(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第一のアクリル樹脂は、前記式(I)で示される(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位に加え、さらに分子内に1個のオレフィン性二重結合と少なくとも1個の芳香環を有する不飽和単量体に由来する構造単位を有する請求項2に記載の粘着剤付き樹脂フィルム。
アクリル樹脂(A)は、前記第一のアクリル樹脂に加えて、前記式(I)で示される(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位を主成分とし、重量平均分子量が 5,000〜120,000 である第二のアクリル樹脂を含有する請求項2又は3に記載の粘着剤付き樹脂フィルム。
樹脂フィルムは、偏光フィルム、保護フィルム又は位相差フィルムから選ばれるフィルムを含む光学フィルムである請求項1〜6のいずれかに記載の粘着剤付き樹脂フィルム。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の粘着剤付き樹脂フィルムは、樹脂フィルムの少なくとも片面に粘着剤層が形成されたものであり、その粘着剤層は、融点が30℃以上でありかつアニオン成分がビス(フルオロスルホニル)イミドイオンであるイオン性化合物を含有する粘着剤組成物から形成されているものである。また本発明の粘着剤付き樹脂フィルムは、粘着剤層が、特定のアクリル樹脂100重量部に対し、イオン性化合物である融点が30℃以上である特定のピリジニウム ビス(フルオロスルホニル)イミド及び架橋剤をそれぞれ所定量配合した粘着剤組成物から形成されるものである。以下、本発明について、粘着剤組成物を構成する各成分から順に説明する。
【0029】
[アクリル樹脂]
本発明の粘着剤付き樹脂フィルムでは、粘着剤層を形成する粘着剤組成物に以下のアクリル樹脂(A)を採用する。このアクリル樹脂(A)は、次の第一のアクリル樹脂を含有するものである。第一のアクリル樹脂とは、前記式(I)で示される(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位を主成分とする重合体であるが、一般にはさらに他の構造単位、特に極性官能基を有する単量体、好ましくは極性官能基を有する(メタ)アクリル酸系化合物に由来する構造単位を含む共重合体で構成される。極性官能基としては、遊離カルボキシル基、水酸基、アミノ基、エポキシ環をはじめとする複素環基などを挙げることができる。さらには、極性官能基を有しない式(I)以外の単量体を共重合させることもできる。好適に用いられうる共重合成分として、分子内に1個のオレフィン性二重結合と少なくとも1個の芳香環を有する単量体、好ましくは芳香環を有する(メタ)アクリル酸系化合物を挙げることができる。なお本明細書において、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸又はメタクリル酸のいずれでもよいことを意味し、他に、(メタ)アクリレートなどというときの「(メタ)」も同様の趣旨である。
【0030】
第一のアクリル樹脂の主要な構造単位となる前記式(I)において、R
1 は水素原子又はメチル基であり、R
2 は炭素数1〜14のアルキル基又はアラルキル基であるが、 R
2はアルキル基であることが好ましい。また、R
2 で表されるアルキル基又はアラルキル基は、それぞれの基中の水素原子が炭素数1〜10のアルコキシ基によって置換されていてもよい。
【0031】
式(I)で示される(メタ)アクリル酸エステルとして、具体的には、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸n−オクチル及びアクリル酸ラウリルの如き直鎖状のアクリル酸アルキルエステル;アクリル酸イソブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル及びアクリル酸イソオクチルの如き分枝状のアクリル酸アルキルエステル;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸n−オクチル及びメタクリル酸ラウリルの如き直鎖状のメタクリル酸アルキルエステル;メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル及びメタクリル酸イソオクチルの如き分枝状のメタクリル酸アルキルエステルなどが例示される。
【0032】
R
2 がアルコキシ基で置換されたアルキル基である場合、すなわちR
2 がアルコキシアルキル基である場合の、式(I)で示される(メタ)アクリル酸エステルとして、具体的には、アクリル酸2−メトキシエチル、アクリル酸エトキシメチル、メタクリル酸2−メトキシエチル、メタクリル酸エトキシメチルなどが例示される。R
2 がアラルキル基である場合の式(I)で示される(メタ)アクリル酸エステルとして、具体的には、アクリル酸ベンジルやメタクリル酸ベンジルなどが例示される。
【0033】
これらの(メタ)アクリル酸エステルは、それぞれ単独で用いることができるほか、異なる複数のものを用いてもよい。なかでも、アクリル酸n−ブチルが好ましく用いられ、具体的に、第一のアクリル樹脂を構成する全単量体のうち、アクリル酸n−ブチルが50重量%以上となるようにするのが好ましい。もちろん、アクリル酸n−ブチルに加え、それ以外の式(I)に相当する(メタ)アクリル酸エステルを併用することもできる。
【0034】
前記式(I)で示される(メタ)アクリル酸エステルに加えて、分子内に1個のオレフィン性二重結合と少なくとも1個の芳香環を有する式(I)以外の単量体、例えば、芳香環を有する(メタ)アクリル酸系化合物を共重合させる場合、かかる芳香環を有する(メタ)アクリル酸系化合物の好適な例を挙げると、下式(III) で示されるフェノキシエチル基含有(メタ)アクリル酸エステルがある。
【0036】
式中、R
5は水素原子又はメチル基を表し、nは1〜8の整数を表し、R
6は水素原子、アルキル基、アラルキル基又はアリール基を表す。R
6 がアルキル基である場合、その炭素数は1〜9程度であることができ、同じくアラルキル基である場合、その炭素数は7〜11程度、またアリール基である場合、その炭素数は6〜10程度であることができる。
【0037】
式(III)中のR
6を構成する炭素数1〜9のアルキル基としては、メチル、ブチル、ノニルなどが、炭素数7〜11のアラルキル基としては、ベンジル、フェネチル、ナフチルメチルなどが、そして炭素数6〜10のアリール基としては、フェニル、トリル、ナフチルなどが、それぞれ挙げられる。
【0038】
式(III) で示されるフェノキシエチル基含有(メタ)アクリル酸エステルの具体例を挙げると、(メタ)アクリル酸2−フェノキシエチル、(メタ)アクリル酸2−(2−フェノキシエトキシ)エチル、エチレンオキサイド変性ノニルフェノールの(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸2−(o−フェニルフェノキシ)エチルなどがある。これらのフェノキシエチル基含有(メタ)アクリル酸エステルは、それぞれ単独で用いてもよいし、異なる複数のものを組み合せて用いてもよい。
【0039】
これらのなかでも、(メタ)アクリル酸2−フェノキシエチル、(メタ)アクリル酸2−(o−フェニルフェノキシ)エチル又は(メタ)アクリル酸2−(2−フェノキシエトキシ)エチルを、第一のアクリル樹脂を構成する芳香環含有単量体の一つとして用いるのが好ましい。これらの単量体は併用するのも有効である。
【0040】
また、第一のアクリル樹脂が上記の極性官能基を有する単量体を共重合させたものである場合、共重合させる極性官能基を有する単量体の例として、アクリル酸、メタクリル酸及びβ−カルボキシエチルアクリレートの如き遊離カルボキシル基を有する単量体;(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6−ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸2−又は3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル及びジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートの如き水酸基を有する単量体;アクリロイルモルホリン、ビニルカプロラクタム、N−ビニル−2−ピロリドン、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性テトラヒドロフルフリルアクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート及び2,5−ジヒドロフランの如き複素環基を有する単量体;N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートの如き複素環とは異なるアミノ基を有する単量体などを挙げることができる。これらの極性官能基を有する単量体は、それぞれ単独で用いてもよいし異なる複数のものを用いてもよい。
【0041】
これらの中でも、水酸基を有する単量体を、第一のアクリル樹脂を構成する極性官能基含有単量体の一つとして用いるのが好ましい。また、水酸基を有する単量体に加えて、他の極性官能基を有する単量体、例えば、遊離カルボキシル基を有する単量体を併用するのも有効である。
【0042】
粘着剤組成物に用いられる第一のアクリル樹脂は、その固形分全体の量を基準にして、前記式(I)で示される(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位を、通常60〜99.9重量%、好ましくは80〜99.6重量%の割合で含有しており、芳香環を有する式(I)以外の単量体に由来する構造単位を、通常0〜40重量%、好ましくは6〜12重量%の割合で含有しており、また極性官能基を有する単量体に由来する構造単位を、通常0.1〜20重量%、好ましくは0.4〜10重量%の割合で含有している。
【0043】
本発明に使用される第一のアクリル樹脂は、上で説明した式(I)の(メタ)アクリル酸エステル、芳香環を有する式(I)以外の単量体及び極性官能基を有する単量体のほかに、それら以外の単量体に由来する構造単位を含んでいてもよい。これらの例としては、分子内に脂環式構造を有する(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位、スチレン系単量体に由来する構造単位、ビニル系単量体に由来する構造単位、分子内に複数の(メタ)アクリロイル基を有する単量体に由来する構造単位、(メタ)アクリルアミド誘導体などを挙げることができる。
【0044】
