【実施例】
【0031】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0032】
<製造例1>
透明試験管中で、酢酸セルロース200mg(5重量%)(Mw:40000、和光純薬製)を、1,4−ジオキサン0.8mL(18v/v%)、エタノール2.8mL(65v/v%)、及び水0.7mL(17v/v%)の混合溶媒に、60℃の湯浴中で加熱溶解させ、多糖類溶液を得た。得られた多糖類溶液を室温(約26℃)まで冷却して、溶媒を包含するモノリス構造体を得た。得られた溶媒を包含するモノリス構造体を、別容器内の過剰量の水中に投入し、モノリス構造体中に包含される前記混合溶媒を水に置換した。得られたモノリス構造体は、直径13mm、長さ約25mmの円柱状であった。次いで水を包含するモノリス構造体を水中から取り出し、−78℃で凍結後、室温で減圧乾燥を行い、内部の水を除去した。
得られたモノリス構造体の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)(キーエンス(株)社製、VE−8800)で観察した写真を
図1に示す。
【0033】
<製造例2>
酢酸セルロース250mgを1,4−ジオキサン1.5mL(30v/v%)、エタノール3.0mL(60v/v%)、及び水0.5mL(10v/v%)の混合溶媒に、60℃の湯浴中で加熱溶解させ、多糖類溶液を得た。得られた多糖類溶液を室温(約5℃)まで冷却して、溶媒を包含するモノリス構造体を得た。得られた溶媒を包含するモノリス構造体を、別容器内の過剰量の水中に投入し、モノリス構造体中に包含される前記混合溶媒を水に置換した。得られたモノリス構造体は直径13mm、長さ約30mmの円柱状であった。
【0034】
<製造例3>
混合溶媒の組成を、1,4−ジオキサン1.2mL(30v/v%)、エタノール1.4mL(35v/v%)、及び水1.4mL(35v/v%)とした以外は、製造例1と
同様にして、円柱状のモノリス構造体を得た。
【0035】
<製造例4>
多糖類溶液の冷却工程を、35℃の湯浴中で行う以外は、製造例1と同様にして、円柱状のモノリス構造体を得た。このモノリス構造体の断面のSEM写真を
図2に示す。
【0036】
<製造例5>
多糖類溶液の冷却工程を、30℃の湯浴中で行う以外は、製造例1と同様にして、円柱状のモノリス構造体を得た。このモノリス構造体の断面のSEM写真を
図3に示す。
【0037】
<製造例6>
多糖類溶液の冷却工程を、0℃で行う以外は、製造例1と同様にして、円柱状のモノリス構造体を得た。
【0038】
<製造例7>
透明試験管中で、酢酸セルロース300mgを、クロロホルム1.0mL(33v/v%)、及びメタノール2.0mL(67v/v%)の混合溶媒に、50℃の湯浴中で加熱溶解させ、多糖類溶液を得た。得られた多糖類溶液を製造例1と同様に処理して、円柱状のモノリス構造体を得た。
【0039】
<製造例8>
混合溶媒の組成を、N−メチルピロリドン0.8mL(20v/v%)、エタノール2.0mL(50v/v%)、及び水1.2mL(30v/v%)とした以外は、製造例1と同様にして、直径13mm、長さ約25mmの円柱状のモノリス構造体を得た。水を包含するモノリス構造体を水中から取り出し、−78℃で凍結後、室温で減圧乾燥を行い、内部の水を除去した。
得られたモノリス構造体の断面を走査型電子顕微鏡で観察した写真を
図4に示す。
【0040】
<製造例9>
混合溶媒の組成を、N−メチルピロリドン2.0mL(50v/v%)、エタノール0.8mL(20v/v%)、及び水1.2mL(30v/v%)とした以外は、製造例1
と同様にして、円柱状のモノリス構造体を得た。
【0041】
<製造例10>
混合溶媒の組成を、γ−ブチロラクトン1.8mL(34v/v%)、エタノール2.8mL(53v/v%)、及び水0.7mL(13v/v%)とした以外は、製造例1と
同様にして、円柱状のモノリス構造体を得た。
【0042】
<製造例11>
混合溶媒の組成を、ジメチルスルホキシド1.9mL(35v/v%)、エタノール2.8mL(52v/v%)、及び水0.7mL(13v/v%)とした以外は、製造例1
