特許第6205918号(P6205918)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6205918オートサンプラおよびそれを備えたクロマトグラフ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6205918
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】オートサンプラおよびそれを備えたクロマトグラフ
(51)【国際特許分類】
   G01N 30/24 20060101AFI20170925BHJP
   G01N 1/18 20060101ALI20170925BHJP
   G01N 30/54 20060101ALN20170925BHJP
【FI】
   G01N30/24 Z
   G01N1/18
   !G01N30/54 C
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-144470(P2013-144470)
(22)【出願日】2013年7月10日
(65)【公開番号】特開2015-17864(P2015-17864A)
(43)【公開日】2015年1月29日
【審査請求日】2016年6月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】石伊 志行
(72)【発明者】
【氏名】宮内 宏敏
(72)【発明者】
【氏名】江藤 享
【審査官】 高田 亜希
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭55−117965(JP,A)
【文献】 実開平04−036460(JP,U)
【文献】 特開2009−042226(JP,A)
【文献】 特開2004−354221(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0238427(US,A1)
【文献】 特開2012−042253(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3109378(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0133870(US,A1)
【文献】 高温分子排除クロマトグラフ(HLC−8121GPC/HT)の開発,東ソー研究報告,1998年,第42巻,P3-16
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 30/24
G01N 30/54
G01N 1/00−1/18
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料を収容した試料容器を載置可能な試料容器載置部と、前記試料容器に収容された試料を吸引するためのノズルと、前記ノズルに接続され前記試料を吸引するポンプと、前記ノズルを洗浄した洗浄廃液を収容するための廃液容器と、試料容器載置部に設けられた廃液ポートと廃液容器とを結ぶ配管と、を有したオートサンプラであって、
前記配管が蛇腹を有しない配管であり、試料容器載置部が、第一の水平移動手段と前記第一の水平移動手段とは異なる移動軸を有した第二の水平移動手段と垂直移動手段により、水平および垂直方向に移動可能であり、廃液容器が、少なくとも、前記第一の水平移動手段、前記第二の水平移動手段、前記垂直移動手段のいずれかの手段により、水平および/または垂直方向に移動可能である、
前記オートサンプラ。
【請求項2】
第一の水平移動手段が水平面上で直線移動可能な手段であり、第二の水平移動手段が前記水平面上で回転可能な手段である、請求項1に記載のオートサンプラ。
【請求項3】
第一の水平移動手段が水平面上で直線移動可能な手段であり、第二の水平移動手段が前記水平面上で第一の水平移動手段とは異なる方向に直線移動可能な手段である、請求項1に記載のオートサンプラ。
【請求項4】
廃液容器が、第一の水平移動手段と第二の水平移動手段により水平移動可能な、請求項1から3のいずれかに記載のオートサンプラ。
【請求項5】
廃液容器が、第一の水平移動手段、第二の水平移動手段および前記垂直移動手段により水平および垂直移動可能な、請求項1から3のいずれかに記載のオートサンプラ。
【請求項6】
溶離液を供給する溶離液供給手段と、オートサンプラと、分離カラムと、検出手段と備えたクロマトグラフであって、オートサンプラが、
