(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の詳細を説明する。
【0011】
本発明の塗膜付き樹脂フィルムは、硬化型塗膜を設ける基材フィルムの面(以下「表面」という)と反対側の基材フィルムの面(以下「裏面」という)の表面粗さRz(最大高さ粗さ)を6.0以上とすることが重要である。基材フィルムの裏面の表面粗さRzは、さらに好ましくは6.4以上であり、より好ましくは8.0以上である。
表面粗さRzを6.0以上とすることで、フィルムをロール状にする際に、巻き取るフィルムの締め付け圧力が高くなっても、塗膜層の表面の外観は毛羽立つことなく外観が良好となり歩留まりを向上させることができる。
また、Rzの上限は特に規定することはないが、基材フィルムの裏面に、後の工程で異なる層を積層する場合などを考慮すると15.0以下であることが好ましい。
なお、本発明でいう「表面粗さ」とは、JISB0601(2001)にて定義されるものをいう。
【0012】
本発明の塗膜付き樹脂フィルムの基材フィルムの裏面の表面粗さRa(算術平均粗さ)は、0.5以上であることが好ましい。基材フィルムの裏面の表面粗さRaは、さらに好ましくは0.6以上であり、より好ましくは0.7以上である。
表面粗さRaを0.5以上とすることで、塗膜付き樹脂フィルムをロール状にする際に、巻き取るフィルムの締め付け圧力が比較的高くなっても、塗膜側の表面の外観は毛羽立つことなく外観がより良好となり歩留まりを向上させることができる。
また、Raの上限は特に規定することはないが、基材フィルムの裏面に、後の工程で異なる層を積層する場合などを考慮すると2.0以下であることが好ましい。
【0013】
<ポリオレフィン系樹脂>
基材フィルムは、ポリオレフィン系樹脂を含有していることが好ましい。ポリオレフィン系樹脂の含有量は、基材フィルムを構成する樹脂成分の全重量に対して40〜100重量%が好ましく、50〜100重量%がより好ましい。ポリオレフィン系樹脂を含有することにより、曲面への追随性等の諸性能がより良好となる。
【0014】
本発明で用いられるポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂及びこれらの混合物等が挙げられる。
【0015】
ポリエチレン系樹脂としては、エチレンの単独重合体、エチレンを主成分とするエチレンと共重合可能な他の単量体との共重合体(低密度ポリエチレン(LDPE)、高圧法低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、メタロセン系触媒を用いて重合して得られたエチレン−α−オレフィン共重合体(メタロセン系ポリエチレン等)及びこれらの混合物等が例示できる。
【0016】
ポリプロピレン系樹脂としては、プロピレンの単独重合体(ホモポリプロピレン)、プロピレンの共重合体、リアクター型のポリプロピレン系熱可塑性エラストマー及びこれらの混合物等が例示できる。また、本発明に用いるポリプロピレン系樹脂としては、曲げ弾性率(本発明でいう「曲げ弾性率」とは、JISK7171に従って得られたものをいう) が50〜900MPa、特に100〜700MPaのものが好ましい。
前記プロピレンの共重合体としてはプロピレンとエチレンまたは他のα−オレフィンとのランダム共重合体(ランダムポリプロピレン)、またはブロック共重合体(ブロックポリプロピレン)、ゴム成分を含むブロック共重合体あるいはグラフト共重合体等が挙げられる。前記プロピレンと共重合可能な他のα−オレフィンとしては、炭素原子数が4〜12のものが好ましく、例えば、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテン、1−デセン等が挙げられ、その1種または2種以上の混合物が用いられる。通常、α−オレフィンの混合割合はプロピレンに対して1〜10重量%程度である。
【0017】
リアクター型のポリプロピレン系熱可塑性エラストマーとしては、結晶融解熱(ΔH)が100g/J以下である低結晶性プロピレン単独重合体(プライムポリマー(株)製プライムTPO等)や、多段重合法により製造されたポリプロピレン系熱可塑性エラストマー(サンアロマー(株)製キャタロイ、三菱化学(株)製ゼラス、日本ポリプロ(株)WELNEX等) が挙げられる。
【0018】
