特許第6206173号(P6206173)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6206173
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】半導体ウェーハの洗浄方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20170925BHJP
【FI】
   H01L21/304 647Z
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-269000(P2013-269000)
(22)【出願日】2013年12月26日
(65)【公開番号】特開2015-126067(P2015-126067A)
(43)【公開日】2015年7月6日
【審査請求日】2015年12月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000190149
【氏名又は名称】信越半導体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【弁理士】
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(72)【発明者】
【氏名】阿部 達夫
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 健作
【審査官】 小川 将之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−303497(JP,A)
【文献】 特開平06−089888(JP,A)
【文献】 特開平08−017775(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンモニア水、過酸化水素水、及び純水の混合液から成る洗浄液によって半導体ウェーハを洗浄する半導体ウェーハの洗浄方法であって、
前記半導体ウェーハをシリコンウェーハとし、
前記半導体ウェーハは前記洗浄液で2回以上洗浄し、1回目の洗浄に対して、2回目以降の洗浄による半導体ウェーハ表面のエッチング速度を5倍以上とすることを特徴とする半導体ウェーハの洗浄方法。
【請求項2】
前記2回目以降の洗浄による半導体ウェーハ表面のエッチング速度を1nm/min以下とすることを特徴とする請求項1に記載の半導体ウェーハの洗浄方法。
【請求項3】
前記1回目の洗浄に用いる洗浄液及び前記2回目以降の洗浄に用いる洗浄液の、アンモニア水、過酸化水素水、及び純水の濃度を容積混合比で1:1:5から1:1:100までの範囲内とし、かつ、前記1回目の洗浄に用いる洗浄液及び前記2回目以降の洗浄に用いる洗浄液の温度を60℃以下とすることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の半導体ウェーハの洗浄方法。
【請求項4】
前記半導体ウェーハを、表面に酸化膜を形成していないシリコンウェーハとすることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の半導体ウェーハの洗浄方法。
【請求項5】
前記洗浄液を循環させて濾過と恒温加熱を行う循環濾過装置を使用して、前記洗浄液の循環濾過及び温調を行い、同時に前記洗浄液中のアンモニア及び過酸化水素の各濃度を一定に制御しつつ洗浄することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の半導体ウェーハの洗浄方法。
【請求項6】