と同様にして、円柱状のモノリス構造体を得た。
【0043】
<製造例12>
50mLサンプル管にアセチル化グルコマンナン1.0gを計り取り、クロロホルム10mL(45v/v%)、及びエタノール10mL(55v/v%)に溶解した以外は製造例7と同様にして、モノリス構造体を得た。得られたモノリス構造体の大きさは、直径2.4cm、長さ1.5cmの円柱状であった。
【0044】
<製造例13>
100mLナスフラスコ中で、酢酸セルロース2.5gを、1,4−ジオキサン15mL(30v/v%)、エタノール30mL(73v/v%)、及び水5.0mL(10v/v%)混合溶媒に、60℃の湯浴で加熱溶解させ、多糖類溶液を得た。得られた多糖類溶液を試験管(φ1.5cm、h10cm)中に4.0mLずつ分注した。前記多糖類溶液を10℃まで冷却して、溶媒を包含するモノリス構造体を得た。得られた溶媒を包含するモノリス構造体を、別容器内の過剰量の水中に投入し、モノリス構造体中に包含される前記混合溶媒を水に置換した。得られたモノリス構造体の大きさは直径1.3cm、長さ2.2cmの円柱状であった。
【0045】
<製造例14>
透明試験管中で、酢酸セルロース500mg(10重量%)を、1,4−ジオキサン1.5mL(30v/v%)、エタノール3.0mL(60v/v%)、及び20wt%のポリエチレングリコール(Mw:3000、和光純薬製)水溶液0.5mL(10v/v%)の混合溶媒に60℃の湯浴中で加熱溶解させ、多糖類溶液を得た。得られた多糖類溶液を20℃まで冷却して、溶媒を包含するモノリス構造体を得た。得られた溶媒を包含するモノリス構造体を、別容器内の過剰量の水中に投入し、モノリス構造体中に包含される前記混合溶媒を水に置換し、ポリエチレングリコールを除去した。得られたモノリス構造体は、直径13mm、長さ約25mmの円柱状であった。
【0046】
<製造例15>
100mLナスフラスコ中で、酢酸セルロース2.5gを、1,4−ジオキサン15mL(30v/v%)、エタノール30mL(73v/v%)、及び水5.0mL(10v/v%)混合溶媒に、60℃の湯浴で加熱溶解させ、多糖類溶液を得た。得られた多糖類溶液を試験管(φ1.5cm、h10cm)中に4.0mLずつ分注した。前記多糖類溶液を10℃まで冷却して、溶媒を包含するモノリス構造体を得た。得られた溶媒を包含するモノリス構造体を、別容器内の過剰量のエタノール中に投入し、モノリス構造体中に包含される前記混合溶媒をエタノールに置換した。
3mLのエタノールに10M水酸化ナトリウム溶液1mLを加え、試験管内でよく混合した。ここに先に得られたエタノールで置換したモノリス構造体の1つ(乾燥重量約200mg)を入れ、30℃で5時間振とう(100rpm)して、脱アセチル化を行った。その後、水中に浸漬して、溶媒を置換した。
1.5mLの水中に320μLのエピクロヒドリンを加え、試験管内でよく混合した。ここに先に得られた脱アセチル化後のモノリス構造体を加え、3時間30℃で振とうした。続いて、別の試験管にエピクロロヒドリン0.16mL、水1.5mL、および10M
NaOHを0.42mL加えよく混合した。ここにエピクロロヒドリン水溶液に浸漬したモノリスを加え、50℃で15時間振とうして架橋反応を行った。反応終了後、モノリス構造体を水中に投入し、中性になるまで水洗し、内部の溶媒を水で置換した。得られたモノリス構造体は、直径1.2cm、長さ1.9cmの円柱状であった。
【0047】
<製造例16>
試験管で2−ジエチルアミノエチルクロリド塩酸塩(和光純薬、以下DEAEとする)0.36gをイオン交換水1.5mLに溶解し、製造例15で得られたモノリスを浸漬し、30℃で3時間振とう(100rpm)した。続いて別の試験管に水1.0mL、10M NaOHを0.52mL加えよく混合した。ここにDEAE水溶液に浸漬したモノリ
スを浸漬し、50℃で15時間振とうしてDEAE導入反応を行った。反応終了後、モノリス構造体を水中に投入し、洗浄水が中性になるまで水洗し、内部の溶媒を水で置換した。得られたモノリス構造体は、直径1.2cm、長さ2.0cmの円柱状であった。
【0048】
製造例16で得られたモノリス構造体について、以下の手順で中和滴定を行いDEAE導入量(イオン交換容量)を測定した。