脂環式構造とは、炭素数が、通常5以上、好ましくは5〜7程度のシクロパラフィン構造である。脂環式構造を有するアクリル酸エステルの具体例としては、アクリル酸イソボルニル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸ジシクロペンタニル、アクリル酸シクロドデシル、アクリル酸メチルシクロヘキシル、アクリル酸トリメチルシクロヘキシル、アクリル酸tert−ブチルシクロヘキシル、α−エトキシアクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸シクロヘキシルフェニルなどが挙げられ、脂環式構造を有するメタクリル酸エステルの具体例としては、メタクリル酸イソボルニル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ジシクロペンタニル、メタクリル酸シクロドデシル、メタクリル酸メチルシクロヘキシル、メタクリル酸トリメチルシクロヘキシル、メタクリル酸tert−ブチルシクロヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシルフェニルなどが挙げられる。
【0045】
スチレン系単量体としては、スチレンのほか、メチルスチレン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレン、エチルスチレン、ジエチルスチレン、トリエチルスチレン、プロピルスチレン、ブチルスチレン、ヘキシルスチレン、ヘプチルスチレン及びオクチルスチレンの如きアルキルスチレン;フルオロスチレン、クロロスチレン、ブロモスチレン、ジブロモスチレン及びヨードスチレンの如きハロゲン化スチレン;さらに、ニトロスチレン、アセチルスチレン、メトキシスチレン、ジビニルベンゼンなどを挙げることができる。
【0046】
ビニル系単量体としては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、2−エチルヘキサン酸ビニル及びラウリン酸ビニルの如き脂肪酸ビニルエステル;塩化ビニルや臭化ビニルの如きハロゲン化ビニル;塩化ビニリデンの如きハロゲン化ビニリデン;ビニルピリジン、ビニルピロリドン及びビニルカルバゾールの如き含窒素芳香族ビニル;ブタジエン、イソプレン及びクロロプレンの如き共役ジエン単量体;さらに、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどを挙げることができる。
【0047】
分子内に複数の(メタ)アクリロイル基を有する単量体としては、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート及びトリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートの如き分子内に2個の(メタ)アクリロイル基を有する単量体;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートの如き分子内に3個の(メタ)アクリロイル基を有する単量体などを挙げることができる。
【0048】
(メタ)アクリルアミド誘導体としては、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミド、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリルアミド、5−ヒドロキシペンチル(メタ)アクリルアミド、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−エトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−プロポキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N, N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N, N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N−(1,1−ジメチル−3オキソブチル)(メタ)アクリルアミド、N−〔2−(2−オキソ−1−イミダゾリジニル)エチル〕(メタ)アクリルアミド、2−アクリロイルアミノ−2−メチル−1−プロパンスルホン酸などを挙げることができる。
【0049】
式(I)の(メタ)アクリル酸エステル、芳香環を有する式(I)以外の単量体及び極性官能基を有する単量体のほかに、上記のような他の単量体を共重合させるときは、それぞれ単独で、又は2種以上組み合わせて使用することができる。粘着剤に使用される第一のアクリル樹脂において、式(I)の(メタ)アクリル酸エステル、芳香環を有する式(I)以外の単量体及び極性官能基を有する単量体のほかに、上記のような他の単量体を共重合させるとき、それらの単量体に由来する構造単位は、その樹脂の固形分全体の量を基準に、通常0〜20重量%、好ましくは0〜10重量%の割合で含有される。
【0050】
粘着剤組成物の樹脂成分は、以上のような、式(I)で示される(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位を主成分とし、任意に極性官能基を有する単量体に由来する構造単位及び芳香環を有する式(I)以外の単量体に由来する構造単位を含む第一のアクリル樹脂であって、その構造単位又は重量平均分子量などが異なる樹脂を2種類以上含むものであってもよい。さらに、この第一のアクリル樹脂に、それとは異なるアクリル樹脂、具体的には例えば、式(I)の(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位を有し、極性官能基を有しないアクリル樹脂などを混合したものであってもよい。式(I)の(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位を主成分とし、任意に極性官能基を有する単量体に由来する構造単位及び芳香環を有する式(I)以外の単量体に由来する構造単位を含む第一のアクリル樹脂は、アクリル樹脂全体のうち、60重量%以上、さらには80重量%以上とするのが好ましい。
【0051】
式(I)の(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位を主成分とする第一のアクリル樹脂は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)による標準ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw )が500,000〜2,000,000の範囲にあることが好ましい。その標準ポリスチレン換算重量平均分子量が500,000 以上であると、高温高湿下での接着性が向上し、ガラス基板と粘着剤層との間に浮きや剥れの発生する可能性が低くなる傾向にあり、しかもリワーク性が向上する傾向にあることから好ましい。また、この重量平均分子量が2,000,000 以下であると、その粘着剤層を光学フィルムに貼合した場合に、光学フィルムの寸法が変化しても、その寸法変化に粘着剤層が追随して変動するので、液晶セルの周縁部の明るさと中心部の明るさとの間に差がなくなり、白抜けや色ムラが抑制される傾向にあることから好ましい。重量平均分子量(Mw )と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)で表される分子量分布は、通常2〜10程度の範囲にある。
【0052】
第一のアクリル樹脂の好ましい重量平均分子量は、この樹脂を用いた粘着剤層が形成される光学フィルムの粘着剤層形成面の材質によっても異なる。従来、一般にアクリル系粘着剤を構成するアクリル樹脂には、少なくとも1,000,000 程度の重量平均分子量が必要とされていた。これに対し、本発明の第一のアクリル樹脂では、光学フィルムの粘着剤層形成面が、セルロース系樹脂フィルムの如き温度40℃、相対湿度90%の条件において概ね300g/(m
2・24hr)より高い透湿度を示すフィルムであれば、粘着剤層を形成する第一のアクリル樹脂の重量平均分子量が500,000〜1,000,000程度と比較的小さい場合でも、十分な結果を与える。このような透湿度の高い樹脂フィルムを粘着剤層形成面とする場合、第一のアクリル樹脂の重量平均分子量はもちろん、2,000,000 以下の範囲内で大きい値になっていても構わない。透湿度については、後述する「粘着剤付き樹脂フィルム」の項で改めて説明する。比較的高い透湿度を示す樹脂フィルムが粘着剤層形成面となる典型的な光学フィルムとして、後述するポリビニルアルコール系樹脂フィルムからなる偏光フィルムの片面にセルロース系樹脂からなる保護フィルム又は位相差フィルムが貼合された偏光板を挙げることができる。この場合、そのセルロース系樹脂フィルム面が粘着剤層形成面となり、またそのセルロース系樹脂フィルムが貼合される面と反対側の偏光フィルム面には、セルロース系樹脂からなる保護フィルムを貼合することもできるし、別の保護フィルムを貼合することもできる。
【0053】
一方、光学フィルムの粘着剤層形成面が、ポリオレフィンフィルムやシクロオレフィン系樹脂フィルム自体、又はそれらを一軸延伸若しくは二軸延伸して得られる位相差フィルムの如き温度40℃、相対湿度90%の条件において概ね300g/(m
2・24hr)以下という低い透湿度を示す樹脂フィルムである場合には、粘着剤層を形成するアクリル樹脂の重量平均分子量が小さいと、その粘着剤層をガラス基板に貼ったときに、ガラス基板と粘着剤層との間に浮きや剥れが生じやすくなる傾向にある。そのため、この場合には、第一のアクリル樹脂の重量平均分子量が1,000,000 以上であることが好ましい。高温高湿下での接着性を高める観点からも、重量平均分子量が1,000,000 以上であるのが好ましい。このような、比較的小さい透湿度を示す樹脂フィルムが粘着剤層形成面となる典型的な光学フィルムとして、後述するポリビニルアルコール系樹脂フィルムからなる偏光フィルムの片面に、ポリオレフィンフィルム又はシクロオレフィン系樹脂フィルムを一軸延伸又は二軸延伸して得られる位相差フィルムが貼合された偏光板を挙げることができる。この場合、位相差フィルム面が粘着剤層形成面となり、また位相差フィルムが貼合される面と反対側の偏光フィルム面には、任意の保護フィルムを貼合することができる。
【0054】
アクリル樹脂(A)は、上記のような比較的高分子量の第一のアクリル樹脂だけで構成することもできるし、第一のアクリル樹脂に加え、それとは異なる第二のアクリル樹脂との混合物で構成することもできる。混合して用いうる第二のアクリル樹脂としては、例えば、前記式(I)で示される(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位を主成分とし、重量平均分子量が5,000 〜120,000 の範囲にあるものを挙げることができる。
【0055】
アクリル樹脂(A)(2種類以上を組み合わせる場合はそれらの混合物)は、それを酢酸エチルに溶かして固形分濃度20重量%に調整した溶液が、25℃において 20Pa・s以下、さらには0.1〜7Pa・sの粘度を示すことが好ましい。このときの粘度が20Pa・s 以下であると、高温高湿下での接着性が向上し、ガラス基板と粘着剤層との間に浮きや剥れの発生する可能性が低くなる傾向にあり、しかもリワーク性が向上する傾向にあることから好ましい。粘度は、ブルックフィールド粘度計によって測定することができる。