前記洗浄は、前記半導体ウェーハの研磨後に実施することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の半導体ウェーハの洗浄方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウェーハの洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アンモニア水、過酸化水素水、及び純水の混合液から成る洗浄液(SC1洗浄液)は、最も一般的な半導体シリコンウェーハの洗浄方法の洗浄液として使用されている。このSC1洗浄液を使用した場合の一般的な洗浄フローの例としては、SC1洗浄液による洗浄(SC1洗浄)→純水によるリンス→塩酸、過酸化水素水、及び純水の混合液から成るSC2洗浄液による洗浄(SC2洗浄)→純水によるリンス→乾燥のようになる。この洗浄方法では、SC1洗浄液で半導体ウェーハに付着したパーティクルの除去を行い、純水リンスで薬品を洗い流す。次に、SC2洗浄液で金属不純物を除去し、再度、純水リンスで薬品を洗い流した後に乾燥を行うものである(特許文献1参照)。
【0003】
SC1洗浄液は、洗浄効果を高めるために60℃から80℃に加温して使用されることが多い。このため、薬液槽には循環濾過装置が取り付けられ、パーティクルの除去と同時にヒーターによる洗浄液の温度調節も行われている。また、薬品の蒸発による洗浄液の濃度低下を防ぐために、薬液を注加して濃度を一定に制御することもできる。更に、パーティクルの除去力を向上させるために、超音波洗浄を併用する場合もある。
【0004】
ここで使用される洗浄液は、半導体ウェーハの清浄度品質に直接影響を与えるため、洗浄液中のパーティクルや金属不純物濃度は厳しく管理される。更に、ここで使用される薬品もウェーハの清浄度品質に直接影響を与えるため、パーティクルや不純物が極限まで少ない高品質の薬品が使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−533123号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記したように、半導体ウェーハの洗浄で使用されるSC1洗浄液は、主にパーティクル除去のために使用される。これは、アルカリであるアンモニア水のエッチング作用を利用して、半導体ウェーハの表面のパーティクルを除去できるからである。しかし、SC1洗浄は、パーティクルを効率良く除去できる一方で、半導体ウェーハの表面をエッチングしてしまうため、洗浄対象の半導体ウェーハの表面粗さを悪化させてしまう。
【0007】
このSC1洗浄は、アンモニア水によるエッチング反応と過酸化水素水によるシリコンウェーハ表面の酸化反応が同時に進んでいると考えられている。このため、SC1洗浄前の半導体ウェーハの表面状態が、SC1洗浄後の半導体ウェーハの表面状態に影響を与える。つまり、半導体ウェーハ表面に保護膜が無い状態であると、アンモニア水によるエッチングが先行して、半導体ウェーハ表面の粗さが増大することとなる。
【0008】
これに対して、SC1洗浄前の半導体ウェーハの表面に保護膜として酸化膜を形成しておくことで、半導体ウェーハの表面粗さの悪化を抑制することができる。
しかし、半導体ウェーハの表面に保護膜として酸化膜を形成する場合には、一般的にオゾン水が使用されるため、オゾン水処理槽、オゾン水発生装置やオゾン水分解装置等の装置が必要となり大幅なコストアップを招いてしまうという問題があった。
【0009】
本発明は前述のような問題に鑑みてなされたもので、SC1洗浄を行う際に、半導体ウェーハの表面粗さの悪化を抑制することができ、特に、予め特別な前処理によって半導体ウェーハ表面に保護膜として酸化膜を形成しなくとも、表面に酸化膜を形成した場合と同等の表面粗さとすることができる半導体ウェーハの洗浄方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明によれば、アンモニア水、過酸化水素水、及び純水の混合液から成る洗浄液によって半導体ウェーハを洗浄する半導体ウェーハの洗浄方法であって、前記半導体ウェーハは前記洗浄液で2回以上洗浄し、1回目の洗浄に対して、2回目以降の洗浄による半導体ウェーハ表面のエッチング速度を5倍以上とすることを特徴とする半導体ウェーハの洗浄方法を提供する。
