(54)【発明の名称】導電パターンの製造方法、その方法により製造された導電パターンを備える導電パターン基板、その導電パターン基板を含むタッチパネルセンサ、及び感光性導電フィルム
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
基板上に設けられた感光性樹脂層と、前記感光性樹脂層の前記基板とは反対側の面に設けられた、導電性繊維を含む導電膜とに、パターン状に活性光線を照射する露光工程と、
前記感光性樹脂層と前記導電膜の未露光部を除去することにより導電パターンを形成する現像工程と、を含み、
前記感光性樹脂層が、バインダーポリマー、エチレン性不飽和結合を有する光重合性化合物、光重合性開始剤、及びアミン化合物を含有し、
前記導電性繊維が銀繊維である、
導電パターンの製造方法。
支持フィルムと、前記支持フィルム上に設けられた導電膜と、前記導電膜上に設けられた感光性樹脂層とを含む感光性導電フィルムを、前記基板上に前記感光性樹脂層が接するようにラミネートすることによって前記感光性樹脂層と前記導電膜を設ける、請求項1に記載の導電パターンの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
尚、本明細書における「(メタ)アクリレート」とは、「アクリレート」及びそれに対応する「メタクリレート」を意味する。同様に「(メタ)アクリル」とは、「アクリル」及び「メタクリル」を意味し、「(メタ)アクリロイル」とは「アクリロイル」及び「メタクリロイル」を意味する。「(メタ)アクリル酸」、「(メタ)アクリル酸アルキルエステル」も同様である。
【0016】
<導電パターンの製造方法>
本発明の導電パターンの製造方法は、基板上に設けられた感光性樹脂層と導電膜にパターン状に活性光線を照射する露光工程と、感光性樹脂層と導電膜の未露光部を除去することにより導電パターンを形成する現像工程とを含む。
感光性樹脂層は、バインダーポリマー、エチレン性不飽和結合を有する光重合性化合物、光重合性開始剤、及びアミン化合物を含有する。
導電膜(導電層)は、感光性樹脂層の基板とは反対側の面に設けられた膜であり、導電性繊維を含む。
【0017】
本発明の導電パターンの形成方法の一実施形態を、
図1を用いて説明する。
導電パターンの形成には、
図1(a)に示す積層体を用いることができる。
図1(a)の積層体は、基板20上に、感光性樹脂層3と導電膜2を含む感光層4、及び支持フィルム1を有する感光性導電フィルム10が設けられている。
尚、後述するように、この積層体は、感光性導電フィルム10を感光性樹脂層3が基板20と接するように基板20上にラミネートすることによって得ることができる。
【0018】
まず、感光性導電フィルム10上にマスク5を設け、マスク5を介して、感光層4(導電膜2及び感光性樹脂層3)に活性光線Lをパターン状に照射する(露光工程:
図1(b))。
次に、現像により未硬化部分(未露光部分)を除去することにより、導電パターン(導電膜2a)を形成する(現像工程:
図1(c))。
【0019】
ここで、上記の方法で得られる導電パターンは、導電膜2aの厚みに加えて樹脂硬化層3bの厚みを有している(尚、導電膜2aは樹脂硬化層3bの上部に埋まっていてもよい)。これらの厚みは基板との段差Hbとなる。段差Hbが大きいと、ディスプレイ等に要求される平滑性が得られにくくなるおそれがあり、また、導電パターンが視認されやすくなるおそれがあるので、用途によって下記の方法(
図2)と使い分けることができる。
【0020】
図2に示す方法において、支持フィルム1を有する感光層4の所定部分に活性光線を照射する露光工程(第1の露光工程:
図2(b))までは上記の製造方法と同じである。
第1の露光工程の後に、支持フィルム1を剥離してから、酸素存在下で、第1の露光工程での露光部及び未露光部の一部又は全部に活性光線を照射する(第2の露光工程:
図2(c))。これにより、基板20上に、導電パターン2aとともに導電膜が形成されていない樹脂硬化層3aが設けられることにより、基板上に導電パターンのみを設けた
図1(c)の場合に比べて、導電パターンの段差を小さくすることができる(
図2(d)に示す段差Ha)。
【0021】
以下、本発明の製造方法に用いる各部材や工程について詳細に説明する。
[基板]
基板としては、例えば、ガラス基板、ポリカーボネート等のプラスチック基板などが挙げられる。基板は、450〜650nmの波長域での最小光透過率が80%以上であるものが好ましい。
【0022】
[感光性樹脂層]
感光性樹脂層は、(A)バインダーポリマー、(B)エチレン性不飽和結合を有する光重合性化合物、(C)光重合性開始剤、及び(D)アミン化合物を含む。
【0023】
(A)バインダーポリマーとしては、例えば、アクリル樹脂、スチレン樹脂、エポキシ樹脂、アミド樹脂、アミドエポキシ樹脂、アルキド樹脂、フェノール樹脂、エステル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸の反応で得られるエポキシアクリレート樹脂、及びエポキシアクリレート樹脂と酸無水物の反応で得られる酸変性エポキシアクリレート樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0024】
上記の中でも、アルカリ現像性及びフィルム形成性に優れる観点から、アクリル樹脂を用いることが好ましく、そのアクリル樹脂が(メタ)アクリル酸及び(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来するモノマー単位を構成単位として有するとより好ましい。ここで、「アクリル樹脂」とは、(メタ)アクリル基を有する重合性単量体に由来するモノマー単位を主に有する重合体のことを意味する。
【0025】
上記アクリル樹脂は、(メタ)アクリル基を有する重合性単量体をラジカル重合して製造されるものが使用できる。このアクリル樹脂は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0026】
上記(メタ)アクリル基を有する重合性単量体としては、例えば、ジアセトンアクリルアミド等のアクリルアミド、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリルエステル、(メタ)アクリル酸ジアルキルアミノエチルエステル、(メタ)アクリル酸グリシジルエステル、(メタ)アクリル酸、α−ブロモ(メタ)アクリル酸、α−クロル(メタ)アクリル酸、β−フリル(メタ)アクリル酸、及びβ−スチリル(メタ)アクリル酸等が挙げられる。
【0027】