【0056】
粘着剤組成物を構成する第一のアクリル樹脂は、例えば、溶液重合法、塊状重合法、及び懸濁重合法や乳化重合法のような水を媒体とした重合方法など、公知の各種方法によって製造することができる。これらのアクリル樹脂の製造においては、通常、重合開始剤が用いられる。重合開始剤は、アクリル樹脂の製造に用いられる全ての単量体の合計100重量部に対して、 0.001〜5重量部程度使用される。また、第一のアクリル樹脂は、例えば紫外線等の活性エネルギー線によって重合を進行させる方法を用いて製造してもよい。
【0057】
重合開始剤としては、熱重合開始剤や光重合開始剤などが用いられる。光重合開始剤として、例えば、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトンなどを挙げることができる。熱重合開始剤として、例えば、2,2′−アゾビスイソブチロニトリル、2,2′−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1′−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2′−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2′−アゾビス(2,4−ジメチル−4−メトキシバレロニトリル)、ジメチル−2,2′−アゾビス(2−メチルプロピオネート)及び2,2′−アゾビス(2−ヒドロキシメチルプロピオニトリル)の如きアゾ系化合物;ラウリルパーオキサイド、tert−ブチルハイドロパーオキサイド、過酸化ベンゾイル、tert−ブチルパーオキシベンゾエート、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジプロピルパーオキシジカーボネート、tert−ブチルパーオキシネオデカノエート、tert−ブチルパーオキシピバレート及び(3,5,5−トリメチルヘキサノイル)パーオキサイドの如き有機過酸化物;過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム及び過酸化水素の如き無機過酸化物などを挙げることができる。また、過酸化物と還元剤を併用したレドックス系開始剤なども、重合開始剤として使用しうる。
【0058】
第一のアクリル樹脂の製造方法としては、上に示した方法の中でも、溶液重合法が好ましい。溶液重合法の具体例を挙げて説明すると、所望の単量体及び有機溶媒を混合し、窒素雰囲気下にて、熱重合開始剤を添加して、40〜90℃程度、好ましくは60〜80℃程度にて3〜10時間程度攪拌する方法などを挙げることができる。また、反応を制御するために、単量体や熱重合開始剤を重合中に連続的又は間歇的に添加したり、有機溶媒に溶解した状態で添加したりしてもよい。ここで、有機溶媒としては、例えば、トルエン及びキシレンの如き芳香族炭化水素類;酢酸エチル及び酢酸ブチルの如きエステル類;プロピルアルコール及びイソプロピルアルコールの如き脂肪族アルコール類;アセトン、メチルエチルケトン及びメチルイソブチルケトンの如きケトン類などを用いることができる。
【0059】
第二のアクリル樹脂は、第一のアクリル樹脂を同様の方法で作製することができる。
【0060】
[イオン性化合物]
粘着剤層を形成する粘着剤組成物には、粘着剤層に帯電防止性を付与するための帯電防止剤としてイオン性化合物が添加される。本発明では、化学的に安定な塩であり、帯電防止性能に優れるイオン性化合物を与えることから、融点が30℃以上かつアニオン成分がビス(フルオロスルホニル)イミドイオン〔(FSO
2)
2N
-〕 であるイオン性化合物を用いる。
【0061】
融点が30℃以上であるイオン性化合物は、前述したとおり、粘着剤層に帯電防止性を付与するとともに、粘着剤としての諸物性を保つうえで有効である。特に、常温で液体であるイオン性化合物を用いる場合に比べ、帯電防止性能を長期間保持することができる。このような帯電防止性の長期安定性という観点からすると、イオン性化合物は、30℃以上の融点を有することが好ましい。一方で、その融点があまり高すぎると、樹脂との相溶性が悪くなるため、90℃以下、好ましくは70℃以下、より好ましくは50℃未満の融点を有することが好ましい。
【0062】
カチオン成分としては、公知のものを採用することができるが、アクリル樹脂との相溶性の観点から有機カチオンであることが好ましい。有機カチオンの構造は、特に限定されないが、例えば、ピリジニウムカチオン、イミダゾリウムカチオン、アンモニウムカチオン、スルホニウムカチオン、ホスホニウムカチオンなどが挙げられる。なかでも、光学フィルムの粘着剤層に使用された場合、その剥離フィルムを剥がすときに帯電しにくいという観点から、ピリジニウムカチオンやイミダゾリウムカチオンが好ましく、特にピリジニウムカチオンが好ましい。
【0063】
本発明では、ピリジニウムカチオンとビス(フルオロスルホニル)イミドイオンとから構成されるイオン性化合物であって、融点が30℃以上である特定のピリジニウム ビス(フルオロスルホニル)イミド(B)を、粘着剤付き樹脂フィルムの粘着剤層を形成する粘着剤組成物に添加する。以下、本発明で使用するピリジニウム ビス(フルオロスルホニル)イミド(B)について説明する。
【0064】
ピリジニウム ビス(フルオロスルホニル)イミド(B)は、式(II)で示され、そのカチオン成分であるピリジニウムカチオンは、粘着剤層を介してガラスに貼合された場合の耐久性から、式(II)中のR
3 が炭素数9〜16のアルキル基又は炭素数7〜13のアラルキル基であるものを用いる。このカチオン成分の例として、具体的には以下に掲げるものが挙げられる。
【0065】
N−ノニルピリジニウムイオン、
N−デシルピリジニウムイオン、
N−ドデシルピリジニウムイオン、
N−トリデシルピリジニウムイオン、
N−テトラデシルピリジニウムイオン、
N−ペンタデシルピリジニウムイオン、
N−ヘキサデシルピリジニウムイオン、
N−ドデシル−2−メチルピリジニウムイオン
N−ドデシル−3−メチルピリジニウムイオン
N−ドデシル−4−メチルピリジニウムイオン、
N−トリデシル−4−メチルピリジニウムイオン、
N−テトラデシル−4−メチルピリジニウムイオン、
N−ペンタデシル−4−メチルピリジニウムイオン、
N−ヘキサデシル−4−メチルピリジニウムイオン、
N−ベンジル−2−メチルピリジニウムイオン
N−ベンジル−2−メチルピリジニウムイオン、
N−ベンジル−3−メチルピリジニウムイオン、及び
N−ベンジル−4−メチルピリジニウムイオン。
【0066】
ピリジニウム ビス(フルオロスルホニル)イミド(B)は、アクリル樹脂(A)との相溶性の観点から、上で規定したアルキル基及びアラルキル基の中でもアルキル基であることが好ましく、R
3 は炭素数9〜12のアルキル基であることがさらに好ましい。
【0067】
本発明に用いられるピリジニウム ビス(フルオロスルホニル)イミド(B)には、上記のカチオン成分及びアニオン成分であるビス(フルオロスルホニル)イミドイオンの組合せから、適宜選択して用いることができる。その組合せの具体例として、次のようなものが挙げられる。
【0068】
N−デシルピリジニウム ビス(フルオロスルホニル)イミド、
N−ドデシルピリジニウム ビス(フルオロスルホニル)イミド、
N−テトラデシルピリジニウム ビス(フルオロスルホニル)イミド、
N−ヘキサデシルピリジニウム ビス(フルオロスルホニル)イミド、
N−ドデシル−4−メチルピリジニウム ビス(フルオロスルホニル)イミド、
N−テトラデシル−4−メチルピリジニウム ビス(フルオロスルホニル)イミド、
N−ヘキサデシル−4−メチルピリジニウム ビス(フルオロスルホニル)イミド、
N−ベンジル−2−メチルピリジニウム ビス(フルオロスルホニル)イミド、
N−ベンジル−4−メチルピリジニウム ビス(フルオロスルホニル)イミド
など。
【0069】
式(II)のピリジニウム塩は、公知の製法で得ることができる。例えば、下式(IV)に相当するアルキルピリジニウムブロマイド(式中、R
3及びR
4は先に式(II)で定義したとおりである)と、リチウム塩Li(FSO
2)
2Nとをイオン交換反応させ、次に水で洗って、生成した臭化リチウムを水相に移し、有機相を回収する方法によって、式(II)のピリジニウム塩を製造することができる。ピリジニウム ビス(フルオロスルホニル)イミド(B)は、それぞれ単独で、又は2種以上組み合わせて用いることができる。ピリジニウム ビス(フルオロスルホニル)イミド(B)の例は、もちろん上に列挙した化合物に限られるものではない。
【0071】
ピリジニウム ビス(フルオロスルホニル)イミド(B)は、前記したアクリル樹脂(A)の固形分100重量部(2種類以上用いる場合はそれらの合計)に対し、0.2 〜8重量部の割合で含有させる。アクリル樹脂(A)の固形分100重量部に対してピリジニウム ビス(フルオロスルホニル)イミド(B)を 0.2重量部以上含有させると、帯電防止性能が向上することから好ましく、またその量が8重量部以下であると、耐久性を保つのが容易であることから好ましい。アクリル樹脂(A)の固形分100重量部に対するピリジニウム ビス(フルオロスルホニル)イミド(B)の量は、 0.2〜6重量部の範囲とすることもでき、好ましくは 0.5重量部以上、また3重量部以下である。
【0072】
[架橋剤]
以上のようなアクリル樹脂(A)及びピリジニウム ビス(フルオロスルホニル)イミド(B)に、架橋剤(C)を配合して、粘着剤組成物とする。架橋剤(C)は、アクリル樹脂(A)中の特に極性官能基含有単量体に由来する構造単位と反応し、アクリル樹脂を架橋させる化合物である。具体的には、イソシアネート系化合物、エポキシ系化合物、アジリジン系化合物、金属キレート系化合物などが例示される。これらのうち、イソシアネート系化合物、エポキシ系化合物及びアジリジン系化合物は、アクリル樹脂(A)中の極性官能基と反応しうる官能基を分子内に少なくとも2個有する。
【0073】
イソシアネート系化合物は、分子内に少なくとも2個のイソシアナト基(−NCO)を有する化合物であり、例えば、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネートなどが挙げられる。また、これらのイソシアネート化合物に、グリセロールやトリメチロールプロパンなどのポリオールを反応せしめたアダクト体や、イソシアネート化合物を二量体、三量体等にしたものも、粘着剤に用いられる架橋剤となりうる。2種以上のイソシアネート系化合物を混合して用いることもできる。
【0074】
エポキシ系化合物は、分子内に少なくとも2個のエポキシ基を有する化合物であり、例えば、ビスフェノールA型のエポキシ樹脂、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、N,N−ジグリシジルアニリン、N,N,N′,N′−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン、1,3−ビス(N,N′−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサンなどが挙げられる。2種以上のエポキシ系化合物を混合して用いることもできる。