【0011】
このようにすれば、半導体ウェーハのSC1洗浄において、洗浄後の表面粗さの悪化を抑制することができ、特に表面に酸化膜が形成していない半導体ウェーハの洗浄を行う場合であっても、表面に酸化膜を形成した場合と同等の表面粗さとすることができる。これにより、従来は必要であった半導体ウェーハの表面を酸化するための処理が不要となり、酸化装置の導入コスト、ランニングコストが不要となり、半導体ウェーハの洗浄コストを大幅に削減することが可能となる。
【0012】
このとき、前記2回目以降の洗浄による半導体ウェーハ表面のエッチング速度を1nm/min以下とすることが好ましい。
このようにすれば、SC1洗浄において、洗浄後の表面粗さの悪化を確実に抑制することができ、特に表面に酸化膜が形成していない半導体ウェーハの洗浄を行う場合であっても、洗浄後の表面粗さの悪化をより確実に抑制することができる。
【0013】
またこのとき、前記洗浄液の、アンモニア水、過酸化水素水、及び純水の濃度を容積混合比で1:1:5から1:1:100までの範囲内とし、かつ、前記洗浄液の温度を60℃以下とすることができる。
このように、アンモニア水、過酸化水素水、及び純水の容積混合比が1:1:5以下の濃度とすれば、アンモニア水、過酸化水素水の使用量が多くなり過ぎず、コスト高になることが無い。また、容積混合比が1:1:100以上の濃度の場合、洗浄力が不足することがなく、確実に半導体ウェーハを洗浄することができる。さらに、このとき洗浄液の温度を60℃以下とすれば、洗浄後の表面粗さの悪化をより確実に抑制することができる。
【0014】
このとき、前記半導体ウェーハを、表面に酸化膜を形成していないシリコンウェーハとすることができる。
本発明の洗浄方法であれば、酸化処理をされていない表面に酸化膜を形成していないシリコンウェーハであっても、SC1洗浄による表面粗さの悪化を抑制できる。そのため、従来必要であったシリコンウェーハの表面を酸化するための処理が不要となり、酸化装置の導入コスト、ランニングコストが不要となり、半導体ウェーハの製造コストを大幅に削減することが可能となる。
【0015】
またこのとき、前記洗浄液を循環させて濾過と恒温加熱を行う循環濾過装置を使用して、前記洗浄液の循環濾過及び温調を行い、同時に前記洗浄液中のアンモニア及び過酸化水素の各濃度を一定に制御しつつ洗浄することができる。
このようにすれば、濾過により洗浄液中のパーティクルを取り除くことができ、より清浄度の高い洗浄を行うことができる。また、洗浄液の温度と濃度を制御することで、エッチング速度を容易に制御することができる。
【0016】
このとき、前記洗浄は、前記半導体ウェーハの研磨後に実施することができる。
このように、研磨により表面が活性化されているとともに、表面に保護膜として酸化膜がない半導体ウェーハであっても、本発明の洗浄方法であれば、表面粗さの悪化を抑制できる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の半導体ウェーハの洗浄方法であれば、半導体ウェーハのSC1洗浄において、洗浄後の表面粗さの悪化を抑制することができ、特に表面に酸化膜が無い半導体ウェーハの洗浄を行う場合であっても、表面に酸化膜を形成した場合と同等の表面粗さとすることができる。これにより、従来は必要であった半導体ウェーハの表面に酸化膜を形成するための処理が不要となり、酸化膜形成装置の導入コスト、ランニングコストが不要となり、半導体ウェーハの製造コストを大幅に削減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の半導体ウェーハの洗浄方法の一例を示すフロー図である。
図2】研磨後の半導体ウェーハを本発明の半導体ウェーハの洗浄方法にて洗浄する場合の一例を示すフロー図である。
図3】実施例、比較例の結果を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明について実施の形態を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