また、上記アクリル樹脂は、上記のような(メタ)アクリル基を有する重合性単量体の他に、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン等のα−位又は芳香族環において置換されている重合可能なスチレン誘導体、アクリロニトリル、ビニル−n−ブチルエーテル等のビニルアルコールのエステル類、マレイン酸、マレイン酸無水物、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノイソプロピル等のマレイン酸モノエステル、フマール酸、ケイ皮酸、α−シアノケイ皮酸、イタコン酸、クロトン酸等の1種又は2種以上の重合性単量体が共重合されていてもよい。
【0028】
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチルエステル、(メタ)アクリル酸エチルエステル、(メタ)アクリル酸プロピルエステル、(メタ)アクリル酸ブチルエステル、(メタ)アクリル酸ペンチルエステル、(メタ)アクリル酸ヘキシルエステル、(メタ)アクリル酸ヘプチルエステル、(メタ)アクリル酸オクチルエステル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルエステル、(メタ)アクリル酸ノニルエステル、(メタ)アクリル酸デシルエステル、(メタ)アクリル酸ウンデシルエステル、(メタ)アクリル酸ドデシルエステル、(メタ)アクリル酸トリフルオロエチルエステル、及び(メタ)アクリル酸テトラフルオロプロピルエステル等が挙げられる。これらは、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0029】
また、(A)バインダーポリマーは、アルカリ現像性をより良好にする観点から、カルボキシル基を有することが好ましい。カルボキシル基を有する重合性単量体としては、上述したような(メタ)アクリル酸が挙げられる。
【0030】
(A)バインダーポリマーが有するカルボキシル基の比率は、使用する全重合性単量体に対するカルボキシル基を有する重合性単量体の割合として、10〜50質量%であることが好ましく、12〜40質量%であることがより好ましく、15〜30質量%であることが特に好ましく、15〜25質量%であることが極めて好ましい。アルカリ現像性に優れる点では10質量%以上であることが好ましく、アルカリ耐性に優れる点では、50質量%以下であることが好ましい。
【0031】
(A)バインダーポリマーの重量平均分子量は、機械強度及びアルカリ現像性のバランスを図る観点から、5000〜300000であることが好ましく、20000〜150000であることがより好ましく、30000〜100000であることが特に好ましい。耐現像液性に優れる点では、重量平均分子量が、5000以上であることが好ましい。また、現像時間の観点からは、300000以下であることが好ましい。尚、本発明における重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC)により測定され、標準ポリスチレンを用いて作成した検量線により換算された値である。
【0032】
これらの(A)バインダーポリマーは、単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。2種類以上を組み合わせて使用する場合のバインダーポリマーとしては、例えば、異なる共重合成分からなる2種類以上のバインダーポリマー、異なる重量平均分子量の2種類以上のバインダーポリマー、及び異なる分散度の2種類以上のバインダーポリマーが挙げられる。
【0033】
次に、(B)エチレン性不飽和結合を有する光重合性化合物について説明する。
エチレン性不飽和結合を有する光重合性化合物としては、例えば、多価アルコールにα、β−不飽和カルボン酸を反応させて得られる化合物、グリシジル基含有化合物にα、β−不飽和カルボン酸を反応させて得られる化合物、ウレタン結合を有する(メタ)アクリレート化合物、フタル酸構造を有する(メタ)アクリレート化合物、及び(メタ)アクリル酸アルキルエステル等が挙げられる。これらは単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。
【0034】
上記多価アルコールにα、β−不飽和カルボン酸を反応させて得られる化合物としては、2、2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリエトキシ)フェニル)プロパン、2、2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリプロポキシ)フェニル)プロパン、2、2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリエトキシポリプロポキシ)フェニル)プロパン等のビスフェノールAジ(メタ)アクリレート化合物;ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレンポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等のポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート;トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエトキシトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジエトキシトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリエトキシトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンテトラエトキシトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンペンタエトキシトリ(メタ)アクリレート等のトリメチロールプロパン骨格を有する(メタ)アクリレート;テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート等のテトラメチロールメタン骨格を有する(メタ)アクリレート;ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等のジペンタエリスリトール骨格を有する(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0035】