試料を収容した試料容器を載置可能な試料容器載置部と、前記試料容器に収容された試料を吸引するためのノズルと、前記ノズルに接続され前記試料を吸引するポンプと、前記試料を一定量保持可能なサンプルループと、前記サンプルループに保持した試料を前記溶離液により分離カラムへ導入可能な試料導入バルブと、前記ノズルおよび前記ノズルから前記ポンプまでの配管を洗浄するための洗浄液を収容した洗浄液容器と、前記ポンプの吸引先を前記ノズルと前記洗浄液容器との間で切り替え可能な流路切り替えバルブと、前記ノズルおよび前記ノズルから前記ポンプまでの配管を洗浄した洗浄廃液を収容するための廃液容器と、試料容器載置部に設けられた廃液ポートと廃液容器とを結ぶ配管と、を有しており、かつ、
前記配管が蛇腹を有しない配管であり、前記試料容器載置部が第一の水平移動手段と前記第一の水平移動手段とは異なる移動軸を有した第二の水平移動手段と垂直移動手段により水平および垂直移動可能であり、廃液容器が少なくとも前記第一の水平移動手段、前記第二の水平移動手段、前記垂直移動手段のいずれかの手段により水平および/または垂直移動可能である、
前記クロマトグラフ。
【請求項7】
第一の水平移動手段が水平面上で直線移動可能な手段であり、第二の水平移動手段が前記水平面上で回転可能な手段である、請求項6に記載のクロマトグラフ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料容器に収容された試料を吸引する、オートサンプラおよびそれを備えたクロマトグラフに関する。特に本発明は、高温条件下(例えば、140℃から220℃前後)で分析可能なクロマトグラフへ備えるのに適したオートサンプラに関する。
【背景技術】
【0002】
クロマトグラフのうち液体クロマトグラフは、溶離液を供給する溶離液供給手段(溶離液容器11および溶離液送液ポンプ12)と、試料導入手段と、分離カラム40と、検出手段50を備えている(図1)。試料導入手段としては通常、試料を収容した試料容器60を載置可能な試料容器載置部21と、試料容器に収容された試料を吸引するためのノズル22と、前記ノズルに接続され前記試料を吸引するポンプ23と、前記ポンプに接続され流路を切り替える三方バルブ30と、前記試料を一定量保持可能なサンプルループ24と、サンプルループ24に保持された試料を溶離液供給手段から供給される溶離液により分離カラム40へ導入可能な試料導入バルブ25と、ノズル22およびノズル22からポンプ23までの配管を洗浄するための洗浄水を収容した洗浄水容器26と、ノズル22およびノズル22からポンプ23までの配管を洗浄した洗浄廃液を収容するための廃液容器27と、を有したオートサンプラ20が用いられる(図1)。
【0003】
オートサンプラ20を用いた分離カラム40への試料導入例を説明する。まず試料容器載置部21のうち試料を収容した試料容器60が載置されている位置がノズル22位置の直下となるよう、試料容器載置部21および/またはノズル22を水平方向に移動させた後、試料容器載置部21を上昇またはノズル22を下降させ、試料導入バルブ25と三方バルブ30を切り替えてポンプ23とサンプルループ24とノズル22を連通させた後、ポンプ23による試料吸引を行ない、サンプルループ24に導入する。サンプルループ24に導入した試料は、サンプルループ24に接続された試料導入バルブ25による流路切り替えにより、溶離液供給手段で供給される溶離液で押し出される形で分離カラム40へ送液される。試料を分離カラム40へ送液した後は、ノズル22およびノズル22からポンプ23までの配管の洗浄を、三方バルブ30の流路切り替えとポンプ23による洗浄液の吸引/吐出により行なう。なお洗浄後の洗浄廃液は、ノズル22から廃液容器27へ吐出する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
分離カラムによる試料に含まれる成分の分離能向上や、試料に含まれる成分の溶解性向上を目的に、高温条件下(例えば140℃から220℃前後)で分析可能な液体クロマトグラフが用いられる。溶離液送液手段による溶離液の送液安定性や、分離カラムによるピーク保持時間や、検出手段による信号のベースライン等は温度に依存するので、前記液体クロマトグラフを用いた分析では、溶離液送液手段、試料導入手段(オートサンプラ)、分離カラム、検出手段、およびこれら手段間を接続する配管類は適宜、所定の温度を維持する必要がある。