上記したように、SC1洗浄においては、洗浄後の半導体ウェーハの表面粗さが悪化し、特に半導体ウェーハに酸化膜等の保護膜が無い場合、洗浄後の半導体ウェーハの表面粗さが著しく悪化してしまうという問題があった。また、表面粗さの悪化を抑制するために、酸化膜を形成するには、酸化膜形成装置の導入が必要であり、導入コストやランニングコストがかかるため、半導体ウェーハの洗浄コストが大幅に増加してしまっていた。
【0020】
そこで、本発明者等はこのような問題を解決すべく鋭意検討を重ねた。その結果、SC1洗浄液で2回以上洗浄し、1回目の洗浄に対して、2回目以降の洗浄による半導体ウェーハ表面のエッチング速度を5倍以上とすれば、酸化膜等の保護膜が無い半導体ウェーハを洗浄する場合であっても、洗浄後の表面粗さの悪化を抑制できることに想到し、本発明を完成させた。
【0021】
以下、本発明の半導体ウェーハの洗浄方法について図1、2を参照して説明する。以下に説明する実施形態では、図1、2に示すように、研磨後の半導体ウェーハを純水でリンスした後、SC1洗浄を実施し、その後SC2洗浄を実施し、乾燥させる洗浄工程において、SC1洗浄に本発明の半導体ウェーハの洗浄方法を適用した場合を例に説明する。
【0022】
図2に示すように、まず、洗浄対象の半導体ウェーハを準備する。そして、半導体ウェーハを研磨した後に、本発明の半導体ウェーハの洗浄方法にて、洗浄を実施することができる。
このような研磨工程直後の、酸化膜等の保護膜を形成していない、表面が活性化している半導体ウェーハを、SC1洗浄する場合であっても、本発明の洗浄方法では、保護膜を形成した場合と同程度に表面粗さの悪化を抑制することができる。
【0023】
半導体ウェーハの洗浄は、図1に示すように、まず、研磨後の半導体ウェーハを純水によりリンスするが、この工程は無くてもよい。
続いて、1回目のSC1洗浄を実施する。この際に使用する洗浄液はアンモニア水、過酸化水素水、及び純水の混合液から成るSC1洗浄液を使用する。洗浄については、例えば、このSC1洗浄液を満たした洗浄槽に洗浄対象の半導体ウェーハを浸漬することで半導体ウェーハを洗浄することができる。この時の、SC1洗浄液の設定温度は、40℃から60℃までの範囲内の値として洗浄を実施することが好ましい。1回目の洗浄では、エッチング速度を低くした方が、表面粗さを抑制し易いからである。
【0024】
次に、2回目のSC1洗浄を実施する。この洗浄についても、アンモニア水、過酸化水素水、及び純水の混合液から成るSC1洗浄液を使用し、例えば、このSC1洗浄液を満たした洗浄槽に洗浄対象の半導体ウェーハを浸漬することで半導体ウェーハを洗浄することができる。そして本発明では、この2回目以降の洗浄の際に、1回目のSC1洗浄における半導体ウェーハ表面のエッチング速度に対して、2回目以降のSC1洗浄による半導体ウェーハ表面のエッチング速度を5倍以上とする。
【0025】
1回目のSC1洗浄におけるエッチング速度に対して、2回目以降のSC1洗浄によるエッチング速度を5倍以上となるようにするには、それぞれのSC1洗浄における、SC1洗浄液の容積混合比や温度等を調節すればよい。
【0026】
例えば、1回目のSC1洗浄において、アンモニア水、過酸化水素水、及び純水の容積混合比を0.1:1:10、温度を50℃とすることで、エッチング速度を0.05nm/minとすることができる。そして、2回目のSC1洗浄において、アンモニア水、過酸化水素水、純水の容積混合比を1:1:10、温度を60℃とすることで、エッチング速度を0.30nm/minとすることができ、1回目のSC1洗浄に対して2回目のSC1洗浄の半導体ウェーハのエッチング速度を6倍とすることができる。これにより、例えば、それぞれのSC1洗浄における洗浄時間を5分に設定した場合、エッチング量は1回目の洗浄で0.25nm、2回目の洗浄で1.5nmとなり、1回目に対して2回目の半導体ウェーハのエッチング量も6倍となる。