なお、結晶融解熱(ΔH)とは、示差走査熱量計(DSC)を用いて、樹脂を一度融解点以上にして溶融した後、10℃/分の速度で冷却した時のDSCチャート上の結晶ピーク面積より計算した値のことである。
【0019】
また、本発明において、多段重合法とは、重合が1回で終了するのではなく、2段階以上の多段重合を行うことにより、複数の種類のポリマーを連続して製造することができる重合法を意味し、機械的な手法を用いて異種類のポリマーからなる混合樹脂を得るところの、所謂、通常のポリマーブレンド法とは全く異なる手法である。当該方法により、分子レベルでのブレンドタイプの共重合樹脂を生成することが可能である。このような重合法を採用すれば、例えばポリプロピレンに対して、第2成分を約80〜95重量%まで含有させることが可能となり、可塑化ポリ塩化ビニル樹脂と同等の物性を持たせることが初めて可能となる。
【0020】
多段重合法によって得られるポリプロピレン系熱可塑性エラストマーは、反応器中で(i)ハードセグメントと、(ii)ソフトセグメントとが2段階以上で多段重合されてなる共重合体である。
(i)ハードセグメントとしては、プロピレン単独重合体ブロックや、あるいはプロピレンとα−オレフィンとの共重合体ブロック、例えば、プロピレン/エチレン、プロピレン/1−ブテン、プロピレン/エチレン/1−ブテン等の2元又は3元共重合体ブロックが挙げられる。また、(ii)ソフトセグメントとしては、エチレン単独重合体ブロックや、あるいはエチレンとα−オレフィンとの共重合体ブロック、例えば、エチレン/プロピレン、エチレン/1−ブテン、エチレン/プロピレン/1−ブテン等の2元又は3元共重合体ブロックが挙げられる。このような特定の重合法により共重合されたポリオレフィン系樹脂は、例えば特開平4−224809号公報に開示されているが、実際の市販品として、サンアロマー社製(商品名=キャタロイ)等が挙げられる。
【0021】
本発明においては、多段重合法により製造されたポリプロピレン系熱可塑性エラストマーのうち、特に、メルトフローレート(MFR)が0.1〜30であり、かつ23℃におけるキシレン可溶分の割合が30〜75重量%、好ましくは40〜60重量%であるものが好ましい。ここで、MFRは、JISK7210に準拠し測定した値である。キシレン可溶分の割合は次のようにして求める。
サンプル1gを油浴槽中のキシレン300ミリリットルに入れ、140℃で攪拌下に溶解させる。サンプルの添加から1時間後より、サンプルとキシレンとの混合物を、攪拌を続けながら1時間以内に100℃まで降温させる。その後、サンプルとキシレンとの混合物を急冷用油浴槽に移し、攪拌を続けながら23℃±2℃まで急冷し、その温度に20分間以上保持する。得られた析出物を濾紙で自然乾燥して除去する。濾液をエバポレーターを用いて蒸発乾固させ、得られた固形分を120℃で2時間減圧乾燥させ、その後常温まで放冷する。固形分の重量を測定し室温キシレン可溶分を算出する。
【0022】
また、ポリエチレン系樹脂及び/またはポリプロピレン系樹脂に他の合成樹脂を混合することもできる。混合する他の樹脂として、例えばイソプレンゴム、ブタジエンゴム、ブチルゴム、プロピレン−ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム及びアクリロニトリル−イソプレンゴム等のジエン系ゴム(エラストマー)、エチレン−プロピレン共重合ゴム、エチレン−プロピレン非共役ジエンゴム、エチレン−ブタジエン共重合ゴム等の上記リアクター型のポリプロピレン系熱可塑性エラストマー以外のポリオレフィン系熱可塑性エラストマー、スチレン−ブタジエン共重合ゴム(SBR)やスチレン−ブタジエンブロック共重合体等のスチレン−ブタジエン系熱可塑性エラストマー及びスチレン−イソプレン共重合ゴム等のスチレン系熱可塑性エラストマー(これらの水素添加物を含む)が挙げられる。
これらエラストマー成分等の他の合成樹脂は、基材フィルムを構成する樹脂成分の全重量に対して0〜60重量%配合することができる。
【0023】
基材フィルムを構成する樹脂成分としては、樹脂成分の全重量に対して、ポリプロピレン系樹脂を40〜100重量%、特に50〜100重量%含有するものが好ましく、ポリプロピレン系樹脂以外の樹脂を50〜0重量%含有するものが好ましい。
