拡散していたのに対し、中央誘導部による液体の拡散によって、吸収体点状圧搾部による液体の拡散効果と中央誘導部による液体の拡散効果が組み合わされて、液体が拡散した領域が縦長の楕円形状となる(
図8D)。吸収体に均一の間隔で形成された吸収体点状圧搾部は、幅方向及び長手方向へ拡散し、排泄物等が広がった範囲を略同心円状とする。中央誘導部は、吸収体の長手方向に沿って形成されており、液体をより長手方向へ拡散させる。
【0067】
中央誘導部は、中央誘導部の凹み(圧搾)の深さや、長手方向の長さ及び、中央誘導部が形成された面積等を変化させることで、液体の拡散量を変化させることができる。例えば、より高圧力な圧搾によって形成された中央誘導部は、液体吸収性繊維の密度が高くなり、長手方向への液体の拡散をより促すことができる。また、より長く、より面積の広い中央誘導部は、液体吸収性繊維の密度が高い領域が広くなるため、長手方向への液体の拡散をより促すことができる。
【0068】
例えば、吸収体に所定量(例えば、5ml)の人工経血等の液体を吸収体の略中央に滴下し、所定時間(例えば、60分後)経過後の状態を観察する。その結果に応じて中央誘導部の調整を行うことができる。長手方向への拡散が不十分であると判断できる場合には、中央誘導部の圧搾をより強くしたり、中央誘導部の幅方向の長さをより長くしたりすればよい。また、中央誘導部の長手方向の長さをより長くすることで、吸収体の長手方向のより外側に液体を拡散することもできる。さらに、液体吸収性繊維とSAPとを有する吸収体について、液体吸収性繊維の割合をより一層増やすことで、液体の拡散性を向上させることもできる。一方、長手方向への拡散が進み過ぎていると判断できる場合には、中央誘導部の圧搾をより弱くしたり、中央誘導部の幅方向の長さを短く、狭い範囲に形成したりすればよい。また、吸収体のSAPの構成比を増やしてもよい。
【0069】
さらに、中央誘導部だけでなく、中央誘導部と、点状及び線状の圧搾部を組合せることにより、液体の拡散をより柔軟に調整することができる。中央誘導部、点状及び線状の圧搾部の圧搾範囲や圧搾の強さ等についても、上記の中央誘導部の調整と同様に、その状態を観察して決定すればよい。
【0070】
例えば、幅方向への液体の拡散が進み過ぎて、長手方向への液体の拡散が不十分である場合には、中央誘導部をより強い圧搾で形成して長手方向への拡散を促す一方、点状の圧搾部の数を減らして幅方向への液体の拡散を減らしてもよい。同様に、長手方向への液体の拡散が適度に行われ、幅方向への液体の拡散が不十分である場合には、中央誘導部はそのままで、点状の圧搾部の数や圧搾量を増やすことで、幅方向への拡散をより促すことができる。さらに、点状の圧搾部の長手方向の密度と、点状の圧搾部の幅方向の密度を変えることによっても、長手方向への液体の拡散と幅方向への液体の拡散とを変化させることができる。
【0071】
<<<本実施形態に係るナプキン1の有効性について>>>
図9は、ナプキン1が排泄物を吸収したときの排泄物存在領域Q(q)を説明する模式図である。排泄物存在領域Qとは、ナプキン1の吸収体10が排泄物等を吸収したときに排泄物等が存在する領域をいい、ナプキン1を肌側から見たときに排泄物等を認識できる範囲をいう。
図9においては、使用者がナプキン1を使用して一定時間経過した後の状態であり、所定量の排泄物等を吸収した状態を模式的に示したものである。なお、排泄物存在領域Qは、一定形状を呈するとは限らず、いびつな形状や、まだらな色彩を有していたりするため、以下の説明においては、排泄物存在領域Qに外接した楕円形状(
図9中の点線領域)を排泄物存在領域qとして説明する。
【0072】
以下、ナプキン1と基本的に同じ構成を有しているが、中央誘導部14及び圧搾部26等を有さないナプキン100と、本実施形態のナプキン1に所定量の液体を滴下した結果を比較して説明する。ナプキン100の吸収体101及びナプキン1の吸収体10は、いずれも長手方向の長さが約285mm、幅方向の長さが約70mmである。ナプキン100とナプキン1に滴下する液体は、着色した水等の液体を使用し、ナプキン100及びナプキン1の幅方向の中心線X−Xとウィング粘着部中心線W−Wとが交差する部分に滴下する。そして、滴下された液体が拡散した領域を排泄物存在領域Qとして検討するところ、便宜上、排泄物存在領域Qの概略図形である排泄物存在領域qで説明する。