【0027】
上記のように、1回目のSC1洗浄におけるエッチング速度に対して、2回目以降のSC1洗浄によるエッチング速度を5倍以上となるようにすれば、洗浄後の半導体ウェーハの表面粗さの悪化を抑制することができる。特に、表面に酸化膜が形成していない半導体ウェーハの洗浄を行う場合であっても、表面に酸化膜を形成した場合と同等の表面粗さとすることができる。なお、薬液の温度と組成の調整によって、エッチング速度は20倍までとすることが好ましく、さらに10倍までとすることがより好ましい。
【0028】
また、SC1洗浄液の濃度は一般的にアンモニア水、過酸化水素水、純水の容積混合比が使用されているが、この範囲は1:1:5から1:1:100までの範囲内とすることが好ましい。この容積混合比を1:1:5以下の濃度とすれば、アンモニア水、過酸化水素水の使用量が多くなり過ぎず、コスト高になることがない。また、容積混合比を1:1:100以上の濃度とすれば、洗浄力が不足することがなく、半導体ウェーハを確実に洗浄することができる。更に、このとき洗浄液の温度を60℃以下とすれば、洗浄後の表面粗さの悪化をより確実に抑制することができる。
【0029】
また、本発明では2回目以降の洗浄による半導体ウェーハ表面のエッチング速度を1nm/min以下とすることが好ましい。
このようにすれば、エッチング速度が速くなり過ぎず、SC1洗浄において、表面酸化膜が形成していない半導体ウェーハの洗浄を行う場合であっても、洗浄後の表面粗さの悪化をより確実に抑制することができる。
【0030】
そして、1回目及び2回目以降のSC1洗浄において、SC1洗浄液を循環させて濾過と恒温加熱を行う循環濾過装置を使用して、SC1洗浄液の循環濾過及び温調を行い、同時にSC1洗浄液中のアンモニア及び過酸化水素の各濃度を一定に制御しつつ洗浄することができる。
【0031】
これは、SC1洗浄液を、例えばポンプによって洗浄液を循環させ、テフロン(登録商標)製のフィルターによって、洗浄液中のパーティクルの除去を行い、ヒーターによって温調を行う循環濾過装置を使用することができる。また、濃度を一定に制御するために、アンモニア及び過酸化水素の蒸発による洗浄液の濃度低下を補う分のアンモニア水及び過酸化水素水を注加することができる。
【0032】
このようにすれば、濾過により洗浄液中のパーティクルを取り除くことができ、より清浄度の高い洗浄を行うことができる。また、洗浄液の温度と濃度を制御することで、エッチング速度を容易に制御することができる。
【0033】
また、本発明の洗浄方法において、洗浄対象の半導体ウェーハを、表面に酸化膜を形成していないシリコンウェーハとすることができる。
このように、酸化膜を形成していないシリコンウェーハであっても、本発明の洗浄方法であれば、酸化膜を形成した場合と同程度に表面粗さの悪化を抑制することができる。
【0034】
上記のように、SC1洗浄が完了した後の処理は特に限定されないが、例えば、純水により半導体ウェーハをリンスする。
次に、SC2洗浄を実施し、その後、純水により半導体ウェーハをリンスする。最後に、半導体ウェーハを乾燥させて洗浄工程を完了する。
【実施例】
【0035】
以下、本発明の実施例及び比較例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0036】
(実施例1)
図1に示すような洗浄工程で、直径が300mmの両面を鏡面研磨で仕上げた酸化膜を形成していないシリコン単結晶ウェーハを洗浄した。
1回目のSC1洗浄の洗浄条件は、SC1洗浄液の濃度を容積混合比で、アンモニア水:過酸化過水疎水:純水=0.1:1:10とした。また、SC1洗浄液の温度は50℃に設定し、循環濾過装置を使用してヒーターによる温調を行った。このようにして、エッチング速度を0.05nm/minとした。そして、洗浄時間は240秒とした。従って、1回目のSC1洗浄における、エッチング量は0.20nmであった。
【0037】