【0075】
アジリジン系化合物は、エチレンイミンとも呼ばれる1個の窒素原子と2個の炭素原子からなる3員環の骨格を分子内に少なくとも2個有する化合物であり、例えば、ジフェニルメタン−4,4′−ビス(1−アジリジンカルボキサミド)、トルエン−2,4−ビス(1−アジリジンカルボキサミド)、トリエチレンメラミン、イソフタロイルビス−1−(2−メチルアジリジン)、トリス−1−アジリジニルホスフィンオキサイド、ヘキサメチレン−1,6−ビス(1−アジリジンカルボキサミド)、トリメチロールプロパン−トリ−β−アジリジニルプロピオネート、テトラメチロールメタン−トリ−β−アジリジニルプロピオネートなどが挙げられる。
【0076】
金属キレート化合物としては、例えば、アルミニウム、鉄、銅、亜鉛、スズ、チタン、ニッケル、アンチモン、マグネシウム、バナジウム、クロム及びジルコニウムなどの多価金属に、アセチルアセトンやアセト酢酸エチルが配位した化合物などが挙げられる。
【0077】
これらの架橋剤のなかでも、イソシアネート系化合物、とりわけ、キシリレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート若しくはヘキサメチレンジイソシアネート、又はこれらのイソシアネート化合物を、グリセロールやトリメチロールプロパンなどのポリオールに反応せしめたアダクト体や、イソシアネート化合物を二量体、三量体などにしたものの混合物、これらのイソシアネート系化合物を混合したものなどが好ましく用いられる。好適なイソシアネート系化合物として、トリレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネートをポリオールに反応せしめたアダクト体、トリレンジイソシアネートの二量体及びトリレンジイソシアネートの三量体、またヘキサメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートをポリオールに反応せしめたアダクト体、ヘキサメチレンジイソシアネートの二量体及びヘキサメチレンジイソシアネートの三量体が挙げられる。
【0078】
架橋剤(C)は、アクリル樹脂(A)100重量部(2種類以上用いる場合はそれらの合計)に対し、 0.05〜5重量部の割合で配合される。アクリル樹脂(A)100重量部に対する架橋剤(C)の量が 0.05重量部以上であると、粘着剤層の耐久性が向上する傾向にあることから好ましく、また5重量部以下であると、粘着剤付き樹脂フィルムを液晶表示装置に適用したときの白ヌケが目立たなくなることから好ましい。
【0079】
[シラン系化合物]
本発明の粘着剤付き樹脂フィルムが、その粘着剤層側でガラス基板に貼り合わされる場合、その粘着剤層を形成するための粘着剤には、粘着剤層とガラス基板との密着性を向上させるために、以下のシラン系化合物(D)を含有させることが好ましい。シラン系化合物は、架橋剤を配合する前のアクリル樹脂に含有させておいてもよい。
【0080】
シラン系化合物(D)としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルジメトキシメチルシラン、3−グリシドキシプロピルエトキシジメチルシランなどが挙げられる。2種以上のシラン系化合物を使用してもよい。
【0081】
シラン系化合物(D)は、シリコーンオリゴマータイプのものであってもよい。シリコーンオリゴマーを(単量体)オリゴマーの形式で示すと、例えば、次のようなものを挙げることができる。
【0082】
3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン−テトラメトキシシランコポリマー、
3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン−テトラエトキシシランコポリマー、
3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン−テトラメトキシシランコポリマー、
3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン−テトラエトキシシランコポリマー
の如き、メルカプトプロピル基含有のコポリマー;
【0083】
メルカプトメチルトリメトキシシラン−テトラメトキシシランコポリマー、
メルカプトメチルトリメトキシシラン−テトラエトキシシランコポリマー、
メルカプトメチルトリエトキシシラン−テトラメトキシシランコポリマー、
メルカプトメチルトリエトキシシラン−テトラエトキシシランコポリマー
の如き、メルカプトメチル基含有のコポリマー;
【0084】
3−グリジドキシプロピルトリメトキシシラン−テトラメトキシシランコポリマー、
3−グリジドキシプロピルトリメトキシシラン−テトラエトキシシランコポリマー、
3−グリジドキシプロピルトリエトキシシラン−テトラメトキシシランコポリマー、
3−グリジドキシプロピルトリエトキシシラン−テトラエトキシシランコポリマー、
3−グリジドキシプロピルメチルジメトキシシラン−テトラメトキシシランコポリマー、
3−グリジドキシプロピルメチルジメトキシシラン−テトラエトキシシランコポリマー、
3−グリジドキシプロピルメチルジエトキシシラン−テトラメトキシシランコポリマー、
3−グリジドキシプロピルメチルジエトキシシラン−テトラエトキシシランコポリマー
の如き、3−グリジドキシプロピル基含有のコポリマー;
【0085】
3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン−テトラメトキシシランコポリマー、
3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン−テトラエトキシシランコポリマー、
3−メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン−テトラメトキシシランコポリマー、
3−メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン−テトラエトキシシランコポリマー、
3−メタクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン−テトラメトキシシランコポリマー、
3−メタクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン−テトラエトキシシランコポリマー、
3−メタクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシラン−テトラメトキシシランコポリマー、
3−メタクリロキシイルオプロピルメチルジエトキシシラン−テトラエトキシシランコポリマー
の如き、メタクリロイルオキシプロピル基含有のコポリマー;
【0086】
3−アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン−テトラメトキシシランコポリマー、
3−アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン−テトラエトキシシランコポリマー、
3−アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン−テトラメトキシシランコポリマー、
3−アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン−テトラエトキシシランコポリマー、
3−アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン−テトラメトキシシランコポリマー、
3−アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン−テトラエトキシシランコポリマー、
3−アクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシラン−テトラメトキシシランコポリマー、
3−アクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシラン−テトラエトキシシランコポリマー
の如き、アクリロイルオキシプロピル基含有のコポリマー;
【0087】
ビニルトリメトキシシラン−テトラメトキシシランコポリマー、
ビニルトリメトキシシラン−テトラエトキシシランコポリマー、
ビニルトリエトキシシラン−テトラメトキシシランコポリマー、
ビニルトリエトキシシラン−テトラエトキシシランコポリマー、
ビニルメチルジメトキシシラン−テトラメトキシシランコポリマー、
ビニルメチルジメトキシシラン−テトラエトキシシランコポリマー、
ビニルメチルジエトキシシラン−テトラメトキシシランコポリマー、
ビニルメチルジエトキシシラン−テトラエトキシシランコポリマー
の如き、ビニル基含有のコポリマー;
【0088】
3−アミノプロピルトリメトキシシラン−テトラメトキシシランコポリマー、
3−アミノプロピルトリメトキシシラン−テトラエトキシシランコポリマー、
3−アミノプロピルトリエトキシシラン−テトラメトキシシランコポリマー、
3−アミノプロピルトリエトキシシラン−テトラエトキシシランコポリマー、
3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン−テトラメトキシシランコポリマー、
3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン−テトラエトキシシランコポリマー、
3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン−テトラメトキシシランコポリマー、
3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン−テトラエトキシシランコポリマー
の如き、アミノ基含有のコポリマーなど。
【0089】
これらのシラン系化合物は、多くの場合、液体である。粘着剤におけるシラン系化合物(D)の配合量は、アクリル樹脂(A)の固形分100重量部(2種類以上用いる場合はそれらの合計)に対して、通常0.01〜10重量部程度であり、好ましくは0.05〜5重量部の割合で使用される。アクリル樹脂の固形分100重量部に対するシラン系化合物の量が0.01 重量部以上であると、粘着剤層とガラス基板との密着性が向上することから好ましい。また、その量が10重量部以下であると、粘着剤層からシラン系化合物がブリードアウトすることが抑制される傾向にあることから好ましい。
【0090】
[粘着剤組成物を構成するその他の成分]