中でも特に、ポリプロピレン系樹脂として多段重合法により製造されたポリプロピレン系熱可塑性エラストマーを含有することが好ましく、該ポリプロピレン系熱可塑性エラストマーの含有量は、好ましくはポリプロピレン系樹脂の全重量に対して、40〜100重量%である。ポリプロピレン系熱可塑性エラストマーを上記の量で含有することにより、基材フィルムの柔軟性に優れ、塗膜付きフィルムとした際の曲面形状追随性に優れるため好ましい。
ポリプロピレン系樹脂以外の樹脂としては上記したポリエチレン系樹脂、エラストマー等が挙げられるが、中でも密度が0.900g/cm
3以下の低密度メタロセン系ポリエチレン、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー及び水素添加スチレン−ブタジエン共重合ゴムから選ばれる少なくとも1種が好ましい。
【0024】
基材フィルムは単層でもよく、2層以上の層を有する多層であってもよく、たとえば内層、中間層及び外層を有する3層、またはそれ以上の多層とすることもできる。基材フィルムが多層である場合、内層の引張り弾性率(E1)と、内層を除いた層の引張り弾性率(E2)とが、E1≧E2の関係を有する層(これは、3以上の層からなる基材フィルムから内層のみを取り出すことを想定した場合、内層のみから構成されるフィルム1の引張り弾性率(E1)と、内層を除いた層から構成されるフィルム2の引張り弾性率(E2)とが、E1≧E2の関係にあることを意味する)であることが好ましい。なお、内層とは、基材フィルムが粘着フィルム用に後加工された場合に、粘着剤層が積層される側の層を意味し、その反対側の層を外層という。なお、本発明でいう「引張り弾性率」とはJISK7127に準拠し測定されたものをいう。
また、基材フィルムが少なくとも内層、中間層及び外層を有する多層である場合、中間層の厚さが該基材フィルム全体の厚さの50%以上であるものが好ましい。
基材フィルムは、内層と中間層の間及び外層と中間層の間に、少なくとも1つの別の層を有していてもよい。この場合、該別の層は、ポリオレフィン系樹脂を含有していてもよいが、それ以外の樹脂、例えば、内層(及び/又は外層)と中間層との接着性を高めるような樹脂を含有していてもよい。
【0025】
基材フィルムの好ましい態様としては、具体的には例えば、(1)ホモポリプロピレン0 〜100重量%及びランダムポリプロピレン100〜0重量%からなるポリプロピレン系樹脂95〜50重量%と水素添加スチレン−ブタジエン共重合ゴム5〜50重量%とを含有するフィルム、(2)ホモポリプロピレン0〜100重量%及びランダムポリプロピレン100〜0重量%からなるポリプロピレン系樹脂90〜20重量%とポリオレフィン系熱可塑性エラストマー及び/または密度が0.900g/cm
3以下の低密度メタロセン系ポリエチレン10〜80重量%とを含有するフィルム、(3)ホモポリプロピレン及び/ またはリアクター型のポリプロピレン系熱可塑性エラストマー40〜100重量%を含有するフィルム、(4)多段重合法により製造されたポリプロピレン系熱可塑性エラストマー等多段重合法により製造されたポリオレフィン系樹脂を40〜100重量%含有する層を有するフィルム、(5)少なくとも内層、中間層及び外層を有し、中間層が多段重合法により製造されたポリプロピレン系熱可塑性エラストマー等多段重合法により製造されたポリオレフィン系樹脂を40〜100重量%含有する層であり、かつ内層及び/または外層が、多段重合法により製造されたポリオレフィン系樹脂以外のポリオレフィン系樹脂を含有する層であるフィルム、すなわち内層及び/または外層が多段重合法により製造されたポリオレフィン系樹脂に代えて他のポリオレフィン系樹脂を含有する層である、または多段重合法により製造されたポリオレフィン系樹脂に加えて他のポリオレフィン系樹脂を含有する層であるフィルム、等が挙げられる。
【0026】
本発明の基材フィルムに使用するポリオレフィン系樹脂の引張弾性率は100〜1000MPaであることが好ましく、150〜700MPaであることがより好ましく、150〜400MPaであることがさらに好ましい。ポリオレフィン系樹脂の引張弾性率を100MPa以上とすることで被着体への塗膜付きフィルムの貼付性や、被着体から塗膜付きフィルムを剥離する際、フィルムが伸びてしまって剥離が困難になる等取扱い性に劣ることを抑制でき、更にフィルムがべたつき、ブロッキングし易くなることをより抑制できる。また、引張弾性率を1000MPa以下とすることで柔軟性に劣り曲面や折り曲げに対する施工性に劣るおそれがない。
