(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第2レンズ群が、最も像側に配置されており物体側に凹面を向けたメニスカス形状の負レンズ成分と、前記負レンズ成分の物体側に隣り合って配置された正レンズ成分とをさらに有することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のズームレンズ。
前記第2レンズ群における最も物体側に配置された前記正レンズ成分よりも像側に開口絞りを有することを特徴とする請求項1から請求項10のいずれか一項に記載のズームレンズ。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本願のズームレンズ、光学装置及びズームレンズの製造方法について説明する。
本願のズームレンズは、物体側から順に、負の屈折力を有する第1レンズ群と、正の屈折力を有する第2レンズ群とからなり、前記第1レンズ群が、物体側から順に、1つの負レンズ成分と、1つの正レンズ成分とからなり、前記第2レンズ群が、物体側から順に、正レンズ成分と、負レンズと正レンズとの接合正レンズと、正レンズと負レンズとの接合負レンズとを有し、広角端状態から望遠端状態への変倍時に、前記第1レンズ群と前記第2レンズ群との間隔が変化し、以下の条件式(1)を満足することを特徴とする。
(1) −2.00 < (r2n1+r1n1)/(r2n1−r1n1) < 0.00
但し、
r1n1:前記第1レンズ群における前記負レンズ成分中の最も物体側のレンズ面の曲率半径
r2n1:前記第1レンズ群における前記負レンズ成分中の最も像側のレンズ面の曲率半径
【0012】
上記のように本願のズームレンズは、物体側から順に、負の屈折力を有する第1レンズ群と、正の屈折力を有する第2レンズ群とからなる負先行ズームレンズを改善したものである。具体的には、本願のズームレンズは、レンズ枚数を必要以上に増やすことなく、小型化を図りながら、球面収差、コマ収差及び非点収差を良好に補正したものである。
【0013】
条件式(1)は、第1レンズ群において最も物体側に位置する負レンズ成分の形状因子(qファクタ)を規定する条件式である。条件式(1)は、当該負レンズ成分び形状が両凹形状から平凹形状を経て|r1n1|=3|r2n1|の条件を満たすメニスカス形状の範囲にあることを示している。本願のズームレンズは、条件式(1)を満足することにより、広角端状態において像面湾曲、非点収差、歪曲収差及びコマ収差を良好に補正することができる。
ここで、本願において「レンズ成分」とは、2枚以上のレンズを接合してなる接合レンズ、或いは単レンズをいう。なお、後述する本願の各実施例で示す複合型非球面レンズは、ガラスレンズに樹脂層を成型するという特性上、樹脂層が光学系として独立に存在し得ないため、1枚のレンズとして扱うものとする。
【0014】
本願のズームレンズの条件式(1)の対応値が上限値を上回ると、第1レンズ群における負レンズ成分中の最も物体側のレンズ面が最も像側のレンズ面よりも曲率半径の絶対値が小さくなる。この場合、非点収差や歪曲収差が悪化してしまうので好ましくない。なお、条件式(1)の上限値を−0.10とすれば、前述の諸収差の補正が有利になるので好ましい。また、条件式(1)の上限値を−0.50とすれば、本願の効果を最大限に発揮することができるのでより好ましい。
【0015】
一方、本願のズームレンズの条件式(1)の対応値が下限値を下回ると、第1レンズ群における負レンズ成分中の最も物体側のレンズ面の曲率半径が最も像側のレンズ面の曲率半径と近い値になり、結果的に屈折力が低下する。斯かる負レンズ成分の負の屈折力の低下は、本願のズームレンズの大型化とフィルタサイズの大型化を招いてしまう。また、収差補正の観点では、本願のズームレンズを無理に小型化しようとすれば、軸外収差のみならず、望遠端状態における球面収差も悪化してしまうので好ましくない。なお、条件式(1)の下限値を−1.80とすれば、前述の諸収差の補正が有利になるので好ましい。また、条件式(1)の下限値を−1.50とすれば、本願の効果を最大限に発揮することができるのでより好ましい。
以上の構成により、諸収差を良好に補正した高性能なズームレンズを実現することができる。
【0016】
また本願のズームレンズは、以下の条件式(2)を満足することが望ましい。
(2) 0.00 < (r2n3−r1n3)/(r2n3+r1n3) < 1.00
但し、
r1n3:前記第2レンズ群における前記接合負レンズ中の最も物体側のレンズ面の曲率半径
r2n3:前記第2レンズ群における前記接合負レンズ中の最も像側のレンズ面の曲率半径
【0017】
条件式(2)は、第2レンズ群における接合負レンズの形状因子(qファクタ)の逆数を規定する条件式である。条件式(2)は、当該接合負レンズ中の最も物体側のレンズ面の曲率半径と最も像側のレンズ面の曲率半径とが近い値であることを意味している。なお、条件式(2)の値が1.00のとき、当該接合負レンズは平凹形状となる。本願のズームレンズは、条件式(2)を満足することにより、球面収差、非点収差及び望遠端状態における球面収差とコマ収差を良好に補正することができる。
【0018】
本願のズームレンズの条件式(2)の対応値が上限値を上回ると、第2レンズ群における接合負レンズが両凹形状になる。この場合、結果的に球面収差や非点収差が悪化してしまうので好ましくない。なお、条件式(2)の上限値を0.80とすれば、前述の諸収差の補正が有利になるので好ましい。また、条件式(2)の上限値を0.70とすれば、本願の効果を最大限に発揮することができるのでより好ましい。
【0019】
一方、本願のズームレンズの条件式(2)の対応値が下限値を下回ると、第2レンズ群における接合負レンズ中の最も物体側のレンズ面の曲率半径と最も像側のレンズ面の曲率半径とがより近い値になり、結果的に当該接合負レンズの屈折力が低下する。そしてついには、接合負レンズの形状の向きが逆転してしまう。接合負レンズの屈折力の低下は、特に望遠端状態において球面収差やコマ収差の悪化を招いてしまうので好ましくない。なお、条件式(2)の下限値を0.05とすれば、前述の諸収差の補正が有利になるので好ましい。また、条件式(2)の下限値を0.10とすれば、本願の効果を最大限に発揮することができるのでより好ましい。
【0020】
また本願のズームレンズは、以下の条件式(3)を満足することが望ましい。
(3) 0.10 < Bfw/D2 < 1.50