【0073】
図10Aは、ナプキン100の使用前の状態を示す模式図である。なお、ナプキン1と同様にナプキン100の吸収体10には、複数の吸収体点状圧搾部15を有している。
【0074】
図10Bは、
図10Aのナプキン100に液体を滴下し、所定時間経過後の状態を示す模式図である。
図10Aのナプキン100に、0.5mlの液体を滴下して1時間経過した状態を表している。このとき、排泄物存在領域qは、長手方向の長さT及び幅方向の長さSがそれぞれ約30mmの略同心円形状となり、吸収体101の内側に収まっている。
【0075】
図10Cは、
図10Aのナプキン100に液体を滴下し、所定時間経過後の状態を示す模式図である。
図10Aのナプキン100に、3.0mlの液体を滴下して1時間経過した状態を表している。このとき、排泄物存在領域qは、
図10Bの状態より広くなり、長手方向の長さT及び幅方向の長さSがそれぞれ約75mmの略同心円形状で、吸収体101の長手方向には収まっているが、幅方向の両外側にはみ出している。そのため、吸収体101の前側領域及び後側領域は、ほとんど液体を吸収していないが、吸収体101の幅方向の端から液体が漏れてしまい、ナプキン1の外側にも液体が漏れてしまう恐れを生じる可能性がある。
【0076】
一方、本実施形態にかかるナプキン1は、中央誘導部14及び圧搾部26、27、28、29を有している。
図11Aは、ナプキン1の使用前の状態を示す模式図である。なお、本実施形態のナプキン1は、排泄物存在領域qの長手方向の長さTの半分(T/2)を、幅方向の長さSで除した値((T/2)/S)が、前側圧搾部26aの前側の端26aeからウィング粘着部中心線W−Wまでの距離Hを、ウィング粘着部中心線W−Wにおける吸収体10の幅方向の長さKで除した値(H/K)以上とする((T/2)/S≧H/K)、中央誘導部14を備えている。
【0077】
ここで、前述したように、排泄物等の拡散状態は、中央誘導部の圧搾状態や形状、点状の圧搾部の圧搾状態や分布状態等によって変化する。そこで、例えば、次のような手順により、(T/2)/S≧H/Kを実現する中央誘導部14を形成することが可能となる。まず、点状圧搾部25の分布密度のみ異なる3種類のナプキン(圧搾部26、27、28、29は同じ、中央誘導部14は未形成)を準備する。次に、各ナプキンに対して、圧力を変えて中央誘導部14(長さは同じ)を圧搾する。これにより、中央誘導部14の圧搾状態のみ異なる3種類のナプキンが得られる。次に、これらのナプキンに対して、前述したように液体(人工経血等)を滴下して拡散状態を観察し、(T/2)/S≧H/Kとなるナプキンを特定する。
(T/2)/S≧H/Kとなるナプキンが特定されれば、それに形成された中央誘導部14を採用すればよい。もし、(T/2)/S≧H/Kとなるナプキンが存在しなければ、上記の実験結果を踏まえて、より長手方向(又は幅方向)に拡散させるべく、前述したように、中央誘導部14の幅や長さを変える等の対応を行なえばよい。
【0078】
次に、以上のようにして得られたナプキン((T/2)/S≧H/Kとなるナプキン)における排泄物の拡散状態について、図を用いてより詳しく説明する。
図11Bは、
図11Aのナプキン1に液体を滴下し、所定時間経過後の状態を示す模式図である。
図11Aのナプキン1に、0.5mlの液体を滴下して1時間経過した状態を表している。このとき、排泄物存在領域qは、長手方向の長さTが約60mm、幅方向の長さSが約30mmの縦長の楕円形状となり、吸収体10の内側に収まっている。
【0079】
図11Cは、
図11Aのナプキン1に液体を滴下し、所定時間経過後の状態を示す模式図である。
図11Aの状態のナプキン1に3.0mlの液体を滴下して1時間経過した状態を表している。このとき、排泄物存在領域qは、長手方向の長さTが約120mm、幅方向の長さSが約60mmの縦長の楕円形状となり、吸収体10の内側に収まっている。
【0080】
図11B及び