基材フィルムの厚さは、樹脂組成、隠蔽性及び曲面の追随性を考慮して適宜選択されるが、通常30〜500μm、好ましくは50〜300μmである。
【0027】
本発明の基材フィルムは、耐候性の観点から紫外線吸収剤及び/またはヒンダードアミン系光安定剤(HALS)等の光安定剤を含有することが好ましい。
紫外線吸収剤及び/またはヒンダードアミン系光安定剤は公知のものを使用することができる。
【0028】
紫外線吸収剤としては、たとえばサリチル酸エステル系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、シアノアクリレート系及びトリアジン系等の紫外線吸収剤が挙げられる。
【0029】
ヒンダードアミン系光安定剤としては、2,2,6,6−テトラメチルピペリジニル−4−ベンゾエート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)セバケート、トリス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)ホスファイト(BASF(株)製「キマソープ944」)、1,3,8−トリアザ−7,7,9,9−テトラメチル−3−n−オクチルピロ[4,5]デカン−2,4−ジオン(BASF(株) 製「チヌビン144」)、1,2,3,4−テトラ(4−カルボニルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジニル)−ブタン、1,3,8−トリアザ−7,7,9,9−テトラメチル−2,4−ジオキソ−スピロ[4,5]デカン、トリ(4−アセトキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジニル)アミン、4−ステアロイルオキシ−2,2,6, 6−テトラメチルピペリジン、4−ベンジルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−フェニルカルバモイルオキシ−2,2,6,6テトラメチルピペリジン、4−p−トルエンスルホニルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)テレフタレート等が挙げられる。
【0030】
また、本発明の基材フィルムには、その他必要に応じて、着色剤、充填材、スリップ剤(滑剤)、アンチブロッキング剤等をその目的・性能を損なわない範囲内で添加することができる。
【0031】
本発明の基材フィルムを成形する方法としては、例えば、Tダイ成形法等の押出し成形法、インフレーション成形法及びカレンダー成形法等一般に公知のフィルム成形法が挙げられる。
また、基材フィルムが多層フィルムである場合、各層を積層する方法として、成形した個々のフィルム(層)をラミネーターで貼り合わせる方法やフィルム成形と同時に圧着ラミネートする方法を用いることができるが、多層Tダイ押出法によって成形と同時に多層フィルムを作製する方法が工程数も減らすことができて好ましい。
【0032】
基材フィルムの表面凹凸は、例えば、Tダイ成形法やカレンダー成形法において溶融樹脂を冷却ロールでニップし冷却する際に、冷却ロールの表面形状を変えることで、フィルムの表面凹凸を任意に賦型することができる。また、成形後のフィルムを加熱したロールでニップすることで、ニップロールの表面形状に応じた表面形状を賦型することもできる。
また、その他の公知の表面凹凸制御の方法で任意の表面形状に成形してもよい。
【0033】
本発明の硬化型塗膜は、熱硬化、紫外線硬化、電子線硬化などの方法により硬化するタイプの塗膜を使用することができる。
本発明においては、たとえば熱硬化型などの、硬化する時間にある程度の時間を要するタイプの塗膜において本発明の効果が特に有効に奏される。
つまり、基材フィルムに塗膜を形成する製造方法において、塗工した直後に巻取り工程を有する場合には、塗膜が十分に硬化しないことがあり、硬化が十分でない状態でロール状にフィルムを巻き取るため、基材フィルムの反対側の面と塗膜面が密着し、塗膜の表面に白ボケ等の外観不良が発生しやすくなる。
【0034】