以上説明した粘着剤組成物にはさらに、架橋触媒、耐候安定剤、タッキファイヤー、可塑剤、軟化剤、染料、顔料、無機フィラー、アクリル樹脂(A)以外の樹脂などを配合してもよい。また粘着剤組成物に紫外線硬化性化合物を配合し、粘着剤層形成後に紫外線を照射して硬化させ、より硬い粘着剤層とするのも有用である。なかでも、粘着剤組成物に架橋剤とともに架橋触媒を配合すれば、粘着剤層を短時間の熟成で調製することができ、得られる粘着剤付き樹脂フィルムにおいて、樹脂フィルムと粘着剤層との間に浮きや剥れが発生したり粘着剤層内で発泡が起こったりすることを抑制でき、またリワーク性も一層良好になることがある。架橋触媒としては、例えば、ヘキサメチレンジアミン、エチレンジアミン、ポリエチレンイミン、ヘキサメチレンテトラミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、イソホロンジアミン、トリメチレンジアミン、ポリアミノ樹脂、メラミン樹脂の如きアミン系化合物などを挙げることができる。粘着剤組成物に架橋触媒としてアミン系化合物を配合する場合、架橋剤としてはイソシアネート系化合物が好適である。
【0091】
粘着剤を構成するこれらの各成分は、溶剤に溶かした状態で粘着剤組成物とされ、適当な基材上に塗布し、乾燥させて、粘着剤層とされる。
【0092】
[粘着剤付き樹脂フィルム]
本発明の粘着剤付き樹脂フィルムは、樹脂フィルムの少なくとも一方の面に、以上のような粘着剤組成物から形成される粘着剤層を設けたものである。ここで用いる樹脂フィルムは、偏光フィルム、保護フィルム及び位相差フィルムから選ばれるフィルムを包含する光学フィルムや、被保護体である光学フィルムなどに貼り合わされ、その表面を傷や汚れなどから保護する目的で用いられる表面保護フィルムなどが挙げられる。
【0093】
偏光フィルムとは、自然光を直線偏光に変換する機能を有するフィルムである。偏光フィルムの好適な例としては、一軸延伸されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムにヨウ素や二色性染料等の二色性色素が吸着配向しているものが挙げられる。偏光フィルムの膜厚は、特に制限されないが、通常0.5〜35μmであるものが使用される。この偏光フィルムの片面又は両面に保護フィルムが貼合されて偏光板とされる。得られる偏光板の例としては、フィルム面に入射するある方向の振動面を有する直線偏光を吸収し、それと直交する振動面を有する直線偏光を透過する性質を有する直線偏光板、フィルム面に入射するある方向の振動面を有する直線偏光を反射し、それと直交する振動面を有する直線偏光を透過する性質を有する偏光分離板、偏光板と後述する位相差フィルムを積層した楕円偏光板などが挙げられる。
【0094】
本発明において、偏光フィルムの両面に保護フィルムを貼合して偏光板とする場合は、その偏光板を構成する保護フィルムの表面に粘着剤層が形成される。偏光フィルムの片面にのみ保護フィルムを貼合して偏光板とする場合には、偏光フィルムの表面(保護フィルムの貼合されていない面)に粘着剤層を形成することができる。本発明では、偏光フィルムの片面又は両面に保護フィルムが貼合された偏光板も光学フィルムとして用いることができる。
【0095】
この保護フィルムとしては、透明な樹脂フィルムが用いられる。透明樹脂としては、例えば、トリアセチルセルロースやジアセチルセルロースに代表されるセルロース系樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリスルホン樹脂などを挙げることができる。保護フィルムを構成する樹脂には、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、トリアジン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物などの紫外線吸収剤が配合されていてもよい。保護フィルムとしては、トリアセチルセルロースフィルム等のセルロース系樹脂フィルム及びアクリル樹脂フィルムが好適に用いられる。保護フィルムを形成するセルロース系樹脂及びアクリル樹脂は、後述する位相差フィルムで述べるものと同じ樹脂を適宜選択し、公知の方法で製膜及び延伸して使用することができる。
【0096】
上で説明した偏光板のなかでも、直線偏光板は、例えばポリビニルアルコール系樹脂からなる偏光フィルムの片面又は両面に、保護フィルムが貼着された状態で用いられることが多い。また、上記の楕円偏光フィルムは、直線偏光板と位相差フィルムを積層したものであるが、その偏光板も、偏光フィルムの片面又は両面に、保護フィルムが貼着された状態であることが多い。このような楕円偏光フィルムに、本発明による粘着剤層を形成する場合は、通常、その位相差フィルム側に粘着剤層が形成される。
【0097】
位相差フィルムとは、光学異方性を示す光学フィルムであって、例えば、ポリビニルアルコール、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリアリレート、ポリイミド、ポリオレフィン、ポリシクロオレフィン、ポリスチレン、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン、ポリビニリデンフルオライド/ポリメチルメタクリレート、液晶ポリエステル、アセチルセルロース、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物、ポリ塩化ビニル、アクリル樹脂などからなる高分子フィルムを 1.01〜6倍程度に延伸することにより得られる延伸フィルムなどが挙げられる。なかでも、ポリカーボネートフィルムやシクロオレフィン系樹脂フィルム、アクリル樹脂フィルム又はセルロース系樹脂フィルムを一軸延伸又は二軸延伸した高分子フィルムが好ましい。また、本明細書においては、光学異方性を示さない光学フィルムであるが、ゼロレタデーションフィルムも位相差フィルムに含まれる。そのほか、一軸性位相差フィルム、広視野角位相差フィルム、低光弾性率位相差フィルムなどと称されるフィルムも、位相差フィルムとして適用可能である。
【0098】
シクロオレフィン系樹脂は、例えば、ノルボルネンやテトラシクロドデセン(別名ジメタノオクタヒドロナフタレン)又はそれらの誘導体を代表例とするシクロオレフィンの単量体単位を有する熱可塑性の樹脂であり、シクロオレフィンの開環重合体や2種以上のシクロオレフィンを用いた開環共重合体の水素添加物であることができるほか、シクロオレフィンと鎖状オレフィンやビニル基を有する芳香族化合物との付加共重合体であってもよい。また、極性基が導入されていてもよい。
【0099】
市販の熱可塑性シクロオレフィン系樹脂としては、例えば、ドイツの TOPAS ADVANCED POLYMERS GmbH にて生産され、日本ではポリプラスチックス(株)から販売されている
“TOPAS”、JSR(株)から販売されている“アートン”(ARTON)、日本ゼオン(株)から販売されている“ゼオネックス”(ZEONEX)及び“ゼオノア”(ZEONOR)、三井化学(株)から販売されている“アペル”(いずれも商品名)などがある。
【0100】
このようなシクロオレフィン系樹脂を製膜してフィルムとするにあたり、製膜には、溶剤キャスト法や溶融押出法など、公知の製膜手法が適宜用いられる。製膜されたシクロオレフィン系樹脂フィルムや、さらに延伸して位相差が付与されたシクロオレフィン系樹脂フィルムも市販されている。例えば、JSR(株)から販売されている“アートンフィルム”、日本ゼオン(株)から販売されている“ゼオノアフィルム”、積水化学工業(株)から販売されている“エスシーナ”及び“SCA40” など(いずれも商品名)があり、これらを好適に用いることができる。
【0101】
セルロース系樹脂フィルムとは、セルロースの部分又は完全エステル化物からなるフィルムである。例えば、セルロースの酢酸エステル、プロピオン酸エステル、酪酸エステル、それらの混合エステルなどからなるフィルムが挙げられる。なかでも、トリアセチルセルロースフィルム、ジアセチルセルロースフィルム、セルロースアセテートプロピオネートフィルム、セルロースアセテートブチレートフィルムなどが好ましく用いられる。
【0102】
セルロース系樹脂フィルムは、市販品を容易に入手することが可能であり、例えば、それぞれ商品名で、富士フイルム(株)から販売されている“フジタックTD”、コニカミノルタオプト(株)から販売されている“コニカミノルタTACフィルムKC”などがある。
【0103】
樹脂フィルムを形成するアクリル樹脂は、公知のものを適宜使用できるが、本発明ではアクリル樹脂として第三のアクリル樹脂を使用することが好ましい。第三のアクリル樹脂は、第一のアクリル樹脂及び第二のアクリル樹脂と同様の重合体でもよいが、一般にはメタクリル酸エステルを主たるモノマーとする重合体であり、これに少量の他のコモノマー成分が共重合されている共重合体であることが好ましい。この共重合体は、通常、メタクリル酸メチル及びアクリル酸メチルを含む単官能モノマーを、ラジカル重合開始剤及び連鎖移動剤の共存下に重合して得ることができる。また、第三のアクリル系樹脂は、第三の単官能モノマーを共重合させることができる。
【0104】
メタクリル酸メチル及びアクリル酸メチルと共重合し得る第三の単官能モノマーとしては、例えば、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸2−エチルヘキシル及びメタクリル酸2−ヒドロキシエチルの如きメタクリル酸メチル以外のメタクリル酸エステル類;アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸フェニル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸2−エチルヘキシル及びアクリル酸2−ヒドロキシエチルの如きアクリル酸エステル類;2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル、2−(1−ヒドロキシエチル)アクリル酸メチル、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸エチル及び2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸ブチルの如きヒドロキシアルキルアクリル酸エステル類;メタクリル酸及びアクリル酸の如き不飽和酸類;クロロスチレン及びブロモスチレンの如きハロゲン化スチレン類;ビニルトルエン及びα−メチルスチレンの如き置換スチレン類;アクリロニトリル及びメタクリロニトリルの如き不飽和ニトリル類;無水マレイン酸及び無水シトラコン酸の如き不飽和酸無水物類;フェニルマレイミド及びシクロヘキシルマレイミドの如き不飽和イミド類などを挙げることができる。これらは、それぞれ単独で用いられてもよいし、異なる複数種が併用されてもよい。
【0105】