【0005】
高温条件下で分析可能な液体クロマトグラフに備える従来からあるオートサンプラの一例を図2に示す。高温条件下で分析可能な液体クロマトグラフに備えるオートサンプラは、少なくとも試料を収容する試料容器60および当該試料を通過する配管を高温に維持する必要がある。試料容器60を高温に維持するには、試料容器60を載置する試料容器載置部21を高温に維持すればよい。また試料容器60に収容した試料を通過する配管を高温に維持するには、ノズル22、サンプルループ24、試料導入バルブ25を高温に維持した上で、ポンプ23によりノズル22から吸引された試料が高温に維持された空間(高温維持部)内に保持されるようにすればよい。図2に示すオートサンプラでは、試料導入バルブ25とポンプ23とを接続する配管に、ポンプ23で一回に吸引する液量(ポンプとしてシリンジポンプを用いた場合はシリンジの1ストロークに相当)よりも多い液量を保持可能なコイル28を2本設置(一方のコイル28aは高温維持部内に、もう一方のコイル28bは高温維持部外に、それぞれ設置)することで、ポンプ23によりノズル22から吸引された試料を高温維持部内に保持することができ、しかも高温の液体が三方バルブ30やポンプ23に流れることを防ぐことができる。なお図2において、コイル28aはアルミ製の細長い円筒にステンレススチール製のチューブを巻きつけて、コイル28bはステンレススチール製のチューブをループ状(直径7cm)に束ねて、それぞれ作製している。
【0006】
ポンプ23によりノズル22から吸引された試料はサンプルループ24内に一定量保持された後、試料導入バルブ25による流路切り替えで分離カラム40へ送液される。試料を分離カラム40に送液した後は、あらかじめ洗浄水容器26から洗浄液を吸引したポンプ23の吐出操作により、配管およびノズル22を洗浄する。ノズル22から吐出された洗浄廃液は、試料容器載置部21に設けた廃液ポート21aを経由し、廃液容器27へ流れる。ここでノズル22から吐出された洗浄廃液には、ノズル22からポンプ23までの配管に存在した試料が含まれている。そのため、当該試料に溶解温度の高い成分が含まれる場合や、当該試料に含まれる成分の濃度が高い場合は、ノズル22から吐出された洗浄廃液の温度が低下することで前記成分が析出し、廃液ポート21aから廃液容器27までの配管29が詰まる原因となっていた。さらに、配管29の途中に屈曲し垂れ下がった部分があると、ノズル22から吐出された洗浄廃液が分析終了後においても配管内に滞留し、当該洗浄廃液の温度が低下すると前記成分が析出して詰まりの原因となる。また当該洗浄液の溶媒が蒸発すると前記成分の濃度がさらに高まって析出しやすくなり、詰まりの原因となっていた。
【0007】
そこで本発明の課題は、溶解温度の高い成分を含んだ試料や成分濃度の高い試料を吸引する場合に、前記成分の析出による配管の詰まりを抑えることが可能なオートサンプラ、および当該オートサンプラを備えたクロマトグラフを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を鑑みてなされた本発明は、以下の態様を包含する。
【0009】
すなわち本発明の第一の態様は、
試料を収容した試料容器を載置可能な試料容器載置部と、前記試料容器に収容された試料を吸引するためのノズルと、前記ノズルに接続され前記試料を吸引するポンプと、前記ノズルを洗浄した洗浄廃液を収容するための廃液容器と、を有したオートサンプラであって、
試料容器載置部が、第一の水平移動手段と前記第一の水平移動手段とは異なる移動軸を有した第二の水平移動手段と垂直移動手段により、水平および垂直移動可能であり、
廃液容器が、少なくとも、前記第一の水平移動手段、前記第二の水平移動手段、前記垂直移動手段のいずれかの手段により、水平および/または垂直移動可能である、
前記オートサンプラである。
【0010】
また本発明の第二の態様は、第一の水平移動手段が水平面上で直線移動可能な手段であり、第二の水平移動手段が前記水平面上で回転可能な手段である、前記第一の態様に記載のオートサンプラである。
【0011】
また本発明の第三の態様は、第一の水平移動手段が水平面上で直線移動可能な手段であり、第二の水平移動手段が前記水平面上で第一の水平移動手段とは異なる方向に直線移動可能な手段である、前記第一の態様に記載のオートサンプラである。
【0012】
また本発明の第四の態様は、廃液容器が、第一の水平移動手段と第二の水平移動手段により水平移動可能な、前記第一から第三の態様のいずれかに記載のオートサンプラである。