また、2回目のSC1洗浄の洗浄条件は、SC1洗浄液の濃度を容積混合比で、アンモニア水:過酸化過水疎水:純水=1:1:10とした。また、SC1洗浄液の温度は60℃に設定し、循環濾過装置を使用してヒーターによる温調を行った。このようにして、エッチング速度を0.30nm/minとした。そして、洗浄時間は240秒とした。従って、2回目のSC1洗浄における、エッチング量は1.2nmであった。
【0038】
このような洗浄条件とすることで、1回目のSC1洗浄に対する、2回目のSC1洗浄によるシリコン単結晶ウェーハ表面のエッチング速度(エッチング速度比)を6倍に設定した。
【0039】
また、塩酸、過酸化水素水及び純水の混合液から成るSC2洗浄液の濃度は、容積混合比で、塩酸:過酸化過水疎水:純水=1:1:100とし、温度は80℃とした。また、SC1洗浄と同様に循環濾過装置を使用して、ヒーターによる温調を行った。SC2洗浄の洗浄時間は240秒とした。
【0040】
シリコン単結晶ウェーハの乾燥後、シリコン単結晶ウェーハの表面検査を行った。表面検査は、KLA−Tencor社製のウェーハ表面欠陥検査装置SP2で行い、ウェーハの表面粗さを示す指標となるHazeの値を測定した。
【0041】
また、この時、図1に示すような洗浄工程において、最初に行う純水リンスの代わりにオゾン水による洗浄を行い、両面鏡面研磨後に、表面に自然酸化膜を形成させたシリコン単結晶ウェーハの洗浄も行った。オゾン水による洗浄以降の工程は、上述した洗浄工程及び洗浄条件と同様とした。そして、上記と同様にHazeの値を測定した。
【0042】
(実施例2)
実施例1と同様の洗浄工程で、酸化膜の無いシリコン単結晶ウェーハを洗浄した。
ただし、1回目のSC1洗浄の洗浄条件は、SC1洗浄液の濃度を容積混合比で、アンモニア水:過酸化過水疎水:純水=1:1:10とした。また、SC1洗浄液の温度は40℃に設定し、循環濾過装置を使用してヒーターによる温調を行った。このようにして、エッチング速度を0.06nm/minとした。そして、洗浄時間は240秒とした。従って、1回目のSC1洗浄における、エッチング量は0.24nmであった。
【0043】
また、2回目のSC1洗浄の洗浄条件は、SC1洗浄液の濃度を容積混合比で、アンモニア水:過酸化過水疎水:純水=1:1:10とした。また、SC1洗浄液の温度は60℃に設定し、循環濾過装置を使用してヒーターによる温調を行った。このようにして、エッチング速度を0.30nm/minとした。そして、洗浄時間は240秒とした。従って、2回目のSC1洗浄における、エッチング量は1.20nmであった。
【0044】
このような洗浄条件とすることで、1回目のSC1洗浄に対する、2回目のSC1洗浄によるシリコン単結晶ウェーハ表面のエッチング速度(エッチング速度比)を5倍に設定した。
これ以外の、洗浄工程、洗浄条件は、実施例1と同様とし、実施例1と同様な方法で、Hazeの値を測定した。
【0045】
また、この時、図1に示すような洗浄工程において、最初に行う純水リンスの代わりにオゾン水による洗浄を行い、研磨後の表面に自然酸化膜を形成させたシリコン単結晶ウェーハの洗浄も行った。オゾン水による洗浄以降の工程は、上述した洗浄工程及び洗浄条件と同様とした。そして、上記と同様にHazeの値を測定した。
【0046】
(実施例3)
実施例1と同様の洗浄工程で、酸化膜の無いシリコン単結晶ウェーハを洗浄した。
ただし、1回目のSC1洗浄の洗浄条件は、SC1洗浄液の濃度を容積混合比で、アンモニア水:過酸化過水疎水:純水=0.1:2:10とした。また、SC1洗浄液の温度は50℃に設定し、循環濾過装置を使用してヒーターによる温調を行った。このようにして、エッチング速度を0.03nm/minとした。そして、洗浄時間は240秒とした。従って、1回目のSC1洗浄における、エッチング量は0.12nmであった。
【0047】