上記ウレタン結合を有する(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、β位にヒドロキシル基を有する(メタ)アクリルモノマーと、ジイソシアネート化合物との付加反応物等が挙げられる。
ジイソシアネート化合物としては、イソホロンジイソシアネート、2、6−トルエンジイソシアネート、2、4−トルエンジイソシアネート、1、6−ヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。
他にも、トリス[(メタ)アクリロキシテトラエチレングリコールイソシアネート]ヘキサメチレンイソシアヌレート、EO変性ウレタンジ(メタ)アクリレート、EO、PO変性ウレタンジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0036】
尚、「EO」はエチレンオキサイドを示し、EO変性された化合物はエチレンオキサイド基のブロック構造を有する。また、「PO」はプロピレンオキサイドを示し、PO変性された化合物はプロピレンオキサイド基のブロック構造を有する。
【0037】
(B)エチレン性不飽和結合を有する光重合性化合物の含有割合は、バインダーポリマー及び光重合性化合物の総量100質量部に対して、30〜80質量部であることが好ましく、40〜70質量部であることがより好ましい。光硬化性及び転写した導電膜(導電層及び感光性樹脂層)の塗膜性に優れる点では、30質量部以上であることが好ましく、フィルムとして巻き取った場合の保管安定性に優れる点では、80質量部以下であることが好ましい。
【0038】
次に(C)光重合開始剤について説明する。(C)光重合開始剤としては、使用する露光機の光波長と、機能発現に必要な波長とが合うものを選択すれば、特に制限はないが、例えば、ベンゾフェノン、N,N’−テトラメチル−4,4’−ジアミノベンゾフェノン(ミヒラーケトン)、N,N’−テトラエチル−4,4’−ジアミノベンゾフェノン、4−メトキシ−4’−ジメチルアミノベンゾフェノン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−プロパノン−1等の芳香族ケトン;2−エチルアントラキノン、フェナントレンキノン、2−tert−ブチルアントラキノン、オクタメチルアントラキノン、1,2−ベンズアントラキノン、2,3−ベンズアントラキノン、2−フェニルアントラキノン、2,3−ジフェニルアントラキノン、1−クロロアントラキノン、2−メチルアントラキノン、1,4−ナフトキノン、9,10−フェナンタラキノン、2−メチル−1,4−ナフトキノン、2,3−ジメチルアントラキノン等のキノン化合物;ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインフェニルエーテル等のベンゾインエーテル化合物;ベンゾイン、メチルベンゾイン、エチルベンゾイン等のベンゾイン化合物;1,2−オクタンジオン、1−[4−(フェニルチオ)フェニル]−2−(O−ベンゾイルオキシム)、1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]エタノン1−(O−アセチルオキシム)等のオキシムエステル化合物;ベンジルジメチルケタール等のベンジル誘導体;2−(o−クロロフェニル)−4、5−ジフェニルイミダゾール二量体等の2、4、5−トリアリールイミダゾール二量体;9−フェニルアクリジン、1、7−ビス(9、9’−アクリジニル)ヘプタン等のアクリジン誘導体;N−フェニルグリシン、N−フェニルグリシン誘導体、クマリン化合物及びオキサゾール化合物等が挙げられる。
【0039】
これらの中でも、感度、透明性、及びパターン形成能から、オキシムエステル化合物が好ましい。オキシムエステル化合物としては、特に下記式(1)、(2)及び(3)で表される化合物が好ましい。
【0040】
【化1】
式(1)中、R及びR
1は、それぞれ炭素数1〜12のアルキル基、炭素数4〜10のシクロアルキル基又はフェニル基を示し、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数4〜6のシクロアルキル基又はフェニル基であることが好ましく、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数4〜6のシクロアルキル基又はフェニル基であることがより好ましく、メチル基、シクロペンチル基又はフェニル基であることがさらに好ましい。
R
2は、OH、COOH、O(CH
2)OH、O(CH
2)
2OH、COO(CH
2)OH又はCOO(CH
2)
2OHを示し、O(CH
2)OH、O(CH
2)
2OH、COO(CH
2)OH又はCOO(CH
2)
2OHであることが好ましく、O(CH
2)
2OH又はCOO(CH
2)
2OHであることがより好ましい。尚、芳香環には、R
2以外の置換基を有してもよい。また、式(1)で表される化合物はR
2を有していても有していなくてもよい。
【0041】
【化2】
式(2)中、R
3は、それぞれ炭素数1〜6のアルキル基を示し、プロピル基であることが好ましい。
R
4は、NO
2又はArCO(ここで、Arはアリール基を示す。)を示し、Arとしては、トリル基が好ましい。
R
5及びR
6は、それぞれ炭素数1〜12のアルキル基、フェニル基又はトリル基を示し、メチル基、フェニル基又はトリル基であることが好ましい。
尚、芳香環には、R
4以外の置換基を有してもよい。
【0042】
【化3】
式(3)中、R
7は、炭素数1〜6のアルキル基を示し、エチル基であることが好ましい。
R
8はアセタール結合を有する有機基であり、下記式(3−1)に示す化合物が有するR
8に対応する置換基であることが好ましい。
R
9及びR
10は、それぞれ炭素数1〜12のアルキル基、フェニル基又はトリル基を示し、メチル基、フェニル基又はトリル基であることが好ましく、メチル基であることがより好ましい。
尚、芳香環には、R
8以外の置換基を有してもよい。
【0043】
上記式(1)で表される化合物としては、例えば、下記式(1−1)で表される化合物が挙げられる。これは、アデカクルーズNCI−930(株式会社ADEKA製、商品名)として入手可能である。
【化4】
【0044】
上記式(2)で表される化合物としては、例えば、下記式(2−1)で表される化合物が挙げられる。この化合物は、DFI−091(ダイトーケミックス株式会社製、商品名)として入手可能である。
【化5】
【0045】
上記式(3)で表される化合物としては、例えば、下記式(3−1)で表される化合物が挙げられる。アデカオプトマーN−1919(株式会社ADEKA製、商品名)として入手可能である。
【0047】
その他のオキシムエステル化合物としては、下記化合物を用いることが好ましい。