図11Cに示すように、本実施形態のナプキン1は、吸収体10の中心線X−Xとウィング粘着部中心線W−Wとの交差する部分で吸収した排泄物等を、中央誘導部14が、幅方向よりも長手方向へ拡散させている。排泄物存在領域qの長手方向の長さTの半分(T/2)を、幅方向の長さSで除した値((T/2)/S)が、前側圧搾部26aの前側の端26aeからウィング粘着部中心線W−Wまでの距離Hを、ウィング粘着部中心線W−Wにおける吸収体10の幅方向の長さKで除した値(H/K)以上とすることで((T/2)/S≧H/K)、いずれの状態においても排泄物存在領域qを吸収体10の内側に収めており、吸収体10のより広い範囲に排泄物を拡散しつつ、吸収体10の幅方向の外側に排泄物が漏れる恐れを軽減している。つまり、排泄物存在領域qが吸収体10の横端10eに達するより前に前側圧搾部26aに達するように排泄物を誘導することができ、ナプキン100の吸収体101の場合よりも、吸収体10のより広い範囲で排泄物等を吸収させることができる。
【0081】
また、
図11Dは、ナプキン1の最大排泄物存在領域qmを示す模式図である。
図11Dに示すように、拡散した液体が前側圧搾部26aの前側の端26aeに到達したときの排泄物存在領域qを最大排泄物存在領域qmといい、排泄物存在領域qmの長手方向の長さTmの半分(Tm/2)を、幅方向の長さSmで除した値((Tm/2)/Sm)が、前側圧搾部26aの前側の端26aeからウィング粘着部中心線W−Wまでの距離Hを、ウィング粘着部中心線W−Wにおける吸収体10の幅方向の長さKで除した値(H/K)以上となる((Tm/2)/Sm≧H/K)。そのため、最大排泄物存在領域qmの状態まで排泄物が広がった状態においても、吸収体10の横端10eから排泄物が漏れる恐れを軽減することができる。
【0082】
なお、最大排泄物存在領域qmは、長手方向においてウィング粘着部中心線W−Wに対して非対称な形状である。つまり、最大排泄物存在領域qmの前側の端(前側圧搾部26aの前側の端26ae)からウィング粘着部中心線W−Wまでの距離より、ウィング粘着部中心線W−Wから最大排泄物存在領域qmの後側の端までの距離の方が長い。これは、吸収体10の後側領域に設けられた各線状圧搾部28b、29bが、長手方向への排泄物の拡散を促しているからである。ナプキン1は、前側領域R1より後側領域R3の方が長いため、各線状圧搾部28b、29bによって、より後側領域への排泄物の拡散を促すことができ、最大排泄物存在領域qmをより広い領域にすることができる。
【0083】
さらに、吸収体10の中央領域R2に、長手方向に沿った一方側線状圧搾部27aと他方側線状圧搾部27aが設けられており、各線状圧搾部27aの幅方向の外側の端は外端27aeである。排泄物存在領域qの長手方向の長さTの半分を、排泄物存在領域qの幅方向の長さSで除した値((T/2)/S)が、前側圧搾部26aの前側の端26aeからウィング粘着部中心線W−Wまでの距離Hを、ウィング粘着部中心線W−Wにおける一方側の外端27aeと他方側の外端27aeとの距離Jで除した値以上((T/2)/S≧H/J)とすることが好ましい。これにより、排泄物存在領域qが、各線状圧搾部27aの外端27aeに達すると同時に又は外端27aeに達するより前に、前側圧搾部26aに達するように排泄物を誘導することができる。
【0084】
さらに、ナプキン1は、肌面側を内側にして折り畳むための、幅方向に沿った複数の折り畳み部Ff、Fbを有しており、吸収体10は、吸収体10の後側領域に、厚さ方向に凹み、長手方向と交差する後側圧搾部28aを有しており、前側圧搾部26aが、ウィング粘着部31に最も近い前側折り畳み部Ffより前側に設けられ、かつ、ウィング粘着部31に最も近い後側折り畳み部Fbより後側に設けられていることが好ましい。前側圧搾部26a及び後側圧搾部28aは排泄物を幅方向(as26、as28)に誘導するため、前側圧搾部26a及び後側圧搾部28aが、吸収体10の前端10et及び後端10ebより外側に排泄物等が漏れる恐れを軽減しており、前側圧搾部26aを前側折り畳み部Ffより前側に設け、後側圧搾部28aを後側折り畳み部Fbより後側に設けることで、前側圧搾部26aと後側圧搾部28aの間に設けられた中央誘導部14の長さを確保することができ、吸収体10のより広い範囲で排泄物等を吸収させることができる。
【0085】