多官能モノマーを共重合させる場合、メタクリル酸メチル及びアクリル酸メチルに共重合し得る多官能モノマーとしては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ノナエチレングリコールジ(メタ)アクリレート及びテトラデカエチレングリコールジ(メタ)アクリレートの如きエチレングリコール又はそのオリゴマーの両末端水酸基をアクリル酸又はメタクリル酸でエステル化したもの;プロピレングリコール又はそのオリゴマーの両末端水酸基をアクリル酸又はメタクリル酸でエステル化したもの;ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート及びブタンジオールジ(メタ)アクリレートの如き2価アルコールの水酸基をアクリル酸又はメタクリル酸でエステル化したもの;ビスフェノールA、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物、又はこれらのハロゲン置換体の両末端水酸基をアクリル酸又はメタクリル酸でエステル化したもの;トリメチロールプロパン及びペンタエリスリトールの如き多価アルコールをアクリル酸又はメタクリル酸でエステル化したもの、並びにこれら末端水酸基にグリシジルアクリレート又はグリシジルメタクリレートのエポキシ基を開環付加させたもの;コハク酸、アジピン酸、テレフタル酸、フタル酸、これらのハロゲン置換体などの二塩基酸、及びこれらのアルキレンオキサイド付加物などにグリシジルアクリレート又はグリシジルメタクリレートのエポキシ基を開環付加させたもの;アリール(メタ)アクリレート;ジビニルベンゼンの如き芳香族ジビニル化合物などが挙げられる。なかでも、エチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート及びネオペンチルグリコールジメタクリレートが好ましく用いられる。
【0106】
このような組成からなる第三のアクリル樹脂は、さらに共重合体が有する官能基間の反応を行い、変性されたものであってもよい。その反応としては、例えば、アクリル酸メチルのメチルエステル基と2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチルの水酸基との高分子鎖内脱メタノール縮合反応、アクリル酸のカルボキシル基と2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチルの水酸基との高分子鎖内脱水縮合反応などが挙げられる。
【0107】
また、第三のアクリル樹脂は、グルタルイミド誘導体、グルタル酸無水物誘導体又はラクトン環構造のいずれかの構造を有してもよい。
【0108】
上記した第三のアクリル樹脂のガラス転移温度は、90〜160℃の範囲が好ましい。第三のアクリル系樹脂のガラス転移温度を上記の範囲に調整するには、通常、メタクリル酸エステル系モノマーとアクリル酸エステル系モノマーとの重合比、それぞれのエステル基の炭素鎖長及びその有する官能基の種類、並びに単量体全体に対する多官能アクリルモノマーの重合比を適宜選択する方法などが採用される。第三のアクリル樹脂のガラス転移温度は、さらに好ましくは110〜160℃、特に好ましくは120〜150℃である。
【0109】
第三のアクリル樹脂は、必要に応じて公知の添加剤を含有していてもよい。公知の添加剤として例えば、滑剤、ブロッキング防止剤、熱安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、耐光剤、耐衝撃性改良剤、界面活性剤などを挙げることができる。ただし、第三のアクリル樹脂から形成される樹脂フィルムを偏光フィルムに積層される保護フィルムとして透明性が必要とされるため、これら添加剤の量は最小限にとどめておくことが好ましい。
【0110】
第三のアクリル樹脂から形成される樹脂フィルム(アクリル樹脂フィルム)の製造方法としては、溶融流延法、Tダイ法やインフレーション法のような溶融押出法、カレンダー法など、いずれの方法を用いてもよい。なかでも、原料樹脂を、例えばTダイから溶融押出し、得られるフィルム状物の少なくとも片面をロール又はベルトに接触させて製膜する方法は、表面性状の良好なフィルムが得られる点で好ましい。製膜したアクリル樹脂フィルムを、公知の方法でさらに延伸して使用してもよい。これらの方法で製造したアクリル樹脂フィルムは、保護フィルム及び位相差フィルムに用いることができる。
【0111】
第三のアクリル樹脂は、フィルムへの製膜性やフィルムの耐衝撃性などの観点から、衝撃性改良剤であるアクリル系ゴム粒子を含有していてもよい。ここでいうアクリル系ゴム粒子とは、アクリル酸エステルを主体とする弾性重合体を必須成分とする粒子であり、実質的にこの弾性重合体のみからなる単層構造のものや、この弾性重合体を1つの層とする多層構造のものが挙げられる。この弾性重合体の例として、アクリル酸アルキルを主成分とし、これに共重合可能な他のビニルモノマー及び架橋性モノマーを共重合させた架橋弾性共重合体が挙げられる。弾性重合体の主成分となるアクリル酸アルキルとしては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルへキシルなど、アルキル基の炭素数が1〜8程度のものが挙げられ、特に炭素数4以上のアルキル基を有するアクリル酸が好ましく用いられる。このアクリル酸アルキルに共重合可能な他のビニルモノマーとしては、分子内に重合性炭素−炭素二重結合を1個有する化合物を挙げることができ、より具体的には、メチルメタクリレートの如きメタクリル酸エステル、スチレンの如き芳香族ビニル化合物、アクリロニトリルの如きビニルシアン化合物などが挙げられる。また、架橋性モノマーとしては、分子内に重合性炭素−炭素二重結合を少なくとも2個有する架橋性の化合物を挙げることができ、より具体的には、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート及びブタンジオールジ(メタ)アクリレートの如き多価アルコールの(メタ)アクリレート類、アリル(メタ)アクリレートの如き(メタ)アクリル酸のアルケニルエステル、ジビニルベンゼンなどが挙げられる。
【0112】
さらに、ゴム粒子を含まないアクリル樹脂からなるフィルムと、ゴム粒子を含むアクリル樹脂からなるフィルムとの積層物を、上記の保護フィルム又は位相差フィルムとすることもできる。アクリル樹脂は、市販品を容易に入手することが可能であり、例えば、住友化学(株)製の“スミペックス”(住友化学株式会社製)、三菱レイヨン(株)製の“アクリペット”、旭化成(株)製の“デルペット”、(株)クラレ製の“パラペット”、(株)日本触媒製の“アクリビュア”(以上、いずれも商品名)などが挙げられる。
【0113】
また、第三のアクリル樹脂とは異なる樹脂からなる位相差発現層の片面又は両面に、第三のアクリル樹脂層が形成され、位相差が発現されたものも位相差フィルムとすることもできる。
【0114】
本発明では、IPSモードの液晶表示装置に好適に用いられるゼロレタデーションフィルムも位相差フィルムとして使用することができる。ゼロレタデーションフィルムとは、正面レタデーション R
eと厚み方向のレタデーションR
thが、ともに−15〜15nmと小さく、光学的に等方なフィルムをいう。
【0115】
ゼロレタデーションフィルムには、例えば、セルロース系樹脂、鎖状ポリオレフィン系樹脂及びポリシクロオレフィン系樹脂を包含するポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂又は第三のアクリル系樹脂からなる樹脂フィルムを用いることができる。特に、レタデーション値の制御が容易で、入手も容易であることから、セルロース系樹脂、鎖状ポリオレフィン系樹脂及びポリシクロオレフィン系樹脂を包含するポリオレフィン系樹脂又は第三のアクリル系樹脂が好ましく用いられる。
【0116】
ゼロレタデーションフィルムは、上記の光学異方性を有した位相差フィルムの製膜に用いた樹脂と同様のものを適宜使用することができる。また、ゼロレタデーションフィルムは位相差フィルムとしてだけでなく、保護フィルムとしても用いることができる。
【0117】
セルロース系樹脂やポリオレフィン系樹脂などからフィルムを製膜する方法は、それぞれの樹脂に応じた方法を適宜選択すればよい。例えば、溶剤に溶解させた樹脂を、金属製のバンド又はドラムに流延し、溶剤を乾燥除去してフィルムを得る溶剤キャスト法、樹脂をその溶融温度以上に加熱し、混練してダイから押出し、冷却ドラムによって冷却することによりフィルムを得る溶融押出法などが使用できる。なかでも、ポリオレフィン系樹脂に対しては、生産性の観点から溶融押出法が好ましく採用される。一方、セルロース系樹脂は溶剤キャスト法によって製膜されるのが一般的である。
【0118】
厚み方向のレタデーションR
thは、面内の平均屈折率から厚み方向の屈折率を差し引いた値にフィルムの厚みを乗じて得られる値であって、下記式(1)で表される。また、面内のレタデーションR
e は、面内の屈折率差にフィルムの厚みを乗じて得られる値であって、下記式(2)で表される。
【0119】
R
th=〔(n
x+n
y)/2−n
z〕×d (1)
R
e =(n
x−n
y)×d (2)
【0120】
式中、n
x はフィルム面内の遅相軸方向(x軸方向)の屈折率であり、n
y はフィルム面内の進相軸方向(面内でx軸に直交するy軸方向)の屈折率であり、n
z はフィルム厚み方向(フィルム面に垂直なz軸方向)の屈折率であり、そしてdはフィルムの厚さである。
【0121】
ここで、レタデーション値は、可視光の中心付近である500〜650nm程度の範囲で任意の波長における値でありうるが、本明細書では波長590nmにおけるレタデーション値を標準とする。厚み方向のレタデーションR
th及び面内のレタデーションR
e は、市販の各種位相差計を用いて測定することができる。
【0122】
樹脂フィルムの面内レタデーションと厚み方向のレタデーションR
thを−15〜+15nmの範囲内に制御する方法としては、フィルムを作製するときに、厚み方向に残留するゆがみを極力小さくする方法が挙げられる。例えば、上記の溶剤キャスト法においては、その流延樹脂溶液を乾燥するときに生じる厚み方向の残留収縮歪みを、熱処理によって緩和させる方法などが採用できる。一方、上記の溶融押出法においては、樹脂フィルムをダイから押し出し、冷却するまでの間に延伸されることを防ぐため、ダイから冷却ドラムまでの距離を極力縮めるとともに、押出し量と冷却ドラムの回転速度をフィルムが延伸されないよう制御する方法などが採用できる。また、溶剤キャスト法と同様に、得られたフィルムに残留する歪みを熱処理によって緩和させる方法も採用できる。
【0123】
ゼロレタデーションフィルムとして、例えば、富士フイルム(株)から販売されている“Z−TAC”、コニカミノルタオプト(株)から販売されている“ゼロタック”、日本ゼオン(株)から販売されている“ZF−14”(いずれも商品名)などがあり、好適に用いられる。
【0124】
位相差フィルムを含む光学フィルムに粘着剤層を形成し、その粘着剤層を介してガラスに貼合する場合、その位相差フィルムの透湿度が小さいと、粘着剤層中の水分が抜けにくくなるため、その水分に起因して発泡が生じるなど、特に高温条件下での耐久性において不利になることが多かった。これに対し、本発明に係る粘着剤付き樹脂フィルムにおいては、樹脂フィルムとして位相差フィルムを含む光学フィルムを用いる場合、その位相差フィルムが、 JIS Z 0208 に規定されるカップ法により、40℃の温度及び90%の相対湿度で測定される透湿度が300g/(m