【化7】
【0048】
(C)光重合開始剤の含有割合は、バインダーポリマー及び光重合性化合物の総量100質量部に対して、0.1〜20質量部であることが好ましく、1〜10質量部であることがより好ましく、1〜5質量部であることが特に好ましい。光感度に優れる点では、0.1質量部以上であることが好ましく、内部の光硬化性に優れる点では、20質量部以下であることが好ましい。
【0049】
本発明の導電パターンの製造方法では、感光性樹脂層が(D)アミン化合物を含有することにより、高い高温高湿信頼性が得られる。
ここで、高温高湿信頼性とは、例えば温度60℃、湿度90%の条件や、温度85℃、湿度85%の条件下で得られた導電パターン基材を500時間放置した際に、導電パターン基材のシート抵抗値が上がらないことを指す。高温高湿信頼性が悪化するのは高温高湿条件下にて感光性樹脂層、例えば(C)光重合開始剤等が分解して感光性樹脂層内に酸性の成分が生じ、導電層、例えば銀繊維が酸化して感光性樹脂層中へ溶け、シート抵抗値が上がるためである。(D)アミン化合物が存在すると塩基性のアミン構造が酸と相互作用するため、酸の導電層への影響を防ぎ、高い高温高湿信頼性が得られる。
【0050】
(D)アミン化合物は非共有電子対を有する窒素原子が塩基性を示すものであり、第一級アミン、第二級アミン、及び第三級アミンのいずれも用いることができる。
これらの中でも、(D)アミン化合物添加による感光性樹脂層のゲル化を防止する点から、比較的反応性の低いものがより好ましい。さらに感光性樹脂層への相溶性が良いもの、感光性樹脂層の塗工の際に揮発しないものを選択することが好ましい。(D)アミン化合物は1種のみを用いてもいいし、2種以上を併用してもよい。
【0051】
第一級アミンとしては、例えばアリルアミン、イソプロピルアミン、ジアミノプロピルアミン、エチルアミン、2−エチルヘキシルアミン、3−(2−エチルヘキシルオキシ)プロピルアミン、3−エトキシプロピルアミン、3−(ジエチルアミノ)プロピルアミン、3−(ジブチルアミノ)プロピルアミン、t−ブチルアミン、3−(メチルアミノ)プロピルアミン、3−(ジメチルアミノ)プロピルアミン、3−メトキシプロピルアミン及び2,4−ジアミノ−6−フェニル−1,3,5−トリアジン(ベンゾグアナミン)、N−メチルエチレンジアミン、N−エチルエチレンジアミン、N,N’−ジメチルエチレンジアミン、N,N’−ジエチルエチレンジアミン、N−メチルトリメチレンジアミン、N−エチルトリメチレンジアミン、N,N’−ジメチルトリメチレンジアミン、N,N’−ジエチルトリメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、ジプロピレントリアミン等が挙げられる。
【0052】
第二級アミンとしては、例えば、ジプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、N−メチルエチルアミン、N−メチルプロピルアミン、N−メチルイソプロピルアミン、N−メチルブチルアミン、N−メチルイソブチルアミン、N−メチルシクロヘキシルアミン、N−エチルプロピルアミン、N−エチルイソプロピルアミン、N−エチルブチルアミン、N−エチルイソブチルアミン、N−エチルシクロヘキシルアミン、N−メチルビニルアミン、N−メチルアリルアミン、3−(フェニルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、N−メチルベンジルアミン、N−エチルベンジルアミン、N−メチルフェニチルアミン、N−エチルフェネチルアミン、ピロリジン、ピペリジン、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルメタクリレート、ピペラジン、N−メチルピペラジン、N−エチルピペラジン、モルホリン及びチオモルホリン等が挙げられる。
【0053】
第三級アミンとしては、例えば、テトラメチルエチレンジアミン、N,N−ジメチル−n−オクタデシルアミン、トリプロピルアミン、トリイソプロピルアミン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、及びアクリロイルモルフォリン等が挙げられる。
【0054】
これらの中でも、3−(フェニルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、2,4−ジアミノ−6−フェニル−1,3,5−トリアジン、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルメタクリレート又はアクリロイルモルフォリンを含むことが好ましい。
【0055】
(D)アミン化合物の含有割合は、バインダーポリマー及び光重合性化合物の総量100質量部に対して、0.1〜20質量部であることが好ましく、1〜10質量部であることがより好ましく、1〜5質量部であることが特に好ましい。高温高湿信頼性に優れる点では、1質量部以上であることが好ましく、感度に優れる点では、5質量部以下であることが好ましい。
【0056】
感光性樹脂層には、必要に応じて、密着性付与剤、可塑剤、充填剤、消泡剤、難燃剤、安定剤、レベリング剤、剥離促進剤、酸化防止剤、香料、イメージング剤、熱架橋剤等の添加剤を、単独で又は2種類以上を組み合わせて含有させることができる。これらの添加剤の添加量は、バインダーポリマー及び光重合性化合物の総量100質量部に対して各々0.01〜20質量部であることが好ましい。
【0057】
感光性樹脂層は、導電層を形成した支持フィルム上に、必要に応じて、メタノール、エタノール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、トルエン、N、N−ジメチルホルムアミド、プロピレングリコールモノメチルエーテル等の溶剤又はこれらの混合溶剤に溶解した、固形分10〜60質量%程度の感光性樹脂組成物の溶液を塗布、乾燥することにより形成できる。但し、この場合、乾燥後の感光性樹脂層中の残存有機溶剤量は、後の工程での有機溶剤の拡散を防止するため、2質量%以下であることが好ましい。
【0058】
感光性樹脂層の塗工は、ロールコート法、コンマコート法、グラビアコート法、エアーナイフコート法、ダイコート法、バーコート法、スプレーコート法等の公知の方法で行うことができる。塗工後、有機溶剤等を除去するための乾燥は、70〜150℃で5〜30分間程度、熱風対流式乾燥機等で行うことができる。
【0059】