モノリスを遠心チューブに入れ0.5MのNaOH水溶液に浸漬し、18時間振とうした。次にMilliQ水で洗浄水が中性になるまでモノリスを水洗した。モノリスに付着した余分な水分をふき取り、重量を測定し、含水量を求めた。モノリスに含水量を含めて最終濃度が0.1MのHCL溶液になるように、水と0.5M HCLを加え、16時間
浸漬した。浸漬液2mLをホールピペットで測り取り、0.1M NaOHで滴定した。
その結果、DEAE導入量は1.0meg/g−dryであった。
【0049】
<製造例17>
100mLナスフラスコ中で、酢酸セルロース5.0gを、1,4−ジオキサン15mL(30v/v%)、エタノール30mL(60v/v%)、及び20wt%ポリエチレングリコール水溶液5.0mL(10v/v%)混合溶媒に60℃の湯浴で加熱溶解させ、多糖類溶液を得た。得られた多糖類溶液を試験管(φ1.5cm、h10cm)中に5.0mLずつ分注した。前記多糖類溶液を20℃まで冷却して、溶媒を包含するモノリス構造体を得た。得られた溶媒を包含するモノリス構造体を、別容器内の過剰量の水中に投入し、モノリス構造体中に包含される前記混合溶媒を水に置換した。水を包含するモノリス構造体の1つを水中から取り出し、−78℃で凍結後、室温で減圧乾燥を行い、内部の水を除去した。得られたモノリス構造体の断面を走査型電子顕微鏡で観察した写真を
図5に示す。
2.5mLの水に10M水酸化ナトリウム溶液2.5mLを加え、試験管内でよく混合
した。ここに先に得られた水で置換したモノリス構造体の1つ(乾燥重量約400mg)を入れ、30℃で5時間振とう(100rpm)して、脱アセチル化を行った。その後、水中に浸漬して、水溶液が中性になるまで水洗した。
5.0mLの水中に350μLのエピクロヒドリンを加え、試験管内でよく混合した。ここに先に得られた脱アセチル化後のモノリス構造体を加え、2時間30℃で振とうした。続いて、別の試験管に水2.75mL、および10MNaOHを0.25mL加えよく混合した。ここにエピクロロヒドリン水溶液に浸漬したモノリスを加え、50℃で2時間振とうして架橋反応を行った。反応終了後、再びエピクロロヒドリン水溶液(エピクロロヒドリン350μl/水5ml)への浸漬、および10MNaOH水溶液(10MNaOH0.25ml/水2.75ml)中での架橋反応を前記記載の要領で行った。その後、モノリス構造体を水中に投入し、中性になるまで水洗し、内部の溶媒を水で置換した。得られたモノリス構造体は、直径1.2cm、長さ2.1cmの円柱状であった。
【0050】
<製造例18>
試験管でDEAE1.4gをイオン交換水2.0mLに溶解し、製造例17で得られた架橋モノリスを浸漬し、30℃で3時間振とう(100rpm)した。続いて別の試験管に水1.3mL、10M NaOHを1.7mL加えよく混合した。ここにDEAE水溶
液に浸漬したモノリスを浸漬し、50℃で15時間振とうしてDEAE導入反応を行った。反応終了後、モノリス構造体を水中に投入し、洗浄水が中性になるまで水洗し、内部の溶媒を水で置換した。得られたモノリス構造体は、直径1.2cm、長さ2.2cmの円
柱状であった。
【0051】
<参考製造例>
透明試験管中で、酢酸セルロース0.25、0.5、又は1.0g(5、10、又は20重量%)を、特許文献4に記載のセルロース多孔質膜製造方法で用いている溶媒である2−エチル−1,3−ヘキサンジオールをそれぞれ4.75、4.5、又は4gを加え、
150℃のブロックヒーターで加熱溶解させ、多糖類溶液を得た。得られた多糖類溶液を20℃まで冷却したところ、5重量%の場合は流動性があり、ゲルとしては成形体が得られなかった。また、10重量%では冷却すると、沈殿し、不均一析出となった。また、20重量%では直径1.5cm、長さ3.2cmの3次元の構造体が得られたが、通液性能が非常に悪くなり孔径も小さかった。
【0052】
<試験例1>連続孔の評価
製造例1の酢酸セルロースモノリス構造体の孔の連続性を調査するために、以下の手順でカラムを組み立てた。