但し、
Bfw:広角端状態における前記ズームレンズのバックフォーカス(前記ズームレンズ中にオプティカルローパスフィルタ又はこれに相当するダミーガラスが配置されている場合には、これらを取り除いた状態のバックフォーカス、即ち空気換算バックフォーカス)
D2 :前記第2レンズ群の総厚
【0021】
条件式(3)は、本願のズームレンズのバックフォーカスと、第2レンズ群の総厚即ち第2レンズ群中の最も物体側のレンズ面から最も像側のレンズ面までの光軸上の距離との関係を規定する条件式である。本願のズームレンズは、条件式(3)を満足することにより、小型化を図りながらコマ収差や非点収差等の諸収差を良好に補正することができる。
【0022】
本願のズームレンズの条件式(3)の対応値が上限値を上回ると、第2レンズ群の総厚がバックフォーカスに比較して著しく小さくなる。この場合、結果的に第2レンズ群の屈折力が大きくなり、球面収差、コマ収差及び非点収差が悪化してしまうので好ましくない。なお、条件式(3)の上限値を1.20とすれば、前述の諸収差の補正が有利になるので好ましい。また、条件式(3)の上限値を1.00とすれば、本願の効果を最大限に発揮することができるのでより好ましい。
【0023】
一方、本願のズームレンズの条件式(3)の対応値が下限値を下回ると、第2レンズ群の総厚がバックフォーカスに比較して著しく大きくなる。この場合、本願のズームレンズの全長が大きくなり、大型化してしまうので好ましくない。また、本願のズームレンズを無理に小型化しようとすれば、第1レンズ群の屈折力を大きくしなければならず、結果的に非点収差や像面湾曲が悪化してしまうので好ましくない。なお、条件式(3)の下限値を0.20とすれば、コマ収差や非点収差等の諸収差の補正が有利になるので好ましい。また、条件式(3)の下限値を0.25とすれば、本願の効果を最大限に発揮することができるのでより好ましい。
【0024】
また本願のズームレンズは、前記第2レンズ群が、最も像側に配置されており物体側に凹面を向けたメニスカス形状の負レンズ成分と、前記負レンズ成分の物体側に隣り合って配置された正レンズ成分とをさらに有することが望ましい。なお、「物体側に凹面を向けたメニスカス形状の負レンズ成分」とは、当該負レンズ成分が接合レンズである場合には、最も物体側のレンズ面が凹面であり、最も像側のレンズ面が凸面である接合負レンズを意味する。上記構成により、本願のズームレンズの全長が小さくなり、小型化を図ることができる。また、収差補正の観点では、最も像側に配置されており物体側に凹面を向けたメニスカス形状の負レンズ成分と正レンズ成分との組み合わせによって、コマ収差、非点収差及び像面湾曲を良好に補正することができる。
【0025】
また本願のズームレンズは、以下の条件式(4)を満足することが望ましい。
(4) 0.10 < D2r/Bfw < 2.00
但し、
D2r:前記第2レンズ群における前記負レンズ成分とその物体側に隣り合って配置された前記正レンズ成分との間隔
Bfw:広角端状態における前記ズームレンズのバックフォーカス(前記ズームレンズ中にオプティカルローパスフィルタ又はこれに相当するダミーガラスが配置されている場合には、これらを取り除いた状態のバックフォーカス、即ち空気換算バックフォーカス)
【0026】
条件式(4)は、第2レンズ群における負レンズ成分とその物体側に隣り合って配置された正レンズ成分との最適な空気間隔を規定する条件式である。本願のズームレンズは、条件式(4)を満足することにより、非点収差、像面湾曲、コマ収差及び球面収差を良好に補正することができる。
【0027】
本願のズームレンズの条件式(4)の対応値が上限値を上回ると、前記空気間隔がバックフォーカスに比較して著しく大きくなる。この場合、第2レンズ群における負レンズ成分の径が著しく大きくなり、本願のズームレンズをカメラに適用した際に、当該負レンズ成分がカメラ内部に収まらなくなってしまう。また、収差補正の観点では、当該負レンズ成分が像面湾曲を補正する効果、所謂フィールドフラットナーとしての効果を奏するだけになるため、コマ収差や球面収差の補正効果が小さくなってしまうので好ましくない。なお、条件式(4)の上限値を1.50とすれば、前述の諸収差の補正が有利になるので好ましい。また、条件式(4)の上限値を1.20とすれば、本願の効果を最大限に発揮することができるのでより好ましい。
【0028】
一方、本願のズームレンズの条件式(4)の対応値が下限値を下回ると、前記空気間隔がバックフォーカスに比較して著しく小さくなる。この場合、第2レンズ群における負レンズ成分による軸外収差の補正効果が小さくなり、またフィールドフラットナーとしての効果も小さくなる。このため、結果的に非点収差や像面湾曲の補正効果が小さくなるので好ましくない。また、バックフォーカスが大きくなるため、本願のズームレンズの小型化の観点でも好ましくない。なお、条件式(4)の下限値を0.11とすれば、前述の諸収差の補正が有利になるので好ましい。また、条件式(4)の下限値を0.15とすれば、本願の効果を最大限に発揮することができるのでより好ましい。
【0029】
また本願のズームレンズは、以下の条件式(5)を満足することが望ましい。
(5) 0.20 < f2/ft < 0.65
但し、
ft:望遠端状態における前記ズームレンズの焦点距離
f2:前記第2レンズ群の焦点距離
【0030】
条件式(5)は、第2レンズ群の焦点距離、言い換えれば第2レンズ群の最適な屈折力を規定する条件式である。本願のズームレンズは、条件式(5)を満足することにより、本願のズームレンズの大型化を防止しながら球面収差、コマ収差及び非点収差等を良好に補正することができる。
【0031】
本願のズームレンズの条件式(5)の対応値が上限値を上回ると、第2レンズ群の屈折力が著しく小さくなる。この場合、本願のズームレンズが大型化してしまう。そこで、本願のズームレンズを小型化しようとすれば、第1レンズ群の屈折力を著しく大きくしなければならず、結果的に非点収差やコマ収差等が悪化してしまうので好ましくない。なお、条件式(5)の上限値を0.58とすれば、前述の諸収差の補正が有利になるので好ましい。また、条件式(5)の上限値を0.55とすれば、本願の効果を最大限に発揮することができるのでより好ましい。
【0032】