感光性樹脂層の厚みは、用途により異なるが、乾燥後の厚みで1〜30μmであることが好ましく、1〜15μmであることがより好ましく、1〜10μmであることが特に好ましい。この厚みが1μm未満では塗工が困難となる傾向があり、30μmを超えると光透過の低下による感度が不充分となり転写する感光性樹脂層の光硬化性が低下する傾向がある。
【0060】
本発明で用いる感光性導電フィルムにおいて、導電層及び感光性樹脂層の積層体は、両層の合計膜厚を1〜10μmとしたときに450〜650nmの波長域における最小光透過率が80%以上であることが好ましく、85%以上であることがより好ましい。導電層及び感光性樹脂層がこのような条件を満たす場合、ディスプレイパネル等での高輝度化が容易となる。
【0061】
[導電層]
導電層は導電性繊維を少なくとも一種含有する。
導電性繊維としては、例えば、金、銀、白金等の金属繊維、及びカーボンナノチューブ等の炭素繊維が挙げられる。これらは、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。導電性の観点からは、金繊維又は銀繊維を用いることが好ましい。さらに、形成される導電膜の導電性を容易に調整できる観点からは、銀繊維がより好ましい。導電性繊維は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0062】
上記の金属繊維は、例えば、金属イオンをNaBH
4等の還元剤で還元する方法、又はポリオール法により調製することができる。また、上記カーボンナノチューブは、Unidym社のHipco単層カーボンナノチューブ等の市販品を使用することができる。
【0063】
導電性繊維の繊維径は、1nm〜50nmであることが好ましく、2nm〜20nmであることがより好ましく、3nm〜10nmであることが特に好ましい。また、導電性繊維の繊維長は、1μm〜100μmであることが好ましく、2μm〜50μmであることがより好ましく、3μm〜10μmであることが特に好ましい。繊維径及び繊維長は、走査型電子顕微鏡により測定することができる。
【0064】
また、上記導電層には、導電性繊維と合わせて有機導電体を用いることができる。有機導電体としては、特に制限無く用いることができるが、チオフェン誘導体やアニリン誘導体等の有機導電ポリマーを用いることが好ましい。具体的には、ポリエチレンジオキシチオフェン、ポリヘキシルチオフェンやポリアニリンを用いることができる。
【0065】
導電層の厚みは、導電パターンの用途や求められる導電性によっても異なるが、1μm以下であることが好ましく、1nm〜0.5μmであることがより好ましく、5nm〜0.1μmであることが特に好ましい。
【0066】
導電層の厚みが1μm以下であると、450〜650nmの波長域での光透過率が高く、パターン形成性にも優れ、特に透明電極の作製に好適なものとなる。尚、導電層の厚みは、走査型電子顕微鏡写真によって測定される値を指す。
【0067】
導電層は、例えば、支持フィルム上に、上述した導電性繊維や有機導電体を水及び/又は有機溶剤、必要に応じて界面活性剤等の分散安定剤等を加えた導電性分散液を塗工した後、乾燥することにより形成することができる。乾燥後、支持フィルム上に形成した導電層は、必要に応じてラミネートされてもよい。塗工は、例えば、ロールコート法、コンマコート法、グラビアコート法、エアーナイフコート法、ダイコート法、バーコート法、スプレーコート法等の公知の方法で行うことができる。また、乾燥は、30〜150℃で1〜30分間程度、熱風対流式乾燥機等で行うことができる。導電層において、導電性繊維や有機導電体は界面活性剤や分散安定剤と共存していてもかまわない。
【0068】
導電層は、導電性繊維や有機導電体の組合せでもよく、その場合は、それらを混合したものを塗布形成してもよく、又は、それぞれを順次塗布して形成してもよい。例えば、導電性繊維を塗布、形成した後、有機導電体の溶液を塗布、乾燥して形成できる。
【0069】
上述したように、感光層(感光性樹脂層と導電膜)は、支持フィルムと、支持フィルム上に設けられた導電膜と、導電膜上に設けられた感光性樹脂層とを含む感光性導電フィルムを、基板上に感光性樹脂層が接するようにラミネートすることによって得ることができる。
【0070】
[支持フィルム]
支持フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリカーボネートフィルム等の耐熱性及び耐溶剤性を有する重合体フィルムが挙げられる。これらのうち、透明性や耐熱性の観点からは、ポリエチレンテレフタレートフィルムが好ましい。尚、これらの重合体フィルムは、後に感光性樹脂層から除去可能でなくてはならないため、除去が不可能となるような表面処理が施されたものであったり、材質であったりしてはならない。
【0071】
また、支持フィルムの厚みは、5〜300μmであることが好ましく、10〜200μmであることがより好ましく、15〜100μmであることが特に好ましい。機械的強度が低下し、導電層を形成するために導電性分散液若しくは感光性樹脂層を形成するために感光性樹脂組成物を塗工する工程、又は露光した感光性樹脂層を現像する前に支持フィルムを剥離する工程において、支持フィルムが破れることを防止する観点から、5μm以上であることが好ましく、10μm以上であることがより好ましく、15μm以上であることがさらに好ましい。また、支持フィルムを介して活性光線を感光性樹脂層に照射後のパターンの解像度に優れる点では、300μm以下であることが好ましく、200μm以下であることがより好ましく、100μm以下であることがさらに好ましい。
【0072】
支持フィルムのヘーズ値は、感度及び解像度を良好にできる観点から、0.01〜5.0%であることが好ましく、0.01〜3.0%であることがより好ましく、0.01〜2.0%であることが特に好ましく、0.01〜1.0%であることが極めて好ましい。尚、ヘーズ値はJIS K 7105に準拠して測定することができ、例えば、NDH−1001DP(日本電色工業(株)製、商品名)等の市販の濁度計等で測定が可能である。
【0073】
ラミネート工程は、例えば、感光性導電フィルムを、保護フィルムがある場合はそれを除去した後、加熱しながら感光性樹脂層側を基板に圧着することにより行なわれる。尚、この作業は、密着性及び追従性の見地から減圧下で積層することが好ましい。感光性導電フィルムの積層は、感光性樹脂層及び/又は基板を70〜130℃に加熱することが好ましく、圧着圧力は、0.1〜1.0MPa程度(1〜10kgf/cm
2程度)とすることが好ましいが、これらの条件には特に制限はない。また、感光性樹脂層を上記のように70〜130℃に加熱すれば、予め基板を予熱処理することは必要ではないが、積層性をさらに向上させるために基板の予熱処理を行うこともできる。