本発明の硬化型の塗膜の組成物としては、特に限定されることはないが、たとえば熱硬化型の場合は、特開2006−142667号公報、特開2006−142668号公報、特開2007−83530号公報などに開示されている熱硬化性の塗膜を使用することができる。
たとえば、ジイソシアネート、高分子量ポリオール及び/またはウレタン系樹脂等を含有するラジカル重合性不飽和単量体や、アクリル変性ウレタン系樹脂、アクリルポリオール及び/またはイソシアネート化合物等を含有する組成物を使用することができる。
【0035】
本発明の塗膜層には、屋外での長期及び過酷な条件下での耐候性を付与する目的で紫外線吸収剤及び/またはヒンダードアミン系光安定剤等を配合するのが好ましい。紫外線吸収剤及び光安定剤としては、前述の基材フィルムの説明において挙げられたものを使用することができる。
【0036】
また、本発明の塗膜層には、その性能を損なわない範囲で酸化防止剤、帯電防止剤、有機系及び/ または無機系粉末等を配合してもよい。
【0037】
また、本発明の塗膜の厚さは、0.5〜30μmであるのが好ましく、1〜20μmがより好ましく、1〜10μmがさらに好ましい。厚さを0.5μm以上とすることで、耐傷付き性に劣るおそれがない。また、厚さを30μm以下とすることで塗膜付きフィルムのカール発生や塗膜層のクラックの発生をより抑制することができる。
【0038】
本発明の塗膜付き樹脂フィルムは、基材フィルムの塗膜層を形成させていない面に粘着剤層を形成させることにより、種々の装飾用粘着テープとすることができる。
粘着剤としてはアクリル系、ゴム系の粘着剤いずれでもよいが、積層フィルムを屋外で使用する場合は耐候性の高いアクリル系粘着剤が好ましい。アクリル系粘着剤としては、(メタ)アクリル酸エステル単量体の重合体等アクリル系重合体からなるものが挙げられる。(メタ)アクリル酸エステル単量体としては、炭素数2〜12のアルキル基を有する、好ましくは炭素数4〜12のアルキル基を有するアルコールの(メタ)アクリル酸エステルが挙げられ、具体的には、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸ラウリル等を挙げることができる。これらは、単独、または2種以上を組み合わせて用いることができる。粘着性と凝集性のバランス等から、通常ホモポリマーのガラス転移温度(Tg)が−50℃以下である(メタ)アクリル酸エステルを主成分とし、(メタ)アクリル酸エチル等の低級アルコールの(メタ)アクリル酸エステルを併用するのが好ましい。また、上記アクリル系粘着剤のアクリル系重合体としては、上記のビニル単量体以外にこれらと共重合可能な単量体が共重合されても構わない。このような共重合可能な単量体としては、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸もしくはイタコン酸等のカルボキシル基含有単量体またはその無水物や、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、ポリオキシエチレン(メタ)アクリレート、ポリオキシプロピレン(メタ)アクリレートまたはカプロラクトン変性(メタ)アクリレート等の水酸基含有単量体等が挙げられる。
【0039】
粘着剤は、溶媒中で重合した溶剤型アクリル粘着剤であっても、水中で重合したエマルジョン系粘着剤であっても、また、単量体混合物に紫外線照射した塊状重合型粘着剤であってもよい。
粘着剤層の厚さは、粘着剤の組成により異なり、特に限定されるものではないが、通常20〜50μmである。
【0040】
基材フィルムへの粘着剤層の形成は、例えば、上記記載の粘着剤及び必要に応じてその他の各成分を混合した組成物を公知の有機溶剤に溶解し、更に必要に応じて希釈剤等を用いて適当な濃度に調製し、剥離材(例えばシリコン塗布を施した剥離紙)にバーコート、ナイフコート、ロールコート、ダイコートまたはグラビアロールコート等の公知の方法で塗工し、次いで熱風乾燥機等を用いて乾燥させた後、塗膜層が形成された基材フィルムの面の反対側の面に粘着剤層を積層することにより製造される。
【0041】
また、本発明の塗膜付き樹脂フィルムには、基材フィルムと塗膜層との間及び/または基材フィルムと粘着剤層との間に、密着性を向上させるために、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、アクリル変性ウレタン系樹脂またはこれらの混合物を含有する(好ましくは50〜100重量%含有する)プライマー層を設けてもよい。