一方、本願のズームレンズの条件式(5)の対応値が下限値を下回ると、第2レンズ群の屈折力が著しく大きくなる。この場合、結果的に球面収差、コマ収差及び非点収差等が悪化してしまうので好ましくない。なお、条件式(5)の下限値を0.30とすれば、前述の諸収差の補正が有利になるので好ましい。また、条件式(5)の下限値を0.40とすれば、本願の効果を最大限に発揮することができるのでより好ましい。
【0033】
また本願のズームレンズは、以下の条件式(6)を満足することが望ましい。
(6) 0.60 < (−f2r)/f2 < 2.00
但し、
f2r:前記第2レンズ群における前記負レンズ成分の焦点距離
f2 :前記第2レンズ群の焦点距離
【0034】
条件式(6)は、第2レンズ群における負レンズ成分の焦点距離、言い換えれば当該負レンズ成分の屈折力を規定する条件式である。本願のズームレンズは、条件式(6)を満足することにより、像面湾曲、非点収差、球面収差及びコマ収差を良好に補正することができる。
【0035】
本願のズームレンズの条件式(6)の対応値が上限値を上回ると、第2レンズ群における負レンズ成分の焦点距離の絶対値が著しく大きくなり、負の屈折力が小さくなる。この場合、当該負レンズ成分によるバックフォーカスを短くする効果が小さくなり、かつ像面湾曲や非点収差の補正効果も小さくなってしまうので好ましくない。なお、条件式(6)の上限値を1.80とすれば、前述の諸収差の補正が有利になるので好ましい。また、条件式(6)の上限値を1.70とすれば、本願の効果を最大限に発揮することができるのでより好ましい。
【0036】
一方、本願のズームレンズの条件式(6)の対応値が下限値を下回ると、第2レンズ群における負レンズ成分の焦点距離の絶対値が著しく小さくなり、負の屈折力が著しく大きくなる。この場合、結果的に球面収差やコマ収差が悪化してしまうので好ましくない。また、偏芯に対する敏感度も大きくなってしまう、即ち製造誤差等により本願のズームレンズを構成するレンズに偏芯が生じた場合に諸収差が発生しやすくなってしまうので好ましくない。なお、条件式(6)の下限値を0.70とすれば、球面収差等の諸収差の補正が有利になるので好ましい。また、条件式(6)の下限値を0.90とすれば、本願の効果を最大限に発揮することができるのでより好ましい。
【0037】
また本願のズームレンズは、以下の条件式(7)を満足することが望ましい。
(7) 0.50 < f2p/f2 < 2.00
但し、
f2p:前記第2レンズ群における前記負レンズ成分の物体側に隣り合って配置された前記正レンズ成分の焦点距離
f2 :前記第2レンズ群の焦点距離
【0038】
条件式(7)は、第2レンズ群における負レンズ成分の物体側に隣り合って配置された正レンズ成分の焦点距離、言い換えれば当該正レンズ成分の屈折力を規定する条件式である。本願のズームレンズは、条件式(7)を満足することにより、球面収差やコマ収差を良好に補正することができる。
【0039】
本願のズームレンズの条件式(7)の対応値が上限値を上回ると、第2レンズ群における負レンズ成分の物体側に隣り合って配置された正レンズ成分の正の屈折力が小さくなる。この場合、球面収差の補正効果が小さくなってしまうので好ましくない。なお、条件式(7)の上限値を1.70とすれば、諸収差の補正が有利になるので好ましい。また、条件式(7)の上限値を1.50とすれば、本願の効果を最大限に発揮することができるのでより好ましい。
【0040】
一方、本願のズームレンズの条件式(7)の対応値が下限値を下回ると、第2レンズ群における負レンズ成分の物体側に隣り合って配置された正レンズ成分の正の屈折力が大きくなる。この場合、結果的に球面収差やコマ収差が悪化してしまうので好ましくない。なお、条件式(7)の下限値を0.55とすれば、球面収差等の諸収差の補正が有利になるので好ましい。また、条件式(7)の下限値を0.60とすれば、本願の効果を最大限に発揮することができるのでより好ましい。
【0041】
また本願のズームレンズは、以下の条件式(8)を満足することが望ましい。
(8) 1.00 < (r2r+r1r)/(r2r−r1r) < 8.00
但し、
r1r:前記第2レンズ群における前記負レンズ成分中の最も物体側のレンズ面の曲率半径
r2r:前記第2レンズ群における前記負レンズ成分中の最も像側のレンズ面の曲率半径
【0042】
条件式(8)は、第2レンズ群における負レンズ成分の形状因子を規定する条件式である。条件式(8)は、基本的に当該負レンズ成分が物体側に凹面を向けた負メニスカス形状であることを示している。なお、条件式(8)の対応値は、当該負レンズ成分が接合レンズ、単レンズ或いは非球面レンズのいずれの場合でも、負レンズ成分中の最も物体側の面の近軸曲率半径と最も像側の面の近軸曲率半径とで算出する。本願のズームレンズは、条件式(8)を満足することにより、本願のズームレンズの大型化を防止しながら像面湾曲、非点収差及びコマ収差を良好に補正することができる。
【0043】
本願のズームレンズの条件式(8)の対応値が上限値を上回ると、第2レンズ群における負レンズ成分中の最も物体側のレンズ面と最も像側のレンズ面との曲率半径の差がなくなってしまう。即ち、当該負レンズ成分の屈折力が小さくなってしまう。このため、当該負レンズ成分による諸収差の補正効果が小さくなり、結果的に像面湾曲や非点収差を十分に補正することができなくなってしまう。また、第2レンズ群後方の負の屈折力が小さくなることにより、本願のズームレンズの大型化を招くことになってしまうので好ましくない。なお、条件式(8)の上限値を7.00とすれば、前述の諸収差の補正が有利になるので好ましい。また、条件式(8)の上限値を5.00とすれば、本願の効果を最大限に発揮することができるのでより好ましい。
【0044】
一方、本願のズームレンズの条件式(8)の対応値が下限値を下回ると、第2レンズ群における負レンズ成分が両凹形状になる。この場合、コマ収差や非点収差が悪化してしまうので好ましくない。また、偏芯に対する敏感度も大きくなってしまうので好ましくない。なお、条件式(8)の下限値を1.50とすれば、球面収差等の諸収差の補正が有利になるので好ましい。また、条件式(8)の下限値を2.00とすれば、本願の効果を最大限に発揮することができるのでより好ましい。
【0045】
また本願のズームレンズは、以下の条件式(9)を満足することが望ましい。
(9) −3.00 < (r2p+r1p)/(r2p−r1p) < 0.00
但し、
r1p:前記第2レンズ群における前記負レンズ成分の物体側に隣り合って配置された前記正レンズ成分中の最も物体側のレンズ面の曲率半径