さらに、吸収体10は、長手方向における吸収体10の後側領域に、厚さ方向に凹み、長手方向に沿った、線状の線状圧搾部29bを有していることが好ましい。この排泄物存在領域Q(q)が線状圧搾部29bにまで到達すると、線状圧搾部29bに沿った後側(ab29)へ排泄物の拡散を促すことができるため、ナプキン1のように前側より後側の方が長い場合においては、より後側へ排泄物を拡散させた方が吸収体10のより広い範囲で排泄物を吸収させることができる。なお、本実施形態においては、線状圧搾部29bより幅方向外側に、長手方向における吸収体10の後側領域に、厚さ方向に凹み、長手方向に沿った、線状の線状圧搾部28bも有している。この線状圧搾部28bについても、排泄物を後側(ab28)へより拡散することができるため、排泄物存在領域Q(q)が線状圧搾部28bにまで達した場合には、より長手方向への拡散を促して、吸収体10の横端10eより外側に排泄物が漏れてしまう恐れを軽減することができる。
【0086】
さらに、吸収体10は、長手方向における吸収体10の後側領域に、厚さ方向に凹み、長手方向と交差する後側圧搾部28a、29aを有しており、各線状圧搾部28b、29bは、長手方向における、ウィング粘着部31の後側の端から最も後側に位置する後側圧搾部28aの最も後側の端28aeまでの間に位置していることが好ましい。これにより各線状圧搾部28b、29bによって後側(ab28、ab29)に促された排泄物が、後側圧搾部28aまで達すると幅方向の外側(as28)へ促されるため、後側圧搾部28aより長手方向の外側に排泄物が漏れる恐れを軽減することができる。
【0087】
さらに、ナプキン1は、一対の線状圧搾部29bと、線状圧搾部29bの長手方向の各端と接続された後側圧搾部29aを有する圧搾部29と、一対の線状圧搾部28bと、線状圧搾部28bと長手方向の各端と接続された後側圧搾部28aを有する圧搾部28を備えており、長手方向及び幅方向において、圧搾部29は、圧搾部28より内側に位置していることが好ましい。これにより、線状圧搾部29bによって、排泄物を後側(ab29)に誘導することができ、後側圧搾部29aまで排泄物が広がった場合においても、圧搾部29より外側に位置する線状圧搾部28bによって、吸収体10の幅方向の外側に排泄物が漏れてしまう恐れを軽減することができる。また、後側圧搾部29aによって、排泄物を幅方向の外側(as29)に移動させることができる。さらに、後側圧搾部29aより後側に排泄物が広がった場合でも、圧搾部29より外側に位置する圧搾部28の後側圧搾部28aによって、吸収体10の後側に排泄物が漏れてしまう恐れを軽減することができる。
【0088】
さらに、ナプキン1の中央誘導部14は、吸収体10の前側の端10etから後側の端10ebまで設けられており、中央誘導部14は、前側圧搾部26a及び後側圧搾部28aと交差していることが好ましい。これによって、中央誘導部14によって排泄物を長手方向(af14、ab14)へ拡散させつつ、中央誘導部14と、それぞれ前側圧搾部26a及び後側圧搾部28aと交差した部分で、前側圧搾部26a及び後側圧搾部28aが幅方向の外側(as26、as28)へ排泄物の誘導を促すことができるので、吸収体10の長手方向の外側に排泄物が漏れることを軽減することができる。つまり、ナプキン1の後側領域R3においては、排泄物を長手方向へ促すことができる一対の線状圧搾部28bと一対の線状圧搾部29bをそれぞれ有し、排泄物を幅方向へ促す傾向が強い後側圧搾部28aと後側圧搾部29aを有しているため、各線状圧搾部28b、29bによって排泄物が長手方向の外側へ促された場合においても、後側圧搾部28aが実質的に長手方向への拡散を堰き止める役割を担い、吸収体10の後側の端10ebの外側に排泄物が漏れてしまう恐れを軽減することができる。
【0089】
さらに、
図6Dに示すように、中央誘導部14の中央部ccにおける厚さ方向の中央位置は、吸収体点状圧搾部15の中央部bcにおける厚さ方向の中央位置より、肌側に位置していることが好ましい。これによって、吸収体10が中央誘導部14を基点に肌側に折り曲がり、使用者の膣口等の排泄口に当接されるため、まず、中央誘導部14で吸収した排泄物等を肌側から非肌側に移動させて、点状圧搾部15へ移動させる。これによって、肌に当接する部分に排泄物が滞留することを軽減して、肌触りを向上させることができる。