【0074】
<露光工程>
支持フィルムを付けたまま基板上の感光性樹脂層の所定部分に活性光線を照射する露光工程(1)での露光方法としては、アートワークと呼ばれるネガ又はポジマスクパターンを通して活性光線を画像状に照射する方法(マスク露光法)が挙げられる。活性光線の光源としては、公知の光源、例えば、カーボンアーク灯、水銀蒸気アーク灯、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、キセノンランプ等の紫外線など可視光等を有効に放射するものが用いられる。また、Arイオンレーザ、半導体レーザ等の紫外線、可視光等を有効に放射するものも用いられる。さらに、写真用フラッド電球、太陽ランプ等の可視光を有効に放射するものも用いられる。また、レーザ露光法等を用いた直接描画法により活性光線を画像状に照射する方法を採用してもよい。
【0075】
上記露光工程(1)での露光量は、使用する装置や感光性樹脂組成物の組成によって異なるが、好ましくは5mJ/cm
2〜1000mJ/cm
2であり、より好ましくは10mJ/cm
2〜200mJ/cm
2である。光硬化性に優れる点では、10mJ/cm
2以上であることが好ましく、解像性の点では200mJ/cm
2以下であることが好ましい。
【0076】
支持フィルムをはく離してから活性光線を照射する露光工程(2)の光源としては、上記露光工程(1)と同様である。
【0077】
上記露光工程(2)での露光量は、使用する装置や感光性樹脂組成物の組成によって異なるが、好ましくは5mJ/cm
2〜1000mJ/cm
2であり、より好ましくは10mJ/cm
2〜200mJ/cm
2である。光硬化性に優れる点では、10mJ/cm
2以上であることが好ましく、作業効率の点では200mJ/cm
2以下であることが好ましい。露光工程(2)の露光量は、支持体フィルムを除去して露光することで、露光により開始剤より発生する反応種が、表面からの酸素により失活を起こすことを利用するものであり、過度の露光は充分硬化させるので、好ましくない。
露光工程(2)の露光を行う雰囲気は、酸素の存在が必要であり、大気中での露光が好ましい。酸素濃度を増やした条件でもかまわない。
【0078】
<現像工程>
本実施形態の現像工程では、支持フィルムをはく離してから活性光線を照射する露光工程(2)で露光した感光性樹脂層の充分硬化していない表面部分が除去される。具体的には、ウェット現像により感光性樹脂層の充分硬化していない表面部分、つまり導電層を含む表面層を除去する。これにより、所定のパターンを有する導電層が露光工程(2)で露光された領域の樹脂硬化層上に残り、現像工程で除去された部分には導電層が無く感光性樹脂層のみのパターンが形成される。従って、現像工程で、露光工程(1)、(2)ともに露光されていない部分は、感光性樹脂層全体が除去される。
【0079】
ウェット現像は、例えば、アルカリ性水溶液、水系現像液、有機溶剤系現像液等の感光性樹脂に対応した現像液を用いて、スプレー、揺動浸漬、ブラッシング、スクラッピング等の公知の方法により行われる。現像の方式としては、例えば、ディップ方式、バトル方式、スプレー方式、ブラッシング、スラッピング等が挙げられる。これらのうち、高圧スプレー方式を用いることが、解像度向上の観点から好ましい。
【0080】
また、現像に用いるアルカリ性水溶液としては、0.1〜5質量%炭酸ナトリウム水溶液、0.1〜5質量%炭酸カリウム水溶液、0.1〜5質量%水酸化ナトリウム水溶液、0.1〜5質量%四ホウ酸ナトリウム水溶液等が好ましい。また、現像に用いるアルカリ性水溶液のpHは9〜11の範囲とすることが好ましく、その温度は、感光性樹脂層の現像性に合わせて調節される。
【0081】
本実施形態の導電パターンの形成方法においては、現像後に必要に応じて、60〜250℃程度の加熱又は0.2〜10J/cm
2程度の露光を行うことにより導電パターンをさらに硬化してもよい。
【0082】
<導電パターン基板>
本発明の導電パターン基板は、上述した本発明の導電パターンの製造方法により得られる。透明電極として有効に活用できる観点から、導電膜又は導電パターンの表面抵抗率が2000Ω/□以下であることが好ましく、1000Ω/□以下であることがより好ましく、500Ω/□以下であることが特に好ましい。表面抵抗率は、例えば、導電性繊維や有機導電体の分散液の濃度又は塗工量によって調整することができる。
【0083】
また、本発明の導電パターン基板は、450〜650nmの波長域における最小光透過率が80%以上であることが好ましく、85%以上であることがより好ましい。
【0084】
<感光性導電フィルム>
本発明の感光性導電フィルムは、支持フィルムと、支持フィルム上に設けられた導電膜
と前記導電膜上に設けられた感光性樹脂層とを含
む感光層と、を含み、
導電膜が導電性繊維を含み、導電性繊維が銀繊維であり、感光
性樹脂層が、バインダーポリマー、エチレン性不飽和結合を有する光重合性化合物、光重合性開始剤、及びアミン化合物を含む。
【0085】
図3は、本発明の感光性導電フィルムの好適な一実施形態を示す模式断面図である。また、
図4は、感光性導電フィルムの一実施形態を示す一部切欠き斜視図である。
図3に示す感光性導電フィルム10は、支持フィルム1と、支持フィルム1上に設けられた感光層4(導電層2と、導電層2上に設けられた感光性樹脂層3)とを備える。
支持フィルム、導電層及び感光性樹脂層は上記の通りである。
【0086】
本発明の感光性導電フィルムにおいて、感光性樹脂層における支持フィルム1と反対側の面に接するように保護フィルムを積層することができる。
保護フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンフィルム等の耐熱性及び耐溶剤性を有する重合体フィルムを用いることができる。また、保護フィルムとして上述の支持体フィルムと同様の重合体フィルムを用いてもよい。
【0087】
保護フィルムと感光性樹脂層との間の接着力は、保護フィルムを感光性樹脂層から剥離しやすくするために、導電層及び感光性樹脂層と支持フィルムとの間の接着力よりも小さいことが好ましい。
【0088】
また、保護フィルムは、保護フィルム中に含まれる直径80μm以上のフィッシュアイ数が5個/m
2以下であることが好ましい。
尚、「フィッシュアイ」とは、材料を熱溶融し、混練、押し出し、2軸延伸、キャスティング法等によりフィルムを製造する際に、材料の異物、未溶解物、酸化劣化物等がフィルム中に取り込まれたものである。
【0089】