また、2回目のSC1洗浄の洗浄条件は、SC1洗浄液の濃度を容積混合比で、アンモニア水:過酸化過水疎水:純水=1:1:10とした。また、SC1洗浄液の温度は60℃に設定し、循環濾過装置を使用してヒーターによる温調を行った。このようにして、エッチング速度を0.30nm/minとした。そして、洗浄時間は240秒とした。従って、1回目のSC1洗浄における、エッチング量は1.20nmであった。
【0048】
このような洗浄条件とすることで、1回目のSC1洗浄に対する、2回目のSC1洗浄によるシリコン単結晶ウェーハ表面のエッチング速度(エッチング速度比)を10倍に設定した。
これ以外の、洗浄工程、洗浄条件は、実施例1と同様とし、実施例1と同様な方法で、Hazeの値を測定した。
【0049】
また、この時、図1に示すような洗浄工程において、最初に行う純水リンスの代わりにオゾン水による洗浄を行い、研磨後の表面に自然酸化膜を形成させたシリコン単結晶ウェーハの洗浄も行った。オゾン水による洗浄以降の工程は、上述した洗浄工程及び洗浄条件と同様とした。そして、上記と同様にHazeの値を測定した。
【0050】
(比較例1)
実施例1と同様の洗浄工程で、酸化膜の無いシリコン単結晶ウェーハを洗浄した。
ただし、1回目のSC1洗浄の洗浄条件は、SC1洗浄液の濃度を容積混合比で、アンモニア水:過酸化過水疎水:純水=1:1:10とした。また、SC1洗浄液の温度は60℃に設定し、循環濾過装置を使用してヒーターによる温調を行った。このようにして、エッチング速度を0.30nm/minとした。そして、洗浄時間は40秒とした。従って、1回目のSC1洗浄における、エッチング量は0.20nmであった。
【0051】
また、2回目のSC1洗浄の洗浄条件は、1回目のSC1洗浄の洗浄条件と同様に、濃度を容積混合比で、アンモニア水:過酸化過水疎水:純水で1:1:10とし、温度は60℃に設定し、循環濾過装置を使用してヒーターによる温調を行った。このようにして、エッチング速度を1回目のSC1洗浄と同様に0.30nm/minとなった。そして、洗浄時間は240秒とした。従って、2回目のSC1洗浄における、エッチング量は1.20nmであった。このようにして、1回目と2回目のSC1洗浄による合計のエッチング量を実施例1と同様のエッチング量である1.40nmとした。
【0052】
そして、このような洗浄条件とすることで、1回目のSC1洗浄に対する、2回目のSC1洗浄によるシリコンウェーハ表面のエッチング速度(エッチング速度比)を1倍に設定した。
これ以外の、洗浄工程、洗浄条件は、実施例1と同様とし、実施例1と同様な方法で、Hazeの値を測定した。
【0053】
また、この時、図1に示すような洗浄工程において、最初に行う純水リンスの代わりにオゾン水による洗浄を行い、研磨後の表面に自然酸化膜を形成させたシリコン単結晶ウェーハの洗浄も行った。オゾン水による洗浄以降の工程は、上述した洗浄工程及び洗浄条件と同様とした。そして、上記と同様にHazeの値を測定した。
【0054】
(比較例2)
実施例1と同様の洗浄工程で、酸化膜の無いシリコン単結晶ウェーハを洗浄した。
ただし、1回目のSC1洗浄の洗浄条件は、SC1洗浄液の濃度を容積混合比で、アンモニア水:過酸化過水疎水:純水=1:1:10とした。また、SC1洗浄液の温度は55℃に設定し、循環濾過装置を使用してヒーターによる温調を行った。この時の、エッチング速度は、0.20nm/minとなった。そして、洗浄時間は72秒とした。従って、1回目のSC1洗浄における、エッチング量は0.24nmであった。
【0055】
また、2回目のSC1洗浄の洗浄条件は、SC1洗浄液の濃度を容積混合比で、アンモニア水:過酸化過水疎水:純水=1:1:10とした。また、SC1洗浄液の温度は70℃に設定し、循環濾過装置を使用してヒーターによる温調を行った。この時の、エッチング速度は、0.60nm/minとなった。そして、洗浄時間は120秒とした。従って、2回目のSC1洗浄における、エッチング量は1.20nmであった。
【0056】
このような洗浄条件とすることで、1回目のSC1洗浄に対する、2回目のSC1洗浄によるシリコン単結晶ウェーハ表面のエッチング速度(エッチング速度比)を3倍に設定した。