【0013】
また本発明の第五の態様は、廃液容器が、第一の水平移動手段、第二の水平移動手段および垂直移動手段により水平および垂直移動可能な、前記第一から第三の態様のいずれかに記載のオートサンプラである。
【0014】
さらに本発明の第六の態様は、
溶離液を供給する溶離液供給手段と、オートサンプラと、分離カラムと、検出手段と備えたクロマトグラフであって、オートサンプラが、
試料を収容した試料容器を載置可能な試料容器載置部と、前記試料容器に収容された試料を吸引するためのノズルと、前記ノズルに接続され前記試料を吸引するポンプと、前記試料を一定量保持可能なサンプルループと、前記サンプルループに保持した試料を前記溶離液により分離カラムへ導入可能な試料導入バルブと、前記ノズルおよび前記ノズルから前記ポンプまでの配管を洗浄するための洗浄液を収容した洗浄液容器と、前記ポンプの吸引先を前記ノズルと前記洗浄液容器との間で切り替え可能な流路切り替えバルブと、前記ノズルおよび前記ノズルから前記ポンプまでの配管を洗浄した洗浄廃液を収容するための廃液容器と、を有しており、かつ、
前記試料容器載置部が第一の水平移動手段と前記第一の水平移動手段とは異なる移動軸を有した第二の水平移動手段と垂直移動手段により水平および垂直移動可能であり、廃液容器が少なくとも前記第一の水平移動手段、前記第二の水平移動手段、前記垂直移動手段のいずれかの手段により水平および/または垂直移動可能である、
前記クロマトグラフである。
【0015】
また本発明の第七の態様は、第一の水平移動手段が水平面上で直線移動可能な手段であり、第二の水平移動手段が前記水平面上で回転可能な手段である、前記第六の態様に記載のクロマトグラフである。
【0016】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0017】
本発明のオートサンプラは、当該オートサンプラを構成する試料容器載置部が、第一の水平移動手段と前記第一の水平移動手段とは異なる移動軸を有した第二の水平移動手段と垂直移動手段により、水平および垂直移動可能である一方、当該オートサンプラを構成する廃液容器は、少なくとも前記第一の水平移動手段、前記第二の水平移動手段、前記垂直移動手段のいずれかの手段により、水平および/または垂直移動可能であることを特徴としている。本発明のオートサンプラは、試料容器載置部と廃液容器とを、少なくとも一つの共通の移動手段により、ともに水平および/または垂直方向に移動させることができる。そのため、ノズルによる洗浄廃液吐出位置(図2に示すオートサンプラのように、試料容器載置部21に廃液ポート21aを設けている場合は廃液ポート21a)から廃液容器までの距離を短くすることができ、洗浄廃液吐出位置(廃液ポート)から廃液容器までの配管の詰まりを抑制することができる。
【0018】
本発明のオートサンプラにおける第一の水平移動手段および第二の水平移動手段の例として、
(1)第一の水平移動手段が水平面上で直線移動可能な手段であり、第二の水平移動手段が前記水平面上で回転可能な手段である場合や、
(2)第一の水平移動手段が水平面上で直線移動可能な手段であり、第二の水平移動手段が前記水平面上で第一の水平移動手段とは異なる方向に直線移動可能な手段である場合、
があげられる。前記(1)の具体例としては、市販のXステージと回転ステージとを組み合わせた態様があげられる。前記(2)の具体例としては、市販のXYステージがあげられる。
【0019】
本発明のオートサンプラに設けるノズルとしては、金属製(例えば、ステンレススチール製)や樹脂製のニードルや、樹脂製のディスポーザルチップを中空の軸に取り付けた態様が例示できる。ただし本発明のオートサンプラでノズルから吸引する試料が高温の試料である場合、耐熱性に優れた金属製のニードルをノズルとして用いるのが好ましい。
【0020】
本発明のオートサンプラにおいて試料容器載置部に載置した試料容器に収容された試料の吸引を行なう場合、試料を吸引しようとする試料容器の載置位置がノズルの直下となるよう、第一の水平移動手段と第二の水平移動手段により試料容器載置部を移動させた後、ノズルを下降または垂直移動手段により試料容器載置部を上昇させることで、試料を吸引するが、ノズルの位置を固定したほうが(すなわち試料容器載置部のみを移動させたほうが)ノズルおよびノズルに接続された配管が周辺空気にさらされる領域を減らせるため、配管を通過する試料を高温に維持できる点で好ましい。