保護フィルムの厚みは、1〜100μmであることが好ましく、5〜50μmであることがより好ましく、5〜30μmであることがさらに好ましく、15〜30μmであることが特に好ましい。保護フィルムの厚みが1μm未満ではラミネートの際、保護フィルムが破れやすくなる傾向があり、100μmを超えると価格が高くなる傾向がある。
感光性導電フィルムは、支持フィルム上に、接着層、ガスバリア層等の層をさらに有していてもよい。
【0090】
感光性導電フィルムは、例えば、そのままの平板状の形態で、又は、円筒状等の巻芯に巻きとりロール状の形態で貯蔵することができる。尚、この際、支持フィルムが最も外側になるように巻き取られることが好ましい。
また、感光性導電フィルムが保護フィルムを有してない場合、かかる感光性導電フィルムは、そのままの平板状の形態で貯蔵することができる。
【0091】
<タッチパネルセンサ>
本発明に係るタッチパネルセンサは、上記の導電パターン基板を備える。
図5は、静電容量式のタッチパネルセンサの一例を示す模式上面図である。
図5に示されるタッチパネルセンサは、透明基板101の片面にタッチ位置を検出するためのタッチ画面102があり、この領域に静電容量変化を検出して、X位置座標とする透明電極103と、Y位置座標とする透明電極104を備えている。これらのX、Y位置座標とするそれぞれの透明電極103、104には、タッチパネルとしての電気信号を制御するドライバー素子回路と接続するための引き出し配線105と、その引き出し配線105と透明電極103、104を接続する接続電極106が配置されている。さらに、引き出し配線105の接続電極106と反対側の端部には、ドライバー素子回路と接続する接続端子107が配置されている。
【0092】
図6は、
図5に示されるタッチパネルセンサの製造方法の一例を示す模式図である。本実施形態においては、本発明に係る導電パターンの形成方法によって透明電極103、104が形成される。まず、
図6(a)に示すように、透明基板101上に透明電極(X位置座標)103を形成する。具体的には、感光性導電フィルム10を感光性樹脂層が透明基板101に接するようラミネートする。転写した感光層4(導電膜2及び感光性樹脂層3)に対し、所望の形状に遮光マスクを介してパターン状に活性光線を照射する(第一の露光工程)。その後、遮光マスクを除き、さらに支持フィルムを剥離したうえで感光層4に活性光線を照射する(第二の露光工程)。露光工程の後、現像を行うことで、硬化が不充分な感光性樹脂層3と共に、導電膜2が除去され、導電パターン2aが形成される。この導電パターン2aによりX位置座標を検知する透明電極103が形成される(
図6(b))。
図6(b)は、
図6(a)のI−I切断面の模式断面図である。本発明に係る導電パターンの形成方法により透明電極103を形成することで、段差の小さな透明電極103を設けることができる。
【0093】
続いて、
図6(c)に示すように透明電極(Y位置座標)104を形成する。上記の工程により形成された透明電極103を備える基板101に、さらに、新たな感光性導電フィルム10をラミネートし、上記同様の操作により、Y位置座標を検知する透明電極104が形成される(
図6(d))。
図6(d)は、
図6(c)のII−II切断面の模式断面図である。本発明に係る導電パターンの形成方法により透明電極104を形成することで、透明電極103上に透明電極104を形成する場合であっても、段差や気泡の捲き込みによる美観の低減が充分に抑制された、平滑性の高いタッチパネルセンサを作成することができる。
【0094】
次に、透明基板101の表面に、外部回路と接続するための引き出し線105と、この引き出し線と透明電極103、104を接続する接続電極106を形成する。
図6では、引き出し線105及び接続電極106は、透明電極103及び104の形成後に形成するように示しているが、各透明電極形成時に同時に形成してもよい。引き出し線105は、例えば、フレーク状の銀を含有する導電ペースト材料を使って、スクリーン印刷法を用いて、接続電極106を形成するのと同時に形成することができる。
【0095】
図7及び
図8はそれぞれ、
図5に示されるa−a’及びb−b’に沿った部分断面図である。これらは、XY位置座標の透明電極の交差部を示す。
図7及び
図8に示されるように、透明電極が本発明に係る導電パターンの形成方法により形成されていることにより、段差が小さく平滑性の高いタッチパネルセンサを得ることができる。
【実施例】
【0096】
以下に、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0097】
製造例1
<導電性分散液(導電層形成用塗液(銀繊維分散液))の調製>
[ポリオール法による銀繊維の調製]
2000mlの3口フラスコに、エチレングリコール500mlを入れ、窒素雰囲気下、マグネチックスターラーで撹拌しながらオイルバスにより160℃まで加熱した。ここに、別途用意したPtCl
2のエチレングリコール溶液(PtCl
22mgをエチレングリコール50mlも溶解)を滴下した。4〜5分後、AgNO
3のエチレングリコール溶液(AgNO
35gをエチレングリコール300mlに溶解)と、重量平均分子量が4万のポリビニルピロリドンのエチレングリコール溶液(ポリビニルピロリドン(和光純薬(株)製)5gをエチレングリコール150mlに溶解)とを、それぞれの滴下ロートから1分間で滴下し、その後160℃で60分間撹拌した。
【0098】
上記反応溶液が30℃以下になるまで放置してから、アセトンで10倍に希釈し、遠心分離機により2000回転で20分間遠心分離し、上澄み液をデカンテーションした。沈殿物にアセトンを加え撹拌後に上記と同様の条件で遠心分離し、アセトンをデカンテーションした。その後、蒸留水を用いて同様に2回遠心分離して、銀繊維を得た。得られた銀繊維を光学顕微鏡で観察したところ、繊維径(直径)は約5nmで、繊維長は約5μmであった。
【0099】
[銀繊維分散液の調製]
純水に、上記で得られた銀繊維を0.2質量%、及び、ドデシル−ペンタエチレングリコールを0.1質量%の濃度となるように分散し、銀繊維分散液を得た。
【0100】
<感光性樹脂組成物の溶液の調製>
[バインダーポリマー溶液(A1)の作製]
撹拌機、還流冷却機、不活性ガス導入口及び温度計を備えたフラスコに、表1に示す(1)を仕込み、窒素ガス雰囲気下で80℃に昇温し、反応温度を80℃±2℃に保ちながら、表1に示す(2)を4時間かけて均一に滴下した。(2)の滴下後、80℃±2℃で6時間撹拌を続け、重量平均分子量が約45、000のバインダーポリマー溶液(固形分50重量%)(A1)を得た。(A1)の酸価は、78mgKOH/gであった。
【0101】
【表1】
【0102】
実施例1
<感光性導電フィルムV−1の作製>