r2p:前記第2レンズ群における前記負レンズ成分の物体側に隣り合って配置された前記正レンズ成分中の最も像側のレンズ面の曲率半径
【0046】
条件式(9)は、第2レンズ群における負レンズ成分の物体側に隣り合って配置された正レンズ成分の形状因子を規定する条件式である。条件式(9)は、当該正レンズ成分が、物体側に凹面を向けた正メニスカス形状、物体側に平面を向けた平凸形状又は両凸形状であることを示している。本願のズームレンズは、条件式(9)を満足することにより、像面湾曲、非点収差及び球面収差を良好に補正することができる。
【0047】
本願のズームレンズの条件式(9)の対応値が上限値を上回ると、第2レンズ群における負レンズ成分の物体側に隣り合って配置された正レンズ成分が、物体側により強い凸面を向けた正レンズ形状、即ち当該正レンズ成分中の最も物体側のレンズ面が最も像側のレンズ面よりも曲率半径の絶対値が小さな正レンズ形状となる。この場合、像面湾曲や非点収差が悪化してしまうので好ましくない。なお、条件式(9)の上限値を−0.10とすれば、前述の諸収差の補正が有利になるので好ましい。また、条件式(9)の上限値を−0.30とすれば、本願の効果を最大限に発揮することができるのでより好ましい。
【0048】
一方、本願のズームレンズの条件式(9)の対応値が下限値を下回ると、第2レンズ群における負レンズ成分の物体側に隣り合って配置された正レンズ成分は、当該正レンズ成分中の最も物体側のレンズ面と最も像側のレンズ面との曲率半径の差が少ない、屈折力の比較的小さなメニスカス形状となる。この場合、球面収差が悪化してしまうので好ましくない。なお、条件式(9)の下限値を−2.50とすれば、諸収差の補正が有利になるので好ましい。また、条件式(9)の下限値を−2.00とすれば、本願の効果を最大限に発揮することができるのでより好ましい。
【0049】
また本願のズームレンズは、前記第2レンズ群における最も物体側に配置された前記正レンズ成分よりも像側に開口絞りを有することが望ましい。この構成により、本願のズームレンズは、非点収差や像面湾曲を良好に補正することができる。
【0050】
また本願のズームレンズは、前記開口絞りが前記第2レンズ群における前記接合正レンズの像側に隣り合って配置されていることが望ましい。この構成により、本願のズームレンズは、非点収差や像面湾曲を良好に補正することができる。
【0051】
また本願のズームレンズは、前記第1レンズ群が少なくとも1つの非球面を有することが望ましい。この構成により、本願のズームレンズは、軸外光線に対する収差、特に非点収差、像面湾曲及びコマ収差を良好に補正することができる。
【0052】
また本願のズームレンズは、前記第2レンズ群が少なくとも1つの非球面を有することが望ましい。この構成により、本願のズームレンズは、コマ収差や球面収差を良好に補正することができる。
【0053】
本願の光学装置は、上述した構成のズームレンズを有することを特徴としている。これにより、諸収差を良好に補正した高性能な光学装置を実現することができる。
【0054】
本願のズームレンズの製造方法は、物体側から順に、負の屈折力を有する第1レンズ群と、正の屈折力を有する第2レンズ群とからなるズームレンズの製造方法であって、前記第1レンズ群が、物体側から順に、1つの負レンズ成分と、1つの正レンズ成分とからなるようにし、前記第2レンズ群が、物体側から順に、正レンズ成分と、負レンズと正レンズとの接合正レンズと、正レンズと負レンズとの接合負レンズとを有するようにし、前記第1レンズ群が以下の条件式(1)を満足するようにし、広角端状態から望遠端状態への変倍時に、前記第1レンズ群と前記第2レンズ群との間隔が変化するようにすることを特徴としている。これにより、諸収差を良好に補正した高性能なズームレンズを製造することができる。
(1) −2.00 < (r2n1+r1n1)/(r2n1−r1n1) < 0.00
但し、
r1n1:前記第1レンズ群における前記負レンズ成分中の最も物体側のレンズ面の曲率半径
r2n1:前記第1レンズ群における前記負レンズ成分中の最も像側のレンズ面の曲率半径
【0055】
以下、本願の数値実施例に係るズームレンズを添付図面に基づいて説明する。
(第1実施例)
図1は、本願の第1実施例に係るズームレンズの広角端状態における無限遠物体合焦時のレンズ構成、及び変倍時の各レンズ群の移動軌跡を示す図である。
本実施例に係るズームレンズは、光軸に沿って物体側から順に、負の屈折力を有する第1レンズ群G1と、正の屈折力を有する第2レンズ群G2とから構成されている。
【0056】
第1レンズ群G1は、光軸に沿って物体側から順に、両凹形状の負レンズL11と、物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズL12とからなる。なお、負レンズL11は、像側のガラス表面に設けた樹脂層を非球面形状に形成してなる複合型非球面レンズである。
【0057】
第2レンズ群G2は、光軸に沿って物体側から順に、両凸形状の正レンズL21と、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL22と物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズL23との接合正レンズと、開口絞りSと、厚肉な両凸形状の正レンズL24と両凹形状の負レンズL25との接合負レンズと、両凸形状の正レンズL26と、像側に凸面を向けた正メニスカスレンズL27と像側に凸面を向けた負メニスカスレンズL28との接合負レンズとからなる。なお、正レンズL26は、物体側のレンズ面を非球面形状としたガラスモールド非球面レンズである。
【0058】
なお、第2レンズ群G2と像面Iとの間には、オプティカルローパスフィルタに相当するダミーガラスFLが配置されている。
【0059】
以上の構成の下、本実施例に係るズームレンズでは、広角端状態から望遠端状態への変倍時に、第1レンズ群G1と第2レンズ群G2との空気間隔が変化するように、第1レンズ群G1及び第2レンズ群G2が光軸に沿って移動する。
【0060】
また、本実施例に係るズームレンズでは、第1レンズ群G1を合焦レンズ群として光軸に沿って物体側へ移動させることにより、無限遠物体から近距離物体への合焦を行う。
【0061】
以下の表1に、本実施例に係るズームレンズの諸元の値を掲げる。
表1において、fは焦点距離を示す。