これ以外の、洗浄工程、洗浄条件は、実施例1と同様とし、実施例1と同様な方法で、Hazeの値を測定した。
【0057】
また、この時、図1に示すような洗浄工程において、最初に行う純水リンスの代わりにオゾン水による洗浄を行い、研磨後の表面に自然酸化膜を形成させたシリコン単結晶ウェーハの洗浄も行った。オゾン水による洗浄以降の工程は、上述した洗浄工程及び洗浄条件と同様とした。そして、上記と同様にHazeの値を測定した。
【0058】
(比較例3)
実施例1と同様の洗浄工程で、酸化膜の無いシリコン単結晶ウェーハを洗浄した。
ただし、1回目のSC1洗浄の洗浄条件は、SC1洗浄液の濃度を容積混合比で、アンモニア水:過酸化過水疎水:純水=1:1:10とした。また、SC1洗浄液の温度は50℃に設定し、循環濾過装置を使用してヒーターによる温調を行った。この時の、エッチング速度は、0.15nm/minとなった。そして、洗浄時間は168秒とした。従って、1回目のSC1洗浄における、エッチング量は0.42nmであった。
【0059】
また、2回目のSC1洗浄の洗浄条件は、SC1洗浄液の濃度を容積混合比で、アンモニア水:過酸化過水疎水:純水=1:1:10とした。また、SC1洗浄液の温度は70℃に設定し、循環濾過装置を使用してヒーターによる温調を行った。この時の、エッチング速度は、0.60nm/minとなった。そして、洗浄時間は90秒とした。従って、2回目のSC1洗浄における、エッチング量は0.90nmであった。
【0060】
このような洗浄条件とすることで、1回目のSC1洗浄に対する、2回目のSC1洗浄によるシリコンウェーハ表面のエッチング速度(エッチング速度比)を4倍に設定した。
これ以外の、洗浄工程、洗浄条件は、実施例1と同様とし、実施例1と同様な方法で、Hazeの値を測定した。
【0061】
また、この時、図1に示すような洗浄工程において、最初に行う純水リンスの代わりにオゾン水による洗浄を行い、研磨後の表面に自然酸化膜を形成させたシリコン単結晶ウェーハの洗浄も行った。オゾン水による洗浄以降の工程は、上述した洗浄工程及び洗浄条件と同様とした。そして、上記と同様にHazeの値を測定した。
【0062】
表1に、実施例1−3、比較例1−3における洗浄条件をまとめたもの示す。
【0063】
【表1】
【0064】
表2に、実施例1−3、比較例1−3における実施結果をまとめたものを示す。
【0065】
【表2】
【0066】
表2、図3に示すように、実施例1−3では、酸化膜を形成していないシリコン単結晶ウェーハを洗浄した場合のHazeの値はDWOモードでそれぞれ80ppb、82ppb、81ppb、酸化膜を形成したシリコン単結晶ウェーハを洗浄した場合のHazeの値は79ppb、80ppb、80ppbとなり、Hazeの値は同程度であった。
以上の結果から、本発明の洗浄方法であれば、洗浄後の表面粗さを抑制でき、特に酸化膜を形成していないシリコン単結晶ウェーハを洗浄した場合においても、酸化膜を形成したシリコン単結晶ウェーハを洗浄した場合と同等のHaze値となり、酸化膜の形成をしなくても洗浄後の表面粗さの悪化を抑えられていることが確認された。
【0067】
これに対して、比較例1−3では、酸化膜を形成していないシリコン単結晶ウェーハを洗浄した場合のHazeの値はそれぞれ91ppb、92ppb、90ppb、酸化膜を形成したシリコン単結晶ウェーハを洗浄した場合のHazeの値は82ppb、82ppb、80ppbとなり、酸化膜を形成していないシリコン単結晶ウェーハを洗浄した場合に表面粗さは大きくなっていた。
【0068】
以上の結果から、本発明により、保護膜として酸化膜を形成していないシリコン単結晶ウェーハを洗浄した場合であっても、酸化膜を形成したシリコン単結晶ウェーハを洗浄した場合と同等のHaze値となり、洗浄後の表面粗さを良好にすることができることが確認された。
【0069】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
図1
図2
図3