【0021】
本発明のオートサンプラにおいてノズルの洗浄を行なう際、当該ノズルから洗浄廃液を排出するが、本発明のオートサンプラに設けるノズルの位置が固定されている場合は、試料容器載置部近傍に設けた廃液容器をノズルの直下に移動させた後、直接洗浄廃液を吐出させる、または試料容器載置部に設けた廃液ポートをノズルの直下に移動させた後、当該廃液ポートに洗浄廃液を吐出することで廃液容器に導入すればよい。なお第一の水平移動手段および第二の水平移動手段として、前記(1)の場合を採用する場合は、オートサンプラを構成する試料容器載置部を回転させる手段(第二の水平移動手段)の回転軸中心に廃液ポートを設け、当該廃液ポートと廃液容器との間に間隙を有した状態で配管を設ければよい。このような構成をとることで、第二の水平移動手段による回転運動で廃液ポートの位置が移動することなく、かつ配管がねじれることもない。
【0022】
本発明のオートサンプラにおけるノズルの洗浄は、後述の具体例(図4から図7に示すオートサンプラ)のように、別途洗浄水を収容する洗浄水容器を設け、当該洗浄水をポンプで吸引し、吸引した洗浄水をノズルへ吐出することで洗浄を行なってもよいが、本発明のオートサンプラをクロマトグラフの試料導入手段として備える場合は、当該オートサンプラの上流側に位置する溶離液供給手段から供給される溶離液を分岐させ、洗浄液容器とポンプとを接続する配管につなぐことで、ノズルの洗浄を行なってもよい。
【0023】
本発明のオートサンプラに設けるポンプとしては、例えばプランジャを密閉シールが固定されたシリンダーの中で往復させるプランジャポンプや先端に密閉シールが付いたピストンをシリンダーの中で往復させるピストンポンプなどのシリンジポンプがあげられる。
【発明の効果】
【0024】
本発明のオートサンプラは、試料を収容した試料容器を載置可能な試料容器載置部と、前記試料容器に収容された試料を吸引するためのノズルと、前記ノズルに接続され前記試料を吸引するポンプと、前記ノズルを洗浄した洗浄廃液を収容するための廃液容器と、を有し、かつ、試料容器載置部が第一の水平移動手段と前記第一の水平移動手段とは異なる移動軸を有した第二の水平移動手段と垂直移動手段により水平および垂直移動可能であり、廃液容器が少なくとも前記第一の水平移動手段、前記第二の水平移動手段、前記垂直移動手段のいずれかの手段により水平および/または垂直移動可能であることを特徴としている。本発明のオートサンプラは、従来からあるオートサンプラ(図2および図3)と比較し、洗浄廃液が流れる配管長を短くすることができるので、配管の取り回しが容易となる。また、本発明のオートサンプラは、洗浄廃液に含まれる試料(成分)が廃液容器へ導入する配管の中で固形物として析出する可能性が低減されるため、長期に渡って分析を行なっても、前記配管を外して洗浄したり、交換する必要がなくなる。従って、本発明のオートサンプラをクロマトグラフの試料導入手段として設けることで、当該クロマトグラフの利用効率を向上させることができる。
【0025】
なお本発明のオートサンプラは、試料容器載置部と廃液容器とは少なくとも一つの共通の移動手段により、ともに水平および/または垂直移動させることができる。そのため、試料容器載置部と廃液容器を同時に引き出すことができ、試料容器の取り出し/載置時に廃液容器の交換を容易にできる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】一般的な液体クロマトグラフの構成図。
図2】従来からある高温条件下で分析可能な液体クロマトグラフに備えるオートサンプラの一例を示す模式図。
図3】従来からある高温条件下で分析可能な液体クロマトグラフに備えるオートサンプラの別の例を示す模式図。
図4】本発明のオートサンプラの第一の例を示す模式図。
図5】本発明のオートサンプラの第二の例を示す模式図。
図6】本発明のオートサンプラの第三の例を示す模式図。
図7】本発明のオートサンプラの第四の例を示す模式図。
【実施例】
【0027】
以下、実施例および比較例を用いて本発明をさらに詳細に説明するが、これらの例は本発明を限定するものではない。
【0028】
比較例1