[面データ]において、面番号は物体側から数えた光学面の順番、rは曲率半径、dは面間隔(第n面と第n+1面との光軸上の間隔(nは整数))、ndはd線(波長587.6nm)に対する屈折率、νdはd線(波長587.6nm)に対するアッベ数をそれぞれ示している。また、物面は物体面、可変は可変の面間隔、絞りSは開口絞りS、像面は像面Iをそれぞれ示している。なお、曲率半径r=∞は平面を示している。非球面は面番号に*を付して曲率半径rの欄に近軸曲率半径の値を示している。
【0062】
[非球面データ]には、[面データ]に示した非球面について、その形状を次式で表した場合の非球面係数及び円錐定数を示す。
S(y)=(y
2/r)/[1+[1−κ(y
2/r
2)]
1/2]
+A4×y
4+A6×y
6+A8×y
8+A10×y
10+A12×y
12
ここで、yを光軸に垂直な方向の高さ、S(y)を高さyにおける非球面の頂点の接平面から当該非球面までの光軸方向に沿った距離(サグ量)、κを円錐定数、A4、A6、A8、A10、A12を非球面係数、rを基準球面の曲率半径(近軸曲率半径)とする。なお、「E−n」(nは整数)は「×10
−n」を示し、例えば「1.234E-05」は「1.234×10
−5」を示す。2次の非球面係数A2は0であり、記載を省略している。
【0063】
[各種データ]において、FNOはFナンバー、ωは半画角(単位は「°」)、Yは像高、TLはズームレンズの全長(無限遠物体合焦時の第1面から像面Iまでの光軸上の距離)をそれぞれ示す。空気換算Bfは本実施例に係るズームレンズからダミーガラスFLを取り除いた状態のバックフォーカス(最も像側のレンズ面と像面Iとの光軸上の距離)、βは撮影倍率、d0は物体から第1面までの光軸上の距離、dnは第n面と第n+1面との可変の間隔をそれぞれ示す。なお、Wは広角端状態、Mは中間焦点距離状態、Tは望遠端状態をそれぞれ示す。
[レンズ群データ]には、各レンズ群の始面と焦点距離を示す。
[条件式対応値]には、本実施例に係るズームレンズの各条件式の対応値を示す。
【0064】
ここで、表1に掲載されている焦点距離f、曲率半径r及びその他の長さの単位は一般に「mm」が使われる。しかしながら光学系は、比例拡大又は比例縮小しても同等の光学性能が得られるため、これに限られるものではない。
なお、以上に述べた表1の符号は、後述する各実施例の表においても同様に用いるものとする。
【0065】
(表1)第1実施例
[面データ]
面番号 r d nd νd
物面 ∞
1 -4971.9688 2.0000 1.883000 40.66
2 26.3000 0.1000 1.560930 36.64
*3 20.9102 8.3000 1.000000
4 41.7495 6.0000 1.846660 23.80
5 172.2935 可変 1.000000
6 571.0318 2.0000 1.729160 54.61
7 -80.4994 0.8000 1.000000
8 21.7945 1.0000 1.772500 49.62
9 15.2210 4.5000 1.497820 82.57
10 49.1048 2.6000 1.000000
11(絞りS) ∞ 1.2000 1.000000
12 30.5361 11.9000 1.497820 82.57
13 -20.2027 1.0000 1.883000 40.66
14 41.2241 4.3500 1.000000
*15 81.5098 3.8000 1.677900 54.89
16 -23.3482 16.5500 1.000000
17 -18.3979 3.5000 1.688930 31.16
18 -14.3586 1.5000 1.816000 46.59
19 -36.8838 可変 1.000000
20 ∞ 2.0000 1.516800 64.12
21 ∞ 可変 1.000000
像面 ∞
[非球面データ]
面番号 κ A4 A6 A8 A10 A12
3 0.0274 6.78771E-07 1.25604E-09 -1.73623E-11 3.54718E-14 -0.32980E-16
15 0.3278 -1.52946E-06 6.46816E-09 0.00000E+00 0.00000E+00 0.00000E+00
[各種データ]
変倍比 2.69
W M T
f 28.8 50.0 77.6
FNO 3.6 4.6 5.9
ω 39.4 23.5 15.5
Y 21.6 21.6 21.6
TL 138.096 124.193 130.033
空気換算Bf 17.948 33.285 53.253
(無限遠物体合焦時)
W M T
f 28.80000 50.00000 77.60000
d0 ∞ ∞ ∞
d5 48.36733 19.12659 4.99821
d19 13.00000 28.33774 48.30574
d21 3.62901 3.62901 3.62901
(有限距離物体合焦時)
W M T
β -0.03352 -0.03344 -0.03340
d0 811.7935 1447.7945 2275.7959
d5 51.54475 20.95678 6.17746
d19 13.00000 28.33774 48.30574
d21 3.63428 3.63427 3.63426
(近距離物体合焦時)
W M T
β -0.14567 -0.25376 -0.39562
d0 151.1474 151.1474 151.1474
d5 61.86733 32.62659 18.49821
d19 13.00000 28.33774 48.30574
d21 3.72635 3.92342 4.34136
[レンズ群データ]
群 始面 f
1 1 -52.39559
2 6 37.90707
[条件式対応値]
(1) (r2n1+r1n1)/(r2n1−r1n1) = -0.992
(2) (r2n3−r1n3)/(r2n3+r1n3) = 0.149
(3) Bfw/D2 =0.328
(4) D2r/Bfw = 0.922
(5) f2/ft =0.488
(6) (−f2r)/f2 =1.184
(7) f2p/f2 = 0.717
(8) (r2r+r1r)/(r2r−r1r) = 2.990
(9) (r2p+r1p)/(r2p−r1p) = -0.555
【0066】
図2(a)、
図2(b)、及び
図2(c)はそれぞれ、本願の第1実施例に係るズームレンズの広角端状態、中間焦点距離状態、及び望遠端状態における無限遠物体合焦時の諸収差図である。