[導電フィルム(感光性導電フィルムの導電層)W1の作製]
上記で得られた銀繊維分散液を、支持フィルム(50μm厚のポリエチレンテレフタレートフィルム、帝人(株)製、商品名「G2−50」)上に25g/m
2で均一に塗布し、100℃の熱風対流式乾燥機で3分間乾燥し、導電層を形成した。
尚、導電層の乾燥後の膜厚は、約0.1μmであり、ナプソン(株)製NC−10にてシート抵抗値を測定したところ、100±10Ω/□であった。
【0103】
[感光性樹脂組成物溶液X1の作製]
表2に示す材料を、撹拌機を用いて15分間混合し、感光性導電フィルム用感光性樹脂組成物溶液X1を作製した。
【0104】
【表2】
【0105】
表中の各名称はそれぞれ以下の化合物を示す。
TMPTA:トリメチロールプロパントリアクリレート(日本化薬(株)製)
OXE−01:1,2−オクタンジオン、1−[(4−フェニルチオ)フェニル−2−(O−ベンゾイルオキシム)](BASF(株)製)
KBM−573:3−(フェニルアミノ)プロピルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製)
SH−30:オクタメチルシクロテトラシロキサン(東レ・ダウコーニング(株)製)
メチルエチルケトン:(東燃化学(株)製)
【0106】
[感光性導電フィルムV−1の作製]
感光性樹脂組成物溶液X1を、導電層W1が形成された上記ポリエチレンテレフタレートフィルム上に均一に塗布し、100℃の熱風対流式乾燥機で10分間乾燥して感光性樹脂層を形成した。その後、感光性樹脂層を、ポリエチレン製の保護フィルム(タマポリ(株)製、商品名「NF−13」)で覆い、感光性導電フィルムV−1を得た。尚、感光性樹脂層の乾燥後の膜厚は5μmであった。
【0107】
<感光性導電フィルムV−1の評価>
[感度]
感度を調べるために、得られた感光性導電フィルムV−1のポリエチレンフィルムをはがしながら、ポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡(株)製、商品名A4300、縦12cm×横12cm、厚さ125μm)上に、感光性樹脂層が接するようにラミネータ(日立化成(株)製、商品名HLM−3000型)を用いて、ロール温度110℃、基板送り速度1m/分、圧着圧力(シリンダ圧力)4×105Paの条件でラミネートして、感光性導電フィルムV−1及び支持体フィルムが積層された基板を作製した。
【0108】
次いで、得られた感光性導電フィルムV−1及び支持体フィルムが積層された基板に、平行光線露光機(オーク製作所(株)製、EXM1201)を使用して、支持体フィルム側(感光性導電フィルム導電層上方)から次に、41段ステップタブレットを有するネガマスクを密着させ、露光量40mJ/cm
2(i線(波長365nm)における測定値)で紫外線を照射した。ネガマスクと支持体フィルムを除去し、さらに感光性導電フィルム導電層上方より露光量50mJ/cm
2(i線(波長365nm)における測定値)で紫外線を照射した。
【0109】
露光後、室温(25℃)で15分間放置し、続いて、30℃で1質量%炭酸ナトリウム水溶液を30秒間スプレーすることにより現像した。現像により導電パターンが樹脂硬化層上に形成した。そして、現像後の残存ステップ段数により感度を評価した。感光性導電フィルムV−1の感度を評価したところ、11段であった。また導電パターンの樹脂硬化層との段差は0.1μmであることが確認された。
尚、残存しているステップタブレットの段数が高いほど(数値が大きいほど)高感度であることを意味する。
【0110】
[解像度]
感度の評価と同様にして、感光性導電フィルムをポリエチレンテレフタレートフィルム上にラミネートした。次に、解像度評価用ネガとしてライン幅/スペース幅が30/30〜200/200(単位:μm)の配線パターンを有するネガマスクを感光性樹脂組成物層に密着させ、感度の評価と同様に露光、現像を行った。そして、現像処理によって未露光部の導電層をきれいに除去することができたライン幅間のスペース幅の最も小さい値により解像度を評価した。感光性導電フィルムV−1の解像性を評価したところ、30μmであった。
尚、解像度の評価は、数値が小さいほど良好であることを意味する。
【0111】
[高温高湿信頼性]
感度の評価と同様にして、感光性導電フィルムをポリエチレンテレフタレートフィルム上にラミネートした。次いで、得られた感光性フィルムに、感度の評価と同様に露光、現像を行った。続いて、オーク製作所社製の紫外線照射装置を使用して1J/cm
2のエネルギー量で紫外線照射を行い、高温高湿信頼性試験用試料を得た。
【0112】
得られた高温高湿信頼性試験用試料のシート抵抗値を非接触抵抗測定器(ナプソン(株)製、NC−10)により測定した。この抵抗値を高温高湿信頼性評価前の初期値(R0)とした。
次いで、高温高湿信頼性用試料を温度85℃、湿度85%の高温高湿層に500時間投入した後、大気中に室温で1時間静置してから、改めてシート抵抗値を測定した。この抵抗値を銀ペースト接続信頼性評価後の抵抗値(R1)とした。
【0113】
感光性導電フィルムの高温高湿信頼性を、信頼性評価前後の抵抗値R0及びR1をもとに、以下の評点に従って評価した。ここで、R0とR1の比(R1/R0)をRrとした。
◎:Rr≦1.25
○:1.25<Rr≦1.5
△:1.5<Rr≦2
×:Rr>2
感光性導電フィルムV−1の高温高湿信頼性を評価したところ、評点は○だった。
【0114】
実施例2〜9、比較例1〜4
表3に示す感光性樹脂組成物溶液(X)を用いた以外は、実施例1と同様に感光性導電フィルムを作製し、感度、解像性及び高温高湿信頼性を評価した。結果を表3に示す。尚、表3における各成分の単位は質量部である。
【0115】
【表3】
【0116】
表中の各名称は、それぞれ以下の化合物を示す。
NCI−831:下記式で表される化合物((株)ADEKA製)
【化8】
TR−PBG−3057:下記式で表される化合物(常州強力化工有限公司製)
【化9】
Lucirin TPO:ジフェニル−2,4,6−トリメチルベンゾイル
フォスフィンオキサイド(BASF(株)製)
ベンゾグアナミン:2,4−ジアミノ−6−フェニル−1,3,5−トリアジン((株)日本触媒製)
LA−87:2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルメタクリレート
((株)ADEKA製)
ACMO:アクリロイルモルフォリン((株)興人製)
【0117】
表3に示すように、実施例1〜9においては、高温高湿信頼性が向上することが分かった。一方、比較例1〜4においては、高温高湿信頼性試験後にシート抵抗が大きく上昇した。