【0042】
プライマ−層に用いられるアクリル系樹脂としては、(メタ)アクリル酸アルキルの重合体や(メタ)アクリル酸アルキルと共重合性単量体との共重合体またはこれらの混合物が挙げられる。(メタ)アクリル酸アルキルのアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、ブチル基、2−エチルヘキシル基またはオクチル基等が挙げられる。また共重合性単量体としては、(メタ)アクリル酸のヒドロキシアルキルエステル(例えば、ヒドロキシエチルエステル、ヒドロキシブチルエステルまたはヒドロキシヘキシルエステル等)、(メタ)アクリル酸グリシジルエステル、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、無水マレイン酸、(メタ)アクリル酸アミド、(メタ)アクリル酸N−ヒドロキシメチルアミド、(メタ)アクリル酸アルキルアミノアルキル(例えば、ジメチルアミノエチルメタクリレートまたはt−ブチルアミノエチルメタクリレート等)、酢酸ビニル、スチレンまたはアクリロニトリル等が挙げられる。
【0043】
プライマ−層に用いられるウレタン系樹脂としては、ポリオールとイソシアネート化合物を反応させて得られるものが挙げられる。ポリオールとしては、上述したポリエステルポリオールやアクリルポリオール等が挙げられ、イソシアネート化合物も上述したものを用いることができる。
プライマ−層に用いられるアクリル変性ウレタン系樹脂としては、上述のウレタン系樹脂と、ラジカル重合性不飽和単量体及び/またはその重合体からなるアクリル成分とを共重合して得られる樹脂が挙げられ、該アクリル変性ウレタン系樹脂が水酸基を有している場合には、更にイソシアネート化合物で架橋させることもできる。
プライマー層の形成は、上述の塗膜層や粘着剤層の形成に準じて行えばよい。当該塗膜付き樹脂フィルムのロールは巻数に制限はないが、取り扱いの点において好ましくは10000m以下、さらにこのましくは5000m以下がよい。
【0044】
本発明のもう一つの態様は、基材フィルムの表面に硬化型塗膜を有する塗膜付き樹脂フィルムの、少なくとも基材フィルムの裏面の表面粗さRzが6.0以上である塗膜付き樹脂フィルムがロール状に巻取られた塗膜付き樹脂フィルムロールである。
【0045】
塗膜付き樹脂フィルムロールの巻取り方法は、特に限定されることはなく、センターワインド方式やサーフェースワインド方式等を使用することができる。
また、フィルムロールの幅は、特に限定されるものではないが、ハンドリングのし易さから、フィルムロールの幅は250mm〜2500mmであることが好ましく、より好ましくは300mm〜2000mmである。
また、フィルムロールの巻長は、特に限定されるものではないが、巻き易さやハンドリングのし易さから、100m〜10000mが好ましく、200m〜7000mであることがさらに好ましい。
また、巻取りコアとしては、通常、1インチ〜10インチ等の紙管、プラスチックコアや金属製コアを使用することができる。
【0046】
塗膜付き樹脂フィルムロールは、傷つき防止やほこり、汚れなどの防止等のため、塗膜付き樹脂フィルムロールを梱包用フィルムや段ボール等で覆い、保管や輸送をすることができる。
本発明の塗膜付き樹脂フィルムロールは、この状態で保管や輸送を行ったのち、塗膜付き樹脂フィルムを使用する場合にも、塗膜層の表面の外観は毛羽立つことなく外観が良好となり歩留まりを向上させることができる。
【0047】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0048】
<実施例1>
(1)基材フィルムの製造
(A)プロピレンランダム共重合体(グランドポリマー(株)製、グランドポリプロF327)100重量部及びヒンダードアミン系光安定剤(BASF(株)製)0.1重量部よりなる混合物を用いて、三菱重工業(株)製押出成型機により、厚さ0.1mmのポリオレフィン系樹脂フィルムを成形した。
その際、基材フィルムの裏面に接する側の冷却ロールにおいて、表面加工をフィルムの表面粗さの狙い値であるRz、Ra値に対し1〜2倍の表面粗さとなるように冷却ロールの表面を加工し、冷却ロールを用いて基材フィルムの裏面の表面粗さが表1(A)〜(E)の値になるように、冷却ロールのニップ線圧を0.1〜10MPaの範囲で調整して、表1(A)〜(E)のフィルムを作製した。