【0067】
各収差図において、FNOはFナンバー、Yは像高をそれぞれ示す。dはd線(波長587.6nm)、gはg線(波長435.8nm)における収差をそれぞれ示す。非点収差図において、実線はサジタル像面、破線はメリディオナル像面をそれぞれ示す。コマ収差図は、各像高Yにおけるコマ収差を示す。なお、後述する各実施例の収差図においても、本実施例と同様の符号を用いる。
【0068】
各収差図より、本実施例に係るズームレンズは、広角端状態から望遠端状態にわたって球面収差、コマ収差、像面湾曲、及び非点収差を含む諸収差を良好に補正し優れた光学性能を有していることがわかる。
【0069】
(第2実施例)
図3は、本願の第2実施例に係るズームレンズの広角端状態における無限遠物体合焦時のレンズ構成、及び変倍時の各レンズ群の移動軌跡を示す図である。
本実施例に係るズームレンズは、光軸に沿って物体側から順に、負の屈折力を有する第1レンズ群G1と、正の屈折力を有する第2レンズ群G2とから構成されている。
【0070】
第1レンズ群G1は、光軸に沿って物体側から順に、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL11と、物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズL12とからなる。なお、負メニスカスレンズL11は、像側のレンズ面を非球面形状としたガラスモールド非球面レンズである。
【0071】
第2レンズ群G2は、光軸に沿って物体側から順に、両凸形状の正レンズL21と、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL22と物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズL23との接合正レンズと、開口絞りSと、両凸形状の正レンズL24と厚肉な両凹形状の負レンズL25との接合負レンズと、物体側に凹面を向けた正メニスカスレンズL26と、像側に凸面を向けた負メニスカスレンズL27とからなる。
【0072】
なお、第2レンズ群G2と像面Iとの間には、オプティカルローパスフィルタに相当するダミーガラスFLが配置されている。
【0073】
以上の構成の下、本実施例に係るズームレンズでは、広角端状態から望遠端状態への変倍時に、第1レンズ群G1と第2レンズ群G2との空気間隔が変化するように、第1レンズ群G1及び第2レンズ群G2が光軸に沿って移動する。
【0074】
また、本実施例に係るズームレンズでは、第1レンズ群G1を合焦レンズ群として光軸に沿って物体側へ移動させることにより、無限遠物体から近距離物体への合焦を行う。
以下の表2に、本実施例に係るズームレンズの諸元の値を掲げる。
【0075】
(表2)第2実施例
[面データ]
面番号 r d nd νd
物面 ∞
1 129.6401 1.8000 1.816000 46.59
*2 21.0701 8.9601 1.000000
3 30.0752 5.0000 1.846660 23.80
4 45.1546 可変 1.000000
5 863.7134 2.0000 1.719990 50.27
6 -61.3930 1.0000 1.000000
7 17.2972 1.0000 1.755000 52.34
8 12.7054 4.0000 1.487490 70.31
9 35.6021 2.6000 1.000000
10(絞りS) ∞ 1.2000 1.000000
11 50.7556 3.3000 1.497820 82.57
12 -22.5421 4.0448 1.834000 37.18
13 102.6004 7.7445 1.000000
14 -1687.0183 2.3000 1.755000 52.34
15 -27.0690 10.4203 1.000000
16 -16.4791 1.5000 1.603110 60.69
17 -35.1170 可変 1.000000
18 ∞ 2.0000 1.516800 64.12
19 ∞ 1.0000 1.000000
像面 ∞
[非球面データ]
面番号 κ A4 A6 A8 A10 A12
2 -1.0221 2.31156E-05 -8.21484E-09 2.65178E-11 -2.36759E-14 0.30473E-16
[各種データ]
変倍比 2.69
W M T
f 28.8 50.0 77.6
FNO 3.6 4.6 5.9
ω 40.3 23.8 15.6
Y 21.6 21.6 21.6
TL 135.888 123.401 131.060
空気換算Bf 30.026 46.751 68.524
(無限遠物体合焦時)
W M T
f 28.80000 50.00000 77.60000
d0 ∞ ∞ ∞
d4 48.31067 19.09858 4.98405
d17 27.70760 44.43215 66.20563
(有限距離物体合焦時)
W M T
β -0.03333 -0.03333 -0.03333
d0 814.8805 1450.8873 2278.8752
d4 51.22174 20.77536 6.06446
d17 27.70760 44.43215 66.20563
(近距離物体合焦時)
W M T
β -0.11369 -0.18777 -0.30039
d0 204.1827 217.1539 209.2043
d4 58.23991 28.54415 14.72028
d17 27.70760 44.43215 66.20563
[レンズ群データ]
群 始面 f
1 1 -50.15165
2 5 39.56434
[条件式対応値]
(1) (r2n1+r1n1)/(r2n1−r1n1) = -1.388
(2) (r2n3−r1n3)/(r2n3+r1n3) = 0.338
(3) Bfw/D2 =0.730
(4) D2r/Bfw = 0.347
(5) f2/ft =0.510
(6) (−f2r)/f2 =1.342
(7) f2p/f2 = 0.920
(8) (r2r+r1r)/(r2r−r1r) = 2.768
(9) (r2p+r1p)/(r2p−r1p) = -1.033
【0076】
図4(a)、
図4(b)、及び
図4(c)はそれぞれ、本願の第2実施例に係るズームレンズの広角端状態、中間焦点距離状態、及び望遠端状態における無限遠物体合焦時の諸収差図である。