従来からある高温条件下で分析可能な液体クロマトグラフに備えるオートサンプラの一例を図2に示す。図2に示すオートサンプラでは、試料を収容した試料容器60を載置可能な試料容器載置部21は、水平面上で直線移動可能な第一の水平移動手段(Xステージ31)と、第一の水平移動手段と同一水平面上かつ第一の水平移動手段の移動軸とは直交する方向に移動可能な第二の水平移動手段(Yステージ32)と、垂直移動手段(Zステージ33)により、水平および垂直移動可能であり(XYZステージ)、試料容器載置部21を水平および垂直移動させることで任意の位置に載置された試料容器60に収容された試料をノズル22で吸引することができる。一方廃液容器27は、前記XYZステージの外側に設置しており、廃液容器27と試料容器載置部21に設置した廃液ポート21aとの間は配管29で接続されている。試料容器載置部21の水平および垂直移動により、廃液ポート21aと廃液容器27との相対的位置は変化する。そのため配管29には、屈曲性のよい蛇腹パイプが使われるが、廃液ポート21aと廃液容器27との水平面上における位置が離れると、配管29の傾斜が緩やかとなり、配管29の蛇腹部分に洗浄廃液が溜まりやすくなるため、洗浄廃液に含まれる試料(成分)が析出し、配管29が詰まる問題が発生する。また廃液ポート21aと廃液容器27との水平面上および/または垂直面上における位置が極端に近いときも、配管29が折れ曲がり、当該折れ曲がり部分に洗浄液が溜まりやすくなるため、洗浄廃液に含まれる試料(成分)が析出し、配管29が詰まる問題が発生する。
【0029】
比較例2
従来からある高温条件下で分析可能な液体クロマトグラフに備えるオートサンプラの別の例を図3に示す。図3に示すオートサンプラは、第二の水平移動手段として第一の水平移動手段(Xステージ31)と同一水平面上で回転可能な手段(回転ステージ34)を用いていること、および廃液ポート21aを試料容器載置部21の中央に設けていること、以外は図2に示すオートサンプラと同じである。なお廃液ポート21aの下にはパイプを設けているが、配管29との間には間隙があるため、回転ステージ34により試料容器載置部21が回転しても、配管29がねじれたり回転することはない。図3に示すオートサンプラも図2に示すオートサンプラと同様、廃液ポート21aと廃液容器27との水平面上における位置が離れると、配管29の傾斜が緩やかとなり、配管29の蛇腹部分に洗浄液が溜まりやすくなるため、洗浄液に含まれる試料(成分)が析出し、配管29が詰まる問題が発生する。また廃液ポート21aと廃液容器27との水平面上および/または垂直面上における位置が極端に近いときも、配管29が折れ曲がり、当該折れ曲がり部分に洗浄液が溜まりやすくなるため、洗浄液に含まれる試料(成分)が析出し、配管29が詰まる問題が発生する。さらに図3に示すオートサンプラは、廃液ポート21aと配管29との間に間隙を有しており、図2に示すオートサンプラよりも洗浄廃液の温度がさらに低くなるため、配管29が詰まる可能性が高まる。
【0030】
実施例1
本発明のオートサンプラの第一の例を図4に示す。図4に示すオートサンプラでは、試料を収容した試料容器60を載置可能な試料容器載置部21と廃液容器27は、ともに、水平面上で直線移動可能な第一の水平移動手段(Xステージ31)と、第一の水平移動手段と同一水平面上かつ第一の水平移動手段の移動軸とは直交する方向に移動可能な第二の水平移動手段(Yステージ32)と、垂直移動手段(Zステージ33)により、水平および垂直移動可能(XYZステージ)となっており、さらに試料容器載置部21と廃液容器27はともにXYZステージ上に設けている。試料容器載置部21を水平および垂直方向に移動させることで任意の位置に載置された試料容器60に収容された試料をノズル22で吸引することができる。またノズル22を洗浄する際は、廃液容器27がノズル22直下となるようXYZステージで水平および垂直移動させた後、ノズル22より洗浄廃液を吐出すればよい。図4に示すオートサンプラでは、ノズル22から廃液容器27に至るまで配管が存在しないため、洗浄廃液に含まれる試料(成分)の析出は発生しない。また試料容器60の取り出し/載置のために試料容器載置部21を引き出す際、廃液容器27も同時に引き出せるため、廃液容器27を容易に交換することができる。本実施例では、廃液容器27を試料容器戴置部21より低い位置に設置する必要がなく、試料容器戴置部21の高さを低くすることができるので、オートサンプラ全体の高さも低くすることができる。
【0031】
実施例2