次に、冷却ロールで表面凹凸を賦型した基材フィルムの裏面とは反対の面(塗膜面側)を、ヌレ指数が45mN/mになるようにコロナ処理を施して基材フィルムを作製した。
なお、各フィルムの表面粗さは、キーエンス社製レーザ顕微鏡VK-X100を使用し、表面観察画像を撮影し、得られた画像を解析して測定した。
また、得られたフィルムの引張り弾性率は、600MPaであった。
【0049】
【0050】
(2)塗膜層の形成
(2−1)アクリル変性ウレタン系樹脂(a)の製造
攪拌器、環流冷却器、滴下漏斗、温度計を取り付けた4ッ口フラスコ中にイソホロンジイソシアネート31.4重量部を仕込み、90℃に加熱し、攪拌しながら溶融したポリカーボネートグリコール(プラクセルCD220、水酸基価56.1KOHmg/g、重量平均分子量2000ダイセル化学工業(株)製)128.4重量部、グリセリンモノメタクリレート(ブレンマーGLM、日本油脂(株)製)2.2重量部、メチルハイドロキノン0.02重量部を約1時間で滴下した。内温を90℃に保ち4時間反応させた後、メチルエチルケトン208.9重量部を添加し60℃で1時間攪拌して希釈した。次に攪拌下イソホロンジアミン8.7重量部、イソプロパノール52.2重量部の溶液を1時間で滴下し、更にジ−n−ブチルアミン3.3重量部を添加して末端を封鎖した。続いてメチルメタアクリレート157.9重量部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート16.1重量部、メチルエチルケトン385.4重量部を仕込み窒素気流下で70℃に加熱してアゾビスイソブチロニトリル5.2重量部を3分割して1時間間隔で添加し、更に10時間反応した。得られたアクリル変性ウレタン系樹脂(a)溶液(主剤溶液)は樹脂固形分濃度35重量%、該樹脂溶液の粘度500mPa・s、アクリル変性ウレタン系樹脂(a)樹脂の重量平均分子量47000であった。
【0051】
(2−2)アクリルポリオール(b)の製造
撹拌機、温度制御装置及びコンデンサー付脱水装置を備えたフラスコに、ソルベントナフサ(溶媒)を100重量部仕込み、撹拌しながら加熱し、溶媒温度を100℃まで上げた。続いてメチルメタクリレート(180重量部)、2−エチルヘキシルアクリレート(80重量部)、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(136重量部)、メタクリル酸(4重量部)をそれぞれ2時間かけて滴下し、その後4時間かけて重合させてアクリルポリオール(b)を製造した。
(2−1)で得られたアクリル変性ウレタン系樹脂(a)を60重量部、(2−2)で得られたアクリルポリオール(b)を24重量部及びイソシネート化合物(旭化成ケミカルズ製デュラネートTPA−90E)を15重量部の割合で混合し塗膜層形成用塗料(c)を調製した。
【0052】
評価方法
<塗膜付き樹脂フィルムのプレス評価>
(1)で得られた基材フィルムのコロナ処理した面に、前記の塗膜層形成用塗料(c)をバーコーターで塗工した後、80℃の熱風乾燥炉内で1分間加熱乾燥させた後、塗膜層形成用塗料(c)を塗工した塗膜層表面と(1)で得られた基材フィルムの裏面(表面形状を賦型した面)を接するように重ね合わせ、室温にてプレス圧力0.5、1.0、1.5MPaでそれぞれ1分間、プレスを実施した。
なお、乾燥後の塗膜層の厚さは、2μmであった。
次に、それぞれの圧力でプレスした後の塗膜付き樹脂フィルムの塗膜側の表面を目視で観察した。その結果を表2に示す。
評価は外観が合格であるものを「○」、外観が不合格であるものは「×」とした。
なおプレス圧力0.5MPaは、(1)で得られた基材フィルムの表面形状をDに賦型したものを使用し、コロナ処理面側に塗料をリバースロールコーターで塗工後、80℃の熱風乾燥炉内で1分間加熱乾燥させ、ワインダーで巻き取ったフィルムロールにおいて、外観の不良が発生した場合の圧力である。
【0053】
【0054】
<評価結果>
表2より、実施例1、2はプレス圧力1.5MPaにおいても、実施例3はプレス圧力1.0MPaにおいても外観が良好である結果が確認された。
一方、比較例1、2は、プレス圧力0.5MPaにおいても塗膜層側の表面に白ボケが発生し、外観が優れない結果であった。