【0077】
各収差図より、本実施例に係るズームレンズは、広角端状態から望遠端状態にわたって球面収差、コマ収差、像面湾曲、及び非点収差を含む諸収差を良好に補正し優れた光学性能を有していることがわかる。
【0078】
(第3実施例)
図5は、本願の第3実施例に係るズームレンズの広角端状態における無限遠物体合焦時のレンズ構成、及び変倍時の各レンズ群の移動軌跡を示す図である。
本実施例に係るズームレンズは、光軸に沿って物体側から順に、負の屈折力を有する第1レンズ群G1と、正の屈折力を有する第2レンズ群G2とから構成されている。
【0079】
第1レンズ群G1は、光軸に沿って物体側から順に、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL11と、物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズL12とからなる。なお、負メニスカスレンズL11は、像側のガラス表面に設けた樹脂層を非球面形状に形成してなる複合型非球面レンズである。
【0080】
第2レンズ群G2は、光軸に沿って物体側から順に、両凸形状の正レンズL21と、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL22と物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズL23との接合正レンズと、開口絞りSと、両凸形状の正レンズL24と両凹形状の負レンズL25との接合負レンズと、物体側に凹面を向けた正メニスカスレンズL26と、像側に凸面を向けた正メニスカスレンズL27とからなる。
【0081】
なお、第2レンズ群G2と像面Iとの間には、オプティカルローパスフィルタに相当するダミーガラスFLが配置されている。
【0082】
以上の構成の下、本実施例に係るズームレンズでは、広角端状態から望遠端状態への変倍時に、第1レンズ群G1と第2レンズ群G2との空気間隔が変化するように、第1レンズ群G1及び第2レンズ群G2が光軸に沿って移動する。
【0083】
また、本実施例に係るズームレンズでは、第1レンズ群G1を合焦レンズ群として光軸に沿って物体側へ移動させることにより、無限遠物体から近距離物体への合焦を行う。
以下の表3に、本実施例に係るズームレンズの諸元の値を掲げる。
【0084】
(表3)第3実施例
[面データ]
面番号 r d nd νd
物面 ∞
1 181.8323 2.0000 1.834810 42.73
2 23.7000 0.2000 1.560930 36.64
*3 19.3695 8.1530 1.000000
4 31.3960 6.0000 1.846660 23.80
5 57.1323 可変 1.000000
6 571.0318 2.0000 1.719990 50.27
7 -80.4994 0.8000 1.000000
8 16.9920 1.2000 1.729160 54.61
9 12.7238 4.0000 1.497820 82.57
10 35.5718 2.6000 1.000000
11(絞りS) ∞ 1.2000 1.000000
12 45.1569 3.3000 1.497820 82.57
13 -26.0091 1.0000 1.834000 37.18
14 159.9003 10.1363 1.000000
15 -1177.4977 2.5000 1.772500 49.62
16 -29.2117 6.6369 1.000000
17 -15.9456 1.0000 1.755000 52.34
18 -30.8472 可変 1.000000
19 ∞ 2.0000 1.516800 64.12
20 ∞ 1.0000 1.000000
像面 ∞
[非球面データ]
面番号 κ A4 A6 A8 A10 A12
3 0.1622 5.01092E-06 8.24552E-10 7.54407E-12 -1.05031E-14 -0.65754E-17
[各種データ]
変倍比 2.69
W M T
f 28.8 50.0 77.6
FNO 3.6 4.6 5.9
ω 40.122 23.828 15.628
Y 21.6 21.6 21.6
TL 135.711 123.599 131.743
空気換算Bf 33.218 50.317 72.574
(無限遠物体合焦時)
W M T
f 28.80591 50.00000 77.60000
d0 ∞ ∞ ∞
d5 49.08640 19.87851 5.75917
d18 30.89900 47.99457 70.25727
(有限距離物体合焦時)
W M T
β -0.03333 -0.03333 -0.03333
d0 816.2127 1452.0423 2280.0511
d5 51.93388 21.51899 6.81618
d18 30.89900 47.99457 70.25727
(近距離物体合焦時)
W M T
β -0.11408 -0.18861 -0.30237
d0 204.5435 217.1181 208.6691
d5 58.83130 29.16116 15.34741
d18 30.89900 47.99457 70.25727
[レンズ群データ]
群 始面 f
1 1 -49.60599
2 6 40.01316
[条件式対応値]
(1) (r2n1+r1n1)/(r2n1−r1n1) = -1.238
(2) (r2n3−r1n3)/(r2n3+r1n3) = 0.560
(3) Bfw/D2 =0.913
(4) D2r/Bfw = 0.200
(5) f2/ft =0.516
(6) (−f2r)/f2 =1.125
(7) f2p/f2 = 0.968
(8) (r2r+r1r)/(r2r−r1r) = 3.140
(9) (r2p+r1p)/(r2p−r1p) = -1.051
【0085】
図6(a)、
図6(b)、及び
図6(c)はそれぞれ、本願の第3実施例に係るズームレンズの広角端状態、中間焦点距離状態、及び望遠端状態における無限遠物体合焦時の諸収差図である。
【0086】
各収差図より、本実施例に係るズームレンズは、広角端状態から望遠端状態にわたって球面収差、コマ収差、像面湾曲、及び非点収差を含む諸収差を良好に補正し優れた光学性能を有していることがわかる。