口径0.9cmのロッド状の酢酸セルロースモノリス構造体をカッターで所望の長さに切断した。2.5cmの四弗化パイプ(I.D.7−O.D.9mm)(アズワン株式会社より購入)、直径9.3mm、厚さ2.4mmのポリプロピレン製フリッツ(スペルコ、シグマ アルドリッチ ジャパン株式会社製)でモノリスの両端を挟み、更にそれを全長が覆われる長さのテフロン(登録商標)熱収縮チューブFEP−090(アズワン株式会社より購入)の中に入れ全体をドライヤーで加熱して収縮させた。カラムの両端に異型ユニオン(30−10RU6−C、株式会社サンプラテック製)に接続した。これに外径6mmのチューブ接続し流速を測定した。また、さらに異型ユニオン(U−20C、東京理化器械株式会社)を接続することで1/16インチ(1.59mm)のチューブにてクロマトグラフィーシステムでの測定に用いた。
NaCl、牛血清アルブミン(BSA)、又は鉄コロイド(平均粒径78nm)の水溶液をそれぞれカラムに流して、溶出された物質の回収率を調べた。
クロマトグラフィーシステムは、BioLogic LP(バイオ・ラッドラボラトリ
ーズ株式会社)を用い、NaClは電気伝導度により、BSAと鉄コロイドは280nmの吸収によりそれぞれ検出した。流速は1.2mL/minとした。用いたモノリス構造
体は径0.9cm、長さ2.5cmであった。
NaClの場合、カラムは純水によって平衡化した後、1M NaCl水溶液を10m
L通液させた。比較のために、カラムを接続せず配管を直接接続して同様に1M NaC
l水溶液を流した。それぞれ、溶出時間と電気伝導度をチャートレコーダーで記録した。それぞれのピーク面積はデジタイザーソフト(un scan it)を用いて求めた。
BSAおよび鉄コロイドの場合、カラムはPBS(−)(日水製薬株式会社製、Dulbecco’s PBS(−)を取扱い説明にしたがって調製した)で平衡化し後、1%
BSA、又は20μg/mLの鉄コロイドのPBS(−)溶液をそれぞれ2mL通液させた。それぞれ、溶出時間と280nmの吸光度をチャートレコーダーで記録した。それぞれのピーク面積はデジタイザーソフト(un scan it)を用いて求めた。
いずれの場合もそれぞれ2回繰り返し、平均値から回収率を計算した。
【0053】
結果を表1に示す。NaCl、BSA、及び鉄コロイドの何れの試料であっても、ほぼ100%の回収量となり、製造例1のモノリス構造体の孔は連続している事が確認された。
【0054】
【表1】
【0055】
<試験例2>通液時の流速と圧力の関係の評価
製造例13および製造例14の酢酸セルロースモノリスに純水を通液しその際のカラム入り口の圧力を測定した。まず以下の手順でカラムを組み立てた。
口径1.2cmのロッド状の酢酸セルロースモノリス構造体をカッターで所望の長さに切断した。5.0cmの四弗化パイプ(I.D.7−O.D.9mm)、直径9.3mm、厚さ2.4mmのポリプロピレン製フリッツでモノリスの両端を挟み、更にそれを全長が覆われる長さのスミチューブC(SUMI−C−14、住友電工ファインポリマー株式会社)の中に入れ全体を95℃の湯浴で加熱して収縮させた。さらにそれを全長が覆われる長さのテフロン(登録商標)熱収縮チューブFEP−120(アズワン株式会社より購入)の中に入れ、全体をドライヤーで加熱して収縮させた。カラムの両端に異型ユニオン(30−10RU6−C、株式会社サンプラテック製)に接続した。これに外径6mmのチューブ接続し流速を測定した。また、さらに異型ユニオン(U−20C、東京理化器械株式会社)を接続することで1/16インチ(1.59mm)のチューブにてクロマトグラフィーシステムでの測定に用いた。
測定装置としては、ポンプにはLC8A(島津)、圧力計にはGP−M025(キーエンス)、流量計にはFD−SS02A(キーエンス)を用いた。用いたモノリス構造体は径0.9cm、長さ2.5cmであった。通水液としては、31〜32℃の純水を用いた。
比較例として、セルロース粒子充填カラムであるセルファイン Max S−r Min
iカラム(径0.9cm、長さ1.8cm、JNC株式会社製)を用いて同様に評価した。
結果を
図6に示す。製造例13および製造例14のモノリス構造体は、粒子充填カラムと比べて非常に低圧で且つ高流速での通液が可能であることがわかった。