2・24hr)以下と小さい場合であっても、優れた耐久性を示す。
【0125】
透湿度の低い位相差のフィルムの例としては、上に掲げたようなシクロオレフィン系樹脂からなるフィルムや第三のアクリル樹脂からなるアクリル樹脂フィルムを含むアクリル樹脂フィルムが挙げられる。これらの位相差フィルムは、40℃の温度及び90%の相対湿度において概ね300g/(m
2・24hr)以下の透湿度を有する。
【0126】
また、液晶性化合物の塗布・配向によって光学異方性を発現させたフィルムや、無機層状化合物の塗布によって光学異方性を発現させたフィルムも、位相差フィルムとして用いることができる。このような位相差フィルムには、温度補償型位相差フィルムと称されるもの、また、JX日鉱日石エネルギー(株)から“NHフィルム”の商品名で販売されている棒状液晶が傾斜配向したフィルム、富士フイルム(株)から“WVフィルム”の商品名で販売されている円盤状液晶が傾斜配向したフィルム、住友化学(株)から“VACフィルム”の商品名で販売されている完全二軸配向型のフィルム、同じく住友化学(株)から“new VAC フィルム”の商品名で販売されている二軸配向型のフィルムなどがある。
【0127】
一方、表面保護フィルムとは、被保護体である光学フィルムなどの表面を傷や汚れから保護する目的で用いられるフィルムであって、例えば、液晶表示装置の生産に用いられる偏光フィルム、偏光板、位相差フィルム、光拡散シート、反射シートなどの各種光学フィルムは、その表面(片面に粘着剤層を有する場合は、その粘着剤層と反対側の面)に表面保護フィルムを貼合した状態で流通し、液晶セルなどに貼り合わせた後、その表面保護フィルムを剥離除去するのが通例である。表面保護フィルムの基材としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン及びポリメチルペンテンの如きポリオレフィン系樹脂;ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン及びポリフッ化エチレンの如きフッ素化ポリオレフィン系樹脂;ポリエチレンナフタート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート及びポリエチレンテレフタレート/イソフタレート共重合体の如きポリエステル系樹脂;ナイロン6及びナイロン6,6の如きポリアミド;ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリビニルアルコール及びビニロンの如きビニル重合体;トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース及びセロハンの如きセルロース系樹脂;ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、ポリアクリル酸エチル及びポリアクリル酸ブチルの如きアクリル系樹脂;その他、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリイミドなどが挙げられる。
【0128】
本発明の粘着剤付き樹脂フィルムを表面保護フィルムとして用いる場合、上記のような基材フィルムに、上で説明した粘着剤層を設ければよい。
【0129】
また、本発明の粘着剤付き樹脂フィルムにおいて、その粘着剤層表面には、剥離フィルムを貼着し、使用時まで仮着保護するのが好ましい。ここで用いる剥離フィルムは、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリアリレートなどの各種樹脂からなるフィルムを基材とし、この基材の粘着剤層との接合面に、シリコーン処理の如き離型処理が施されたものなどであることができる。
【0130】
粘着剤付き樹脂フィルムは、例えば、上記の如き剥離フィルムの上に、先に説明した粘着剤組成物を塗布して粘着剤層を形成し、得られた粘着剤層にさらに樹脂フィルムを積層する方法、樹脂フィルムの上に粘着剤組成物を塗布して粘着剤層を形成し、その粘着剤面に剥離フィルムを貼り合わせて保護し、粘着剤付き樹脂フィルムとする方法などにより、製造できる。
【0131】
粘着剤層の厚みは特に限定されないが、通常は30μm 以下であるのが好ましく、また10μm 以上であるのが好ましく、さらに好ましくは10〜20μm である。粘着剤層の厚みが30μm 以下であると、高温高湿下での接着性が向上し、ガラス基板と粘着剤層との間に浮きや剥れの発生する可能性が低くなる傾向にあり、しかもリワーク性が向上する傾向にあることから好ましく、またその厚みが10μm 以上であると、そこに貼合されている光学フィルムの寸法が変化しても、その寸法変化に粘着剤層が追随して変動するので液晶セルの周縁部の明るさと中心部の明るさとの間に差がなくなり、白抜けや色ムラが抑制される傾向にあることから好ましい。従来から一般に、液晶セルに貼着される粘着剤層の厚みは、25μm が標準とされていたが、本発明においては、その厚みを20μm 以下としても、粘着剤層として十分な性能を発揮する。
【0132】
本発明の粘着剤付き樹脂フィルムを液晶セル等のガラス基板に貼着して光学積層体とした後、なんらかの不具合があった場合には、その光学フィルムをガラス基板から剥離し、新しい粘着剤付き樹脂フィルムを貼り直す、いわゆるリワーク作業が必要になることがある。本発明の粘着剤付き樹脂フィルムは、このようなリワーク作業を行う場合に、粘着剤層は光学フィルムに伴って剥離され、粘着剤層と接していたガラス基板の表面に、曇りや糊残りなどがほとんど発生しないことから、剥離後のガラス基板に再び、粘着剤付き樹脂フィルムを貼り直すことが容易である。すなわち、いわゆるリワーク性に優れている。
【0133】
[光学積層体]
本発明の粘着剤付き樹脂フィルムは、樹脂フィルムを光学フィルムで構成することができ、その粘着剤層でガラス基板に積層して、光学積層体とすることができる。粘着剤付き樹脂フィルムをガラス基板に積層して光学積層体とするには、例えば、上記のようにして得られる粘着剤付き樹脂フィルムから剥離フィルムを剥がし、露出した粘着剤層をガラス基板の表面に貼り合わせればよい。ここで、ガラス基板としては、例えば、液晶セルのガラス基板、防眩用ガラス、サングラス用ガラスなどを挙げることができる。なかでも、液晶セルの前面側(視認側)のガラス基板に偏光フィルム上に粘着剤層を設けた粘着剤付き樹脂フィルム(上偏光フィルム)を積層し、液晶セルの背面側のガラス基板に偏光フィルム上に粘着剤層を設けた別の粘着剤付き樹脂フィルム(下偏光フィルム)を積層してなる光学積層体は、液晶表示装置として使用しうることから好ましい。ガラス基板の材料としては、例えば、ソーダライムガラス、低アルカリガラス、無アルカリガラスなどが挙げられる。
【0134】
本発明に係る光学積層体について、いくつかの好適な層構成の例を
図1に断面模式図で示した。
図1(A)に示す例では、偏光フィルム1の片面に、表面処理層2を有する保護フィルム3をその表面処理層2とは反対側の面で貼着して、偏光板5が構成されている。この例では、偏光板5が同時に、本発明でいう光学フィルム10ともなっている。偏光フィルム1の保護フィルム3と反対側の面に、粘着剤層20が設けられ、粘着剤付き樹脂フィルム25が構成されている。そして、その粘着剤層20の偏光板5とは反対側の面を、ガラス基板である液晶セル30に貼合して、光学積層体40が構成されている。
【0135】
図1(B)に示す例では、偏光フィルム1の片面に、表面処理層2を有する第一の保護フィルム3をその表面処理層2とは反対側の面で貼着し、偏光フィルム1の他面には、第二の保護フィルム4を貼着して、偏光板5が構成されている。この例でも、偏光板5が同時に、本発明でいう光学フィルム10となっている。偏光板5を構成する第二の保護フィルム4の外側に、粘着剤層20が設けられ、粘着剤付き樹脂フィルム25が構成されている。そして、その粘着剤層20の偏光板5とは反対側の面を、ガラス基板である液晶セル30に貼合して、光学積層体40が構成されている。
【0136】
図1(C)に示す例では、偏光フィルム1の片面に、表面処理層2を有する保護フィルム3をその表面処理層2とは反対側の面で貼着し、偏光板5が構成されている。偏光フィルム1の保護フィルム3と反対側の面には、層間粘着剤8を介して位相差フィルム7を貼着し、光学フィルム10が構成されている。光学フィルム10を構成する位相差フィルム7の外側に、粘着剤層20が設けられ、粘着剤付き樹脂フィルム25が構成されている。そしてその粘着剤層20の光学フィルム10とは反対側の面を、ガラス基板である液晶セル30に貼合して、光学積層体40が構成されている。
【0137】
また、
図1(D)に示す例では、偏光フィルム1の片面に、表面処理層2を有する第一の保護フィルム3をその表面処理層2とは反対側の面で貼着し、偏光フィルム1の他面には、第二の保護フィルム4を貼着して、偏光板5が構成されている。偏光板5を構成する第二の保護フィルム4の外側に、層間粘着剤8を介して位相差フィルム7を貼着し、光学フィルム10が構成されている。光学フィルム10を構成する位相差フィルム7の外側には、粘着剤層20が設けられ、粘着剤付き樹脂フィルム25が構成されている。そして、その粘着剤層20の光学フィルム10とは反対側の面を、ガラス基板である液晶セル30に貼合して、光学積層体40が構成されている。
【0138】
これらの例において、第一の保護フィルム3及び第二の保護フィルム4は、トリアセチルセルロースフィルムで構成するのが一般的であるが、その他、先に述べた各種透明樹脂フィルムで構成することもできる。また、第一の保護フィルム3の表面に形成される表面処理層は、ハードコート層、防眩層、反射防止層、帯電防止層などであることができる。これらのうち複数の層を設けることも可能である。
【0139】
図1の(C)及び(D)に示す例のように、偏光板5に位相差フィルム7を積層する場合、中小型の液晶表示装置であれば、位相差フィルム7の好適な例として、1/4波長板を挙げることができる。この場合は、偏光板5の吸収軸と1/4波長板である位相差フィルム7の遅相軸とがほぼ45度で交差するように配置するのが一般的であるが、液晶セル30の特性に応じてその角度を45度からある程度ずらすこともある。一方で、テレビなどの大型液晶表示装置であれば、液晶セル30の位相差補償や視野角補償を目的に、その液晶セル30の特性に合わせて各種の位相差値を有する位相差フィルムが用いられる。この場合は、偏光板5の吸収軸と位相差フィルム7の遅相軸とがほぼ直交又はほぼ平行の関係となるように配置するのが一般的である。位相差フィルム7を1/4波長板で構成する場合は、一軸又は二軸の延伸フィルムが好適に用いられる。また、位相差フィルム7を液晶セル30の位相差補償や視野角補償の目的で設ける場合には、一軸又は二軸延伸フィルムのほか、一軸又は二軸延伸に加えて厚み方向にも配向させたフィルム、支持フィルム上に液晶等の位相差発現物質を塗布して配向固定させたフィルムなど、光学補償フィルムと呼ばれるものを、位相差フィルム7として用いることもできる。
【0140】
同じく