【0090】
さらに、
図6Dに示すように、中央誘導部14の領域cと、中央誘導部14と幅方向に隣接する吸収体点状圧搾部15の領域bとの間に、液体吸収性繊維の密度が、中央誘導部14の中央部cc及び吸収体点状圧搾部15の中央部bcより低い領域aが設けられていることが好ましい。つまり、圧搾加工により液体吸収性繊維の密度をより高くした領域cと領域bとの間に、圧搾加工が施されておらず、液体吸収性繊維の密度が比較的低い領域aが設けられていることで、液体吸収性繊維の低い領域aでは、中央誘導部14で吸収し、移動された排泄物を貯留することができ、領域aで貯留しきれなくなった排泄物を幅方向に隣接する点状圧搾部に吸収させるという流路の役割を担うことができる。
【0091】
===その他の実施の形態===
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。また、本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更や改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれるのはいうまでもない。
【0092】
上記の実施形態では、吸収体10の前端10etから後端10ebまで中央誘導部14を設けたが、必ずしもこれに限られない。前側圧搾部26aの前側の端26atから後側圧搾部28の後側の端28abまでの間に中央誘導部14を設けるものとしても良い。この場合においても、長手方向において、前側は少なくとも前側圧搾部26aまで、後側は少なくとも後側圧搾部28aまで中央誘導部14が排泄物を長手方向に誘導することができるため、長手方向に拡散することを可能にしつつ、前側圧搾部26a及び後側圧搾部28aより長手方向の外側には、排泄物を誘導しづらくなるため、長手方向の外側に排泄物が漏れる恐れを軽減することができる。ただし、排泄物の量が多い場合には、吸収体10の横端10eの外側に排泄物が漏れてしまう恐れがあるため、そのような場合には、中央誘導部14を吸収体10の全域に亘って設けることで、前側圧搾部26及び後側圧搾部28より長手方向の外側に排泄物を誘導して、排泄物が漏れる恐れを軽減することができる。
【0093】
また、上記の実施形態では、後側領域R3において、圧搾部28と圧搾部29の2つを設けたが、これに限られない。圧搾部28だけ設けてもよいし、圧搾部28、29以外に更に他の圧搾部を設けてもよい。排泄物存在領域Q(q)の長手方向の長さ及び幅方向の長さを、中央誘導部14及び圧搾部28、29等の圧搾部によって任意に調整することができる。
【0094】
上記の実施形態では、圧搾部25や吸収体10に複数の吸収体点状圧搾部15を設けたが、必ずしも設ける必要はない。また、中央誘導部14や圧搾部26、27、28、29等についても圧搾加工を行うことによって形成したが、これに限られない。目付量を変化させたり、溝部を形成したりしてもよい。中央誘導部14、圧搾部25、26、27、28、吸収体点状圧搾部15等は、排泄物存在領域Q(q)の範囲に対応して、適宜調整することができる。
【0095】
上記の実施形態では、本発明の吸収性物品を生理用ナプキンとしているがこれに限らず、例えばパンティーライナー、尿取りパッド、使い捨ておむつ等に利用してもよい。
【解決手段】吸収体(10)は、幅方向における吸収体(10)の中央領域に、厚さ方向に凹み、長手方向に沿う、排泄物を誘導する中央誘導部(14)と、長手方向における吸収体(10)の前側領域に、厚さ方向に凹み、長手方向と交差する前側圧搾部(26a)と、を有しており、吸収体(10)が吸収したときに排泄物が存在する領域を排泄物存在領域(Q)としたとき、排泄物存在領域(Q)の長手方向の長さ(T)の半分を、排泄物存在領域(Q)の幅方向の長さ(S)で除した値が、吸収体(10)の前側圧搾部(26)の長手方向の最も前側の端(26ae)からウィング粘着部(31)の長手方向の中央までの距離(H)を、中央における吸収体(10)の幅方向の長さ(K)で除した値以上となるように、中央誘導部(14)が排泄物を誘導する。