本発明のオートサンプラの第二の例を図5に示す。図5に示すオートサンプラは、試料容器載置部21に廃液ポート21aを設けており、かつその直下に廃液容器27を設けている他は、図4に示すオートサンプラと同じである。図5に示すオートサンプラにおいて、ノズル22を洗浄する際は、ノズル22直下に廃液ポート21aが位置するようXYZステージで水平および垂直方向に移動させた後、ノズル22より洗浄廃液を吐出すればよい。廃液ポート21aは試料容器載置部21に設置しており、高温が維持されている。そのため、洗浄廃液に含まれる試料(成分)が廃液ポート21aに析出する可能性は極めて少ない。また図5に示すオートサンプラも、試料容器載置部21を引き出す際、廃液容器27も同時に引き出せるため、廃液容器27を容易に交換することができる。
【0032】
実施例3
本発明のオートサンプラの第三の例を図6に示す。図6に示すオートサンプラは廃液容器27が、水平面上で直線移動可能な第一の水平移動手段(Xステージ31)と、第一の水平移動手段と同一水平面上かつ第一の水平移動手段の移動軸とは直交する方向に移動可能な第二の水平移動手段(Yステージ32)により、水平移動のみ可能となっている他は、図5に示すオートサンプラと同じである。図6に示すオートサンプラにおいて、ノズル22を洗浄する際は、図5に示すオートサンプラと同様、ノズル22直下に廃液ポート21aが位置するようXYZステージで水平および垂直移動させた後、ノズル22より洗浄廃液を吐出すればよい。廃液ポート21aと廃液容器27との間には、短い配管29を設けているが、その長さは図2および3に示すオートサンプラと比較し短く、かつ垂直方向に設けているため、洗浄廃液に含まれる試料(成分)が廃液ポート21aに析出する可能性は少ない。また図6に示すオートサンプラも、試料容器載置部21を引き出す際、廃液容器27も同時に引き出せるため、廃液容器27を容易に交換することができる。
【0033】
実施例4
本発明のオートサンプラの第四の例を図7に示す。図7に示すオートサンプラでは、試料を収容した試料容器60を載置可能な試料容器載置部21は、水平面で直線移動可能な第一の水平移動手段(Xステージ31)、第一の水平移動手段と同一水平面上で回転可能な第二の水平移動手段(回転ステージ34)と、垂直移動手段(Zステージ33)により、水平および垂直移動可能となっており、廃液容器は、Xステージ31により水平面上で直線移動可能となっている。廃液ポート21aは試料容器載置部21の中央に設けており、回転ステージ34により試料容器載置部21が回転しても廃液ポート21aの位置は変化しないようにしている。なお廃液ポート21aの下にはパイプを設けているが、配管29との間には間隙があるため、回転ステージ34により試料容器載置部21が回転しても、配管29がねじれたり回転することはない。図6に示すオートサンプラは、図3に示すオートサンプラと比較し、廃液ポート21aと廃液容器27との水平面上における位置変化を抑えることができる。そのため、配管29の長さを短くしたり、蛇腹を有しない配管を使用することが可能となり、図3に示すオートサンプラと比較し、洗浄廃液に含まれる試料(成分)が析出し、配管29が詰まる可能性を抑えることができる。また図7に示すオートサンプラも、試料容器載置部21を引き出す際、廃液容器27も同時に引き出せるため、廃液容器27を容易に交換することができる。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明は、オートサンプラを構成する試料容器載置部を、第一の水平移動手段と前記第一の水平移動手段とは異なる移動軸を有した第二の水平移動手段と垂直移動手段により水平および垂直方向に移動可能とし、廃液容器を少なくとも前記第一の水平移動手段、前記第二の水平移動手段、前記垂直移動手段のいずれかの手段により水平および/または垂直方向に移動可能とすることで、ノズル洗浄時の洗浄液による配管詰まりを抑制することができる。そのため本発明は、特に高温条件下で分析可能な液体クロマトグラフに備えるオートサンプラとして好ましいといえる。
【符号の説明】
【0035】
11:溶離液容器
12:溶離液送液ポンプ
13:(溶離液)廃液容器
20:オートサンプラ
21:試料容器載置部
21a:廃液ポート
22:ノズル
23:ポンプ
24:サンプルループ
25:試料導入バルブ
26:洗浄液容器
27:(洗浄)廃液容器
28:コイル
29:廃液ポートから廃液容器までの配管
30:三方バルブ
31:Xステージ
32:Yステージ
33:Zステージ
34:回転ステージ
40:分離カラム
50:検出手段
60:試料容器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7