図1の(C)及び(D)に示す例のように、偏光板5と位相差フィルム7とを、層間粘着剤8を介して貼合する場合、その層間粘着剤8には、一般的なアクリル系粘着剤を用いるのが通例であるが、ここに本発明で規定する粘着剤層を形成することももちろん可能である。先に述べた大型液晶表示装置のように、偏光板5の吸収軸と位相差フィルム7の遅相軸とがほぼ直交又はほぼ平行の関係となるように配置する場合、偏光板5と位相差フィルム7とをロール・ツウ・ロール貼合することができ、両者の間の再剥離性が要求されない用途においては、
図1の(C)及び(D)に示す層間粘着剤8に代えて、一旦接着したら強固に接合し、剥離できなくなる接着剤を用いることも可能である。このような接着剤としては、例えば、水溶液又は水分散液で構成され、溶剤である水を蒸発させることによって接着力を発現する水系接着剤、紫外線照射によって硬化し、接着力を発現する紫外線硬化型接着剤などを挙げることができる。
【0141】
なお、
図1の(C)及び(D)に示した、位相差フィルム7に粘着剤層20が形成されたもの自体も、それ自身で流通させることができ、本発明でいう粘着剤付き樹脂フィルムとなりうる。粘着剤層を位相差フィルム上に形成した粘着剤付き樹脂フィルムは、その粘着剤層をガラス基板である液晶セルに貼合して光学積層体とできるほか、その位相差フィルム側に偏光板を貼合して、別の粘着剤付き樹脂フィルムとすることもできる。
【0142】
図1には、粘着剤付き樹脂フィルム25を液晶セル30の視認側に配置する場合を想定した例を示したが、本発明に係る粘着剤付き樹脂フィルムは、液晶セルの背面側、すなわちバックライト側に配置することもできる。本発明の粘着剤付き樹脂フィルムを液晶セルの背面側に配置する場合は、
図1に示した表面処理層2を有する保護フィルム3の代わりに、表面処理層を有しない保護フィルムを採用し、他は
図1の(A)〜(D)と同様に構成することができる。またこの場合は、偏光板を構成する保護フィルムの外側に、輝度向上フィルム、集光フィルム、拡散フィルムなど、液晶セルの背面側に配置されることが知られている各種光学フィルムを設けることも可能である。
【0143】
以上説明したように、本発明の光学積層体は、液晶表示装置に好適に用いることができる。本発明の光学積層体から形成される液晶表示装置は、例えば、ノート型、デスクトップ型、PDA(Personal Digital Assistant)などを包含するパーソナルコンピュータ用液晶ディスプレイ、テレビ、車載用ディスプレイ、電子辞書、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、電子卓上計算機、時計などに用いることができる。
【実施例】
【0144】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。例中、使用量ないし含有量を表す部及び%は、特に断りのない限り重量基準である。
【0145】
以下の例において、重量平均分子量は、GPC装置にカラムとして、東ソー(株)製の“TSKgel XL”を4本と、昭和電工(株)製で昭光通商(株)が販売する“Shodex GPC KF
-802”を1本、計5本を直列につないで配置し、溶出液としてテトラヒドロフランを用いて、試料濃度5mg/mL、試料導入量100μL 、温度40℃、流速1mL/分の条件で、標準ポリスチレン換算により測定した値である。
【0146】
まず、アクリル樹脂の製造例を示す。
【0147】
[重合例1]
冷却管、窒素導入管、温度計及び攪拌機を備えた反応容器に、溶媒としての酢酸エチル81.8 部、アクリル酸ブチル67.3部、アクリル酸メチル20.0部、アクリル酸2−(2−フェノキシエトキシ)エチル8.0部、アクリル酸2−ヒドロキシエチル4.0部、及びアクリル酸 0.7部の混合溶液を仕込み、窒素ガスで装置内の空気を置換して酸素不含としながら、内温を55℃に上げた。その後、重合開始剤であるアゾビスイソブチロニトリル 0.15部を酢酸エチル10部に溶かした溶液を全量添加した。開始剤添加1時間後に、アクリル樹脂の濃度が30%になるよう、添加速度17.3部/hr で酢酸エチルを連続的に反応容器内へ加えながら、内温54〜56℃で12時間保温し、最後に酢酸エチルを加えて、アクリル樹脂の濃度が20%となるように調節した。得られたアクリル樹脂は、GPCによるポリスチレン換算の重量平均分子量Mw が1,330,000、Mw/Mnが5.5であった。このアクリル樹脂は、後掲の表1において「アクリル樹脂」と記載する。
【0148】
次に、上で製造したアクリル樹脂を用いて粘着剤を調製し、光学フィルムに適用した実施例及び比較例を示す。以下の例では、アニオン成分がビス(フルオロスルホニル)イミドイオンであるイオン性化合物として下記4種類の化合物を用いた。各化合物の記号は、後で参照するために付したものである。
【0149】
イオン性化合物1
:下式の構造を有し、融点39℃
である化合物。
【0150】
【化5】
【0151】
イオン性化合物2
:下式の構造を有し、融点31℃
である化合物。
【0152】
【化6】
【0153】
イオン性化合物3: N−オクチル−4−メチルピリジニウム へキサフルオロホスフェート(下式の構造を有し、融点44℃)
【0154】
【化7】
【0155】
イオン性化合物4: トリメチルプロピルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(下式の構造を有し、融点42℃)
【0156】
【化8】
【0157】
また、架橋剤及びシラン系化合物として、それぞれ次のものを用いた(いずれも商品名である)。
【0158】
〈架橋剤〉
コロネート L: トリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体の酢酸エチル溶液(固形分濃度75%)、日本ポリウレタン(株)から入手。
【0159】
〈シラン系化合物〉
KBM-403 : グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(液体)、信越化学工業(株)から入手。
【0160】
[実施例1及び2、並びに比較例1及び2]
(a)粘着剤組成物の調製
上記した重合例1で製造したアクリル樹脂の固形分100部に対し、表1に示すイオン性化合物、架橋剤及びシラン系化合物をそれぞれ表1に示す量混合し、さらに固形分濃度が13%となるように酢酸エチルを添加して、粘着剤組成物とした。
【0161】
(b)粘着剤付き偏光板の作製
上の各粘着剤組成物を、離型処理されたポリエチレンテレフタレートフィルム(商品名“PET 3811”、リンテック(株)から入手、セパレーターと呼ぶ)の離型処理面に、アプリケーターを用いて乾燥後の厚さが20μm となるように塗布し、100℃で1分間乾燥して、シート状の粘着剤を得た。次いで、ヨウ素が吸着配向したポリビニルアルコール偏光フィルムの片面に、紫外線吸収材を含む厚さ80μm の第三のアクリル系樹脂からなるフィルム[商品名“テクノロイS001”、住友化学(株)製]を、他方の面にシクロオレフィン系樹脂からなる厚さ70μm の位相差フィルム〔40℃の温度及び90%の相対湿度における透湿度は42g/(m
2・24hr)〕をそれぞれ貼合した3層構造の偏光板のシクロオレフィン系樹脂からなる位相差フィルム面に、上で得たシート状粘着剤のセパレーターと反対側の面(粘着剤面)をラミネーターにより貼り合わせたのち、温度23℃、相対湿度65%の条件で7日間養生して、粘着剤付き偏光板を得た。
【0162】
(c)粘着剤付き偏光板の帯電防止性評価
得られた粘着剤付き偏光板のセパレーターを剥離したときに、粘着剤の表面抵抗値を表面固有抵抗測定装置〔三菱化学(株)製の“Hirest-up MCP-HT450 ”(商品名)〕にて測定し、帯電防止性を評価した。表面抵抗値が10
11Ω/□オーダー又はそれ以下であれば、良好な帯電防止性が得られる。帯電防止性の評価は、粘着剤付き偏光板の養生が完了した後、直ちに行った。また、長期間保存するときの経時変化をみるため、養生が完了した粘着剤付き偏光板を、温度50℃で3日間保管し、同様に帯電防止性を評価した。結果を表1にまとめた。
【0163】
(d)光学積層体の作製及び評価
上記(b)で作製した粘着剤付き偏光板からセパレーターを剥がした後、その粘着剤面を液晶セル用ガラス基板〔コーニング社製の“Eagle XG”(商品名)〕の片面に貼着して光学積層体を作製した。この光学積層体に対し、温度80℃の乾燥条件下で500時間保管する耐熱試験を行い、試験後の光学積層体を目視で観察した。さらに、上記光学積層体に対し、温度85℃の乾燥条件下で500時間保管する耐高熱試験を行い、試験後に光学積層体のガラス基板からの浮き、剥がれの量、すなわち光学積層体の端部から光学積層体の剥離が生じた位置までの距離を、ルーペを用いて計測した。結果を以下の基準で分類し、表1にまとめた。
【0164】
〈耐熱試験の評価基準〉
◎:浮き、剥れ、発泡等の外観変化が全くみられない。
○:浮き、剥れ、発泡等の外観変化がほとんどみられない。
△:浮き、剥れ、発泡等の外観変化がやや目立つ。
×:浮き、剥れ、発泡等の外観変化が顕著に認められる。
【0165】
〈耐高熱試験の評価基準〉
○:光学積層体端部からの浮き、剥がれの量が、0.6mm 未満である。
△:光学積層体端部からの浮き、剥がれの量が、0.6mm以上1.1mm未満である。
×:光学積層体端部からの浮き、剥がれの量が、1.1mm 以上である。
【0166】
(e)粘着剤付き偏光板のリワーク性評価
リワーク性の評価は次のように行った。まず、前記(b)で作製した粘着剤付き偏光フィルムを25mm×150mmの大きさの試験片に裁断した。次に、この試験片をその粘着剤側で、貼付装置〔フジプラ(株)製の“ラミパッカー”(商品名)〕を用いて液晶セル用ガラス基板に貼り付け、温度50℃、圧力5kg/cm
2(490.3kPa )で20分間オートクレーブ処理を行った。次に70℃で2時間加熱処理し、引き続き50℃のオーブン中にて48時間保管した後、温度23℃、相対湿度50%の雰囲気中にて、この貼着試験片から偏光板を粘着剤層とともに300mm/分の速度で180°方向(偏光板を剥がして裏返しとなった状態でガラス面に平行な方向)に剥離し、ガラス板表面の状態を観察して、以下の基準で分類した。結果を、併せて表1に示した。
【0167】
〈リワーク性の評価基準〉
◎:ガラス板表面に曇り等が全く認められない。
○:ガラス板表面に曇り等がほとんど認められない。
△:ガラス板表面に曇り等が認められる。
×:ガラス板表面に粘着剤の残りが認められる。
【0168】
【表1】
【0169】
表1からわかるように、アクリル樹脂に対し、本発明で規定するピリジニウム ビス(フルオロスルホニル)イミドを有するイオン性化合物を所定量配合した粘着剤組成物を用いた実施例1及び2は、アニオン成分がビス(フルオロスルホニル)イミドイオン以外のものであるイオン性化合物3を配合した比較例1及びイオン性化合物4を配合した比較例2に比べ、粘着剤層が貼合される樹脂フィルムの透湿度が低い場合であっても、85℃の高熱環境下における耐久性に優れ、また、通常の耐熱性においても、ほぼ満足できる結果が得られた。