【0087】
上記各実施例によれば、球面収差、コマ収差、及び非点収差等の諸収差を良好に補正した高性能なズームレンズを実現することができる。特に、各実施例に係るズームレンズは、79〜31°程度の包括角とF3.5〜5.6程度の大口径を有し、レンズ枚数が少なく小型である。また、各実施例に係るズームレンズは、後述するカメラの撮影レンズだけでなく、印刷用レンズや複写用レンズにも好適である。
【0088】
なお、上記各実施例は本願発明の一具体例を示しているものであり、本願発明はこれらに限定されるものではない。以下の内容は、本願のズームレンズの光学性能を損なわない範囲で適宜採用することが可能である。
本願のズームレンズの数値実施例として2群構成のものを示したが、本願はこれに限られず、その他の群構成(例えば、3群や4群等)のズームレンズを構成することもできる。具体的には、本願のズームレンズの最も物体側や最も像側にレンズ又はレンズ群を追加した構成でも構わない。
【0089】
上記各実施例に係るズームレンズは、第1レンズ群を繰り出すことで無限遠物体から近距離物体への合焦を行う。しかしこれに限られず、本願のズームレンズは、いずれかのレンズ群の一部、1つのレンズ群全体、或いは複数のレンズ群を合焦レンズ群として光軸方向へ移動させることで合焦を行う構成としてもよい。具体的には、第2レンズ群全体を合焦レンズ群としたリヤフォーカス方式や、第2レンズ群の一部を合焦レンズ群としたリヤフォーカス方式又はインナーフォーカス方式を採用してもよい。また、斯かる合焦レンズ群は、オートフォーカスに適用することも可能であり、オートフォーカス用のモータ、例えば超音波モータ等による駆動にも適している。
【0090】
また、本願のズームレンズにおいて、いずれかのレンズ群全体又はその一部を、防振レンズ群として光軸に対して垂直な方向の成分を含むように移動させ、又は光軸を含む面内方向へ回転移動(揺動)させることにより、手ぶれ等によって生じる像ぶれを補正する構成とすることもできる。特に、本願のズームレンズでは第2レンズ群の少なくとも一部を防振レンズ群とすることが好ましい。
【0091】
また、本願のズームレンズを構成するレンズのレンズ面は、球面又は平面としてもよく、或いは非球面としてもよい。レンズ面が球面又は平面の場合、レンズ加工及び組立調整が容易になり、レンズ加工及び組立調整の誤差による光学性能の劣化を防ぐことができるため好ましい。また、像面がずれた場合でも描写性能の劣化が少ないため好ましい。レンズ面が非球面の場合、研削加工による非球面、ガラスを型で非球面形状に成型したガラスモールド非球面、又はガラス表面に設けた樹脂を非球面形状に形成した複合型非球面のいずれでもよい。また、レンズ面は回折面としてもよく、レンズを屈折率分布型レンズ(GRINレンズ)或いはプラスチックレンズとしてもよい。
【0092】
また、本願のズームレンズにおいて開口絞りは第2レンズ群中又は第2レンズ群の近傍に配置されることが好ましく、開口絞りとして部材を設けずにレンズ枠でその役割を代用する構成としてもよい。
また、本願のズームレンズを構成するレンズのレンズ面に、広い波長域で高い透過率を有する反射防止膜を施してもよい。これにより、フレアやゴーストを軽減し、高コントラストの高い光学性能を達成することができる。
【0093】
次に、本願のズームレンズを備えたカメラを
図7に基づいて説明する。
図7は、本願のズームレンズを備えたカメラの構成を示す図である。
図7に示すようにカメラ1は、撮影レンズ2として上記第1実施例に係るズームレンズを備えたレンズ交換式の所謂ミラーレスカメラである。
本カメラ1において、不図示の物体(被写体)からの光は、撮影レンズ2で集光されて、不図示のOLPF(Optical low pass filter:光学ローパスフィルタ)を介して撮像部3の撮像面上に被写体像を形成する。そして、撮像部3に設けられた光電変換素子によって被写体像が光電変換されて被写体の画像が生成される。この画像は、カメラ1に設けられたEVF(Electronic view finder:電子ビューファインダ)4に表示される。これにより撮影者は、EVF4を介して被写体を観察することができる。
また、撮影者によって不図示のレリーズボタンが押されると、撮像部3で生成された被写体の画像が不図示のメモリに記憶される。このようにして、撮影者は本カメラ1による被写体の撮影を行うことができる。
【0094】
ここで、本カメラ1に撮影レンズ2として搭載した上記第1実施例に係るズームレンズは、諸収差を良好に補正した高性能なズームレンズである。したがって本カメラ1は、諸収差を良好に補正し、高い光学性能を実現することができる。なお、上記第2、第3実施例に係るズームレンズを撮影レンズ2として搭載したカメラを構成しても、上記カメラ1と同様の効果を奏することができる。また、クイックリターンミラーを有し、ファインダ光学系によって被写体を観察する一眼レフタイプのカメラに上記各実施例に係るズームレンズを搭載した場合でも、上記カメラ1と同様の効果を奏することができる。
【0095】
最後に、本願のズームレンズの製造方法の概略を
図8に基づいて説明する。
図8に示す本願のズームレンズの製造方法は、物体側から順に、負の屈折力を有する第1レンズ群と、正の屈折力を有する第2レンズ群とからなるズームレンズの製造方法であって、以下のステップS1〜S4を含むものである。
【0096】
ステップS1:第1レンズ群が、物体側から順に、1つの負レンズ成分と、1つの正レンズ成分とからなるようにする。
ステップS2:第2レンズ群が、物体側から順に、正レンズ成分と、負レンズと正レンズとの接合正レンズと、正レンズと負レンズとの接合負レンズとを有するようにする。
【0097】
ステップS3:第1レンズ群が以下の条件式(1)を満足するようにし、第1、第2レンズ群をレンズ鏡筒内に物体側から順に配置する。
(1) −2.00 < (r2n1+r1n1)/(r2n1−r1n1) < 0.00
但し、
r1n1:前記第1レンズ群における前記負レンズ成分中の最も物体側のレンズ面の曲率半径
r2n1:前記第1レンズ群における前記負レンズ成分中の最も像側のレンズ面の曲率半径
【0098】
ステップS4:レンズ鏡筒に公知の移動機構を設ける等することで、広角端状態から望遠端状態への変倍時に、第1レンズ群と第2レンズ群との間隔が変化するようにする。
【0099】
斯かる本願のズームレンズの製造方法によれば、諸収差を良好に補正した高性能なズームレンズを製造することができる。